第4章 マーケティング 1 マーケティングの目標と流れ 2 市場調査

第4章
マーケティング
1
マーケティングの目標と流れ
2
市場調査(マーケティングリサーチ)
3
市場調査(地域活性化)
【モデル事例A】
4
市場調査(商品開発)【モデル事例B】
5
商品開発の流れ
6
STPの概要
7
市場細分化(セグメンテーション)
8
顧客の設定(ターゲティング)
9
商品コンセプトの立案
10
ポジショニング
11
マーケティングミックス(4P)
12
消費者行動理論
21
1
マーケティングの目標と流れ
マーケティングの目標は、「売れる仕組みを作ること 」とあります。つまり、「売
る」努力をしないで、消費者 の方から買い求めに来る状態を作ることが最終目標で
す。例えば、もし商品に魅力がなく、価格が手頃でなく、販売場所が適切でなく、
販売促進が効果的でなかったら、
「 売る」ための努力を精一杯しなければなりません。
しかし、他に見られない消費者の ニーズに合った商品で、手頃な価格で、適切な場
所で、消費者に効果的に販売促進が行われれば、
「売れる」商品になり、消費者の方
から買い求められ、売上向上が目指せます。
このように「売る」と「売れる」 は異なり、さらに「売れる仕組みを作ること」
は大きく異なります。先に商品やサービスがあって、
「売る」ために知恵を絞り、何
とか売り込むのが販売の仕事になります。このように「売り込む技術」のことを「マ
ーケティング」ではなくて、「セールス」と言います。
「売れる仕組みを作る」ためには、 まずはマーケティングの理論を知ることが重
要になります。思い付きや勘に頼るのではなく、 マーケティングのフレームワーク
(枠組み)に沿って、この章にあるマーケティングリサーチ、セグメンテーション、
ターゲティング、ポジショニング、マーケティングミックス を意識しながら実践し
ていくことが重要です。
マーケティングリサーチ
セグメンテーション
ポジショニング
ターゲティング
マーケティングミックス
現代マーケティングの父、フリップ・コトラーは、
『マーケティングを「知る」は
一日、「使いこなす」は一生かかる』と言っています。なりよりも実践が重要で す。
コトラーは、顧客第一主義で、顧客満足の追及がマーケティングの基本と述べてい
ます。その顧客満足の追求を貫くことの難しさを語ってい ると考えます。何をどう
したら良いかわからなくなったら、このフレームワーク(枠組み)に戻り、 PDC
Aサイクルを行っていけば成功に導いてくれると思います。
顧客第一主義
PLAN
ACTION
22
DO
CHECK
2
市場調査(マーケティングリサーチ)
(1)市場調査とは
「市場」とは、ある特定の商品・サービスの売り手・買い手が取引する場所を
指します。その市場について調べることを「市場調査」と言います。その調査範
囲は、商品やサービスが生産者から消費者に届くまでの全範囲に渡りますが、そ
の中でも、特にその買い手のニーズ(欲求)について調べることになります。し
かし、買い手が分散していて特定できなかったり、買い手が大多数になる場合が
あるので、簡単に調査することはできません。例えば、専門高校に進学したいと
考えている中学生のニーズを調べるためには、大規模的に中学生を調べないと専
門高校へのニーズは分かりません。
抽出
ニーズ
ニーズ
推測
母集団
標本
アンケート
(サンプル)
ニーズを調べるために、
「ある特定の商品・サービスを必要とする人の集団」つ
まり「母集団」を調査しなければなりませんが、すべての買い手を調査(全数調
査)することは不可能な場合が多いです。そこで、母集団の中から標本(サンプ
ル)を抽出して、その標本に対してアンケート等を実施し、標本のニーズを把握
し、最終的に母集団、つまり買い手のニーズを推測することになります。
(2)市場調査によって、次のステップの意思決定が可能となる
商品開発は、初めから商品開発ありきではなく、問題の解決のための商品開発
