第2講 数列の極限(ⅱ) 【問題1】 次の極限を求めよ. lim n ®¥ 7 rn 1 + r + + r n -1 数学Ⅲ 【問題2】 次の無限級数の収束発散を調べ,収束するものについては和を求め,発散するものにつ いては,その理由を述べよ. ( ) (2 3) ( ) (1) 2 - 3 + 3 - 4 + … + n + 1 - n + 2 + … 2 n n +1 (2) 2 - 3 + 3 - 4 + … + n + 1 - n + 2 + n + 2 - … 2 8 2 3 n n +1 n +1 【問題3】 a が実数の定数のとき,無限級数 å a n sin np について,次の各問いに答えよ. 2 n =1 ¥ (1)この級数の収束・発散を調べよ. (2)収束するとき,その和を求めよ. 9 第2講 数列の極限(ⅱ) 解答 数学Ⅲ 【問題1】 次の極限を求めよ. lim n ®¥ rn 1 + r + + r n -1 《スタートライン》 「極限を求めよ」となっているが,実質的には無限等比級数の収束・発散を調べる問題 である.無限等比級数の問題の基本は,第 n 部分和を求め,その収束・発散を調べること にある.本問においては,まず分母の和を先に考えることになるが, r の値に限定がない ので r = 1, r ¹ 1 のときで場合を分ける必要があり,各々の場合によって分母の和が異なっ てくる.さらに, r の値によって場合分けを行い極限を考えることになる. 解 答 rn =1 1 + r + + r n -1 n \ 与式 = 0 r = 1 のとき r n (1 - r ) r n - r n+1 rn = = n -1 1 + r + + r 1 - rn 1 - rn ここで|r |<1 のとき lim r n = 0, lim r n +1 = 0 r ¹ ±1 のとき n ®¥ n ®¥ \ 与式 = 0 |r |> 1 のとき r n - r n +1 = 1 - r より 1 -1 1 - rn rn 与式 = r - 1 r = -1 のとき n が奇数のときは n が偶数のときは 以上より rn = -1 1 + r + + r n -1 rn の値は存在しない. 1 + r + + r n -1 -1 < r ≦ 1 のとき, 0 に収束 r < - 1, 1 < r のとき, r - 1 に収束 r = -1 のとき, 発散 10 ü ï ý ï þ 【問題2】 次の無限級数の収束発散を調べ,収束するものについては和を求め,発散するものにつ いては,その理由を述べよ. ( ) (2 3) ( ) (1) 2 - 3 + 3 - 4 + … + n + 1 - n + 2 + … 2 n +1 n (2) 2 - 3 + 3 - 4 + … + n + 1 - n + 2 + n + 2 - … 2 2 n 3 n +1 n +1 《スタートライン》 無限級数 a1 + a2 + + an + は実際には求めることが不可能なため, n 項目までの和(第 n 部分和) Sn = a1 + a2 + + an を考え,数列 {Sn } の極限値 S を前記無限級数の和と定義する. この定義から分かるように,無限級数の和は部分和の極限であり,数列の和 Sn を計算し, 極限値 lim Sn を求めることでしか定められないため,勝手にカッコをつけたりすることは n®¥ 禁物である.したがって, (2)を(1)と同じように勝手にカッコをつけて (1)=(2) とするのは誤りである.(2)のような問題では第 n 部分和の末項が偶数番目か奇数番目 かになるかによってその係数となる符号が異なるので n = 2m - 1, 2m の場合で分けて考 えていかなければいけない. 解 答 初項から第 n 項までの部分和を Sn とする. ( ) ( ) ( ) Sn = 2 - 3 + 3 - 4 + … + n + 1 - n + 2 = 2 - n + 2 2 2 3 n n +1 n +1 n ® ¥ のとき, Sn ® 1 より収束し,和は 1 (2) n = 2m - 1 ( m は自然数)のとき Sn = 2 + - 3 + 3 + - 4 + 4 + … + - m + 1 + m + 1 = 2 2 2 3 3 m m n = 2m のとき Sn = 2 + - 3 + 3 + - 4 + 4 + … + - m + 1 + m + 1 - m + 2 = 2 - m + 2 2 2 3 3 m m m +1 m +1 n ® ¥ のとき,ともに Sn ® 1 より収束し,和は 1 検 討 本問の背景には,有名な“ボルツァーノの級数”1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + の議論がある.大 (1) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 昔の数学者はこの級数を 1 - 1 + 1 - 1 + = (1 - 1) + (1 - 1) + = 0 + 0 + = 0 1 - 1 + 1 - 1 + = 1 + ( -1 + 1) + ( -1 + 1) + = 1 + 0 + 0 + = 1 など考えていた.しかし,正しい考え方は,この部分和を Sn とすれば n が偶数のとき Sn = 1 - 1 + 1 - 1 + = (1 - 1) + (1 - 1) + + (1 - 1) = 0 n が奇数のとき Sn = 1 - 1 + 1 - 1 + = (1 - 1) + (1 - 1) + + (1 - 1) + 1 = 1 つまり,m = 1, 2, として S2m = 0 ,S2m-1 = 1 となり {Sn } は 1, 0, 1, 0, と振動するから, lim Sn は存在しないのである. n®¥ 11 【問題3】 a が実数の定数のとき,無限級数 å a n sin np について,次の各問いに答えよ. 2 n =1 ¥ (1)この級数の収束・発散を調べよ. (2)収束するとき,その和を求めよ. 《スタートライン》 n-1 与えられた無限等比級数の一般項は,n が偶数のとき 0 ,n が奇数のとき,a n ( -1) 2 と な る . こ の よ う な 場 合 に は 部 分 和 を 奇 偶 で 分 け て S2m , S2m-1 を 別 々 に 求 め , S2m = S2m-1 (m ® ¥ ) となるかどうかで収束・発散を調べるとよい. 解 答 (1) (2) 第 n 項までの和を Sn とおく. m が正の整数のとき S2m-1= a - a3 + a 5 - a7 + + ( -1)m-1 a 2m-1 = 1 - ( -a 2 )m ×a 1 - ( -a 2 ) 0 ≦ a 2 <1 の場合 a (m ® ¥ ) 1 + a2 a 2 ≧1 の場合, S2m-1 は発散する. S2m-1 ® また, x n = a n sin np とおくと 2 S2m = S2m-1 + x2m = S2m-1 ( x2m = a 2m sin mp = 0) であるから,その収束・発散は上と同様になる. よって, 0 ≦ a 2 <1 の場合 lim Sn = n®¥ a 2 ≧1 の場合 a 1 + a2 発散 ゆえに,与えられた級数は a 1 + a2 発散 -1 < a <1 のときは収束し, 和は a ≦ - 1 または 1 ≦ a のときは 12 ïü ý þï
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