ATP試験問題2014年秋 経営

事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題1)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 近年、製品・サービスの市場における普及スピードは加速し、IT化とグローバル化の進展により、
このスピード感は早まりこそすれ、遅くなるとは考えられない状況にある。この結果、先行者が大き
な成功を収める構図となりやすい。
② 加速する変化に対応して、スピード感ある事業化を実現するためには、必要な経営資源(知財、技術、
人材等)を、自前主義にこだわらず外部から調達すること(オープン・イノベーション)が重要な課
題の一つとなっている。
③ 企業の競争力を規定する要素として、価格や技術のみならず、知的財産、標準、民間規格等の民間ルー
ル、更にはこれらを規定する各国の「規制」
「制度」までもが大きな影響を与えている。このため積
極的にこれらを組み合わせることにより、自社/自国製品の競争上の優位性の確保をはかろうとして
いる海外企業/政府もある。
④ 日本では女性の就労率が高まるにつれて出生率も低下する傾向にあり、この傾向は成熟化が進む先進
国ほど顕著であり、高齢化とならんで深刻な問題となっている。
⑤ 人口減少に伴い、日本国内内需の拡大に大きくは期待できない中で、地域経済を中長期的に持続可能
なものにするためには、地場の産業・ビジネスによる域外からの富の獲得や、地域における富の循環
に寄与する産業・ビジネス、地域の課題を解決するビジネスの二つが両輪として機能することが必要
である。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題2)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① ワンマン経営の問題点として、会社の規模と経営者の能力の整合という問題と、従業員の変質の問題
が挙げられる。企業が大規模化しビジネスの範囲が拡大した場合に、小規模な頃と同様な感覚で経営
判断することによる不整合が起こる可能性があり、また、ビジネス範囲拡大によって従業員も増加す
ることとなり、創業当初の人事マネジメントとは異なった考え方や方法が必要となる。
② テクノロジーは、産業構造の変化を推進する最大の原因である。小さな技術的変化は、企業不適合に
直結するものではないが、大きな変化への対応が遅延すると、企業破綻の原因になる。インターネッ
ト環境活用の遅れ、環境問題への対処遅延などが、経営破綻の原因となるケースがでてきている。
③ 収益性の低迷は、市場の読み誤り、すなわち、需要の伸びが遅いために損益分岐点売上高にすら至ら
ないことや、参入企業が増えたために価格競争に陥って限界利益率が低下したことなどが原因として
挙げられる。これらの原因を短期間で取り除くことは困難であり、収益性回復までに時間を要するこ
とも否めない事実である。
④ 企業はときに、コア事業とのシナジー効果を狙って、他事業に進出する。このような多角化戦略は、
買収した企業がコア事業と関連性が低い場合には75%が撤退しているという指摘もある。大幅な成
長が望めない低成長安定時代ならばともかく、経済規模が拡大し続ける高度成長時代などにおいては、
コア事業との関連性が低い他事業への多角化戦略は企業の存続にとって大きなマイナス要因にもな
り得る。
⑤ 競争優位とは相対的な概念である。そのためその源泉を確保しているというだけでは、優位にあると
はいえない。競争優位がない状態で再生する企業もあるが、その場合企業の収益性は低く、将来更な
る危機に直面する可能性が高い。また、経営破綻の危機に直面している企業は、一般に競争劣位であ
ることが多い。その結果、経営陣が最善の努力を尽くしても、倒産に追い込まれることもある。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題3)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 一般にキャッシュフローの悪化は企業価値の低下をもたらす。これはDCF法などの企業価値算定の
基礎となるフリーキャッシュフローが減少し、理論上の企業価値が減少するという側面のほか、
キャッシュフローの枯渇が企業活動の停止に直結することから、経営上のリスクがより大きくなると
いう意味合いもある。
② キャッシュフローが悪化する原因の一つに売上の減少がある。売上の減少によりキャッシュフローが
悪化する理由は、必然的に月商が減少し経常運転資金が増加するうえ、人件費に代表される固定費負
担が相対的に重くなるからである。
③ キャッシュフローが悪化する原因の一つに在庫の増加がある。在庫の増加によりキャッシュフローが
悪化する理由は、経常運転資金が増加するほか、在庫資金を借入金により調達している場合は金利が
発生し、また倉庫使用料や管理のための人件費などの管理費負担が増えるからである。
④ キャッシュフローが悪化する原因の一つに売掛金の増加がある。売掛金の増加によりキャッシュフ
ローが悪化する理由は、売掛金は販売代金の未回収という状態でありいわば資金が寝ている状態であ
るため経常運転資金が増加することに加え、一般に貸倒の発生する確率が増えるからである。
