金融のグローバル化につ いて

平成27年度
証券ゼミナール大会
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金融のグローバル化につ
いて
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国士舘大学政経学部
B ブロック野下ゼミ
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目次
第1章金融グローバリゼーションの展開
第1節金融グローバル化の経緯
1.グローバル化の意味と現状
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2.グローバル化の進展
3.歴史的背景と役割
第2節各国の金融システムの変遷
1.日本版ビッグバン
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2.日本の金融システムの特徴と変遷
3.アメリカの金融システムの変遷
4.中国の金融システム改革
5.金融システムの比較と市場化
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第3節金融規制と金融グローバル化の進展要因
1.金融規制と金融グローバル化
2.金融グローバル化の歴史・経緯
3.金融規制と金融グローバル化の進展要因
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第2章金融グローバリゼーションと世界経済
第1節金融グローバリゼーション下の先進国と新興国
1.国際資本移動
2.先進国と新興国
3.先進国と新興国の経済的関係性
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第2節先進国における金融グローバリゼーション
1.先進国の分析(アメリカ、イギリス)
2.先進国における金融グローバリゼーション
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第3節新興国における金融グローバリゼーション
1.新興国の展開
2.新興国経済における特徴
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第3章金融グローバリゼーションの影響
第1節先進国における金融グローバリゼーションのネガティ
ブ効果
1.貧困格差
2.政治・経済・国際問題
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3.影響への対策
第2節新興国における金融グローバリゼーションの影響
1. 新興国における金融グローバル化
2. 発展途上国への影響
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第4章金融グローバリゼーションと世界金融危機
1.従来の金融危機
2.現在の金融危機
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参考文献
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第1章 金融グローバリゼーションの展開
第1節金融グローバル化の経緯
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1.グローバル化の意味と現状
まず 始 め にグ ロ ー バル 化 と は、 「 こ れま で 存 在し た 国 家、 地 域 など タ テ 割り
の境 界 を 超え 、 地 球が 1 つ の単 位 に なる 変 動 過程 」 と いう よ う に地 球 的 規模 で
の変 化 で ある 。
これ を 金 融シ ス テ ムで 言 い 表す と 、 地球 規 模 での 経 済 の造 り や シス テ ム を意
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味す る 。 つま り 市 場制 度 や 貨幣 制 度 など あ ら ゆる 制 度 や国 家 の 価値 観 に も影 響
を与 え る こと に な る。
現代 の 世 界で は 、 この グ ロ ーバ ル 化 にお け る 問題 を 解 決し よ う と試 み て いる
が、環 境問 題 を 見て も、各 国 の利 害 が 政策 に 絡 み有 効 な 策を 打 ち 出せ て い ない 。
金融 グ ロ ーバ ル 化 の進 展 を 始め 金 融 環境 の 変 化は 、 中 央銀 行 に 様々 な 課 題を
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投げ か け 、そ の 一 つに 各 国 の金 融 市 場が グ ロ ーバ ル な レベ ル で 一体 化 し 、相 互
に複 雑 に 影響 を 及 ぼし あ う 中、 グ ロ ーバ ル な 視点 か ら 情勢 判 断 や駐 豪 銀 行間 の
密接 か つ 迅速 な 情 報交 換 が 欠か せ な くな っ て いる こ と が挙 げ ら れる 。
2.グローバル化の進展
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1980年代からの金融のグローバル化は 、19世紀後半のイギリス
の金本位制の下で 幅広く進展した 。しかし第一次世界大戦のあと金本位
制に終 わ りを告げ、その後金本位制に復帰することなく第二次世界大戦
に突入することになる。この一連の混乱が投機的な国際資本移動が要因
であった という見方から、ブレトンウッズ体制では変動相場制から固定
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相場制に変更し、民間の国際資本移動は原則として禁止された。
変化が生じ始めるのは、アメリカ経済が悪化しインフレが進む196
0年後半のことである。多くの国は固定相場制から変動相場制に移行し、
1980年代以降資本移動規制の緩和を進め、IT技術の発達も重なっ
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て金融のグローバルの進展を大きく促した。
金融のグローバル化は様々な角度から世界経済に恩恵を与え、国際間
の資金の貸し借りや、資産運用の国際分散を可能させ、新興国の発展も
金融のグローバル化がなければ成しえな かったと考えられる。
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一方、金融のグローバル化は恩恵を与えるだけではなく、金融危機を
頻発させたり、M&Aによって金融の自由化、民営化、寡占化、規制緩
和、証券化、会計基準の統一化を進行させたりしている。また同時に、
近年は原材料の高騰によって新たな危機が持ち上がってきたりするなど
予断を許せない状況である。
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別の見方から グローバル化を見てみると 、 一部の富裕層によって国際
市場がマネーゲームのような、投機的取引に支配され振り回されるよう
な様相を呈している。その結果通貨危機やサブプライム問題など過剰流
動性によって本来あるべき経済活動に影響を与えかねない。
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3.歴史的背景と役割
金融 制 度 は国 内 金 融シ ス テ ムと 国 外 の金 融 シ ステ ム の 2つ で 成 り立 っ て おり 、
相互 に 影 響を 与 え 、仕 組 み を変 化 さ せて き た 。し か し この 2 つ の仕 組 み は深 く
関わ り が ある 中 、 性質 が 大 きく 異 な って い る 。
まず 国 内 金融 の 仕 組み は 、 その 国 の 法的 基 盤 の上 に 立 ちそ れ ぞ れの 国 家 理念
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に基 づ く もの で あ る。 要 す るに 市 場 制度 が 各 国で 異 な り会 計 制 度や 通 貨 、財 政
の仕 組 み 、税 制 な どが 異 な る。 財 政 と税 制 に 関し て は 単に 制 度 が異 な る とい う
だけ で な く考 え 方 や時 代 背 景も 異 な って い る 。ひ い て は金 融 政 策も 各 国 で異 な
って お り 金利 に 対 する 考 え 方も 異 な って い る 。国 際 シ ステ ム は この 固 有 の国 内
金融 シ ス テム に 基 づい て 行 われ る こ とに な る 。
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国内 経 済 の自 律 性 を保 ち 続 ける た め には 、 国 内経 済 の 範囲 と 外 国経 済 と の境
界を 明 ら かに し て おく 必 要 があ る が 、現 状 は 不確 か な もの に な って い る 。
国内 経 済 の経 常 収 支、 資 本 収支 、 財 政収 支 は すぐ に 為 替相 場 に 反映 さ れ 、国
内経 済 に 影響 を 及 ぼし 、 国 際間 の 資 本取 引 を 通じ て 経 済政 策 や 金融 ・ 金 利政 策
に影 響 を 及ぼ す 。
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もし 為 替 相場 が 国 内景 気 に 大き な 影 響を 与 え 、経 済 に 影響 を 与 える の で あれ
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ば国 家 間 の金 利 差 や経 済 政 策の 整 合 性を と る 必要 が あ り、 そ の ため に 国 際機 関
の必 要 性 が高 ま る ので あ る 。
以前 で あ れば 、 各 国国 内 の 金融 政 策 や為 替 政 策、 経 済 政策 な ど 自律 性 や 独立
性は 大 部 分認 め ら れて き た 。
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しか し 金 融グ ロ ー バル 化 に なる と 変 化を 及 ぼ し、 そ の 一つ と し て為 替 問 題で
ある 。 変 動相 場 制 化で は 、 通 貨 の 価 値が 金 利 や資 本 取 引に 影 響 を与 え 、 国内 経
済が 影 響 を受 け る 一方 で 、国 外 の 状況 によ っ て 国内 の 経 済政 策 も 制約 を 受 ける 。
最近 で は 、為 替 政 策や 金 融 政策 で 各 国が 足 並 みを そ ろ える よ う にな っ て きて
おり 、 税 制度 に 関 して も タ ック ス ヘ ブン の よ うな 国 に 対し て は 厳し い 処 置ま で
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取ら れ る よう に な って き て いる 。
以上 の こ とか ら グ ロー バ ル 化は イ ン ター ネ ッ トや 金 融 工学 の 発 達に よ り 金融
の世 界 か ら国 境 を 取り 除 き、情 報 が即 座に 世 界 中に 行 き 渡る と い うこ と に なる 。
つま り 余 剰の 資 金 が生 ま れ ると 運 用 先を 求 め て国 家 間 を移 動 し 大量 の 資 本が 行
きか う こ とに な る 。そ の 資 本移 動 が 特定 の 国 に流 れ る 時も あ る が、 経 済 情勢 の
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悪化 な ど によ っ て 一気 に 資 本流 失 が 発生 し 金 融危 機 を 引き 起 こ すこ と も ある 。
第2節
各国の金融システムの変遷
19 8 0 年代 か ら 19 9 0 年の 始 め にか け て 、ア メ リ カは 金 融 シス テ ム 不安
に見 舞 わ れた 。 1 98 5 年 から 1 9 91 年 ま での 間 に 、9 0 0 以上 の 貯 蓄貸 付
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組合 が 倒 産し 、 コ ンチ ネ ン タル ・ イ リノ イ 銀 行の よ う な大 手 の 銀行 ま で 経営 破
綻に 陥 っ た。 し か しそ の 時 、ア メ リ カは 迅 速 に対 処 し て 、 金 融 シス テ ム を立 て
直し た 。
他方 、 8 0年 代 の 後半 か ら 90 年 代 は 、 日 本 はバ ブ ル に向 か っ てお り 、 信用
不安 な ど は全 く 無 関係 な 出 来事 で あ った 。 し かし 、 バ ブル の 崩 壊で 、 日 本の 金
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融機 関 は 膨大 な 不 良債 権 を かか え 、 経営 不 安 に陥 っ て おり 、 金 融シ ス テ ム不 安
が現 実 の もの と な って い る 。こ の よ うな 金 融 のシ ス テ ミッ ク リ スク を 生 み出 し
た最 も 基 本的 な 原 因は 、 金 融機 関 を 取り 巻 く 金融 環 境 が徐 々 に 変わ っ て きて い
たに も か かわ ら ず 、金 融 機 関も 行 政 当局 も そ れに 適 応 でき な か った こ と によ る
であ ろ う 。
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中国 で は 19 7 8 年の 改 革 開放 以 後 、市 場 原 理を 大 幅 に取 り 入 れて い る 。中
国の 経 済 シス テ ム は「 社 会 主義 市 場 経済 」 と いわ れ て い た 。 し かし 、 銀 行は 膨
大な 不 良 債権 を 拘 えて 、シス テ ミ ック リス ク の 可能 性 も 大き い 。財 政 と 金融 は、
いま だ 未 分化 の 状 態で あ り 、中 国 の 金融 シ ス テム は 効 率が い い 市場 と は 言い 難
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い状 態 に ある 。 こ こで は 発 展段 階 の 異な る 日 本 、 ア メ リカ 、 中 国の 金 融 シス テ
ムの 変 遷 を辿 り な がら 、 市 場の 効 率 性と 安 定 性 、 市 場 と政 府 の 係わ り を 考慮 し
つつ 、 金 融シ ス テ ムの 選 択 の問 題 を 考え て い こう 。
1.日本版ビッグバン
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バブ ル 経 済以 前 の 我が 国 経 済は 、 企 業の 資 金 調達 の 変 化 、 国 債 市場 の 拡 大等
を背 景 に 、金 融 分 野の 自 由 化が 進 め られ て き た 。 2 1 世紀 の 日 本の 経 済 や金 融
シス テ ム はい か に ある べ き か 。こ れが 20 世 紀 の日 本 の 最も 大 き な課 題 で ある 。
改革 の 視 点は 、 「 市場 原 理 」の 導 入 であ り 、 市場 と 政 府の 関 係 であ る 。 平成 9
年6 月 1 3日 、 金 融制 度 調 査会 、 証 券取 引 審 議会 、 保 険審 議 会 が「 日 本 版ビ ッ
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グバ ン 」 の実 施 ス ケジ ュ ー ルな ど を 示し た 報 告書 を 発 表し た 。 「フ リ ー 」「 フ
ェア 」 「 グロ ー バ ル」 を 基 本理 念 と する 「 日 本版 ビ ッ グバ ン 」 の全 体 像 がこ れ
でか な り 明ら か に なっ た 。 「日 本 版 ビッ グ バ ン」 を 行 う目 的 は 、利 用 者 に便 利
で効 率 が いい 金 融 サー ビ ス の提 供 を 実現 す る こと で あ る 。 ま ず 、日 本 の 金融 シ
ステ ム 改 革の 意 図 をご く 簡 単に 示 し てお こ う 。
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(1 ) 金 融機 関 の 役割 と 日 本の 金 融 機関 の 特 徴
金融 機 関 の役 割 は 、① 資 金 の流 れ を 円滑 に す る② 投 資 資金 の 使 い方 を 監 視す
る③ 貯 蓄 者に 貯 蓄 手段 、 送 金・ 決 済 等の 金 融 サー ピ ス を提 供 す る 。
この よ う な金 融 機 関の 基 本 的な 役 割 はど の よ うな 金 融 シス テ ム でも 同 じ であ
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るが 、 金 融構 造 や 金融 機 関 の行 動 原 理は 、 国 や時 代 に よっ て 異 なっ て い る 。
つま り 金 融機 関 の 行動 が 、 新し い 経 済・ 金 融 環境 に 適 さな く な り 、 不 良 債権
を生 み 、 シス テ ミ ック リ ス クを 引 き 起こ す 。 「シ ス テ ムの 変 換 」 、 「 バ ラダ イ
ムの 変 換 」が 求 め られ て い るが 、 こ れが 「 日 本版 ビ ッ グバ ン 」 の基 底 に ある 理
念で あ る 。
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(2 ) 金 融シ ス テ ムの 改 革 の意 図
「ビ ッ グ バン 」 は 、基 本 的 には 、 規 制を 緩 和 ・撤 廃 し て 、 競 争 促進 的 な シス
テム を 構 築す る こ とで あ る 。そ れ は 次の よ う にま と め るこ と が でき る 。
①各 金 融 分野 へ の 参入 の 自 由の 促 進
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②新 し い 商品 や 技 術導 入 の 促進
③金 融 機 関や 金 融 シス テ ム の監 督 ・ 検査 シ ス テム の 改 革で 金 融 行政 の 透 明化
④情 報 開 示と 自 己 責任 の 徹 底
2.日本の金融システムの特徴と変遷
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(1 ) 日 本の 金 融 シス テ ム の変 遷
いま 、日 本の 金 融 シス テ ム は戦 後 の 高 度成 長 を 支え た「 規制 に 支 えら れ た 金
融シ ス テ ム」 か ら 21 世 紀 の「 グ ロ ーバ ル ス タン ダ ー ド・ シ ス テム 」 へ の変 換
が求 め ら れて い る 。し か し 、シ ス テ ム転 換 は 、こ れ が 初め て で はな い 。 近代 的
な経 済 ・ 社会 シ ス テム を 目 指し た 明 治維 新 以 来 、 日 本 の金 融 シ ステ ム は 非常 に
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大き な 様 々な 変 換 を経 験 し てき て い る 。
(2 ) 金 融シ ス テ ム安 定 化 のた め の 銀行 法
19 2 9 年の 世 界 大恐 慌 ま での 時 代 は 、 世 界 的に も 「 市場 原 理 」が 支 配 した
自由 競 争 の時 代 で あっ た 。 日本 で も そう で あ った が 、 法律 や 制 度は 未 整 備・ 未
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熟で あ っ た。
19 2 7 年に 銀 行 法が 制 定 され た が 、銀 行 法 の制 定 は 他業 種 兼 業の 禁 止 、法
定最 低 資 本金 の 基 準を 満 た さな い 銀 行は 銀 行 業務 を 営 むも の で ない も の が預 金
を集 め て はな ら な い 、 利 益 配当 の 都 度一 割 以 上積 み 立 てる こ と など で あ った 。
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(3 ) 戦 時中 ・ 終 戦直 後 期 の「 国 家 の統 制 ・ 規制 下 の 金融 シ ス テム 」
昭和 金 融 危機 で 、金 融 規 制が 導 入 され たが 、19 3 8 年の 国 家 総動 員 法 以降 、
経済 は 計 画経 済 化 され 、 次 第に 規 制 ・統 制 が 強化 さ れ た 。 こ の 期の 金 融 シス テ
