第10回アジア化繊産業会議について (プレス

第10回アジア化繊産業会議について
(プレスリリース・速報版)
2015 年 5 月
日本化学繊維協会
第 10 回アジア化繊産業会議が、2015 年 5 月 14 日、15 日の 2 日間、中国・
北京にて開催されました。概要は以下の通りです。
1.開催までの経緯
1995 年、アジアの化繊産業の近年の発展が目覚ましく、そのあり方が世界の
繊維産業の動向に大きな影響を与える時代になり、アジアの化繊業界の代表が
一堂に会し、共通の関心事について率直に話し合い、共通の認識と理解を深め、
相互の信頼関係を築き上げることが重要になってきたとして、当時の日本化学
繊維協会・前田勝之助会長(東レ・社長)が、中国、インド、インドネシア、
韓国、マレーシア、パキスタン、フィリピン、台湾(チャイニーズ・タイペイ)、
タイの化合繊業界の首脳に呼び掛けて開催に至った会合です。1996 年に第 1 回
会議が日本で開催され、以降、9 回が開催されており、2015 年は開催担当が一
巡し 10 回目となります。
2.第 10 回アジア化繊産業会議の概要
第 10 回アジア化繊産業会議は、中国化繊工業協会(CCFA)が開催を担当し
5 月 14、15 日、中国・北京のソフィテルホテルにて行われました。
本会議には、9 ヵ国・地域(日本、中国、インド、インドネシア、韓国、マレ
ーシア、パキスタン、チャイニーズ・タイペイ、タイ)およびベトナム(オブ
ザーバー)から約 230 名が参加しました。日本からは越智化繊協会会長、浅野
同副会長、鈴木同副会長、上田同副会長をはじめ 35 名が参加しました。
本会議は、端アジア化繊産業連盟新会長(中国化繊工業協会会長)が議長と
なって進められ、需給、合繊原料、通商、用途開拓・製品開発、環境・省エネ
などアジアの化繊産業を取り巻く課題について、活発な議論が行われました。
今回の会議では、各国・地域からのカントリーレポートのほか、中国からの2
つの特別アジェンダ、以下の7つの特別テーマ報告がありました。
日本からは、越智化繊協会会長が特別テーマ1の報告を、浅野化繊協会副会
長がカントリーレポートの報告を行いました。
今回の会議を通して、世界最大の化繊生産国である中国からは、化繊業界が
「新常態」のもと、これまでの高成長から低成長時代への変革期にあり、供給
過剰への認識を意識する一方、量から質への転換を進める姿勢が鮮明になった
-1-
こと、各国・地域から、化繊産業は概ね厳しい状況に直面しており、差別化、
付加価値化の重要性が相次いで指摘されたことなどが特徴となっています。
特別アジェンダ(報告は中国)
(1)中国の繊維産業の第十三次五ヵ年計画の発展戦略
(高勇・中国紡織工業連合会副会長)
(2)新素材の発展、用途開拓
(東華大学・材料科学工程学院・朱美芳教授)
特別テーマ(報告国/地域)
(1)世界の化合繊需給の中長期見通し(日本)
(2)合繊原料需給の将来見通し(インド)
(3)韓国の FTA の現状と FTA が化繊・繊維産業に与える影響(韓国)
(4)困難な時代に化繊産業はいかにあるべきか(チャイニーズ・タイペイ)
(5)ハイテク繊維と伝統的繊維文化の結び付き(タイ)
(6)持続可能なイノベーションを通したファイバーの可能性の拡大
(インドネシア)
(7)化繊産業の第十三次五ヶ年計画の概要(中国)
会議の 2 日目には、参加国・地域の全会一致により、共同コミュニケが採択
されました。なお、次回(第 11 回)会議は、2017 年にインドが開催担当とな
って開催される予定です。
以上
<別添・参考資料>
1.第10回アジア化繊産業会議 プログラム
2.同 各国・地域参加者概数
3.同 特別テーマ1:世界の化繊需給の中長期見通し(サマリー)
4.同 コミュニケ(仮訳)
本件に関するお問い合わせ先:
日本化学繊維協会 業務調査グループ:鍵山
TEL:03-3241-2311
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<別添・参考資料>
1.第10回アジア化繊産業会議プログラム
5 月 14 日(木):会議 1 日目
時間
予定
08:30-08:35
オープニングセレモニー
新会長、新副会長、新事務局長の選任
各国地域代表団の紹介
08:35-08:50
歓迎のあいさつ(端・ACFIF 会長)
08:50-09:05
来賓による歓迎挨拶(王天凱・中国紡織工業連合会会長)
09:05-09:15
