マクロ経済学 = 一国経済の総体的な姿を、個別の経済主体 ( = 機能による分類 )の行動の細部にまで立 ち入ることなく分析(「 鳥瞰 」 bird's eye view ) マクロ経済学 •マクロ経済現象 雇用(失業)、景気 、インフレーション、 1 通貨供給量 デフレーション •マクロ経済指標 国民所得、物価水準 (prices) 、利子率 、 為替レート 、通貨供給量 2 [1]ケインズJohn Maynard Keynes (1883-1946) • M1 (通貨)=現金通貨 + 預金通貨( = 要求払い預金※ ) ※要求払い預金 =当座預金 + 普通預金 + 通知預金 マネタリー・ベース=現金 + 法定準備( 預金通貨の一定割合 ) • M2 = M1 +準通貨※ ※準通貨 = 定期性預金+外貨建て預金+円建て預金 • M2 + CD( 譲渡性預金 ) • M3 = M2 + 郵便預金および農協、漁協、信用組合、労働金庫の預貯金 • 広義流動性 = M3 + 全国銀行信託勘定の金銭信託・貸付信託元本、債券現先、 金融債、国債、投資信託、金銭信託以外の金銭の信託 、外債 イギリスの経済学者、論理学者 • 経済学者のジョン・ネイビル・ケインズ (1883-1911年のケンブリッジ大学講師。 マーシャルの友人)の子として生まれる。 • 1902年ケンブリッジ大学で数学専攻。 • 1906年インド省勤務の後 、1908年ケンブ リッジ大学キングス・カレッジ・フェロー。 • 第1次大戦後のヴェルサイユ平和会議の大 蔵省主席代表。 • 1940年蔵相顧問 、1941年イングランド銀 行理事、1942年ティルトン卿。 →平均的な人々の暮らし向き、生活の豊さ (宮沢内閣「生活大国の実現」92年4月) 3 4 『雇用、利子および貨幣の一般理論』 The General Theory of Employment, Interest and Money, 1936 1944年7月 ブレトンウッズ会議のイギリス代表 • 古典派(彼以前)批判 = 完全雇用均衡であって 、非自発的失業を含む 不完全雇用均衡を説明できない。 The United Nations Monetary and Financial Conference • 有効需要の原理 = 総需要の大きさによって 、生産規模、雇用水準 、 物価水準が左右される。 → 政府による総需要管理 :循環的現象にのみ有効。 古典派経済学の基本命題であるセイ法則を否定し 、不 完全雇用における均衡の成立を証明した。 John Maynard Keynes (right) and Harry Dexter White at the Bretton Woods Conference 5 6 1 国民所得 国民所得(価値額) = 各財・サービスの生産量と市場価格の積の総計 (1) 付加価値 →さまざまな経済活動が行われる水準を知りたい → 自動車 お 米 2000年 2005年 ○ ○万台 ○ ○トン ○ ○万台 ○ ○トン =最終生産物の価値額のみ計上 = その期に作り出された 財貨・サービスの産出総額 - 企業間で取引される 原材料 、燃料などの中間投入額 (2) 市場価格評価 例外:1.帰属計算( 農作物の自家消費、自己所有 家屋の家賃 ) 2.公共サービス( 投入した要素費用 ) (3) 名目と実質 →物価指数 ( 例 )消費者物価指数 、卸売物価指数 各産業の生産量による把握 (1)集計ができない ⇒生産額による把握 (2)比較が困難 生産額=生産量×価格 7 8 [2] 国民所得 (a) grossとnet 国民所得 = ある一定期間(通常は1年)に、その国で新たに生み出 されるすべての財貨・サービスの総価値額(フロー概念) 「総」(粗)gross =機械、資本設備などの減耗分(生産活動に伴う物理 的減耗、技術革新や新型機械の出現や需要の移り 変わりによる現存機械の経済的価値の減少)を差引 いていない。 減価償却引当(会計)、固定資本減耗(所得統計)。 定義 :国民総生産(GNP = Gross National Product) 国民純生産(NNP) 国内総生産(GDP = Gross Domestic Product) 国内純生産(NDP) 「純」net =機械、資本設備などの減耗分を差引いた後。 