組換え植物の野外試験 1986−1992の分析

組換え植物の野外試験
1986−1992の分析
前書き
本 報 告 書 は 、 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー に お け る リ ス ク / 安 全 評 価 に 関 連 し た 概 念 と 原 則 につ
い て 、 長 年 に わ た っ て 継 続 報 告 を 責 任 を 持 っ て 進 め て き た OECD バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー 安
全 性 専 門 家 グ ル ー プ ( GNE) の 作 業 プ ロ グ ラ ム の 一 部 と し て し た た め ら れ た も の で あ る 。
GNE で は 、 英 国 の ダ グ ラ ス ・ ガ ナ リ ー 氏 ( Mr. Douglas Gunary) に よ り 1992 年 に 行 わ
れ た 野 外 試 験 の 調 査 と 分 析 を 承 認 し た 。 1992 年 末 ま で の 、 OECD15 力 国 の 1185 ヶ 所 の
野 外 試 験 地 点 数 を 含 む 864 件 の 野 外 試 験 許 可 に 関 す る 情 報 が 収 め ら れ て い る 。
多 く の 時 間 を 費 や し 、 ま た 調 査 に 必 要 な 情 報 を 提 供 し て く だ さ っ た 各 国 の レ ビ ュ ー 担当
部署の多くの方々に感謝します。
本 報 告 書 は 、 OECD ま た は 加 盟 各 国 政 府 の 個 々 の 意 見 を 十 分 に 反 映 し て い る と は い え
ないかもしれませんが、事務総長の監修のもとに出版されるものです。
要
約
本 報 告 書 は 、 OECD 科 学 技 術 工 業 局 の 要 請 に 答 え て 、 遺 伝 子 改 変 植 物 ( 本 報 告 書 に お
い て 述 べ る 植 物 は 、 実 際 上 は 全 て 組 換 え 植 物 で あ る の で 、 以 後 、 こ の 2 つ の 用 語 は 互 換的
な も の と 解 釈 さ れ る ) の 野 外 試 験 に 関 す る バ イ オ セ イ フ テ ィ 情 報 の 収 集 と 分 析 を 行 っ たも
の で あ る 。 本 報 告 書 で は 、 1986 年 の 最 初 の 野 外 試 験 以 来 、 864 件 の 申 請 許 可 件 数 と 1180
ヶ 所 以 上 の 野 外 試 験 実 施 地 点 数 に 関 し て ま と め ら れ て い る 。 1988 年 以 来 許 可 件 数 は 、 毎
年ほぼ倍増している。
OECD 加 盟 15 ケ 国 か ら 得 ら れ た 情 報 を も と に 、 30 種 の 宿 主 作 物 と 、 10 種 の 形 質 に 関
し て 詳 細 な 分 析 を 行 っ た 。 油 糧 種 子 用 ナ タ ネ 、 バ レ イ シ ョ 、 タ バ コ 、 ト マ ト 、 及 び 最 近は
ト ウ モ ロ コ シ 、 ダ イ ズ が 最 も 普 通 に 用 い ら れ る 宿 主 作 物 で あ る 。 除 草 剤 耐 性 、 ウ イ ル ス抵
抗性、昆虫耐性が最も用いられる形質であり、除草剤耐性がより大きな割合を占める。
宿 主 及 び 導 入 遺 伝 子 の 特 性 か ら 予 測 さ れ る 通 り 、 組 換 え 植 物 の 生 態 に は 何 ら 驚 く べ き点
はなかった。予想外の事柄は、導入遺伝子の発現レベル範囲に関するもののみであった。
最 も 重 要 な バ イ オ セ イ フ テ ィ 関 連 の 情 報 は 、 野 外 試 験 し た 組 換 え 植 物 を 確 実 に 生 殖 的隔
離 す る た め に 工 夫 さ れ た 取 扱 い 方 法 の 有 効 性 に 関 す る も の で あ る 。 虫 媒 性 作 物 に 対 し て は、
隔 離 の 有 効 性 は 、 野 外 試 験 地 点 の 周 囲 に 非 組 換 え 作 物 の 緩 衝 帯 を 用 い る こ と で 、 大 い に助
長される。
花 粉 媒 介 昆 虫 、 土 壌 微 生 物 及 び 後 植 え の 作 物 の 生 長 に 対 す る 作 物 残 査 の 影 響 に 関 す る非
常 に 限 ら れ た デ ー タ の 評 価 か ら は 、 組 換 え 作 物 と 非 組 換 え 作 物 間 の 違 い は 見 い だ せ な かっ
た。
野 外 封 じ 込 め で は 、 直 接 的 な 野 外 試 験 地 点 以 外 へ の 環 境 影 響 に つ い て の 結 論 を 引 き 出す
ことは不可能であることを意味している。
バ イ オ セ イ フ テ ィ に 関 し て 表 明 さ れ た 懸 念 の 本 質 は 、 個 々 の 国 の 状 況 に 影 響 を 受 け てい
る 。 多 く の 国 に よ っ て 表 明 さ れ た 関 心 事 項 は 除 草 剤 耐 性 に つ い て で あ り 、 ま た 病 害 虫 の攻
撃 を 減 少 さ せ る た め に 開 発 さ れ た 導 入 形 質 の 広 範 な 使 用 に よ る 、 病 害 虫 の こ れ ら に 対 する
抵抗性獲得のリスクである。
実 際 の 農 業 に 組 換 え 植 物 が 用 い ら れ る 時 に は 、 こ れ が 、 封 じ 込 め ら れ た 状 態 の ま ま であ
る こ と は ほ と ん ど あ り 得 な い 。 今 後 の バ イ オ セ イ フ テ ィ に 関 す る 懸 念 は 、 こ の 点 で 、 わず
かな限られた知見しかない形質に焦点が絞られて進められていくであろう。
1.序 文
本 報 告 書 は 、 1990 年 12 月 の バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー の 安 全 性 に 関 す る 専 門 家 グ ル ー プ
( GNE) で の 決 定 後 に OECD/ DSTI に よ り 委 託 さ れ た 研 究 に つ い て 述 べ た も の で あ る 。
要望事項:
a)研究プロジェクトは下記のような目的で委託される
― 組換え植物の野外試験に関するバイオセイフティ情報の取りまとめと分析
・宿主種の性質
・ 導 入 さ れ る 遺 伝 子 及 び 他 の DNA 塩 基 配 列
・組換え植物が導入される試験地の性質
・実験の安全性をモニターするための技術
― 各国の所轄機関から収集された情報について、バイオセイフティの観点からの情報分
析。各国ごとの主な懸念についての分類と比較
b)研究成果について、下記のような事柄が期待される
― 組換え植物の野外試験に関する、より完全データベース
― 分 子 生 物 学 の 研 究 に 対 し て モ デ ル ま た は 牽 引 者 と し て 利 用 さ れ て い る 、 植 物 、 遺 伝 子、
そ の 他 DNAの 塩 基 配 列 の リ ス ト 。 こ れ ら の 多 く の 実 験 の う ち い く つ か か ら 、 一 般 的
動態と効果に関する有用な結論が得られることが期待される。
― バイオセイフティの観点での懸念の主要ポイントのリスト、および実際にはあまり重
要ではないと考えられる細かな事項のリスト。これは、申請者が答えるべき質問をレ
ビューする際に役立つ。
c ) こ の 調 査 の 目 的 は 、 デ ー タ を 集 め る こ と に よ っ て 、 OECD と し て 組 換 え 植 物 の 野 外
試験のバイオセイフティに関する一般的見解をとりまとめるためのものである。
2.方
法
公 的 デ ー タ ベ ー ス か ら 得 ら れ る デ ー タ の 分 析 を 試 み た 結 果 、 公 的 情 報 源 か ら 要 求 し た形
式で情報を得るには、まだ早すぎるという結論を得た。
本 報 告 書 に 現 し た 情 報 は 、 OECD 加 盟 15 ヵ 国 の レ ビ ュ ー 担 当 団 体 メ ン バ ー へ の 一 連 の
訪問、インタビュー、およびこれらの国の申請者との討議の結果得られた。
訪 問 国 は 、 ベ ル ギ ー 、 カ ナ ダ 、 デ ン マ ー ク 、 フ ラ ン ス 、 ド イ ツ 、 日 本 、 オ ラ ン ダ 、 ノル
ゥ ェ ー 、 ス ペ イ ン 、 ス ウ ェ ー デ ン 、 ス イ ス 、 英 国 お よ び ア メ リ カ で あ り 、 さ ら に オ ー スト
ラリアとニュージーランドからも情報を得た。
最 初 の 訪 問 は 1992 年 5 月 12 日 で 、 最 終 訪 問 は 1992 年 11 月 5 日 で あ る 。
得られた情報は2種類である。第一は、訪問時までに許可された申請に対しての野外試
験 の 事 実 に 関 す る レ ビ ュ ー で あ る 。 第 二 は 、 野 外 試 験 が 実 施 さ れ た 結 果 得 ら れ た バ イ オセ