⑤ キャッシュフローが悪化する原因の一つに過剰設備投資がある。特に機械や車両などの設備投資を借
入によって行いかつ減価償却の耐用年数より借入金の返済期間が短い場合には、その返済額が減価償
却費以上にキャッシュアウトすることがあるので、財務の健全性に懸念があると判断される場合があ
る。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題4)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 企業再生に取り組む最初の段階として、対象企業が現時点で置かれている状況を把握することが必要
である。具体的には、経営破綻に至った要因や資金繰りの状況、ステークホルダーの管理及び必要な
危機管理に関する大まかな把握などであり、デューデリジェンスの実施に向けて重視すべき調査事項
がどこにあるかの事前把握を行う段階である。
② 対象企業の状況把握は、企業診断の第一段階であり、その主な診断目的としては、直近の短期間を生
き残ることができるかどうか、中長期にわたっても生き残ることができるかどうか、企業が取りうる
選択肢は何があるのか及び個々のステークホルダーにとって最大の価値を提供しうるものはどんな
再生スキームか、再生が必要な段階に至った主要な問題はどこにあるのか、どのステークホルダーか
ら支援が見込めるのか、現経営陣の事前評価などがあげられる。
③ 状況把握の主目的のうち、直近の短期間を生き残れるかどうかは目前に差し迫った事項に関する対応
がある。資金ショートが迫る中で状況把握に与えられた時間は少ないが、破綻に至る企業は通常経営
の至るところで問題を抱えており、どこから新たな問題が出てくるか分からない。そのため最初の段
階で広く細かく問題を網羅的に把握し、極力問題の認識に漏れを発生させないことを最優先とするこ
とで、緊急時対応段階において不慮のトラブル発生からの混乱を回避することができると考えられる。
④ 状況把握を含めた企業診断のアプローチで重要な要素の一つは、外部ステークホルダーへの対処であ
る。日に日に企業価値が毀損していく対象企業においては、外部ステークホルダーはターンアラウン
ド・マネージャーに対し迅速な回答を要求する。そのため診断の途中であっても中間報告を行うなど、
必要に応じてタイムリーにコミュニケーションをとることがステークホルダーからの信頼を得る意
味でも重要である。
⑤ 状況把握を含めた企業診断のアプローチで重要な要素の一つは、客観性を保つことである。たとえば
管理職や従業員からのヒアリングなどでは、企業状態が悪化している現状においては、仮説や意見と
事実が明確に区別されずに語られることも多い。事実と異なる内容を信じてしまうと、場合によって
はその後の経営再建策の方向性を大きく誤る事態にも陥りかねない。そのためヒアリング内容をその
まま鵜呑みにせず、他の資料や複数人にヒアリングするなど、事実関係の裏を取ることが必要である。
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経営
問題5)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 再生企業の経営実態や企業価値の把握に必要なプロセスの一つに財務デューディリジェンス(財務D
D)がある。これは再生企業の財務状況を総合的に判断するための情報を収集する一連の手続を指し、
実施するうえで必要な基本資料は決算書/申告書/総勘定元帳などのトラックレコードである。
② 財務DDには、金額そのものを見て判断する実数分析と、関係比率や構成比率などの比率分析の方法
があり、いずれも概ね過去3~5年分程度のトラックレコードを見て傾向値を把握することが求めら
れる。また、業界標準指標との照合による標準比較分析や特定企業との比較分析なども有効である。
③ 貸借対照表に関する財務DDでは資産と負債の客観性を分析する。おもなチェックポイントは、受取
手形・売掛金などの売上債権の回収期間の傾向や、回収可能性、支払手形・買掛金などの仕入債務の
支払期間の傾向、売上債権と仕入債務のバランス、棚卸資産の回転期間などである。特に売上債権や
棚卸資産は粉飾に利用されることも多いので注意が必要である。
④ キャッシュフローに関する財務DDでは、事業に必要な資金が十分確保されているかどうかを分析す
る。もしそうでない場合は、資金不足に陥る原因は何かなどを探り出すと同時に、短期的・長期的な
資金繰りに不安はないか、将来的にもCFを生み出す経営体質であるかどうかなどを判断する。
⑤ 財務DD終了後、最終的な目標を定めその目標を具体的に実現するための手段を策定し、その手段が
きちんと遂行されているかどうかを定量的に測定する指標を決めることが重要となる。KPIは、目
標に対する達成度合いを定量的に表すものであり、KGIは目標達成プロセスの実施状況を計測する
ために、実行の度合い(パフォーマンス)を定量的に示す。
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経営
問題6)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 経営陣交代の効果として、旧経営陣の経営責任を認めるとともに新たな経営体制で再生に取り組むと
