言語活動の充実を図るための研修内容に関する研究 ― 中学校各教科における調査・分析を通して 【研 究 者】 企 画 部 教科教育部 教育情報部 特別支援教育・教育相談部 指導主事 渡部 光昭・田中 指導主事 藤居 結実・坂本 指導主事 田中 進一 指導主事 天羽 妃美子 宏憲・谷本 修 豊・木村 彰 【研究指導者】 広島大学大学院教育学研究科 教授 山元 ― 隆春 研究の要約 本研究は,言語活動の充実を図るために各教科における特有の課題を明らかにし,今後行われる言語 活動の充実にかかわる研修内容改善のための方向性について知見を得ることを目的とする。そのため各 教科を担当している中学校教員を対象とした調査研究を行った。調査項目は,言語活動の充実を図るこ とについてどのくらい困難を感じているか等,四つの項目である。平成22年7月から11月にかけて調査 を行い,1,020人から得られた回答を分析した結果,次の三点が明らかになった。①言語活動の充実を 図ることに困難を感じる意識は,教科ごとに違いがあること,②各教科から挙がった課題は,いくつか の教科に共通する課題と,その教科特有の課題があること,③研修内容改善の方向性として,言語活動 の充実にかかわる基本的な理解を図る内容や言語活動を充実する具体的な事例を紹介する内容,各教科 で育成する能力と言語活動の充実との関連を図る内容等を取り入れる必要があることである。今後の課 題としては,研究の成果を広島県立教育センターが実施する来年度の研修講座に生かすとともに,各教 育機関が行う研修に生かしてもらえるような取組を進めることが挙げられる。 キーワード:言語活動の充実 目 次 Ⅰ 問題の所在 ……………………………………1 Ⅱ 研究の基本的な考え方 ………………………2 Ⅲ 調査結果 ………………………………………5 Ⅳ 調査結果の分析と考察 ………………………11 Ⅴ 研究のまとめ …………………………………21 添付資料 ……………………………………………23 Ⅰ 問題の所在 平成18年12月に教育基本法が60年ぶりに改正され, 平成19年6月には学校教育法も一部改正された。学校 教育法第30条第2項には, 「基礎的な知識及び技能を 習得させるとともに,これらを活用して課題を解決 するために必要な思考力,判断力,表現力その他の 能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養 うこと」 (中学校,高等学校準用規定)とあり,新た に学力の要素が示された。これを受け,平成20年3 月に幼稚園教育要領,小学校・中学校学習指導要領, 平成21年3月に高等学校・特別支援学校学習指導要 領が告示された。 幼稚園教育要領,学習指導要領は,平成20年1月 に中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等 学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善につ いて(答申) 」 (以下「答申」とする。 )に基づいて改 訂された。 「答申」にある「学習指導要領改訂の基本 的な考え方」に,コミュニケーションや感性・情緒, 知的活動の基盤である言語の能力を重視することが 示され, 「教育内容に関する主な改善事項」の第一に, 各教科等における言語活動の充実が提言された。 広島県では,平成15年度から全国に先駆けて「知・ 徳・体」の基礎・基本の徹底を実現していくための 視点として「ことばの教育」を位置付け,全県的な 取組を展開してきた(1)。この流れを受けて,これま で各学校において,様々な言語活動の取組が展開さ れてきている。そうした取組の上で学習指導要領(平 成20年及び平成21年告示)に示されている言語活動 の充実を図ろうとする流れはあるものの,その営みは 必ずしも容易に進んではいない現状がある。例えば, - 1 - それは言語活動の充実を言語技術(2)の習得と混同し たり,各教科等の評価規準に言語技術の習得が記載 されている学習指導案が見られたりすることからい える。 広島県立教育センターでは,平成20年度から言語 活動の充実にかかわる研究を進めてきた。平成20年 度は言語活動に関する理論研究,平成21年度は,小 学校教員155人,中学校教員157人の合計312人を対象 とする調査を基に,教員が各学校で言語活動を充実 させる上で,どのような実践上の問題を抱えているの か明らかにする調査研究を行った(3)。この調査研究に おける調査項目は,言語活動の充実を図ることにつ いてどのくらい困難を感じているかの意識にかかわ る項目と言語活動の充実に向けての研修にかかわる 項目とした。調査の結果,主に次のようなことが明 らかになった。 ○ 国語は,言語活動の充実を図ることについて, 各教科等の中で困難を感じる意識が最も低い。音 楽,図画工作,美術,家庭,技術・家庭,体育, 保健体育は,困難を感じる意識が高い。 ○ 「答申」に示されている六つの学習活動を授業 の中で行う際に困難を感じる意識には差がある。 ○ 言語活動の充実を図る上で困難となっている, 上位三つの要因は,小学校,中学校ともに共通し ており, 「教材研究の不足」 , 「準備や研修の時間不 足」 , 「自身の理解不足」である。 各教科等における言語活動の充実にかかわる困難 の要因等には,共通のものもあれば各教科等に特有 のものもあることがうかがわれた。また,当教育セ ンターが実施した研修において,教員がどのように 言語活動の充実を図るのか等の悩みを多くもってい る状況が見られた。 これらから,学習指導要領に沿った言語活動の充実 を図るためには,各教科で教員が抱えている悩みを 把握し,それを解決する研修内容にしていく必要が あり,このことは喫緊の課題である。 そこで,本研究は,言語活動の充実を図るために, 各教科における特有の課題を明らかにし,今後行わ れる言語活動の充実にかかわる研修内容改善のため の方向性について,知見を得ることを目的として進 めることとした。 Ⅱ 研究の基本的な考え方 1 言語活動の充実について (1) 「生きる力」と言語活動の充実 学習指導要領で目指す「生きる力」は,OECDが知 識基盤社会に必要な能力として定義したキー・コン ピテンシー(主要能力)(4)を先取りした考え方であ ると「答申」に示されている。この「生きる力」の 育成と言語活動の充実とのかかわりについて,文部 科学省の常盤豊(平成20年a)(5)は,次のような見解 を述べている。 平成16年にOECDが各国の15歳の子どもたちを対 象に国際的な学力調査であるPISA調査を実施した。 この調査によって,国際的に求められている能力 (キー・コンピテンシー)の一部を国際的に比較す ることができる。我が国は,基礎的・基本的な知識・ 技能の習得については一定の成果があるものの,読 解力や記述式の問題に課題があることが明らかに なり,知識・技能の定着があってもそれを活用する 力が身に付いていないことが指摘された。同時に学 力低下も問題視され, 「詰め込み」か「ゆとり」か( 「知 識の習得」か「考える力の育成」か)といった二項 対立でも議論された。これについては,基礎的・基 本的な知識・技能の習得とこれらを活用する力とし ての思考力・判断力・表現力等をバランスよく子ど もたちに身に付けさせていくことが求められると いう,一定の方向性が「答申」に示された。両者を バランスよく身に付けさせるには,ある問題に直面 している状況下で,思考・判断し,既習知識を組み 合わせて解決していく活用をうまく位置付けるこ とである。言い換えれば,知識・技能を活用する力 を重視し,習得と探究と結ぼうという考えである。 そのために,活用を各教科等の授業でどのように位 置付けるか,その目標達成のための手立てとして言 語活動の充実が示された。言語活動の充実を図るこ とで考えを深めていくわけである。 常盤豊(平成20年a)の見解 この見解から, 「生きる力」の育成と言語活動の充 実とのかかわりは,PISA 調査の結果から見えてきた 課題を背景としていることが分かる。 (2) 「答申」における位置付け まず,前項のような背景を基に, 「答申」では言語 活動がどのように位置付いているか明らかにしたい。 「答申」には,学習指導要領改訂の基本的な考え方 及び教育内容に関する主な改善事項として次の事項 が挙げられている。 <学習指導要領改訂の基本的な考え方> ① 「生きる力」という理念の共有 ② 基礎的・基本的な知識・技能の習得 ③ 思考力・判断力・表現力等の育成 ④ 確かな学力の確立のために必要な授業時数の確保 - 2 - 「答申」に,PISA調査の読解力(6)や数学的リテラ シー(7),科学的リテラシー(8)の評価の枠組みなどを 参考に,言語に関する専門家などの知見を得て「思 考力・判断力・表現力等をはぐくむ学習活動の例」(以 下「言語活動例」とする。)が次のように示されてい る。 ⑤ 学習意欲の向上や学習習慣の確立 ⑥ 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実 <教育内容に関する主な改善事項> ① 言語活動の充実 ② 理数教育の充実 ③ 伝統や文化に関する教育の充実 ④ 道徳教育の充実 ⑤ 体験活動の充実 ⑥ 小学校段階における外国語活動 ⑦ 社会の変化への対応の観点から教科等を横断し て改善すべき事項 これらのことから,本研究で取り上げる言語活動 の充実は,学習指導要領改訂の基本的な考え方を踏 まえた教育内容に関する主な改善事項の一つである といえる。さらに, 「答申」には,言語活動の充実は 「各教科等を貫く重要な改善の視点」であり,知識・ 技能を活用する思考力・判断力・表現力等をはぐく むために必要であることが示されている。 (3) 言語活動とは何か 次に, 「答申」を踏まえて改訂された学習指導要領 に示された言語活動について整理したい。学習指導 要領に言語活動の明確な定義は見られないが,独立 行政法人教員研修センター(平成22年)は,学習指 導要領で示された言語活動について「『言語活動』と は言語による様々な活動のことである。」1)と定義し ている。では,言語による様々な活動とは具体的に どのようなものを指すのか。 「答申」では,国語科に おいて「記録,要約,説明,論述といった言語活動 を行う能力を培う必要がある」と示している。国 語科において培った言語に関する能力を基本にし て,それぞれの教科等で知識・技能を活用する学習 活動を充実することが重要としている。その具体例 に,記録,報告,説明等を挙げている。よって,言 語による様々な活動は,記録,要約,説明,論述等 に整理してよいと考える。独立行政法人教員研修セ ンター(平成22年)は, 「例えば,本や資料を読んだ り話を聞いたりして理解する,体験したことや理解 したことを基に思考したり判断したりすることも, すべて言語活動である」2)と述べている。これから, 各教科において行われる学習活動としての言語活動 は,必ずしも言語による表現活動に重点を置いてい るのではないといえる。 以上のことから,本研究における言語活動とは「言 語による,思考したり判断したり表現したりする様々 な学習活動(記録,要約,説明,論述等)」とする。 ① 体験から感じ取ったことを表現する。 ② 事実を正確に理解し伝達する。 ③ 概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活 用したりする。 ④ 情報を分析・評価し,論述する。 ⑤ 課題について,構想を立て実践し,評価・改善 する。 ⑥ 互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考 えを発展させる。 これらは,前項で述べた「言語による,思考した り判断したり表現したりする様々な学習活動」の具 体例ととらえることができる。また,「答申」では, 学習活動の基盤となるものは,数式等を含む広い意 味での言語であるとした上で,その育成のために, 国語科において音読・暗唱,漢字の読み書きなど基 本的な力を定着させた上で,各教科等において記録, 要約,説明,論述といった学習活動に取り組む必要 があると提言している。また,常盤(平成20年b) (9) は,思考力を育成する言語活動の在り方について, いわゆるPISA型「読解力」(10)の読解プロセス「情報 の取り出し→解釈→熟考・評価」(11)と関連させて事 実,解釈,評価の三つの類型に分け,次のように説 明している。なお,本稿では類型としての意味をも たせるために,<事実>,<解釈>,<評価>とい う表記をする。 (4) 言語活動の具体例とは - 3 - まず<事実>の類型である。例えば,身近な動植 物の観察や地域の公共施設等の見学の結果を記述し たり報告をしたりする活動などの活動である。 次に<解釈>の類型である。個々の事実だけでな く複数の事実を比較する,分類する,関連付けるな どの手法により課題を整理することである。複数の 事実の関係性を整理していくためには,概念や法則 などの意味を理解したり活用したりすることも重要 になる。例えば,需要,供給などの概念を基に価格 の変動をとらえ,生産活動や消費活動について考え るなどの活動である。 最後は<評価>の類型である。単に受け身で読み 解くだけでなく,ある課題に対して,既習の知識や 体験を結び付け,自分なりの考えをもち表現する。 例えば,自然事象や社会的事象に関する様々な情 報や意見をグラフや図から読み取ったり,これらを 用いて分かりやすく表現したりするなどの活動であ る。また,こうした類型は,自分の頭で考えるという 自己内対話の世界だけでなく,討論やディベートなど の他者との対話の中でも意識される必要がある。 常盤(平成20年b)の要約 以上が常盤による三つの類型(以下「三つの類型」 とする。)の説明である。これらの「三つの類型」は, 「言語活動例」を分類するための一つの視点になる と考えられる。そのため,常盤の説明を基に各類型 とPISA型「読解力」の読解プロセスを関連付け,そ れぞれの類型で求められる能力を考え,「言語活動 例」①から⑥を整理することを試みる。 <事実>の類型では,テキストの中から必要とさ れる情報を取り出すための情報選択能力が求められ る。また,目的に応じて事実を抜き出し,事実を伝 えるという活動が営まれる。「言語活動例」では①, ②が該当する。 <解釈>の類型では,抜き出した情報を知識・経 験を基に解釈し,その意味を理解していく能力が求 められる。「言語活動例」では③が該当する。 <評価>の類型では,ある状況下(文脈)の中で, 自分の知識を組み合わせてテキストと対話する,ク リティカルリーディングの能力が求められる。 「言語 活動例」では④,⑤,⑥が該当する。 表1は, 「言語活動例」を「三つの類型」に整理し たものである。 表1 「言語活動例」を「三つの類型」に整理したもの PISA 型「読解力」の 「三つの類型」 「言語活動例」 読解プロセス ①体験から感じ取ったことを表現する。 <事実> 情報の取り出し ②事実を正確に理解し伝達する。 <解釈> 解釈 <評価> 熟考・評価 2 ③概念・法則・意図などを解釈し,説明 したり活用したりする。 ④情報を分析・評価し,論述する。 ⑤課題について,構想を立て実践し,評 価・改善する。 ⑥互いの考えを伝え合い,自らの考えや 集団の考えを発展させる。 調査対象及び調査期間について 調査対象は,本研究の目的の一つである各教科特 有の課題を明らかにするという点を踏まえ,中学校 の各教科の教員とする。各教科は,中学校における 国語,社会,数学,理科,音楽,美術,技術・家庭, 保健体育,外国語の9教科である。 