保健室だよりVoL.17

 こんにちは、お元気ですか?保健室です。
「青春の庭」の木々も紅葉し、秋真っ直中といった季節になりました。秋といえば、青く
澄みきった空や山々の紅葉と同時に、実りの秋・食欲の秋etc.
を想像しますが、皆さんはど
んなことを感じ、感動されましたか?
定期健康診断の結果から、肥満(隠れ肥満)の人が意外に多く、受診者の13.6%を占め
ており、その大半に高血圧や肝機能などの異常が見られました。そこで今回は、食欲の秋
ということもあり、肥満(隠れ肥満)について書きました。参考にしてください。
肥満しやすい条件は、個々によって異なりますが、
ここでは一般的な原因と対策について、
今一度考え、可能なことから実行して皆さんも一緒に健康的な体力づくりを始めましょう。
(すでに始めている人は継続しましょう。)
“肥満”の定義:
「身体における脂肪組織(体脂肪)が、過剰に蓄積された状態である。」
“肥満”の原因
①過食 ②摂食パターンの異常 ③運動不足 ④熱産制障害 ⑤遺伝
これらの因子が絡み合って肥満になります。中でも、摂食パターンの異常を含む過食と運動不足は、最も重要な要因と
言われています。これらへの対策が肥満の予防と改善につながります。
保健室
だより
VOL.
保健室 重友
17
武子
vol.187
■ 減量の基本は“食事”と“運動”です ■
食事について
運動について
1.
過食によるエネルギー過剰
運動の目的は、活動量の増加や筋肉量が増すことによる「基礎代謝量」の上
過食をした場合、余剰のエネルギーは脂
昇です。
肪に変換され蓄積します。
また、肥満は高血圧や糖尿病、肝障害、高脂血症などの危険因子です。運動
「毎日食事などで補給するエネルギー」
をして基礎代謝量を上げることで、これらの改善にも効果があります。また体
を「毎日使うエネルギー」より小さくする。
を動かすことでストレス解消にも効果があります。
この理論どおりにしていれば、差し引き不
1.
運動不足
足分のエネルギーは、体脂肪を燃やすこと
で痩せるはずです。補給エネルギーを小さ
運動不足は、骨格筋量の減少に伴って基礎代謝量が減少し、余剰エネルギ
くするために、表1を参考にご自分の食習
ーの相対的な増加が脂肪を蓄積させます。これまで肥満解消目的に行う運
慣を見直してみましょう。この14項目に注
動は、有酸素運動を20∼60分継続して、週3∼5日行わないと効果が出に
意するだけでも効果“大”です。
くいと言われていました。しかし肥満の人にとっては、20∼60分の歩行も
注.
エネルギー所要量は、体質により個人差があります。極端なエネルギー
苦痛でなかなか継続できない人も多くいます。
制限は、必要な栄養素不足により、様々な障害を生じることもあるので、
最近では、短時間で行える運動を蓄積し、無理なく日常生活の運動量を増
体脂肪測定や体重測定をして、増減を見ながら調節しましょう。栄養バラ
やす方法が肥満者に対する運動プログラムの主流になっています。
ンスのとれた食事の全体を少し減らす努力をしましょう。
健康のための身体活動指針(ACSM、CDC)
特徴的な肥満者の食行動・食習慣
表 1
■ 食事時間が不規則
■ ストレスを食べ物で発散する(代理摂食)
■ 欠食することがある
■ 食品を必要量より多めに買っておかないと気
頻度:できれば毎日
強度:中等度
時間:最低10分以上の活動を1日合計30分以上
様式:身体活動
が済まない
■ 夜食をとる
■ 間食をとる
■ 一回摂取量が多いかため食い
アメリカスポーツ医学会(ACSM) アメリカ疾病対策センター(CDC)
■ 果物の摂取量が多い
■ 料理が一緒盛り(家族で大皿から取り分ける)
■ 晩酌をする
■ ながら食い
*中等度の運動とは、一般成人が「ややきつい」と感じるが、疲労をためずに行
える程度の運動。
■ 麺類や丼物を好む
■ 糖分・脂質・濃い味を非常に好む
運動をすれば体脂肪を減らすことはできます。運動をするためのエネルギ
■ 早食い・荒噛み
ーは、体の中の蓄積エネルギーである体脂肪を“燃やす”ことで得られるので
す。しかし、体脂肪1kgに含まれるエネルギーは7000kcalで、これに対し運
動による消費エネルギーは表2のとおりで、短期間の運動では体脂肪は容易に
落とせないことが解ります。とは言っても運動せずして体脂肪は落とせません。
2.
摂食パターンの異常
「食事療法」と「運動療法」をうまく併用して継続することです。
1日の食事に「欠食あり」の者を「欠食なし」の者に比べると、男女とも明
らかに肥満の程度が高かった。
(厚生労働省国民栄養調査結果)
食べる回数を減らすと、当然食事量は減る。食事量を減らすと、一時的に
は体重も減る。しかし、それに伴って基礎代謝量(生命を維持するための必
要最小限のエネルギー)も減る。基礎代謝量が減ると摂取エネルギーが少
表 2
運動と内容
消費エネルギー量(単位kcal)
ジョギング(1.5㎞を10分で走る)
125kcal
ランニング(2㎞を10分で走る)
164kcal
サイクリング(3㎞を10分で走る)
124kcal
なくても生きていけるように体が順応する。すると摂取エネルギー量と消費
エネルギー量がちょうど釣り合い、それ以上は痩せない体質になる。ところ
がそこで元の摂取エネルギー量に戻すと、消費エネルギー量(基礎代謝量)
が減っている分、過剰エネルギーとして蓄えられて太る。これがリバウンドで
す。食事制限だけでは理想的な減量はできません。
野球10分
54kcal
ボウリング10分(連続して)
78kcal
ダンス(ゆっくりと)10分
48kcal
ゴルフ10分
48kcal
水泳10分(クロールで)
56kcal
テニス10分
80kcal
欠食の有無と皮下脂肪厚(厚生労働省国民栄養調査より)
(mm)
45
欠食あり
欠食なし
40
女
35
皮
下
脂 30
肪
厚 25
男
広 島 工 大 vol . 187
20
2003年 12月
0
10
∼
19
20
∼
29
30
∼
39
40
∼
49
50
∼
59
(年4回発行)
10
∼
19(歳)
*基礎代謝量 成人男子:1日1200∼1500kcal
成人女子:1日 800∼1200kcal “やせる”=“体脂肪を減らすこと”
“体重が減った”=
דやせた”
肥満の目安は「体重」ではなく「体脂肪」なのです。
*消費エネルギー量は、同じ運動量でも体重によって異なる。この表では体
重が84㎏の人を想定した。
発行:広島工業大学
編集: 学 務 委 員 会
※資料:大野誠著『知的エリートのためのザ・ダイエットマニュアル』宇宙堂八木
書店刊より
〒731-5193
広島市佐伯区三宅
2丁目1-1
TEL 082-921-3121
参考 NHK今日の健康、保健科学研究会保健の科学、
日本肥満学会肥満・肥満症の指導マニュアル