輝け!新時代の担い手たち 企業紹介 《第45回》 熱処理・金属表面処理のスペシャリスト! ハード技研工業(株) (企業概要) 《代表者》 鈴木 敏弘 《従業員》 10名 《所在地》 飯田市上殿岡412−5 《TEL》 0265−25−7876 《FAX》 0265−25−2980 《E-mail》 [email protected] 《事業内容》精密熱処理、真空熱処理、ガス軟窒化処理 精密洗浄、銀・銅ロー付、C&Zコート、 セラミックコーティング (C&Zコート処理製品) 日本列島のほぼ中央に位置する中央アルプス、 が多い弱電部品にはこの熱処理が最適だったこと 南アルプスを一望し、天竜川の清流を眼下にする が大きな要因である。そして、完成品に組み込ま 河岸段丘が広がり、恵まれた自然環境の『長野県 れる部品加工業者が多い地域であるため、メッキ 飯田市』 。 今回はそのすばらしい自然環境のなかに より安い黒染めの需要が高いことに目をつけ、昭 あるハード技研工業を紹介する。 和49年から金属表面処理(黒染め)を始め、さ 同社は、鈴木敏弘社長が東京で培ってきた技術 を活かし、昭和46年に金属熱処理工場として創 らに会社は発展を続けた。 〜21世紀の防錆処理 C&Zコート〜 業した。金属熱処理は部品の使い道に合わせて硬 昭和62年には工場を新築し、熱処理・表面処 度をつけるために、極めて重要な工程である。し 理技術レベルを向上させた。そして、特許をもつ かし、当時飯伊地域には熱処理専門企業がなく、 「C&Zコート」を昭和63年から導入した。 熱処理は諏訪地域の企業を中心に外注として活用 全国で17社がライセンス契約を交わしており、 されていたが、同社の熱処理技術が需要と上手く このライセンスは1県1企業のため、県内では当 合致し、成長につながった。単にライバル企業が 社だけが手掛けている。この処理は、亜鉛コート 無かったからではなく、精密熱処理に特化したか の後にクロメートコートを施す、 液体を使わない、 らである。精密熱処理とは、①小物(φ0.5× 無公害乾式メッキである。特徴としては、①防錆 6ミリ〜) 、②薄物(板厚0.02ミリ〜) 、③歪 力は電気亜鉛メッキの5〜6倍、②耐熱性に優れ みとり技術の3つの特徴があり、この地域に需要 ている(300度まで耐える) 、③被膜の密着力が 強力、④水素脆性がない、⑤塑性加工用潤滑被膜 藻が着生し、4ヶ月で8センチに成長した。すな (Zコート)として利用可能等があげられる。処 わち浄化だけではなく、河川や湖沼の生態系回復 理部品は、リレー部品から電磁クラッチ部品、ス に有効なことが解った。この結果を得て、平成1 テップモーター部品、自動車部品へと移り変わっ 1年に環境保全型ブロック「バイオメント」を開 ている。しかし、ここ数年企業の海外シフトが進 発して特許を取得した。現在、長良川で国土交通 み、 量産品は中国を中心に海外が生産拠点となり、 省が岐阜大学と共同で、水の浄化実験に利用して 多くは試作品や特殊加工品が残るだけになりつつ いるが、河川によって水質が異なるため実用化に ある。さらに単価切り下げにも苦悩する現状であ はもう少し時間がかかりそうだ。さらに、この技 る。そのうえ、熱処理を必要としない新素材の普 術を使い大気中で苔を着生させるセメント製品も 及も受注減少に影響した。そこで、鈴木社長は精 開発した。 適度な湿気と光があたる場所であれば、 密熱処理やC&Zコートは特殊技術として確立し、 植物が育つとするこのセメントブロックは、平成 安定はしているが、かつてのような伸びは期待で 13年に「バイオプラグ」の名称で特許を取得し きないと判断し、 自社製品開発に取り組むことで、 た。そして、次に、鈴木社長が思いついたのは、 小規模企業でもメーカーになることができ、脱下 現在特許出願中の、 「カーブミラーの自動曇り防 請を図れると考えた。 止装置」である。カーブミラーの表面に霜が付着 〜自社製品開発へのチャレンジ〜 して、表面が曇り、見えにくくなってしまうのを まず、ゴルフシャフトや釣り竿の製造過程で出 防ぐために、超音波でミラーの曇りを防止すると る炭素繊維の屑は、 国内で年間千数百トンを越え、 いうもの。カーブミラーのひさし部分に取り付け 髪の毛のような素材だが腐敗せず、燃えないこと た超音波発生装置と小型プロペラが、温度センサ から埋め立て以外に処理方法が無いことに目をつ ーに連動してミラー全体に超音波を送り、水滴を け、 炭素繊維のリサイクル製品開発に取り組んだ。 細かに分解する装置である。太陽光発電による自 県の創造法認定を受け、試行錯誤の末に平成8年 然エネルギーを利用して蓄電し、温度センサーに に炭素繊維の切断機を開発した。そして、炭素繊 より気温が0℃以下になった場合に稼働して、夜 維を2〜3センチに切断したものをセメントに混 間でも8〜10時間稼働が可能という特徴がある。 合しブロック化し強度に優れたセメント製品を試 最大のメリットは、既存のカーブミラーに電気工 作した。実験結果から炭素繊維が含まれているブ 事不要で取り付けができることである。 ロックは2割程度強度が増すことが証明されたが、 鈴木社長の考えは、 「企業は時代の変化に対応 この技術はすでに他社が手掛けていた。そこで今 できなければ生き残れない。そして、中小企業で 度は、炭素繊維が水の浄化機能を持つことに着目 もアイデアを形に変えて世の中に出すことで、隙 し、 浸透性があるセメントに炭素繊維を混ぜると、 間産業に参入することができる」ということであ 水中の微粒子が繊維に捕えられ、水の浄化になる る。今後も、特色技術を活かして、自社製品開発 ことを思いついた。炭素繊維の入ったブロックを に積極的に取り組んで行く、ハード技研工業に注 水中に敷いた浄化実験では2ヶ月程でブロックに 目したい。
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