意識調査の実施にあたっては,次に挙げる研修や 教科部会に参加した義務教育学校の中学校教員に依 頼した。 ○ 広島県立教育センター実施の専門研修講座 ○ 広島県立教育センター実施のサテライト研修講座 ○ スポーツ振興課実施の研修講座 ○ 呉市中学校教育研究会美術部会 ○ 東広島市中学校美術研究部 ○ 大竹市・廿日市市教育研究会中学美術部会 ○ 広島県中学校教育研究会音楽部会 なお,一人の回答者が重複して回答しないように した。調査期間は,平成22年 7 月1日(木)から平成22 年11月16日(火)である。結果1,020人(内訳:国語121 人,社会127人,数学143人,理科130人,音楽93人, 美術63人,保健体育101人,技術・家庭87人,外国語 155人)から回答を得た。 3 本研究で分析する調査項目について (1) 言語活動の充実を図ることについてどのく らい困難を感じているかの調査項目 この調査項目については,自分が専門とする教科 において,言語活動の充実を図ることに困難を感じ ているかどうかを,1「当てはまらない」,2「どち らかというと当てはまらない」,3「どちらかという と当てはまる」,4「当てはまる」の4段階尺度で回 答を求めた。 (2) どんな理由で困難を感じているかの調査項目 この調査項目については,これまでに当教育セン ターが実施した研修講座内で受講者から質問された り,困っていることとして挙げられたりする内容の 中から主なものについて取り上げ,自分が専門とす る教科において言語活動の充実を図る上で困難を感 じる理由としてどのくらい当てはまるかについて, 1「当てはまらない」,2「どちらかというと当ては まらない」,3「どちらかというと当てはまる」,4 「当てはまる」の4段階尺度で回答を求めた(一部 自由記述による回答あり)。具体的な内容は次の六つ である。 (2)-1 どんな言語活動をさせるか思い付かない。 (2)-2 1時間の授業の中で,どの場面において言語 活動の充実を図ればよいか分からない。 (2)-3 教科の領域や分野等によっては,言語活動の 充実を図ることに困難を感じる(4か3に回答し た場合,具体的な理由の記述を求めた)。 (2)-4 言語活動を行う時間と実習,実験,実技等を 行う時間のバランスに困難を感じる(授業中に実 - 4 - 習,実験,実技等を伴う理科,音楽,美術,技術・ 家庭,保健体育の教員のみ実施)。 (2)-5 外国語(英語)で言語活動を行うため困難を 感じる(外国語科の教員のみ実施)。 (2)-6 その他の理由について(自由記述) なお,学習指導要領では外国語の教科における言 語活動の充実は外国語を活用して行うものであると 示されている。(2)-5 は,外国語の教科において日 本語で言語活動の充実を図ることを求められていると 考えているケースがあるという前提での設問とした。 (3) 言語活動の充実を図る際に,「三つの類型」によ って困難を感じる意識に差があるかの調査項目 この調査項目については,言語活動の充実を図る 際に, 「三つの類型」によって困難を感じる意識に差 があるかを,1「困難を感じない」,2「どちらかと いうと困難を感じない」 ,3「どちらかというと困難 を感じる」,4「困難を感じる」の4段階尺度で回答 を求めた。回答者には各類型における言語活動を共 通のイメージでとらえてもらうために,質問紙には 前ページの表1にある「言語活動例」を示した。 (4) 言語活動の充実を図る際にどのようなこと を意識しているかの調査項目 この項目に該当する調査内容は次のように設定し た。(4)-1 から(4)-4 は,1「意識しない」 ,2「ど ちらかというと意識しない」,3「どちらかというと 意識する」,4「意識する」の4段階尺度,(4)-5 は, 自由記述で回答を求めた。 (4)-1 教科としての目標を達成するために言語活 動を設定すること (4)-2 文章だけでなく,図・表・グラフ等も読むこ とを取り入れること 表2 Ⅲ 1 調査結果 言語活動の充実を図ることについてどのく らい困難を感じているかの調査項目の結果 自分が専門とする教科において言語活動の充実を 図ることに困難を感じるかどうかについて,評定を そのまま1から4の得点とし,教科ごとに算出した 平均評定値について差があるかF検定を行った。そ の結果は,F(8,1020)=4.96,p<.01で有意な差があ り,誤差項の平均平方は0.61であった。そこでFisher のLSD検定による多重比較を行い,教科間のどこに 有意差があるかを調べた。その結果を表2に示す。 表2には各教科において言語活動の充実を図ること へ困難を感じる意識を4段階評価したときの平均評 定値とその差,及びその差に有意差があるかどうか を表示している。有意差がある場合は,平均評定値 の差に記号を表示している。平均評定値は,大きい ほど言語活動の充実を図ることに困難を感じる意識 が高いことを表している。 2 どんな理由で困難を感じているかの調査 項目の結果 調査項目(2)-1 から(2)-5 について回答結果を教 科ごとに p.6,p.7の図1から図9に示した。図1 から図9には,評定をそのまま1点から4点の得点 とし,算出した平均評定値をかっこ内に示している。 同時に,帯グラフにおいて,困難な理由として当て 各教科で言語活動の充実を図ることにどのくらい困難を感じるかについての4段階尺度の平均評定値の差の絶対値と Fisher の LSD 検定による多重比較の結果 N=1020 平均評定値 保体 音 美 外 数 技家 社 理 * (4)-3 条件(例:字数制限,根拠の明示,立場の明 確化等)を設定すること (4)-4 相手や目的,場面等を明確にすること (4)-5 その他意識していること p<.05, 2.57 2.53 2.51 2.46 2.450 2.447 2.38 2.35 保体 2.57 音 2.53 0.04 美 2.51 0.06 0.02 外 2.46 0.11 0.07 0.05 数 2.450 0.12 0.07 0.06 0.00 技家 2.447 0.12 0.08 0.06 0.01 0.00 社 2.38 0.19 0.15 0.13 0.08 0.07 0.07 理 2.35 0.22* 0.18 0.16 0.11 0.10 0.10 0.03 国 2.03 0.54** 0.50** 0.48** 0.43** 0.42** 0.42** 0.34** 0.32** ** p<.01 註 1:表中の表記は次の教科を表している。国=国語 社=社会 数=数学 理=理科 音=音楽 美=美術 家庭 保体=保健体育 外=外国語。 註 2:平均評定値が大きいほど言語活動の充実を図ることに困難を感じる意識が高いことを表す。 - 5 - 技家=技術・ はまる(4「当てはまる」又は3「どちらかという と当てはまる」のいずれかを回答)と,困難な理由 として当てはまらない(1「当てはまらない」又は 2「どちらかというと当てはまらない」のいずれか を回答)と未記入の人数を割合(%)で示した。表 題に記載しているNは有効回答者数を示す。なお, (2)-4 は,理科,音楽,美術,保健体育,技術・家 庭の教員のみ回答を求めた。(2)-5 は,外国語の教 員のみ回答を求めた。調査項目(2)-3 と(2)-6 におい て記述された内容は,共通のカテゴリーに分類し, 9教科分をまとめて添付資料1-1及び1-2に示した。 0% 20% 40% (2)-1 ど んな言語活動をさせるの (2)-1 どんな言語活動をさせるの か 思 い付かない。(1.75) か思い付かない。(1.75) 60% 80% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1.6 (2)-1 どんな言語活動をさせるの (2)-1 どんな言語活動をさせるの か思い付かない。(2.07) か思い付かない。(2.07) 24.8 73.6 (2)-2 1時間の授業の中で,どの (2)-2 1時間の授業の中で,どの 場面において言語活動の充実を図 場面において言語活動の充実を ればよいか分からない。(2.16) 図ればよいか分からない。(2.16) 27.1 70.5 31.8 60.5 (2)-3 教科の領域や分野等によっ (2)-3 教科の領域や分野等によっ ては,言語活動の充実を図ることに ては,言語活動の充実を図ること 困難を感じる。(2.29) に困難を感じる。(2.29) (2)-4言語活動を行う時間と実習, 言語活動を行う時間と実 (2)-4 習,実験,実技等を行う時間のバ 実験,実技等を行う時間のバラン ランスに困難を感じる。(2.59) スに困難を感じる。(2.59) 2.4 7.7 2.5 56.5 41.0 困難な理由として当てはまる 困難な理由として当てはまらない 未記入 100% 9.9 76.0 図4 調査項目(2)の結果 理科 N=130 14.1 (2)-2 1時間の授業の中で,どの (2)-2 1 時間の授業の中で,どの 場面において言語活動の充実を図 場 面 において言語活動の充実を図 ればよいか分からない。(1.86) れ ば よいか分からない。(1.86) 9.9 72.7 0% 17.4 (2)-3 教 科の領域や分野等によっ (2)-3 教科の領域や分野等に て は ,言語活動の充実を図ること よっては,言語活動の充実を図る に 困 難を感じる。(1.93) ことに困難を感じる。(1.93) 68.6 19.8 (2)-1 どんな言語活動をさせるの (2)-1 どんな言語活動をさせるの か思い付かない。(2.01) か思い付かない。(2.01) 11.6 困難な理由として当てはまる 未記入 図1 調査項目(2)の結果 0% (2)-1 ど んな言語活動をさせるの (2)-1 どんな言語活動をさせるの か 思 い付かない。(2.11) か思い付かない。(2.11) 国語 20% 40% N=121 60% 60% 80% 100% 76.7 0.0 72.0 50.0 (2)-4言語活動を行う時間と実習, 言語活動を行う時間と実 (2)-4 習,実験,実技等を行う時間のバ 実験,実技等を行う時間のバラン ランスに困難を感じる。(2.76) スに困難を感じる。(2.76) 6.3 72.4 21.3 28.0 (2)-3 教科の領域や分野等によっ (2)-3 教科の領域や分野等によっ ては,言語活動の充実を図ること ては,言語活動の充実を図ること に困難を感じる。(2.51) に困難を感じる。(2.51) 80% 100% 40% 23.3 (2)-2 1時間の授業の中で,どの (2)-2 1時間の授業の中で,どの 場面において言語活動の充実を 場面において言語活動の充実を図 図ればよいか分からない。(2.06) ればよいか分からない。(2.06) 困難な理由として当てはまらない 20% 0.0 0.0 50.0 1.1 60.5 38.4 困難な理由として当てはまる (2)-2 1 時間の授業の中で,どの (2)-2 1時間の授業の中で,どの 場 面 において言語活動の充実を図 場面において言語活動の充実を図 れ ば よいか分からない。(2.26) ればよいか分からない。(2.26) 33.9 7.1 59.0 困難な理由として当てはまらない 未記入 (2)-3 教科の領域や分野等に (2)-3 教 科の領域や分野等によっ よっては,言語活動の充実を図る て は ,言語活動の充実を図ること ことに困難を感じる。(2.23) に 困 難を感じる。(2.23) 26.8 図5 7.9 65.3 調査項目(2)の結果 困難な理由として当てはまる 困難な理由として当てはまらない 未記入 図2 調査項目(2)の結果 0% (2)-1 どんな言語活動をさせ (2)-1るのか思い付かない。 どんな言語活動をさせるの か思い付かない。(2.16) (2.16) (2)-2 1時間の授業の中で, (2)-2 1時間の授業の中で,どの どの場面において言語活動の 場面において言語活動の充実を図 充実を図ればよいか分から… ればよいか分からない。(2.21) 社会 20% 40% 0% N=127 60% 28.7 (2)-1 どんな言語活動をさせるの (2)-1 どんな言語活動をさせるの か思い付かない。(2.02) か思い付かない。(2.02) (2)-2 1時間の授業の中で,どの (2)-2 1時間の授業の中で,どの 場面において言語活動の充実を 場面において言語活動の充実を図 図ればよいか分からない。(2.25) ればよいか分からない。(2.25) 80% 100% 69.9 1.4 32.9 (2)-3 教科の領域や分野等に (2)-3 教科の領域や分野等に よっては,言語活動の充実を よっては,言語活動の充実を図る ことに困難を感じる。(2.51) 図ることに困難を感じる。… 64.3 51.0 49.0 0.0 調査項目(2)の結果 数学 40% N=88 60% 80% 100% 3.2 76.2 20.6 4.8 34.9 (2)-4言語活動を行う時間と実習, 言語活動を行う時間と実 (2)-4 習,実験,実技等を行う時間のバ 実験,実技等を行う時間のバラン ランスに困難を感じる。(2.93) スに困難を感じる。(2.93) 60.3 57.1 38.1 74.6 困難な理由として当てはまらない 未記入 N=143 図6 - 6 - 調査項目(2)の結果 美術 4.8 25.4 0.0 困難な理由として当てはまる 困難な理由として当てはまる 困難な理由として当てはまらない 未記入 図3 20% (2)-3 教科の領域や分野等によっ (2)-3 教科の領域や分野等によっ ては,言語活動の充実を図ることに ては,言語活動の充実を図ること 困難を感じる。(2.80) に困難を感じる。(2.80) 2.8 音楽 N=63 0% 20% 40% 60% 80% 100% 3.0 (2)-1 どんな言語活動をさせるの (2)-1 どんな言語活動をさせるの か思い付かない。(2.18) か思い付かない。(2.18) 32.7 64.3 (2)-2 1時間の授業の中で,どの (2)-2 1時間の授業の中で,どの 場面において言語活動の充実を 場面において言語活動の充実を図 図ればよいか分からない。(2.24) ればよいか分からない。(2.24) 36.6 59.4 (2)-3 教科の領域や分野等によっ (2)-3 教科の領域や分野等によっ ては,言語活動の充実を図ること ては,言語活動の充実を図ることに に困難を感じる。(2.52) 困難を感じる。(2.52) 43.6 (2)-4言語活動を行う時間と実習, 言語活動を行う時間と実 (2)-4 習,実験,実技等を行う時間のバ 実験,実技等を行う時間のバラン ランスに困難を感じる。(2.81) スに困難を感じる。(2.81) 4.0 48.5 66.3 30.7 7.9 3.0 困難な理由として当てはまる 困難な理由として当てはまらない 未記入 図7 調査項目(2)の結果 保健体育 0% (2)-1 どんな言語活動をさせる (2)-1 どんな言語活動をさせるの のか思い付かない。(2.17) か思い付かない。(2.17) 20% N=101 40% 60% 32.2 (2)-2 1時間の授業の中で,ど (2)-2 1時間の授業の中で,どの の場面において言語活動の充実を 場面において言語活動の充実を 図ればよいか分からない。 図ればよいか分からない。(2.34) (2.34) 59.8 50.6 (2)-4 言語活動を行う時間と実習, (2)-4 言語活動を行う時間と実 実験,実技等を行う時間のバラン 習,実験,実技等を行う時間のバ スに困難を感じる。(2.79) ランスに困難を感じる。