ムは 「 国 家の 統 制 ・規 制 下 の金 融 シ ステ ム 」 とい う こ とが で き るが 、 こ のシ ス
テム に 戦 後の 高 度 成長 経 済 を 支 え た 「日 本 型 金融 シ ス テム 」 の 原型 を 見 るこ と
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がで き る 。
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(4 ) 戦 後の 「 規 制に 支 え られ た 金 融シ ス テ ム」
戦後 の 高 度成 長 を 支え た 「 日本 型 金 融シ ス テ ム」 が 形 成さ れ た のは 、 戦 前の
統制 経 済 (1 9 4 0年 頃 ) から 1 9 50 年 頃 まで で あ ると さ れ てい る 。 その 第
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1の 特 徴 は「 各 種 規制 」 で ある 。 第 2の 特 徴 は「 間 接 金融 方 式 」と 「 メ イン バ
ンク 制 」 であ る 。 大蔵 省 は 証券 業 務 より は 銀 行の 貸 出 業務 を 重 視す る 方 針を 取
った の で 、企 業 の 資金 調 達 が主 に 銀 行借 り 入 れに よ っ て行 わ れ てい た 。 第3 の
特徴 は 「 大き な 公 的金 融 部 門の 比 率 」で あ る 。財 政 投 融資 制 度 は第 二 の 財政 と
言わ れ 、 郵便 貯 金 や簡 易 保 険 、 厚 生 年金 の 資 金が 、 大 蔵省 の 資 金運 用 部 を通 し
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て、 財 投 機関 で あ る公 的 金 融機 関 ( 日本 開 発 銀行 や 日 本輸 出 入 銀行 ) や 住宅 公
団、国 民住 宅 金 庫な ど の 機関 に 配 分さ れ 、社 会資 本 の 充実 の た めに 投 資 され た 。
第四 の 特 徴は 「 護 送船 団 行 政」 で あ る 。 安 定 的な シ ス テム の 維 持を 目 的 とし
た業 界 保 護的 な 行 政で あ っ た 。 こ の 「日 本 型 金融 シ ス テム 」 は 銀行 倒 産 のな い
安定 し た 金融 シ ス テム で 、 企業 に コ スト の 安 い資 金 を 供給 し 、 日本 の 高 度成 、
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日本 の 高 度成 長 を 金融 面 か ら支 え て いた 。
(5 ) 自 由化 ・ 国 際化 の 過 渡期 の 金 融シ ス テ ム
19 8 0 年代 か ら 日本 の 金 融の 自 由 化・ 国 際 化は 始 ま った が 、 その 特 徴 は外
圧に よ る 自由 化 ・ 国際 化 で あっ た と いう こ と にあ る 。
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この 期 の もう 一 つ の特 徴 は 、金 融 構 造が 徐 々 に変 化 し てき た こ とに 対 し て銀
行の 経 営 方針 は 十 分に は 適 応す る こ とが で き なか っ た こと で あ る 。 企 業 の資 金
調達 が 多 様化 し 、 企業 は 積 極的 に 証 券市 場 や 海外 の 市 場で 資 金 調達 を し た 。 こ
れは 、 企 業の 銀 行 貸出 に 対 する 資 金 需要 を 減 退さ せ た 。そ し て 、余 っ た 資金 は
ノン バ ン クを 通 し ての 不 動 産融 資 に 向け ら れ 、こ れ が 、バ ブ ル 現象 を 引 き起 こ
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す原 因 で ある 。
また 日 本 の銀 行 は 、数 量 重 視の 経 営 から 脱 す るこ と が 出来 な か った 。
3.アメリカの金融システムの変遷
(1 ) 1 93 0 年 以前 ( 無 秩序 な 競 争の シ ス テム )
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この 期 の シス テ ム は 、 道 路 交通 シ ス テム に 例 える と 、 停止 の サ イン や 交 通信
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号、 レ ー ン標 識 な どほ と ん どな い シ ステ ム で ある 。 金 融機 関 の 中心 は 銀 行で あ
った 。 金 融市 場 は 脆弱 で 金 融機 関 の 経営 は 不 安定 で あ った が 、 19 2 9 年の 大
恐慌 に よ り4 年 間 で9 0 0 0の 銀 行 が倒 産 。信 用 不 安は 全 体 へ伝 播 し てい った 。
シス テ ム の安 定 化 のた め に は 、 ① 競 争制 限 的 規制 、 ② 消費 者 保 護( 預 金 保険
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機構 ) 、 ③情 報 の 開示 ( 証 券関 係 者 とブ ロ ー カー に 対 する ) が 必要 で あ った 。
(2 ) 2 0世 紀 型 金融 シ ス テム
アメ リ カ の金 融 シ ステ ム は 、3 0 年代 初期 の「無 秩 序 な競 争 の 金融 シ ス テム 」
の崩 壊 か ら、 競 争 制限 的 な 諸規 制 に 支え ら れ た「 2 0 世紀 型 金 融シ ス テ ム」 へ
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と変 わ っ てい っ た 。
その た め 、( ① 価 格規 制 : 株式 手 数 料 、 預 金 金利 規 制 、③ 銀 行 と他 金 融 業務
の分 離 等 )の 金 融 規制 が 採 用さ れ た 。こ の 金 融シ ス テ ムは 、 市 場の 分 断 と金 融
機関 の 破 綻防 止 措 置に 依 拠 した 金 融 シス テ ム であ る 。 しか し 、 この よ う な競 争
制限 的 な シス テ ム は新 金 融 商品 の 開 発を 含 む より 効 率 的で 便 利 な金 融 サ ービ ス
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を提 供 す るた め の 革新 の 目 をつ ぶ し 、国 民 に 多大 な 負 担を か け 、モ ラ ル ハザ ー
ドを 生 み 出す こ と にも な っ た 。
(3 ) 2 1世 紀 金 融シ ス テ ム
アメ リ カ の2 1 世 紀型 モ デ ルは 「 2 0世 紀 型 金融 シ ス テム 」 を 補修 し た もの
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であ る と 見な す こ とが で き る 。 金 融 シス テ ム につ い て の基 本 理 念は 、 競 争促 進
的シ ス テ ムの 構 築 とシ ス テ ミッ ク リ スク に は 破綻 の 封 じ込 め で 対応 す る こと で
ある 。 こ こで 、 封 じ込 め と は市 場 と 企業 に リ スク に 対 する 緩 衝 機能 を 作 らせ 、
ショ ッ ク を隔 離 、 吸収 し 、 市場 全 体 に伝 播 す るこ と が ない よ う にす る こ とで あ
る。
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4.中国の金融システム改革
中国 の 金 融シ ス テ ムは 未 成 熟な 段 階 にあ る 。 市場 も 整 備過 程 で あり 、 価 格決
定の 機 能 、資 金 配 分の 機 能 を果 た し てい な い 。市 場 参 加者 に も 、取 引 の ルー ル
が理 解 さ れて お ら ず 、 検 査 ・監 督 体 制も 確 立 して い な い 。 法 的 な整 備 も 必要 で
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あり 、 リ スク の 自 己責 任 に つい て の 教育 が 必 要で あ る 。以 下 、 中国 の 金 融シ ス
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テム の 発 展状 況 と 問題 点 、 改革 す べ き点 な ど を整 理 し てい き た い。
(1 ) 1 97 8 年 改革 解 放 以後
改革 以 前 は財 政 の 付属 物 で あっ た 。 本来 の 意 味で の 中 央銀 行 、 金融 機 構 、金
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融市 場 は なか っ た 。計 画 経 済に お け る金 融 シ ステ ム の 要点 を ま とめ る と 、第 1
に中 国 人 民銀 行 の み存 在 し てい た こ と 。 第 2 に銀 行 信 用し か な く 、 商 業 信用 も
存在 し て いな か っ たこ と 。 第3 に 間 接金 融 の みで 、 直 接金 融 は なか っ た こと 。
第四 に 公 的金 利 し かな く 、 市場 金 利 は存 在 し ない 第 五 に外 国 為 替市 場 は なか っ
たこ と で ある 。
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(2 ) 「 社会 主 義 市場 経 済 」
社会 主 義 市場 経 済 に進 ん で 、金 融 イ ンフ ラ の 整備 と 金 融サ ー ビ スの 多 様 化が
進ん だ が 金利 は 市 場金 利 に はな っ て いな い 。 整備 ・ 改 革さ れ た 主な も の は以 下
の通 り で ある 。
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第1 に 中 央銀 行 ( 19 8 3 年成 立 ) と預 金 貨 幣銀 行 と が併 存 す るよ う に なっ
た。 第 2 に「 中 国 人民 銀 行 法」 が 施 行さ れ 、 預金 貨 幣 銀行 の 他 にノ ン ・ バン ク
も生 ま れ た。 第 三 に商 業 銀 行 、 と く に、 大 手 の固 有 商 業銀 行 は 「商 業 銀 行法 」
に基 づ き 独立 し た 経営 を 行 うよ う に なっ た 。第 四 に 株式 市 場 の整 備・「 企 業法 」
に合 う 企 業の 株 式 は 、 国 内 だけ で な く、 香 港 と海 外 に 上場 す る よう に な った 。
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第五 に 全 国銀 行 間 にコ ー ル 市場 と 先 物市 場 が 設置 さ れ た 。 第 六 に外 国 為 替で は
IM F の 8条 国 の 要求 に 従 い経 常 収 支項 目 の 人民 元 が 自由 党 換 され る よ うに な
った 。 第 七に 金 利 は依 然 公 定 で あ る 。
以上 の よ うに 、 中 国の 金 融 制度 の 整 備や 改 革 は緒 に つ いた ば か りで 問 題 点も
多い 。
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(3 ) 金 融市 場 の 直面 し て いる 問 題
第1 に 行 政と 銀 行 、銀 行 と 企業 の 関 係が 整 理 され て い ない 。 固 有銀 行 の 政策
的な 機 能 が排 除 で きず 、 固 有銀 行 は 市場 経 営 主体 に な って い な い 。 商 業 化も 順
調で は な い。 ノ ン ・バ ン ク の経 営 も 健全 で は ない 。 第 二に 資 本 市場 の 成 熟度 と
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効率 性 は 非常 に 低 い 。 行 政 的規 制 が 強く 資 本 市場 へ の 参入 が 制 限さ れ て いる 。
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優れ た も のを 支 援 し 、 劣 っ たも の を 規制 す る 役割 が 発 揮で き な い 。 投 機 性が 強
すぎ 、 リ スク は 過 大で あ る 。第 3 に 市場 管 理 者、 経 営 者、 市 場 参加 者 の 金融 市
場で の 行 動は 規 範 化さ れ て いな い 。
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5.金融システムの比較と市場化
以上 、 日 本、 ア メ リカ お よ び中 国 の 発展 段 階 を異 に す る金 融 シ ステ ム の 変遷
と問 題 点 を見 て き た 。 ア メ リカ と 日 本の 金 融 シス テ ム の変 遷 を 見る と 、 金融 シ
ステ ム は 未成 熟 な シス テ ム →市 場 の 混乱 → シ ステ ム 安 定性 の た めの 規 制 シス テ
ム→ 規 制 の弊 害 → 競争 促 進 的な 市 場 経済 へ と 移行 し て いる 。
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銀行 の 大 型融 資 先 の破 綻 は 、融 資 銀行 グル ー プ の財 務 内 容を 一 気 に悪 化 さ せ 、
リス ク を 全体 に 伝 播さ せ て シス テ ミ ック リ ス クを 誘 発 する 可 能 性は 多 く なっ て
いる 。 現 代の 世 界 経済 は 、 市場 化 と 情報 化 で 特徴 づ け られ 、 市 場化 と 情 報化 に
よっ て ボ ーダ ー レ ス経 済 に なっ て い る 。 資 本 の移 動 は 速い の で 、危 機 は 世界 的
な規 模 で 伝播 す る 。決 済 機 構の み 守 れた ら 問 題は な い とは い え ない 。 ノ ンバ ン
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クの 破 綻 も多 発 す れば 金 融 シス テ ミ ック リ ス クに つ な がる で あ ろう 。
第3節
金融規制と金融グローバル化の進展要因
金融 グ ロ ーバ ル 化 の進 展 に 伴っ て 情 報通 信 技 術の 進 歩 、金 融 取 引手 法 の 発展
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によ っ て 国際 金 融 市場 が 大 きく 拡 大 した 。 そ のた め 本 節で は 金 融規 制 に つい て
検討 し て いく が 、 そも そ も 金融 規 制 とは 金 融 監督 者 が 金融 市 場 や金 融 機 関に 対
する 規 定 を設 け 、 金融 取 引 に一 定 の 制限 を 加 える こ と によ っ て 金融 シ ス テム の
安定 性 を 確保 す る とい う も ので あ る 。そ の た め本 テ ー マで は 主 に金 融 規 制と グ
ロー バ ル 化の 発 展 して い く 歴史 と 原 因を 連 動 させ な が ら研 究 し てい く 。
25
1.金融規制と金融グローバル化
イギ リ ス の完 全 金 本位 制 樹 立( 1 8 82 年 ) 以降 、 ポ ンド が 基 軸通 貨 で あっ
たが 、 世 界大 恐 慌 発生 ( 米 、1 9 2 9年 1 0 月) に よ り 、 イ ギ リス は 金 本位 制
を停 止 ( 19 3 1 年) し 、 ポン ド の 信認 は ゆ らい だ 。 その 後 1 99 1 年 には 、
12
「史 上 最 悪の 犯 罪 銀行 」 BCCI 事 件 が 起き 、 イ ング ラ ン ド銀 行 の 監督 責 任 を問
われ た り する な ど 金融 監 督 シス テ ム の強 化 が 必要 で あ った 。
アメ リ カ では 1 7 76 年 以 降 、 通 貨 発券 権 を もっ た 州 法銀 行 が 通貨 を 過 剰に
発行 す る 問題 が 起 こっ た た め 、1 79 1年 に 銀 行券 発 行 を一 元 化 した 。その 後、
5
南北 戦 争( 1 86 1−6 5 年 )を経 て 、国 法銀 行 の 時代 に 移 り 、中 央 銀 行の 必要
性が 論 議 され 、 連 邦準 備 券 が発 行 さ れる に 至 った 。 ま た金 本 位 法の 成 立 と1 9
34 年 に 制定 さ れ た金 準 備 法の 制 定 によ り ド ルと 金 が リン ク し 、ド ル は 第二 次
世界 大 戦 後の 基 軸 通貨 と な った 。 し かし 、 ア メリ カ 経 済が 悪 化 する と ニ クソ ン
大統 領 は 金と ド ル との 交 換 性停 止 を 声明 し 、 ブレ ト ン ウッ ズ 体 制が 崩 壊 する こ
10
とと な る 。
歴史 的 に は大 恐 慌 時代 の 反 省と し て の銀 行 ・ 証券 分 離 、預 金 金 利の 上 限 規制
(レ ギ ュ レー シ ョ ン Q) な どが 導 入 され た が 、規 制 緩 和の 時 代 に入 っ て 預金 金
利規 制 な どは 金 融 制度 改 革 法に よ っ て順 次 撤 廃さ れ て いる 。
アメ リ カ の金 融 シ ステ ム に は大 き な 特徴 が あ り 、 州 毎 にル ー ル が異 な る ため
15
連邦 ・ 州 政府 に よ る二 元 的 監督 ・ 規 制が も ん だい と な って い る とい う こ と 。 ま
た新 規 参 入が 容 易 であ る こ とか ら 金 融機 関 が 多く 存 在 して い る とい う こ とで あ
る。
ヨー ロ ッ パ経 済 の 中心 と な るド イ ツ では 、 第 一次 世 界 大戦 敗 北 後 、 賠 償 支払
い等 に よ る超 イ ン フレ が 落 ち着 き 、 経済 が 安 定し た 。 しか し 第 二次 世 界 大戦 で
20
の再 び 敗 北す る と 、連 合 軍が 東 西 ドイ ツを 分 割 、占 領、東 西 異な る 道 を歩 ん だ 。
その 後 ベ ルリ ン の 壁崩 壊 に より 、 1 99 0 年 7月 通 貨 統合 、 1 0月 国 家 統一 を
果た し た が、 経 済 力が な か った 東 ド イツ を 西 ドイ ツ が 抱え た 結 果 、 経 済 力が 低
下し た 。
ドイ ツ に 次ぐ 経 済 力を 持 つ フラ ン ス では 、 1 80 0 年 フラ ン 通 貨の 発 券 銀行
25
とし て フ ラン ス 銀 行が 創 立 され た 。 その 後 第 二次 世 界 大戦 後 に イン フ レ が発 生
した た め 、1 9 6 0年 1 月 デノ ミ を 実施 、 新 フラ ン に 移行 し た 。
3.金融グローバル化の歴史・経緯
金融 の グ ロー バ ル 化を 語 る 上で 重 要 であ る と され る の は 、 1 9 世紀 後 半 から
30
第一 次 世 界大 戦 ま での 時 期 であ る 。 この こ ろ イギ リ ス を中 心 に 金本 位 制 のも と
13
で金 融 グ ロー バ ル 化が 進 展 し 、 蒸 気 船、 電 報 、電 話 な どの 運 輸 ・交 通 手 段の 発
達も 重 要 な役 割 を 果た し て いる 。 し かし な が らこ の 動 きは 第 一 次大 戦 で 終わ り
を告 げ 、 その 後 金 本位 制 へ の復 帰 を 試み る も 失敗 に 終 わり 、 第 二次 世 界 大戦 に
突入 す る こと に な る 。
5
この 戦 間 期の 混 乱 にお い て 投機 的 な 国際 資 本 移動 が な され て い たた め 、 固定
相場 制 を 採用 し 民 間の 国 際 資本 移 動 は原 則 と して 禁 止 され た 。 変化 が 生 じる の
はア メ リ カ経 済 が 悪化 し 、 マク ロ 政 策の 規 律 が失 わ れ 、イ ン フ レー シ ョ ンが 進
行し て か らで あ る 。先 進 諸 国の 間 で は固 定 レ ート に 代 わっ て 変 動レ ー ト 制が 採
用さ れ 、 資本 移 動 規制 の 緩 和を 容 易 にし 、 1 98 0 年 代以 降 の 規制 緩 和 の風 潮
10
が広 ま り、IT 技 術 の発 達 な ども 相 ま って 、世界 経 済、金 融の グ ロ ーバ ル 化 を進
展さ せ た と考 え ら れる 。
2.
