研修報告書 - 日本外交協会

Tokyo Multiple Training Programme on Solid Waste Management
UNDP Africa-Asia Eco-Partnership Programme
UNDPアフリカ‑アジア・エコパートナーシッププログラム
廃棄物処理東京研修
Report on Tokyo Multiple Training Programme on Solid Waste Management
研修報告書
2003年3月
東京国連協力事業運営委員会
(エコパートナーシップ東京委員会)
UNDPアフリカ‑アジア・エコパートナーシッププログラム
廃棄物処理東京研修
研修報告書
目次
1. プログラムの概要
2. 研修概要
2‑1. 研修概要
2‑2. 研修スケジュール
3. 研修内容
4. その他のプログラム
4‑1.レセプション
4‑2.ホームビジット
5. 研修評価
5‑1. 全体評価
5‑2. 研修員による評価
5‑3. アドバイザーによる評価総評
AnnexⅠ
研修日程一覧 (講師、講義内容)
AnnexⅡ アンケート結果(和文)
AnnexⅢ 参加者リスト
UNDPエコパートナーシップ・プログラム廃棄物処理東京研修研修
Tokyo Multiple Training Programme on Solid Waste Management
UNDP Africa-Asia Eco-Partnership Programme
1. プログラムの概要
○ アジアとアフリカの11都市が相互に協力して環境に関する行政能力の向上と人材育成を進め
る国連開発計画(UNDP)の事業。
第1期 : 「廃棄物処理」
2002 年 10 月〜2004 年 3 月
第2期 : 「大気汚染・水質汚染対策」 未定(2004 年以降)
○ 第1期では廃棄物処理に関する人材育成研修を、東京(2003 年 2 月)
、クアラルンプール(2003
年 3 月)
、マリキナ(2003 年 4 月)
、バンコク(2003 年 5 月)の4都市で実施する。
○ 各研修の実施後、UNDPが必要と認めた場合には、研修を行った都市から専門家を派遣し、各
参加都市における環境向上を実践するためのフォローアップを行う。
2. 研修概要
2-1. 研修概要
研修名:
UNDPアジア-アフリカ・エコパートナーシップ・プログラム廃棄物処
理 東 京 研 修 ( Tokyo Multiple Training Programme on Solid Waste
Management, UNDP Africa-Asia Eco-Partnership Programme)
実施時期:
2003 年 2 月 3 日(月)〜17 日(月) 計11日間
実施主体:
国連開発計画(UNDP)
研修受入主体: 東京-国連協力事業運営委員会
(社団法人日本外交協会内)
研修協力:
東京二十三区清掃一部事務組合、板橋区
研修目的:
テーマ「廃棄物の収集・運搬と住民協力」
①東京における廃棄物処理の現状と、その背景にある課題・対策について
理解する
②収集・運搬における住民協力の重要性およびその実現過程を理解する
③各市における実効的な住民協力、それを支える行政各部門の実施体制に
関するプランを立てるための知識を得る
参加人数:
8都市×2名
参加都市:
アクラ、アディスアべバ、ダルエスサラ−ム、ラゴス、ナイロビ、バンコ
ク、ジャカルタ、クアラルンプール
研修員の職種: 廃棄物処理分野の技術官、行政官
研修の形式:
講義、研修員による報告、視察
講義時間割:
午前中 9:00-10:30
研修場所:
東京二十三区清掃一部事務組合会議室ほか
10:45-12:45、午後
13:30-15:00 15:15-16:45
2‑2. 研修スケジュール日程
研修は全11日間行われ、その内5日間が講義、3日間が研修員からの発表と討議に
3日間が現場視察に充てられました。
日 形式
2/3 講義
2/4 講義
2/5 講義
2/6 報告
時間帯 単元名
午前
東京の地勢・清掃事業の概要
午後
東京におけるごみ処理の流れ
午前
法制(廃棄物処理法等)
午後
条例の主要規定と施策
午前
東京におけるごみ処理と公害対策の歴史
午後
東京におけるコンポストの取り組み
午前
シティーレポート報告
午後
2/7 講義
午前
埋立処分について
視察
午後
最終処分場(中防処理施設)視察
2/10 講義
午前
排出・収集にかかる住民合意
午後
住民協力と地域・民間の取り組み
午前
収集・運搬現場視察
(祝)
午後
収集作業計画策定手法
2/12 視察
午前
中間処理と環境対策
午後
環境教育
午前
施設建設にかかる住民合意と環境影響評価手続
午後
廃棄物行政の現状・課題と展望
午前
アクションプログラム報告①
午後
アクションプログラム報告②
午前
アクションプログラム報告③
午後
アクションプログラム報告④
2/11 視察
2/13 講義
2/14 報告
2/17 報告
3. 研修内容
2 月 3 日(午後):
2 月 3 日(午前):
東京における廃棄物処理の流れ
東京の地勢・清掃事業の概要
東京の区部におけるごみ量や質に関す
る東京という都市の性格を理解してもら
うことを目的に、東京の地形、面積、気