でないといけません。問題原因の本質を見出す中で、
「消費者のニーズを読み取る」
ことになり、問題の解決策を見出す中で、
「消費者 の満足を追求する」ための方向
性を示すことができ、次のステップへの意思決定が可能となります。
問題原因の本質を見出す
消費者のニーズを読み取る
問題の解決策を見出す
消費者の満足を追求する方向性を示す
23
意思決定が可能
(3)仮説を立てるために情報収集を行う
消費者のニーズを知るために、情報収集がとても重要です。 そのためには、ま
ず現地を訪問し、商品・サービスの販売状況、消費者の購買行動等の様子をしっ
かりと観察することが重要です。
さらに、消費者に関する統計情報や分析資料等がインターネット上に沢山あり
ます。効果的な検索キーワード で、有益な情報を入手し、消費者のニーズの把握
に努めてください。
ある程度情報が集まったこの段階において、問題の原因 ・問題の解決策を意識
しながら、消費者や関係者にインタビューを行っていきます。
そこで、現地訪問・資料収集・インタビューの結果を元に、問題の原因 、問題
の解決策の仮説を立てます。
最後に、立てられた仮説の検証を行うために、アンケートを実施し、仮説が正
しかったことを証明します。もし、異なっていたら仮説を修正します。
【問題原因の本質を見出すプロセス】と【問題の解決策を見出すプロセス】の流れ
現地訪問
(インターネット検索) (統計情報)
資料収集
仮説を立てるために
情報収集を行う。
インタビュー
問題原因・解決策の仮説を立てる
仮説検証のためのアンケート等を実施
消費者のニーズ
消費者満足の方
を読み取る。
向性を示す。
アンケート
24
(4)潜在的なニーズをインタビューで読み取る
顕在的なニーズは、消費者が気付いている目に見える欲求(ニーズ)です。
潜在的なニーズ は、消費者が気付いていない目に見えない欲求です。この潜在
的なニーズこそが、消費者が本当に欲しい(ウォンツ) に変容する可能性を秘
めています。
例えば、「音楽は家で聞く」という時代に、「 外出時に音楽を楽しみたい」と
いう潜在的なニーズを掘り起し、商品化した 「ウォークマン」が ウォンツに変
容させたというのが好事例です。
このように、消費者が気付いていない潜在的なニーズを発見する ために、ア
ンケートだけでは、導くことができません。そこで、 インタビューで柔軟な質
問を通して、潜在的なニーズを引き出す必要があります。
インタビュー
消 費 者 が 気付 い
ているニーズ
消 費 者 が 気付 い
ていないニーズ
(5)問題解決のためのアイデアは既存のモノ 同士の組合わせで創造される
問題解決において、できるだけ沢山の情報を収集することは、大変重要です。
しかし、生徒諸君の時間は限られているので、できるだけ大人数で、 手分けし
て沢山の情報を集め て下さい。また、企業の方や先生方からのアドバイスによ
って、真の解決に繋がっていくので、しっかりとアドバイスに耳を傾けましょ
う。
実は、新しいモノの創造は、既存のモノ 同士の組み合わせによって、新しい
モノが産み出される場合も多いと思います。沢山情報を収集することが、新し
いアイデアや新しいモノを創造することに繋がることを頭の 中に入れておきま
しょう。是非、皆さん自身がこのことを実感して欲しいと思います。
情報収集(発散)
25
3
市場調査(地域活性化)【事例A】
(1)全体的な流れ
地域の問題を捉えて
新しい取組を考える
↓
【問題原因の分析】
①
現場訪問調査
② 資料収集
↓
↓
③ インタビュー(質的調査)
↓
④ 問題原因の仮説を立てる(BS法・KJ法)
↓
⑤ 仮説が正しいことを裏付けるためにアンケート (量的調査)
↓
【問題解決の分析】
⑥
⑪
現場訪問調査
⑦ 資料収集
↓
↓
⑧ インタビュー(質的調査)
↓
⑨ 地域のSWOT分析
↓
⑩ 問題解決の仮説を立てる(BS法・KJ法)
↓
仮説が正しいことを裏付けるためにアンケート (量的調査)