いうメッセージを社内外に伝えられるということがある。旧経営陣に対する不信感をもつ従業員が多
い状況下では、経営陣交代により、変革への期待感やモチベーションの向上につながることも考えら
れる。
② 経営者の私財提供の方法としては、
「会社の借入金を経営者が個人保証している場合には、経営者の
個人財産を処分した代金などにより代位弁済する」
「経営者の所有する不動産に抵当権が設定されて
いる場合には、当該不動産を売却する」
「銀行からの借入金を経営者が肩代わりする」などが挙げら
れるが、経営者が銀行などに保証債務の履行を行っても、経営責任の一部とみなされ、会社に対する
求償権は認められない。
③ 債権放棄等による財務再構築では、通常、経営責任や株主責任の追及が必須条件とされる。私的整理
ガイドラインにおいても、窮境原因を招いた経営者と、適正なガバナンス機能を発揮できなかった株
主の責任を適切に問う姿勢が重要であることは同様である。しかし、一方では中小・零細企業の再生
において、従来の経営者の存在が欠かせない場合が多いことも事実である。このような場合には、会
社を窮境に至らせた責任と、会社の再建にとってなくてはならない人材かどうか、両者のバランスを
十分に検討した上でこれまでの放漫経営に対する「けじめ」をつける方法を考えることになる。
④ 企業再建においては、経営陣の入れ替えの是非や経営責任をどのように明確にするかが必要不可欠で
ある。その経営陣の在任期間の中で企業の業績・財政状態が悪化したにもかかわらず、まったく責任
を問われないということでは、従業員や周辺のステークホルダー、世間は通常納得しない。
⑤ 経営責任には金銭面・経済面での責任、取締役等の地位(身分)の責任、刑事責任などがある。金銭
面・経済面の責任は、日本の中小企業の場合、金融機関からの資金調達に経営者の個人保証を付すこ
とも多く、保証の履行のために個人財産を処分して弁済することで経済的責任を負うとも言える。た
だし、大企業の場合でもオーナー系の会社であれば私財提供は考えられるし、また、取締役に対する
株主代表訴訟などでの損害賠償請求が考えられる。
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経営
問題7)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 営業とは、一般に顧客に対し自社の商品やサービスの購入を促進し、最終的に販売という形で結実さ
せる一連のアクションをさし、収益の源泉である売上を獲得するための最も根源的な企業活動の一つ
である。
② マーケティングには数多くの定義があるが、
「公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動」
もその一つである。ここでいう「総合的活動」には、ブランディング、商品やサービスの開発、企画、
設計、リサーチや分析などが幅広く含まれる。
③ マーケティングと販売の最も大きな違いはその「対象」であるといえる。すなわち、営業活動は目の
前に存在する顧客に対して行われることが通常であるが、マーケティングは顧客のように具体的な実
体の見えにくい「市場(マーケット)
」に対してその活動が行われる。そしてマーケティングでは、
市場に対しニーズ等に応じて「セグメント化」や「モデル化」を行うこともその特徴である。
④ BtoC の購買プロセスでは、まず案件化がなされ、最終的な意思決定を含め複数の関係者もしくは関係
部署が関与し、合理的に購買活動が展開されることが最大の特徴である。また意思決定に専門的な知
識や技術が必要とされる場合には、外部の専門家等に情報提供を求めることも少なくない。
⑤ 営業とマーケティングはどちらも重要な企業活動であり、ビジネスを拡大するためには、両者の機能
や役割は補完し合わなくてはならない。近年ではログ解析や、ビッグデータ解析等により市場の構造
やターゲット像のモデルもより正確に描けるようになってきており、こうしたマーケティング活動が
販売効率をより高めることを可能にしている。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題8)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 組織風土は社風、企業文化などと表現され、集団がもっている暗黙のルール、規範、土壌、文化のこ
とであり、組織のメンバー一人ひとりの意識や行動様式の集合体と言える。これはいわゆる「7Sモ
デル」の「ハードの3S」に属し、可変性の乏しい要素の一つといわれている。
② 今、企業は拡大成長が望めない市場環境の中で最後の生き残りをかけた改革を急いでいる。ボーダー
レスの大競争時代を生き残るために、企業は戦略を見直し、仕組みの再構築の真最中である。また日
本的経営の三種の神器といわれた終身雇用、年功序列賃金、企業内労働組合も見直され始めた。
③ バブル崩壊以前の右肩上がりで横並びの時代、企業の社員は「依存」と「同質」のマインドに染め上
げられてきた。この「依存」と「同質」の社員こそが経営効率を高める原動力になったのである。と
ころが現在、社員は「自立」と「個性」に向けて意識を改革することが迫られるようになった。とい