候、人口、産業構造、くらし等の概要と、
東京二十三区清掃一部事務組合をはじめ
とする東京における廃棄物行政組織とそ
れぞれの組織の役割分担に関しての講義
が行われました。
研修の導入としての東京の概要を紹介
する講義ではありましたが、研修員から
は、清掃工場建設の際の規制値や、ごみ
の種類の変化などに関しての質問がなさ
れ、初日から研修員の意識の高さが見受
けられました。
▲ 講義を受ける研修員
▲ペットボトル回収ボックス
東京における廃棄物処理事業における
ごみ処理の過程を理解することを目的に、
収集から埋立て処分までの各過程につい
ての講義が行われました。まず、研修員
は、可燃・不燃・粗大・資源ゴミの分別
収集や種類別の処理など一連の流れにつ
いて学び、続けてごみ処理の過程につい
てのビデオを鑑賞しました。
ビデオの冒頭で、東京におけるごみ問
題が深刻した「ごみ戦争」の頃の映像が
写されると、各研修員から、
「自分の都市
と同じだ。」との声が挙がりました。また、
研修員は、ビデオで紹介される収集車の
容量やごみ集積所のバケツの形や色など
細かい点に関して質問をしました。
講義ではごみを処理する過程のみでな
く、ごみ自体を減量化させるための、3
R ( Reduce = 減 量 、 Reuse = 再 利 用
Recycle=リサイクル)の重要性が強調さ
れ、ペットボトルの収集やその衣料への
再生など、リサイクルの取り組みが紹介
されました。
講義を受け、研修員からは、ごみの減
量化に向けた取り組みや、不法投棄の扱
い、焼却施設における環境保全対策、医
療系廃棄物の扱いなどに関しての質問が
挙がりました。
また、清掃工場で破砕されたごみの一
片がビニール袋に入れられて見せられる
と、ビニール袋に入っているからか、東
京の風景がそうさせるのか、
「東京のごみ
も臭いのか。」といったユニークな質問も
されました。
2 月 4 日(午前):
2 月 4 日(午後):
廃棄物処理に関する法制
条例の主要規定と施策
日本における廃棄物処理の法体系を学
ぶことを目的に、廃棄物処理法や近年法
整備が進んでいる各種リサイクル関連法
に関する講義が行われました。
講義では、廃棄物処理法、家電リサイ
クル法、建設リサイクル法、食品リサイ
クル法、グリーン購入法の廃棄物処理に
関する主要な6つの法令が紹介されまし
た。
また、近年廃棄物処理の重要性が再確認
されたことから、法整備の動きが活発に
なり、罰金が課せられるのみでなく、逮
捕者がでていることも紹介されました。
それに対し、ダルエスサラ−ムの研修
員からは、
「タンザニアでは、法は存在し
ても、法の遵守が伴わない。東京(日本)
では、どのようにして、それを徹底させ
ているのか。」との質問が挙げられました。
また、クアラルンプールの研修員からは、
「違反があった場合、廃棄物処理行政と
警察はどのようにして調整を図るのか。」
という質問が挙げられましたが、
「クアラ
ルンプールにおいても、不法投棄
(illegal dumping)は深刻な問題で、厳
罰化によって不法投棄を防止しようとい
う考えがある。」との発言がありました。
しかし、アフリカの研修員から、
「アフ
リカでは、罰則、特に罰金はよほど深刻
な事件に対してしか受入れられない。不
法投棄に対しては、まず教育や啓発によ
って改善を図るべきで、罰則は最後の手
段ではないか。」という意見が挙げられ、
アフリカとアジアでは、法や罰則に対す
る考え方の違いが見受けられました。
廃棄物処理における行政と住民との関
係を理解してもらうことを目的に、自治
体における廃棄物処理条例の中から、住
民等の責任や義務にかかる規定や処理手
数料の徴収方法に関する講義が行われま
した。
住民の責務として、リサイクルの推進
が説明されましたが、研修員が特に関心
を持ったのは、廃棄物処理行政の財源・
予算に深く関係する処理手数料の徴収で
した。研修員からは、
「アフリカやアジア
の多くの都市では、年々増加する都市部
のごみ量に対して、税金の徴収が追いつ
かず、限られた予算で対応しなければな
らず、徴収方法は重要な課題である。
」と
の発言があり、
「東京における廃棄物処理
の費用はどのように回収されているの
か。
」という質問がされました。
それに対しては、有料処理券による事
業系ごみの収集手数料徴収が紹介され、
研修員の関心を呼びました。しかし、
「事
業系ごみの収集による歳入は廃棄物処理
の全体予算の約 3 割しかカバーしない。」
という説明がされると、財源の自立性の
重要性を指摘する意見も聞かれました。
こうした意見に対して、講師からは、
「ごみ収集を有料化するには反対意見も
多い。」との回答がなされ、公益性に対す
る考え方の違いが見受けられました。
▲有料ごみ処理券
2 月 5 日(午前):
2 月 5 日(午後):
ごみ処理と公害対策の歴史
東京におけるコンポストの取り組み
東京における廃棄物処理の進展経過を
理解することを目的に、東京23区にお
ける清掃事業の各時代の代表的な事例を
取り上げながら、東京におけるごみ処理
と公害対策の歴史に関する講義が行われ
ました。
まず、岡田係長からは、各家庭から直
接収集するドアツードア方式からステー
ション方式への変遷、分別収集の導入な