金融規制と金融グローバル化の進展要因
19 8 0 年代 以 降 の金 融 グ ロー バ ル 化の 進 展 要因 と し て 、 そ の 背後 に あ ると
15
され る の は、 ① 資 本取 引 の 自由 、 ② 情報 通 信 コス ト の 大幅 減 少 がと く に 重要 で
ある と 考 えら れ る 。
第1 に 各 国が 資 本 取引 規 制 を緩 和 、撤 廃し て き たと い う 点で あ る 。そ の 結果 、
各国 が 以 前よ り 自 由に 外 国 と資 本 取 引を 行 え るよ う に なり 、 金 融の 国 際 化が 進
展し た 。 特に 、 先 進国 は 現 在で は 資 本取 引 を 原則 自 由 化し て い るの で 、 先進 間
20
での 資 本 取引 は 最 も活 発 に 行わ れ て いる 。
新興 国 に 関し て は 資本 取 引 の完 全 自 由化 に は 至っ て な いが 、 部 分的 な 規 制緩
和が 進 め られ て き てい る 。 例え ば 、 新興 国 は 直接 投 資 の受 け 入 れを 徐 々 に認 め
たこ と に よっ て 、 先進 国 か らの 直 接 投資 が 活 発化 し て いる 。 ま た、 新 興 国の 株
式市 場 に おけ る 外 国人 投 資 家の 投 資 も 、 規 制 緩和 に 伴 い活 発 化 して い る 。
25
資本 取 引 を完 全 自 由化 し て いる 国 の 比率 は 、 先進 国 で は1 9 7 0年 代 中 ごろ
まで 2 0 %で あ っ たが 、 1 99 0 年 以降 資 本 取引 の 自 由化 が 急 激に 進 み 20 0
0年 代 初 頭に は ほ ぼす べ て の国 で 完 全に 自 由 化が な さ れた 。 新 興国 の 場 合は 、
19 7 0 年代 初 頭 の資 本 取 引自 由 化 率は 2 0 %程 度 で あっ た が 、1 9 9 0年 以
降資 本 取 引規 制 の 緩和 が な され 、 2 00 0 年 代初 頭 に 40 % 程 度に 推 移 して い
30
る。
14
第2 に 情 報通 信 コ スト の 大 幅低 下 が 金融 の 国 際化 を 促 した と 考 えら れ る 。情
報通 信 革 命で 、 情 報処 理 や 情報 伝 達 のコ ス ト が急 激 に 減少 し 、 国境 を 越 えた 経
済・ 金 融 情報 の 入 手と 分 析 が容 易 に 行わ れ る よう に な り 、 ま た 国境 を 越 える 金
融取 引 の コス ト も 低下 し た 。特 に 、 19 9 0 年代 半 ば 以降 の 世 界的 な 規 模で の
5
イン タ ー ネッ ト の 爆発 的 な 普及 の 影 響は 大 き い 。 そ の 他、 世 界 貿易 の 拡 大 、 す
なわ ち 国 境を 越 え るモ ノ の 取引 拡 大 も 、 国 境 を超 え る カネ の 取 引拡 大 を もた ら
す要 因 と なっ て い る 。
世界 貿 易 額( 世 界 輸入 総 額 )の 世 界 GDP 比 は、 1 98 0 年 21 .6 % 、 9 0
年1 8 .8 % 、2 0 0 0年 2 4 .5% 、 20 1 0 年2 9 .1 % と1 9 8 0年 以 降は
10
増加 傾 向 にあ り 、 19 9 0 年以 降 に なる と 世 界全 体 の GDP の 伸び 以 上 に 拡大
して き て いる 。
上 述 の 第1 要 因 の資 本 取 引規 制 緩 和は 第 2 次世 界 大 戦終 了 後 、4 半 世 紀あ ま
り続 い た ブレ ト ン ウッ ズ 体 制崩 壊 の 1つ の 帰 結と い う 側面 を 持 って い る 。つ ま
り、 金 融 の国 際 化 が1 9 8 0年 代 か ら進 展 し 始め た こ とは 、 ブ レト ン ウ ッズ 体
15
制の 崩 壊 と密 接 に 関わ っ て いる の で ある 。
一 般 に 、一 国 に とっ て ① 為替 レ ー トの 固 定 化 、 ② 自 由な 資 本 移動 、 ③ 金融 政
策の 独 立 性は 望 ま しい 政 策 であ る 。
ここ で の 金融 政 策 の独 立 性 とは 、 他 国の 金 融 政策 に か かわ ら ず 、自 国 の 経済
情勢 に 応 じて 金 融 緩和 や 引 締め が と れる 状 況 を指 し て いる 。 し かし 、 そ れら の
20
3つ の 政 策目 標 を 同時 に 達 成す る こ とは で き ず 、 あ る 2つ を 選 んだ ら も う1 つ
はあ き ら めな け れ ばな ら な いと い う 関係 に あ る 。 こ れ が国 際 金 融の ト リ レン マ
と呼 ば れ るも の で ある 。 国 際金 融 の トリ レ ン マの 関 係 があ る こ とか ら 、 固定 為
替レ ー ト 制の ブ レ トン ウ ッ ズ体 制 の 下で 、 各 国が 自 国 の国 内 経 済情 勢 に 合わ せ
て金 融 政 策を 運 営 する た め には 、 資 本取 引 を 規制 し て 自由 な 資 本移 動 を 認め な
25
い政 策 が 必要 で あ った 。
19 7 0 年代 半 ば 以降 、 変 動為 替 制 度に 移 行 した 結 果 、資 本 取 引を 自 由 化し
ても 金 融 政策 の 独 立性 を 維 持す る こ とが 可 能 とな り 、 各国 は 1 97 0 年 代後 半
以降 資 本 取引 の 自 由化 を 徐 々に 進 め るよ う に なっ た 。 そう し た 資本 取 引 の規 制
緩和 ・ 情 報通 信 技 術の 革 命 的な 進 歩 や 、 世 界 貿易 の 拡 大と 相 ま って 1 9 80 年
30
代以 降 の 金融 の 国 際化 を 生 むこ と に なっ た の であ る 。
15
第2章
金融グローバリゼーションと世界経
済
第1節 金融グローバリゼーション下の先進国と新興国
5
ブレ ト ン ウッ ズ 崩 壊後 、 金 融の グ ロ ーバ ル 化 が1 9 8 0年 代 以 降急 激 に 進展
し、 資 本 移動 も 活 発化 し た 。し か し なが ら 1 99 0 年 代に は 中 東 、 ア ジ アで の
通貨 危 機 、2 0 0 0年 代 以 降は ア メ リカ 発 の 世界 金 融 危機 、 ヨ ーロ ッ パ の欧 州
債務 危 機 など 金 融 危機 が 頻 発し て い る 。 そ の ため 本 節 では ブ レ トン ウ ッ ズ体 制
の崩 壊 後 、金 融 の 自由 化 が 推し 進 め られ る 中 で資 本 移 動が ど の よう に 変 化し て
10
きた の か を明 ら か にし た う えで 、 現 在の 先 進 国、 新 興 国に お け る資 本 移 動に お
ける 経 済 的関 係 性 につ い て 検討 し て いき た い 。
1.国際資本移動
ここ で は ブレ ト ン ウッ ズ 崩 壊後 の 国 際資 本 移 動の 変 化 と特 徴 に つい て み てい
15
きた い 。
ブレ ト ン ウッ ズ 崩 壊前 後 の 動き と し て 、 ア メ リカ が 金 とド ル の 交換 比 率 を保
障し 、 自 国通 貨 と 対ド ル 為 替レ ー ト の交 換 比 率を 保 障 する こ と によ っ て ブレ ト
ンウ ッ ズ 体制 が 維 持さ れ て きた 。 し かし ア メ リカ 経 済 の悪 化 に 伴い 金 と ドル の
交換 が 停 止さ れ た ため 、 国 際金 融 の トリ レ ン マよ り 各 国は 固 定 相場 制 か ら変 動
20
相場 制 に 移行 す る こと に な った 。
では 変 動 相場 制 移 行前 と 移 行後 に ど のよ う な 変化 が み られ た の であ ろ う か 。
大き な 変 化と し て は2 つ あ り 、 規 制 緩和 に 伴 って 資 本 取引 が 活 発化 し た こと 、
投資 リ ス クが 市 場 で取 引 さ れる よ う にな っ た とい う こ とが 挙 げ られ る 。
第1 に 1 98 0 年 以降 に 資 本移 動 が 活発 化 し た要 因 は 3つ あ り 、① 資 本 移動
25
規制 の 緩 和、 ② 金 融工 学 の 発達 、 ③ 通信 技 術 の発 達 に よる と こ ろが 大 き く 、 投
資リ ス ク が軽 減 し 、コ ス ト を抑 え 、 収益 率 の 高い 国 に 容易 に 投 資を 行 う こと が
可能 と な った 。
16
図表 2 - 1の 対 外 資産 ・ 負 債の G D P比 を み てみ る と 、先 進 国 では 1 9 80
年代 以 降 、新 興 国 では 1 9 90 年 代 以降 に 増 加し て い るこ と が 分か る 。 しか し
なが ら 2 00 6 年 の世 界 金 融危 機 で は先 進 国 の 経 済 悪 化が 新 興 国に も 波 及し 、
国際 間 の 資本 移 動 が停 滞 し てい る こ とが み て とれ る 。
5
第2 に 資 本移 動 が 活発 化 し たこ と に よっ て 金 融危 機 を 頻発 さ せ たこ と で ある 。
19 9 0 年代 に み られ る 中 東や ア ジ アで の 通 貨危 機 は 、金 融 の グロ ー バ ル化
以後 、 外 資を 積 極 的に 導 入 した こ と に起 因 し てお り 、 先進 国 の 金融 シ ス テム ほ
ど新 興 国 の金 融 シ ステ ム は 強固 で な いた め 、 外貨 準 備 不足 に 陥 り 、 通 貨 危機 が
発生 し た 。そ の 結 果近 年 で は 、 新 興 国を 中 心 に外 貨 準 備の 増 加 がみ ら れ る 。
10
図表2-1
対 外 資 産 ・ 負 債 の G DP 比
出所 : 谷 内満 ( 2 01 2 ) 「金 融 の 国際 化 ─ その 特 徴 と成 長 と の関 係 ─ 」2 1
ペー ジ
15
2.先進国と新興国
(1 ) 先 進国 経 済
ここ で は 先進 国 ( アメ リ カ 、E U 諸 国) 、 新 興国 ( ブ ラジ ル 、 中国 ) の 経済
状況 、 資 本取 引 内 訳に つ い て触 れ て いき た い 。
20
まず 始 め にア メ リ カ経 済 に 関し て で ある が 、 図表 2 - 2の 金 融 資産 残 の 構成
17
/G D P を見 て み ると 、 1 98 0 年 代か ら 金 融資 産 の 取引 が 拡 大し 、 2 00 0
年以 降 は 急激 に 拡 大し て い る 。 中 で も株 式 は 19 9 0 年代 頃 か ら際 立 っ て伸 び
てい る こ とが み て とれ る 。
5
図表2-2
金 融 資 産 の 構 成 ( / GD P )
出所 : 立 石剛 ( 2 01 0 ) 「ア メ リ カ経 済 の 金融 化 に つい て 」 22 8 ペ ージ 、
株式 の 増 加要 因 と して 、 1 98 0 年 代新 株 式 が多 く 発 行さ れ て おり 、 敵 対的
10
買収 を 避 ける 目 的 で株 式 市 場が 利 用 され て い たか ら で ある 。 そ の後 企 業 規模 の
拡大 と 市 場支 配 力 を目 的 と した 株 式 市場 の 利 用に 加 え 、近 年 で はヘ ッ ジ ファ ン
ドに よ っ て利 益 を 目的 と し た株 式 市 場の 利 用 もな さ れ てい る 。
次は E U 諸国 に 関 して で あ るが 、 1 99 0 年 以降 発 展 した 要 因 は3 つ あ り 、
①企 業 間 競争 、 ② 通貨 統 合 、③ 市 場 規模 の 拡 大で あ る とさ れ る 。
15
①統 合 以 前は 国 内 企業 を 保 護す る 目 的で 非 関 税障 壁 を 設け て い たが 、 企 業間
の競 争 が 損な わ れ てし ま っ たた め 、経 済統 合 す るこ と に よっ て 競 争を 生 み 出し 、
経済 の 活 性化 を 促 した 。
②統 合 以 前は 各 国 間で 異 な る通 貨 を 使用 し て いた た め に資 本 移 動の 障 壁 が存
在し て い た。 そ の ため 統 一 通貨 を 導 入し 、 資 本移 動 の 障壁 を 取 り除 く こ とで 経
20
済の 活 発 化を 促 し た 。
18
③E U に 加入 す る 国が 増 え たこ と で 市場 規 模 が拡 大 し 、② で 挙 げた 統 一 通貨
のメ リ ッ トと も 相 まっ て 資 本取 引 が 活発 化 し た 。
以上 が E U諸 国 の 経済 的 に 発展 し た 基本 的 な 要因 で あ ると 考 え られ る 。
次に E U 諸国 の 経 済統 合 前 後の 経 済 的な 動 き につ い て 2つ ほ ど みて い き たい 。
5
M& A に 関し て は 、経 済 統 合以 前 の 19 9 0 年頃 は 国 内で 活 発 に行 わ れ てい
たが 、 ユ ーロ が 導 入さ れ る と資 本 移 動が 容 易 にな る た め国 外 で のM & A が活 発
に行 わ れ るよ う に なっ た 。 その 結 果 、1 9 8 0年 代 以 降M & A によ っ て 企業 の
総数 が 減 少す る 傾 向に あ り 、I T バ ブル 時 に はM & A が落 ち 着 くも の の 、世 界
金融 危 機 が深 刻 化 する ま で は活 発 に 行わ れ て いる 。
10
第二 の 変 化は 企 業 の収 益 構 造に 変 化 を及 ぼ し たこ と で ある 。 経 済統 合 以 前は
預貸 ビ ジ ネス が 中 心で あ っ たが 、 統 合後 は 金 利差 が 少 なく な り 収益 を 十 分に 上
げる こ と が出 来 な くな っ た 。そ の た め手 数 料 収入 や 証 券投 資 な どに 業 務 を拡 大
させ る 傾 向に あ る 。
15
(2 ) 新 興国 経 済
新興 国 に 関し て は ブラ ジ ル と中 国 を 検討 す る にあ た っ て新 興 国 経済 の 現 状に
つい て 簡 潔に 触 れ てお き た い 。
19 9 0 年頃 の 新 興国 で は 急激 な 資 本流 入 に 伴う 経 済 の悪 化 に よっ て 経 営能
力の あ る 外国 金 融 機関 の 参 入が を 促 した が 、 その 参 入 によ っ て 経済 的 に どの よ
20
うな 影 響 を及 ぼ し てき た の であ ろ う か 。
19 9 0 年代 前 後 のブ ラ ジ ルは ハ イ パー イ ン フレ ー シ ョン が 起 きて お り 通貨