(2.79) 3.4 64.4 36.8 (2)-3 (2)-3教科の領域や分野等によっ 教科の領域や分野等に ては,言語活動の充実を図ることに よっては,言語活動の充実を図る 困難を感じる。(2.60) ことに困難を感じる。(2.60) 80% 100% 44.8 62.1 34.5 3 言語活動の充実を図る際に,「三つの類 型」によって困難を感じる意識に差がある かの調査項目の結果 9教科において「言語活動例」に対して回答した 評定(1~4)をそのまま点数化し,算出した平均評 定値に差があるかF検定を行った。その結果,9教 科とも「言語活動例」 (①~⑥)に有意差が認められ た。そこで,Fisher の LSD 検定による多重比較を行 い,「言語活動例」(①~⑥)のどこに有意差がある かを調べた。その結果を教科ごとに表3から表11に 示す。 表3から表11には,各教科において「言語活動例」 (①~⑥)を行う際に,困難を感じる意識を4段階 尺度で評定したときの平均評定値とその差,及びそ の差に有意差があるかどうかを示している。有意差 がある場合は平均評定値の差に記号を付している。 平均評定値は,大きいほどその「言語活動例」を行 うことに困難を感じる意識が高いことを表す。なお, 表3から表11には,質問紙に示した「言語活動例」(① ~⑥)を省略し,次に示すキーワードで表記している。 ①体験から感じ取ったことを表現する。 →①体験,表現 ②事実を正確に理解し伝達する。 →②理解,伝達 ③概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりする。 →③解釈,説明 ④情報を分析・評価し,論述する。 →④評価,論述 ⑤課題について,構想を立て実践し,評価・改善する。 →⑤評価,改善 ⑥互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる。 →⑥伝え合い,発展 3.4 4.6 3.4 困難な理由として当てはまる 困難な理由として当てはまらない 未記入 図8 調査項目(2)の結果 0% 技術家庭 20% 40% N=87 60% 80% 100% 5.8 (2)-1 どんな言語活動をさせるの (2)-1 どんな言語活動をさせるの か思い付かない。(2.02) か思い付かない。(2.02) 28.4 65.8 (2)-2 1時間の授業の中で,どの (2)-2 1時間の授業の中で,どの 場面において言語活動の充実を図 場面において言語活動の充実を ればよいか分からない。(2.25) 図ればよいか分からない。(2.25) 29.0 63.9 (2)-3 教科の領域や分野等によっ (2)-3 教科の領域や分野等によっ ては,言語活動の充実を図ること ては,言語活動の充実を図ることに に困難を感じる。(2.80) 困難を感じる。(2.80) 30.3 61.3 7.1 8.4 (2)-5 外国語(英語)で言語活動 (2)-5 外国語(英語)で言語活動を を行うため困難を感じる。 行うため困難を感じる。(2.93) (2.93) 2.6 40.0 57.4 困難な理由として当てはまる 困難な理由として当てはまらない 未記入 図9 註:質問紙で表記した「言語活動例」①~⑥ →表3~表11で用いるキーワードによる表記 質問紙で表記した言語活動①~⑥とキーワードによる表記 調査項目(2)の結果 外国語 表3 <国語>言語活動によってどのくらい困難を感じ るかについての4段階尺度の平均評定値の差につい てFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> <解釈> <評価> <評価> <事実> <事実> ⑤評価, ③解釈, ⑥伝え合い ④評価, ②理解, ①体験, 改善 説明 発展 論述 伝達 表現 2.55 2.46 2.41 2.32 1.85 1.79 ⑤評価,改善 0.09 0.14 0.23* 0.70** 0.76** 2.55 ③解釈,説明 0.05 0.14 0.61** 0.67** 2.46 ⑥伝え合い, 発展 0.09 0.56** 0.62** 2.41 ④評価,論述 0.47** 0.53** 2.32 ②理解,伝達 0.06 1.85 *p<.05, N=155 - 7 - **p<.01 表4 <社会>言語活動によってどのくらい困難を感じ るかについての4段階尺度の平均評定値の差につい てFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> <評価> <解釈> <評価> <事実> <事実> ⑤評価, ⑥伝え合い ③解釈, ④評価, ②理解, ①体験, 改善 発展 説明 論述 伝達 表現 2.97 2.71 2.66 2.65 2.18 2.17 ⑤評価,改善 0.26* 0.31** 0.32** 0.79** 0.80** 2.97 ⑥伝え合い, 発展 0.05 0.06 0.53** 0.54** 2.71 ③解釈,説明 0.01 0.48** 0.49** 2.66 ④評価,論述 0.47** 0.48** 2.65 ②理解,伝達 0.01 2.18 *p<.05, 表7 <音楽>言語活動によってどのくらい困難を感じ るかについての4段階尺度の平均評定値の差につい てFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <解釈> <評価> <評価> <評価> <事実> <事実> ③解釈, ⑤評価, ④評価, ⑥伝え合い, ②理解, ①体験, 説明 改善 論述 発展 伝達 表現 2.85 2.82 2.76 2.52 2.27 2.18 ③解釈,説明 0.03 0.09 0.33 0.58** 0.67** 2.85 ⑤評価,改善 0.06 0.30 0.55** 0.64** 2.82 ④評価,論述 0.24 0.49** 0.58** 2.76 ⑥伝え合い, 発展 0.25* 0.34** 2.52 ②理解,伝達 0.09 2.27 **p<.01 *p<.05, 表5 <数学>言語活動によってどのくらい困難を感じ るかについての4段階尺度の平均評定値の差につい てFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> <評価> <評価> <事実> <解釈> <事実> ⑤評価, ④評価, ⑥伝え合い, ①体験, ③解釈, ②理解, 伝達 説明 表現 発展 論述 改善 2.80 2.58 2.57 2.40 2.38 2.22 ⑤評価,改善 0.22* 0.23* 0.40** 0.42** 0.58** 2.80 ④評価,論述 0.01 0.18 0.20* 0.36** 2.58 ⑥伝え合い, 発展 0.17 0.19* 0.35** 2.57 ①体験,表現 0.02 0.18 2.40 ③解釈,説明 0.16 2.38 *p<.05, 表8 <美術>言語活動によってどのくらい困難を感じ るかについての4段階尺度の平均評定値の差につい てFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> <評価> <評価> <解釈> <事実> <事実> ⑤評価, ④評価, ⑥伝え合い, ③解釈, ②理解, ①体験, 表現 伝達 説明 発展 論述 改善 2.76 2.64 2.54 2.54 2.31 2.15 ⑤評価,改善 0.12 0.22 0.22 0.46** 0.61** 2.76 ④評価,論述 0.10 0.10 0.33* 0.49** 2.64 ⑥伝え合い, 発展 0.00 0.23 0.39** 2.54 ③解釈,説明 0.23 0.39** 2.54 ②理解,伝達 0.16 2.31 **p<.01 *p<.05, 表6 <理科>言語活動によってどのくらい困難を感じ るかについての4段階尺度の平均評定値の差につい てFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> ⑤評価, 改善 2.83 ⑤評価,改善 2.83 ④評価,論述 2.623 ⑥伝え合い, 発展 2.615 ③解釈,説明 2.58 ②理解,伝達 2.23 *p<.05, <評価> <評価> <解釈> ④評価, ⑥伝え合い, ③解釈, 論述 発展 説明 2.623 2.615 2.58 <事実> ②理解, 伝達 2.23 <事実> ①体験, 表現 2.16 0.20* 0.22* 0.25* 0.60** 0.67** 0.00 0.04 0.39** 0.46** 0.04 0.38** 0.45** 0.35** 0.42** **p<.01 表9 **p<.01 <保健体育>言語活動によってどのくらい困難を 感じるかについての4段階尺度の平均評定値の差に ついてFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> ⑤評価, 改善 2.76 ⑤評価,改善 2.76 ③解釈,説明 2.76 ④評価,論述 2.58 ⑥伝え合い, 発展 2.47 ②理解,伝達 2.30 0.07 **p<.01 *p<.05, - 8 - <解釈> ③解釈, 説明 2.76 <評価> <評価> <事実> ④評価, ⑥伝え合い, ②理解, 論述 発展 伝達 2.58 2.47 2.30 <事実> ①体験, 表現 2.10 0.00 0.18 0.29* 0.46** 0.66** 0.18 0.29* 0.46** 0.66** 0.11 0.28* 0.48** 0.17 0.37** 0.20 **p<.01 表10 <技術家庭>言語活動によってどのくらい困難を 感じるかについての4段階尺度の平均評定値の差に ついてFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> <解釈> <評価> <評価> <事実> <事実> ⑤評価, ③解釈, ④評価, ⑥伝え合い, ②理解, ①体験, 改善 説明 論述 発展 伝達 表現 2.63 2.53 2.49 2.47 2.16 2.12 ⑤評価,改善 0.10 0.14 0.16 0.47** 0.51** 2.63 ③解釈,説明 0.04 0.06 0.33** 0.37** 2.53 ④評価,論述 0.02 0.31** 0.35** 2.49 ⑥伝え合い, 発展 0.37** 0.41** 2.47 ②理解,伝達 0.04 2.16 *p<.05, 0% 20% 40% 60% 80% 100% (4)-1 (4)-1 教科としての目標を達 教科としての目標を達 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設 する。(3.58) 定する。(3.58) (4)-2 文章だけでなく,図・ 文章だけでなく,図・ (4)-2 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(3.10) 取り入れる。(3.10) 4 17.4 92.7 (4)-4相手や目的,場面等を 相手や目的,場面等 (4)-4 明確にする。(3.60) を明確にする。(3.60) 94.5 7.3 5.5 どちらかというと意識する 意識しない どちらかというと意識しな い 図 10 **p<.01 調査項目(4)の結果 0% 表11 <外国語>言語活動によってどのくらい困難を感 じるかについての4段階尺度の平均評定値の差につ いてFisherのLSD 検定による多重比較の結果 <評価> <解釈> <評価> <評価> <事実> <事実> ⑤評価, ③解釈, ⑥伝え合い, ④評価, ①体験, ②理解, 改善 説明 発展 論述 表現 伝達 3.10 3.00 2.90 2.89 2.21 2.20 ⑤評価,改善 0.10 0.20* 0.21* 0.89** 0.90** 3.10 ③解釈,説明 0.1 0.11 0.79** 0.08** 3.00 ⑥伝え合い, 発展 0.01 0.69** 0.70** 2.90 ④評価,論述 0.68** 0.69** 2.89 ①体験,表現 0.00 2.21 *p<.05, 82.6 (4)-3条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限, (4)-3 根拠の明示,立場の明確化 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(3.61) 等)を設定する。(3.61) 意識する 3.7 96.3 国語 N=109 20% 40% 60% 80% 100% (4)-1 教科としての目標を達 (4)-1 教科としての目標を達 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設定 する。(3.03) する。(3.03) 79.7 (4)-2 (4)-2文章だけでなく,図・表・ 文章だけでなく,図・ グラフ等も読み取ることを取り 表・グラフ等も読み取ることを 入れる。(3.53) 取り入れる。(3.53) 20.3 5.1 94.9 (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(2.84) を設定する。(2.84) 66.9 (4)-4 相手や目的,場面等を 相手や目的,場面等を (4)-4 明確にする。(2.95) 明確にする。(2.95) 33.1 77.1 22.9 意識する どちらかというと意識する 意識しない どちらかというと意識しない 図 11 調査項目(4)の結果 社会 N=118 **p<.01 0% 20% 40% 60% 80% 100% 言語活動の充実を図る際にどのようなこ とを意識しているかの調査項目の結果 (4)-1 教科としての目標を達 (4)-1 教科としての目標を達 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設定 する。(2.88) する。(2.88) 調査項目(4)-1 から(4)-4 の回答結果について,教 科ごとに図10から図18に示す。 図には,回答した評定をそのまま1点から4点と し,算出した平均評定値をかっこ内に示している。 同時に,帯グラフで回答者の肯定的評価(4「意識 する」又は3「どちらかというと意識する」のいず れかを回答)と否定的評価(1「意識しない」又は 2「どちらかというと意識しない」のいずれかを回 答)の人数を割合(%)で示すこととした。 なお,表題に記載しているNは有効回答者数を表 している。 71.2 (4)-2文章だけでなく,図・ 文章だけでなく,図・ (4)-2 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(3.47) 取り入れる。(3.47) (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(2.86) を設定する。(2.86) (4)-4 (4)-4 相手や目的,場面等を 相手や目的,場面等を 明確にする。(2.73) 明確にする。(2.73) 意識する 28.8 4.3 95.7 67.6 32.4 61.9 38.1 どちらかというと意識する 意識しない どちらかというと意識しない 図12 - 9 - 調査項目(4)の結果 数学 N=139 0% (4)-1 教科としての目標を達 (4)-1 教科としての目標を達 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設定 する。(2.84) する。