ど東京における清掃事業の歴史が紹介さ
れました。続けて、東京都の清掃局OB
で長年公害対策に取り組んできた須藤康
市氏から、公害対策の歴史に関して講義
がありました。
長年公害対策に取り組んできた自分は
「タフ・ネゴシエーター」として知られ
ていたとの須藤氏自身による紹介に、研
修員の期待は高まりました。須藤氏は、
公害対策の歴史を振り返り、一見確立さ
れたかのように見える東京の廃棄物処理
システムも、多くの実験や失敗を重ねた
結果であり、
「廃棄物処理システムの確立
においては、努力を継続する姿勢こそが
重要」であることを強調しました。
しかし、大量の水を使用する清掃工場
での公害対策が紹介されると、ダルエス
サラ−ムの研修員からは、
「飲み水を欠く
人がいる中で、公害対策に 4 トンもの水
を使うことはできない。より簡素で自分
の都市でも適用できる技術を知りたい。」
との意見が挙げられるなど、東京とアフ
リカにおける根本的な背景の違いを改め
て認識させられる場面もありました。
予算や人材、技術の限られた途上国で
は、より安価で各地域の技術レベルに即
したシステムの導入が求められており、
研修員からも、より簡素な技術を紹介し
て欲しい。
」という要望が出されたことを
受け、東京におけるコンポストの取り組
みを紹介することになりました。
東京においては、生ゴミ自体が少ない
こと、また、農地が限られた東京ではた
い肥の需要自体が少ないことなどから、
コンポストは東京ではあまり定着しなか
ったことが報告されました。
一方、研修員からは、
「ごみのほとんど
が生ごみで、たい肥の需要もある途上国
では、ごみの減量化の手段としてコンポ
ストはより重要視されている。
」との声が
挙げられ、それぞれの取り組みを聞くこ
とになりました。
ラゴスとアクラでは、たい肥の需要は
あるものの、たい肥の商品化や市場への
運搬が効果的に行われていないために、
コンポスト化はあまり進んでいないこと
が報告されました。コンポスト化を推進
普及のためには、たい肥の市場流通化が
重要であることが確認されました。
バンコクでは、1日に 1200 トンを処理
する施設があり、新たに建設される施設
もあるなど、コンポストがごみの減量化
にとって重要な役割を果たしていること
が報告されました。
須藤氏からは、コンポストの普及には、
小規模で取り組むのがよいこと、たい肥
の市場流通化が重要であるとの指摘があ
りました。また、良質のたい肥を作るに
は、生ごみの構成を分析し、有害物質を
取り除くことが重要であるとのアドバイ
スが挙げられました。
バンコクからは、有害廃棄物の増加、
中間処理施設建設に対する住民の反対な
シティーレポート報告
どが問題として挙げられました。研修員
2 月 6 日は、各都市による廃棄物処理を
からは、ドアツードア方式で手数料を回
学ぶために、それぞれの都市の現状が報
収していること、中間処理を行っている
告されました。
ことに特に関心が寄せられました。
アディスアベバについては、最終処分
ダルエスサラ−ムの研修員からは、近
場として使用されている地域の周りに住
年収集事業の民営化が進められ、効率が
宅が立ち始め、地域住民からごみ収集車
挙がるなどの利点はあったものの、スラ
の通行が阻止されるなど、反対が強いこ
ム地域での収集が放置されていることな
とが報告されました。
どが報告されました。こうした問題に対
する監督の必要性が他の研修員からも指
摘され、民営化における行政の役割のあ
り方について討議がされました。
クアラルンプールからは、収集から最
終処分までのすべての過程を民営化した
ことで、効率性や財政が向上したことが
報告されました。クアラルンプールのよ
うにすべての処理の過程を民営化し、か
つ、かつ高い水準を維持している都市は
他にあまり例はなく、クアラルンプール
▲報告をするアディスアベバの研修員
の民営化は研修員の大きな関心を呼びま
アクラについては、収集における民営
した。しかし、他の都市と同様に、行政
化が進んだ結果、収集の効率は向上した
の役割である最終処分場の確保は依然問
ものの、行政の役割であるリサイクルの
題として残っているとの報告がありまし
徹底は十分に行われていないとの報告が
た。
ありました。
ナイロビに関しては、収集活動の一部
ラゴスについては、人口の急激な増加
が民営化されているものの、民間企業に
が進む一方で依然、収集車は全部で 100
よる収集は、高所得階層の地域に集中し、
台と不足しており、廃棄物処理の負荷が
大きくなっていることが報告されました。 スラム地域と中心部から離れた地域にお
ける収集が十分に行われていないことが
しかし、ごみ発生量に対する収集率が
報告されました。その他には、最終処分
70%であることが報告されると、そうし
場の確保と手数料徴収の不備が問題であ
た条件の割に対して高い収集率を保持し
ることが挙げられました。
ていることに対して、賞賛の声も挙げら
ナイロビのみでなく、最終処分場の確
れました。
保、手数料徴収の不備、スラム地域にお
ジャカルタについては、近年衛生埋め
ける収集の遅れは、程度の差はあるもの
立て施設の整備が進んだものの、処分場
の、発展途上国においては、総じて共通
の拡張における住宅地との接近や、処分