の切 り 下 げや 、 新 通貨 を 導 入さ れ る など 経 済 状況 は 悪 化し て い た 。 こ の 経済 状
況に つ い ての 理 由 は諸 説 あ るが 、 当 時外 国 金 融機 関 の 新規 参 入 規制 が 行 われ て
おり 、 経 営能 力 の 低い 国 内 金融 機 関 が金 融 仲 介を 担 う 必要 性 が あっ た 。 その 結
25
果国 内 経 済の 不 安 定化 を 助 長さ せ た ので は な いか と 考 えら れ る 。
事実 、 ブ ラジ ル 国 内の 金 融 機関 は 金 利差 を 活 用し 、 フ ロー ト 利 益に よ る 収入
を上 げ て いた が 、 19 9 4 年の 新 通 貨レ ア ル ・プ ラ ン の導 入 に よっ て イ ンフ レ
が落 ち 着 き収 益 の 確保 が 困 難に な っ てし ま っ た 。 さ ら には そ の 改善 方 法 にも 問
題が あ り 、非 効 率 な経 営 体 制を 改 善 すべ き と ころ を 、 国内 需 要 拡大 を 背 景に 十
30
分な 審 査 が行 わ れ ない ま ま 貸し 出 し が行 わ れ 、不 良 債 権が 発 生 した 。
19
中央 銀 行 はこ の 状 況を 打 開 すべ く 国 内の 金 融 シス テ ム を見 直 し 、禁 止 さ れて
いた 外 国 金融 機 関 の参 入 を 可能 に し た 。
外国 金 融 機関 が 新 興国 に 参 入す る メ リッ ト は 3つ あ り 、第 1 に 外国 資 金 の流
入増 加 に より 国 内 投資 が 促 進さ れ る こと 。 第 2に 新 興 国の 金 融 市場 で 競 争を 促
5
し、 金 融 サー ビ ス の向 上 が 予想 さ れ るこ と 。 第3 に 国 際的 な 取 引増 加 に 伴い 金
融イ ン フ ラ整 備 の 向上 が 予 想さ れ る とい う こ とが 挙 げ られ る 。
次は 中 国 に関 し て であ る 。 中国 は 急 激な 資 本 の流 出 入 を避 け る ため 資 本 規制
の緩 和 に 慎重 で 、1 9 9 4年 以 前 は人 民元 と 外 貨の 直 接 交換 を 禁 止し て い たが 、
資本 規 制 が徐 々 に 緩和 さ れ 、直 接 交 換が 可 能 とな っ た 。し か し 、景 気 が 加熱 し
10
イン フ レ が問 題 と なっ た た め 、 資 本 収支 勘 定 につ い て は強 化 さ れた が 、 この 規
制強 化 に より ア ジ ア通 貨 危 機の 大 き な影 響 を 受け る こ とは な か った 。
その 後 2 00 1 年 に中 国 が WT O に 加盟 に 加 盟す る と 資本 移 動 に変 化 が 生じ 、
外国 企 業 の参 入 が 増え 対 内 直接 投 資 が増 加 し た 。 し か し急 激 な 資本 流 入 が発 生
した た め 、人 民 元 の流 出 を 目的 に 資 本規 制 を 緩和 し に 付随 し て 、中 国 企 業の 海
15
外進 出 も 進む こ と とな る 。
以上 の 4 ヵ国( ア メリ カ 、E U 、ブ ラ ジル 、中 国)に つい て 共 通す る こ とは 、
19 8 0 年代 以 降 先進 国 と 新興 国 の 輸出 入 の 増加 に 加 え 、 証 券 投資 も 拡 大し て
いる こ と であ る 。 そし て そ の背 景 に ある の が 金融 の グ ロー バ ル 化で あ り 、各 国
が資 本 移 動の 自 由 化を 推 し 進め て い るこ と に 起因 す る 。
20
先進 国 で は市 場 競 争力 確 保 とし て の 手段 、 敵 対的 買 収 を避 け る 手段 と し てM
&A が 行 われ て い たが 、 近 年で は ヘ ッジ フ ァ ンド が H FT を 利 用し 収 益 を得 る
とい っ た 手段 と し ても 活 用 され て い る 。
新興 国 に 関し て は 、先 進 国 に比 べ て 国内 の 金 融シ ス テ ムが 脆 弱 で 、 急 激 な資
本の 流 入 に耐 え ら れな い こ とか ら 、 金融 の 自 由化 を 推 し進 め る にあ た っ て外 国
25
金融 機 関 を参 入 さ せる こ と で国 内 の 経済 シ ス テム 安 定 化を 図 ろ うと い う 動き が
みら れ る 。そ の 一 方で 、 外 国金 融 機 関を 参 入 によ り 対 外取 引 が 活発 と な った た
め、 国 外 の影 響 を 受け や す くな っ た と考 え ら れる 。
3.先進国と新興国の経済的関係性
30
ここ で は 20 0 6 年頃 に 発 生し た 世 界金 融 危 機を 題 材 に経 緯 と 影響 を 明 らか
20
にし た う えで 、 先 進国 経 済 と新 興 国 経済 の 関 係性 に つ いて 検 討 して い き たい 。
19 7 3 年に ブ レ トン ウ ッ ズ体 制 が 崩壊 す る と 、 金 融 グロ ー バ ル化 の 進 展に
伴い 資 本 取引 が 活 発化 し 、 また 1 9 80 年 代 には 金 融 技術 の 発 達に よ っ て様 々
な金 融 派 生商 品 が 編み だ さ れた 。
5
世界 金 融 危機 は そ の金 融 派 生商 品 が 問題 と な るが 、 従 来の 新 興 国で 発 生 した
通貨 危 機 とは 性 質 が異 な る もの で あ ると 考 え られ る 。 従来 で あ れば 急 激 な資 本
流入 に よ って 新 興 国内 の 一 時的 な 収 支の 悪 化 に過 ぎ な かっ た が 、近 年 は 一国 で
発生 し た 金融 危 機 が世 界 的 に波 及 し 経済 状 況 を悪 化 さ せる 傾 向 にあ る 。
20 0 0 年以 降 の アメ リ カ 経済 の 状 況と し て は 、I T バ ブル が 崩 壊し 、政府
10
が政 策 金 利を 引 き 下げ る こ とに よ っ て経 済 の 活性 化 を 促し 、 住 宅価 格 が 上昇 し
た。
図表2-3
15
欧 米 の 対 家 賃 比 住 宅 価格 ( 1 9 7 0 ~ 2 0 0 7 )
出所 : 長 部重 康 ( 20 1 0 )「 ヨ ー ロッ パ の 金融 危 機 対応 戦 略 と金 融 市 場の 脆
弱性 」 1 69 ペ ー ジ
図表 2 - 3の 欧 米 の対 家 賃 比住 宅 価 格を み て みる と 、 住宅 価 格 が上 昇 し 、担
保価 値 も 上昇 し た 。し か し なが ら サ ブプ ラ イ ムロ ー ン が深 刻 化 し始 め る 20 0
8年 以 降 には 住 宅 価格 が 下 落し て い るこ と が わか る 。
21
一方 、 ユ ーロ 圏 に 関し て 2 00 0 年 以前 ド イ ツ経 済 が 好調 で あ った た め 政策
金利 が 引 き上 げ ら れ住 宅 価 格が 下 落 する が 、 長期 的 に は2 0 0 7年 の 世 界金 融
危機 に か けて 住 宅 価格 が 上 昇す る 傾 向に あ る 。
世界 金 融 危機 の 主 要な 要 因 とし て 住 宅価 格 の 下落 が 挙 げら れ る が 、 そ の 際、
5
問題 と な った の が サブ プ ラ イム ロ ー ンの 存 在 であ る 。
サブ プ ラ イム ロ ー ンと は 、 金融 派 生 商品 の 一 種で あ り 、様 々 な ロー ン を 組み 合
わせ る こ とに よ っ てリ ス ク を軽 減 し 証券 化 し たも の で ある が 、 問題 は 担 保価 値
の上 昇 に よっ て 個 人で 返 済 でき る 上 限を 超 え て借 入 を 行っ て し まっ た た めに 住
宅価 格 下 落時 に 債 務不 履 行 が増 え 、 経済 が 停 滞し た 。 また 世 界 経済 に 波 及 し た
10
要因 と し ては 証 券 化が 行 わ れた 結 果 、世 界 中 の機 関 投 資家 や 個 人投 資 家 が容 易
に投 資 を 行う こ と がで き た から で あ ると 考 え られ る 。
図表2-4
15
世 界 の 主 要 金 融 機 関 の損 失 額
出所: 長 部 重 康( 2 01 0 )「 ヨ ー ロッ パ の 金融 危 機 対応 戦 略 と金 融 市 場の 脆
弱性 」 2 01 ペ ー ジ
図表 2 - 4の 世 界 の主 要 金 融機 関 の 損失 額 を みて み る と、 世 界 金融 危 機 が問
題視 さ れ る2 0 0 7年 以 降 急激 に 増 加し て い る。 特 に 損失 を 被 った の は 20 0
20
0年 以 降 CD O ( 債務 担 保 証書 ) を 多く 保 有 して い た アメ リ カ と欧 州 で あり 、
22
CD O が それ ほ ど 流通 し て いな い ア ジア や 中 南米 な ど と比 べ て 影響 が 大 きい 。
一方 、 直 接的 な 影 響を 受 け たア メ リ カ、 欧 州 以外 の 国 々に つ い ては 先 進 国間
の需 要 が 減り 、 資 本取 引 が 停滞 し て しま っ た ため に 、 新興 国 と 先進 国 間 との 資
本取 引 に つい て も 減少 し て しま っ た と考 え ら れる 。
5
以上 本 節 をま と め ると 、 金 融の グ ロ ーバ ル 化 の進 展 に よっ て 各 国の 資 本 取引
量が 増 加 し、 ま た 金融 工 学 の発 達 に よっ て 様 々な 金 融 商品 が 生 み出 さ れ た 。 そ
の反 面 、 金融 シ ス テム が 複 雑化 し 、 世界 金 融 危機 の よ うに 一 国 で起 き た 金融 危
機が 、 様 々な 業 界 を巻 き 込 みな が ら 新興 国 を 含め 、 今 後も 世 界 的に 大 規 模な 金
融危 機 が 発生 す る 可能 性 が ある 。
10
第2節先進国における金融グローバリゼーション
ここ 数 十 年金 融 改 革 、 金 融 の自 由 化 が進 み 金 融の グ ロ ーバ ル 化 が急 速 に
進展 し て きた 。 そ して 金 融 グロ ー バ ル化 に 伴 って 豊 富 な資 金 フ ロー が さ ら
なる 金 融 改革 や 自 由化 を 進 める 動 機 付け と し て働 い て いる 。 こ のよ う に 金
15
融の グ ロ ーバ ル 化 、金 融 改 革、 自 由 化が そ れ ぞれ 関 係 を持 ち な がら 進 行 し
てき た し てき た 。
1.先進国の分析(アメリカ、イギリス)
(1 ) ア メリ カ
20
グロ ー バ リゼ ー シ ョン の 進 展は ア メ リカ の 考 え方 を 押 し付 け た とい う 見 解が
存在 し て おり 、 事 実最 も 利 益を 獲 得 でき た の はア メ リ カで あ り 、金 融 機 関で あ
ると 考 え られ る 。
しか し 、こ こ で はグ ロ ー バリ ゼ ー ショ ンが ア メ リカ に 与 えた 負 の 影響 と し て 、
対外 債 務 の深 刻 化 を取 り 上 げる 。 ブ レト ン ウ ッズ 体 制 時の 1 9 60 年 台 には ア
25
メリ カ が 国際 収 支 赤字 に 陥 りド ル 危 機が 発 生 した 。そ の背 後 には 、
「 流 動 性デ ィ
レン マ 論 」と い う 考え 方 が あり 、 6 9年 に は SD R ( 特別 引 出 権) の 創 出に つ
なが っ た 。し かし 、
「 流動 性 デ ィレ ン マ論 」は 、ア メ リ カの 国 際収 支 を 擁護 する
もの で あ った が 、 19 7 0 年代 以 前 の赤 字 は 総合 収 支 レベ ル で あり 、 1 98 0
年以 降 の 経常 収 支 赤字 と は 大き く 性 質が 異 な って い る 。
23
アメ リ カ の経 常 収 支赤 字 は 19 8 0 年後 半 以 降拡 大 す る傾 向 に あり 、 こ こ数
年は 特 に 急拡 大 し てい る 。 その 要 因 とし て 8 0年 代 は 財政 赤 字 (双 子 の 赤字 )、
90 年 代 は民 間 部 門の 投 資 ・消 費 で ある が 、 基本 的 に アメ リ カ への 資 本 流入 が
なけ れ ば 継続 し な い 。
5
その た め プラ ザ 合 意以 降 ア メリ カ の 経常 収 支 赤字 を 国 際協 力 の もと 金 利 差を
維持 し て 維持 し よ うと し て きた 。 9 0年 代 以 降の 資 金 流入 は T B( Treasury
Bills)や 国 際に よ る もの で は なく 株 式 、社 債 へシ フ ト し、ア メリ カ の 経常 収支
を上 回 る 金額 を 記 録し た 。 こう し た 資金 流 入 はイ ン フ レが な く とも 高 成 長が 実
現さ せ 、 新興 国 へ の投 資 に 目が 向 け られ 資 金 を流 入 さ せた の で ある 。
10
この よ う にア メ リ カに お け るグ ロ ー バリ ゼ ー ショ ン は 、資 金 流 入が あ る 限り
支出 は 拡 大で き る ため 大 き な政 策 余 地を も た らし た と 考え ら れ る 。 注 意 すべ き
は1 9 6 0年 代 、 70 年 代 もア メ リ カの み が 政策 の 自 由度 を 持 つ点 で は 同じ で
ある が 、 金融 の グ ロー バ ル 化は よ り 深化 さ せ 、国 際 資 金循 環 に 大き な 影 響を 及
ぼす よ う にな っ た 。
15
(2 ) イ ギリ ス
19 9 7 年労 働 党 政権 成 立 後 、 ト ニ ー・ ブ レ ア首 相 は 当時 大 蔵 大臣 で あ った
ゴー ド ン ・ブ ラ ウ ンを 通 じ て 、 イ ン グラ ン ド 銀行 改 革 を断 行 し た 。 す な わち 、
従来 業 態 別に 金 融 機関 を 規 制・ 監 督 して き た 伝統 的 か つ重 層 的 なシ ス テ ムを 抜
20
本的 に 改 革し た 。
特に 銀 行 を規 制 ・ 監督 す る とい う 権 限を イ ン グラ ン ド から 取 り 上げ 、 一 元的
に規 制 ・ 監督 す る 金融 サ ー ビス 機 構 ( FinancialServicesAuthority: F SA )
を設 立 さ せた 。
その 後 1 99 8 年 に新 し い イン グ ラ ンド 銀 行 法が 、 2 00 0 年 には F S Aの