(2.84) 68.6 (4)-2文章だけでなく,図・ 文章だけでなく,図・ (4)-2 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(3.25) 取り入れる。(3.25) 31.4 14.4 85.6 (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(2.97) を設定する。(2.97) 73.7 (4)-4 相手や目的,場面等を (4)-4 相手や目的,場面等を 明確にする。(2.81) 明確にする。(2.81) 意識する 0% 20% 40% 60% 80% 100% 20% 40% 60% 80% 100% 68.9 31.1 (4)-2 (4)-2文章だけでなく,図・ 文章だけでなく,図・ 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(2.72) 取り入れる。(2.72) 66.6 33.4 (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(2.56) を設定する。(2.56) 26.3 64.4 (4)-1 教科としての目標を達 教科としての目標を達 (4)-1 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設定 する。(2.80) する。(2.80) (4)-4 相手や目的,場面等を (4)-4 相手や目的,場面等を 明確にする。(3.08) 明確にする。(3.08) 35.6 意識する どちらかというと意識する 調査項目(4)の結果 理科 N=130 64.8 図 16 (4)-4 (4)-4 相手や目的,場面等を 相手や目的,場面等を 明確にする。(3.15) 明確にする。(3.15) 調査項目(4)の結果 (4)-1 教科としての目標を達 (4)-1 教科としての目標を達 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設定 する。(2.74) する。(2.74) 調査項目(4)の結果 (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(2.79) を設定する。(2.79) 81.4 18.6 (4)-4 相手や目的,場面等を (4)-4 相手や目的,場面等を 明確にする。(2.86) 明確にする。(2.86) 意識する N=86 図 17 (4)-1 教科としての目標を達 教科としての目標を達 (4)-1 成するために言語活動を設 成するために言語活動を設定 する。(3.41) 定する。(3.41) (4)-2文章だけでなく,図・ 文章だけでなく,図・ (4)-2 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(2.35) 取り入れる。(2.35) (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(2.76) を設定する。(2.76) 61.0 39.0 (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(2.87) を設定する。(2.87) N=80 意識する 意識する どちらかというと意識する 意識しない どちらかというと意識しない 11.5 88.5 40.3 (4)-4 相手や目的,場面等を (4)-4 相手や目的,場面等を 明確にする。(3.43) 明確にする。(3.43) 23.7 76.3 技術家庭 0% 20% 40% 60% 80% 100% 23.7 76.3 美術 27.5 72.5 調査項目(4)の結果 40.7 調査項目(4)の結果 35.0 65.0 意識しない どちらかというと意識しない 59.3 図 15 15.0 どちらかというと意識する (4)-2文章だけでなく,図・ 文章だけでなく,図・ (4)-2 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(2.76) 取り入れる。(2.76) (4)-4 相手や目的,場面等を (4)-4 相手や目的,場面等を 明確にする。(2.90) 明確にする。(2.90) 40.0 85.0 21.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% (4)-1 教科としての目標を達 (4)-1 教科としての目標を達 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設定 する。(2.93) する。(2.93) N=87 60.0 79.0 音楽 保健体育 (4)-2文章だけでなく,図・ 文章だけでなく,図・ (4)-2 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(3.31) 取り入れる。(3.31) 44.2 意識する どちらかというと意識する 意識しない どちらかというと意識しない 図 14 19.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 35.2 55.8 80.5 どちらかというと意識する 0% 20% 40% 60% 80% 100% (4)-1 教科としての目標を達 教科としての目標を達 (4)-1 成するために言語活動を設定 成するために言語活動を設定 する。(2.88) する。(2.88) (4)-2 文章だけでなく,図・ (4)-2 文章だけでなく,図・ 表・グラフ等も読み取ることを 表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。(2.57) 取り入れる。(2.57) (4)-3 (4)-3 条件(例:字数制限,根 条件(例:字数制限,根 拠の明示,立場の明確化等) 拠の明示,立場の明確化等) を設定する。(3.00) を設定する。(3.00) 46.0 意識しない どちらかというと意識しな い 意識しない どちらかというと意識しな い 図 13 54.0 59.7 69.1 30.9 10.1 89.9 どちらかというと意識する 意識しない どちらかというと意識しない N=59 図 18 - 10 - 調査項目(4)の結果 外国語 N=139 Ⅳ 調査結果の分析と考察 のような内容をどのように指導すればよいか十分理 解できていないと考える。 1 各教科の分析と考察 イ (1) 国語 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,国語科における「言語活動 の充実を図ることにどのくらい困難を感じている か」についての平均評定値は2.03で,これは9教科 の中で最も低い数値である。また,他のすべての教 科との間に有意差が認められる。 p.6の図1によると,国語科では,70%前後の教 員が,「(2)-1 どんな活動をさせるのか思い付かな い。」 , 「(2)-2 1時間の授業の中で,どの場面におい て言語活動の充実を図ればよいか分からない。」, 「(2)-3 教科の領域や分野等によっては,言語活動 の充実を図ることに困難を感じる。 」の項目において, 「当てはまらない」 「どちらかというと当てはまらな い」と回答している。また,それぞれの平均評定値 は1.75,1.86,1.93であり,4段階評定値の中央値 (2.50)を下回っている。 以上のことから,国語科の教員の多くは,他の教 科の教員に比べて,言語活動の充実を図ることにあ まり困難を感じていないと考える。このことは,学 習指導要領に示されている指導事項を言語活動を通 して指導するという国語科の指導上の特徴によると 考える。 詳細にみると,(2)-2,(2)-3 の項目において「当 てはまる」 「どちらかというと当てはまる」と回答し た教員は,自由記述(p.23の添付資料1-1「国語」の 列を参照)で,「教え込む領域や学習」,例えば「古 典(古文,漢文)」や「文法」, 「漢字」の学習に困難 を感じると記述している。 これらの場面や領域等を挙げた理由として,次の ことが考えられる。 「古典」の学習について,学習指 導要領では,古典に親しむ態度を育成することが求 められ, 「A話すこと・聞くこと」 「B書くこと」 「C 読むこと」の領域を通して指導することが示されて いる。それにもかかわらず,歴史的仮名遣いや現代 語訳だけを取り上げて一方的に教え込むような傾向 があり,そのため言語活動の充実を図ることが困難 と感じるのではないかと考えられる。また,「文法」 「漢字」等の「言語事項」にかかわる学習について も, 「古典」の学習と同様のことが考えられる。これ らのことから,国語科において言語活動の充実を図 ることに困難を感じる教員は,その理由として,ど 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.7の表3によると,<評価>,<解釈>,<事 実>のいずれの言語活動においても,平均評定値が 4段階評定値の中央値(2.50)とほぼ同値,あるいは 中央値(2.50)を下回っている。このことから,国語 科の教員は,どの言語活動についても,その充実を 図ることに困難を感じていないと考える。 詳細にみると,<評価>と<事実>,<解釈>と <事実>との間に有意差が認められる。このことか ら,<事実>において言語活動の充実を図ることよ り,<評価>や<解釈>において言語活動の充実を 図ることに困難を感じていることが分かる。 この理由として,次のことが考えられる。<事実> における「言語活動例」の「①体験,表現」や「② 理解,伝達」は,これまで国語科のどの領域の学習 においても重視してきたものである。一方,<評価> と<解釈>における「言語活動例」の「④評価,論述」 や「⑤評価,改善」等は,今回の学習指導要領で新 設された自分の考えの形成及び交流に関する指導 事項にかかわるものである。そのため,<評価>や <解釈>において困難を感じる意識が,<事実>よ り高くなったと考える。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.9の図10によると,80%前後の教員が,国語科 の授業で言語活動の充実を図る際, 「(4)-1 教科とし ての目標を達成するために言語活動を設定する。」, 「(4)-2 文章だけでなく,図・表・グラフ等も読み 取ることを取り入れる。 」, 「(4)-3 条件(例:字数制 限,根拠の明示,立場の明確化等)を設定する。」, 「(4)-4 相手や目的,場面等を明確にする。」につい て,「意識している」「どちらかというと意識してい る」と回答している。また,(4)-1 から(4)-4 の平均 評定値は,すべて3.10を上回っている。これらのこ とから,言語活動の充実を図る際,基本的に大切に しなくてはならない項目についてはどれも意識され ていると考える。 詳細にみると,(4)-2 の項目と(4)-1,(4)-3,(4)-4 の項目との間に有意差が認められる。このことから, (4)-2 の項目は,(4)-1,(4)-3,(4)-4 の項目に比べ るとあまり意識されていないことが分かる。この理 由として,次のことが考えられる。(4)-1,(4)-3, (4)-4 の項目に挙がっている,相手や目的を明確に することや自分の立場を明確にすること等は,これ まで国語科のどの領域の学習においても重視してき - 11 - たものである。一方,(4)-2の項目に挙がっている図 や表,グラフ等を読むことは,今回の学習指導要領 の改訂において加えられた内容に関連するものであ る。そのため,言語活動の充実を図る際,(4)-1,(4)-3, (4)-4 の項目に比べ,(4)-2 の項目はあまり意識され ていないと考える。 エ ○ 国語科における課題 国語科の授業においては,指導事項を言語活動 を通して指導することが必要である,ということ についての理解 (2) 社会 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,社会科における「言語活動 の充実を図ることにどのくらい困難を感じている か」についての平均評定値は,2.38となっており, あまり困難を感じていない状況にあるといえる。 p.6の図2でまず,注目したいのは「(2)-2 1時 間の授業の中で,どの場面において言語活動の充実 を図ればよいか分からない。」という回答が33.9%と いうことである。社会科の言語活動として,橋本康 弘(平成22年)は, 「①各種資料から必要な情報を集 めて読み取ること(読み取ったことを記述すること) , ②社会的事象の意味,意義を解釈すること,③事象 の特色や事象間の関連を説明すること,④自分の考 えを論述すること」3)を挙げているが,これらのこ とが授業を展開する上で十分に意識されていないと 考える。 次に,「(2)-3 教科の領域や分野等によっては,言 語活動の充実を図ることに困難を感じる。」という回 答が26.8%であることにも注目したい。自由記述 (p.23の添付資料1-1「社会」の列を参照)による と,言語活動の充実を図ることが困難と感じる特定 の領域,場面として, 「知識・理解中心の授業を展開 する場面」, 「資料が不足している場面」等の学習内 容にかかわるものと「社会的抽象的概念を理解し, それを表現する場面」 , 「調べたことを発表する場面」 , 「グループにおいて交流する場面」等の学習方法に かかわるものが挙がっている。 歴史的分野における文化に関する学習等「知識・ 理解中心の授業を展開する場面」を挙げているのは, どの場面においても言語活動の充実を図らなければ ならないととらえ,そのことに困難を感じていると 考える。 また, 「社会的抽象的概念を理解し,それを表現す る場面」は教科の目標を達成するための言語活動に かかわり,「調べたことを発表する場面」「グループ において交流する場面」は話合いを円滑に進めるた めの言語技術の活用にかかわることから,学習方法 において言語活動と言語技術の活用を混同している ものと考えられる。 イ 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.8の表4によると,言語活動の充実を図ること に困難を感じる意識については,<解釈>と<評価> の平均評定値が2.50を上回っており,二つの<事 実>との間に有意差が認められている。ここでは, <解釈>が2.66と比較的高い数値を示していること に注目したい。社会科においては,すでに述べたよ うに,「②社会的事象の意味,意義を解釈すること, ③事象の特色や事象間の関連を説明すること」等<解 釈>における言語活動が様々考えられる。それにもか かわらず, 「社会的思考と言語活動のつながりが整理 できていない。 」等の意見に見られるように,教員の 中で<解釈>における言語活動の充実にかかわる具 体的な指導方法が十分に理解されていないと考えら れる。 また, 「⑤評価・改善」は,平均評定値が2.97と最 も高く,その他の五つの「言語活動例」との間に有 意差が認められている。このことは,学習課題につ いて仮説を立て,教科書や資料等を用いて検証し, 学習過程について自分の考えをもつという授業を展 開することに困難を感じていることを示している。 多くの情報を扱う社会科においては,指導計画上「⑤ 評価・改善」等の言語活動を十分に展開することが 難しく,知識・理解中心の授業にならざるを得ない 場合があり,このことも困難を感じる意識につなが っていると考えられる。