【行動計画】
⑫
5W2Hで実行計画を立てる
(2)各段階での具体 的な事例(モデル事例A・モデル事例B)
【モデル事例A】「水前寺参道商店街活性化プロジェクト」を通して考案
地域の商店街・商店街の減少原因を考え、顧客の上昇に転じる策を考える。
【問題原因の分析】
①現地訪問調査
・店舗の取り扱っている商品・サービス
・接客のおもてなし度
・顧客が購入に至るまでの行動プロセス の観察
・自分達が利用した感想
26
②資料収集(インターネット)
・利用者数の推移の統計資料(行政・観光施設・店舗)
・商店街、観光施設に関する情報
③インタビュー(質的調査)
・商店街の代表の方へ基本コンセプトと今後の方針
・商店街、観光施設、利用者の方々が考える減少の理由
④問題原因の仮説立案
・現地訪問調査、資料収集、インタビューを元に問題原因の仮説 立案
⑤仮説を実証するためのアンケート実施(量的調査)
・インタビューを元にアンケート項目を考え、アンケート 実施
・アンケート結果を元に、問題原因の仮説を修正
【問題解決の分析】
⑥現地訪問調査
・顧客の年齢層とその構成比率
・通行量の調査(季節と曜日で異なる)
・成功している商店街・観光地の分析
⑦資料収集(インターネット)
・地域の観光アンケート分析結果(観光客のニーズ)
・歴史的・文化的な事柄の調査
・先進的な事例調査
⑧インタビュー(質的調査)
・行政の担当者から今後の施策についての調査
・商店街、観光施設、利用者の方々が考える解決策の調査
⑨地域のSWOT分析
※問題解決のプロセスの中で、
・地域にある強み、弱みの分析
既にリストアップされてい
・地域を取り囲む、機会・脅威の分析
ると考えられる。
⑩問題解決の仮説立案
・現地訪問調査、資料収集、インタビューを元に問題解決の仮説立案
・地域活性化策の戦略立案
⑪仮説を実証するためのアンケート実施(量的調査)
・インタビューを元にアンケート項目を考え、アンケートを実施
・アンケート結果を元に、問題解決の仮説を修正
※様々な角度から調査分析を行いますが、最終的に得られる「プロジェクト方針」
はとてもシンプルなものだと考えます。
【行動計画】
⑫5W2Hで実行計画立案
最終的に、Why(何故:目的)What(何を: 実施項目)Who(誰が:
担当者)When(いつまでに: 実施時期)Where(どこで:場所)How
(どのように:実施方法)How much(いくらで:予算)を明確にした実行
計画を立案する。
27
4
市場調査(商品開発)【事例B】
(1)全体的な流れ
既存商品の問題を捉え
新しい商品を開発する
↓
【問題原因の分析】
①
メーカ・販売店訪問調査 ② 資料収集
↓
↓
③ インタビュー(質的調査)
↓
④ 問題原因の仮説を立てる(BS法・KJ法)
↓
⑤ 仮説が正しいことを裏付けるためにアンケート(量的調査)
↓
【問題解決の分析】
⑥
⑪
生産現場訪問調査
⑦ 資料収集
↓
↓
⑧ インタビュー(質的調査)
↓
⑨ 地域のSWOT分析
↓
⑩ 問題解決の仮説を立てる(BS法・KJ法)
↓
仮説が正しいことを裏付けるためにアンケート(量的調査)
【行動計画】
⑫ 5W2Hで実行計画を立てる
(2)各段階での具体例
【モデル事例B】「乾燥野菜スープキット商品開発プロジェクト」を通して考案
既存商品の問題点を洗い出し、既存商品の改良で新商品を開発する。
【問題原因の分析】
①開発メーカ・販売店訪問調査
・開発メーカの基本コンセプトの把握
・既存商品の試食
・販売店での陳列状況の把握
・競合商品・類似商品のリストアップ
・顧客が購入に至るまでの行動プロセス の観察
28
※企業と本格的な共同開発
をする前に、事前のリサーチ
という位置付けのプロセス
として捉えることができる。
商品開発の方向性を示し、
共同開発をしていただける
かどうか、企業へ判断材料の
資料を提供する。
②資料収集(インターネット)
・競合商品、類似商品の機能分析
・消費者の食品に関する意識調査