25
設置 や 金 融商 品 取 引に 関 す る包 括 的 な「 金 融サ ー ビ ス・市 場法 」が施 行 さ れた 。
図表2-5
米 日 英 の 金 融 規 制 の 仕組 み
24
出所:春 井 久 志( 20 0 9)
「 中 央銀 行と 金 融 シス テ ム 安定 性:グ ロ ーバ ル化 の
下で の イ ギリ ス を 中心 に 」 19 4 ペ ージ
5
結果 と し て、 イ ギ リス の 金 融規 制 ・ 監督 制 度 は財 務 省 ・イ ン グ ラン ド 銀 行・
金融 サ ー ビス 機 構(F S A )の「 三者 連合 体 制( tripartite)」と 呼 ばれ る イギ
リス 独 特 のシ ス テ ムが 構 築 され る こ とに な っ た 。 世 界 でも ユ ニ ーク な シ ステ ム
がを 鼎 立 させ た 。これ を「 三者 連 合 体 制( tripartite)」と 呼ぶ 。ま た、裁 判外
紛争 処 理 を行 な う「金 融 オ ンブ ズ マ ン 機構( FinancialOmbudsmanService:FO
10
S)」 が導 入 さ れた 。
2.先進国における金融グローバリゼーション
金融 グ ロ ーバ ル 化 は先 進 国 、新 興 国 含め 少 な から ず 金 融グ ロ ー バル 化 の 恩恵
を受 け た が、 負 の 側面 が み られ る 。 とい う の も金 融 グ ロー バ ル 化が 進 展 する に
15
つれ て 便 益を 得 た 先進 国 と 、金 融 グ ロー バ ル 化と 通 貨 ・金 融 危 機の 発 生 を新 興
国は 順 番 に繰 り 返 して き た 。
図表2-6
外貨準備と輸入の関係
25
出所:国 宗 浩 三( 20 0 8年 )
「 金融 グロ ー バ ル化 と 翻 弄さ れ る 途上 国 」2ペ ー
ジ
5
図表 2 - 6は 先 進 国、 新 興 国の 外 貨 準備 が 輸 入の 何 カ 月分 あ る かを 示 し たも
ので あ る が、 1 9 90 年 以 降先 進 国 では 外 貨 準備 を 減 らし 2 か 月分 を 上 回る 程
度と な っ てい る が 、新 興 国 では 断 続 的に 増 加 し9 ヶ 月 分に 相 当 する 外 貨 準備 と
なっ て い る。 こ の 違い は 企 業金 融 機 関と い っ た経 済 主 体が 国 際 市場 に 積 極的 に
参加 す る 中で 、 政 府は 外 貨 準備 を 減 らし 、 一 方の 新 興 国は 金 融 グロ ー バ ル化 に
10
対し て 警 戒感 を 持 って お り 、政 府 は 外貨 準 備 を積 み 増 した の だ と考 え ら れる 。
本来 で あ れば 外 貨 準備 は 万 一の 場 合 の備 え と して の 保 有が 期 待 され る た め、
比較 的 換 金が 容 易 で安 全 な 資産 ( 具 体的 に は 米国 の 財 務省 証 券 など ) の 形で 保
有さ れ る 。
しか し こ うし た 資 産の 収 益 率は 低 く 、外 貨 準 備の 対 象 とな る の は安 全 資 産で
15
ある ア メ リカ や 円 とい っ た 先進 国 通 貨で あ る こと か ら 、新 興 国 は低 利 で 融資 を
行っ て い るこ と に なる 。
この こ と から 先 進 国の 利 用 可能 な 資 金量 を 増 やし 資 金 コス ト を 低下 さ せ 、企
業や 金 融 機関 が 新 興国 に 投 資を 行 い うこ と で 、高 い 収 益を 稼 い でき た 。
26
図表2-7
先進国と途上国の関係
出所:国 宗 浩 三( 20 0 8年 )
「 金融 グロ ー バ ル化 と 翻 弄さ れ る 途上 国 」3ペ ー
ジ
5
その 例 と して 、 ア メリ カ は 純債 務 国 であ る が 、投 資 収 支は 黒 字 であ る 。 要す
るに ア メ リカ は 対 外債 務 よ りも 米 国 が受 け 取 る利 払 い や配 当 額 の方 が 支 払う 額
より も 大 きい 。 も っと も 今 回の 金 融 のグ ロ ー バル 化 に おい て 交 代す る こ とは 避
けら れ な いこ と か ら、 こ の よう な 構 図が 続 く かは 不 透 明だ 。
10
日本 政 府 は金 融 危 機に 際 し 、2 0 0 8年 の G 7で 新 興 国に 対 し て従 来 の 金融
融資 制 度 を緩 和 さ せる べ き だと 述 べ 、I M F はこ れ に 応え 2 0 08 年 1 0月 末
に短 期 流 動性 融 資 制度 ( S LF ) を 創設 し た 。そ の 後 もI M F の新 興 国 に対 す
る融 資 等 の意 思 決 定方 法 の 改革 が 必 要で あ る と述 べ 、 新興 国 を 含め た 経 済の 活
性化 と 安 定化 を 図 るこ と が 重要 で あ る。
15
第3節
新興国における金融グローバリゼーション
近年 世 界 経済 の 危 機的 状 況 が続 く な かで 、 新 興国 の 影 響力 が 急 速に 増 し てい
る。 国 際 通貨 基 金 ( I M F )の 2 0 11 年 9 月の 世 界 経済 見 通 し( W E O) に
よる と 、 20 1 0 年に 世 界 経済 は 成 長率 5 . 1% で あ った が 、 先進 国 の 成長 率
20
は3 . 1 %に と ど まっ た 。 一方 、 新 興国 は 7 .3 % の 経済 成 長 率を 達 し 、ま た
20 1 0 年の 世 界 経済 成 長 に対 す る 新興 国 の 寄与 度 は 69 , 2 %に 達 し てい る
こと か ら も、 世 界 の経 済 の 中心 が 先 進国 か ら 新興 国 に 移行 し て きて い る こと が
27
分か る 。
先進 国 は 高い 金 融 ・財 政 債 務比 率 、 高い 失 業 率、 低 金 利、 低 成 長に 、 一 方、
新興 国 は 低い 金 融 ・財 政 債 務比 率 、 低い 失 業 率、 高 金 利、 高 成 長に 特 徴 づけ ら
れる 。 そ して 世 界 経済 の 運 営主 体 も 先進 国 中 心の G 7 から 、 一 部新 興 国 を含 む
5
G2 0 へ と大 き く 変化 し て いる こ と から 新 興 国経 済 に つい て 検 討し て い きた い 。
1.新興国の展開
(1 ) 新 興国 の 台 頭
リ ー マ ン・シ ョッ ク 後 の世 界 経 済は 、新 興 国経 済 が 影響 力 を 増し て き てい る。
10
20 0 9 ~2 0 3 0年 の 世 界全 体 に 占め る G DP は 、 中国 が 8 .3 % で あっ
たも の が 23 . 9 %に 上 昇 。一 方 、 先進 国 は アメ リ カ が2 4 . 9% か ら 17 .
0% に 、 欧州 が 2 4. 9 % 、日 本 が 8. 8 % から 5 . 8% に 軒 並み 低 下 して い
る。
この こ と から 中 国 の1 人 当 たり あ た りの G D Pは 2 0 30 年 に アメ リ カ の3
15
0% 前 後 にな る と 予想 さ れ てい る 。 しか し 中 国は こ の 後少 子 高 齢化 を 迎 える と
予想 さ れ てい る が 、他 の 東 南ア ジ ア や中 南 米 等の 新 興 国に 関 し ては 人 口 の 増 加
が見 込 ま れて お り 高い 経 済 成長 率 が 期待 で き るも の と 考え ら れ る 。
(2 ) グ ロー バ ル 化の 影 響
20
新興 国 の 経済 成 長 の要 因 は 、グ ロ ー バル 化 の 進展 に 伴 って 先 進 国と の 資 本取
引が 増 加 した こ と であ る 。 資本 規 制 の緩 和 に 伴い 国 内 外で の 市 場で 厳 し い競 争
が予 想 さ れる た め 、製 品 の 開発 や 先 進技 術 が 組み 込 ま れた 機 械 を導 入 す るこ と
によ っ て 生産 力 上 昇を 図 っ た。 ま た 生産 や 輸 出の 増 加 を通 し て 外貨 を 獲 得す る
ため 、 生 産性 を 高 める よ う な先 進 設 備の 輸 入 を可 能 に し、 所 得 が増 加 す るこ と
25
で商 品 購 買意 欲 が 高ま る と いっ た 循 環が 生 ま れる と 考 えら れ る 。
この グ ロ ーバ ル 化 の進 展 に よっ て 、 資本 移 動 が容 易 と なっ た こ とか ら 、 国と
国と の 結 びつ き が 強く な り 経済 的 関 係性 が 非 常に 密 接 にな り 、 多国 籍 企 業が 増
加し た と 考え ら れ る。
30
① 中国
28
中国 は 上 述し た 内 容を 可 能 にさ せ る ため 対 外 市場 を 開 放し 、 経 済的 連 携 の拡
大で は な く世 界 経 済を 巻 き 込む よ う な経 済 政 策を 行 っ てい る 。 これ は 現 在の グ
ロー バ ル 化そ の も のを 表 し てお り 、 情報 技 術 の発 達 に よっ て 、 より 一 層 国際 化
が進 ん だ と考 え ら れる 。
5
この よ う な対 外 開 放に よ っ て、 経 営 資源 の 移 転を 認 め る直 接 投 資の 受 け 入れ
が行 わ れ た結 果 、成 長 率 が上 昇 し、ま た直 接 投 資 の 増 加 によ っ て、輸 出 が拡 大、
成長 率 の 上昇 に 再 び結 び つ くと い っ た循 環 を 中国 の み なら ず 他 の新 興 国 も享 受
する こ と が可 能 と なっ た 。
10
② イン ド
イン ド は 19 9 1 年頃 か ら 市場 開 放 を推 し 進 める こ と によ っ て 高い 経 済 成長
を維 持 し てお り 、 また ル ピ ーの 急 激 な変 動 を 抑え る た めに 為 替 市場 へ の 介入 を
行う こ と で国 内 の 安定 化 を 図っ て い る。 そ の 一方 で 国 際金 融 の トリ レ ン マよ り
金融 市 場 の独 立 性 が脅 か さ れて お り 、R B I はマ ネ ー と物 価 の 関係 を 重 視し て
15
いる が 、 為替 市 場 介入 に よ って マ ネ ーサ プ ラ イに 影 響 を与 え て いる 。 そ の例 と
して 、 2 00 6 年 の世 界 金 融危 機 の 影響 で 2 00 8 年 頃に イ ン ドの 政 策 金利 と
コー ル レ ート の 関 係に お い てコ ー ル レー ト が レポ レ ー トを 上 回 ると い っ た流 動
性の 低 下 がみ ら れ るよ う に 国内 経 済 を不 安 定 化さ せ る 可能 性 が ある 。
20
③ ロシ ア
ロシ ア が 市場 開 放 した の は 19 9 0 年以 降 で あり 、 ロ シア 経 済 の主 な 収 入源
は原 油 の 輸出 が 大 半を 占 め てい る 。 しか し な がら 原 油 価格 の 変 動に よ っ て国 内
経済 が 左 右さ れ る 可能 性 が あり 、 国 内経 済 の 不安 定 化 が予 想 さ れる こ と から 、
20 0 8 年に 経 済 の多 様 化 を目 指 す と宣 言 し 、安 定 的 な輸 出 が 行え る よ う整 備
25
が進 め ら れて い る 。ま た 、 20 1 2 年8 月 に はW T O に加 入 し 、輸 出 以 外に も
ビジ ネ ス 面の 市 場 開放 を 推 し進 め る こと に よ って 国 内 の安 定 化 を図 っ て いる 。
2.新興国経済における特徴
(1 ) 新 興国 経 済 の特 徴
30
前節 で は 金融 グ ロ ーバ ル 化 の進 展 に 伴い 中 国 、イ ン ド 、ロ シ ア がど の よ うな
29
スタ ン ス を取 っ て きた の か を明 ら か にし て き たが 、 こ こで は 新 興国 経 済 が発 展
して き た 要因 に つ いて 検 討 して い き たい 。
第1 の 要 因と し て は人 口 が 多い 国 ほ ど経 済 成 長率 が 高 いと い う こと で あ る。
図表 2 - 8は 2 0 00 年 か ら2 0 1 2年 に か けて の 各 国の 成 長 率の 平 均 と人
5
口規 模 の 関係 を 表 すグ ラ フ であ る が 、近 年 注 目さ れ て いる B R IC s の 経済 成
長が 高 く また 人 口 も多 い こ とが 分 か る。
図表2-8
10
新 興 国 の 成 長 率 と 人 口規 模 : 人 口
出典 : 内 閣府 ( 2 01 4 ) 「新 興 国 経済 の リ スク と 可 能性 」 1 14 ペ ー ジ
では な ぜ 成長 率 と 人口 の 増 加が 相 関 関係 に あ るの で あ ろう か 。 人口 が 多 いこ
とで 、 一 人当 た り の所 得 水 準が 低 く ても 購 入 量の 総 量 は、 人 口 が少 な く 一人 当
たり の 所 得水 準 が 高い 場 合 と変 わ ら ない 。 よ って 新 興 国に お い ても 自 国 経済 、
15
さら に は 世界 経 済 に与 え る 影響 は 相 対的 に 高 まる と 考 えら れ る 。
第2 に 資 源を 多 く 保有 し て いる と い うこ と で ある 。 近 年で は 世 界金 融 危 機、
原油 価 格 の下 落 な どに よ っ て負 の 影 響を 受 け てい る が 、そ れ 以 前は 高 価 格で 取
引さ れ て おり 、 新 興国 は 恩 恵を 受 け たと 考 え られ る 。
第3 に 金 融グ ロ ー バル 化 の 進展 に 伴 って 資 本 取引 が 活 発化 し 、 先進 国 か らの
20
資本 流 入 が増 加 し たこ と で ある 。 そ の理 由 と して 先 進 国で は 資 本蓄 積 が 進み 、
30
収益 性 が 低下 し た ため 収 益 性の 高 い 新興 国 へ 資本 移 動 が起 こ っ たも の と みら れ
る。 そ の 際直 接 投 資に よ る もの で あ れば 、 上 述し た よ うに 技 術 も流 入 し 経済 成
長に つ な がる の で はな い か と考 え ら れる 。 し かし 金 融 シス テ ム の整 備 が 進ん で
いな い 国 につ い て は、 資 本 移動 が 起 こり に く いと 考 え られ る 。
5
