テナント保証金問題研究会中間報告書 「テナント保証金に関する今後の具体的な方策について」 平成 15 年 1 月 テナント保証金問題研究会 はじめに 我が国においては、小売業者がテナントとしてショッピングセ ンター(以下、 「SC」と記述)に出店するにあたって、SCを運 営するデベロッパー(以下、 「DV」と記述)と、本来の賃貸借契 約とは別に金銭消費貸借契約を締結し、多額の保証金を差し入れ る商慣行(以下、「保証金制度」と記述)が一般的であった。 これまでは、SCの破綻がないことを前提にDVとテナントと の間に契約が締結されてきたが、スーパー等の相次ぐ破綻により、 保証金制度との関連で、テナント側の資金繰りが悪化する事例も 多く見られるようになっている。 すなわち、現行法制下では、テナントがSCに納めている保証 金、建設協力金等(以下、 「保証金」と総称する)及び敷金は、S Cの破綻時には、一般債権扱いをされるのが通例である。 したがって、SCが破綻した場合、テナント企業はこれらの債 権の大半が返還されなくなり、事業の継続や他のSCへの移転が 困難になるという問題がある。 また、多額かつ長期間にわたる保証金は、それ自体が差入れや 返還等を巡る紛争の発生原因となっており、他にも、テナントの 財務体質を圧迫しているとの指摘や、我が国に進出しようとして いる海外企業にとっての参入障壁になっている等の指摘もある。 本研究会は、以上のような状況を踏まえ、SCの破綻に際して のテナントのリスクを軽減し、保証金の在り方や、保証金に係る 諸問題を検討するため、テナント、DV双方の関係者及び学識者 により、平成14年7月に設置され、これまで6回の議論を重ね、 今般、中間報告書を取りまとめたものである。 1 目次 Ⅰ.テナント保証金契約の現状 1. 典型的なテナント保証金契約 2. テナント保証金契約の歴史的経緯 3. テナント保証金の法的位置付け 4. テナント保証金に係る関係者の考え方 Ⅱ.テナント保証金契約の課題 1.テナント保証金契約の問題点 2.今後のテナント保証金契約のあり方 3.その他 Ⅲ.具体的対応策の検討 1.今後の保証金と敷金についての整理 2.テナント保証金契約ガイドライン 3.法的整理手続におけるテナント保証金の扱いについて Ⅳ.今後のアクションプラン 別紙1:テナント保証金問題研究会について 別紙2:法務省への提出意見 2 Ⅰ.テナント保証金契約の現状 1.典型的なテナント保証金契約 我が国においては、小売業者がテナントとしてショッピング センター(以下、「SC」と記述)に出店するにあたって、SC を運営するデベロッパー(以下、 「DV」と記述)と、本来の賃 貸借契約とは別に、概ね以下のような金銭消費貸借契約を締結 し、多額の保証金を差し入れる商慣行、すなわち「保証金制度」 が一般的であった。 ① テナントは、賃貸借契約の際に、DVに保証金を差し入れる。 (一般的には、額は月額賃料の40∼50ヶ月分程度。無担 保。 ) ② 保証金はその後、一定期間無利息で据え置かれる。 (期間は 10 年間が一般的) ③ DVは、その後数年間で均等返済する。 (期間は 10 年間が一 般的) 【DV】 保証金 ②10年間据え置き (無利息) ③10年間で均等返済 ① 差入れ (多くは無利息) 【テナント】 保証金 3 2.テナント保証金契約の歴史的経緯 高度成長期においては、消費が増大する中で商業施設が恒常 的に不足していたため、DVがSCを建設して、テナントが出 店すれば、テナントにも一定の売上の確保が見込まれた。こう した経済の右肩上がりの状況の中では、DVのSC建設のため の資金調達を主たる目的とする保証金制度は、DVが銀行等か らの借入が困難な場合であっても、テナントがSC建設に資金 協力しつつ、長期的な出店の権利を確保できるという点におい て、一定の経済合理性を有していたと評価できる。 しかしながら、時代の変遷とともに、本来の保証金の意味合 いが曖昧となり、敷金を別途徴収するもの、更には、建設協力 金とも敷金とも判断し難い曖昧な性格のもの(「営業保証金」等) も、見られるようになった。 