うのも、拡大成長が望めない市場では独創性のある商品、サ-ビスが求められるようになり、個性的
な企業でないと存在価値が認められなくなってきているためである。
④ 意識改革はその重要性/スキルなどを知識として学ぶだけでは足りず、その「知識」を「実践」に転
換することが極めて重要である。
「知識」の習得と日常での「実践」をくり返すことを通じて、組織
に新しい意識が浸透することが期待できる。
⑤ 大企業のような巨大組織では個人の活動が組織を変えることを実感できる機会は少ないかもしれな
いが、組織論的には大組織といえども小組織の連合体に過ぎないというという考え方も存在する。現
実に一つの職場の小さな改革が、あちこちの職場に波及し組織全体に影響を及ぼし再生に寄与した実
例は少なからず存在する。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題9)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 税法上、上場有価証券等の評価損の計上ができる事実に規定する「有価証券の価額が著しく低下した
こと」とは、当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね5
0%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいう。
② 税法上、在庫の評価損の計上ができる事実に規定する「著しい陳腐化」とは、
「棚卸資産そのものに
は物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価
額が今後回復しないと認められる状態にある」ことを指し、単に物価変動、過剰生産、建値の変更等
の事情によって低下しただけでは、これにあたらないことに留意する必要がある。
③ デューディリジェンス等により在庫にいわゆる長期不良在庫の存在が確認された場合は、できるだけ
すみやかに廃棄等の処分を行うことが望ましい。ただし、長期不良在庫の処分は廃棄損となり貸借対
照表ならびにキャッシュフローにネガティブな影響を及ぼすので、再生途上にある企業では実施が困
難であることが多い。
④ 長期不良在庫の廃棄等を行う場合は、決算上の影響のほか税務上の影響も考慮する必要がある。特に
在庫処分は利益操作とみなされる可能性もあるので、廃棄に当たってはその実態が明らかになるよう
な疎明資料(写真、廃棄業者の領収書等)を準備しておく必要がある。
⑤ 税法上、貸付金等の金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収で
きないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理
をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を
処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできない。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題10)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 企業再建において暫定的な安定を図る段階でのマーケティング戦略では、マーケティング機会の分析
に基づき長期的な経営戦略目標、市場内での地位、製品の特性、製品の成長段階などが考慮される必
要がある。
② 暫定的な安定を図る段階でのマーケティング戦略において、まずマーケティング目標が決められる必
要があるが、その際利用される計数的指標には、一般的に売上高、利益率、利益額、マーケットシェ
アなどがあげられる。
③ 暫定的な安定を図る段階で設定されるマーケティング目標で指標を利用する場合、需要や競争状況な
どの外部環境や、資金繰り等の内部資源など制約条件が存在する。そのため各指標の全てについて高
い目標を設定することは合理的ではなく、状況によってどの目標を重視するかの優先順位をつけて戦
略を立案する必要がある。
④ 暫定的な安定を図る段階で設定されるマーケティング目標では、複数の指標を組み合わせて設定する
ことも考えられる。その際には数値的な指標だけではなく、ポジショニングや企業・製品イメージの
構築目標など、定性的な目標が設定される場合もある。
⑤ 暫定的な安定を図る段階では、マーケティング戦略目標を決定した後、市場をセグメント化した上で
標的となる市場を設定することになるが、企業再建においてはリスクを回避することが重要なため、
標的市場は特定のものに絞らず、できる限り多くの市場セグメントを狙うことが最も有効な手段とい
える。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題11)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 中小企業の場合、もし現在の経営トップが事業再生にふさわしくないからといって、即座にトップを
交代させればよい、とよく言われるが、実はそう簡単なことではない。理由は、交代させることので
きる人材がそもそもいない。それにも増して、金融機関や取引先、地域住民等々との関係を創り上げ、