した問題であることが確認されました。
場におけるスカベンジャーの扱いが、問
題であることが報告されました。
2 月 6 日:
2 月 7 日(午前):
2 月 7 日(午後):
最終処分について
破砕処理施設
環境保全対策や最終処分に関する作業
を理解することを目的に、最終処分場の
処理の流れや環境保全対策に関する講義
が行われました。
処理の流れでは、土を何重にもかぶせ
る「サンドイッチ方式」を採用すること
により、ごみの飛散、害虫発生、火災発
生、ごみの臭気拡散の防止が図られてい
ることが説明されました。
また、環境への負荷の軽減のために、
中間処理段階でのごみの資源化の取り
組みを理解するため、粗大ごみと不燃ご
みを処理する中央防波堤処理施設を視察
しました。研修員は、まず処理施設管理
事務所野島所長より挨拶を受け、
「環境問
題は、一都市に限らない世界共通の課題
である。
」との言葉に熱心に耳を傾けまし
た。
挨拶の後、破砕→選別→売却又は埋め
立てという一連の処理の過程について講
義を受け、続けて、破砕機、鉄貯留ヤー
ド、アルミ貯留ヤード、粗大ごみ荷降ろ
し場を視察しました。
研修員は、収集車が順序よく入場し、
ごみを処理していく様子や、破砕と選別
の過程を複数のスクリーンで監視する中
央制御室を特に熱心に視察し、
「ごみの含
水率」や選別の方法について質問しまし
た。
埋立て地内から発生するガスを発電に利
用したり、浸出水の処理水を、ごみが舞
い上がらないようにするために行われる
場内の散水に使用していることが説明さ
れました。
この他、1960 年代にはごみはそのまま
の形で埋められていたものの、処分場の
容量が限界に近いことから、現在ではご
みを焼却、または破砕することによって、
埋める体積が減らされていることが説明
されました。
研修員からは、
「最終処分場が一杯にな
った後の処分方法」について質問がされ、
さらに、
「リサイクルをいくら推進しても
ごみは発生するということをどう考える
のか。」という踏み込んだ質問もされまし
た。他には、
「メタンガスによる発熱の利
用法」
「排水の際の規制値」などについて
の質問が挙げられました。
▲中央制御室を視察する
また、選別後、実際にヤードに並べら
れたアルミと鉄の塊かたまりを目にする
と、
「ごみが資源になることを改めて実感
した。
」との感想が挙げられました。
2 月 10 日(午前):
2 月 10 日(午後):
板橋区における廃棄物処理
板橋区における住民協力
東京の廃棄物処理におけるより具体的
な取り組みを学ぶため、環境問題に熱心
な板橋区を訪れ、板橋区における廃棄物
処理と特に住民協力についての講義を受
けました。
講義では、板橋区の概要、循環型社会
形成に向けた政策、処理の流れなどが説
明されました。
すでに一週間ほど東京における廃棄物
処理に関して講義を受けてきた研修員の
質問はより具体的になり、
「ごみの発生量
が減っているのは、どの種類のごみが減
っているためか。」「リサイクルできない
ごみにはどのようなものがあるのか。」
「事業系ごみでシールが張られていない
ものはどうするのか。」「ごみの発生量が
減っているのは、人口の減増と関係ある
のか。」「ごみ発生量の計算方法は。」「回
収率が高いのは何故か。」などが挙げられ
ました。
研修の目的である住民協力についての
理解を深めるため、この分野に関して実
績のある板橋区の取り組みについて講義
を受けました。
講義では、住民協力会や環境行動委員
会の設立、懇談会や見学会の実施、収集
員によるごみ排出の検査・指導、清掃局
による表彰などの実施を通じて、官民パ
ートナーシップの強化が図られているこ
とが紹介されました。また、高齢者や障
害者の人を対象に、ごみの排出を行うサ
ービスも紹介されました。
講義の後半では、各地域でリサイクル
活動を推進する「リサイクル推進員制度」
、
買い物の際に自分の袋を持参することを
推進する「マイバッグ運動」や環境に優
しい商店を認定する「板橋エコシップ制
度」などが紹介されました。
研修員は、特に官民パートナーシップ
のあり方に関心を持ち、
「リサイクル推進
員と行政の関係」や「環境行動委員会の
メンバーへ報酬は払われるのか。
」などの
質問が挙げられました。
その他には、
「乾電池の処理の方法」
「発
砲スチロールのリサイクル方法につい
て」「なぜビンの回収率が高いのか。」な
どの質問が挙げられました。
また、ダルエスサラ−ムの研修員から
は、都市におけるロバなどの動物による
「落し物」も廃棄物処理の重要な課題で
あるとの報告もあり、途上国における清
掃事業の問題の複雑さが確認された一幕
もありました。
▲区長による挨拶
2 月 11 日(午前):
2 月 11 日(午後):
収集・運搬現場視察
収集作業計画策定手法
リサイクルの推進に不可欠である分別
排出の徹底などの住民協力と、都市部に
おける計画的な作業形態を学ぶために、
収集現場を視察しました。まず研修員は、
板橋区東清掃事務所を訪れ、朝礼と腰痛
防止のための体操を見学しました。体操
を終え、所長一同に見送られて一斉に出
動する収集車を見た研修員は、
「朝礼や体
操は作業員の士気を高めるのに大きく役
立っていると思う。ジャカルタでも導入
したい。