近年、長期的な消費の低迷、バブル崩壊による不動産価格の 下落、大手小売業の経営破綻等、保証金制度が有効に機能する 前提となっていた経済社会情勢が大きく変化した。 その結果、テナント側から見ると、これまでの経済合理性が 失われた分、保証金制度が内包している問題点(長期、多額、 無利息、無担保・無保証、中途解約の際に返還されるか否かが 不明確等)が顕在化してきた。 このようなテナント保証金契約の実態を調査するため、経済 産業省は、詳細なアンケート調査等を実施した上で、平成12 年8月に「商業施設の差し入れ保証金を巡る課題と今後の方向」 を発表し、従来のテナント保証金契約が包摂する問題点等につ 4 いて議論を提起した。 その後、実際にDV破綻という、テナントとDVの賃貸借契 約時には予想外であった事態が相次ぎ、テナント企業にこれら の債権の大半が返還されなくなり、資金繰りが悪化するという 事例も増加しはじめ、報告書が指摘したリスクは、現実の問題 となっている。 一方で、DV側から見ると、最近では、消費の低迷の中で、 テナントとなる小売業の資金力が弱くなり、また、不動産価格 も下落しているため、これまでのように長期かつ多額には保証 金を徴収していないケースが増加している。 3.テナント保証金の法的位置付け (1)敷金 ・ 敷金は、その概念が、民法等により明確に定義されている。 賃料や損害の担保を目的とするもので、賃貸借契約の一部を 成している。賃貸借契約と契約の始期、終期は一致する。 ・ DVが破綻した場合でも、破産手続においては、保全措置が 講じられている。競売先へも継承可能である。 (2)敷金以外の保証金 ・ 敷金以外の保証金については、そもそもの法的位置づけが曖 昧ではあるが、一般に、保証金の差入れは、金銭消費貸借契 約と解釈されている。したがって、賃貸借契約と保証金契約 の始期、終期は一致しない。 5 ・ DV倒産時には、通例、一般債権扱いされる。競売先にも、 当然には継承されない。 4.テナント保証金に係る関係者の考え方 保証金問題についての関係者の考え方は、以下のように、様々 である。 ・ 基本的には、保証金制度は廃止に向かうべきである。 ・ テナントとして、出店価値の高いSCならば、保証金を支払っ てでも出店したい。 ・ テナントにとって、片務的な契約条項が問題。特にDV側の不 十分な情報開示と不明確な違約金規定が問題。 ・ DVとして、今後も、資金調達方法の一つとしての保証金制度 を廃止する考えはない。 (その理由としては、①保証金制度は、長年続いてきた契約ス タイルであり、高額な保証金を支払っても出店を希望するテ ナントがある以上、廃止する必要はない。②廃止するとして も、銀行からの借り入れが厳しい上に他の資金調達方法も整 備されていない現況では時期尚早である。 等) 6 Ⅱ.テナント保証金契約の課題 1.テナント保証金契約の問題点 (1)保証金は、賃貸借契約とは別個の金銭消費貸借として規定され ている。このため、テナントが賃貸借契約期間終了前に中途退 店した場合には、保証金の返還を巡って、紛争が生じやすい。 また、売却や競売によって所有者の移転があった場合には、 敷金と異なり、 保証金の返済債務はDVの新所有者には継承さ れない。 (2)保証金は、多額(平均して月額賃料の40∼50ヶ月分程度) かつ一定期間据置後の長期返済(一般的には10年据置、10 年間で無利子の均等返済)である。このため、テナントにとっ て財務的に大きな負担となっている。 (3)保証金には、その返還請求権について、担保設定あるいは連帯 保証人が置かれることはほとんどない。このため、DV破綻時 には、一般債権扱いされてしまい、大部分が返還されなくなる リスクが高い。 (4)DV側の情報開示については、契約上定められていないのが通 例であるため、テナントはDVが破綻の危機にあっても、リス クを察知することができない。 7 2.今後のテナント保証金契約のあり方 Ⅰ.に述べたような状況の下、Ⅱ.1.に述べた問題点を踏ま えると、保証金の歴史的な役割は最早終了しつつあるのではない かとの認識が、DV、テナント双方で大勢を占めるようになって きた。 