・社会環境変化によるニーズの把握
③インタビュー(質的調査)
・販売店員からの意見収集
・消費者からの意見収集
④問題原因の仮説立案
・訪問調査、資料収集、インタビューを元に問題原因の仮説立案
⑤仮説を実証するためのアンケート実施(量的調査)
・インタビューを元にアンケート項目を考え、アンケート の実施
・アンケート結果を元に、問題原因の仮説を修正
【問題解決の分析】
⑥生産現場訪問調査
・原材料生産者の訪問
・加工食品生産現場の訪問
⑦資料収集(インターネット)
・年齢別の食品の摂取率の変化
・加工食品の成功事例
⑧インタビュー(質的調査)
・食の専門家からの意見収集
・試作品(既存商品の改良版)での評価
⑨開発企業のSWOT分析
※問題解決のプロセスの中で、
・企業にある強み、弱みの分析
既にリストアップされてい
ると考えられる。
・企業を取り囲む、機会・脅威の分析
⑩問題解決の仮説立案
・現地訪問調査、資料収集、インタビューを元に問題解決の仮説立案
⑪仮説を実証するためのアンケート実施(量的調査)
・インタビューを元にアンケート項目を考え、アンケートを実施
・アンケート結果を元に、問題解決の仮説を修正
※様々な角度から調査分析を行いますが、最終的に得られる「開発コンセプト」は
とてもシンプルなものだと考えます。
【行動計画】
⑫5W2Hで実行計画立案
最終的に、Why(何故:目的)What(何を: 実施項目)Who(誰が:
担当者)When(いつまでに: 実施時期)Where(どこで:場所)How
(どのように:実施方法)How much(いくらで:予算)を明確にした実行
計画を立案する。
29
5
商品開発の流れ
上記の市場調査では、商品開発のテーマと開発コンセプト 等を導きだしました。
次に商品コンセプトの立案では、
「 誰に対して」
「 どのようなシーンで」
「 どんな便益 」
が得られる商品を具体的に考えていきます。このプロセスで は、顧客の24時間の
生活の中で、「あったらいい」「HAPPYになる」 商品を考案していきます。顧客
のニーズを掘り起こし、 そのニーズをウォンツに変容させていく ための商品を考案
するための一番重要なプロセスです。
市
場
調
査
商品開発テーマ・開発コンセプトの決定
市場細分化(セグメンテーション) 対象となる市場を任意の基準で分ける。
顧客の設定(ターゲティング)
商品コンセプトの立案
対象となる顧客を絞る。
「誰に」「どのようなシーンで」
「どんな便益を」提供するかを考える。
ポジショニング
GO
評
改
他社との競合商品との差別化を図る。
価
NG
良
評価が高くなければ改良を行う。
マーケティングミックス
商品本体の開発
商品本体の開発に着手する。
試作品開発
GO
評
試作品の開発を行い完成度を高める。
価
評価が高くなければ改良を行う。
NG
改
良
パッケージング
ネーミング
価
格
設
定
商品のパッケージデザイン
ネーミングを考える。
利益を確保した価格設定を行う。
販売経路の開拓
1次2次卸売業者・小売業へのプレゼン
販
広告宣伝 ・広 報活動・販 売 促 進 を 行 う 。
売
促
進
30
6
STPの概要
STPとは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、
ポジショニング(Positioning)の頭文字を取った略称で、マーケティング理論の 中
でも、非常に重要な部分です。
つまり、市場を細分化し(Segmentation)、標的となる市場を定め(Targeting)、
自社の商品を最も効果的にアピールできる位置を決定します。(Positioning)。
(※詳細は、各項目で説明します。)
(セグメンテーション)
(ターゲティング)
(ポジショニング)
そこで、市場を細分化し、標的となる市場を定めることで、
「市場が狭まり売り
上げが期待できないのではないか?」という疑問が生じると思います。