企業が存続していく上で重要な利害関係者との結び付きなど、その多くを経営トップが担っていたと
いう現実がある。
② 経営陣の交代が必要とされる理由に、過去の成功体験や経営陣の思い入れからの脱却があげられる。
創業事業の成功体験を経て大きくなった企業においては、それに縛られ、外部環境が変化した場合で
も過去の成功体験を当てはめて対応しようとする傾向が強く、創業事業が不振になっても、なかなか
それを打ち切る決断を行いにくい。そのため経営陣を交代し、新しい発想で事業継続等の意思決定を
行う必要がある。
③ 現経営陣を退任させて企業再生の専門家を後任に据える場合には、その経営陣が持っている知識や経
験の多くが流出してしまうことにもなる。交代が決まった場合は、新チームへの短期での知識移転と
業界とのコネクションの引継ぎも、価値を再構築するためには重要な前提条件である。よって、経営
陣の中の優秀な人材の一部を留任させ、その知識を利用することは、かなり有用なことと考えられる。
④ 経営陣の交代は、ステークホルダーに対する強いメッセージとなる。現経営陣の持つ知識を使い、自
ら変化を起こさせるように誘導するのも一つの方法であろうが、経営不振を招いた現経営陣には変化
を起こす意思も能力もないと考えられるため、新しい経営陣と入れ替えるしか方法はない。よって、
経営陣の入れ替えは、まず第一に考えるべき事項の一つである。
⑤ 事業再生のためには、企業風土の変更が必要となることが多く、これは経営陣の交代の有無にかかわ
らず重要である。企業が危機的段階にまで陥るということは、何らかの抜本的な改革が必要となるこ
とが多い。そしてその背景には、長年培われてきた企業風土の存在があり、改革の際には強い障害要
因となることも多い。しかし企業風土は一朝一夕に変わるものではないから、目の前の資金繰りによ
る生き残りが最重点課題であったとしても企業風土の改革を避けて通るべきではない。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題12)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 再生手法に用いられるものにDIPファイナンスがあり、これは民事再生法などの倒産手続き開始後
も旧経営陣に経営を任せつつ、新たな資金を提供する金融手法である。これは本業に力があるが、倒
産手続きに入った企業の多くが直面する資金繰りの急速な悪化(仕入先からの現金払い要求など)に
対応することなどを目的とした短期の融資であることが多く、また最優先して弁済を受けることが裁
判所から認められている。
② 再生手法の選択には法的整理と私的整理がある。このうち私的整理とは、裁判所の監督や関与が無く、
関係当事者間の合意によって手続きが進められることから任意整理とも言われる。当事者の合意を基
礎としているので、金利減免依頼や債権放棄、債務の株式化などを主要債権者だけに要請することも
ある。
③ 再生手法の選択の際に検討されるべき金融支援策としてノンリコースローンがある。ノンリコース
ローンの場合、責任財産からのキャッシュフローのみを返済原資とされ、その範囲を超えての返済義
務を負わない。よって企業再生におけるリコースローンの位置付けは、資産所有と事業経営を分離す
るために、資産保有リスクと事業経営リスクを分離するシステムであるということがいえる。
④ 再生手法の選択は、事業リストラクチャリングの計画立案とも関連付けて行うべきである。すなわち、
コア事業を残してノン・コア事業を切り離す必要があるときに、それを実行する前の段階で合併を選
択することは良いジャッジとはいえないが、たとえばコア事業部分を事業譲渡や会社分割等で新会社
に移転させるようなスキームは有効性が高い。
⑤ 再生手法に用いられるものにデット・デット・スワップ(DDS)がある。これは債権放棄やデット・
エクイティ・スワップ(DES)と異なり、債権を別条件の債権に転換するなどの手法であるので、
債務者の返済義務が消滅する訳ではない。したがって、他の手法と比べれば実行しやすく、また、期
限の利益を喪失させたり、融資条件の見直しを行ったりする特約条項(コベナンツ)を付すことで実
効性を高められる。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
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問題13)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 企業再生のスキームは大きく法的整理と私的整理に分けられる。法的整理は、破産法、民事再生法、
会社更生法などの法的手続に従って裁判所の管轄下で行われ、私的整理は法的手続によらずに債権者
と債務者との自主的協議により行われる。再生企業の債権者との関係や取引先との関係などの状況を
総合的に判断して、いずれかの手法が選択される。
② 法的整理では、民事再生法、会社更生法などいずれの法的手続を選択しても裁判所の管轄下で行われ
るため、不正が入り込みにくく債権者に公平であるものの、公正な手続きを踏むため柔軟性に欠け、
時間や費用がかかる。したがって、債権者間で調整が困難な場合や再建に比較的時間的余裕、金銭的