これは自由記述において, 「内容を焦点化しなければ言語活動を充実すること は難しい。 」という意見も見られることからいえよう。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.9の図11によると, 「(4)-2 文章だけでなく,図・ 表・グラフ等も読み取ることを取り入れる。」の項目 は,平均評定値が3.53と最も高くなっている。この ことは,社会科の学習が写真やグラフ,表等の資料 を基にして展開されることを改めて表している。ま た,最も低い項目においても平均評定値が2.84とい う数値を示しており,4段階評定値の中央値 2.50 を上回っていることから,言語活動の充実に関する 基本的な事柄に対して意識が高いといえる。 ここで注目したいのは, 「(4)-1 教科としての目標 を達成するために言語活動を設定する。」という項目 において,意識していないと回答した教員が20.3% - 12 - いることである。 「言語活動を強調すると言語技術に こだわる授業になってしまう。」等の考えもあり,言 語活動が教科の目標を達成するための手立てである ことを押さえるとともに,言語活動と言語技術の違 いを明確にすることが課題であるといえる。 エ 社会科における課題 ○ すべての場面において言語活動を充実させよう として困難を感じる等言語活動についての基本的 な理解 ○ <解釈><評価>における言語活動の充実にか かわる具体的な指導方法の理解 ○ 社会科における思考力・判断力・表現力等の育 成と言語活動の充実との関連についての理解 (3) 数学 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,数学科における「言語活動 の充実を図ることにどのくらい困難を感じている か」についての平均評定値は2.45で4段階評定値の 中央値(2.50)をわずかに下回っているが,他教科 と比較して困難を感じている教科といえよう。 p.6の図3から,困難な理由として当てはまると いう回答が最も多かった調査項目「(2)-3 教科の領 域や分野等によっては,言語活動の充実を図ること に困難を感じる。」を見ると,51.0%の教員が,領域 によっては言語活動の充実を図ることに困難を感じ ている。自由記述(p.23の添付資料1-1「数学」の列 を参照)を見ると,困難を感じる領域や場面として, 「A数と式」の領域や計算練習の場面と「B図形」 の領域での証明の場面を挙げている。計算が主とな る「A数と式」の領域や計算練習の場面は,多くの 教員が挙げているが,計算させることが多く,既習 事項等を活用させることが少ないなど言語活動とな りにくいことが考えられるが,技能習得の場面でも言 語活動の充実を図ろうとして困難を感じていること がうかがえる。数学の技能習得の場面ではなく,生 徒がよりよい解決方法を求めるなどの数学的に説明 し合う活動の中で言語活動を充実させることができ るという理解が不足していると考える。 「B図形」の領域での証明の場面では,学習指導 要領解説数学編(平成20年)に, 「B図形」の領域で 論理的な思考力の育成することや演繹的な推論の方 法を活用することで数学的な推論の理解と論理的に 表現する能力を伸ばすことが述べられている。図形 に関する内容は推論の過程が視覚的にとらえさせる ことができることから,演繹的な推論の力を育てる のに適した領域であるといえる。また,論証指導を 通して筋道を立てて表現する能力を育成することが できる。 「B図形」の領域での証明の場面では,自分 の考えたことや工夫したことを数学的な表現を用い て説明し伝え合う活動を充実させることが目標の達 成につながることの理解が不十分であると考える。あ るいは,数学的な見方や考え方を説明したり,数学 の専門用語を使った形式的な説明したりする場面で は,今以上に言語活動を充実するのは難しいと感じ ているのではないかと考える。 これらのことから,領域によっては,言語活動の 充実を図ることに困難を感じている数学科の教員は, 言語活動についての基本的な理解がまだ十分ではな いことがその主な理由であるといえる。それは, 「(2)-1 どんな言語活動をさせるのか思い付かな い。」や「(2)-2 1時間の授業の中で,どの場面にお いて言語活動の充実を図ればよいか分からない。」の 項目に当てはまると回答した教員にもいえることで あると考えられる。これは,自由記述に言語活動に ついて理解不足である記述や具体的な指導方法を知 りたいなどの記述があることからも分かる。 イ 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.8の表5によると,言語活動の類型の中で<事 実>や<解釈>に比べて,<評価>が言語活動の充 実を図ることについて困難を感じる意識が高いこと が分かる。その中でも,特に困難を感じる意識が最 も高い<評価>における「言語活動例」の「⑤評価, 改善」は他のすべての「言語活動例」との間に有意差 がある。「⑤評価,改善」すなわち「課題について, 構想を立て実践し,評価・改善する。」は,数学の 学習において,基礎的・基本的な知識・技能が定着 した上で行う学習である。他の<評価>の「言語活 動例」にもいえることだが,生徒が自分の考えや問 題解決の方法をもてるまで指導することができない 中で,<評価>の「言語活動例」を実施するのは困 難である。生徒が自分の考えや問題解決の方法をも てるまで指導することが十分できていない現状があ るといえる。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.9の図12によると,調査項目「(4)-2 文章だけ でなく,図・表・グラフ等も読み取ることを取り入 れる。」が示すとおり,図・表・グラフなどを扱った 言語活動を行うことの意識が一番高い。これは,数 学科の教科特性といえよう。図・表・グラフを用い て問題を解決したり,自分の考えを分かりやすく説 明したり,互いに自分の考えを表現し伝え合ったり - 13 - することなど数学科では当然のことである。 意識面で一番低い「(4)-4 相手や目的,場面等を 明確にする。」の項目については,平均評定値 2.73 と,4段階評定値の中央値(2.50)以上であること から,言語活動として基本的に大切にしなくてはな らない項目についてはどれも意識されていると考え る。しかし, 「(4)-1 教科としての目標を達成するた めに言語活動を設定する。」の項目について,意識し ないと回答した教員が28.8%であった。言語活動を 充実させていくことが,教科の目標を達成するため の手段であるというとらえがないことがアで述べた こととも関連して,調査結果から分かる。 エ 数学科における課題 ○ どの場面でも言語活動を充実させようとして 困難を感じたり,数学的活動を充実させることが 教科の目標の達成につながると思っていなかっ たりするなど言語活動にかかわる基本的な理解 や言語活動の充実にかかわる具体的な指導方法 の理解 ○ 教科の目標を達成するための手段であるとい うとらえがないことなど数学的な見方や考え方 の育成と言語活動の充実との結び付きについて の理解 (4) 理科 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,理科における「言語活動の 充実を図ることにどのくらい困難を感じているか」 についての平均評定値は2.35を示し,9教科の中で は国語科に次いで困難を感じていないことがうかが われる。次に教科としての特質を明らかにするため に,困難を感じている理由について p.6の図4を基 に分析していく。 注目したい困難理由は「(2)-4 言語活動を行う時 間と実習・実験・実技等を行う時間のバランスに困 難を感じる」である。これを困難な理由として当て はまると回答した教員は全体の56.5%,平均評定値 は2.59であり,困難な理由としては最も高い。 理科では,観察,実験などを一層重視していくこ とが求められている。言語活動を充実させると,そ れだけ観察,実験を行う時間が減ってしまうと考え ているので,そのバランスをいかに取るかに困難を 感じていることがうかがわれる。このことは,特定 の領域,分野,場面での困難さを感じる項目の自由 記述(p.23の添付資料1-1「理科」の列を参照)に「1 分野」を挙げていることからも分かる。1分野は観 察,実験が比較的行いやすいという特徴があり,教 科書で扱われている観察,実験の数が多いからであ る(1分野 33,2分野 22)(12)。 次に,自由記述「科学的専門用語などの知識を教 え込む場面」,「暗記科目なので」等に見られる科学 的知識の習得場面に困難を感じることについて取り 上げる。同様の傾向は他教科でもある。これは,知 識の習得は暗記し反復により定着させる学習を中心 に行うので,言語活動を充実させて思考したり表現 したりする学習では困難であるという考え方に立脚 しているためと考える。今求められているのは,実 生活等で活用することを目指し生きて働く知識・技 能にすることである。その習得に当たっては,知的 好奇心に支えられ実感を伴って理解することの重要 さも指摘されている。知識の習得はすなわち暗記し 反復するのみという考え方ではなく,幅広くとらえて いく必要がある。 一方,言語活動の充実について基本的な内容理解 の研修をする必要性がうかがわれる。自由記述に「結 果を予想したり確認したりするのに結論先行とは行 かない。ナンバリングも使える時と使えない時があ る。 」等,言語活動の充実は,言語技術を活用させる ことであると考えていたり,一定の話型に沿った表 現方法を使わせることであると考えていたりする傾 向がある。加えて, 「言語活動に力を入れることによ り理科に対する興味関心が低くなることが多い。」な ど言語活動の充実を図ることが,本来理科の指導と は別のものであるというとらえ,言語活動の充実を 図ることへ否定的な考え方をもっているケースもあ る。しかし,これまで理科で行ってきた,例えば既 習事項と結び付けて論理的に仮説を考えさせる,科 学的な思考を基に考察を書かせる等の指導は,言語 活動の充実である。言語活動の充実を図ると理科の 目標が達成できなくなるという否定的な考えになら ないように,言語活動の充実についての基本的な考 え方を十分に理解する必要がある。 イ 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.8の表6から, 「三つの類型」にかかわって言語 活動の充実を図ることに困難を感じる意識は,高い 順に<評価>,<解釈>,<事実>となっている。 また,困難を感じる意識が最も高い<評価>「⑤評価, 改善」すなわち「言語活動例」の「⑤課題について, 構想を立て実践し,評価・改善する」は,他の「言 語活動例」との間に有意差がある。この「⑤評価, 改善」は理科における探究的な活動そのものである。 にもかかわらず,なぜ困難に感じる意識が高いので - 14 - あろうか。それは中学校の理科におけるカリキュラ ムにかかわっている。多くの観察,実験は,生徒自 ら問題を把握し,仮説を立て実験方法を考え,その 計画や,結果についての検証,分析,解釈するとい う学習時間が十分確保できるとは言い難いからであ る。もし探究的な活動の過程のすべてを行うことで あると解釈したなら十分に時間を取ることが難しい と感じることは首肯できる。この点について中学校 学習指導要領解説理科編(平成20年)には,探究的 な活動は固定的なものではなく問題の内容や性質, 生徒の発達段階に応じてある部分を重点的に行った り,適宜省略したりする工夫が必要であることが述 べられている。よって,計画的に焦点化していけば よいと考える。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.10 の図13によると,意識が一番高い「(4)-2 文 章だけでなく,図・表・グラフ等も読み取ることを 取り入れる。」(平均評定値3.25)から,一番低い 「(4)-4 相手や目的,場面等を明確にする。 」 (平均評 定値2.81)まで,すべて4段階評定値の中央値(2.50) 以上あることから,言語活動として基本的に大切に しなくてはならない項目についてはどれも意識され ていると考える。しかし,注目したいのは「教科の 目的を達成するために言語活動を設定する」に関し て,意識をしていないと回答した教員が31.4%いる ことである。言語活動は教科の目標を達成するため の手段であるというとらえは,今後改善していかな ければならない点である。 エ 理科における課題 ○ 言語活動の充実は教科の目標を達成するための 手段であるというとらえが十分になかったり,ど の場面でも言語活動を充実させようとして困難を 感じていたり,言語技術の活用と言語活動の充実 を混同してしまっていたりする等言語活動の充実 にかかわる基本的な理解 ○ 既習事項と結び付けて論理的に仮説を考えさせ る,科学的な思考を基に考察を書かせる等の普段 行われている学習活動が,言語活動の充実につな がるということを十分に意識していない点 ○ 実験,観察の実施時間と言語活動の充実を図る 時間とのバランス ○ 理科で育成すべき能力を身に付けるための言語 活動の充実にかかわる具体的な指導方法の理解 (5) 音楽 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,音楽科における「言語活動 の充実を図ることにどのくらい困難を感じている か」についての平均評定値は2.53で,保健体育科の 次に多いことが分かる。 また,p.6の図5から,音楽科で困難を感じる理 由として最も多いのは, 「(2)-4 言語活動を行う時間と 実習,実験,実技等を行う時間のバランスに困難を 感じる。」である。この理由が困難であると感じる 教員は全体の60.5%で,4段階の平均評定値は2.76 となっている。次に多い理由は, 「(2)-3 教科の領域 や分野等によっては,言語活動の充実を図ることに 困難を感じる。」で,4段階の平均評定値は2.51であ る。困難を感じる領域や分野等についての自由記述 (p.24の添付資料1-2「音楽」の列を参照)を見ると, 具体的に歌唱及び器楽の指導場面を多く挙げている。 鑑賞についても困難を感じる領域や分野等として, 少数ではあるが自由記述の中に挙げられている。 音楽科では,合唱や合奏など全員で一つの音楽を つくっていく際に,表現したいイメージや思いを伝 え合うなどの活動を重視することが,言語活動の充 実につながる。自由記述を見ると,「A表現」の領 域の歌唱及び器楽の指導場面において困難を感じて いるという記述が多い。それと関連して,教員が音 楽的な表現技能を身に付けさせたいという思いから, 実技の時間とのバランスに困難さを感じているとい う実態があることが分かる。 また,自由記述の中に, 「時間設定に気を付けたい が,言語活動が音楽の要素と結び付ける活動に大き く役に立っていることは,子どもの姿から分かる。」 など,積極的に取り入れる必要性や重要性を感じて いるものの,実際には「教科担当者が一人のため, 方向性について協議ができず,困難である。」など, 言語活動の充実に係る理論等の理解不足や研修等の充 実を図ることができていない現状が明らかになった。 イ 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.8の表7を基に「三つの類型」間における困難 を感じる意識の差について分析した。類型を<事実>, <解釈>,<評価>で分類したとき,言語活動の充 実を図ることへの困難を感じる意識は高い順に,<解 釈>,<評価>,<事実>となっている。