イ フ テ ィ の 経 験 で あ る 。 次 ペ ー ジ 以 降 、 組 換 え 植 物 の 野 外 試 験 、 宿 主 植 物 、 遺 伝 的 組 換え
の 事 実 に 関 す る レ ビ ュ ー に つ い て 記 さ れ て い る 。 次 に 、 こ れ ら 野 外 試 験 の バ イ オ セ イ フテ
ィの観点からの分析が続く。
報 告 デ ー タ は 、 訪 問 時 点 で の 最 新 の も の で あ る が 、 1992 年 の 北 半 球 に お け る 野 外 試 験
シ ー ズ ン の デ ー タ と み な す こ と が で き る 。 な お 、 オ ー ス ト ラ リ ア と ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド のデ
ー タ は 、 1992 年 12 月 の GNE 会 議 の 際 に 揃 っ た 。
3.野外試験についてのレビュー
組 換 え 植 物 の 野 外 試 験 許 可 は 、 様 々 な 地 域 で 行 わ れ て い る 。 そ の 申 請 許 可 手 続 き は 国ご
と に 異 な っ て お り 、 そ の 結 果 、 厳 格 な 意 味 で の 比 較 可 能 な デ ー タ を 集 計 す る の は 不 可 能な
状況である。国および状況に依存するが、一つの許可には、いろいろなケースがある。
― 1作物1試験地1年についての野外試験許可
― 1作物1複数特定試験地1年についての野外試験許可
― 1作物に関する複数不特定試験地複数年の野外試験許可
― 特定形質を共有する複数作物に関する複数試験地特定年数の野外試験許可
― 複数作物に関する複数試験地特定年数の野外試験許可
上 記 の よ う に 多 様 な 扱 い が な さ れ て い る 結 果 、 申 請 が 許 可 さ れ た 最 低 限 の 試 験 地 点 数し
か 明 確 に 特 定 で き な か っ た 。 以 下 の 表 は 、 与 え ら れ た 分 類 内 で 、 申 請 許 可 数 及 び / ま たは
最少試験地点数について推定数値を比較した。
申請許可についての全体的要約
許可された申請の概要を表 1 に示している。組換え植物を野外試験した試験地点数は、
1988 年 以 来 毎 年 ほ と ん ど 倍 増 し て き た こ と を 示 し て い る 。 同 じ デ ー タ は 、 付 属 資 料 図 1
及び2にグラフで示されている。
表1
許可年
年別、申請許可数のまとめ
許可
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
件数
1
9
37
69
147
208
393
合計
864
割合(%)
0.1
1.0
4.3
8.0
17.0
24.1
45.5
100.0
最少申請試験地点(推定)
試験地点数
割合(%)
1
0.1
12
1.0
44
3.7
79
6.7
189
15.9
307
25.9
553
46.7
1,185
100.0
国 別 の 申 請 許 可 の 概 要 ( 1986− 1992年 )
表 2 は 、 ア メ リ カ 及 び カ ナ ダ を 合 わ せ る と 、 許 可 総 数 の 72% お よ び 組 換 え 植 物 を 野 外
試 験 し た 試 験 地 点 総 数 の 67% に 達 す る こ と を 示 し て い る 。 ヨ ー ロ ッ パ で は フ ラ ン ス 、 ベ
ル ギ ー 、 及 び 英 国 で 許 可 総 数 の 約 80% を 占 め て い る 。 最 低 限 の 許 可 試 験 地 点 数 の デ ー タ
は 、 付 属 資 料 図 3に グ ラ フ で 示 し て い る 。
表2
国名
2国 別 、 申 請 許 可 数 の ま と め
許可
オーストラリア
ベルギー
カナダ
デンマーク
フランス
ドイツ
日本,
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
スペイン
スウェーデン
スイス
イギリス
アメリカ
件数
6
62
302
3
77
2
1
22
13
1
6
6
2
45
316
合計
864
割合(%)
0.7
7.2
35.0
0.3
8.9
0.2
0.1
2.5
1.5
0.1
0.7
0.7
0.2
5.2
36.6
100.0
最少申請試験地点(推定)
試験地点数
割合(%)
7
0.6
89
7.5
302
25.5
3
0.3
117
9.9
2
0.2
1
0.1
22
1.9
13
1.1
1
0.1
6
0.5
6
0.5
2
0.2
122
10.3
492
41.5
1,185
100.0
備考:カナダのデータには、突然変異による植物の作出実験が少数含まれるが、大部分は
遺伝子組換えにより作出されたものである。カナダのデータは、野外試験許可数を
表しており、野外試験地点数(複数地点での実験の可能性がある)を示すものでは
ない。
宿 主 作 物 別 の 申 請 許 可 に つ い て の 概 要 ( 1986− 1992年 )
表 3 は 、 30種 の 異 な る 種 類 の 宿 主 作 物 に つ い て 、 野 外 試 験 の 申 請 が 許 可 さ れ て い る こ
と を 示 し て い る 。 そ の う ち 、 7 種 類 だ け で 申 請 許 可 の 80% 以 上 を 占 め る 。 こ れ ら は 、 油
糧 種 子 用 ナ タ ネ ( OSR− カ ノ ー ラ を 含 む ) 、 バ レ イ シ ョ 、 タ バ コ 、 ト マ ト 、 ト ウ モ ロ コ
シ、アマ、ダイズである。野外試験地点数についても、宿主作物7種が、個々の試験地点
の 野 外 試 験 で 80% 以 上 を 占 め る 。 こ の 上 位 7 種 類 は 、 ア マ が ワ タ に 替 わ る 以 外 は 上 記 作
物と同じである。複数の宿主作物に対して1回で申請許可が何回かなされたこともある。
そ こ で 申 請 許 可 の 総 数 864件 は 、 単 一 作 物 ベ ー ス で 考 え る と 、 許 可 総 数 は 878件 に 達 す る 。
野外試験地点に関連する同じデータも、付属資料図4にグラフ形式で表している。
情報提供に完璧を期すために、各国所轄当局が申請許可した宿主作物別及び国別の許可
数について分析したが、この情報は付属資料表1にまとめた。
表3
宿主作物
宿主作物別、申請許可数のまとめ
許可
アルファルファ
サイフリボク
リンゴ
アスパラガス
ブロッコリ
カンタロープ
カーネーション
カリフラワー
チコリ
キク
トウモロコシ
ワタ
キュウリ
アマ
キュウイフルーツ
レタス
メロン
ナタネ/カノーラ
パパイヤ
ペチュニア
ポプラ
バレイショ
イネ
ダイズ
西洋カボチャ
テンサイ
ヒマワリ
タバコ
トマト
クルミ
その他
件数
21
1
1
1
1
14
1
2
5
3
65
37
3
49
1
1
4
290
1
2
6
133
4
40
13
28
2
72
72
2
3
合計
878
割合(%)
2.4
0.1
0.1
0.1
0.1
1.6
0.1
0.2
0.6
0.3
7.4
4.2
0.3
5.6
0.1
0.1
0.5
33.0
0.1
0.2
0.7
15.1
0.5
4.6
1.5
3.2
0.2
8.2
8.2
0.2
0.3
100.0
最少申請試験地点(推定)
試験地点数
割合(%)
26
2.1
1
0.1
1
0.1
1
0.1
1
0.1
29
2.4
1
0.1
2
0.2
7
0.6
5
0.4
107
8.8
85
7.0
3
0.2
49
4.0
1
0.1
1
0.1
4
0.3
357
29.4
1
0.1
2
0.2
7
0.6
181
14.9
4
0.3
100
8.2
28
2.3
36
3.0
2
0.2
91
7.5
73
6.0
2
0.2
6
0.5
1,214
100.0
導入形質別の申請許可についての概要
形質に関して集計した許可総数は、個々の作物別の記録数よりも多い。これは、宿主作
物1種類に1個以上の形質を導入したものの野外試験に対して、多くの申請が許可された
からである。これは、野外試験地点数についてもあてはまる。表4は、宿主作物に組み込
まれた形質ごとの野外試験件数を分析している。表4は、付属資料図5にグラフ化して示
している。
形質ではなくマーカー遺伝子の動態を調べた試験が多数行われたが、それ以上に、導入
形質とマーカーを一緒に用いた試験が多数行われた。現在まで許可された野外試験の導入
形質のうちで、除草剤耐性が野外試験件数で格段に多い。それに続く形質は、ウイルス抵
抗性、昆虫耐性、作物の品質、雄性不稔、耐病性の順である。
表4
形質別、申請許可数のまとめ
許可
件数
除草剤耐性
耐病性
ウイルス抵抗性
昆虫耐性
マーカー利用
品質形質
花色
研究目的
雄性不稔
ストレス耐性
重金属耐性
その他
合計
最少申請試験地点(推定)
割合(%)
試験地点数
割合(%)
489
35
115
89
382
72
5
18
39
9
3
1
38.9
2.8
9.1
7.1
30.4