余裕がある場合に選択される。
③ 会社更生法、民事再生法による再建では、裁判所から認可を受けた更生(再生)計画により事業が遂
行されている。その計画の変更には裁判所の再認可が必須で、変更の諸手続は煩雑で時間がかかる。
そのため、当初から長期的投資を含めた長期の更生計画を立案し、認可後はそれを変更しないで計画
を遂行することが重要である。
④ 私的整理では私的整理ガイドラインや事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)などのスキームを利用
して行われることもある。事業再生ADRでは債権者に債権放棄にかかわる損失の無税償却が認めら
れ、債務者にも債務免除にかかわる免除益に税制上の優遇措置が認められるため、私的整理の迅速さ
と法的整理に準じたメリットを享受できる。
⑤ 私的整理に関するガイドラインの事業計画には債務者の自助努力が十分に反映されたものであるだ
けでなく、経営困難になった原因や、他の諸手続きよりも多い回収を得られる見込みが確実であるな
ど、債権者にとって経済的な合理性が期待できる内容を盛り込む。
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問題14)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 中小企業再生支援協議会(協議会)の支援対象となりうる事業者の要件のひとつに「法的整理を申し
立てることにより債務者の信用力が低下し、事業価値が著しく毀損するなど、再生に支障が生じるお
それがあること。
」がある。よって協議会の支援はあくまで事業者の自力による再生を前提としてい
る。
② 協議会の統括責任者は、協議会の会長の了承を得て、協議会の統括責任者や統括責任者補佐の他、中
小企業診断士、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家等から構成される個別支援チームを、協議会
の全体会議の下部組織として編成し、再生計画の策定を支援することとなっている。
③ 協議会支援の個別支援チームは、公認会計士等による財務の調査分析及び中小企業診断士等による事
業の調査分析を通じ、債務者の財務及び事業の状況について詳しく把握し、債務者の再生計画案の作
成を支援することとなっている。
④ 協議会の再生計画案においては、債務者の財務及び事業の状況並びに経営改善施策、対象債権者に対
する金融支援要請内容(リスケジュール、追加融資、債権放棄等)について明記し、また、当該計画
案には、その支援額、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲、支援割合を明示する文書を添付
する事としている。
⑤ 協議会の再生計画は、成立後最初に到来する事業年度開始の日から概ね5年以内を目処に実質的な債
務超過を解消、経常利益が赤字である場合は、成立後最初に到来する事業年度開始の日から概ね3年
以内を目処に黒字に転換する内容とするが、事業者の業種特性や固有の事情等に応じた合理的な理由
がある場合には、これを超える期間を要する計画を排除しないものとされている。
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問題15)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 再生のためのリストラのうち、業務リストラとは主に自社を利益の出やすい構造にするための経費や
売上原価の削減や、売上を伸ばすための施策を指す。コスト削減のひとつである人件費削減の施策(人
事リストラ)も業務リストラの一種と考えられている。
② 再生のためのリストラのうち、財務リストラとは主に多額の負債を抱えているような企業がキャッ
シュフローや経営を改善するために、事業の再構築を図るための施策を指し、債務免除、利息減免、
リスケジュール、DIPファイナンス、増資、債務の株式化などがこれにあたる。
③ 再生のためのリストラのうち、事業リストラとは主に事業別の営業利益をベースに自社の事業を見直
し、利益を出せる事業と不採算事業とに分けて事業の取捨選択や、会社の分割・統合を行う施策のこ
とを指す。これらを実施するためには既存事業の単純な廃止の他、株式交換、株式移転、事業譲渡な
どのスキームを利用することがある。
④ 財務リストラおよび事業リストラは外科手術に例えられる事もあるとおり、その可否検討・実施手続
において社外の専門家やステークホルダーの協力が不可欠なケースが多いのに対し、業務リストラは
外部からアドバイスは参考にするにしても、基本的に経営者自身が主体的に決断し継続的に実行する
という点で内科療法的ともいえる。
⑤ 業務リストラにあたっては、単純な経費削減の視点にとどまらず、現状の業務のプロセスやルール(As
–Is モデル)を見直し、非効率の原因を取りのぞき、あるべき理想の姿(To–Be モデル)に変えて効
率化を図ることも重要であり、そのためにはボトムアップ型の経営参画ができるような環境づくりも
欠かせない。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