特に<事 実>は,他の二つのレベルとは有意差が認められて いることから, 「三つの類型」の中では,最も困難を 感じる意識が低いことが分かる。<解釈>及び<評 価>と有意差がある<事実>の「言語活動例」は, 「①体験,表現」及び「②理解,伝達」である。音 楽科では,鑑賞の指導において,音楽の構造などを - 15 - 根拠として述べつつ,感じ取ったことや考えたこと などを,言葉などを用いて表す主体的な活動を重視し, 楽曲の特徴や演奏のよさに気が付いたり理解したり する能力が高まるようにすることから,<事実>にお ける困難さを感じることは少ないと考える。<評価> の「言語活動例」である「⑥伝え合い,発展」は, 困難を感じている意識は2.52とほぼ4段階評定値の 中央値に当たる。このことから, 「A表現」の領域に おいて表現したいイメージや思いを伝え合うなどの 活動を重視していることは理解しているが,時間設定 において困難を感じていることが数値として表れて いると考える。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.10の図14によると, 「(4)-4 相手や目的,場面等 を明確にする。」 , 「(4)-3 条件(例:時数制限,根拠 の明示,立場の明確化等)を設定する。 」, 「(4)-1 教 科としての目標を達成するために言語活動を設定す る。」の順に平均評定値が高く,「(4)-2 文章だけで なく図・表・グラフ等も読み取ることを取り入れる。」 の平均評定値が一番低くなっている。しかし,最も 数値の低い項目においても,平均評定値は2.57であ り,4段階評定値の中央値(2.50)以上あることから, 言語活動として基本的に大切にしなくてはならない 項目についてはどれも意識されているといえる。 エ ○ 音楽科における課題 「A表現」において表現の技能を高めるための 言語活動の充実と歌唱指導及び器楽指導の時間と のバランス ○ 「B鑑賞」における<解釈>及び<評価>の言 語活動の充実にかかわる具体的な指導方法の理解 (6) 美術 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,美術科における「言語活動 の充実を図ることにどのくらい困難を感じている か」についての平均評定値は,2.51で,これは9教 科の中で3番目に高い数値である。よって,美術科 は教員が比較的困難を感じている教科と考えられる。 p.6の図6から,美術科で困難を感じる理由とし て当てはまるという回答が最も多かったのは, 「(2)-4 言語活動を行う時間と実習,実験,実技等 を行う時間のバランスに困難を感じる。」(74.6%) である。次いで「(2)-3 教科の領域や分野等によっ ては,言語活動の充実を図ることに困難を感じる。 」 (57.1%)である。平均評定値は,それぞれ2.93,2.80 であり,他の二つの平均評定値を大きく上回ってい る。これら二つの理由が突出している要因としては, 次のことが考えられる。美術科では内容「A表現」 の学習において,制作(実技)に多くの時間を要す る。そのため,言語活動の時間を確保しようとする と,制作する時間が足りなくなると考える教員が多い と考えられる。このことは,自由記述(p.24の添付 資料1-2「美術」の列を参照)にも表れている。カテ ゴリー「時間設定」において, 「言語活動を取り入れ ると,表現活動の時間が削られる。」や「特定の領 域,分野,場面等」において「A表現」, 「表現活動」, 「制作」といった記述が多いことから,制作に充て る時間と言語活動とのバランスに苦慮しているとい う実態があることが分かる。「A表現」においては, 作業的な時間はもちろん必要であるが,主題を生み 出したり表現の構想を練ったりする時間も重要で あり,こういう場面でこそ言語活動の充実を図るこ とによる学習の効果が期待できる。 「A表現」での制 作場面を困難な理由に挙げている回答が多いという ことは, 「A表現」の学習のほとんどが作業的な時間 に費やされ,発想や構想の能力を高めるための十分 な取組がなされていないという実態があるというこ とが考えられよう。 また, 「感じたことを言葉にできないものを造形に 表すのに言葉を追いすぎるのはどうか。」 , 「文字より 形で表現することを重視する。」 , 「実技において何を どう表現したかを言葉に伝えるのは困難である。 」等, 美術科における言語活動そのものに疑問を抱いてい るような記述があった。これらは,教員自身の制作 に対する考え方,例えば芸術表現に言語は必要ない といった経験則から困難な理由に挙げているのでは ないかと考える。中学校学習指導要領解説美術編(平 成20年)には, 「A表現」における主題を生み出すこ とについて, 「言葉に表すことは,教師が主題を把握 するだけでなく,生徒も自らの主題や制作意図を深 め,より明確にすることができる。 」4)と述べられて いる。このことから分かるように,新学習指導要領 の美術においては,生徒が感じ取ったことや考えた ことなどを基に豊かな表現活動を行うために,言語 活動の充実を図り,主題を明確にさせる指導を行う ことが求められている。生徒が発想や構想をする場 面に,言語活動を効果的に取り入れ,豊かな表現を 実現させる事例を示すことができる研修の機会が増 えれば, 「A表現」において困難と感じる意識も減る のではないかと考える。 イ - 16 - 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.8の表8から,美術科では, 「三つの類型」にか かわって困難を感じる意識は,<評価>,<解釈>, <事実>の順となっている。<評価>と<事実>に は p<.01 で類型間に有意差が認められた。<解釈>と 有意差がある<事実>における「言語活動例」は, 「① 体験,表現」である。 「B鑑賞」においては,美術作 品などのよさや美しさを感じ取り味わう学習を常に 行うため,<事実>に困難を感じることはあまりな いと考えられる。<解釈>及び<評価>における 「言語活動例」の「⑥伝え合い,発展」に困難を感 じる意識は2.54で,ほぼ4段階評定値の中央値であ る。この「言語活動例」も,鑑賞の授業において, 互いに批評し合わせるなどの活動を行うことが多い ことから比較的行いやすい言語活動と認識されてい ると考える。最も困難を感じる意識が高い<評価> における「言語活動例」は, 「⑤評価,改善」である。 この言語活動に困難を感じる理由としては,次の点 が考えられる。美術科において,課題について構想 を立てて実践する場としてイメージしやすいのは 「A表現」である。しかし,アで述べたように,言 語活動を「A表現」で行うことは時間的に非常に困難 であるという意識が高い。このことから,<評価>に おける「言語活動例」の「⑤評価,改善」に困難を感 じる意識が高くなったのではないかと推測される。し たがって,<評価>を充実させるためには, 「B鑑賞」 において,作者の心情や意図,創造的な表現の工夫 等について批評し合う等,具体的な指導方法を提示 していくことが必要である。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.10の図15によると,平均評定値が低い2項目 「(4)-2 文章だけでなく,図・表・グラフ等も読み 取ることを取り入れる。 」, 「(4)-3 条件(例:字数制 限,根拠の明示,立場の明確化等)を設定する。」は, どちらも2.76である。しかし,4段階評定値の中央 値(2.50)を上回っていることから,言語活動として 基本的に大切にしなくてはならない項目については どれも意識されていると考える。 意識すると回答した人数の割合が最も高かった 「(4)-1 教科としての目標を達成するために言語活 動を設定する。」の平均評定値は2.93である。回答者 の割合では,76.3%が言語活動を教科の目標を達成 するための手段として意識していることが分かった。 しかし,言語活動の充実を教科の目標を達成するた めの手段として意識しておらず,誤った認識をもっ ている教員が23.7%もいるということは,課題の一 つととらえる必要がある。 エ 美術科における課題 ○ 「A表現」において,制作に充てる時間と発想 や構想の能力を高めるために言語活動の充実を 図る時間とのバランス ○ 「B鑑賞」において,見方や感じ方を広げたり 深めたりすることができるような言語活動の充 実にかかわる具体的な指導方法の理解 (7) 保健体育 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,保健体育科における「言語 活動の充実を図ることにどのくらい困難を感じてい るか」についての平均評定値は,2.57と9教科中最 も高くなっている。 p.7の図7で,まず,注目したいのは, 「言語活動 を行う時間と実習・実験・実技等を行う時間のバラ ンスに困難を感じる。」と回答した教員が66.3%いる ことである。中学校学習指導要領解説保健体育編(平 成20年)には, 「体を動かす機会を適切に確保するこ 5) と」 が述べられている。言語活動を充実させるこ とにより,体を動かす機会が減ってしまうと感じて おり,そのバランスをいかに取るかということに困 難を感じているものと考える。自由記述(p.24の添付 資料1-2「保健体育」の列を参照)においても,「言 語活動が学習を振り返る場面に偏る傾向にある。」と いう回答が見られた。このことは,生徒相互で話し 合ったり学習の成果や課題を記録したりすることが 言語活動を充実することになるととらえており,活 動中の指示や助言等保健体育科ならではの言語活動 には十分着目していないことと関係があるものと考 えられる。 次に,注目したいのは, 「教科の領域や分野等によ っては,言語活動の充実を図ることに困難を感じ る。」と回答している教員が,43.6%いることである。 言語活動の充実を図ることが困難と感じる特定の領 域,場面として, 「長距離走をはじめとする陸上競技, 水泳,激しい動きを必要とする場面」等が挙がって いる。保健体育科において言語活動の充実を図るた めには,互いの運動の様子を十分観察させる必要が あるが,これらの場面において相互評価を効果的に 取り入れることに困難を感じているものと考える。 言い換えれば,運動の特性に応じてどのように言語 活動の充実を図ればよいのか明確になっていないも のと考える。 イ 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.8の表9によると,言語活動の充実を図ること に困難を感じる意識については,<事実>が<解釈>, - 17 - <評価>より低くなっていることが分かる。とりわ け,<事実>「①体験,表現」は,<解釈>,<評 価>との間に有意差が認められている。このことは, 「言語活動が学習を振り返る場面に偏る傾向にあ る。」という自由記述からもうかがわれる。 ここでは,<解釈>「③解釈,説明」が<評価> 「⑤評価,改善」と並んで最も困難に感じる意識が 高いことを挙げたい。このことについては,67.0% の教員が困難を感じている。<解釈>「③解釈,説 明」は,<評価>「⑥伝え合い,発展」との間にも 有意差が認められている。保健体育科においては, <解釈>の言語活動として,運動の技能の向上をめ ざして助言し合うことやチームの課題解決に向けて 話し合うこと,練習方法の工夫について話し合うこ と等が挙げられる。これらのことは,これまでの保 健体育科において行われているものである。しかし, 体を動かす機会を確保するうえで,生徒が見通しを もつための話合いに十分な時間をかけられないとと らえているものと考える。また,運動についてお互 いに助言し合ったり,練習や試合において指示を出 し合ったりする等,短時間で行われる言語活動を保 健体育科における言語活動として教師自身が十分に 意識していないものと考える。これらのことは, 「⑤評 価・改善」についても同様のことがいえる。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.10の図16によると, 「(4)-4 相手や目的,場面等 を明確にする。」の意識が最も高く,平均評定値が 3.08となっている。自己や集団の課題を明確にした 上で運動を行っているとともに,集団的活動におい てコミュニケーションを大切にしていることが要因 として考えられる。平均評定値が最も低い「(4)-2 文章だけでなく,図・表・グラフ等も読み取ること を取り入れる。」の項目においても,2.72となってお り,4段階評定値の中央値である2.50を上回ってい ることから,言語活動の充実を図る際に基本的に大 切にしなくてはならない項目についてはどれも意識 されていると考える。 しかし, 「(4)-1 教科としての目標を達成するため に言語活動を設定する。 」という項目において,意識 していないと回答した教員が31.1%いるという実態 も見られる。また,自由記述においても「教科とし て大切にしたいことがある。」 , 「運動効果との関係が 曖昧である。 」等の意見が見られた。これらのことか ら,言語活動の充実を図るねらいについて十分に理 解されていないという現状があるものと考える。言 語活動が教科の目標を達成するための手立てである ことを,実践例を通して示すことが求められるであ ろう。 エ 保健体育科における課題 ○ 活動中の指示や助言等が言語活動の充実につな がるということを十分に意識していない点 ○ 言語活動の充実にかかわる領域に応じた具体的 な指導方法の理解 ○ 体を動かす機会を確保することと言語活動の充 実とのバランス (8) 技術・家庭 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,技術・家庭科における「言 語活動の充実を図ることにどのくらい困難を感じて いるか」についての平均評定値は2.447であり,9教 科中6番目に困難を感じている教科である。4段階 評定値の中央値(2.50)をわずかに下回っているが, 他教科と比較して困難を感じている教科といえよう。 p.7の図8から,言語活動の充実を図ることにつ いて最も困難と感じている理由は「(2)-4 言語活動 を行う時間と実習・実験・実技等を行う時間のバラ ンスに困難を感じる。」(62.1%)であることが分 かる。自由記述(p.24の添付資料1-2「技術・家庭」 の列を参照)の中にも,「体験的な活動を充実させ る時間と,言語活動をさせていく中での時数の時間 的バランスのとり方が難しいと感じる。」という記 述がある。また,「(2)-3 教科の領域や分野等によ っては,言語活動の充実を図ることに困難を感じ る。」という質問に,50.6%の教員が「当てはまる」, 「どちらかというと当てはまる」と回答している。 最も多かった理由は,「実習を中心とした授業展開 の場合」であった。特に,技術・家庭科は,限られ た時数の中で実習を中心とした授業を行う場合,時 間の制約の問題が大きいと考えられる。言語活動の 充実を図ることが求められている中,現状では困難 を感じている教員が多いことが分かる。 技術・家庭科では,実践的・体験的な学習活動を 通して知識や技術を習得し,実際に活用する能力や 態度を育成していくことが重視されている。よって, 実習等の活動を充実させていくことにポイントを 置くことは分かる。しかしながら,知識や技術を習 得させる際に,言語活動の充実を図ることも重要で ある。自由記述には「言語活動とは何かを分かりや すく提示してほしい。」