そもそも、SC経営は、DVの先行投資とテナントの賃料負担 という、DVとテナント相互の協力によって成立するものである。 テナント契約の大原則は、DVとテナントの片務的ではない、対 等な立場による契約の締結であり、今後のテナント契約は、高度 成長期を背景とした多額・長期間の保証金を介する不透明で現状 に即していない形態から脱却し、DVとテナントが対等な立場で、 協力して事業を運営していくことを基本とする、DV、テナント 双方の義務が契約事項として明確になっている透明な契約とする ことが必要である。これが、テナント保証金問題を、本質的な解 決に導くものと考えられる。 経済が成熟化する中で、消費者のニーズを的確に把握して、小 売業としてのSCの魅力を向上させるためには、DVとテナント が共存共栄の理念のもと、相互に協力していくことがますます重 要になっている。保証金契約は、確かに事業者間の合意による契 約ではあるが、契約が片務的であることにより、一方のみに過大 な負担を生じさせているとすれば、DVとテナントとの真の協力 は困難とならざるを得ない。 8 また、小売業のビジネスサイクルが短期化している中で、SC がその活力を維持するためには、魅力あるテナントを機動的に入 居させていくことが経営戦略上必要となっている。したがって、 非常に長期間の契約関係を前提とした保証金制度は、DVにとっ ても合理性に乏しいものとなっていると考えられる。実際に、先 駆的なDVは、建設協力金的な意味での保証金を既に取り止めて、 敷金のみを徴収している。それにとどまらず、既に徴収した保証 金のテナントに対する返還を積極的に進めているDVもある。ま た、最近のテナント契約における契約期間は、5∼6年と、従前 に比べて短縮化傾向にある。 更に、小売業の国際化が進展する中で、我が国独自の不透明な 保証金制度は、国際的にみても通用し難いものとの指摘もある。 海外においては、むしろDV側が出店奨励金を供与することで優 良テナントを誘致する場合もある。 以上の点を考慮すれば、SCの今後の健全な発展のため、将来 的には、敷金以外の性格を有する保証金については原則として廃 止し、敷金に一本化されるべき方向にあると考えられる。 ただし、現時点においては、一部のDV側に敷金以外の性格を 有する保証金のニーズもあり、契約自由の原則からしても、当事 者間で合意に達した場合に敷金以外の性格を有する保証金を排除 することはできない。しかしながら、その場合にあっても、上記 の問題を可能な限り改善するため、後述のガイドラインに沿った 内容とすべきである。 9 3.売上預り金等について (1)売上預り金問題について 売上預り金については、DV破綻時には、和解等により返済 される場合が多いものの、法的には一般債権扱いされてしまう ことについて、テナント側からの問題提起がある。ただし、本 研究会においては、テナント保証金に焦点を当てたため、売上 預り金問題についての具体的対応策等は検討しなかった。 なお、売上預り金制度については、テナント側からも、金銭 の管理、防犯の観点から必要であるとの意見が多かった。また、 この問題に関しては、テナントに対する払い戻しの回数を増や したり、テナント名義の管理口座を開設してDVとテナントが 出金管理契約を締結する等の方策により、リスクを軽減できる 可能性があるとの指摘もあった。 (2)その他の問題について 本研究会においては、銀行以外からの新たな資金調達方法、 保証金向けの保険制度の創設等の提案もなされたが、ガイドラ イン(後述)の早期の普及を当面の主要課題とし、これらの問 題については、後日の検討課題とすることとした。 10 Ⅲ.具体的対応策の検討 1.敷金と保証金についての整理 (1)敷金 ・ 敷金は、家賃不払い及び原状回復費用に関するテナントの 債務不履行の担保として預けられる金銭であり、通常、賃 貸借契約と連動する。 ・ 現行の倒産法制においては、敷金返還請求権は、テナント がDVに店を明渡した後、はじめて発生する権利であるた め、実際には賃料不払い等が行われていない限り、賃借人 側からの相殺は行えない。 