第36号 - 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 東京都支部は賃貸住宅

第36号
平成21年12月
社内で、地域でネットワーク広げよう
「つなげる力」が日本を変える
賃貸住宅オーナーセミナー2009
第4回定例会を兼ねた「オーナーセミナー2009」が、10月20日草月会館(東京都港区)
で行なわれ、会員会社がお世話になっているオーナー様をはじめ、一般ユーザー、会員会
社など約280名が参加しました。
今回は、
「義務教育初の民間出身校長」として著名な藤原和博氏(東京学芸大学客員教
授)を招き、同氏の標榜する「つなげる力」の可能性についてご講演いただきました。ま
た、現在、国土交通省の「社会資本整備審議会住宅宅地分科会民間賃貸住宅部会」で検討
がなされている、賃貸不動産管理・仲介業の今後の方向性について、同省から中間とりま
とめが報告されました。
冒頭あいさつした塩見紀昭支部長(写真)は「全国で相次ぐ更新料裁判や、家賃債務保証
制度のあり方など、いま賃貸住宅を巡る環境は、急速に変わりつつあります。我々日管協
も、めやす賃料制度を創設し、消費者の不安を取り除く努力をしています」と語りました。
部下と上司といったタテやヨコのつな
らのおかげで人気となった和田中学校
戦後の日本は、『正解の出し方』を
がりだけでなく、「地域社会との、ナ
の周辺では、家賃相場が上がっている
教え続けてきた。イエスかノーか、
ナメのネットワーク」に大きな可能性
のです。
ュニケーションしなくなります。
講演
「ブレスト」で
組織を活性化し
多様化・複雑化へ対応を
テーマ:「つなげる力」で学校を、日本を開
国せよ!
講 師:藤原和博氏(前・杉並区立和田中学
校校長、大阪府知事特別顧問、東京
学芸大学客員教授)
『答えがわかる人』と正解だけを求め、
があると指摘します。
正しい回答を早く書くための情報処理
「これから5年ほどの間、1,000万人
力を高めることだけを教えてきた。そ
もの団塊世代が地域社会に出てきま
ークを構築し、そのニーズを取り込む
れが、驚異的な経済成長を生み出す原
す。さまざまな知識を持つ彼らが教育
商品を、やわらかい発想で考えてくだ
動力になった。
や地域社会を変えてくれる。実際、彼
さい」
(同氏)
。
藤原氏は、リクルートで広報課長、
講演
新規事業担当部長などを歴任。その後、
民間賃貸住宅の
トラブル防止の方策
年内にも方向性示す
ヨーロッパに在住し、「成熟社会に必
要な仕組みは、豊かな教育・医療・住
宅」との思いを胸に帰国。2003年、都
内では義務教育初の民間校長として、
また、彼らは非常に大きな不動産ニ
ーズを持っている。彼らとのネットワ
しかし、成熟社会に突入し、価値観
杉並区の和田中学校校長に就任。地域
が多様化・複雑化すると、正解は1つ
の団塊世代や学生を講師に招き、学校
ではなくなっていく。世の中が変化し
を核に地域社会を再生する「学校支援
続けるなかで、正解主義は通用しなく
地域本部」の立ち上げ、生徒の柔軟な
なったのです。変わりゆく世の中で求
発想を促す多彩な工夫を凝らした授業
テーマ:民間賃貸住宅部会(社会資本整備審
議会住宅宅地分科会)の研究報告
講 師:佐々木 正士郎氏(国土交通省 住宅
局 住宅総合整備課 賃貸住宅対策官)
貸住宅を巡る紛争の未然防止、紛争の
円満な解決、滞納・明け渡しをめぐる
紛争の解決、民間賃貸住宅ストックの
質の向上について、それぞれ方策の方
向性を示しています。
このなかには、現在、日管協も協力
して構築が進められようとしている
「滞納を行なう賃借人の信用情報の整
備」や、「家賃債務保証業に係る任意
現在、社会的話題となっている「更
の登録制の導入」、あるいは「家賃債
められるのは“修正主義”。自分が、
新料」問題、「追い出し屋」などと呼
務保証業」への許可制の導入といった
など、さまざまな取組みで都内屈指の
関係者が納得できる正解(納得解)を
ばれている家賃債務保証業者による滞
注目すべき方策も盛り込まれていま
人気を誇る公立中学校に成長させまし
導き出すための“編集力”が必要なの
納・明け渡しに係るトラブルの多発な
す。
た。
です」
(同氏)
。
ど、ここ数年賃貸住宅の管理・仲介に
この編集力を生み出すための力こそ
が「つながる力」
。
「まず、訓練が必要。
藤原氏
まつわるさまざまなトラブルが増加し
ています。
脳は使うことでネットワークができて
そこで、国土交通省は「社会資本整
くる。何かテーマを与え、社内の人や
備審議会住宅宅地分科会民間賃貸住宅
社外の人が複数で、あれこれと意見を
部会」において、これら民間賃貸住宅
出し合う(ブレーン・ストーミング)
を巡る課題を解決するための方策を検
のです。
討。今夏、中間とりまとめを発表しま
どんな馬鹿らしい意見が出ても、否
した。
佐々木氏
「民間賃貸住宅を巡る問題について
とりまとめでは、民間賃貸住宅を巡
は、解決が比較的容易なもの、難しい
オーと驚くような意見が出てくるかも
る課題について①敷金等の返還、原状
ものが混在している状態。法規制の問
とは何なのでしょうか。「今日お集ま
しれない。昔から『三人寄れば文殊の
回復、管理業務を巡るトラブルの多発、
題となれば、他省庁との意見の調整も
りの皆さんは、感じていると思います。
知恵』と言います。アチコチからチャ
②家賃債務保証業務等に関連した、滞
必要となります。方向性を1つのとこ
今の若者や若い社員の方々は、本当に
ット(おしゃべり)が起きて、さまざ
納・明け渡しをめぐるトラブルの増
ろに収斂するのは容易なことではな
コミュニケーション能力が劣化してい
まなアイディアが出てくるようになれ
加、③床面積が小さい、バリアフリ
く、まとまらない部分も出てくると思
ると。コンビニに携帯にパソコン。世
ばいい」
(同氏)
。
ー・省エネの遅れ、維持修繕の不備と
いますが、年内には一定の方向性をま
いった品質面の問題、を指摘。民間賃
とめたい」
(佐々木氏)
。
同氏が、これからの日本を変えるた
定してはダメです。それがきっかけで、
めの重要なカギとする「つなげる力」
の中が便利になることで、人々はコミ
また同氏は、親と子、先生と生徒、