旧会長(Mayuree タイ合繊協会会長)のあいさつ
09:15-09:55
特別アジェンダ 1
「中国の繊維産業の第十三次五ヵ年計画の発展戦略」
09:55-12:10
各国地域によるカントリーレポート1
13:30-15:45
各国地域によるカントリーレポート2
15:45-16:25
16:25-16:30
特別アジェンダ 2「新素材の発展、用途開拓」
閉会(1 日目)
5 月 15 日(金):会議 2 日目
時間
予定
08:30-09:25
特別テーマ 1「アジアおよび世界の化繊の中長期需給見通しおよび
構造変化」(報告:日本)
09:25-10:35
特別テーマ 2「合繊原料需給の将来見通し」(報告:インド)
10:35-11:30
特別テーマ 3「韓国の FTA の現状と FTA が化繊・繊維産業に与え
る影響」(報告:韓国)
11:30-12:25
特別テーマ 4「困難な時代に化繊産業はいかにあるべきか」
(報告:チャイニーズ・タイペイ)
13:30-14:25
特別テーマ 5「ハイテク繊維と伝統的繊維文化の結び付き」
(報告:タイ)
14:25-15:20
特別テーマ 6「持続可能なイノベーションを通したファイバーの可
能性の拡大」(報告:インドネシア)
-3-
15:35-16:30
特別テーマ 7「化繊産業の第十三次五ヶ年計画の概要」
(報告:中国)(日本がコメント)
16:30-16:55
各国地域代表のコメント、コミュニケの採択
16:55-17:10
第11回アジア化繊産業会議開催担当国(インド)の挨拶
17:10-17:15
閉会挨拶
2.第10回アジア化繊産業会議
国・地域
中国
代表者数
104
各国・地域参加者概数
代表団長
端
中国化繊工業協会会長
インド
7
Rajen Udeshi 氏(Reliance ポリエステル部門代表)
インドネシア
10
Udey Gill 氏
(Indorama Ventures Indonesia 社長)
日本
35
越智
韓国
12
朴
マレーシア
6
Thian Poh Tan 氏
マレーシア紡織協会会長
パキスタン
6
Asif Jooma 氏
(ICI Pakistan 社 CEO)
チャイニーズ・タイペイ
38
詹
タイ
8
Mayuree
ベトナム
(オブザーバー)
2
合計
化繊協会会長(三菱レイヨン社長)
韓国化繊協会会長
台湾人繊公会理事長(宜進実業社長)
228
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タイ化繊協会会長
3.世界の化繊需給の中長期見通し(サマリー)
(1)長期的に繊維(化繊)は依然成長産業
・20 世紀以降の世界の繊維消費は、大きく 3 つの成長期に分かれる。
・1995 年頃から急速に拡大している第 3 成長期では、合繊の伸び、アジアを中心と
した発展途上地域の拡大が支えた。この傾向は中長期的に続く見通し。
(2)2020 年の世界の合繊需給バランス
・2020 年の世界の繊維需要の見通しは、年率 2.9%で増加、1.04 億㌧に達する。そ
のうち、合繊需要は同 4.1%増の 7,170 万㌧に増加する見通し。
2020 年の繊維需要見通し(1,000 ㌧)
-5-
・一方、同期間に合繊の設備能力は 9,340 万㌧に拡大する見通し。
・その結果、2020 年の合繊需給ギャップは、2,170 万㌧に達する。
・足下では需給ギャップは緩和する方向であるが、世界経済の減速懸念、原油安等
から波及する市況の混乱、金融緩和による過剰投資懸念などがあり、油断は禁物で
-6-
ある。
(3)新たな化繊時代に向けて
① テクニカルテキスタイルの拡大
・経済成長に伴い、アジア各国での消費構造が量から質へ転換が進み、その中でテ
クニカルテキスタイルの需要が拡大する見通し。例えば、中国、インドでは産業用
繊維需要が拡大しており、アジアにおける自動車生産の拡大や不織布需要の増加な
ど今後市場拡大が期待される。
・こうしたことから、アジアにテクニカルテキスタイルを中心とした新たなサプラ
イチェーンを構築することが重要である。
-7-
②標準化
・今後、世界的に高機能・高性能繊維の普及が期待されるが、消費者・ユーザーへ
の信頼、安心感のため、適切な評価方法の標準化が必要。
③ 環境および持続可能な社会への貢献
(4)結論
・繊維は依然成長産業。
・アジアは世界の9割の化繊を生産し、素材供給地域としての責任がある。
・共存共栄に向け「新たな化繊産業に生まれ変わる」必要がある。
以上