以上 を ま とめ る と 金融 グ ロ ーバ ル 化 にお け る メリ ッ ト は、 資 本 移動 規 制 が緩
和さ れ 、 また 自 国 の金 融 シ ステ ム が 整備 さ れ るこ と に よっ て 、 資本 蓄 積 が低 く
収益 性 の 高い 新 興 国に 資 本 流入 が 生 じた こ と であ る 。
そし て 資 本流 入 が 生じ る こ とに よ り 、企 業 は 製品 の 開 発を 推 し 進め 、 先 端設
備を 導 入 し、 販 売 する こ と で、 図 表 2- 1 で みた よ う に所 得 水 準が 低 く ても 、
10
人口 が 多 い国 で あ れば 消 費 につ な が り、 結 果 とし て 企 業業 績 の 改善 、 賃 金の 上
昇と い っ た好 循 環 が新 興 国 経済 に お い て 生 ま れる 可 能 性が あ る と考 え ら れる 。
第3章
15
金融グローバリゼーションの影響
第1節 先進国における金融グローバリゼーションの
ネガティブ効果
金融 の グ ロー バ リ ゼー シ ョ ンは 、 3 つの レ ベ ルで と ら える こ と がで き る 。第
1は 市 場 で、 金 融 ・資 本 市 場が 世 界 的に 統 合 され 、 国 際間 の 資 金フ ロ ー が巨 大
化す る こ とに よ り、各 国 の金 利 水 準の 連動 性 が 高ま る 。第 2 は 金融 機 関 であ り、
世界 的 に 統合 さ れ た市 場 に おい て 、 国境 を 越 えた 金 融 機関 の 競 争が 行 わ れ、 市
20
場間 の 優 位と と も に金 融 機 関の 優 位 も決 ま る。第 3 は制 度・ル ー ル で、市 場間 、
金融 機 関 の競 争 の 結果 、 制 度や ル ー ルが 国 際 的に 統 一 され る 。 これ は グ ロー バ
ル・ ス タ ンダ ー ド 、す な わ ちア メ リ カン ス タ ンダ ー ド への 収 斂 であ る 。
アメ リ カ やイ ギ リ スは 、 金 融の 自 由 化を 進 め 、規 制 当 局の 監 視 を逃 れ 、 金融
機関 が 自 由に 投 資 ・投 機 活 動を 行 う こと を 許 容し た 。 その な か で、 投 資 銀行 の
25
みな ら ず 商業 銀 行 、そ し て 大量 に 設 立さ れ た ヘッ ジ フ ァン ド が 、証 券 化 商品 の
開発 や レ ヴァ リ ッ ジを 利 用 する こ と でお ど ろ くべ き 巨 額の 資 金 を集 め た 。
2.貧困格差
31
産業 革 命 以来 世 界 を特 徴 づ けて き た 富裕 国 と 貧困 国 の 間の は っ きり し た 区分
は現 在 で は薄 れ て いる 。 第 2に 、 貿 易関 係 を 強化 し 海 外か ら の 直接 投 資 を増 加
させ る こ とに よ る グロ ー バ ル化 は 、 後発 国 が ノウ ハ ウ およ び 技 術を 輸 入 し取 り
入れ る 過 程を 通 じ てキ ャ ッ チア ッ プ 戦略 を 生 かし た 経 済成 長 を 促進 す る 。第 2
5
に、 人 口 増加 の ペ ース が 遅 い新 興 国 およ び 途 上 国 の 多 くに お い ては 、 そ の人 口
動態 が 資 本集 約 度 を向 上 さ せ、 一 人 当た り 成 長を 促 し た。
一方 先 進 国で は 、 特に 欧 州 およ び 日 本に お い て高 齢 者 の割 合 が 著し く 増 加し
た。 所 得 収斂 の 第 3の 顕 著 な原 因 は 、過 去 1 0 年 間 に 新興 国 ・ 開発 途 上 国で 投
資さ れ た 所得 の 対 GD P 比 率が 、 先 進国 の 2 0. 5 パ ーセ ン ト と比 較 し て2 7
10
パー セ ン トで あ る 。投 資 は 、利 用 で きる 資 本 を増 加 さ せ労 働 生 産性 を 高 める だ
けで な く 、新 し い 知識 と 生 産技 術 を 取り 入 れ るこ と に よっ て 、 総要 素 生 産性 を
向上 さ せ 、農 業 な どの 生 産 性の 低 い 部門 か ら 製造 業 な どの 生 産 性の 高 い 部門 へ
の移 行 を 促進 す る こと も 可 能で あ る 。
15
3.政治・経済・国際問題
19 5 0 年代 末 以 降、 先 進 工業 諸 国 は、 金 融 グロ ー バ ルに と っ て重 要 な 3つ
の政 策 決 定を 行 っ た。
第1 に 、 率先 し て 自由 化 を 進め 、 市 場参 加 者 に、 よ り 大 き な 自 由を 与 え る政
策決 定 で ある 。 最 も重 要 な のは 、 1 96 0 年 代に イ ギ リス と ア メリ カ が ユー ロ
20
市場 の 成 長を 強 く 支持 し た こと で あ るが 、 1 97 0 年 代の 資 本 規制 の 解 除に 関
して も 、 イギ リ ス とア メ リ カが 主 導 的役 割 を 果た し た 。
第2 に 、 制度 的 に は実 行 可 能な は ず の資 本 規 制を あ え て実 施 し ない と い う政
策決 定 で ある 。 投 機的 資 本 移動 を コ ント ロ ー ルす る た めの 協 調 的資 本 規 制と 包
括的 為 替 管理 は 、 ブレ ト ン ウッ ズ 最 終協 定 に も盛 り 込 まれ て い た。 各 国 の自 律
25
的経 済 政 策の 有 効 性を 維 持 する た め に、 伝 家 の宝 刀 を 抜く 動 き は実 際 に あっ た
が、 実 行 され な か った 。
第3 に 、 大規 模 な 国際 金 融 危機 回 避 に向 け た 政策 決 定 であ る 。 19 7 4 年の
国際 銀 行 危機 、 8 2年 の 債 務危 機 、 87 年 の 株式 市 場 のク ラ ッ シュ な ど にお い
て、 ア メ リカ を 先 頭に G 1 0諸 国 の 緊密 な 中 央銀 行 間 協力 が 果 たさ れ 、 国家 が
30
最後 の 貸 し手 機 能 を発 揮 し た。
32
4.影響への対策
アジ ア 危 機や 開 発 問題 に 関 する 国 際 的な 議 論 で、 国 際 機関 に 対 する 批 判 がこ
の間 強 ま って き た 。I M F はイ ン フ レや 財 政 赤字 を 恐 れる あ ま り、 各 国 に引 き
5
締め 政 策 を強 要 す るこ と に よっ て 経 済成 長 を 妨害 し て きた 。 I MF と 世 銀に 対
して だ が 、調 整 政 策が 貧 困 層に ど う いう 影 響 を与 え る のか と い うこ と に 対し て
配慮 が 十 分で な い 。そ れ ぞ れの 国 は 固有 の 歴 史的 な 伝 統や 政 治 状況 , 民 族的 な
構成 、 そ うい う も のを 持 っ てい る わ けで す が 、そ う い う国 内 制 度の 多 様 性が 見
られ て い ない 、 ま た途 上 国 の産 業 政 策と い う もの を I MF ・ 世 銀と い う ブレ ト
10
ンウ ッ ズ 機関 は 等 閑視 し て いる 。
第2節
影響
新興国における金融グローバリゼーションの
金融 グ ロ ーバ ル 化 の進 展 に よっ て 新 興国 が 受 けた 影 響 は、 恩 恵 を享 受 し てき
15
た先 進 国 と異 な り 通貨 危 機 や金 融 危 機を 繰 り 返し 引 き 起こ し 、 経済 的 利 益を 十
分に 享 受 する こ と がで き な かっ た 。 そこ で 本 節で は 金 融グ ロ ー バル 化 の 進展 に
よる 新 興 国の 影 響 を明 ら か にし 、 ま た懸 念 さ れる こ と は何 か と いう こ と 明ら か
にし て い きた い 。
20
1.新興国における金融グローバル化
19 8 0 年代 以 降 の金 融 の グロ ー バ ル化 の 進 展に よ っ て資 本 流 出入 が 増 加し 、
対外 資 産 負債 の 両 方を 拡 大 させ て き た。 1 9 80 年 以 降新 興 国 では 長 期 的に 資
本流 出 入 が増 加 し てい る が 、と り わ け1 9 9 0年 以 降 新興 国 の 株式 市 場 が注 目
され る よ うに な っ て以 降 、 先進 国 の 機関 投 資 家に よ る 株式 投 資 が拡 大 し てき て
25
いる 。 最 近で は 新 興国 の 中 でも 中 国 、イ ン ド 、ブ ラ ジ ルな ど の 経済 大 国 は先 進
国や ほ か の新 興 国 への 直 接 投資 を 拡 大し て き てい る よ うに 経 済 的な 影 響 力を 持
つよ う に なっ て き てい る 。 しか し 先 進国 か ら のO D A が近 年 は 停滞 し て いる こ
とか ら 、 経済 的 に 豊か で な い途 上 国 への 民 間 投資 は 少 なく 、 金 融グ ロ ー バル 化
の進 展 は 限定 的 で ある と 考 えら れ る 。
33
2.発展途上国での影響
発展 途 上 国の 基 本 的な 立 場 とし て グ ロー バ ル 化そ の も のに 反 対 して い る ので
はな く 、 以下 に 挙 げる 5 つ が問 題 で ある と さ れる 。
5
第1 に グ ロー バ ル 化に お け るル ー ル が先 進 国 有利 に 作 られ て お り、 発 展 途上
国で は 国 民生 活 の 悪化 が 見 られ た 。 第2 に 利 益追 求 に 重点 を 置 きす ぎ た ため に
環境 を 破 壊し て し まっ た こ と。 第 3 にグ ロ ー バル 化 に よっ て 発 展途 上 国 の社 会
保障 等 の 政策 余 地 が狭 ま り 、そ れ が 民主 主 義 の弱 体 に も繋 が っ たと さ れ てい る
こと 。 第 4に 先 進 国の よ う に、 途 上 国の 多 く の国 々 は 十分 な 経 済的 利 益 を得 る
10
こと が で きな か っ たと い う こと 。 第 5に グ ロ ーバ ル 化 によ っ て 自国 経 済 に適 切
な政 策 を 講じ る こ とが 出 来 なか っ た とい う こ とが 挙 げ られ る 。
なか で も 5つ 目 が 重要 で あ ると さ れ 、国 家 の シス テ ム は国 情 に よっ て 様 々な
種類 が あ る。 そ の ため グ ロ ーバ ル 化 の進 展 に 伴っ て 十 分な 恩 恵 を得 る こ とが 出
来た 先 進 国で は 、 豊富 な 資 金を 基 に 国民 に 社 会保 障 を 提供 す る こと が で き、 途
15
上国 は 政 府自 体 が 貧し く 社 会保 障 を 充実 さ せ るこ と が でき ず 国 民を 十 分 に支 え
るこ と が 出来 な い とい う よ うに 先 進 国、 新 興 国、 途 上 国の 国 家 間の 格 差 が生 じ
てし ま っ てい る 。
次に あ げ る事 柄 は その 新 興 国、 途 上 国の 中 か らア フ リ カ、 東 ア ジア 、 ラ テ ン
アメ リ カ 、ア ラ ブ 諸国 の 4 つの 地 域 に目 を 向 けそ れ ぞ れの 地 域 がど の よ うな 経
20
済状 況 で あっ た の かと い う こと を 簡 潔に 整 理 して い き たい 。
(1)アフリカ
アフ リ カ は1 9 6 0年 代 に 植民 地 支 配か ら 脱 した が 、 民族 を 考 慮せ ず に 国境
が決 め ら れた た め 、紛 争 が たび た び 発生 し て いる 。 そ のた め グ ロー バ ル 化の 恩
25
恵を 享 受 する こ と がで き ず 、1 9 8 0年 代 に アフ リ カ 諸国 で み られ た 構 造調 整
政策 の よ うに グ ロ ーバ ル 化 と個 人 の 経済 活 動 を結 び つ ける こ と によ っ て 恩恵 を
享受 す る こと に よ って 試 み たの で あ る。 し か し経 済 的 な下 支 え がな く 、 また 人
的資 本 が 不足 し て いる こ と から 経 済 的発 展 を 遂げ る こ とは で き なか っ た が、 1
98 0 年 代の ア フ リカ 諸 国 に閉 め る 直接 投 資 が2 % か ら2 0 0 3年 に 6 %に 回
30
復す る な ど近 年 で は改 善 の 兆し が み られ る 。
34
(2) 東アジア
東ア ジ ア 諸国 は グ ロー バ ル 化の 進 展 に際 し 、 外国 資 本 を呼 び 込 み輸 出 を 増加
させ る こ とに よ っ て経 済 的 発展 を 遂 げよ う と する 傾 向 がみ ら れ る。
5
しか し 、 19 9 0 年代 に は 外国 直 接 投資 の 増 加に 伴 っ て1 9 9 7年 に 発 生し
たア ジ ア 通貨 危 機 のよ う に 、ア ジ ア 国内 の 金 融シ ス テ ムの 脆 弱 性が 露 呈 する 形
とな っ た 。そ の た め東 ア ジ ア諸 国 は この 反 省 を踏 ま え 、経 済 の 安定 化 を 図る た
めに 政 策 の方 向 性 を再 考 す る契 機 と なっ た 。
10
(3)ラテンアメリカ
ラテ ン ア メリ カ 諸 国 は 輸 入 代替 工 業 化政 策 に よっ て 経 済的 発 展 を遂 げ よ うと
した が 、一 次 産 品の 輸 出 や外 国 金 融機 関に よ る 借り 入 れ など 対 外 債務 が 増 加し 、
19 8 0 年代 の 債 務危 機 に 直面 す る こと に な った 。
この 債 務 危機 に よ って 国 家 主導 型 か ら経 済 の 自由 化 に よる 発 展 を目 指 し 、G
15
DP 成 長 率の 上 昇 が見 ら れ るよ う に グロ ー バ ル化 を 享 受す る 一 方で 、 格 差の 拡
大が み ら れる 。
(4)アラブ諸国
アラ ブ 諸 国は 1 9 70 年 代 の石 油 危 機以 降 莫 大な 収 入 を得 る こ とに な る が、
20
国内 情 勢 の安 定 化 を図 る た め富 を 分 配し 、 政 治的 ・ 経 済的 安 定 を図 っ た 。し か
し、 石 油 収入 の 恩 恵を 国 民 が一 方 的 に国 家 に 依存 す る とい う と いう 関 係 が生 じ
てい る 以 上、 国 内 の経 済 活 動が 活 発 であ る と は必 ず し も言 え な い。
以上 の こ とか ら 金 融の グ ロ ーバ ル 化 にお け る 新興 国 の 影響 に つ いて 考 え られ
25
