外国人介護士候補生の日本就労に関する一考察

外国人介護士候補生の日本就労に関する一考察
-日本人介護職員および民生委員の視点から-
福祉健康デザイン 徐研究室
G078016 五林 寿嘉
G078042 丹伊田 篤
1.研究の動機・目的・方法
日本はすでに超高齢社会に突入し、様々な
課題を抱えている。私たちは、介護の担い手
不足という課題に焦点をあて、人手不足の解
消に外国人介護士候補生の受け入れに注目
している。それに向けて外国人介護士候補生
の現状を調べ、そのメリットとデメリットを
検証し、これからの日本に外国人介護士候補
生が必要な存在であることを検証したいと
考え、このテーマを取り上げた。
研究の目的として本研究では、外国人介護
士候補生の受け入れについて、八戸市民・介
護職員・民生委員がそれぞれ、どう受け止め
ているのかを明らかにしたいと考えた。それ
とともに、八戸の今の介護現場の現状を把握
することを目的とした。それを踏まえ、外国
人介護士候補生の人的資源の活用に向けて
提言を試みた。
研究の方法として、文献調査・アンケート
調査そしてインタビュー調査を取り入れた。
具体的には、外国人介護士候補生に関する論
文およびインターネットの検索エンジンを
活用し、厚生労働省の公式ページを中心に
EPA 協定に関する情報の収集にあたった。
また、社会福祉法人・東京都社会福祉協議会
が行ったアンケート調査の結果を先行研究
の資料として活用した。それに加え、昨年度
の卒業論文(岩間竜也・藤田舞『外国人看護
師・介護士の活用に関する研究』八戸工業大
学 2010 年)も参考文献に取り上げた。
2.研究内容
2-1.外国人介護士候補生が日本で働く上
での問題点
問題点として挙げられるのが「資格」の問
題、
「日本語によるコミュニケーション能力」
の問題があり、福祉施設が受け入れにくいと
いう現状が先行研究で指摘された。このため、
国家試験の際、試験問題の工夫として、「漢
字にふりがなをつける」
、
「問題文自体をわか
りやすいものにする」というものが考えられ
る。
また、普段の取り組みとしては、介護人材
の確保に向けて、行政をはじめ、関係者が結
集して、在日外国人、EPA 協定の一環とし
て来日した外国人介護士候補生を含め、彼ら
の生活・就労・資格取得等を総合的に支援す
る仕組みを検討し、ボランティアの資源を活
用する方向で、つくることの必要性を強調し
たい。
2-2.先行研究-EPAと外国人介護士候
補生
介護士という職種は、一般の単純労働作業
や職人的な技・技術が必要な職種と異なり、
コミュニケーションをとくに重要視とされ
る職種である。この特徴を持ち、外国人の人
手を借りるには、厳しい制限が EPA 協定に
設けられるようになったわけである。簡潔に
いうと、彼らは日本滞在期間の4年内に国家
資格の介護福祉士に合格しないと、帰国しな
ければならないことが EPA 協定で定められ
ている。
2-3.先行研究2-外国人介護士関連調査
の分析結果
ここでは、社会福祉法人・東京都社会福祉
協議会が 2010 年 6 月にまとめた資料-外国
人介護者の受け入れに関する検討委員会-
から重要な内容を考察結果として抜粋する
と、外国人介護士候補生が日本語を学ぶため
には日本語学習プログラムを作り、時間や指
導者に配慮することによって、介護日誌を記
録する程度までに到達することが期待でき
るとわかった。
2-4.アンケート調査の主な分析結果
このアンケート調査は、2009 年 11 月 25
日に開催される第 58 回八戸市社会福祉大会
の場を借りて、大会主催者の八戸市社会福祉
協議会の協力を経て、八戸市民来場者の 150
人に全員アンケートを配布して実施したも
のである。大会より来場者への回答協力の呼
びかけや大会終了後の回収作業の全面協力
を得ることにより、148 人よりアンケートの
回収が実現できた。
主な調査結果は、外国人介護士の受け入れ
を多数が賛成したが、しかし、日本語能力を
課題として挙げられた。このことから、期待
と不安という複雑な気持ちを持つ市民が多
いことがわかった。
介護士の受け入れを前向きに捉えているよ
うに感じている。
外国人が日本で働く上で EPA 協定がある
ことによって少数しか働けていないのが現
状である。有望な人材・日本で働きたいとい
う人が多数いることが考えられるので、EPA
協定を外国人介護士候補生が国家試験に合
格しやすいよう見直す必要があると考えて
いる。
外国人介護士は4年の滞在期間に福祉現
場で研修を積みながら、日本の厳しい国家試
験(介護福祉士)に合格しなければならない。
試験勉強に頑張っている彼らの姿はたびた
びマスメディアに取り上げられ、紹介されて
いる。合格者の場合なら、ある程度、日本語
の読み書き・コミュニケーション能力が身に
2-5.インタビュー調査の主な分析結果
付いているはずである。合格者に対し、私た
私たちは 2010 年 8 月 15 日から 12 月 10
ち日本人は外国人介護士へのマイナス面の
日にわたり、八戸市の民生委員 6 人と介護士
印象や先入観を捨て、彼らにチャンスを与え
職員 24 人の計 30 人を対象に、インタビュ
ることから、試みてはいかがであろうか。
ーを行った。
外国人が日本で働く上で EPA 協定によっ
今回の調査を通して、民生委員・介護士職
て少数しか働けていないのが現状である。有
員が感じ取った福祉現場の人手不足の問題、 望な人材・日本で働きたいという人が多数い
仕事に見合っていない給料水準の設定問題、 ることが考えられるので、EPA 協定を外国
そして外国人介護士候補生の受け入れを賛
人介護士候補生が国家試験に合格しやすい
成した意見が多いということを把握できた。 よう見直す必要があると考えている。
その理由は、外国人介護士候補生の「やる気
その打開策を挙げると、国が EPA 協定を
があれば良い」
、
「外国人介護士候補生が同じ
改正し(介護福祉士の国家試験問題をひらが
職場にいることによって、外国の文化・知識
な付きにしたり、難しい医療や看護の専門用
を学べる」という意見があった。
語を常用漢字に置き換える、などの対策をす
ることによって)、彼らが日本の国家試験に
3.結論
挑戦しやすいよう、工夫が必要と考えている。
インタビュー・アンケート・先行研究の分
多数の外国人介護士候補生が日本で働くこ
析・考察結果からわかったことがある。まず、 とができ、福祉現場の人手不足の解消に繋が
インタビュー調査と先行研究では、外国人介
ると私たちは期待している。さらに、高齢者
護士の受け入れについて賛成の意見が多か
を大切にするという国民性を日本に伝える
ったが、しかし、そのなかでも、コミュニケ
ことも期待できよう。
ーション問題を不安に思う意見が寄せられ
日本はすでに超高齢社会に突入し、今後さ
た。コミュニケーションのほかに日本の文化
らに高齢者の人数が増え、介護を必要とする
の知識・読み書きなども問題視されている。 人数も増えていくといわれている。日本人介
次に、アンケートの集計結果からも同じく、 護士の人手不足が今後も悪化していくので
多数の方々が外国人介護士の受け入れに賛
あれば、外国人介護士の人手を必要とする日
成していることがわかった。私たちはこの結
は来るのであろう。彼らの受け入れにより、
果について歓迎的であり、今回のアンケート
その強みを活かすことで、日本の介護現場の
に協力してくれた八戸市民の多数は、外国人
発展に繋がると期待したい。