」との感想を述べていました。
収集現場の視察を踏まえ、収集作業計
画の策定手法について講義が行われまし
た。
まず、板橋区における近年のごみ量の
推移、一日あたりのごみ収集などの基本
背景が紹介され、曜日別収集マップの作
成や収集運搬計画の基準について説明が
ありました。講師からは、リサイクルの
推進のためには、分別収集が不可欠であ
ることから、収集計画はごみ種類別の収
集を前提とすることが特に重要であると
の指摘がありました。
研修員からは、
「収集員のシフトについ
て」「収集車の稼動時間」「一日あたりの
各車両の最大走行距離」
「収集員の勤務評
価方法」「収集員に対する研修」「収集車
一台あたり何往復するのか。」といった質
問が挙げられました。
また、男性のみの収集現場を視察した
女性の研修員からは、
「ナイロビでは廃棄
物処理に多くの女性も関わっているのに、
なぜ、日本(東京)では、女性が収集作
業にかかわっていないのか。」といった質
問もなされました。
▲一緒に体操をする研修員
続けて、研修員は、収集車に先回りし
て、集合住宅や商店街における収集現場
を視察しました。研修員は、収集車が持
ち上げることができるようにデザインさ
れたコンテナに関心を示しました。また、
「ごみ集積所の管理方法」
「一世帯あたり
の排出量」について質問しました。
研修員は、収集現場を視察した後、粗
大ゴミ集積所と三園中継所を訪れました。
「粗大ごみ」の中には、まだまだ使える
ものもあり、研修員からは「自分の国で
はあれはごみではない」との声が多く挙
げられました。三園中継所では、ごみの
処理過程で生じる汚水の処理方法につい
ての質問が挙げられました。
▲収集現場視察
2 月 12 日(午前):
2 月 12 日(午後):
中間処理と環境対策
エコポリスセンター環境教育
中間処理の主要な形態の一つである焼
却技術と環境対策について学ぶため、世
界でも有数の処理能力を誇るとされる新
江東清掃工場を視察しました。
まず、工場長から、焼却能力など清掃
工場の構造とそのメンテナンス、安全対
策及び排ガス、汚水処理や余熱利用など
の環境対策について講義を受け、続けて、
処理の流れについてのビデオを鑑賞しま
した。研修員は、ISO 認証を受けている環
境対策に特に関心を持ち、説明に聞き入
っていました。
午後は、板橋区の環境教育の取り組み
を学ぶために、エコポリスセンターを視
察しました。
楽しみながら環境問題を学べるコンピ
ュータゲーム、ガイドと共に生態系につ
いて学べるシュミレーション・ツアーに
参加したり、形式のビデオなどを実体験
したり、着物のリサイクルや、コンポス
トを推進している市民グループなどの活
動、太陽光発電施設を見学しました。
また、区民が傘や鍋といった日常品を修
理によって長く使えるようにするための
「リサイクル工房」を見学し、バンコク
の研修員からは、「3Rに Repair も含め
よう。
」との意見が挙がりました。
視察の最後には、研修員自らダイオキ
シンの含有の有無を調べる実験や、ごみ
の魚への影響を調べる実験に参加し、環
境教育の参加型手法を実体験しました。
▲工場の素材について説明を受ける
余熱利用は、環境対策としてのみでは
なく、電力会社への売却を通じた収入手
段にもなっていることから、財源確保の
手段としても研修員の大きな関心を集め、
ナイロビの研修員は、
「どれ位の発熱量で
発電が可能なのか。
」と質問し、ごみの含
水率が高いアフリカにも適用可能かどう
▲実験に参加する研修員
か熱心に質問をしていました。
また、工場とヨット型にデザインし、
海辺に近い周辺環境との調和を図る対策
も、研修員の関心を呼びました。その他
には、研修員からは、重金属の処理方法
についてなど、技術上の質問が挙げられ
ました。
2 月 13 日(午前):
2 月 13 日(午後):
施設建設時の住民合意形成と環境影
響評価手続き
東京の廃棄物処理の課題と展望
施設建設の際に環境に配慮し、また地
域住民からの理解と同意を得るために、
環境影響評価手続き(EIA)を学びました。
まず、EIA に関する条例、実施主体、手
続きの流れについて説明を受け、東京に
おける取り組みを学ぶために、長年住民
と行政との間で闘争があった杉並の事例
が取上げられました。
EIA は建設業者の責務であるとする東
京の規定に対して、
「EIA は、行政が行う
方がいいのではないか。」「訴訟に持ち込
まれるケースはあるか。」
「最終報告書は、
住民へ配布されるのか。」施設建設地の選
定の基準についてなどの質問が挙げられ
ました。
近年東京では EIA の一連のプロセスに
平均して 3 年ほど費やし、また一つの施
設建設に際して、行政は説明会などを通
算 100 回ほど開催するという説明に対し
ては、その努力を評価する声が挙がった
一方で、ラゴスの研修員からは、
「アフリ
カでは、その間に政変があるかも知れな
い。」
、また、ナイロビの研修員からは、
「開
発援助機関の資金供与を申請する際には
90 日で EIA を済ませなければならない場
合もある。
」など、とても 3 年間もかけら
れないとの意見が挙げられました。
クアラルンプールの研修員からは、
「最
終処分場などは国有地を使用してきたた