る事 柄 は 、資 本 取 引規 制 が なさ れ 実 体経 済 と かけ 離 れ た状 態 で 為替 レ ー トを 維
持し よ う と試 み た こと 。 ま た新 興 国 や途 上 国 の国 々 は 人的 資 本 が不 足 し てい た
上に 、 国 内金 融 シ ステ ム が 脆弱 で あ った こ と が挙 げ ら れる 。
さら に は 資本 を 受 け入 れ る ため の 法 整備 が 整 って は お らず 、 資 本蓄 積 を 多く
保有 す る 先進 国 な どか ら の 資本 流 入 が少 な か った 。 ま た( 2 ) (3 ) に みら れ
30
るよ う に 不十 分 な 国内 金 融 シス テ ム のま ま 資 本流 入 が 活発 化 さ せて し ま うと 1
35
99 0 年 代の 通 貨 危機 の よ うに 国 際 金融 危 機 を招 く 恐 れが あ る 。
第 4 章金融グローバリゼーションと世界金融
危機
5
1.従来の金融危機
20 0 8 年9 月 の リー マ ン ・シ ョ ッ クに 端 を 発し た 世 界的 な 金 融危 機 と 不況
は、 各 国 の懸 命 な 景気 対 策 によ っ て 何と か 小 康状 態 を 保っ て い るも の の 、今 後
自体 が ど う展 開 す るの か 予 断を 許 さ ない 状 況 が続 い て いる 。
E U も また 、 ギ リシ ャ 危 機、 さ ら には ア イ ルラ ン ド 危機 な ど の影 響 も あっ て
10
深刻 な 危 機が 続 い てい る 。 日本 は 、 この 世 界 金融 危 機 が続 く 中 で異 常 円 高に 見
舞わ れ 、 政策 の テ コ入 れ に よっ て 回 復し つ つ あっ た 景 気の 行 く 先に 暗 雲 がか か
り、 か ろ うじ て 再 び動 き 始 めた 新 興 国輸 出 に 望み を 託 して い る 状態 で あ る。
そも そ も グロ ー バ ル金 融 危 機の 発 端 は2 0 0 0年 末 の IT バ ブ ル崩 壊 ま でさ
かの ぼ る。こ の 時に 起 き た大 幅 な 設備 投資 低 迷 の対 応 と して 、米国 、ユー ロ 圏、
15
英国 な ど の先 進 国 が軒 並 み 政策 金 利 を引 き 下 げた 。 中 でも 米 国 は、 2 0 00 年
末の 6 . 5% か ら わず か 1 年の 間 に 1. 7 5 %ま で 引 き下 げ 、 さら に 1 年半 か
けて 1 % まで 引 き 下げ た 。 それ で も 企業 の 設 備投 資 は 回復 し な かっ た 。 その 間
に家 計 部 門の 借 り 入れ を 伴 う住 宅 投 資が 進 行 した 。 こ の現 象 は 、日 本 、 ドイ ツ
を除 き ほ ぼ先 進 国 中で 見 ら れた 現 象 であ っ た 。
20
住 宅 投 資増 加 は 、住 宅 価 格の 高 騰 をも た ら し、 さ ら に高 騰 し た資 産 を 担保 に
借り 入 れ を増 や す とい う バ ブル 的 な 様相 を 呈 して い っ た。 こ れ に対 し 、 まず 英
国が 利 上 げに 動 き 、半 年 遅 れて 米 国 も利 上 げ を始 め た 。こ の 時 の利 上 げ のペ ー
スは 、 住 宅バ ブ ル を抑 え る こと が 目 的で あ っ たも の の 、日 本 が バブ ル を 潰し す
ぎて デ フ レに 陥 っ た教 訓 か ら、 非 常 に恐 る 恐 るの 緩 や かな 利 上 げで あ る 。
25
最 初 に 世界 全 体 を震 撼 さ せた の は 、8 月 に 仏銀 B N Pパ リ バ が傘 下 の サブ プ
ライ ム 関 連投 資 フ ァン ド の 凍結 を 投 資家 に 通 告し た こ とで あ っ た。 こ れ は、 パ
リバ ・ シ ョッ ク と 呼ば れ る が、 世 界 の投 資 家 は、 サ ブ プラ イ ム 問題 を 認 識し て
36
いた も の の、 最 初 に問 題 が 噴出 し た のが 米 国 では な く 欧州 と い う離 れ た 地だ っ
たこ と に 衝撃 を 受 けた 。 単 なる 米 国 の地 域 的 な問 題 で はな い と いう 漠 と した 不
安が 世 界 中に 広 ま った の で ある 。 衝 撃は す ぐ に欧 州 の 銀行 間 市 場の 流 動 性危 機
とな り 、欧 州 中 央銀 行(E C B)は 即 日に 9 5 0億 ユ ー ロの 資 金 供給 を 実 施し 、
5
その 後 も 数日 に わ たっ て 追 加で 1 0 87 億 ユ ーロ の 資 金供 給 を 実施 せ ざ るを 得
なか っ た 。
次の 出 来 事も 欧 州 だっ た 。 英国 の 預 金機 関 で ある ノ ー ザン ・ ロ ック が 、 資本
市場 か ら の資 金 調 達難 に 陥 り、 預 金 者 が 銀 行 に殺 到 し て取 り 付 け騒 ぎ と なっ た
ので あ る 。米 国 の 住宅 ロ ー ンの 問 題 が、 立 て 続け に 欧 州で の 金 融市 場 の 緊張 と
10
なっ て 表 れ、 世 界 の投 資 家 が、 見 え ない と こ ろで と ん でも な く 大き な 問 題が 進
行し て い ると 確 信 を得 る よ うに な る 。2 0 0 7年 の 最 後の 四 半 期に は 、 スイ ス
の銀 行 最 大手 U B S、 米 国 のメ リ ル リン チ な どが 次 々 と巨 額 の 損失 や 不 良債 権
を発 表 し た。 F R Bは 利 下 げを 開 始 し、 ま た 米国 、 ユ ーロ 圏 、 英国 、 日 本、 ス
イス の 5 中央 銀 行 が1 2 月 にグ ロ ー バル な 規 模で 緊 急 協調 資 金 供給 を 実 施し た 。
15
20 0 8 年の 3 月 に次 の 大 きな シ ョ ック が 国 際金 融 市 場を 襲 っ た。 米 国 第5
位の 投 資 銀行 ベ ア ー・ ス タ ーン ズ が 破綻 し た ので あ る 。こ の 破 綻に 対 し ては J
Pモ ル ガ ン・ チ ェ ース が 救 済合 併 を 行っ た 。 4月 に は 、I M F がサ ブ プ ライ ム
関連 の 損 失が 全 世 界で 少 な くと も 1 兆ド ル に 上が る と 予想 し 、 さら に 問 題が サ
ブプ ラ イ ムロ ー ン だけ の 世 界か ら 、 商業 用 不 動産 ロ ー ン、 消 費 者ロ ー ン 、企 業
20
向け ロ ー ンと 次 々 に広 が り つつ あ る と警 告 し た。 バ ー ナン キ の 前年 の 1 00 0
億ド ル の 損失 と い う予 想 が 、わ ず か 9ヵ 月 の うち に 1 0倍 に 膨 れ上 が っ たの で
ある 。 そ して 同 年 9月 1 5 日に リ ー マン ・ ブ ラザ ー ズ が倒 産 し た。 こ の 時は ど
こも 救 済 合併 に 動 かず 、すで に 金 融市 場の セ ン チメ ン ト は十 分 悪 化し て い たが 、
この シ ョ ック に よ って 完 全 に市 場 の 空気 は 凍 りつ い た 。こ れ は リー マ ン ・ブ ラ
25
ザー ズ ・ ショ ッ ク (あ る い は短 縮 形 でリ ー マ ン・ シ ョ ック ) と 呼ば れ る 。
同日 メ リ ルリ ン チ が経 営 危 機に 陥 り 、こ れ に はバ ン ク ・オ ブ ・ アメ リ カ が救
済に 応 じ た。 2 日 後の 9 月 17 日 に は英 国 の 大手 行 H BO S が 経営 危 機 から ロ
イズ T S Bに 買 収 され 、 2 5日 に は 米国 最 大 の民 間 住 宅金 融 機 関ワ シ ン トン ・
ミュ ー チ ュア ル が JP モ ル ガン ・ チ ェー ス に 買収 さ れ た。 リ ー マン ・ シ ョッ ク
30
によ る 大 混乱 の 後 は 、 各 国 政府 が 次 々と 巨 額 の公 的 資 金を 使 っ て経 営 危 機行 の
37
救済 や 大 型景 気 対 策に 乗 り 出し た 。 財政 規 律 どこ ろ で はな く 、 とも か く 経済 危
機、 金 融 危機 を 止 める こ と にど の 国 も必 死 に なっ た 。 米国 で は 、9 月 末 に銀 行
救済 の た めの 7 0 00 億 ド ルの 公 的 資金 導 入 が議 会 で 決定 さ れ 、1 1 月 には シ
ティ バ ン クの 救 済 が決 ま っ た。 ま た それ と は 別に 8 0 00 億 ド ルを 住 宅 ロー ン
5
担保 証 券 の買 い 支 えや 消 費 者ロ ー ン 市場 の 安 定化 の た めに 投 下 され る こ とが F
RB に よ って 発 表 され 、 そ のう ち の 17 4 億 ドル は 、 金融 機 関 では な い ゼネ ラ
ル・ モ ー ター ズ の 救済 に 振 り向 け ら れる こ と が政 府 に より 発 表 され た 。
欧 州 で も、 ベ ル ギー ・ オ ラン ダ 系 の金 融 コ ング ロ マ リッ ト で ある フ ォ ルテ ィ
ス、 ド イ ツの 大 手 行ヒ ポ ・ リア ル エ ステ ー ト の国 に よ る救 済 が 決定 さ れ 、ま た
10
フラ ン ス 26 0 億 ユー ロ 、 ドイ ツ 2 00 億 ユ ーロ と 、 次々 に 大 規模 な 景 気対 策
が発 表 さ れた 。 こ うし た 中 で、 中 国 も4 兆 元 とい う 実 額で も 日 本を 上 回 り米 国
に次 ぐ 大 規模 な 景 気刺 激 策 を発 表 し 、世 界 を 驚か せ た 。
最 終 的 な金 融 危 機の 損 失 がい く ら にな っ た かと い う のは 、 各 国で い つ 危機 が
終わ っ た かの 線 引 きが な さ れな い と 確定 で き るも の で はな い が 、一 つ の 目安 と
15
して 、 I MF の 2 00 9 年 4月 の 発 表が あ る 。そ れ に よれ ば 、 全世 界 で 4兆 ド
ルの 規 模 とい う こ とで あ る 。最 初 に バー ナ ン キが 予 想 した 額 の 40 倍 で ある 。
各国 の 景 気対 策 も、大 規 模で あ っ た。主要 1 7 ヵ国 を 合 計す る と、約 2 兆ド ル、
当該 国 の GD P の 5. 3 % の財 政 資 金が 景 気 対策 に 向 けら れ た 。こ う し た対 応
によ り 、 20 0 9 年半 ば に は、 金 融 市場 は 一 応の 落 ち 着き を 取 り戻 し 、 経済 協
20
力開 発 機 構( O E CD ) も 先進 国 の 戦後 最 大 の景 気 後 退は 底 打 ちに 近 づ きつ つ
ある と 同 年6 月 に 発表 し た 。
実 体 経 済の 活 動 に不 動 産 とか 株 式 のよ う な 価格 の 値 上が り 自 体が 売 買 の強 い
誘因 に な るも の が 関わ る と 、こ れ ら 資産 が 担 保に な っ て一 層 の 信用 創 造 が起 こ
りや す く なる た め 、プ ロ シ クリ カ リ ティ は ま すま す 大 きな も の にな る 。 この プ
25
ロシ ク リ カリ テ ィ に押 し 上 げら れ て 異常 な ほ どに 高 ま った 価 格 や経 済 活 動の ピ
ーク か ら 谷に 落 ち る時 の 景 気悪 化 、 金融 機 関 の資 産 劣 化、 信 用 収縮 が ス パイ ラ
ル的 に 発 生し た 時 、こ れ を 金融 危 機 とい う 。 これ が 従 来型 の 金 融危 機 発 生の 原
因で あ る 。
従 来 の 金融 危 機 の問 題 と して 米 国 のサ ブ プ ライ ム ロ ーン と 証 券化 と い うも の
30
もあ っ た 。証 券 化 が盛 ん に 行わ れ て いた の が 20 0 0 年代 前 半 の米 国 の 住宅 ロ
38
ーン 市 場 であ っ た 。ま ず 、 原債 権 で ある 住 宅 ロー ン 市 場に つ い てで あ る 。サ ブ
プラ イ ム 危機 の 前 夜で あ る 20 0 6 年末 時 点 で、 米 国 の民 間 部 門向 け 与 信総 額
が2 6 兆 ドル で 、 これ は G DP の 約 2倍 の 規 模だ 。 そ のう ち 3 7% に 相 当す る
9. 7 兆 ドル が 住 宅ロ ー ン であ り 、 さら に そ のう ち の 15 % に 相当 す る 1. 5
5
兆ド ル が 、サ ブ プ ライ ム ロ ーン と い う過 去 に 債務 不 履 行歴 が あ るな ど の 信用 の
低い 債 務 者向 け の ロー ン で あっ た 。 信用 の 高 い通 常 の 住宅 ロ ー ンの 証 券 化が 一
巡し た 後 も、 利 回 りの よ い 投資 先 を 求め る 投 資家 の 需 要は 非 常 に強 く 、 証券 化
の原 債 権 探し は 、 つい に 金 融機 関 の 通常 の 与 信判 断 と して は 貸 出対 象 に なら な
いサ ブ プ ライ ム 債 務者 に ま で及 ん だ ので あ る 。
10
サブ プ ラ イム 問 題 の責 任 が 最も 重 い のは 、 貸 出を 実 行 した 者 の 甘い 与 信 判断
と無 責 任 なそ の 後 の債 権 管 理に あ る が、 こ う した 規 律 ない 貸 出 が拡 大 し た背 景
には 、 投 資家 サ イ ドに 、 投 資先 を 求 める 強 い 声が あ っ たこ と は 今の 金 融 市場 の
性格 を 考 える 上 で 重要 な 要 素で あ る 。さ て 、 サブ プ ラ イム ロ ー ンは 、 通 常の 倒
産確 率 で も1 0 % と住 宅 ロ ーン と し ては 非 常 に高 い も のだ が 、 これ が 金 融引 き
15
締め に よ り2 0 0 7年 第 2 四半 期 に 14 . 8 %に 上 昇 した 。 こ の原 債 権 の劣 化
がそ の 後 の世 界 中 を巻 き 込 んだ 危 機 の発 端 で ある 。
1 4 . 8% と い う不 良 債 権は 、 1 00 % 損 失に な っ たと 仮 定 して 約 2 20 0
億ド ル で ある 。 決 して 小 さ くな い も のの 米 国 のG D P 比1 . 8 %で あ り 、日 本
のバ ブ ル 崩壊 後 の 不良 債 権 償却 の コ スト の G DP 比 1 9% と 比 較す れ ば 大し た
20
額で は な い。 少 な くと も 米 国の 国 内 問題 と い える 額 だ ろう 。
1.