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4.第10回アジア化繊産業会議
共同コミュニケ(仮訳)
2015年5月15日
アジア化繊産業連盟
1996 年にアジア化繊産業会議が初めて開催された後、世界の化繊産業は構造調
整を続けてきた。先進国は定番の化繊から徐々に撤退し、ハイテク・高性能繊
維やライフサイエンスといった新たなフィールドに移行した。世界の化繊生産
は発展途上国へ徐々に集約し、特にアジアへのシフトは著しく、アジア化繊産
業の発展に絶好の機会をもたらした。同時に、ここ 20 年の世界経済を巡る複雑
な環境変化、原料価格の大幅な変動、世界の繊維産業チェーンにおける需給の
変化により、アジアの化繊産業は多大な困難と課題に直面している。
アジア経済の不透明性が増し、回復の遅れに直面する中、繊維産業および化繊
産業はアジア経済において依然重要な役割を演じている。化繊の絶え間ない用
途拡大の歩調に合わせ、テクニカルテキスタイルや高性能繊維の開発とともに、
持続可能なイノベーション能力がアジア化繊産業の共通の課題になっている。
アジア化繊産業連盟のプラットフォームの活用は、アジア化繊産業における、
情報、投資、研究開発面での協力の促進に役立つものとなる。
第 10 回アジア化繊産業会議は 2015 年 5 月 14-15 日に中国のソフィテル ワン
ダ 北京ホテルで開催され、中国、インド、インドネシア、日本、韓国、マレー
シア、パキスタン、チャイニーズ・タイペイ、タイの 9 カ国・地域のアジア化
繊産業連盟メンバーが参加し、ベトナムがオブザーバーとして参加した。会議
では、各国・地域の化繊産業の概要について情報交換を行ったほか、産業政策、
マーケティング、合繊原料、FTA、R&D、イノベーション能力等について中身
の濃い議論を交わした。
第 10 回アジア化繊産業会議では以下の結論に達した。
1. 世界的な産業構造の調整が進む中で、世界の繊維需要は今後も拡大を続ける
見通しである。新たな需要で多くを占めるのが化繊である。アジアの化繊産
業は積極的に新規用途の開拓に取り組む一方、需給の不均衡は産業の健全な
発展に対して懸念を招くことを考慮に入れつつ、適切な生産能力を保持する
必要がある。
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2. 中国経済が「新常態」に移行したことにより、アジアの化繊産業は従来とは
異なった度合いの産業調整圧力にさらされており、安定的でバランスの取れ
た産業発展を確実にするために、会議参加者は、データ・情報交換を引き続
き強化するほか、中長期の需給動向や開発ポリシーの調査を強化することを
合意した。
3. 製品開発や用途開拓におけるイノベーションが、アジア化繊産業の将来見通
しのキーファクターであり、将来的な技術、研究開発、市場開拓における協
力強化の重要性が認識された。
4. ライフスタイルの変化の特徴と結びついた、技術をベースとした開発という
新たな時代において、パーソナライズ重視のデザインとブランド構築への注
力は、新規市場の需要開拓の手助けとなる。
5. PTA、PX、MEG 等の化繊の主要原料の生産能力は急激に拡大している。安
定した石油価格とバランスのとれた原料需給は化繊産業の安定した発展に
貢献する。
6. RCEP を含む FTA は、アジア化繊産業の相互利益と win-win 関係の促進に
貢献する。また原産地規則の厳格な順守が強調された。
7. 環境保護と省エネはアジア化繊産業が直面し、責任を有する共通のプレッシ
ャーであり、環境技術や環境政策の交換を強化することの重要性とともに、
廃繊維リサイクルシステムの構築やバイオベースファイバーおよび同テキ
スタイルの開発に努力することの重要性が認識された。
8. 2015 年 5 月 14 日、マユリー・ディドパックディーチョル タイ化繊協会会
長を引き継ぎ、端小平 中国化繊工業協会会長が ACFIF 会長に選出された。
またラジェン・ウデシ インド合繊協会会長が ACFIF 副会長に、王玉萍 中
国化繊工業協会秘書長が ACFIF 事務総長に選出された。
9. 第 11 回アジア化繊産業会議はインドが主催国となり 2017 年に開催される。
時期および場所は主催国により 2015 年 7 月までに確定される。
以上
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