め、今までは EIA の必要性が認識されて
こなかった。」との意見も挙げられ、住民
合意の必要性に対する認識の違いも明ら
かになりました。
9 日間にわたって東京の廃棄物処理行
政を学んだことを踏まえ、東京における
廃棄物処理の課題と展望についての講義
が行われました。
課題としては、他の都市と同様に、最
終処分場の容量が限界に近いことが挙げ
られ、今後は、リサイクルの取り組みの
みでなく、焼却灰等を超高温で加熱させ、
溶融した後に冷却することにより固化さ
せるスラグを道路建設に利用することな
どを進めていくことが報告されました。
また、複数の自治体が都道府県域を超え
て共同で利用する処理場を整備し、広域
的に廃棄物の処理を行う「フェニックス
計画」が検討されていることなどが紹介
されました。
さらに、行政機関の施設建設の際にリ
サイクル資材の使用を義務づけるなど、
リサイクルをより積極的に推進するため
の法体系の強化などが今後の課題である
との説明を受けました。
最後には、講義で質問が挙げられたも
のの講義内で十分に回答できなかった質
問に対しての回答がなされ、廃車の扱い
や、先進国から輸入されたものの、その
処理方法が複雑で、途上国での廃棄の扱
いが問題になっているコンピュータや携
帯電話の処理方法などの説明がありまし
た。
2 月 14 日(午前):
バイザーからは、スラム地域や遠隔地域
ポストトレーニング・アクションプラ
ン発表①
など収集が困難な地域においては、住民
による集積所までのごみ運搬を徹底する
必要があることが指摘されました。
研修員は、東京での研修をどう各都市
の廃棄物処理に役立てるかというポスト
トレーニング・アクションプランの発表
行い、発表後は、アドバイザーから計画
実施における留意点についてのアドバイ
スをもらい、他の研修員と共に計画ぬつ
いての討議を行いました。
アディスアベバからは、住民の意識啓
発の強化を目的に、行政組織内に担当部
署と地区レベルにおける教育センターの
立ち上げが発表されました。
アドバイザーや研修員からは、
「意識啓
発はすべての環境事業にとっての基礎で
ある。」とその重要性は指摘されたものの、
「教育センターなどを立ち上げなくとも、
学校を利用できるのではないか。」「意識
啓発を目的としながら、人材育成や教育
資材についての計画が含まれていない。」
などの指摘が挙げられました。
ダルエスサラ−ムからは、収集率の向
上、住民協力の強化、手数料徴収率の向
上、環境教育の強化などが計画として報
告されました。
アドバイザーやその他の研修員からは、
計画の焦点がなく、また、向上の程度を
測る指標がないとの指摘もありました。
一方、ダルエスサラ−ムの廃棄物処理に
関わったことのあるアドバイザーからは、
かつて 16%だった収集率が 36%に向上し
ていることなどが評価されました。
続いてアクラからは、収集率向上のた
めに、人口区分などの把握、、リサイクル
の拠点となり得る学校や商店や家庭など
の特定、リサイクル推進委員会の設置な
どの計画が発表されました。
アドバイザーや研修員からは、それら
の実施予定期間が 2 週間など短期間に設
定されているので、より現実的な期間の
設定をするべきだとのアドバイスがあり
ました。
▲発表するダルエスサラ−ムの研修員
ナイロビからは、リサイクルの強化が
目標として挙げられ、具体的にはリサイ
クル支援政策の策定、収集センターや収
集中継所の設置、教材の開発を含む啓発
活動の実施などが発表されました。アド
▲ 発表に聞き入る研修員
ジャカルタからは、現在スカベンジャ
ーによって行政の管轄外で行われている
ポストトレーニング・アクションプラ
リサイクルを組織的に行い、リサイクル
ン発表
を雇用創出や有効資源化につなげたいと
の発表がありました。具体的には、市場
ラゴスからは、ごみの再利用によるご
流通化を通じたコンポストの強化や、大
みの資源化が目標として発表され、具体
学や市民グループによるリサイクルの取
的には、コンポスト施設の設置や、ごみ
り組みを支援する官民パートナーシップ
の分別を行う収集中継所の建設が計画と
強化によりを強化することが計画として
して発表されました。
挙げられました。
アドバイザーからは、リサイクル製品
アドバイザーと研修員からは、より絞
の不純物含有率を低くすることをはじめ、
り込んだ具体的な計画を立てることがア
公衆衛生の向上のためにも、分別の徹底
ドバイスされました。
が廃棄物処理の全ての基本であるとの指
クアラルンプールからは、現在4%の
摘がありました。
リサイクル率を 2020 年までに、22%に上
バンコクからは、リサイクルと分別収
げることが計画として発表されました。
集の徹底などが計画として発表されまし
アドバイザーや研修員からは、今までの
た。そのための啓発教育として板橋区の
リサイクル取り組みの問題点についてと、
エコポリスで視察したゲーム型の環境教
現在の民営化のメリットとデメリットに
育の導入や、リサイクルには同じくエコ
ついて質問が挙げられました。
ポリスセンターでの修理の取り組みから
民営化については、東京研修後の 2003
からヒントを得た 4R(Reduce, Resuse
年 3 月にクアラルンプールで実施される