5.7
0.4
1.4
3.1
0.7
0.2
0.1
685
56
144
134
442
81
7
19
61
9
3
1
41.7
3.4
8.8
8.2
26.9
4.9
0.4
1.2
3.7
0.5
0.2
0.1
1,257
100.0
1,642
100.0
表5
国別、各年ごとの申請許可数
各年の許可数
1986
1987
1988
1989
1990
1
1
4
5
9
19
2
3
3
18
36
1
22
1
オーストラリア
ベルギー
カナダ
デンマーク
フランス
ドイツ
日本
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
スペイン
スウェーデン
スイス
イギリス
アメリカ
合計
1
4
4
3
2
1
1
3
1
1991
1992
合計
1
15
53
1
24
1
1
9
1
5
14
189
1
23
2
1
12
131
5
62
302
3
77
2
1
22
13
1
6
6
2
45
316
393
864
1
5
2
17
6
26
12
50
2
1
12
87
9
37
68
147
208
13
1
1
許可の時間的な進展状況
表5、6及び7は、野外試験から得られた経験が国、作物、形質ごとの件数増加にいか
に関与してきたかを分析した。野外試験のバイオセイフティの側面についてのレビューか
ら予測されるように、理解について広がりと深さが増していることを、これらの表は示し
ている。国ごとの野外試験の進展は表5に、作物ごとは表6に、また形質ごとについては
表7に示されている。
主要作物と主要形質に対する進展状況は、付属資料の図6及び7にそれぞれゲラフで示
している。
表6
作物別、年ごとの申請許可数
各年の許可数
1986
アルファルファ
サイフリボク
リンゴ
アスパラガス
ブロッコリ
カンタロープ
カーネーション
カリフラワー
チコリ
キク
トウモロコシ
ワタ
キュウリ
アマ
キュウイフルーツ
レタス
メロン
ナタネ/カノーラ
パパイヤ
ペチュニア
ポプラ
バレイショ
イネ
ダイズ
西洋カボチャ
テンサイ
ヒマワリ
タバコ
トマト
クルミ
その他
合計
1987
1988
1989
1990
1991
1992
合計
1
7
4
3
6
1
21
1
1
1
1
14
1
2
5
3
65
37
3
49
1
1
4
290
1
2
6
133
4
40
13
28
1
1
1
7
1
1
5
2
1
8
5
1
5
15
2
12
4
1
1
3
3
7
12
1
1
1
1
9
37
9
7
69
2
9
1
6
3
1
1
2
23
9
1
13
1
1
41
1
54
1
2
21
2
5
7
8
1
20
14
1
1
1
38
1
5
2
9
1
19
18
1
154
209
4
1
1
3
1
40
14
24
1
2
175
1
52
1
26
4
10
2
13
18
399
72
72
2
3
878
表7
形質別、年ごとの申請許可数
各年の許可数
1986
除草剤耐性
耐病性
ウイルス抵抗性
昆虫耐性
マーカー利用
品質特性
花色
研究目的
雄性不稔
ストレス耐性
重金属耐性
その他
合計
1987
6
1
1
1988
1989
1990
1991
1992
合計
13
2
4
6
9
2
36
1
6
7
16
4
74
3
24
15
44
11
1
2
7
5
2
97
13
34
26
91
21
3
7
8
263
16
46
35
221
34
1
9
23
3
1
489
35
115
89
382
72
5
18
39
9
3
1
652
1,257
1
1
1
1
7
36
73
188
300
宿主作物と形質のコンビネーション範囲
宿主作物種と導入する主要形質の組み合わせの多様性から、野外試験に対する許可の組
み 合 わ せ は 、 総 数 65種 類 と な っ た 。 詳 細 は 表 8 に 示 さ れ て い る 。
除草剤耐性に焦点を絞った申請許可についての分析
耐性形質開発の対象となった除草剤の種類ごとに、除草剤耐性導入についてまとめたも
のを、表9に示している。グリホセート及びグルホシネートへの耐性は全申請許可件数の
75% 以 上 を 占 め る 。 そ の 他 で は 、 ス ル ホ ニ ル 尿 素 系 除 草 剤 及 び ブ ロ モ キ シ ニ ル 耐 性 の 件
数だけが、注目に値する。
除草剤耐性は、選択マーカーとしてしばしば用いられるので、他の目的とする形質と除
草 剤 耐 性 を 一 緒 に 用 い る 申 請 の 許 可 件 数 の レ ビ ュ ー は 適 当 で あ る ( 表 10) 。
現在までの申請のなかで、除草剤耐性を特長とする方法について、別の評価を試みたのが
表 11で あ る が 、 主 要 宿 主 作 物 に 組 み 込 ま れ た 除 草 剤 耐 性 を 、 種 類 ご と に 分 析 し て い る 。
表8
作物と形質別に分析した申請許可数
(各形質を含めたが、マーカーのみ利用した実験は除外した)
各組み合わせにおける許可数
除草剤
耐 性
アルファルファ
耐病性
11
ウイル
ス耐性
昆虫
耐性
品質
特性
6
花色
1
MS及
び回復
ストレ
ス耐性
重金属
耐 性
4
サイブリボク
1
リンゴ
アスパラガス
ブロッコリ
1
14
カンタロープ
カリフラワー
2
チコリ
4
2
2
3
キク
トウモロコシ
42
ワタ
26
1
13
3
5
21
27
16
3
キュウリ
アマ
8
45
キュウイフルーツ
1
レタス
メロン
ナタネ/カノーラ
2
242
2
2
2
1
1
パパイヤ
2
ペチュニア
ポプラ
バレイショ
5
19
19
35
1
46
2
イネ
ダイズ
17
2
3
21
8
2
ヒマワリ
タバコ
16
7
9
11
1
トマト
18
5
14
13
20
クルミ
2
13
西洋カボチャ
テンサイ
29
2
2
3
3
表9
除草剤耐性の申請の分析
除草剤耐性ごとの許可数
件数
割 合 *1
2, 4-D
アトラジン
ビアラホス
プロモキシニル
クロロスルフラン
グルホシネート類
グリホサート
イミダゾリノン
ピリジン
スルホニル尿素系
トリアゾロピラミジン
その他、完全に特定していないもの
1
2
8
27
5
188
190
6
1
64
1
11
0.2
0.4
1.6
5.5
1.0
38.4
38.9
1.2
0.2
13.1
0.2
2.2
合計
504
100.0
*1
申 請 許 可 489件 に 対 す る 割 合 。 総 数 504件 に は 複 数 の 除 草 剤 に 対 す る 1 件 の 許 可 が 何
件か含まれる
表 10
除草剤耐性と他の形質
各分類ごとの件数:
除草剤耐性と他の形質:
形質のみ
除草剤耐性と
耐病性
ウイルス抵抗性
昆虫耐性
品質形質
雄性不稔および回復
マーカー遺伝子
1
6
12
3
21
269
除草剤耐性のみ
200
形質とマーカー
1
1
4
3
13
表 11
関連主要作物別に分析した除草剤耐性別、申請許可数
各形質の組み合わせごとの数
作物ごとの
グリホセ
許可総数
ート
アルファルファ
主要除草剤耐性グループ
グルホシ
ネート
21
スルホニ
ル尿素系
10
トウモロコシ
65
4
ワタ
37
7
33
その他除
草剤
1
2
2
49
3
2
40
ナタネ/カノーラ
290
116
106
11
バレイショ
アマ
プロモキ
シニル
作物ごとの
耐性許可総数
11
5
42
16
1
26
4
8
242
1
6
19
8
35
45
133
4
7
ダイズ
40
29
5
テンサイ
72
3
2
4
5
1
16
タバコ
72
3
2
4
5
1
16
トマト
72
6
7
3
1
1
18
合計
807
186
178
64
27
31
475
全作物総数
864
190
188
64
27
31
489
ウイルス抵抗性についての申請許可の分析
形 質 と 作 物 に 関 し て ま と め た 表 8 は 、 ウ イ ル ス 抵 抗 性 が 関 与 す る 全 申 請 の う ち の 70%
以上が、バレイショ、ウリ類、及びトマトに関わるものであることを示している。詳細な
分 析 を 表 12に 示 し て い る 。
マーカー遺伝子
マ ー カ ー 遺 伝 子 に つ い て 記 述 し て い る 申 請 全 体 の う ち の 80% 以 上 が 、 カ ナ マ イ シ ン で
あ る 。 表 13で は 、 ノ パ リ ン シ ン タ ー ゼ の 発 現 、 NPTⅡ 遺 伝 子 の 存 在 お よ び カ ナ マ イ シ ン
耐性という単なる記述の全てが、カナマイシンとして記載されていることを述べておく。
表 12
ウイルス抵抗性の申請許可数
(主要分頚に関する件数)
個々のウイルス抵抗性ごとの件数
ウイルス
AMV
BCTV
BNYV
BWYV
CMV
MCDV
MCMV
MDMV
PLRV
PVR
PVS
TEV
TMV
TOBMOTT
ToMV
TSWV
TYLCV
WMV2
X
Y
ZYMV
無名
作物
アルファルファ
タバコ
テンサイ
レタス
ウリ類
トウモロコシ
トウモロコシ