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問題16)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 再建計画の重要な構成要素として、人事リストラがあげられる。人事リストラには従業員の配置転換
や子会社等への出向・転籍、給与・賞与の削減、希望退職の募集や整理解雇などが考えられるが、い
ずれも正規従業員の場合は雇用契約を締結していたり労働組合が組織されていたりするので交渉に
は労力を費やす。そのため、リストラを行う場合には、派遣社員やパートタイマー、契約社員等契約
を解除しやすいところから実施すべきである。
② 企業が余剰人員を抱えているかどうかは、専門知識があれば比較的早期に判明するものであるが、危
機回避の段階においては、客観的に判断して不要と判断した者を解雇したいと考えがちである。しか
しながら労務問題の複雑さもあるので、周囲の状況を勘案した上、現実的には品質と売上高に影響し
ない人員整理をまずは心がけるべきである。
③ 緊急時の対応段階においては人員削減を実施すべきかどうかの選択を迫られる。しかし特に中小企業
においては、採用に時間が掛かるうえ能力のある人材を採用することは通常困難である。そのため緊
急時の対応段階ではひとまず人員削減は行わず、危機的段階を回避した後に実施するケースも多い。
ただし、状況によっては、いわゆる「整理解雇4要件」を斟酌した上で、ターンアラウンド・マネー
ジャーが会社のために事業再生を本気でやっている、という強いメッセージを与えるような人事上の
措置が必要となるケースも考えられる。
④ 緊急時において重要な施策として、従業員のモチベーションの維持がある。緊急時は倒産回避に向け
て一刻を争う状況であり、また従業員にとってはいつ解雇されてもおかしくない状況のため、モチ
ベーションが大きく低下する可能性がある。そのため、たとえば改革に対する強い決意や、人員整理
などの人事に関する方針を経営者自らが従業員の前で説明するなどで、従業員の混乱を少しでも緩和
する必要がある。
⑤ 労働者に対し社会的経済的に極めて大きな影響を与える余剰人員の整理を目的の一つとする整理解
雇は、労働者に特段の責められるべき理由がない場合でも、使用者の都合により一方的になされるも
のであることから、たとえ、企業合理化のためにいかなる経営施策を講ずるかが経営者の固有の権限
に属するとしても、その判断は慎重になされるべきである。
事業再生士補(ATP)資格試験 2014/11/9
経営
問題17)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 効果的な戦略プラン立案の要因のひとつに、明確なゴールと目標の設定がある。目標とする位置付け
を顧客視点に立脚して顧客の言葉で表現し、具体的な項目に対する具体的な数値を定めることで、事
業の目的や戦略的な意図を利害関係者に明確に伝えることができ、設定した戦略目標の達成に要する
職能や運営技術などの組織能力を明らかにすることができる。
② 効果的な事業戦略は、対象とする市場の顧客ニーズとそれに訴求するには何が決定的に重要であるか
が明確になっている。その上で競合他社に対する自社の優位性の明確化と、その優位性を脅かすリス
ク要因を把握し、時間軸の変化と共に競争がどのように変化していくかを明らかにすることが求めら
れる。
③ 機能別行動計画の策定にあたっては、トップダウンで計画立案を行うのではなく、それを実行する当
事者である事業部長や担当役員自身が作成することが重要である。それはどんなに優れた計画であっ
ても実行できなければ意味がない。また、計画の実行に担当者をコミットさせるためにも、当事者が
作成することが望ましい。
④ 事業ユニット別固有戦略を全体的な事業戦略との整合性を保つ上で適切にモニタリングを行うこと
は重要であるが、過度なモニタリングは担当者のモチベーションを下げる要因となるため、KPIを
見定め、それによるモニタリングを行うことが重要である。その際には、プリンシパル=エージェン
ト理論も参考となる。
⑤ 効果的な戦略プラン実行のためには、適切なインセンティブを設定するなど現場の動機付けが必要で
ある。たとえば、売上拡大が至上命題の戦略では売上に応じたインセンティブを導入したり、コスト
削減が至上命題の際には削減額の一部を報酬にするなど、適切に評価するための仕組みよりも、戦略
に沿った行動を担当者が自然に取る仕組みを組み込むことが重要である。
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経営
問題18)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 技術的に優位なポジションをキープしていた企業においては、往々にしてマーケティング部門は補助
的な位置づけか少なくともメインストリームではないことが多い。よってそうした企業がマーケティ
ング戦略に再生の活路を見出すべく組織決定した場合には、相応の大掛かりな人事制度の見直しも必
要になってくる。
② マーケティングは従来から主にマスを対象になされるものであったので、コンペティター、クライア
ント、ベンダーなどのプレーヤーが相対的に少なく市場が成熟した業界では、必然的にマーケティン
