1.趣旨 4 大槌町震災復興基本方針

4 大槌町震災復興基本方針
1.趣旨
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災津波は、大槌町に壊滅的な
打撃を与え、多くの尊い命を奪うとともに貴重な財産を押し流しました。
このような大津波に備えるためにこれまで築いてきた防潮堤をはるかに超えて襲来し
た津波は、防潮堤を一気に破壊するとともに、大火災を引き起こして街の大部分を喪
失させました。
こういった厳しい環境の中で、発生直後から全国各地、世界各国から多くの支援を
頂き、これまで町の緊急、応急として復旧に取り組んできました。
電気、水道等のライフラインの復旧や瓦礫の撤去、応急仮設住宅の建設等を推し
進めてきましたが、今回、東日本大震災津波からの復興に向けて、地域における未
来の設計図となる「震災復興構想」、「震災復興基本計画」及び「震災復興実施計画」
を策定する上で、大槌町として取り組む基本的な方針を定めるものです。
2.基本方針を支える四つの柱
(1) 多重化した防災機能を持つ災害に強いまちづくり
これまでは、過去に襲来した津波の高さを基準として防潮堤、水門等の防災施
設を建設してきましたが、今回の東日本大震災津波は、それをはるかに超える高さ
で襲来していることから、防災施設だけで津波被害を防ぐことは不可能です。
また、津波によって引き起こされた火災は、残った市街地を焼き尽くし、流出を免
れた財産をも焼失させたことから火災に対しても強い町をつくる必要があります。
今回の震災では、1,500人を超える尊い人命を喪っていることから、もう二度と人
命が奪われることのないよう、防災機能を多重化した町を再建する必要があります。
そのため、次の事項により、災害に強いまちづくりを目指します。
① 防潮堤等防災施設による防災だけでなく、街路、鉄道、建築物等の組み
合わせにより、被災を最小限に食い止め、安全に避難できる町の配置を
再構築します。
② 今回、津波により浸水した住家等は、高台移転や地盤の嵩上げを行い、
高齢者でも命を奪われる事のない安心、安全なまちづくりを行います。
③ 公園、緑地等を適切に配置し、火災の延焼を防ぎ、町民が安らげる憩い
のまちづくりを目指します。
④ 今回の震災で亡くなった方々のうち、高齢者の占める割合が高いことか
ら、身体の不自由なお年寄りでも、確実に避難できるまちづくりを目指し
ます。
⑤ 震災直後から、有線、無線を問わず、組織、町民との伝達手段である通
信機能がストップしたことから、これからは、被災時でも連絡手段が途絶
えることのない安定した情報通信基盤を整備します。
⑥ 風力、太陽光発電等のクリーンエネルギーの整備導入を進めることによ
り冗長性を備えた電力の供給を図ります。
⑦ 今回の震災のように長期にわたる避難生活に対応ができる施設機能を
兼ね備えたコミュニティセンターを各地域に配備します。
(2) 被災した町民生活の再建
今回の震災により4,000世帯を超える町民が被災していることから、被災した町民
が被災前の暮らしにいち早く戻れるよう対策を講じる必要があります。
そのため、次の事項により、被災した町民生活の再建に努めます。
① 被災者の住宅確保のため、応急仮設住宅の建設を急ぐほか、被災した公営
住宅の修繕、再配置、それから低廉な家賃の災害公営住宅の建設を早急に
推進するとともに、個人住宅再建のための支援を行います。
② 市街地に残された瓦礫の撤去を行うとともに、速やかに廃棄物として処理し、
震災前の経済活動に少しでも早く戻れるよう町の復興を図ります。
③ 町民が安心して暮らせるよう、生活に関連する保健や医療、介護、福祉、環
境など、各種サービスの再構築と再生を目指します。
④ 災害対策機能を有した学校施設、社会教育施設の復旧整備を図り、児童生
徒が充実した教育を受け、全ての町民が幅広い生涯学習活動を行うことがで