現在の金融危機
20 0 8 年9 月 の 米国 大 手 投資 銀 行 リー マ ン ・ブ ラ ザ ーズ の 経 営破 綻 は 世界
的な 金 融 危機 へ と 発展 し た 。こ う し たな か 、 20 0 8 年1 1 月 にワ シ ン トン に
25
おい て 第 1回 G 2 0首 脳 会 合( 金 融 世界 経 済 に関 す る 首脳 会 合 )が 開 催 され 、
金融 危 機 への 対 応 や金 融 規 制・ 監 督 の改 革 等 につ い て の議 論 が 行わ れ た 。
金融 規 制 改革 の 具 体的 な 内 容は 、 金 融安 定 理 事会 ( F SB ) 、 バー ゼ ル 銀行
監督 委 員 会( B C BS ) お よび 証 券 監督 者 国 際機 構 ( IO S C O) 等 に おい て
検討 が 行 われ 、 2 01 0 年 11 月 の G2 0 首 脳会 合 ( ソウ ル サ ミッ ト ) では 、
30
自己 資 本 比率 規 制 の強 化 の ほか 、 レ バレ ッ ジ 比率 規 制 およ び 流 動性 規 制 を導 入
39
する 「 バ ーゼ ル Ⅲ 」が 承 認 され た 。 次い で 、 20 1 1 年1 1 月 のG 2 0 首脳 会
合( カ ン ヌサ ミ ッ ト) で は 「シ ス テ ム上 重 要 な金 融 機 関( G - SI F I s) に
対処 す る ため の 政 策手 段 」 が承 認 さ れた 。 そ の後 、 B CB S や IO S C Oに お
ける 検 討 テー マ は 細分 化 し 、ト レ ー ディ ン グ 勘定 の 抜 本的 見 直 しや フ ァ ンド 向
5
けエ ク イ ティ 出 資 に係 る 資 本賦 課 等 の自 己 資 本比 率 の 算定 上 の 分母 と な るリ ス
クア セ ッ トの 計 算 方法 の 見 直し 、 デ リバ テ ィ ブ取 引 に 係る 清 算 集中 の 義 務付 け
や証 拠 金 規制 の 導 入等 の 市 場取 引 規 制に 関 す る検 討 が 進 め ら れ 、現 在 に 至っ て
いる 。
欧米 諸 国 にお け る 対応 状 況 は以 下 の よう に な って い る 。国 際 的 な合 意 に もと
10
づく 、 各 国の 国 内 規制 の 導 入状 況 は 必ず し も 一様 で は ない 。 例 えば 、 欧 米で は
国際 合 意 から 1 年 遅れ で バ ーゼ ル Ⅲ が導 入 さ れて い る こと に 加 え、内 容面 でも 、
米国 で は 、カ ウ ン ター シ ク リカ ル 資 本バ ッ フ ァー が 先 進的 主 要 行の み に 適用 さ
れる こ と や、 バ ー ゼル Ⅲ で は他 の 金 融機 関 向 け出 資 に つい て 、 自己 の 普 通株 等
Ti e r 1部 分 か らの 一 定 の控 除 が 求め ら れ てい る 一 方、 欧 州 では 、 保 険会 社
15
宛の 出 資 が資 本 控 除の 対 象 外と す る こと が 可 能で あ る など 、 一 部で 国 際 合意 と
異な る 部 分が み ら れる 。 一 方、 国 際 合意 を 超 える 規 制 導入 の 動 きも 一 部 で見 ら
れる 。
米国 で は 、大 手 銀 行持 株 会 社に 対 し て、 バ ー ゼル Ⅲ を 2~ 3 % ポイ ン ト 上回
るレ バ レ ッジ 比 率 規制 の 市 中協 議 案 が2 0 1 3年 7 月 に公 表 さ れた 。 ま た、 欧
20
州で は 、 各国 当 局 裁量 に よ り最 大 5 %の 資 本 サー チ ャ ージ の 導 入を 可 能 とす る
自己 資 本 比率 指 令 (C R D Ⅳ) が 2 01 3 年 7月 に 成 立し た 。 その 他 、 スイ ス
では グ ロ ーバ ル に シス テ ム 上重 要 な 銀行 ( 2 行) に 対 して 、 資 本保 全 バ ッフ ァ
ー等 を 含 め、 1 9 %と い う 高い 自 己 資本 比 率 が求 め ら れて い る 。一 方 、 国際 合
意と は 別 に、 自 国 金融 シ ス テム の 強 化を 目 的 とし た 独 自規 制 の 導入 を 図 る動 き
25
も見 ら れ る。
欧 米 で は、 今 般 の金 融 危 機の 反 省 から 、 ハ イリ ス ク 業務 を 禁 止な い し 銀行 本
体か ら 隔 離す る 、 銀行 構 造 改革 ( BankStructureReform )を 巡 る 議論 が 進 めら
れて い る 。米 国 で は、 銀 行 グル ー プ での 自 己 勘定 取 引 およ び P Eフ ァ ン ド取 引
を禁 止 す るボ ル カ ール ー ル の最 終 規 則が 2 0 13 年 1 2月 に 承 認さ れ た 。
30
また 、 英 国で は 、 20 1 3 年1 2 月 に、 大 手 行を 対 象 にリ テ ー ル業 務 の グル
40
ープ 内 で の隔 離 ( リテ ー ル ・リ ン グ フェ ン ス )や 自 己 資本 規 制 のさ ら な る強 化
を図 る 銀 行改 革 法 案が 成 立 した ほ か 、欧 州 で も、 大 手 行を 対 象 に自 己 勘 定ト レ
ーデ ィ ン グ業 務 等 のグ ル ー プ内 の 別 法人 へ の 分離 を 義 務付 け る 案が 検 討 され て
いる 。 ま た、 各 国 独自 規 制 を、 自 国 金融 機 関 の海 外 オ ペレ ー シ ョン や 自 国に 進
5
出す る 外 銀の 業 務 全体 に 適 用す る こ とに よ っ て、 同 規 制を グ ロ ーバ ル ベ ース で
適用 す る 「域 外 適 用」 の 動 きも み ら れる 。 例 え ば 、 米 国で は 、 取引 の 相 手方 が
米国 内 に 所在 す る 場合 、 ボ ルカ ー ル ール や デ リバ テ ィ ブ規 制 が 、海 外 に 所在 す
る一 定 の 銀行 に 対 して も 適 用さ れ る ほか 、 外 銀規 制 に より 、 米 国で 活 動 する 一
定規 模 以 上の 外 国 銀行 に 対 して は 、 グロ ー バ ル連 結 ベ ース で 米 国独 自 の より 高
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い自 己 資 本・ レ バ レッ ジ 比 率規 制 の 遵守 が 求 めら れ る 案が 検 討 され て い る。
また 欧 州 では 、 E U1 1 カ 国に お い て金 融 取 引税 の 導 入が 合 意 され て お り、
これ ら の 国以 外 の 金融 機 関 に対 し て も、 1 1 カ国 所 在 の金 融 機 関等 を 相 手方 と
する 取 引 や、 1 1 カ国 で 発 行さ れ た 金融 商 品 の取 引 を 行う 場 合 、当 該 取 引 に 対
して 課 税 する 案 が 検討 さ れ てい る 。
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次 に 規 制の 重 複 や累 積 的 な影 響 が 出た 場 合 であ る 。 今般 の 金 融危 機 後 に多 く
の規 制 が 導入 さ れ た結 果 、 以下 の よ うな 規 制 の重 複 や 累積 的 な 影響 が 懸 念さ れ
る。
1つ 目 に 適格 流 動 資産 の 逼 迫の 懸 念 であ る 。 短期 の 流 動性 保 持 を求 め る 流動
性カ バ レ ッジ 比 率 (L C R )規 制 で は、 金 融 機関 に 対 して 、 一 定以 上 の 現金 や
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国債 等 の 適格 流 動 資産 を ス トレ ス 発 生時 に 備 えて 保 有 する こ と が求 め ら れて い
るほ か 、 デリ バ テ ィブ 取 引 に係 る 証 拠金 規 制 でも 、 証 拠金 の 適 格担 保 と して 、
現金 ・ 高 格付 け の 政府 お よ び中 央 銀 行発 行 証 券が 挙 げ ら れ て い る。 さ ら に、 現
在、 F S Bに お い て検 討 が 進め ら れ てい る 清 算集 中 さ れな い 証 券貸 借 取 引に お
ける ヘ ア カッ ト 規 制で は 、 政府 債 が ヘア カ ッ トの 対 象 にな る こ とが 懸 念 され て
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いる 。 こ れら 目 的 の異 な る 複数 の 規 制が 国 債 需要 を 増 大さ せ 、 国債 の 流 通市 場
での 流 動 性低 下 等 の悪 影 響 を生 じ さ せる 懸 念 があ る 。 実際 に B IS グ ロ ーバ ル
金融 シ ス テム 委 員 会の 報 告 書に お い ても 、 地 域に よ っ て、 国 債 の不 足 が 生じ る
懸念 が 述 べら れ て いる 。
2 つ 目 に規 制 が ミス・イン セ ン ティ ブを 招 く 可能 性 が ある と い うこ と で ある 。
30
バー ゼ ル Ⅲで は 、 リス ク ベ ース の 自 己資 本 比 率規 制 を 補完 す る 指標 と し てレ バ
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レッ ジ 比 率規 制 が 導入 さ れ た。 2 0 13 年 7 月に B C BS か ら 公表 さ れ たデ ィ
スカ ッ シ ョン ・ ペ ーパ ー 「 規制 枠 組 み: リ ス ク感 応 度 、簡 素 さ 、比 較 可 能性 の
バラ ン ス 」で は 、 アイ デ ア の一 つ と して 、 レ バレ ッ ジ 比率 規 制 に対 す る バッ フ
ァー の 導 入や G - SI B s に対 す る より 厳 格 なレ バ レ ッジ 比 率 規制 の 導 入が 言
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及さ れ て いる 。 ま た、 米 国 では 、 米 国に 拠 点 を有 す る 一定 規 模 以上 の 外 国銀 行
に対 し て 、グ ロ ー バル 連 結 ベー ス で 米国 独 自 のよ り 高 い自 己 資 本・ レ バ レッ ジ
比率 規 制 の遵 守 が 求め ら れ る案 が 検 討さ れ て いる 。 こ れら の 水 準で は 、 自 己 資
本比 率 規 制と そ の 補完 と し て位 置 づ けら れ て きた レ バ レッ ジ 比 率規 制 が 自己 資
本比 率 規 制以 上 に バイ ン デ ィン グ な 規制 と な り、 イ ン セン テ ィ ブの 整 合 性を 損
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なう 可 能 性が あ る 。例 え ば 、T i e r1 最 低 所要 自 己 資本 比 率 の8 . 5 %に 対
し、 平 均 リス ク ウ ェイ ト が 45 % で ある 場 合 に、 レ バ レッ ジ 比 率規 制 で 約3 .
8% 以 上 を求 め た 場合 に は 、レ バ レ ッジ 比 率 が事 実 上 の最 低 所 要自 己 資 本比 率
とな る 。 その 場 合 、銀 行 に 対し 、 低 リス ク ア セッ ト の 圧縮 と 高 リス ク 資 産の 取
得と い う 誤っ た イ ンセ ン テ ィブ を 助 長す る 恐 れが あ る とと も に 、B C B Sが そ
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の重 要 性 を認 識 す る リ ス ク 感応 度 と のバ ラ ン スが 大 き く犠 牲 と なる 可 能 性が あ
る。
3 つ 目 に自 己 資 本比 率 規 制と リ ス ク捕 捉 強 化に つ い てで あ る 。
最低 所 要 自己 資 本 比率 は 、 過去 の 自 己資 本 比 率デ ー タ にも と づ き同 比 率 の引 上
げが も た らす マ ク ロ経 済 へ の影 響 や コス ト ・ ベネ フ ィ ット 分 析 を通 じ て 決定 さ
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れた も の であ る 。 その 後 の 自己 資 本 比率 計 算 上の リ ス クア セ ッ トの 計 算 手法 の
見直 し に よっ て 、 そう し た 分析 の 前 提が 変 化 して い る 。す な わ ち、 リ ス クア セ
ット の 計 算手 法 の 見直 し に よっ て 生 じる 、 マ クロ 経 済 に対 す る 負の 影 響 やコ ス
トが 分 析 上勘 案 さ れて い な い。 そ れ らを 勘 案 した 自 己 資本 比 率 規制 全 体 の累 積
的な 影 響 は、 当 初 の分 析 結 果よ り も 大き く な る可 能 性 があ る 。 これ か ら の金 融
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危機 に は 3つ の 懸 念材 料 が ある 。 第 1は 金 融 機関 の 損 失が い ま だ増 え 続 け、 市
場の 不 安 感が 薄 れ てい な い こと で あ る。
今 回 の 金融 危 機 の主 た る 原因 の 1 つは 、 欧 米諸 国 に おい て 適 切な 規 制 ・監 督
が行 わ れ なか っ た こと で あ り、 一 律 の基 準 を 適用 す る 世界 的 規 模の 規 制 強化 に
は、 慎 重 な態 度 で 臨む べ き であ る 。 また 、 現 状、 景 気 回復 が 本 格化 す る まで に
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至っ て い ない 点 を 鑑み れ ば 、規 制 改 革に 当 っ ては 世 界 経済 の 一 層の 悪 化 を生 ま
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ない た め の配 慮 も 必要 で あ る。 世 界 金融 危 機 を踏 ま え た規 制 ・ 監督 の あ り方 に
関し て は 、な お よ り広 範 か つ立 ち 入 った 検 討 が必 要 で ある 。 新 興市 場 国 ・地 域
では 、 潜 在成 長 率 は2 0 0 8年 ~ 2 01 4 年 の平 均 約 6. 5 % から 2 0 15 年
~2 0 2 0年 は 5 .2 % ま で一 段 と 低下 す る 見込 み で ある 。 こ れは 、 高 齢化 、
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資本 の 成 長に 影 響 する 構 造 的制 約 、 そし て こ うし た 国 や地 域 が 技術 フ ロ ンテ ィ
アに 近 づ くな か で の全 要 素 生産 性 の 伸び の 低 下が 原 因 とな っ て いる 危 機 前と 比
べ、 こ う した 中 期 的な 潜 在 成長 率 の 見通 し が 低下 し た こと が 、 新た な 政 策課 題
を提 起 し てい る 。 先進 国 ・ 地域 、 新 興市 場 国 ・地 域 と もに 、 潜 在成 長 率 の低 下
によ り 、 財政 の 持 続可 能 性 の維 持 が 一段 と 困 難に な ろ う。 ま た 、潜 在 成 長率 の
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低下 は 低 水準 の 均 衡実 質 金 利に も 関 連し て い ると 思 わ れ、 先 進 国・ 地 域 で負 の
成長 シ ョ ック が 発 生す れ ば 金融 政 策 が再 び ゼ ロ金 利 下 限の 制 約 を受 け る 可能 性
があ る 。 潜在 G D Pの 拡 大 が、 先 進 国・ 地 域 、新 興 市 場国 ・ 地 域双 方 の 政策 優
先課 題 で ある 。 こ の目 的 の 達成 に 必 要な 改 革 は国 に よ り異 な る 。先 進 国 ・地 域
では 、 弱 い需 要 が 長期 化 し てい る こ との 投 資 と資 本 の 伸び 、 そ して 失 業 への 影
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響を 相 殺 する た め に、 需 要 の下 支 え を継 続 す る必 要 が ある 。 構 造改 革 及 び研 究
開発 へ の 支援 の 拡 大が 、供給 と イ ノベ ーシ ョ ン の増 大 の 鍵で あ る。新 興 市場 国・
地域 で は 、イ ン フ ラ支 出 の 拡大 が 重 大な ボ ト ルネ ッ ク の解 消 に 必要 で あ り、 ビ
ジネ ス 環 境と 製 品 市場 の 改 善、 そ し て人 的 資 源の 蓄 積 を促 す 構 造改 革 が 不可 欠
であ る 。
20
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