グ戦略よりも既存のコア商品/サービスの向上ならびにその横展開、つまり営業活動が重要視されて
おり、今後もその傾向は変わらないことが予想される。
③ 新たにマーケティング戦略を立てる場合、従来組織の枠組内で考えてしまうと新しいニーズに到達し
ないばかりか、顧客ニーズを置き去りにした自己満足的な商品/サービスの推進という形で組織が迷
走してしまう危険性がある。よってそのような事態が想定される場合は、多様なリスクを伴うが、組
織自体を一旦解体して再構築しなおすくらいの大規模な組織再編が有効である場合もある。
④ マーケティング戦略を立案するうえで顧客ニーズの把握がトッププライオリティであることは言う
までもないが、その顧客自身が自らのニーズに気づいていないことも往々にしてある。よってマー
ケット戦略は、柔軟性をもちかつ多面的な角度から掘り下げて検討されることも重要である。
⑤ マーケティング戦略の策定を組織内で補助的なポジションから主流のポジションにすると、従来にも
まして職能的な役割が多能化する。具体的には、
「流動的な市場環境を察知し変革の推進する」
「複合
的に組織間の調整を行う」
「イノベーションを発掘し具体化する」等が考えられる。
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問題19)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 再生企業のリーダーに求められる気質は様々であるが、一般には独創性を持ち物事の本質を見抜く洞
察力を兼ね備え、そして独自性が強い性格の持ち主で寝食を忘れるほど仕事に没頭するだけの熱意と
行動力があり、経済的動機よりも自己実現や経営課題探求の動機を優先するという気質をもっている
ことが好ましい。
② 再生企業のリーダーは、短い時間の中で経営状況を把握し、課題と重要度を見極め、対処策を立案す
る必要に迫られている。経営の経験から得られる知見を最大限に活用し、経験を通じて獲得した特定
業界の知識に基づいて経営の諸問題を分析することが求められていると言える。また、事業経験がな
い場合でも即座にその状況を学び取る能力が求められる。
③ 再生企業のリーダーには交渉スキルが求められる。それは、債権者との交渉、組合との給与の削減や
雇用形態の変更そして人員整理など、再生のためにはどうしても避けては通れない多くの問題があり、
その解決のためには交渉相手のメリットや相手方の気づいていないニーズを掘り起こし双方が満足
できる着地点を見出し、問題あるいは課題を解決する力ともいえる。
④ 再生企業のリーダーは、再生企業の経営状況を短期間で正確に把握するために、様々なステークホル
ダーから情報を収集する必要がある。意思決定を行うに十分な情報を獲得できるだけのインタビュー
能力が求められると同時に課題を認知する能力も必要である。
⑤ 再生企業のリーダーは、組織人員の行動の方向づけを適切に行う必要がある。具体的な方法の一つに、
目標設定がある。目標が低い場合には達成しても十分な満足感は得られないが、ある程度高い目標を
設定した場合、それを本人が受容している限りにおいては、限界点に近い努力が継続される可能性が
高い。再生企業の方向性や戦略を明確にして、ある程度高い目標を設定することで組織人員のやる気
を引き出せることができるので、より高いパフォーマンスを期待できる。
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経営
問題20)
以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。
① 株主は再生企業の所有者であると同時に財務的なステークホルダーであり、その主要な関心は再生価
値にあるといえる。取締役の選任権・解任権を有し、また企業の解散権も有するため最終的な意思決
定権者であるが、その種の意思決定がなされない場合でも、配当を含む権利は債権者に優先する。
② 仕入先は再生企業にとって財務的な意味においてもステークホルダーである。企業存続に不可欠な資
材等の調達先であり、提供する製品やサービスへの安定した支払いを求める。仕入先の協力が得られ
ない場合には再生企業はその生産活動等を適切に行うことができないため、信頼を獲得しうる再生計
画を立案し協力を得ることも不可欠といえる。
③ 債権者は再生企業にとって主要なステークホルダーであり、再生企業に対する自己の債権の回収可能
性に主要な関心がある。したがって、再生企業に対してもつ担保権や清算価値が貸出額を上回ってい
る場合には経済的な観点からは問題ないが、下回っている場合には積極的に関与して再生に強いコ
ミットを示す傾向がある。
④ 販売先は再生企業にとって将来キャッシュの源泉となるステークホルダーといえる。その主要な関心
は再生企業からの安定した製品やサービスの提供を受けることにある。よって再生企業が販売先に
とって代替が難しい製品等を供給している場合などは積極的に再生に協力する傾向がある。
⑤ 従業員は再生企業にとって事業を支えるステークホルダーといえる。その主要な関心は雇用の維持に
あり、給与水準や福利厚生などの維持についても強い関心を持っている。企業再生の主な担い手とし
て業務を動かしていくステークホルダーであるから、従業員の積極的な協力や忍耐がなければ企業再
生はうまくいかない。