トウモロコシ
バレイショ
パパイヤ
バレイショ
タバコ、メロン
トマト、タバコ
タバコ
トマト
トマト
トマト
ウリ類
バレイショ
バレイショ
ウリ類
件数
7
2
9
1
19
2
2
5
19
1
2
3
9
2
5
2
1
7
15
10
8
14
割合(%)
4.8
1.4
6.2
0.7
13.1
1.4
1.4
3.4
13.1
0.7
1.4
2.1
6.2
1.4
3.4
1.4
0.7
4.8
10.3
6.9
5.5
9.7
145
上記合計
表 13
100.0
マーカー遺伝子について記載のある申請許可数
マーカーについての記載がある申請許可数
クロラムフェニコール
ゲンタマイシン
ハイグラマイシン
カナマイシン
メトトレキサレート
ネオマイシン
GUS
ルシフェラーゼ
真核遺伝子
形質マーカー
件数
2
9
9
365
2
3
47
2
2
3
割合(%)
0.5
2.0
2.0
82.2
0.5
0.7
10.6
0.5
0.5
0.7
上記合計
444
100.0
マーカー遺伝子についての
382
記載がある記録の合計
上記のなかには、複数のマーカー遺伝子について記載しているものが多い
4.野外試験のバイオセイフティ
組換え植物の野外試験では、しばしば導入した形質の野外環境での動態観察が主要目的
である。したがって、導入形質の発現レベルと発現安定性が、まず第一に関心のある形質
である。合意した安全基準を満たすために、あらゆる努力が行われているけれども、この
ようなバイオセイフティについての記録は、野外試験の主要目的とみなされていない。全
ての申請者は、予想外の事柄を報告することを要求されている。
組換え植物の一般的な生態
組 換 え 植 物 は 、 現 在 1180ヶ 所 以 上 の 野 外 試 験 地 点 で 栽 培 さ れ て い る 。 組 換 え 植 物 が 予
想外の生態動向を示したことを示唆するような報告はこれまでなされていない。導入形質
の発現レベルに関して失望することは、ときおりある。組換え植物が、宿主作物の性質と
導入された形質から予測される生態と、本質的に異なる生態を示したケースは全くない。
組換え植物の第一代を野外で栽培するようなことは、通常行われない。体細胞変異や挿
入突然変異から生じた変異型を培養室や温室において世代を進めることによって除去し、
その後に野外試験用の個体が作出されるのが、通常のやり方である。
上記観察に際して、宿主自身が雑草性を有する場合や、また導入した形質から宿主の雑
草可能性が変化するような選択的に有利な形質が得られたことを確証するのに妥当な理由
があると判断される場合にのみ、雑草性についての懸念が生ずるかもしれない。現在まで
のところ、野外試験において、組換え植物の雑草性について懸念を示す報告はなされてい
ない。
生殖的隔離
組換え植物の野外試験に対する許可は、試験が生殖的隔離条件下で実施されるという条
件で殆ど常に行われる。導入する形質が、宿主とする同じ作物の他の植物個体のゲノム中
や、組換え植物が交雑可能な野生近縁種のゲノム中に組み込まれることのないよう、野外
試験は管理されなければならない。試験後は、組換え植物の生殖物質は、試験地点から取
り除くかまたは処分されなければならない。
レビューの観点からは、バイオセイフティは2点に帰結する、第一は、生殖的隔離に用
いられた方法が本当に有効であったか否かに対する考察である。第二は、生殖的隔離条件
下で野外試験を行うが故に、試験地点の至近地域外への環境影響に関しての知見には、明
確な限界があるということである。もし生殖的隔離が完全であれば、組換え植物は実際上
は雑草化の恐れをもたず、非標的生物への野外試験の影響は観察されない、すなわち、バ
イオセイフティ要求を全て満たすはずである。しかし、組換え植物が、大規模及び生殖的
制限なくして利用されるような場合には、起こりえるような動態に関してバイオセイフテ
ィの知見は、ごく限られた貢献しかしない。
最初の野外試験以来、組換え宿主と同じ作物種の他の植物及び近縁雑草種との生殖的隔
離についての知識が、大いに役だってきた。しかし、野外試験に広範囲の作物種が含まれ
るようになると、私たちの知識基盤に限界があることに留意しなくてはならない。多くの
作物について、当局は、多くの作物に対して、最も高品位な種子生産のために育種家に要
求しているものと劣らないような隔離を、同一種の最も近傍の作物について求めている。
この距離は、各国間でいつも同じというわけではない。この分野で得られた情報について
レビューする前に、関与する原則について考察することは有効である。
作物種は、同一種の他の植物から受粉できる程度が異なる。ある作物は完全自殖性であ
る、他のものは完全他殖性である。どの作物種1種についても、生産花粉量、花粉の放出
時期、植物から放出後の花粉の寿命、及び同一種の別の植物または品種との花粉の和合性
は、品種ごとに異なる。1試験区の花粉量は、常に試験区の規模に影響されるであろう。
花粉源から離れると、距離の2乗で花粉の負荷は減少する。これらの考察は、絶対的隔離
を確信するのに必要な隔離程度を的確に規定するために行うような決定的試験は、1回だ
けは不可能であることを意味している。たとえば、強風下で花粉運搬昆虫による伝播の結
果 、 予 想 外 の 事 柄 が 起 こ る よ う な 機 会 が 存 在 す る の は 明 ら か で あ る 。 特 定 の 作 物 に 関 し て、
育種家が経験から確立した隔離距離は、実際の作物地域からの花粉流入可能性が最少と予
測される距離である。これは、組換え植物の野外試験に関しては、逆に制限した作物地域
から花粉の流出がおこりうることになる。
組換え作物の野外試験に関して、全体的な生殖的隔離についての例外は、組換え作物か
ら の 花 粉 の 流 動 に つ い て 特 定 し て 研 究 さ れ た ( 研 究 成 果 の 一 部 は 、 1992年 5 月 の 遺 伝 子
工学的に組換えされた植物及び微生物の野外試験のバイオセイフティ結果に関するゴスラ
ー・シンポジウムで発表された)試験である。試験された作物は、油糧種子用ナタネ、バ
レイショ、テンサイ、ワタであった。
油糧種子用ナタネについては、多くの研究が、緩衝作物による包囲地域がなくとも、組
換え体の花粉による「トラップ」植物の受粉は、花粉源からの距離に応じて急速に低下す
る こ と を 示 し て い る 。 ダ ウ ニ イ は 、 カ ナ ダ の 条 件 の 下 で は 、 隔 離 距 離 が 46、 137、 366m
の と き に 受 粉 率 は 各 々 2.1、 1.1、 0.6% で あ っ た こ と を 示 し た 。 一 方 、 フ ラ ン ス の レ ナ ー
ド は 、 雄 性 不 稔 ナ タ ネ が 花 粉 源 か ら 600m の 距 離 で 0.1% の 受 粉 率 で あ っ た こ と を 示 し た 。
そ し て 彼 は 800m 彼 方 で も 受 粉 を 見 つ け た 。 ナ タ ネ の 受 粉 は 、 昆 虫 に よ る と こ ろ が 大 き い 、
英 国 で の 実 験 で は 、 花 粉 の 運 搬 の 程 度 と 距 離 に は 風 の 影 響 は な い こ と を 示 し た 。 こ れ 故 に、
花粉の流動には緩衝帯は大きく影響する、カナダ及びフランスの試験では大きな減少効果
を 示 し た 。 カ ナ ダ で は 400m の 隔 離 距 離 よ り も 、 幅 10m の 緩 衝 作 物 栽 培 の ほ う が 効 果 が あ
っ た が 、 フ ラ ン ス の 実 験 で は 幅 12m の 包 囲 で 、 受 粉 が 0.7/ 1000に 減 少 し た 。
バレイショに関する研究は、自然交雑は宿主作物からの距離によって、より急速に低下
することを常に示している。ニュージーランドからの報告では、バレイショ作物間では
1% の 自 然 交 雑 が お こ る が 、 自 然 交 雑 を 排 除 す る に は 4.5m 以 上 の 隔 離 距 離 で 十 分 で あ る こ
と を 示 し て い る 。 英 国 の 同 様 の 研 究 で は 、 10m の 隔 離 で は 0.017% の 自 然 交 雑 が 起 こ り 、
20m で は 起 こ ら な い こ と を 示 し た 。
テンサイについては、現在限られた研究が進められている。開化植物をアサで囲んだ受
粉 テ ン ト に 封 じ 込 め た 野 外 試 験 で は 、 30m の 距 離 に 置 か れ た ト ラ ッ プ 植 物 で 測 定 し た と
ころ組換え体の花粉の流出はみられなかった。
ワタの受粉は昆虫媒介型である。アメリカでは、花粉の流出の減少に対する野外試験地
点を囲んだ緩衝帯の効果が、実験により示された。その結果、隔離距離は次第に減少して
いる。
ダイズ作物は、強力な自家受粉型であるので、隣接した試験区と物理的に区分けするだ
けで十分である。
生殖的隔離は別として、野生近縁種との交雑の観点にもバイオセイフティの懸念が存在
する。「受粉ゾーン」とみなされるところからは野生近縁種を取り除くのが、多くの野外
