「放射線の影響」(放射線医学研究所)

放射線の影響
放射線医学総合研究所
放射線防護研究センター
規制科学研究プログラム
米原 英典
1
講演の内容
◎放射線とは
・放射性物質
・放射線を受ける経路
・放射能と線量
◎放射線の健康影響
・放射線を受けると何が起こるか
・乳幼児、胎児への影響
・影響を減らすにはどうすれば
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放射線とは
放射性物質などからでる粒子の流れや電磁波
身体に当たると
空気中で飛ぶ距離
1~10cm
アルファ線
μ m
原子核
(1兆分の1cm)
数m
数10m
ベータ線
mm
電子
ガンマ線
エックス線
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放射線を受ける経路
ヨウ素131
セシウム134
セシウム137
空気
体 空気中
放の
射外
線か
ら
の
体の中からの
放射線
食物、飲料水
土壌
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放射線、放射能、放射性物質とは
放射能=放射線を出す能力 ベクレル
弱い
放射線
1ベクレル
1秒間1回放射
線を出す
放射性物質
強い
4ベクレル
1秒間4回放射
線を出す
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線量の単位
シーベルト 人体が受けた放射線の量を影響の大きさで表す単位
(物理的な線量にある仮定に基づく係数をかけて導出する)
外から
1㍉シーベルト
体内から
1㍉シーベルト
人体影響の大きさは同じ
で足し算する
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ベクレルからシーベルトへ
• 放射性ヨウ素の甲状腺等価線量で50ミリシーベルト/年を飲料水、乳製品、
野菜(根菜、芋類を除く)の3つのカテゴリーに分け、それぞれが11ミリシー
ベルト/年の基準以下にして、これらの以外の食品からの線量も考慮
• 線量の計算例
濃度(ベクレル/kg)×調理による減少率×食べる量kg×食べる日数×線量への換算係数
2000ベクレル/kg ×
0.5
× 0.1 kg × 365
× 0.00032 (ミリシーベル
ト/ベクレル)= 11.6mSv
年間50mSvの割り振り
食品
成人の1日の
摂取量
葉菜
0.1 kg
牛乳
0.2リットル
魚
0.2 kg
無脊椎動物
0.02 kg
海藻類
0.04 kg
その他
17mSv
野菜類
11mSv
飲料水
11mSv
牛乳
11mSv
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放射性物質の性質
ヨウ素
I-131
セシウム
Cs-134
セシウム
Cs-137
ストロンチ
ウム
Sr-90
出す放射線の
種類
ベータ
ガンマ
ベータ
ガンマ
ベータ
ガンマ
ベータ
物理的に放射能
が半分になる期
間
8日
2年
30年
30年
身体中の放射
能が半分にな
る期間
約7日
約80日
約100日
約20年
蓄積する
器官・組織
甲状腺
全身
全身
骨
8
放射線の人体への影響
人体
細胞
DNA
9
DNAの修復
修復酵素
放射線
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細胞の死とその回復
×
×
×
×
×
××
×
回復
回復
× ××
××
×××回復不能
×× ×
機能喪失
形態異常
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放射線の人体への影響
原因
例示
発症
時期
胎児の発生・発達障害
細胞死
100㍉シーベルト以上で観察
水晶体の混濁
(白内障)
造血機能の低下
不妊、やけど、脱毛
数ヶ月
以降
数週間
以内
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細胞の変異と細胞が増える
放射線
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放射線の人体への影響
原因
細胞の
変異
例示
がん
白血病
発症
時期
約10年以降
2,3年以降
100ミリシーベルト以上で
線量とともに死亡率が増加
遺伝性影響
(人では報告されたことがない)
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放射線によるがん・白血病の増加
放射線のみによる死亡率の増加分
0.5%
1%
1.5%
30%
が
ん
に
よ
る
死
亡
率
調査では100mSv
より低い線量では、
明確に増加するこ
とが、観察されて
いない
0 mSv
1000人が100mSv受
けた場合、生涯で305
人ががんで死亡し、
そのうち5人が放射線
によると推定できる
個人の生活習慣などによるがん
個々のがんの原因
は特定されていない
が食事、喫煙、ウィ
ルス、細菌などと考
えられている
100 mSv
200 mSv
受けた放射線の線量
300mSv
15
200人の集団
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放射線を受けない場合
日常生活の何かの原因でが
んで死亡すると考えられる人
1000
200
100
20
1
0
17
全員が20ミリシーベルトを受けた場合
1000
200
100
20
1
0
18
全員が100ミリシーベルトを受けた場合
放射線によるがんで死亡すると
考えられる人
1000
200
100
20
1
0
19
全員が200ミリシーベルトを受けた場合
1000
200
100
20
1