現代は、顧客の好みが多様化して、ものが売れない時代です。万人が好むよう
な商品を作っても、売れません。
そこで、対象となる顧客を絞ることで、その顧客が欲する商品をイメージし易
くなり、ニーズをウォンツに変える商品を開発することができます。 さらに効果
的な販売促進が可能になり、売り上げ向上を期待することができます。
売れない
商品
ニーズ→ウォンツ
売れる
商品
31
7
市場細分化(セグメンテーション)
ビジネス通用品質
(1)市場細分化とは
セグメントを直訳すると「断片」
「部分」という意味になります。セグメント化
することをセグメンテーションといいいます。つまり「断片化」
「部分化」のこと
になり、市場を何らかの同じ基準で、断片化することになります。
(2)市場細分化の方法
市場調査によって「開発コンセプト」が明らかにされています。また、市場細
分化、ターゲティングの 後のプロセスでは、「商品コンセプト」「商品本体」が明
らかにされます。
最終的に、自社の「商品コンセプト」
「商品本体」を一番に欲する顧客を絞り込
むために、「どのような顧客が」「どのようなニーズで」という視点で、 以下の基
準で市場を切り分けていきます。
(セグメンテーション)
(ターゲティング)
(一番欲する顧客)
どのような
顧客が
ど
ニ
の
ー
よ
ズ
う
で
な
市場細分化の基準
切り口の視点
どのような顧客が
基
準
主
な
例
地理的特性
地域・都市規模・気候
人口統計的特性
性別・年齢
社会的・経済的特性 職業・所得
どのようなニーズで
心理的特性
ライフスタイル・趣味趣向・嗜好・
価値観
購買行動特性
使用頻度・購入量
基準には諸説があります。正式には他のテキストを参考にされてください。ま
た、切り分ける視点も諸説あり、ここでは、「どのような顧客が」「どのようなニ
ーズで」という両方の視点で、切り分けることを提案します。
32
(3)市場細分化の方法(モデル事例A)
外国人観光客が急増しています。そこで、 今回、外国人観光客を意識した「熊
本の日本式庭園の入園者数の増加」を目指してSTP戦略を立案してみます。
①「開発コンセプト」「商品コンセプト」の確認
前述したように、市場 を細分化する前に、売りたい商品・サービスの「開
発コンセプト」「商品コンセプト」を明確にします。
熊本の日本式庭園
訪日外国人観光客市場
顧客の絞り込み
商品コンセプト
「自然・歴史・伝統文化の魅力」
をおもてなしの心で紹介する
②外国人観光客の市場の分析
「どのような外国人」「どのようなニーズが」あるかを、今回観光庁の訪日プ
ロモーション方針(平成 27 年 6 月発行)を参考にして、市場を細分化してみま
す。
一般的に国別、年齢、旅行形態(個人・団体)、訪問回数(初回・リピート)
に応じてニーズが異なるようです。この基準で一覧を作成してみます。
国別【中国・韓国・台湾・米国・カナダ・欧州・豪州・ロシア・その他】
旅行形態
回数
嗜好/年齢
20代
30代
40代
50代
60代~
グルメ
初回
ショッピング
自然・歴史・文化見学
個人旅行
グルメ
リピート
ショッピング
自然・歴史・文化見学
グルメ
初回
ショッピング
自然・歴史・文化見学
団体旅行
グルメ
リピート
ショッピング
自然・歴史・文化見学
一般的な訪日外国人のニーズを意識した市場細分化のための参考資料になると
考えます。
33
国籍は「地理的特性」、年齢は「人口統計的特性」、旅行形態(団体旅行・個人
旅行)は「購買行動特性」、訪日回数は「購買行動特性」、嗜好(グルメ・ショッ
ピング・自然歴史文化の見学)は、「心理的特性」になります。
観光庁が出している「訪日外国人プロモーション方針」は、徹底的に詳細に市
場を細分化して、個々の戦略が練られています。
③市場細分化の修正
②で作成した「訪日外国人観光客の市場細分化」を元に、熊 本の日本式庭園の
市場細分化となるために、修正していきます。この プロセスを通して、下記の市