このため、契約上、敷金に関して、破綻時には返還請求権 の期限が到来することを定め、または、破綻後の賃料の寄 託請求等の手続を定めることによって、倒産法制上の相殺 が円滑に行われるようにすべきである。 (注)なお、敷金の額については、商業施設には、テナント退 店後大幅な改修の必要がある場合もあり、立地等により 異なるが賃料の20∼30ヶ月分程度の敷金は必要で ある、との専門家の見解もある。 (2)保証金 ・ 敷金の性格を有する部分を除いた保証金は、基本的には、 SCの建設費用負担等を目的とする金銭消費貸借契約に係 11 る金銭である。 ・ 保証金契約においては、契約の始期、終期、利率、中途退 店の際の返還規定、違約金の額、違約金発生事由、破綻時 における保証金の扱い(返還の期限の到来に関する規定等) 等の事項について、明確にすべきである。 (敷金・保証金の整理については別紙参照) 2.テナント保証金契約ガイドライン (1)上記の考え方が着実に実行に移されることを促すため、日本シ ョッピングセンター協会は、日本専門店協会とともに、以下に 示す内容を含む「今後のテナント保証金契約の作成・締結に際 しての標準的に規定すべき事項に関する指針」(以下、「ガイ ドライン」と記述)を業界自主基準として早急に策定し、関係 者への普及に努めるべきである。 ガイドラインに盛り込むべき内容 1. テナント契約は、DVとテナントが、対等な立場において 締結し、双方の義務を契約事項として明確にする。 2. 今後のテナント保証金については、その目的・従来不明確 であった契約事項を明確化するとともに、基本的には、敷 金に一本化することが望ましい。 3. 当事者間の合意により、今後、敷金以外の保証金を残す場 合には、以下のように規定されることが望ましい。 12 ① 金銭消費貸借契約として位置づける。 ② 可能な限り、契約期間の短期化、金額の低額化を図る。 ③ 定期的に、DVからテナントに対して十分な経営情報(会 計情報、業務情報等)を開示する。(開示が困難な未上場 企業においても、財務情報等、可能な限り開示に努めるも のとする。 ) ④ 可能であれば、返還のための担保、連帯保証人を設定する。 ⑤ 賃貸借契約の中途解約時における返還規定を定める。 ⑥ DVの経営リスク発生時(債務超過、手形不渡り等)及び DV破綻時における取扱規定(保証金返還の期限の利益喪 失を規定する等)を明確化する。 4. なお、敷金についても、家賃不払い及び原状回復費用に関 するテナントの債務不履行を担保する金銭であるという 性格を明確にし、その目的を外れた、高額な敷金に関して は、低額化を図ることが望ましい。 (2)なお、既存のテナント保証金についても、可能な限り、本ガイ ドラインを参照しつつ、条件変更等が行われることが望ましい。 3.法的整理手続におけるテナント保証金の扱いについて テナント保証金契約ガイドラインは、今後の契約に際して契 約期間の短期化、金額の低額化により、DVの破綻からのテナ ントのリスクの軽減を図ろうとするものであるが、既に締結さ れたテナント契約における保証金についても、一定の法的な保 13 護を要望する意見も多い。 このため、現在検討中の破産法等の改正において、関係協会 及び経済産業省から、法務省等に対し、保証金の法的な位置づ けを明確にするとともに、敷金等の賃料債権との相殺に関する 規定を整備するだけでなく、その返還請求権に一定の優先権を 付与する方向での見直しを行うよう、検討を要請しているとこ ろである。(別紙2参照) 更に、現在既に破綻しているDVに係る法的整理手続につい ても、経済産業省は、本報告書を踏まえた問題意識を、裁判所、 管財人等に伝え、破綻処理におけるテナント保証金の扱いに関 して考慮を要請すべきである。 14 Ⅳ.今後のアクションプラン (1)日本ショッピングセンター協会は、日本専門店協会とともに、本 報告書に基づくガイドラインを早急に策定し、業界企業への普及 に努める。今後、両協会は、アンケート調査等によって本ガイド ライン策定後の契約実態と具体的な問題点をチェックしつつ、今 後の課題を検討していく。 本研究会は、再度開催する。 (原則1年後を目途) (2)両協会は、出店契約に関する相談を、業界企業から随時受ける。 具体的には、日本専門店協会は、 「出店契約相談窓口」を協会 内に設置する。日本ショッピングセンター協会は、既に定期的に 実施している専門家によるショッピングセンターの経営相談業 務を活用する。 15 保証金と敷金についての整理 保証金の現状 保証金 今後の敷金 名称 保証金、営業保証金、 建設協力金等様々 保証金 敷金 契約の種類 不明確 金銭消費貸借契約 賃貸借契約の一部 16 金額・期間 高額・長期間 低額・短期間 家賃不払い及び原状回復費 用の担保として妥当な程度 (賃料の20∼30ヶ月分程度 は必要との専門家の意見も ある) 返済方法 分割返済 分割返済 据え置き・明渡後返却 DV破綻時には基本的に DV破綻時の取扱い 一般債権扱いされる。 DV破綻時には、返還に係る期 限の利益が到来する旨、規定す るべき。 別紙1 テナント保証金問題研究会委員等 [委員] (50音順) 奥住 正道 (株)奥住マネジメント研究所 所長 上野 文雄 (株)ルミネ 専務取締役 小野原雪雄 (株)奥住マネジメント研究所 専務取締役 木村 泰三 (株)やまと 常務取締役 髙橋 惇 (株)ららぽーと 代表取締役会長 筒井 光康 (株)ソフトクリエイション 代表取締役社長 藤田 浩司 奥野総合法律事務所 弁護士 安井 研一 エステール㈱ 店舗開発部長 渡辺 昭 渡辺昭法律事務所 弁護士 [オブザーバー] 川口 浩一 (社)日本専門店協会 専務理事 関 昇 (社)日本ショッピングセンター協会 専務理事 17 別紙2 「破産法等の見直しに関する中間試案」に関する意見 平 成 14 年11月28 日 経 済 産 業 省 ・商業施設の不動産賃貸借契約においては、商慣行として、商業 施設に入居するテナントが商業施設の運営者である賃貸人(以 下、 「オーナー」という。 )に対し、高額の敷金・保証金(※) を差し入れているケースが多く見られる。 ・近年のスーパー等の相次ぐ破綻に示されるように、敷金を差し 入れられたオーナーが破綻する事例も多く見られるようになっ ているが、現行法制下では、テナントがオーナーに差し入れて いる敷金・保証金の返還請求権は、オーナーに法的倒産手続が 開始された場合には、一定の制限がついた賃料との相殺規定は あるものの、一般の倒産債権としての取扱いを受けるのが通例 である。 ・したがって、オーナーに法的倒産手続が開始された場合、テ ナントにはこれらの敷金・保証金の大半が返還されない事態 が生じ、零細事業者であることが多いテナントにとっては、 事業の継続や他の商業施設への店舗の移転が極めて困難にな るという状況が生じている。 ・このような背景を踏まえ、当省としては、今般の破産法等の 見直しにおいて、敷金あるいは敷金とみなすことができる保 証金については、その法的な位置づけを明確にするとともに、 18 敷金等の賃料債権との相殺に関する規定を整備するだけで なく、その返還請求権に一定の優先権を付与する方向での見 直しを行うよう、要望する。 ・ なお、当省においては、上記のようなオーナーとテナントと の間における賃貸借契約に係る事情を踏まえ、本年8月より、 (社)日本ショッピングセンター協会、 (社)日本専門店協 会の協力を得て、有識者で構成する「テナント保証金問題研 究会」を設置し、今後のテナント契約のあり方や、適切な破 綻後の処理の方法等について議論しているところである。今 回の破産法等の見直しに関するパブリックコメントに際し ては、 (社)日本ショッピングセンター協会及び(社)専門 店協会からも意見が提出されるものと思われるが、これらの 意見についても、オーナー側、テナント側、それぞれの業界 の総意として、十分なご配慮をいただきたい。 ※ 「保証金」という名称でテナントからオーナーに差し入れら れた金員についても、賃料の12か月分程度の金額相当部分 については、敷金としての性格が強いと考えられる。 以上 19
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