試験の条件である。2種類の作物について、野生近縁種との交雑について特別な試験が行
われた。油糧種子用ナタネとバレイショである。
フランスにおける油糧種子用ナタネの研究では、難しい場合も多いが、かなりの野生種
と の 交 雑 が お こ り う る こ と が 、 in-vitroの 受 精 実 験 か ら 示 さ れ た 。 雑 種 の 稔 性 は 決 し て 高
くはないが、ナタネが雌性親となったときに最も高かったことは、組換えナタネから遺伝
子流動を促進しないであろうことを示唆している。このことは、野外試験で、雄性不稔ナ
タ ネ が Raphanusraphanistrum ま た は Brassicaadpressa と 交 雑 し た と き に 、 ハ イ ブ リ ッ
ド 種 子 の 作 出 に 成 功 し た が 、 後 者 は 100花 の う ち 0.15個 以 下 の 発 芽 可 能 な 種 子 し か な か っ
た。ハイブリッドの稔性及び野生親との戻し交配による後代の実の生育可能性の程度につ
いての実験は進行中である。野外の状況で花粉ドナーとしてナタネを用いたときに、後続
世代まで生き残る能力をもつ発芽可能なハイブリッドがたぶん作出されるだろうと結論づ
けるのは早急である。
バレイショついての2つの研究のうち1つは英国、もう1つはオランダで行われたもの
で あ る が 、 両 者 と も 、 野 外 条 件 で バ レ イ シ ョ が 、 Solanum nigrumまたはSolanum dulcam
araと 自 然 交 雑 す る と い う 確 証 が 得 ら れ な か っ た 。 こ の こ と か ら 、 組 換 え バ レ イ シ ョ の 試
験予定地でこれらの雑草が見いだされた時でも、これらの雑草の除去を要求する必要がも
はやないことが示されている。
生殖的隔離と野生近縁種との交雑に関するこれらの観察から、個々の作物種の固有の特
性に基づいて考慮されるべきであるという結論が得られる。野生近縁種との交雑可能性に
伴う問題についても、個々の作物種と野外試験を予定している地域の植生に焦点をあてて
評価する。数種の作物と野生近縁種に対しては、隔離距離が短縮された条件下でもバイオ
セイフティはたぶん同様に維持されるであろう。緩衝地帯の利用と野外試験地域で除去が
必要な野生種のより詳細な記述について考慮の必要がある。
既に行われた野外試験では、生殖的隔離を促進するその他の方法について、何ら新しい
知見を得ていない。開花の防止、花頭の包囲、及び機械的な摘房が、効果的な管理法とし
て知られている。
宿主作物
個 々 の 植 物 体 ベ ー ス で み る と 、 878件 の 申 請 の 許 可 数 の う ち で 、 単 子 葉 類 は 69件 で 、 多
年生の木本種は9件、残りは一年生の双子葉類である。宿主作物を特定したような新しい
バイオセイフティに関する情報は集まっていない。引き続き関心があり、また宿主特異的
な特性として、収穫作業、及び栄養繁殖体または種子繁殖体の機械的散布の防御がある。
ベクター
双 子 葉 類 に 重 点 を お く と 、 形 質 転 換 の 大 部 分 が 、 Agrobacterium tumefaciens 及 び 不 活
性 の Tiプ ラ ス ミ ド を 使 っ て 行 わ れ て い る こ と は も は や 驚 く べ き こ と で は な い 。 プ ラ ス ミ ド
が 本 当 に 不 活 化 し た か を 確 か め る の が 初 期 の 関 心 事 で あ っ た 。 現 在 で は 、 不 活 性 化 Tiプ ラ
スミドの使用は、ルーチンである。野外試験が行われてから、ベクターからの病原性形質
の遺伝的構築物へのキャリーオーバーに由来する植物病理反応に関する記録はない。
導入遺伝子
バイオセイフティについて、組換え作物に用いられた導入遺伝子の構築について詳細な
検討がなされるのは、申請許可のレビューを進めている段階においてだけである。秘密保
持のために、プロモーター、特定の形質を有する塩基配列、及びマーカー遺伝子に関する
完全な情報は、自由には得られない。一連のプローモーターが使用されており、導入遺伝
子が発現するであろう植物体の部分に制限されるであろう可能性は別としても、野外試験
に 関 す る 報 告 書 か ら は バ イ オ セ イ フ テ ィ の デ ー タ は 集 ま っ て こ な い 。 申 請 者 の 立 場 か ら は、
野外試験の許可を得るのに最も要求されているのは、導入形質の発現とその性質であると
いうことである。これは、組換え植物自体の全体的動態に関連して、最もよく検討されて
いる。
レビュー者は、マーカー遺伝子についての質問に答えた。多数が、ヒト用医薬品として
使用されない抗生物質を抗生物質耐性マーカーとして利用することに限定したいという意
見を表明した。
ドイツの研究では、組換え植物の野外試験の間にネオマイシン耐性が土壌微生物に移行
する可能性について調べた、何も見つからなかった。ともかく、野外試験からは、マーカ
ー遺伝子の使用に関連して、バイオセイフティに関する考察に付け加わえられるような情
報は得られていない。
組換え植物
遺伝子構築物についての検討は、組換え植物の潜在的な動態についての知見を提供する
けれど、その野外試験にとってバイオセイフティ情報を提供するのは、組換え植物自身の
実際の動態である。組換え植物は、何代にもわたる継代繁殖をした後に、野外試験段階に
到 達 す る 。 新 形 質 の 安 定 発 現 は 、 規 制 上 の 要 求 で あ る と 同 時 に 産 業 目 的 で も あ る 。 そ こ で、
野外試験から、その他の方法では確認不可能な導入形質と組換え植物の安定性に関する情
報が得られる。導入遺伝子と宿主のコンビネーションにより個々に異なるので、野外試験
から安定性を一般化するのは、不可能である。このレポートの範囲外である食品安全性の
点は別として、組換え植物の特徴は、非標的生物への影響によるバイオセイフティについ
ての懸念だけであろう。
非標的生物への影響
現 在 ま で 、 野 外 試 験 は 生 殖 的 隔 離 条 件 下 で 実 施 さ れ て き た の で 、 非 標 的 生 物 へ の 影 響 は、
野外試験地点またはそのごく近傍で記録された影響に限定されるであろう。近縁種への遺
伝子流動の可能性は否定できない、しかし、現在までの野外試験の条件下では、それは通
常は起こらない。
現在までの野外試験の結果、非標的生物に対する影響は、ほとんど報告されていない。
昆虫が最も注目されてきた。アメリカでは、トマトの野外試験での毎週ごとの捕虫調査に
よ り 、 Bt遺 伝 子 を 導 入 し た ト マ ト 及 び 導 入 し な い ト マ ト の 両 試 験 区 を 見 回 っ た 結 果 、 昆
虫 数 に 違 い は な か っ た 。 他 の 野 外 試 験 で は 、 Btに つ い て の 組 換 え ナ タ ネ の 試 験 に お い て 、
Bt導 入 は ハ チ 受 粉 に 影 響 し な か っ た 。 こ れ は 、 花 粉 媒 介 が 阻 害 さ れ る と 収 量 減 に な る が 、
そ の よ う な こ と は 起 こ ら な か っ た こ と が 、 推 測 さ れ る も の で あ る 。 フ ラ ン ス の INRAで 行
われた特定の実験では、キチナーゼ遺伝子がナタネに導入されたが、花当たりのハチの来
訪 と ハ チ の 蜜 収 集 嗜 好 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た 。 同 様 に TMVウ イ ル ス 耐 性 に つ い て
の組換えトマトの日本の実験では、訪花昆虫に対する組換え遺伝子の影響はなかった。
同じ日本の実験では、土壌微生物についての記録が作成されている。非組換えトマトと
組換えトマトを生育した土壌の間には、プレート中のバクテリア数、放線菌数及び糸状菌
数に関して有意な差はみられなかった。
組換え植物の残査が後作物の生育に不利な影響を与えるかも知れないという事が、非標
的生物への影響可能性として示唆される。日本の実験で、粉末の作物残査を土壌中へすき
こんだ後、試験作物の生長を調べた結果、組換え植物由来の残査と非組換え植物の残査と
の間に、なんら差は見いだせなかった。
ウイルス耐性についての非標的生物への影響について多少懸念が生じた。これは、トラ
ンスキャプシデーションであり、ウイルスが他のウイルスのキャップシッドに包み込まれ
ることである。このようなプロセスは、ウイルスコートタンパク質を発現する遺伝子を持
つ組換え植物において助長されるかもしれない。ウイルスコートタンパク質発現組換え植
物において、トランスキャップシデーションが起こったという証拠は現在のところない。
トランスキャップシデーションの影響は、ウイルスを伝搬する異なった媒介者が利用でき
ることにより、ウイルスの宿主範囲が変化することであろう。しかし、一度ウイルスが非
組換え宿主に入るとヘテロジーニアスなキャップシッドは再生する方法がなくなるので、