場細分化の注意点を意識しながら、市場細分化の方法を理解しましょう。
市場細分化の注意点
※(ア)セグメント基準が測定可能、データの入手が可能であること
※(イ)セグメントへのメッセージでのアクセス(接触)が可能であること
※(ウ)各セグメントがセグメント内では同質 であること
※(エ)④各セグメントがある程度のボリュームがあることが挙げられる。
※(ア)セグメンテーション基準の測定可能性
今回、外国人に売り込みたい商品 ・サービスは、自然・歴史・文化に優れた
日本式庭園とします。特に、 歴史・文化にニーズを見出すことができる外国人
は、米国・カナダ・欧州・豪州 ・ロシア の方々が考えられます。アジアの方々
は、グルメ・ショッピングに対してニーズが高く、 歴史・文化に対するニーズ
は低いようです。
※(イ)メッセージでのアクセス可能性
さらに、自然・歴史・文化に関するニーズを上記の国別に詳細に見ていくと、
所得や学歴が高い方が、歴史・文化に対するニーズが高い国もあるようです。
しかし、市場細分化をする中で、 所得 や学歴の基準を入れて、市場を細かく
分けても、対象となる方々へメッセージが届かなければ、意味がな いので、所
得・学歴の基準は外すことにします。
※(ウ)各セグメント内では、同質の必要性
また、歴史・文化にニーズがある 方々(欧米人・豪州・ロシア) の旅行形態
は、団体旅行は少数で、個人旅行の場合が多いと考えられるので、旅行形態の
基準として、外すことにします。
さらに、歴史・文化にニーズがある方々 (欧米人・豪州・ロシア) の訪日回
数は、初回層もリピート層も、要因となって無いので、訪日回数の基準も外す
ことにします。
34
※(エ)各セグメントの市場規模の必要性
最終的に、上記の基準で市場を細分化した一覧を以下のように作成すること
ができます。
「歴史・文化」を嗜好とする訪日外国人の市場細分化一覧
国 籍
米 国
カ ナ ダ
英 国
欧州 フランス
ドイ ツ
豪 州
ロ シ ア
20代
30~40代
50~60代
最終的に、市場を細分化した市場の規模がある程度の大きさになることが必
要です。2014 年に日本を訪問した外国人は、1,341 万人でした。その中でも米
国・カナダ・欧州・豪州・ロシアの訪日者の合計は、211 万人です。さらに、そ
の中で、日本の歴史・伝統文化に興味を持つ方の割合は、22.8%なので、日本
全体として、48 万人程度、熊本県への宿泊率 3.42%から推測すると、16,482 人
程度の市場規模は期待できます。
(4)他セグメントへの 販売拡大
市場細分化の効果として、日本の歴史・伝統文化に関心を持つ外国人をイメー
ジしてニーズを分析し、サービス・施設の充実を図れば、いずれ魅力の拡大とな
って、他セグメントである国内観光客市場、アジア系観光客市場への販売拡大に
繋がることにもなると考えます。
国内
観光客
④ 他セグメントへの販売拡大
↑
③ 魅力の拡大
アジア系
観光客
① ニーズ分析
② サービス・施設の充実
35
日本の歴史・伝統文化
に興味を持つ市場
(欧米・豪州・ロシア)
8
顧客の設定(ターゲティング)
(1)ターゲティングとは
ターゲティングとは、自社の商品・サービスを市場に投入する際、どの顧客層
(セグメント)を標的市場にするかを決めることです。
企業の経営資源は限られており、すべての顧客に対応することは現実的ではあ
りません。 そこで、自社の商品・サービスのアピールのメッセージが届きやすく 、
自社の商品・サービスコンセプトの訴求効果が高い顧客セグメントをターゲット
とすることが求められます。
自社の商品・サービス
メッセージが
届きやすい
経営資源は限られている
コンセプトの訴求
効果が高い
(2)ターゲティングの方法(モデル事例A)
そこで、日本庭園の景観だけの素晴らしさだけでなく、
「 日本の歴史・伝統文化」
に関心を持つ外国人は、米国・カナダ・欧州・豪州・ロシアの方々が考えられま
す。
しかし、情報発信による販売促進において、言葉の壁があるので、英語圏の米