という記述があることから, 言語活動の充実にかかわる理解についても課題が あると考えられる。 - 18 - イ 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.9の表10から,言語活動の充実を図ることにつ いて困難を感じる意識は,高い順に「⑤評価,改善」, 「③解釈,説明」, 「④評価,論述」 , 「⑥伝え合い,発展」 , 「②理解,伝達」,「①体験,表現」となっている。 事実の類型の二つ「②理解,伝達」 ,「①体験,表現」 は,他の類型との有意差が認められていることから, 困難を感じる意識が低いことが分かる。 最も困難を感じる意識が高かった「言語活動例」 の「⑤評価,改善」すなわち「課題について,構想 を立て実践し,評価・改善する。」は,授業において 問題解決的な学習を行っているかどうかで判断する ことができる。 国立教育政策研究所が,平成19年度に実施した「特 定の課題に関する調査(技術・家庭)」で,各分野 の指導の実際の一つとして,問題解決的な学習を取 り入れた授業を行っているかを問うている。その結 果を見ると,肯定的に回答した教員の割合は,技術 分野66.8%,家庭分野56.1%にとどまっていること から,全国的な課題ととらえることができる。この 背景には,実習を中心とした授業展開の場合,製作 品等の完成までに時間がかかり,評価や改善に費や す時間の確保が難しいことが予想される。 自由記述の中には, 「言語活動を取り入れるように 教材準備をしなければならない。当然のことではあ るが,どのように取り入れると有効なのか,戸惑っ てしまう(しかし,取り入れると学習効果が高いこ とは実感している)。」という記述がある。技術・家 庭科は,教科の教員自体が少なく,教科内での研修 を日常的に行うことが非常に難しい状況にあると考 えられる。言語活動の充実に向けた研修,とりわけ 困難に感じる意識が高かった「⑤評価,改善」につ いて,具体的な指導方法の研修が必要と考える。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.10の図17から, 最も意識が高い項目は「(4)-2 文章 だけでなく,図・表・グラフ等も読み取ることを取 り入れる。」(3.31)である。技術・家庭科では教科 の特徴として,図表などを読み取りながら学習を進め ることが多いため,意識が高いと考える。一方,最も 意識が低かった項目は, 「(4)-1 教科としての目標を達 成するために言語活動を設定する。 」 (2.74)である。 これは,4段階評定値の中央値(2.50)以上あること から,この項目については意識されていることが分 かる。しかし,人数割合で意識していないと回答し た教員が40.0%おり,このことも課題の一つといえ る。 エ ○ 技術・家庭科における課題 実習時間と言語活動の充実を図る時間とのバラ ンス ○ 言語活動の充実にかかわる特に, 「⑤評価, 改善」 の具体的な指導方法の理解 ○ 教科の目標を達成させるための手段として,言 語活動を充実させることなど,言語活動の充実に かかわる基本的な理解 (9) 外国語 ア 言語活動の充実を図ることについて困難を感 じる理由 p.5の表2によると,外国語科における「言語活 動の充実を図ることにどのくらい困難を感じている か」についての平均評定値は2.46で,4番目に高いこ とが分かる。 p.7の図9から,困難を感じる理由の上位二つに ついて述べる。最も困難を感じる理由は「(2)-5 外 国語(英語)で言語活動を行うため困難を感じる。」 (40.0%)である。いうまでもなく外国語科の目標 の一つに「聞くこと,話すこと,読むこと,書くこ となどのコミュニケーション能力の基礎を養う。」が あり,その能力を養うため,言語の使用場面と言語 の働き,言語材料を効果的に関連付けた言語活動を 充実することが重要となる。この項目は外国語科の 指導における基本的な事項といえよう。なお,自由 記述(p.23の添付資料1-1「外国語」の列を参照)に おいて, 「生徒の表現力が、英語では深まりにくい。」 , 「英語を理解させ,表現させることに困難を感じて いる。」などの記述も見られた。これらの記述のよう に,外国語で言語活動の指導を行うことが困難と感じ るということは,外国語科における言語活動の十分 な理解に課題があるともとらえることができる。 2番目に多い困難を感じる理由は「(2)-3 教科の 領域や分野等によっては,言語活動の充実を図るこ とに困難を感じる。」(30.3%)である。自由記述では 「Readingの単元」,「読むこと(本文理解)」,「読解 問題」などを数多く挙げている。中学校学習指導要 領外国語(平成20年,以下「指導要領外国語」 )の2 内容(1)言語活動「ウ読むこと」では五つの事項が示 されており,中学校学習指導要領解説外国語編(平 成20年,以下「解説外国語編」)においては,各事項 における指導上の留意点等が述べられている。なお, (2)言語活動の取扱い及び(3)言語材料においても, 配慮すべき内容が「解説外国語編」において述べら れている。外国語科の授業改善にかかわって和泉伸 一(平成22年)は「これまでの日本の英語授業の多 - 19 - くでは,意味内容に着目してそれを発展・深化させ て生徒と一緒に考えるということが極端に少なかっ た。」6)と述べている。これからの授業においては生 徒が自ら考え,判断し,表現する力を育成すること が課題といえよう。これらの課題を改善するために 教員に求められることは, 「指導要領外国語」の内容 を熟知するとともに, 「解説外国語編」で述べられて いる内容についても理解することである。 イ 「三つの類型」にかかわる困難を感じる意識 p.9の表11から, 「三つの類型」にかかわる困難を 感じる意識について述べる。<事実>における「言 語活動例」の「①体験から感じ取ったことを表現する。 」 及び「②事実を正確に理解し伝達する。」は,困難を 感じる意識が低い。また,<事実>は<評価>及び <解釈>と有意差が見られる。このことから, 「話す こと」,「聞くこと」に関連した指導についてあまり 困難に感じていないことが分かる。また, 「指導要領 外国語」の目標の中にある「コミュニケーションを 図ろうとする態度の育成」や「コミュニケーション 能力の基礎を養う」が関係しているのではないかと 考える。 一方,<解釈>が<評価>における「言語活動例」 の「⑤評価,改善」に次いで困難を感じる意識が高 い。<解釈>にかかわる実際の指導では,物語や説 明文などを読んであらすじや大切な部分などを理解 し,それらを聞き手に正しく伝えることなどが挙げ られる。このような指導について,具体的な指導方 法を提示していくことが,外国語科における言語活 動の充実につながると考える。 ウ 言語活動の充実を図る際に意識すること p.10の図18によると, 「(4)-2 文章だけでなく,図・ 表・グラフ等も読み取ることを取り入れる。」 (2.35) が最も低い。また,他の項目と比較して極端に低い ことが特徴的である。さらに,この項目について「意 識する」,「どちらかというと意識する」と回答した 割合は,全教科中最も数値が低い40.3%であった。 この項目にかかわる実際の指導として,グラフやア ンケートの集計表などを基に,自分の考えや意見を まとめたり,述べ合ったりすることなどが挙げられ る。このことからも,今後教員に求められることと して,外国語活動における言語活動の充実について の十分な理解が期待されていると考える。 エ ○ 外国語科における課題 外国語科における言語活動についての基本的な 理解 ○ 外国語科における言語活動にかかわる具体的な 指導方法の理解 2 研修内容改善のための方向性 各教科で行った分析と考察から挙がった課題につ いて整理すると,いくつかの教科に共通する課題と 各教科特有の課題に分けることができた。これらの 課題解決のために,研修にどのような内容を取り入 れていけばよいか検討した。その結果,主に三つの 研修内容の必要性が見えてきた。 一つ目は「言語活動の充実にかかわる基本的な理 解を図る内容」である。言語活動の充実は各教科の 目標を達成するための手段であるということが十分 に理解されていない状況が見られた。 また,すべて の学習場面で言語活動の充実を図らなければならな いといった誤った認識など,言語活動とは何か,言 語活動の充実を図るとはどうすることかなどの,基 本的な理解が必要である。 二つ目は「言語活動を充実する具体的な指導事例 を紹介する内容」である。言語活動を充実していく こととは具体的にどのようなものなのかイメージが つかめていない状況が見られた。文部科学省や広島 県教育員会が示しているような事例集を効果的に活 用するとともに,日常的に行っている授業の中に言 語活動は存在しているということも認識することが 必要である。 三つ目は「各教科で育成すべき能力との関連を図 る内容」である。言語活動を行うこと自体が主な目 的になっているケースが見られた。各教科で育成す べき能力等を先に設定し,その育成を目的として言 語活動を設定することが重要になる。教科独自の課 題の多くは,各教科で育成すべき能力と言語活動の 充実との関連を整理することで,一定の方向性が見 いだされると考える。 ここでは,この三つの研修内容別に,具体的な例 と研修を行う上で特に押さえるべきこと等を述べ, 研修内容改善のための方向性を一見識として示す。 (1) 言語活動の充実にかかわる基本的な知識や 理解 この研修内容では例えば次のようなものが考えら れよう。 ・ 言語活動とは何か ・ 言語活動の充実を図る目的は何か ・ 言語活動の充実を図るとはどういうことか ・ 言語活動の充実を図る際に留意すべきことは何か ・ 言語活動と言語技術の違いについて 等 特に,この研修内容では,言語活動の充実は各教 - 20 - 科の目標を達成するために行う手段であるというこ とを押さえる必要があろう。この前提がないと,言 語活動は教科の学習活動とは別のものととらえてし まったり,言語活動の充実を図ることで教科の目標 を達成することが難しくなるといった矛盾を抱えて しまったりするからである。また, 「言語技術指導」 と「言語活動の充実」が混同されていることや,す べての学習場面において言語活動の充実を図らなけ ればならないという誤った認識について研修を通し て改善していくことも重要である。 また,言語活動の充実は今回の学習指導要領の改 訂において各教科を貫く重要な改善の視点であるの で,どのような経緯で示されたのか,理解しておく ことが求められる。 (2) 言語活動の充実にかかわる具体的な指導方 法の理解 この研修内容では例えば次のようなものが考えら れよう。 ・ 言語活動の具体例を示していく ・ 広島県教育委員会作成の指導事例集等の活用 等 この研修内容の主たる目的は,言語活動を充実し ていくとは具体的にどのようなことをしていけばよ いのかイメージがつかめず困難に感じているという 状況を解決することである。具体例の提示について は,広島県教育委員会が,全国に先がけて全校種, 全教科の言語活動事例を平成22年12月に,文部科学 省が言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】 を平成23年1月にWebページに掲載している。こ れらの資料を積極的に活用することは非常に有効で ある。また,多くの事例に触れることにより,日常 的に行ってきた授業の中にすでに今回示された言語 活動の充実は存在しており,新たに設定する別のも のではないということを認識することもでき,教員 の過度な負担感を軽減することになると思われる。 しかし,事例はあくまでも具体的イメージをつか むものである。事例をそのまま活用するのではなく, 理論をよく理解した上で,各学校の生徒の実態に合わ せた実践を行っていくことが重要である。 (3) 各教科で育成すべき能力等との関連 この研修内容では例えば次のようなものが考えら れよう。 ・ 小学校及び中学校学習指導要領解説国語編の言 語活動にかかわる内容を確認する ・ 各教科の学習指導要領解説の熟読と理解 ・ 各教科等の指導における言語活動の位置付けの 理解 ・ 教科のねらいを達成するために言語活動の充実 を図った指導案の作成演習 等 各教科で育成すべき能力等すなわち各教科の学習 指導要領で示された内容(指導事項)を,言語活動 の充実を通して指導することを明確にすることが重 要である。つまり,言語活動の充実は,各教科等の 目標を達成するための指導の工夫であるともいえる。 言語活動を充実しなければならないという使命感が 先にたって,言語活動を先に設定するのではなく, 各教科で育成すべき能力等を先に設定し,その育成 を実現するために学習活動を設定するという思考の 流れが重要である。このように設定された学習活動 はすでに言語活動である。つまり,この学習活動を 目標達成のために工夫することが,言語活動の充実 につながる。 今回の意識調査から「言語活動の充実を図ること が困難である」ことの様々な理由が挙げられている が,中には言語活動の充実を図ることが困難なので はなく,その教科の指導事項を指導することが困難 であるといった内容を意味している記述も見られた。 「答申」で述べられている「国語科で培った能力を 基本に言語活動の充実を図る」とは,どこまでが国 語科として学習することで,どこからが各教科等で 学習することなのか十分に意識するために,校種や 教科の枠を越えて全教員が小学校及び中学校学習指 導要領解説国語編に目を通すことも重要なのではな いか。 Ⅵ 研究のまとめ 1 成果 本研究で実施した意識調査からは,次のようなこ とが明らかになった。 ○ 言語活動の充実を図ることにどのくらい困難を 感じているかの意識は教科ごとに違うことが明ら かになった。 ○ 各教科で行った分析と考察から挙がった課題を 整理すると,いくつかの教科に共通する課題と各 教科特有の課題があることが明らかになった。 ○ 課題を解決し,言語活動の充実を推進していく ための研修内容改善の方向性として,言語活動の 充実にかかわる基本的な理解を図る内容,言語活 動を充実する具体的な指導事例を紹介する内容, 各教科で育成すべき能力との関連を図る内容等を 取り入れる必要があることが明らかになった。 - 21 - 2 課題 ○ 研究内容を踏まえて,研究の成果を来年度の教 育センターで実施する専門研修講座,サテライト 研修講座等に生かしていく。 ○ 研究内容とその成果を教育関係機関に広め,各 機関が行う研修内容に生かしてもらう。 【注】 (1) 広島県では,平成17~20年度において,研究地域及び研 究校を指定し,「言語技術」の指導方法や各教科等におけ る「言語技術」の効果的な活用方法を研究するとともに, その成果の普及を図ってきた。 (2) 広島県教育委員会では, 「言語技術」について, 「情報を 主体的に獲得し,自分の考えを組み立て,分かりやすく発 信するための「聞く」「読む」「話す」「書く」に関する技 能(スキル)」と整理している。また, 「言語技術」の活用 については,各教科のねらいを達成させるための手段であ るとしている。 (3) 渡部光昭・坂本豊・奥本実・河野龍彦・田中進一(広島 県立教育センター,平成21年) : 「新学習指導要領を踏まえ た言語活動に係る研究-言語活動に関する意識調査を通 して-」の調査研究を示す。 (4) 主要能力(キー・コンピテンシー)は,OECDが2000年か ら開始した PISA 調査の概念的な枠組みとして定義付けら れた。