トランスキャップシデーションはその時点で終了することが指摘されている。
この要約から、作物と導入形質の多くの可能な組合わせでの野外試験が、既に行われて
いることがわかる。何も驚くべきことはなかった。
地理的条件
地理的条件は、脅威となる種または有益な種や関連する雑草種の存在可能性に影響する
であろうが、現在までの野外試験から、地理的条件はバイオセイフティになにも新しい影
響を与えないのは明白である。地理的条件には気候が関連している。気候のバイオセイフ
ティへの影響は、遺伝子の発現と発現の安定性に関連している。生殖的隔離の面での「封
じ込め」の有効性に影響する花粉の寿命と花粉の拡散については、気候が重要な可能性が
ある。
モニタリングと野外試験後の管理
モニタリングの観点の一つは、バイオセイフティについての懸念が十分に処置されてい
るかについて、確認することである。交雑距離内の作物または野生近縁種が予想外の形態
を示した場合に、要求された隔離方法が妥当でないと確信するのは当然である。通常、超
越者は除去される。鳥や小動物は遺伝物質の逸出に関与する可能性がある。これを防止す
るために、フェンスやネットが用いられる。試験規模の拡大で、ネットでは防止しにくく
な る 。 こ の よ う な 場 合 、 作 物 が 完 全 成 熟 す る 前 の 早 期 収 穫 で 、 鳥 に よ る 拡 散 を 減 少 さ せ る。
収穫作業はぎりぎりの段階であり、試験地点に繁殖可能体が残留するのは避けられない。
ナタネについては、フランスでの経験から、収穫後土壌をそのまま放置するのが最上であ
ることが判明している。収穫後の秋及び次の春の間に残留種子の発芽が最大限に進み、自
生植物を取り除くかまたは除草剤で処分できる。発芽を促進するために土壌を耕すような
方法の選択は、種子を埋めてしまうことになる。埋められた種子は数年間生息したままで
ある。
5.得られた教訓
バイオセイフティに関して、野外試験から得られた情報量は現在までのところ限定され
ている。既に述べてきたように、これは野外試験自身の特質から予測されるように、これ
らは実際のところ真の意味での野外放出ではなく、「野外封じ込め」である。それにもか
かわらず、一般的なコメントをいくつか述べる事ができる。
組換え体自体の操作の結果、期待していなかったように、組換えの結果、望ましくない
作 物 の 動 態 が お こ る こ と は な か っ た 。 864件 の 許 可 申 請 と 1185件 の 野 外 試 験 地 点 で 、 そ の
ようなことはなかった。雑草性は、遺伝子工学的改変よりも、むしろ導入形質ならびに宿
主作物の特質とみなされるべきである。
生殖的隔離について我々は多くの知識を持っている。野外試験された作物については、
緩衝帯及び物理的分離を組み合わせて用いることで、自然受粉を十分に制御できる可能性
が高くなる。自由に他花受粉する作物については、絶対的な封じ込めを前提として考える
のは賢明ではない。
これらの野外試験から、抗生物質耐性マーカーについての新しい知見は殆どない。カナ
マイシン耐性は、現在まで最も多く使用されているマーカー遺伝子であり、その使用につ
いて現在までバイオセイフティ問題はない。動物用医薬品としてのカナマイシン使用に関
連して疑問が提起されることもあるが、この見解を支持する明確な証拠はない。
組換え植物の野外試験の非標的生物に対する悪影響は、野外試験地域の封じ込め内では
全く観察されていない。特別に注意を要するような非標的生物への影響は、植物種と形質
の個々の組み合わせの結果から生じるもののようである。
組換え植物の安定性は、何世代かの特性検定により効率的に判定される。安定性は、組
換え作物の栽培にとって絶対に必要な特性であろう。生殖的隔離条件下で組換え体が評価
される状況では、安定性の欠如はバイセイフティに影響を及ぼすものではない。
野外試験後何年間にわたって試験地点で自生植物が発生する頻度は、生残している繁殖
可能体を生育させることを早期に最大限に進めたり、発芽可能な種子を土中に埋め込むこ
とを最小限にする管理技術により、最小にすることができる。
6.バイオセイフティに関する懸念
国の違いにより影響される懸念
各 国 の 環 境 が 異 な る た め に 、 バ イ オ セ イ フ テ ィ の 懸 念 に 関 す る 重 点 は 異 な る 。 本 項 で は、
各国の所轄機関により提起された共通の懸念についてレビューする。全ての各国所轄機関
が、全ての課題について懸念をもっているわけではない。例えば、アメリカでは主要作物
のトウモロコシ、ダイズ、コムギ、及びワタは野生近縁種がない。このことは、新しく野
外試験された遺伝形質の拡散に関連する懸念に、重大な影響をあたえる。対照的にスペイ
ン は 、 自 然 の 遺 伝 的 多 様 性 の 主 要 な 中 心 地 で あ り 、 8,000植 物 種 の う ち の 3,000種 が 固 有
種であり、また作物近縁種が多い。スペインにとって、野生近縁種との交雑についての考
察は、主要ファクターとなるであろう。ノルウェーにとっては、天然林に対する経済依存
度が高いので、重要な国家資産の長期的な信頼性に近縁木本種への形質導入が悪影響を与
えないことを確認する事が重要である。このような個々の状況においては、有効な科学的
理由に対応して、バイオセイフティの強調点が異なってくる。
導入形質に関連した懸念
除草剤耐性について懸念を表すものが多い。野生近縁種への耐性の移入可能性について
は慎重な検討が必要である。現在までの野外試験は、こうしたハプニングを防止するよう
に実施されてきた。この点を検討するに際して、多くの作物及び多くの雑草種は、既に実
際に農業で使用されている数種類の除草剤に対し、耐性を有している事に注意しなければ
ならない。もし野生近縁種との遺伝情報の交換が起こるのなら、そのような事態になって
い た だ ろ う 。 組 換 え 植 物 か ら 野 生 近 縁 種 へ の 遺 伝 子 伝 達 で 除 草 剤 耐 性 が 移 行 す る た め に は、
一連の事柄が、全て望ましい方向に操作されなければならない。不稔でないハイブリッド
が形成されなければならない。これらのハイブリッドからの苗が、既存の野生植物の増殖
のなかでも生存する優位性をもたなければならない。有利な選択圧の欠如するなかで、生
存生物は発芽可能な種子を多量に作出しなければならない。さらに既に適応している土着
生物の種子と競合しなければならない。新しい形質の他の適当な植物体への導入に一生を
費やしてきた育種家は、新形質を有し、同時に導入された親の良好な性質を保持している
植 物 が 殆 ど 見 つ か ら な い た め に 、 多 く の 後 代 を 調 査 し な け れ ば な ら な い こ と を 知 っ て い る。
野生種に関しては、除草剤耐性の新しい型が、本来の遺伝子プールの中に形づくられてく
る状況は、非常に稀かもしれない。
除草剤耐性の導入は、全体的に除草剤の使用を増加させ、その結果、環境破壊となると
いう懸念がある。この反論として、環境により優しい除草剤に対する遺伝子耐性が開発さ
れ、その結果、除草剤の交替により、より環境にとって有益となる。作物栽培中に生える
主要雑草と自由に交雑するような作物に、除草剤耐性が導入された場合について、特別な
懸念があるであろう。個々のケースが明らかにされ、適切なバイオセイフティ管理手法が
検討されるであろう。アメリカのヒマワリの雑草、及びヨーロッパの野菜としてのナタネ
が例である。
除草剤耐性に関して、その抵抗性により作物中の残留除草剤量及び除草剤分解物量の増
加を伴うものであるならば、また懸念が起きるかもしれない。これは、使用した特定の遺
伝子構築物に関連して、ケース・バイ・ケースを基本として明確に評価できる。
耐病性及び昆虫耐性に対しては、一定の害虫や病気と戦うためにある範囲の作物種及び
作物変異種に特定の遺伝子構築物の導入を広く行うことは、もし害虫や病気が個々に耐性
を獲得してしまった場合、非抵抗性種の拡大につながる。しばしば、例としてT−サイト
プ ラ ズ ム 及 び ハ イ ブ リ ッ ド ・ コ ー ン の 経 験 が 、 述 べ ら れ る 。 作 物 へ の Btエ ン ド ト キ シ ン
の 広 範 な 導 入 は 、 Btエ ン ド ト キ シ ン へ の 耐 性 構 築 を 促 進 す る 可 能 性 が あ る と し て 、 し ば
しば論議される。対照的に、作物への非特異的昆虫耐性の導入は、作物害虫ではない昆虫
に対する重大な非標的生物への影響についての懸念があった。
耐病性、昆虫及びウイルス耐性に関して、野生近縁種との遺伝子交換の潜在的影響につ
いての懸念がある。これが、野生遺伝子のプールバランスに重要な変化をもたらすだろう
か?
これらの交換に関して、上記の除草剤耐性で述べたのと同じような事柄が、新しい
遺伝情報が定着し、生存するためには起こらなければならないということを思い出すべき
である。ポイントは、導入形質が土着の植物体群の既に定着した形質に比較して、特別な
優位性を持つ可能性があるかどうかである。
