No.2 情報伝達エラーを防止するためには

No.2
村山医療センター
発行日:2012/2/24
発行者:医療安全管理室
情報伝達エラー防止に向けて(第2回)
前回の SBAR についてのニュースはいかがでしたか。
今回はチームのメンバーシップについて考えてみたいと思います。
こんなこと経験ありませんか…
医療チームで手術などの 1 つの業務にあたっていても、
メンバーそれぞれの「わかっていること」が違っていることがありませんか?
「誰かがやってくれている」と思っていたら、
結局誰もやってくれていなかった…なんてことありませんか?
チームで一つのことを行うときは、チームのメンバーが共通の理解・判断・態度を持つことが大切なので
す。前回もお話ししたように、さまざまな職種のスタッフが一人の患者にかかわる現代の医療では、
スタッフ間でも患者との間でも、共通認識を持つのが難しく、トラブルも起きやすくなります。
「わかっているだろう」
「やっておいてくれるだろう」は、情報伝達のエラーを招くだけでなく業務の
「抜け」が起こってしまうかもしれません。それぞれが違う状況認識や判断のままで行動すると、食い違い
が生じ、こんなはずじゃなかった・・・と困ることがあります。
どうしたらよいでしょう?
自由で多様な思考も大事にしながら、共通認識を意識して確かめる。
そのための方法が、「短い打ち合わせ」です。
これらは手術前や患者が急変したとき、他の人やチームに業務を引き継ぐとき、緊急事態で混乱したとき
など、忙しいときほど有効です。
①業務開始前の打ち合わせ(Briefing ブリーフィング)
手順や役割の準備状況の確認を行ってから業務開始です。
②業務の途中でも手を止めて作戦会議(Huddle
ハドル)
状況変化や緊急事態が発生したら計画を調整するなど、すぐに打ち合わせを行います。
③業務の終了直後にまとめ(Debriefyng
デブリーフィング)
この業務を通しての、コミュニケーション、役割と責任分担、状況モニター、作業量、
相互支援、エラー回避、うまくいった点・改善すべき点などを振り返ります。
実は、スポーツの場面でも同様なことが行われています。
途中で仲間が集まって
作戦会議!!
これは、②のハドルですね。
なぜ情報伝達エラーは起こるのでしょう??
❶自分の判断に自信がもてない
それが“間違い”であるという確信がもてないとき。
「何か特別な理由があって、ふ
だんとは違うことをやっているのかもしれない」などと思うと、指摘できなくなる。
❷相手が上司や先輩である
相手が自分より経験が豊富だったり、地位が高かったりする場合には、疑問を伝え
たり誤りを指摘したりすることが困難になります。
❸人間関係の悪化が心配
指摘によって相手の機嫌を損ね、人間関係が悪くなるのではないかと思うときです。
しかし患者に安全で質の高い医療を提供するには、このような心理的な壁を乗り越え、自分が疑問に感
じたことや他の人の誤りなどをその場で適切に伝えていかなくてはいけません。
どのようにすればよいでしょうか?
それには、医療スタッフが場面に適した
コミュニケーションスキルを身につけることが方策の1つ!
そしてこのような発言が出来る職場文化・病院文化にすることが大切です。
疑問を伝えるコミュニケーションスキル
①2回チャレンジルール:two-challenge rule
自分の行ったことに対して、相手からきちんとした返事がないときには、相手に確かに聞こえたことがわか
るまで、もう一度、気がかりなことをはっきりと声に出して伝えることが、あなたの責任です。
“疑問があるときは2回言いましょう”という意味を込めて「two-challenge rule」とよんでいます。
②安全に関わる丌安を伝える:CUS
患者の安全が脅かされていると感じたら、次のように、自分が危険を感じているということをはっきりと
言葉にして伝え、誤ったことが実施されてしまわないようにする必要があります。
「私は気がかりです」
(I am Concerned)
「私は丌安です」
(I am Uncomfortable)
「これは安全の問題です」
(This is Safety issue)
このようなスキルを、英単語の頭文字から「CUS」とよんでいます。
2 回にわたって情報伝達エラーを防ぐスキルを紹介しました。
読むだけでは現状は変わりません。各職場で意識して使ってみて下さい!!