9 10 (3) わが国では、1993年より、GNP 概念に代えてGDP 概念を使用。 (b) nationalとdomestic (1) 「国民」 national = 生産する主体がその国の国民 (ただし、国民=当該国に1年以上居住する人を 指し、法律上の国籍は問わない) = その国に居住している全ての主体(企業を含む。 外国籍であっても長期(1年以上)居住する者は 含める。) 例外 = 大使館、領事館、駐留外国軍隊 GNP = GDP+国外からの所得受取り-国外への所得支払い 理由: ① 企業の海外進出や国際証券投資 GNP の変動が拡大。国内景気動向を忠実に 反映するGDPを使用 ② 外国との比較。 (2) 「国内」 domestic =生産が行われる場所が、国という1つの領域 =政治的領土-国内の外国大使館+海外の自国大 使館 11 12 2 [7] 三面等価の原則 [3]国民所得の構成と部門別貯蓄投資バランス 処分サイド appropriation 国民所得 = C + I + G + E-M (1) ただし 、 C = 民間消費 、I = 民間投資 、 G = 政府の財・サービス購入 、 E = 輸出 、M = 輸入 供給サイド (a) 生産面からみた国内総生産 (b) 分配面からみた国内総生産 =被雇用者所得( 賃金 、給与 )+営業余剰( 企業利潤 、利子、 賃貸料 )+( 間接税 - 補助金 )+固定資本減耗 需要(支出)サイド (c) 国内総支出( 支出面からみた国内総生産 ) =民間消費+民間総投資+政府支出+輸出-輸入 稼得サイド earning 国民所得 = C + T + S (2) ただし、T = 税収+社会保険料-補助金-移転収支、 S = 民間貯蓄 したがって (1) = (2) より ( S -I ) + ( T-G ) - ( E-M ) = 0 (3) 民間部門 政府部門 経常収支 13 14 [4]国民所得概念の限界 (a) 市場価格評価 (例) 労働時間の短縮 → 余暇は市場取引されないので、国民所得の 減少になる 例外:1. 帰属計算(農作物の自家消費、自己所有家屋 の家賃) しかし、家内労働は帰属計算されない 2. 公共サービス(投入した要素費用) 15 16 経済的福祉の指標の工夫 (b) プラスの活動とマイナスの活動 ・国民純福祉 ( net national welfare ) ・経済純福祉 ( net economic welfare ) ・経済的福祉指標 ( measure of economic welfare ) ・・・提唱者 Tobin , Nordhous ・国民生活指標 ( NSI ) ・新国民生活指標(ゆたかさ指標) ・・・住む、費やす、働く、育てる、いやす、遊ぶ、学ぶ、 交わる、の国民生活 8 分野、154 指標 ・グリーンGDP( EDP :Eco Domestic Product ) (95 . 6 . 25 発表) = 国内純生産-帰属環境費用 ( 90年度 、355.3兆円 = 363.7-8.4、GDP424.5兆円) (例) 労働時間の短縮 公害の発生、自然環境や生態系の破壊 → 国民所得が大きいことは、経済厚生が高いことを 意味する訳ではない → 経済生活の質の面も考慮して、国民所得概念を 補正する必要性 = 経済的福祉の指標の工夫 17 18 3 [5]国民所得水準の決定 45度線の理論=均衡国民所得水準の決定 国民所得の定義式 短期=人口、技術、資本設備は与えられている Y≡C+I+G Y:国民所得 C:消費 I :投資 G:財政支出 封鎖体系=外国貿易は存在しない 国民所得=(供給面)国民生産物の供給 =(需要面)民間消費+民間投資+政府需要 Y C = + I G + → 両者が等しくなるところが、国民所得の均衡水準 19 20 式による説明 Keynes型消費関数( 絶対所得仮説 ) Y≡C+I+G C = aY + b a =限界消費性向 0 < a< 1 C = aY + b C C = aY + b I=I0 G=G0 (均衡国民所得の定義式) (消費関数) Y = aY +(b + I 0 + G 0 ) (1 − a )Y = b + I 0 + G0 a b =最低消費水準 b >0 ∴Y ∗ = b 1 (b + I 0 + G 0) 1− a Y 0 21 [6]乗数過程 政府支出が変化する時均衡国民所得はどのように変化す るか G : G 0 → G 0 + ΔG Y : Y * → Y * + ΔY 図による説明 Y≡C+I+Gより 左辺= Y 右辺= C+I+G = aY + (b + I 0 + G 0 ) 左辺 左辺 右辺 22 右辺 Y * + ΔY = C = aY + b I 0 + G0 a -) b 45° 0 1 (b + I 0 + G 0 ) 1− a 1 ΔY = ΔG 1− a 1 ΔY ∴ = ΔG 1 − a Y* b + I 0 + G0 Y* Y 23 1 (b + I 0 + G 0 + ΔG ) 1− a = 24 4 [8] IS - LMモデル ΔABCは直角二等辺三角形 AB= ΔY , CD= ΔG , BD= a ΔY AB=CD+BDより IS - LMモデル ΔY 1 = ΔG 1 − a IS曲線 =財市場を均衡させる国民所得水準 Yと利子率 r の組み合わせ。 右下がり 左辺 G0+ΔG C G0 LM曲線 =貨幣市場を均衡させるY と r の組み合わせ。 D B A a 右上がり 仮定:物価水準一定→短期には当てはまる →国民所得と利子率(ワルラス法則により、雇用も)の同時決定 45° 0 Y* Y*+ΔY 25 IS曲線= 財市場を均衡させるYとr の組み合わせの軌跡 財市場の均衡条件 26 IS曲線 = 財市場を均衡させるYとr の組み合わせの軌跡 I( r ) = S( Y ) r I = 投資 S = 貯蓄 Y = 国民所得 r = 利子率 r 投資関数 r r 1 1 r0 I = 投資 S = 貯蓄 Y = 国民所得 r = 利子率 IS曲線 I I0 I=S S 投資関数 I( r ) r ↑ならば I↓ 貯蓄関数 S( Y ) Y↑ならば S↑ Y1 Y Y0 貯蓄関数 S S0 S1 45° 1− a I I1 27 LM曲線 =貨幣市場を均衡させるYとr の組み合わせの軌跡 貨幣市場の均衡条件 Y Y0 28 LM曲線 =貨幣市場を均衡させるYとrの組み合わせの軌跡 M = L1( Y ) + L2( r ) r M = 貨幣供給(外生) L1 = 取引動機、予備的動機に基づく貨幣需要= L1( Y ) Y↑ならば L1↑ L2 = 投機的動機に基づく貨幣需要= L2( r ) r↑ならば L2↓ 貨幣需要L2 r0 M = 貨幣供給(外生) L1 = 取引動機、予備 的動機に基づく貨幣 需要 L2 = 投機的動機に基 づく貨幣需要 Y = 国民所得 LM曲線 r r0 r = 利子率 r1 L2 L 21 L1 Y1 Y0 Y 貨幣需要L1 L1 M L10 L11 45° L20 29 M=L1+L2 L2 M Y1 Y 30 5 [9]ケインズ理論の破綻 IS-LM分析 (1)Keynes離れ • 市場のグローバル化 →乗数の低下(効き目が薄れた常備薬) • 経済のソフト化(=経済構造の変化) →制御可能性の低下 • 高齢化や福祉需要の増加→安定的な経済運営 • 新保守主義→小さな政府 (フリードマン=76年ノーベル賞、 79年サッチャー、81年レーガン、82年中曽根) r IS LM r* 0 (Y*, r*) 財市場 貨幣市場 Y* Y 同時に均衡させる組み合わせ 31 32 Milton Friedman (1912-2006) • アメリカの経済学者、ニューヨーク生まれ。 • ラトガース大学、シカゴ大学で学び、1946年コロンビ ア大学で博士号取得。 (2) 合理的期待(ルーカス、95年度ノーベル賞) →ルールか裁量か 仮定:物価水準は完全に伸縮的→長期に当てはまる • シカゴ学派の重鎮、マネタリズムの主導者、新自由 主義。1976年ノーベル経済学賞 (3) 新しい古典派:自由・透明・公正な市場 (4) ニュー・ケインジアン:政府の新しい役割 = 所得分配の不平等の是正や環境問題の解決 33 34 6
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