Repair and Recycle)の推進が計画され
テーマとして詳しく説明されることが説
るなど、東京での視察内容が計画に取り
明され、研修員は早くも次回の研修に対
組まれる形になりました。
しての意欲を新たにしました。
アドバイザーからは、ドアツードア方
発表の中には、計画が絞られていな
式による徴収方法を啓発活動につなげて
いものもありましたが、互いの取り組み
みればどうかといったアドバイスがあり
について活発な討議が行われ、情報共有
ました。
によって学習効果をあげるという南南協
力が効果的に行われました。
2 月 17 日(午前):
▲手数料徴収についてアドバイスを受ける
4. その他のプログラム
4‑1. レセプション
2 月 5 日夜には、スクワ−ル麹町(千代
田区)でレセプションが行われました。
研修員は、東京国連協力事業運営委員
会会長に迎えられ、挨拶を受けた後、研
修の協力団体である東京二十三区清掃一
部事務組合と板橋区の関係者と歓談を楽
しみました。
また、研修員から、研修の準備や実施
に対して感謝の意が述べられ、アディス
アベバの研修員から、東京二十三区清掃
一部事務組合の研修担当者にエチオピア
の壁掛けが贈呈されました。研修員によ
るダンスや歌の披露もありました。
日本に到着後、すぐに研修に参加した
研修員同士にとっても、互いを知る機会
になり、研修から離れてリラックスした
一時を過ごしました。
4‑2.ホームビジット
2 月 9 日、板橋区の協力により研修員は
板橋区の家庭を訪問しました。
研修員は地下鉄を利用して板橋区役所
に集合すると、それぞれの家庭に移動し
ました。家庭における分別の仕方を説明
してくれた家庭もあり、
「プラスチックや
ビンなど分別が徹底していることが印象
的だった。」また、「分別が実際に家庭で
徹底されていることを見れたので、より
理解が深まった。」と感想を述べる研修員
もいました。
また、おいしい家庭料理でもてなして
くれたり、浅草や池袋などを案内してく
れた家庭もあり、
「暖かいもてなしを受け、
また日本についても学ぶことができた。」
と研修員は大変満足した様子でした。
▲ ナイロビの研修員と受入れ家庭
▲
プレゼントを贈呈する研修員
▲ 歌を披露する研修員
▲ クアラルンプールの研修員と受入れ家庭
4‑3. 板橋区長表敬訪問
5. 研修評価
研修後には、今後の研修の向上のため
2 月 10 日は、板橋区長を表敬訪問しま
した。
研修員は、板橋区役所に到着すると、
玄関で区役所職員一同による出迎えを受
け、会議室に移り、板橋区長を表敬訪問
しました。
石塚区長より、
「環境問題は、世界共通
の重要課題であり、板橋区の取り組みが
参考になれば嬉しい。
」との挨拶を受ける
と、研修員からは、研修への協力に対す
るお礼が述べられ、
「是非東京で学んだこ
とを活かしたい。」とのスピーチが述べら
れました。
また、東京の印象について聞かれると、
「東京のような大都市でもごみが落ちて
いないことが印象的だった。」、
「ナイジェ
リアには、日本の車など多くの日本製品
が輸入されており、高い技術力を持つ日
本には常々関心を持っていた。
」、
「アフリ
カでは、戦後、経済復興を遂げた日本の
技術について大きな関心がある。」「タイ
と日本との繋がりは様々な分野で多くな
っており、日本の文化についても興味が
あったので、日本の家庭を訪問できてと
ても嬉しかった。」など、研修員からは、
廃棄物処理の分野だけでなく、日本につ
いても学びたいとの意欲が述べられまし
た。
に、研修に対するアンケートが行われま
▲区役所職員一同に迎えられる研修員
▲スピーチを行う研修員
した。研修員による評価は以下の通りで
す。
5‑1.全体評価
研修の目的は達成され、研修に対する
期待をほとんど満たす内容だった。研修
の範囲や研修の運営管理も適切であった。
東京研修において紹介された技術には、
途上国の都市に即時に適用することが難
しいものもあったが、東京の3Rの取り
組みと住民協力について学べたことは、
非常に有益であった。また、研修員が非
常に意欲的で、質問や意見の発表が活発
にされたことで、情報共有によって学習
効果をあげるという南南協力が効果的に
行われた。エコパートナーシッププログ
ラムで実施される予定の研修の中での第
1回目の研修であり、プログラムのスタ
ートのために大きな一歩を記した。研修
の目的達成に関しては、平均71%の高
い満足度が得られた。
5‑2‑1.研修内容について
(1) 有益だったトピック
ごみの3R(減量化、再利用、リサイ
クル)の取り組み、住民協力(特にごみ
の分別排出)とそのための意識啓発が有
益だった。その他、板橋区における住民
協力のケーススタディ、中間処理(焼却)、
施設建設の際の合意形成と環境影響評価、
排出者負担による処分手数料の収集方法、
板橋区における環境教育の取り組みも有
益だった。
(2) 付け加えてほしいトピック
官民パートナーシップ、日本の歴史、
中継所の管理・運営、手数料の徴収方法、
議スタイルが重視されたことで、講師
民営化など。
やアドバイザーと研修員間との理解
が深まっただけでなく、研修員の間で
5‑2‑2. 参加都市への適用可能性
研修全体は満足だったが、参加都市へ
の相互理解と情報共有が効果的に行
