乳量増加で離乳体重を大きくするアメリカの試み

乳量増加で離乳体重を大きくするアメリカの試み
離乳体重を大きくしたいという思いは、どの生産者にもありますが、とりわけ経済性重視で離乳日令を14~18日くら
いで回してきたアメリカでは離乳後の発育不良の問題がサーコやPRRSとダブり、関心が高いテーマでした。すでに
サーコワクチンが一般的になっている時でさえ、警鐘の意味で種豚の管理をぞんざいに扱ってはいけないという意味
で報告されたものであると考えられます。
できるだけ乳量を増加させることで生産向上を果たした例 (平均母豚数6670頭の農場)
平均総産子数(TB)
生存産子数
母豚あたりの離乳頭数
年間母豚当りの離乳頭数
平均離乳体重(kg)
平均離乳日令
平均泌乳量/日
平均授乳期泌乳量
2005 2006 2007 (1-8月)
12.1
13 13.4
11.2
11.9 12.4
9.4
10.7 11.3
22
25.9 27.4
5.8
5.5
5.6
18.9
18 17.3
8.2
9.5 10.5
154.1 170.9
185
(Pinilla et.al, AASV 2008)
*ギルトの選抜を136kg以上で初交配、12以上の乳頭に変更し、開始頭数を制限した
*妊娠期での脂肪の増加を極力控えた
*分娩誘発は特例以外はあまりお勧めしない
*分娩舎では出来るだけ食べさせた
*20日令以上で子豚を離乳する
今まで主流の生産方式だったSEW、早期隔離離乳法も曲がり角に来たようです。呼吸器疾病(特にAPP)などの除
去に一定の評価はされましたが、いかんせん、消化器疾病、髄膜炎などには全く無効ということで、逆に離乳体重を
大きくして行こう、そのためにはどうしたらよいかという報告も目立ってきています。
この試験トライアルはある育種会社の豚を使ったものです。離乳舎での実際のデータは2005年から2007年の半期
と長い期間の集計ですが、離乳日令はたいして延長されていません。すなわち依然として17~18日離乳を通してい
きながら、総産子数の増加を果たしながら総合的な改善につなげた点がポイントです。
数年来の育種改良の成果の方が実際にデータに表れはじめたのではないかといぶかるのは私だけかも知れません
が、同じ離乳日令でありながら1頭以上の生存産子数の増加が達成されているのは驚きです。結果的には、生産管
理面での重要性を説明したい意図があり、「授乳期間にどれほど食わせるか、そして乳量の増加(=子豚を大きく)に
還元できたか。」がポイントです。そのために研究者らは、青字で書き込んであるようにギルトの育成期からの管理が
重要であり、大きく育つしっかりしたギルトを積極的に選抜し、極度に太らせることなく分娩にあわせて最高のコンディ
ションで導入されてこそ結果が表れると提唱しています。
離乳体重を大きくするには離乳日令を伸ばすことはまず取り組む手段かもしれませんが、アメリカの事情では実は分
娩スペースを確保することが経営的になかなか難しく、最後の選択として筆者らは考えています。つまり、18日離乳で
システム化されたこの規模の農場がよいからと言われても容易に5日間の延長をすることは出来ないという背景もある
のです。そういうスタンスで、もう少しゆるいやり方がないかどうかを模索してみたところ、更新豚の育成から地道に行な
う管理努力に選抜圧を高めて、さらに丁寧に仕上げることこそが真髄ではないかというのが結論のようです。全く文句
は言えませんね。ただしあくまでもデータ上ですので、これに加えて離乳日令の延長を加味すればより高い目標が達
成できるかもしれません。
2009 年 11 月 グローバルピッグファーム㈱