0
20
全員が1000ミリシーベルトを受けた場合
1000
200
100
20
1
0
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日常生活での被ばく
世界平均
2.82 mSv
核実験
0.0052 mSv
0.18%
原子力
0.0002mSv
0.007%
0.39mSv 0.4mSv 医療被ばく
核実験事故
14%
14% 原子力運転
0.48mSv
17%
0.29mSv
10%
ラドン・トロン
食品摂取によ
る内部被ばく
大地放射線外
部被ばく
宇宙線
1.26mSv
45%
UNSCEAR2000年報告書より
日
本
3.8 mSv
0.29mSv
0.38mSv 8%
10%
0.41mSv
11%
0.4mSv
11%
核実験
0.0052 mSv
0.14%
原子力
0.00001 mSv
0.0003%
2.25mSv
60%
原安協「生活環境放射線」
(1992)より
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自然由来の放射性物質
干ししいたけ
(700)
ポテトチップ
(400)
米(30)
魚(100)
ほうれん草
(200)
牛乳(50)
放射性カリウムの含有量(ベクレル/kg)
体
内
に
数
千
べ
ク
レ
ル
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線量低減法
外からの放射線の防護原則
③時間を短く
②遮る
・高濃度汚染の場所を知
る
・それから距離をとる
・家の中も高い場所に長
時間いない
①離れる
体内の線源からの防護
①規制値を超える食物を食べない、
路地ものは出来るだけ避ける
②ほこりっぽい日にはマスクをする
③放出の情報に気をつける
④土が身体に付けばすぐに洗う
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野菜の放射性物質を減らす方法
・洗う
放射性物質が10%~90%になる
(条件により異なる)
・あく抜き(煮沸)
放射性物質が10%~50%になる
あく抜きの煮汁は捨てる
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放射線の測定器について
• 放射線測定器には、種類がある。
型
目的
GM型
(ガイガーカウンター)
汚染の検出
線量率(参考程
度)
ベータ線アルファー線を検出
電離箱型
ガンマ線線量率
最も正確であるが低い線量率
は計れない
シンチレーション
ガンマ線線量率
正確で感度もよい
ポケット線量計
積算線量
長期間の積算線量のため線
量率は計れない
• 線量率の測定は、同じ条件で比べる
• 測定値の評価は、専門家に尋ねた方がよい
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胎児への影響と妊娠時期
重要な器官が形成される時期
=薬の使用も気をつける時期
=放射線にも弱い時期
着床前期
妊娠2-4週
• 流産
器官形成期
4-10週
• 発生・発達異常
胎児前期
10-17週
• 精神遅滞
胎児後期
17週-出産
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妊婦さんと授乳婦さんの生活
●妊娠期、授乳期には、体内にできるだけ
放射性物質を取りこまないように心掛ける
体に放射性物質が入る経路は2つ
・呼吸から
・食べ物から
●マスク、うがい、手洗いなど
●野生のもの(わらびやぜんまい、たけのこ、きのこなど)
は大量に食べない
●いろいろな品目、いろいろな産地のものを食べる
(リスクを分散させる)
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子供の線量の低減法
・車:かなり放射線を防ぐ
・ベビーカーを外に置く場合はおおいを
・だっこ/おんぶ:地面からの距離が
あるので、放射線量が少なくなる。
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幼児の外遊びなど
・最寄りの学校での対応と同じ
・原発からの風向きに注意
・砂遊びの後は、手洗いをする
・靴についた泥は出来るだけ落とす
・雨対策は、傘やレインコートで十分
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赤ちゃんの食事について
・基本的には大人と同じ食材を使えます
・食べる量が少ないので、体に入る放射性
物質の量も少なくなる
・水は乳児用の規制値以下のものを利用
○放射線の予防について
・無理のない範囲で続ける
・効果的な方法は、状況の変化によって変わる
・ネット社会のデマも惑わされない
31
31
空間線量率
マイクロシーベルト/時
ヨウ素131(半減期8日)の減衰
地面からの線量の変化
1.0
131I:137Cs:134Cs=1:1:1
0.8
0.6
0.4
131I:137Cs:134Cs=4:1:1
0.2
0.0
0
50
100
150
200
250
300
350
経過日数
32
参考レベルについて
ミリシーベルトの
1000分の1
1時間
マイクロシーベルト
年間
ミリシーベルト
屋外活動を制限する
20
3.8
線量低減化措置
1.9
10
0.19
1
公衆の線量限度以下
調査時
(4月上旬)
1年後
将来
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放射線被ばくが心配な方
• 放射線医学総合研究所、放射線被ばくの
健康相談窓口へ
043-290-4003
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