国・カナダ・英国・豪州の50~60代の方々をターゲットにすることが考えら
れます。
「熊本の日本式庭園を訪日外国人にアピールするターゲティング」
国 籍
米 国
カ ナ ダ
英 国
欧州 フランス
ドイ ツ
豪 州
ロ シ ア
20代
30~40代
50~60代
○
○
○
○
36
9
商品コンセプトの立案(モデル事例B)
「顧客のニーズを考えなさい」といっても、生徒諸君にとってはなかなか難し
い作業かもしれません。自分自身のことであれば思いつ きますが、性別・年齢・
環境・価値観等が異なる人のニーズを読み取るとなるとさらに難しいようでしょ
う。そこで、ターゲットモデルを設定して、それぞれのモデルの生活の24時間
をイメージして、その生活の中で便利で有益なこと、つまり便益(ベネフィット)
を考えれば、顧客のニーズが考えやすくなります。
例えば、25歳独身OLは、一人暮らしをして、生活習慣が不規則というイメ
ージがあります。そこで、忙しい生活の中であったら嬉しい商品、つまり、短時
間で作れて、簡単に栄養が取れる野菜スープが考案される。つまり「時短・栄養
摂取」が便益であり、顧客のニーズとなります。
そこで、ターゲットモデルを「18歳女子高校生」、
「20代独身女性OL」、
「3
0代子育て主婦」、「50代単身赴任男性」の4種類に設定して、以下の3 段階の
プロセスを経て、商品が考案されることになります。
37
10
ポジショニング(ペットボトルお茶の事例)
ポジショニングとは、自社の製品・サービスの 競争優位性を顧客に対して、アピ
ールするための方策を立案することです。つまり、自社の製品・サービスの差別化
の方向性を明確にして、顧客に自社を選択してもらうためにはどうしたら良いかを
検討することです。
顧客は、自分にとって一番良い商品・サービスを探しています。つまり、一番に
ならなければ、顧客から選ばれない可能性があるのです。狭い分野でもよいので、
その分野の中で、一番になる必要があります。
他社の商品・サービスの特性を 2軸を使ってマップを作成して 整理し、自社の商
品・サービスの特性が一番優れているすき間の位置を探索していきます。
以下のマップは、ペットボトルのお茶のポジショニングマップです。 お茶の「濁
り」がお茶の美味しさを示す指標となっていることをアピールしながら、各社独自
の製法で、「濁り」を生み出しています。「濁り」での一番を目指すメーカを追随し
ながら、
「濁り」と「濃さ」の組合わせで市場のすき間を探し 、他社との差別化を図
り、ペットボトルお茶市場でシェア拡大を目指しています。
ペットボトルお茶のポジショニングマップ
濃い味
B社緑茶
濃い味
C社緑茶
濃い味
B社緑茶
A社緑茶
C社緑茶
濁り
クリア
D社緑茶
※個人の感想を元に作成
薄味
38
11
マーケティングミックス(4P)
前述のSTPプロセスのターゲティング(T)において、商品・サービスを「誰
に」対して、販売するかを明確にしました。このプロセスを通してターゲット顧
客が明確になれば、「何を」「いくらで」「どこで」「どのようにして」売るのかを
決定していく 4P のプロセスに移っていきます。
ターゲットとなる顧客にとって魅力ある「製品」(Product)をつくり、掛る費
用に利益を上乗せした「価格」(Price)を設定する。さらに、顧客に届きやすい
場所で販売できるように「流通」(Place)を選び、製品の魅力を伝えるために効
果的な広告、「販売促進」( Promotion)を行う。つまり「何を」「いくらで」、「何
処で」
「どのようにして」売るのかを、的確に組み合わせを決定して、販売強化を
図ることが、マーケティングミックスです。
「思いつき」や「勘」でマーケティング活動をするのではなく、理論をきちん
と押さえた上で、常にその理論を意識しながら、販売戦略を立てさせて、行動 し
ていくことが重要です。
4Pの中心には、顧客が存在し、顧客第一主義で臨まなければなりません。