きる教育施策を推進します。
(3) 地域経済の振興
漁業、水産加工業、商業とも津波により全て壊滅的損壊を受けて、未だ復旧のめ
どが立っておりません。
また、震災後も地盤沈下、防潮堤の倒壊等のため、経済活動も制限された状況
にあり、早急に対策を講じる必要があります。
そのため、次の事項により、地域経済の振興を図ります。
① 被災によって無くなった雇用を確保するため、被災企業が事業を再開するた
めの支援や緊急雇用創出事業等を活用した雇用支援を行っていきます。
② 瓦礫の撤去や町の基盤整備等、大型公共事業を行い、雇用の確保に努めま
す。
③ 漁業協同組合と一体となり、早急な漁業の再開を図ります。
④ 被災した水産加工場等、生産施設再建のための環境の整備を図ります。
⑤ 被災により喪失した商店街の再興を支援するとともに、商店と住まいのあり方
を検討し、津波による被災時にも対応した商店街の再編を推進します。
⑥ 観光施設の再整備を図るとともに、各種イベントや復興キャンペーンを実施し
て賑わいのある町づくり、観光振興策を推進します。
(4) 町民による町民のためのまちづくり
今回の震災で市街地の大部分を失った事から、ゼロからの出発ということで町民
の声が届く、町民による町民のためのまちづくり行います。
そのため、次の事項により、町民による町民のためのまちづくりを推進します。
① 復興計画を進めていく中で町民に対し適切に情報提供を行うため、各地域ご
とに「地域復興協議会」を編成し、町民の合意形成が図られるようにします。
② 復興計画を策定する上で、町民の声が届くよう「大槌町再生創造会議」を設
置し、町民と行政が手と手を取り合って協働で進めていく体制をつくります。
③ 今回の震災では、防災施設だけでは災害を防げない事がはっきりしたことか
ら、地区形成、避難対策、防災対策について、町民と話し合いの場を設けま
す。
④ 今回のような大規模災害では、行政の力だけでは限界がありますので、全町
的な自主防災組織化を推進し、住民主体の防災体制を図ります。
⑤ 今回の震災のなかで、水門の閉鎖、避難誘導、高齢者の避難援助活動等を
行った多くの消防団員等が犠牲になったことから、津波における避難誘導の
あり方を町民とともに検証し、今後、犠牲者を出さない防災計画を策定します。
3.未来を担う子どもたちへのメッセージ
今回の震災では、津波により教育施設に甚大な被害を受けたものの、先生方による的確
な避難誘導の結果、幼稚園、保育園、小中学校など多くの子どもたちを救うことができまし
た。これは日頃の津波避難訓練の成果であり、今後も継続して防災教育を行うことが重要
であることを示唆しています。
しかしながら、未来ある子どもたちの犠牲があったことも事実です。私達は未来を担う子
どもたちを今回のような災害でもう二度と失いたくはありません。そして、一人でも多くの子
どもたちが将来に大きな夢や希望を抱きながら、自らの生き方を主体的に切り拓く「生きる
力」を身に付け、自分の目標を実現し、ふるさと大槌を創生する担い手となることを望みま
す。
そのため、これまでの防災教育を継承しながらも今回の記録や教訓を活かした復興・防
災教育を実践し、ふるさと大槌を創りふるさと大槌に生きる人材を育成する教育の充実を
図ります。さらに、被災した子どもたちに対する教育支援を行うことで、すべての子どもたち
の内在的可能性を引き出し、自己実現することができるよう下記の取り組みを実施します。
① 町内の小中学校を小中一貫校教育校として位置付け、復興・防災教育を徹底しま
す。
② 今回の震災で親等を亡くし、経済的に大きな影響を受けた児童生徒に、就学援助
や奨学金の貸し付け等を行います。
③ 今回の東日本大震災津波の映像等の記録、町民の記憶や教訓の伝授、その他
様々な記録を収集、保存、保全し、今後の防災教育の礎とするとともに、公開し、
二度と犠牲者を出さないようにします。