野生遺伝子プールへのある形質の転移可能性について、慎重に検討される必要がある。
ある種の導入遺伝子については、遺伝形質は既に自然に存在するので、これらの遺伝子で
は、遺伝子の近縁種への転移が起こりえるのであれば、既に行われているのであろう。バ
イオセイフティに関して、自然界に存在するものの、非近縁種に存在する遺伝子及び新し
い遺伝子及びその産物に注目する必要があろう。性的和合性及び雑種植物及びその後代の
自然植物群下での適応性のために、自然界の遺伝子プールのなかでの新しい遺伝形質が生
存し、定着することはほとんどあり得ない。もしおこったとしても、遺伝子定着は、年単
位 よ り も 10年 単 位 で 計 る よ う な 時 間 尺 で 行 わ れ る で あ ろ う 。 望 ま し い 選 択 圧 下 で の み こ
の過程は加速化され、導入形質の優位性が保たれるよう競合バランスが変化する。
組 換 え DNA分 子 ま た は ベ ク タ ー に 関 す る 懸 念
多数のレビュー担当者が、組換え植物自体の性質について、バイオセイフティの検討を
集中したがっているが、研究者は、明確な目的を持ち、組換え植物作出時に行っているこ
とを理解していることを再認識したいことは別として、彼らはバイオセイフティ問題を解
決するために分子レベルの特徴づけに重点をおくわけではない。他のレビュー担当者は、
構築についての詳細な検討が重要と考え、これが、安定性、信頼性及び予想外のでき事へ
の可能性の点で、組換え植物の動態に示唆を与えると主張している。正当な技術的理由で
詳細については明らかにできない場合でも、後代での繁殖安定性についての実際的な証拠
は要求される。
全 レ ビ ュ ー 担 当 者 は 、 用 い ら れ た 組 換 え 手 法 に 関 心 が あ る が 、 Tiプ ラ ス ミ ド の 病 害 に 関
与する断片の欠除に関連する当初の懸念は、実際の経験によりほとんど消失した。バイオ
リスティックな方法はやや不確実であり、安定性の確認が同時に要求される。
多数のレビュー担当者は、不確実性の要素として、多面的効果、挿入的突然変異、及び
体細胞突然変異について述べた。研究者はこれに気づいており、野外試験に先だって、選
択や異常転移の厳格な排斥を行うのが通常作業となっている。宿主作物が望ましくない性
質を発現する可能性がある場合は、従来の育種期間の間に体細胞突然変異及び挿入的突然
変異のなかで、このような性質を観察するのが適当である。バレイショのグリコアルカロ
イド成分に対して、またナタネ中の過剰種子の粉砕の結果起こる雑草性に対してもあては
まる。バイオセイフティの観点からは、このような好ましくない性質は、通常の育種及び
選択過程で除去されるべきである。
モニタリング
野外試験終了後のモニタリングをどの程度継続するかの時間的スケールに関しては、か
なり意見に幅がある。いくつかの当局では、野外試験で自生した最後の植物を取り除いた
後、まるまる1年間のモニタリングを要求している。他に、法定期間、たぶん5年程度ま
でのモニタリング継続要求もある。バイオセイフティに関連して、どの程度モニタリング
期間が必要かを決める科学的基礎を確立する余地がある。これには、作物依存性及び環境
依存性がある。生殖的隔離と自生植物の除去要求により、野生及び雑草群集に新しい遺伝
形 質 が 取 り 込 ま れ る こ と に つ い て 、 何 ら 新 し い 可 能 性 は な い で あ ろ う 。 既 に 示 し た よ う に、
これらの事柄のタイムスケールは、実際のモニタリング期間を越えている。
7.将来に対するいくつかの考察
生殖的隔離に対する要求は、現在まで実施された野外試験から集められたバイオセイフ
ティに関する情報量を著しく制限し、またスケールアップに関連したバイオセイフティ管
理手法の確立に用いられる情報量も制限してきた。
多くの作物種にとって、実際の農業では、近隣区画の同一作物と何らかの形での交雑な
しに、組換え植物を栽培することは不可能であろう。同様に、実際の農業では、作物を近
隣の自然の雑草種から隔離することは不可能である。すなわち、通常の野外条件下では、
「封じ込められた」遺伝形質を最初に導入した作物品種の中で、排他的にその形質が維持
しつづけるようなことは、非現実的である。
究極のバイオセイフティの疑問は、「もし遺伝形質が環境に制限なくアクセスしたとし
たら、それは問題か?」である。この疑問に対する答が、形質と作物に依存することは明
か で あ り 、 ま た 作 物 の 利 用 地 域 下 で 、 そ の 作 物 の 野 生 近 縁 種 が あ る か ど う か に も 依 存 す る。
この疑問に対する答には、経験の蓄積が特に価値がある。農業的有用性、雑草性、及び
宿 主 と し て 用 い ら れ た 作 物 の 環 境 相 互 作 用 可 能 性 等 へ 影 響 を 与 え る よ う な 特 徴 に つ い て は、
既に多くのことが知られている。特定の導入形質の動態についての知識も確実に増加して
いる。地理的条件は、野生近縁種の存在や発現の安定性に多分影響を与えるであろう。最
終的な分析として、形質は非常に重要であるので、バイオセイフティの視点や現在の知識
レベルや、ファミリアリティの観点からみて、ほとんどバイオセイフティの懸念のない形
質と、さらに検討が必要な形質とがあるという理解が成り立つであろう。
付
属
図
資
料
表
国別および植物別の申請許可
項目ごとの申請許可数
オースト
ラリア
アルファルファ
サイフリボク
リンゴ
アスパラガス
ブロッコリ
カンタロープ
カーネーション
カリフラワー
チコリ
キク
トウモロコシ
ワタ
キュウリ
アマ
キュウイフルーツ
レタス
メロン
ナタネ/カノーラ
パパイヤ
ペチュニア
ポプラ
ポテト
イネ
ダイズ
西洋カボチャ
テンサイ
ヒマワリ
タバコ
トマト
クルミ
その他
合計
ベル
ギー
6
カナダ
デンマ
ーク
フラン
ス
ドイツ
ニホン
オラン
ダ
ニュージー ノルウ
ランド
ェー
スペイン スゥエー スイス
デン
UK
5
USA
合計
10
1
1
21
1
1
1
1
14
1
2
5
3
65
37
3
49
1
1
4
290
1
2
6
133
4
40
13
28
2
72
72
2
3
1
1
14
1
2
5
5
1
2
3
9
2
1
1
45
36
3
49
1
1
19
2
3
9
218
1
2
21
19
2
4
13
13
2
2
1
4
2
2
15
2
9
1
2
10
1
2
19
1
6
7
1
3
7
2
18
4
1
50
4
39
13
4
1
2
1
5
2
34
62
2
3
6
62
302
3
77
2
1
22
13
1
6
6
2
45
330
878
図1
図2
年別、申請許可数
年別、申請許可数(総試験地点数)
図3
国別、申請試験地点数
( 1992年 の 本 調 査 実 施 時 ま で の 数 )
図4
作物別、申請試験地点数
( 1992年 の 本 調 査 実 施 時 ま で の 数 )
図5
形質別、申請試験地点数
( 1992年 の 本 調 査 実 施 時 ま で の 数 )
図6
作物ごとの申請許可の増加状況
図7
形質ごとの申請許可の増加状況
面
談
者
ベルギー
Dr. William Moens
Institue of Hygiene and Epidemiology
Dr. Patrick Rudelsheim
Plant Genetic Systems
カナダ
Dr. Luoise Duke
Agriculture Canda Seed Division
Dr. Sheila Forsyth
Environment Canada
Mr. Bob Ingratta
Monsanto
Ms. Jean Irvine
Agriculture Canada Pesticides Directorate
Ms. Natalie Peron
Agriculture Canada Pesticides Directorate
Mr. Roger Philippe
Agriculture Canada Animal and Plant Health
Ms. Kirsten Sinstadt
Agriculture Canada Animal and Plant Health
Mr. Frank W. Walsh
Health and Welfare Canada, Health Protection
Dr. Bob Watson
Agriculture Canada Plant Research Centre
Mr. Stephan Yarrow
Agriculture Canada Animal and Plant Health
Dr. Hans Yu
Agriculture Canada Plant Products Division
デンマーク
Dr. Askel Buchter-Larsen
Maribo Seeds
Mr. Bo Christiansen
Environment Protection Agency
Dr. Folmer D.Eriksen