PISA 調査で測っているのは「単なる知識や技能だけ でなく,技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソー スを活用して,特定の文脈の中で複雑な課題に対応するこ とができる力」であり,具体的には,①社会・文化的・技 術的ツールを相互作用的に活用する力,②多様な社会グル ープにおける人間関係形成能力,③自立的に行動する能力, という三つのカテゴリーから構成されている。 (5) 平成20年11月 広島県立広島中学校公開授業研究会 で行われた文部科学省初等中等教育局中等教育企画課長 常盤豊氏の講演「新学習指導要領を踏まえた『高い水準の 授業づくり』」のことを意味している。見解は講演内容か ら稿者が整理した。 (6) 文部科学省の出した『読解力向上に関する指導資料- PISA 調査(「読解力」の結果分析と改善の方向)』 (平成17 年12月)には,次のように定義されている。「自らの目標 を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会 に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し, 熟考する力」 (7) 数学が世界で果たす役割を見付け,理解し,現在及び将 来の個人の生活,職業生活,友人や家族や親族との社会生 活,建設的で関心をもった思慮深い市民としての生活にお いて確実な数学的根拠に基づき判断を行い,数学に携わる 能力 (8) 自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化に ついて理解し,意思決定するために,科学的知識を活用し, 課題を明確にし,根拠に基づく結論を導き出す能力 (9) 説明内容は,平成20年 2 月14日 文部科学省初等中等局 メールマガジン 第78号に掲載されているものを基に稿 者が整理した。 (10) ここでは PISA 調査の「読解力」と同義。 (11) PISA調査では, 「読解力」の領域で思考のプロセスを「情 報の取り出し」 「テキストの解釈」 「熟考・評価」に分けて 測定している。文部科学省『読解力向上に関する指導資料』 では,「読解のプロセス」を次の三つに整理している。 ① 情報の取り出し テキストに書かれている情報を正確に取り出す。 ② 解釈 書かれた情報がどのような意味を持つかを理解した り,推論したりする。 ③ 熟考・評価 テキストに書かれていることを知識や考え方,経験と 結びつける。 (12) 平成22年度現在,広島県内市町で最も採用が多い中学校 理科用教科書を基に算出した。 【引用文献】 1) 独立行政法人教員研修センター(平成22年) : 『言語活動 の充実を図る全体計画と授業の工夫』 p.75 2) 独立行政法人教員研修センター(平成22年):前掲書 p.75 3) 橋本康弘(平成22年):文部科学省『中等教育資料』7 月号』 ぎょうせい p.87 4) 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説美術 編』 日本文教出版 p.54 5) 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説保健 体育編』 東山書房 p.55 6) 和泉伸一(平成22年) : 「思考力・判断力・表現力を育成 する英語授業に向けて」 ,『中等教育資料平成22年9月号』 ぎょうせい p.34 【参考文献】 文部科学省(平成17年):『読解力向上に関する指導資料~ PISA 調査(読解力)の結果分析と改善の方向~』 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説国語編』 東洋館出版社 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説社会編』 日本文教出版 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説数学編』 教育出版 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説理科編』 大日本図書 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説音楽編』 教育芸術社 文部科学省(平成20年):『中学校学習指導要領解説技術・家 庭編』 教育図書 文部科学省(平成20年): 『中学校学習指導要領解説外国語編』 開隆堂出版 森敏昭(1990):『心理学のためのデータ解析テクニカルブッ ク』 北大路書房 下田好行(代表)(平成21年): 「『キー・コンピテンシー』に基 づく学習指導法のモデル開発に関する研究-『言語活動の 充実』と思考力・判断力・表現力の育成を中心として-」 国立教育政策研究所 中央教育審議会(平成20年):『幼稚園,小学校,中学校,高 等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善につい て(答申)(平成20年 1 月17日) 』 山内光哉(1998):『心理・教育のための統計法<第2版>』 サイエンス社 - 22 - 添付資料 1-1 国語,社会,数学,理科,外国語において,自由記述された言語活動の充実を図ることへ困難を感じる理由 カテゴリー 国語 社会 数学 ・ 式の計算 や演習時 間,問題 練習をす る時間 [2件 ] ・言語活動を充実させるには, ・時間を確保しにくい。 時間設定 かなり時間が必要となる。時 ・内容が焦点化されていな ・毎時間実施,指導内容などに困難を感じる。[3件] 間の確保が難しい。[3 件] い。→授業の進度に影響 する。→教師主導の授業 になる。 特定の領 ・教え込む領域や学習,漢字, ・知識・理解中心の授業を ・計算分野,数と式,計算が主体となる分野,式の計算,2 次方程式,正の数,負の数,「数と式」[6件],しっかり教 展開する場面 域,分野, 文法[5 件] (例)地理・歴史(文化)・ える場面(教え込む場面),関数「関数」 ・古文[2 件] 場面等 公民(政治のしくみ)→ ・計算練習,ドリル学習,計算問題の解答,計算の習熟など ・書写 「計算練習」[10 件] 知識・理解 ・文学的な文章の学習 ・資料が不足している場面 ・なぜこの答えになるのか証明させる,図形の証明等は逆に ・「話す・聞く」領域 文型があるので自由な発想で表現させることが難しい。 ・社会的抽象的概念を理解 ・話合いを行うとき 「証明(図形)」[2件] しそれを表現する場面 ・違う課題を与えたとき ・グループにおいて交流す ・習熟度別にしているので,意見が広まらないなど「学習形 態」[2件] る場面 ・調べたことを発表する場 面 23 - 内容理解 ・言語活動とはどのようなもの をさすのか。言語技術とはど んなものか,分からない。 具 体 的 な ・言語活動のパターンが限られ ・社会的思考と言語活動の つながりが整理できてい る。 方法 ・生徒に力を付けるために,ど ない。 のように言語活動を取り入れ ・班での話合い・発表の仕 方が明確になっていな たらよいか。 い。→生徒にとって難し くなる。 ・自分が進めている言語活動があっているか,言語活動に入 るのかどうかわかりません。(例えば,計算過程を説明する ことは言語活動といえるのか。証明の根拠を言わせるのは 言語活動といえるのか。など)[2件] ・教科の中では深めにくい。 ・教科で言語活動を取り入れるとき,どうしてもそれが授業 の目的になる場合が多いように思う。 ・結論先行やナンバリング,考え方や解き方を説明させるこ と,発表(自分の考えを伝える,説明する),プリントなど で自分の考えをかくこと,グループ活動の中での話し合い 程度しか技法を知らない。具体的な方法やその他の技法に ついても知りたい。[4 件] ・数学の特性もあり難しい。具体的にどうすればよいか示し てほしい。 ・数学は答えが一つに限られる場合が多いため,どう言語活 動をするのかが分かりにくい。証明などの時は逆にやりや すい。 ・自分自身に言語活動に関する確固たるものがない為,細か い指導や評価ができず,やりっぱなしになっている気がし ている。 ・活動に対してのアドバイスや評価の方法が分からない。 理科 外国語 ・毎時間グループ活動や体験活動があるわけではな ・日常的に日本語が使われている中で,週数時間の授業のみ英 いので難しい。 語を使わせることに困難を感じる。言語活動の手段は様々あ ・時間的なゆとりのなさを感じる。 るが,生徒自身の定着度,話すことへの抵抗感など課題は多 いと思う。 ・現行の時間数では,教科書の内容をこなすのに時間の大半を 使っており十分に時間をかけることが困難な場合が多い。 ・第1分野,電流・植物・地震 ・Reading の単元 ・地学の特に天体の分野などは考えさせたりする活 ・読み物教材 動や,その意見を文章化させる活動が少ないため ・読解問題 ・科学的専門用語(名称)などを教えこむなどの, ・新出事項の徹底を図る分野 ・文法のまとめなどの単元 知識を教え込む場面 ・暗記科目の部分で難しいと思う。 ・法則のおさえと活用に時間をかけ,繰り返し演習 などに時間を費やしてしまう。 ・結果を予想したり確認したりするのに結論先行と はいかない。ナンバリングも使えるときと使えな いときがある。 ・実験中はきちんとした言い方をさせる時間も取れ ないし危険である。 ・自分自身の知識不足 活用をどのように取り入れ ・外国語における言語活動とは,英語で行うというものだが, ればよいかが分からない。 今求められている言語活動の内容,目的が違う気がする。外 ・日本語のやりとりで授業をするのに「言語」を用 国語における言語活動のとらえでいいのかどうか分からな いていかなる活動ができるのかさっぱり意味が い。 分からない。言語以外の活動とは何なのか。 ・生徒の表現力が,英語では深まりにくい。 ・英語を理解させ,表現させることに困難を感じている。 ・生徒の言語活動を充実させることのできる課題が ・言語活動は行えるが,より効果的に行うことの困難さを感じ うまく設定できない。 る。 ・教科内における言語力の到達基準が明確でない。 ・言語活動の内容によっては,1 クラス 40 人の生徒全員の活動 言語活動 ・言語活動の評価にかなりの時 間を要する,客観的評価をす が十分にできず,活動の様子の把握や評価の難しさを感じる の評価 ることが難しいこともある。 ことがある。 ・言語活動をどう評価したらよ いか。 ・英語の場合,英語そのものを言語活動としてとらえたいが, 教科間連携 ・全教科で連携を取りながら学 ・全教科・領域を通して取 ・生徒に「理由を説明する」などの力が付いていなく,その 校全体で取り組むとき[4 件] り組めていない。 力を付けさせるのが難しい。 全体研修の場では位置付けにくい。 ・考えをもたせること,ポイントを絞らせること ・言語活動を強調すると言 ・生徒が生活体験や知識が不足しているので,イメージや説 ・言語活動に力を入れることにより理科に対する興 ・外国語をすべて(文法説明も含めて)外国語で教えるよう言 その他 語技術にこだわる授業と 明した内容を理解することなどが難しい。[3 件] 味関心が低くなることが多い。 われると困る。 なってしまう。 ・ことば(言語活動)が中心か,中身が大切か「?」 ・外国語を使いながらの言語活動の充実は難しい。 となる。形にとらわれて色々な表現ができない。 添付資料 1-2 音楽,美術,技術・家庭,保健体育において,自由記述された言語活動の充実を図ることへ困難を感じる理由 カテゴリー - 24 - 音楽 美術 技術・家庭 保健体育 ・体験的な活動を充実させる時間と,言語活動をさ ・時間的な問題 ・週1時間しかないので難しい。[2件] ・体育分野は,体を動かすことにより体をつ 時間設定 せていく中での時数の時間的バランスのとり方 ・言語活動を取り入れると,表現活動の時間が削ら くることが主である。 ・技能を身に付ける時間を確保したいので。 が難しいと感じる。 れる。[3件] ・活動量を確保することが必要である。 ・感想を発表する場面で全員に当てることができ ないため。 ・実技に取られる時間が多く,じっくり言葉を使っ ・準備・後片付けにも時間がかかる。 ・学校行事等の取組に時間を費やすため。 て考えさせる時間が取れない。〔3件〕 ・時間設定に気を付けたいが,言語活動が音楽の ・限られた授業時数,時間の中で,言語活動を取り 要素と結び付ける活動に大きく役に立っている 入れると大きな時間が取られ,体験的授業内容が ことは,子どもの姿から分かる。 少なくなる。生徒は,概念的な学習を多く入れた り,繰り返して入れるより,体験的学習に意欲を もっている。 ・とりわけ,次のような場面では難しい。 ・「A表現」,表現活動(制作・実技・過程)[9件] ・実習を中心とした授業展開の場合〔19 件〕 特定の領 ・音楽の実技 (例)陸上競技(長距離走等)・水泳・バレ ・ものづくり[3件] ・技術面の指導 域,分野, ・合奏(リコーダー)など器楽,演奏活動 ーボール・激しい動きを必要とする場面 ・生物,育成,家庭領域 ・絵の表現と言葉の関係 ・歌唱 場面等 ・技能の低い生徒が技能の高い生徒にたずね ・主に技能分野 ・思考や構想を深めていく活動 ・鑑賞 る場合 ・調理実習中,まとめではないとき ・鑑賞以外では工夫が必要である。[2件] ・技能を身に付ける場面 ・言語活動が学習を振り返る場面に偏る傾向 ・保育,消費 ・鑑賞・相互評価[2件] ・音楽的な感受や表現の工夫(第2観点) にある。 ・被服製作[2件] ・互いに知識を与える場面以外に確保しにく い。 ・言語活動を基盤にするのはよいが,焦点化しすぎ 内容理解 ・言語活動や言葉を意識する活動を校内で研修す ・絵での表現を言語の伝達と考えてよいか。 るが,校内の教科担当者が一人のため,相談で ・「充実」の定義が何か分からない。言葉を大切に ると目標を達成しにくくなったり,指導時間が足 きず,方向性の正誤などで困難を感じる。 授業をする,表したいことを言葉に置き換える, りなくなったりする。指導の中で,タイムリーに 感じたことを言葉にする,でよいのか。 効果的に入れて,授業の目標を達成できるように するのがよいと思われる。 ・言語活動とは何かを分かりやすく提示してほし い。 ・自分自身が言語活動についての研修を充分に行っ ていない。 ・言語活動を取り入れるように教材準備しなければ ・言語技術の習得が優先されている。十分に 具体的な ならない。当然のことではあるが,どのように取 思考するまでには至っていない。 方法 り入れると有効なのか,戸惑ってしまう。(しか ・グループ学習において相手に分かるような し,取り入れると学習効果が高いことは実感して 説明ができない。 いる。) ・ねらいに対してどのような事を書かせたらよいの ・評価方法をどのようにすればよいか。 言語活動 ・教科でのねらいに即した言語活動とその評価 か迷う。 の評価 ・教科や教師間で個人差がある。国語科との連携方 教科間連携 ・全教科一くくりになると困難を感じる。 ・教科担任制のため,一教科のみならず,全教科 法を知りたい。 を通じて取り組む必要がある。年度当初の研修 や,学校全体での共通理解が不可欠 ・感じたことを言葉にできないものを造形に表すの その他 に言葉を追いすぎるのはどうか。 ・文字より形で表現することを重視 ・実技において何をどう表現したかを言葉に伝える のは困難 ・対話型鑑賞において言葉にならないところを見落 としていないか。 ・他教科との連携が図られていない。 ・教科として大切にしたいことがある。 ・運動効果との関係が曖昧である。
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