われた。
の適用という意味では足りない点もあっ
(3) 8都市が研修に参加したことで、各都
た。典型的な事例としては、各参加講師
市の廃棄物処理を比較し、分析する貴
はそれぞれの担当分野における経験や知
重な機会となった。
識が豊富であるにも拘わらず、それらが
(4) UNDPによる資金供与は、単に研修
参加都市の事情にどう適用されうるかを
に参加するのみでなく、研修で学んだ
問われた場合に、十分な回答をすること
ことを計画の実施に繋げるための、イ
ができなかったことがあった。廃棄物処
ンセンティブとなった。
理に関する技術・設備の紹介は東京研修
(5) 東京研修の後も他都市での研修が予
の直接的な目的ではなかったものの、よ
定されているということで、プログラ
り安価で持続可能な技術の紹介があれば
ムへの参加動機と継続による効果が
もっとよかった。
高められている。
(6) 中間処理に関しては、アフリカの都市
5‑2‑3. 時間配分
全体的に、講義と討議、視察の時間配
にとっては即時に適用できる技術で
はないかも知れないものの、東京は焼
分は適切だった。
却処理の技術を紹介できる数少ない
日本鋼管伺う
都市の一つであり、東京研修はその意
5‑2‑4. その他
味でも重要な意味をもった。
(1) 逐次通訳によって生じる「時間差」
のため、集中力を保つのが難しかっ
5‑3‑2. 改善されるべき点
た。
(1) いくつかのポストトレーニング・アク
(2) 化学の知識を持たない行政管理分野
ションプランに関しては、内容が絞ら
の研修員にとっては、理解するのが
れていないものもあった。特に、計画
難しい講義もあった。
の実施に伴う地道で時間のかかる作
(3) 討議を何人かのグループに分けて行
えばより活発になったのではないか。
業を、誰がどのようにして行うかとい
う点に関しては、特に議論を深める必
要がある。
5‑3.
アドバイザーによる評価
(2) 日本の経済力を想起するためか、東京
5‑3‑1. 評価できる点
の廃棄物処理技術やシステム確立の
(1) 研修員が非常に意欲的で、質問や意見
背後にあった実現までの苦労、および
の発表が活発に行われた。
(2) 一方的な講義のみでなく、双方向の討
その継続の苦労が十分に伝わらなか
った部分もある。
(3) 一部の講義においては、理論と実務が
については、統一された形式でデータ
効果的に統合されたとは必ずしも言
が記載されることが好ましい。また、
えない。
定量的な事項は、表形式にまとめ、一
(4) シティレポートの発表においては、統
一書式が各都市に事前に配布されて
いたにもかかわらず、提出されたもの
覧で各都市が比較できるようにする
とよい。
(3) システム確立までの過程を強調する。
は記述内容にばらつきがあったため、
廃棄物処理に関する技術やシステム
各都市の状況を比較するのが容易で
を紹介する際には、そうしたシステム
なかった。
が確立されるにあたって、なぜそのよ
うな努力や戦略がとられてきたかと
5‑3‑3. その他
いう過程を理解しやすいような方法
(1) 廃棄物処理に関する基本的な設備や
で紹介する必要があるだろう。そうし
実施状況において、アジアとアフリカ
た視点を強化し、かつ、研修員の意欲
の間には、
「ギャップ」が見られた。
を促すためにも、研修主催都市も参加
(2) 研修の早期の段階においてコンポス
都市と同じ課題に長年直面してきた
トに対する関心が高いことが窺われ
ことが強調されることが望ましい。
たので、研修員の関心に応えるために、 (4) ポストトレーニング・アクションプラ
講義の一部がコンポストに対する取
ンの実効性を高める。ポストトレーニ
り組みに振り替えられることになっ
ング・アクションプランをより実施可
た。
能なものにするために、より具体的な
テーマを設定しておくことも一案で
6. 今後の研修への提言
ある。例えば、まず、研修員の間で関
(1) スケジュールに柔軟性を持たせる。
心の高いスラムでの収集について、実
前述したように、研修中には、研修員
施例のあるバンコクでの取り組みを
から予定された講義や視察以外の点
学ぶ。次に、研修員にそうした講義と
についても質問や要望が挙げられる
視察を踏まえた上で、各都市に対する
可能性が高い。従って、研修員の要望
適用計画をポストトレーニング・アク
に十分に応えられるよう、研修内容に
ションプランとして発表してもらう。
は十分な柔軟性を持たせる方が良い
最後に、討議を通じてアドバイザーと
であろう。
研修員からフィードバックをもらう
(2) 比較統計資料を用意する。相互理解の
という方法で、問題解決手法をより効
効果を高めるために、比較を効果的に
果的に学ぶことができるのではない
行うための統計資料が必要となろう。
か。
従って、シティレポートには、課題や
(5) 追加されたほうが良いトピック。排出
取り組みは文章でよいが、定量的な事
者負担手数料によるコスト回収シス
項(人口、ごみ発生量、収集率など)
テム、スラムや遠隔地における収集率
の向上に対する関心が高い。今後の研
修には、このテーマも取上げられるの
が好ましい。
(6) 持続可能な技術を紹介する。研修にお
いては、安価でローテク、持続可能な
技術が紹介されるべきである。