【製品】
一番、顧客が本当に欲しい商品・サービスを開発し続けることが重要です。
【価格】
安すぎたら利益を確保することができなくなるし、高すぎると顧客が手にする
ことができなくなる。競合企業の価格設定と市場環境を考慮しながら、最適な価
格を設定します。
【流通】
どんなに素晴らしい商品を開発しても、流通経路に載せない限り売上向上は期
待できない。ターゲットとなる顧客が接触できるような流通網を整備する必要が
あります。
【販売促進】
商品・サービスの認知度を高めるためには、マスメディアを活用しての広告・
宣伝が必要です。
上 記 の 4 つ の P の 組 合 わ せ の 戦 略 を 立 て て 、 P D C A ( Plan → Do → Check →
Action)サイクルで4Pをマネジメント(管理)していく必要があります。
製品
価格
Product
Price
顧客
販売促進
流通
Place
Promotion
39
12
消費者行動理論
(1)AIDAMA理論
消費者はまず、その商品の存在を知り( Attention)、興味を持ち(Interest)、欲
し い と 思 う よ う に な り ( Desire)、 記 憶 し て ( Memory)、 最 終 的 に 購 買 行 動 に 至 る
(Action)という購買決定プロセスを経るという理論です 。
Attention(注意)→ Interest(興味・関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)
→ Action(行動)
(2)AIDAMA理論 (事例紹介)
当初、スーパーに商品を陳列していたが 、全く売れなかった。そこで、生徒達が
実演試食販売をすることにしました。笑顔で・大きな声で「高校生」が企業と共同
で考えた事をアピールし、商品に感心を持っていただくことができました。
(注意→
興味・関心)さらに、試食を提供し、美味しさを実感していただきました 。(→D 欲
求)効果的なPOPを示しながら、正しい商品知識 を身に付けて、お客様の疑問に
答えて、沢山の方々にご購入していただきました。(→行動)
(3)AISAS理論
AIDAM理論と異なる点は、
「 検索」と「情報共有」である。興味・関心(Interest)
を持った後に、インターネットで検索し( Search)、販売店へ行って購入し(Action)、
その商品を購入した事や感想について、ソーシャルメディア上で共有する( Share)
という購買決定プロセスを経るという理論です。
Attention(注意)→ Interest(関心)→検索(Search)→行動(Action)
→意見共有(Share)
(4)AISAS理論(事例紹介)
サッカーJ2 チームのサポータの方々が生徒達の商品開発等について、それぞれの
ブログで紹介していただきました。
(関心)それを受けて、生徒達の日々の活動を綴
ったブログ「マーケティングリサーチ&野菜スイーツ開発物語」に多くの方々がア
クセスされることになりました。
(検索)販売当日は、お客様はダイレクトに私達の
ブースに訪れ、沢山のオリジナル商品をご購入いただきました。
(行動)そして、こ
れらの情報が様々なブログで紹介されることになり(意見共有)、さらなる注目を集
めることになりました。
【参考文献】
マーケティング
実教出版(株)
小林 一
商品開発
実教出版(株)
片岡 寛
広告と販売促進
実教出版(株)
武井 寿
「商品企画」のきほん
(株)翔泳社
末吉 孝生
ケースで学ぶマーケティングの教科書 (株)秀和システム
岡本 泰治
仕事のマナー得講座
(株)プレジデント社 神田 久幸
発想法―創造性開発のために
中央公論新社
川喜田 二郎
平成 26 年度市場別訪日プロモーション方針概要
観光庁
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