Food Agency, Institute of Toxicology
Dr. Claus Frier
Envrionmental Protection Agency
Dr. Leif Kjaergard
Maribo Seeds
Dr. Jan Pedersen
Food Agency, Institute of Toxicology
Dr. Hans Erik Svart
Forest and Nature Agency
フランス
Mmc. Sohic Beranger
CGB* 1
Dr. Alain Beranger
INRA*2, Rennes
Mlle. Ann Marie Chevre
INRA, Rennes
Dr. Georges Freysinet
Agbiotech Res. Director Rhone Poulenc
Prof. Axel Kahn
President of CGB
Mr. J. Marrou
Head of CTPS
Prof. Francis Quetier
University of Orsay
Dr. Michel Renard
INRA Rennes Rape Breeder
Dr. Pierre Roget
Group Limagrain
*1 Secretary of Commission of Biomolecular Technology ( CGB)
*2 Institut National de la Recherche Agronomique ( INRA)
ドイツ
Prof. Hans Buhk
Rober Koch Inst. - Health Agency
Dr. Jörg Landsmann
Fed. Research Centre, Agriculture and Forestry
Mrs. H. Noh
Fed. Environmental Protection Agency
日本
Dr. Tatsuhito Fujimura
Mitsui Toatsu
Dr. Akira Hasebe
Ministry of Agriculture, Forestry and Fishery
Mr. Masahiro Hashimoto
Ministry of International Trade and Industry
Dr. Hisaya Kakiuchi
Kirin Brewery
Dr. Akihiko Mine
Japan Bioindustry Association
Dr. Takeshi Ohtani
Kirin Brewery
Mr. Ichiro Shimizu
Japan Bioindustry Association
Dr. Akira Tanaka
Plantech Research Institute
Dr. Yoshiteru Yahiro
Plantech Research Institute
オランダ
Prof. Dr. P . G . de Haan
VCOGEM* 1
Dr. Erik Jongedijk
MOGEN International, NV
Ms. Evelyn Kampert
VCOGEM
Dr. Peter van den Elzen
MOGEN International, NV
Dr. Peter van der Meer
Ministry for the Environment( VROM)
*1 Provisional Committee on Genetic Modification ( VCOGEM)
ノルウェー
Mrs. Heidi Bente Draget
Directorate for Nature Management
Dr. Tone Solhaug
Ministry of the Environment
スペイン
Sra. Elisa Barahona Neito
Ministerio de Obras Publicas y Transportes
( MOPT)
Assist. to Sra. Barahona
Neito MOPT
スウェーデン
Dr. Gustav Brunius
rDNA Advisory Committee
Dr. Gabriella Cahlin
Swedish Board of Agriculture
Dr. Lennart Erjefalt
Head, Potato Dept. Svalov
Dr. Lars Espeby
Environmental Protection Agency
Dr. Ulla Swaren
Environmental Protection Agency
Dr. Paul Tenning
Head Biotechnology, Hilleshog NK
スイス
Prof. Klaus Ammann
University of Bern
Prof. Dr.H.Diggelmann
Chairman Swiss Committee on Biological Safety
Dr. PiaMalnoe Federal
Argonomic Research Station
Mr. Francois Pythoud
Environment, Forests and Landscapes
英国
Dr. Firoz Amijee
Department of the Environment
Dr. Tina Barsby
Nickerson Biocem
Dr. Paul Boseley
Agricultural Genetics Company ( AGC) '
Dr. Phil Dale
John Innes Centre
Dr. Ian Gillespie
Department of the Environment
Dr. Steve Hughes
Uniliver
Dr. Helen Marquard
Department of the Environment
Prof. Nigel Poole
ICI Seeds
Dr. Jodie Scheffler
John Innes Centre
Dr. Alison Spalding
Health and Safety Executive
Dr. Antony Taylor
Health and Safety Executive
アメリカ
Dr. Kay Austin
EPA *1 TSCA Team
Dr. David Bays
EPA FIFRA Team
Dr. Mike Broder
EPA TSCA Team
Dr. Cindy Callhan
USDA *2 APHIS *3
Dr. Ellie Clark
EPA TSCA Team
Dr. Arnold Fondin
USDA APHIS
Dr. Eric Flamm
FDA *4 Biotechnology
Dr. L. Val Giddings
USDA APHIS
Dr. David S. Heron
USDA APHIS
Dr. Catherine Joyce
USDA APHIS
Dr. Jane Kramer
Lubrizol/ Agrigenetics
Dr. Leo LaSota
EPA FIFRA Team
Dr. Michael Lidsky
USDA APHIS
Dr. Sharlene Matten
EPA
Dr. Sally McCammon
USDA APHIS
Dr. Gwen McClung
EPA TSCA Team
Dr. Terry Medley
USDA APHIS
Dr. Elizabeth Milewski
EPA
Dr. Henry Miller
FDA Biotechnology
Dr. Ed Raleigh
Du Pont
Ms. Sue Randal
ICI Seeds
Dr. Steve Rogers
Monsanto
Dr. Tom Salt
PVP Office
Dr. Phillip Sayre
EPA TSCA Team
Dr. Mark Segal
EPA TSCA Team
Dr. Roy Sjeblad
EPA FIFRA Team
Dr. Barbara Slutsky
EPA FIFRA Team
Dr.Frank Surdy
Monsanto
Prof. Sue Tolin
Virginia Polytechnic Inst. and State Univ.
Dr. Rod Townsend
Pioneer Seeds
Dr. Sally van Wert
USDA APHIS
Dr. James A. White
USDA APHIS
Dr. Martin Wilson
ICI Seeds
Dr: Sawrence Zeph
EPA TSCA Team
*1 Environmental Protection Agency ( EPA)
*2 US Department of Agriculture ( USDA)
*3 Animal and Plant Health Inspection Service ( APHIS)
*4 Food and Drug Administration ( FDA)