1 - 丸亀市

第3章
スポーツを取り巻く社会の現状と課題
(1)社会環境の変化とスポーツとの関係
ライフスタイルの多様化や尐子化、高齢化など、社会の情勢や仕組みが大きく変化し、また、地
域社会の活性化や協働の推進などの取組が求められている中で、スポーツにも多面にわたる役割が
求められています。
○ライフスタイルの多様化
男女共同参画社会にあって女性の社会進出が進み、また、単身世帯や核家族が増加するなど、ライ
フスタイルや市民の価値観やニーズも多様化しており、その中で、物質的な面で生活を豊かにするこ
とより、心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたいとする傾向が強まっています。
心の豊かさをもたらすための手段としてスポーツへの期待が高まっています。
○尐子化
尐子化時代にあって、子ども同士の交流機会が減り、子どもの社会性が育まれにくくなるなど、子
どもの健やかな成長への影響が懸念されていることから、学校や地域において、すべての子どもがス
ポーツを楽しむことができる環境の整備を図ることが求められています。
○高齢化
団塊の世代注2が高齢期をむかえ、ますます高齢化が進む中で、高齢者の介護予防や心身の健康の維
持増進の手段として、高齢者に合った身体活動やトレーニングへの期待が高まっています。また、セ
カンドライフを過ごすにあたり、多くの高齢者が新しい活動の場を地域に求めるようになっています。
スポーツは共通の趣味となりやすいことから、地域参加へのきっかけとなり、スポーツとの関わりの
中で生きがいや喜び、充実感などを得られることが期待されています。
○地域社会の空洞化
子どもを犯罪や事故から守る地域の安全力、一人暮らしの高齢者を見守る地域の安心力、あるいは、
地域ぐるみで子どもを育てる地域の教育力など、従来地域が有していた様々な機能が低下しており、
地域社会での人と人との交流の希薄化が社会問題となっています。また、平成 23 年 3 月 11 日に発生
した未曾有の東日本大震災やその復旧・復興を通じて、地域の絆が改めて重要視されています。そう
した中で、スポーツを通じた交流や連帯感は、地域社会の活性化や再生につながるものとして期待さ
れています。
注2
団塊の世代
1947 年(昭和 22 年)~1949 年(昭和 24 年)までの 3 年間に出生した世代を指す。全人口に占める割合が高く、
約 800 万人にのぼる。
12
○ノーマライゼーション注3の浸透
近年におけるパラリンピック、スペシャルオリンピック注4、女性スポーツ会議注5などのノーマラ
イゼーションの理念の広がりとともに、スポーツの関わり方は多様化しています。今後のスポーツ振
興においても、ノーマライゼーションの一層の浸透が不可欠です。
○多様な担い手との協働
行財政改革への取組が進められている中で、スポーツにおいても市民や市民団体、大学、企業など
との協働による効果的・効能的な施策の展開が求められています。
注3
ノーマライゼーション
高齢者や障がい者等、社会的に不利益を受けやすい人たちを特別扱いするのではなく、社会を構成する一員として対
等な立場で関わり合い、日常生活を送れることが本来あるべき姿とする考え方。
注4
スペシャルオリンピック
注5
女性スポーツ会議
知的障害者のためのスポーツ競技大会。各国に普及しており、日本では「ゆうあいピック」の名称で開催されている。
スポーツにおける組織役員や指導者に女性が尐ないことから、スポーツへの女性の参画を促し、スポーツにおける女
性の地位を向上させることにより、スポーツや他の分野における男女共同参画社会の実現をめざす会議や組織のこと。
13
(2)丸亀市の運動やスポーツの現状・課題と施策の方向性
ビジョンを策定するにあたり、
「丸亀市スポーツに関するアンケート調査注6(以下、アンケート)」
を実施しました。また、地区コミュニティについては、アンケートに加え、聞取り調査も行いまし
た。ここでは、主にそのアンケートと聞取り調査の結果を基に、社会現象を背景として本市の現状
と課題について述べ、今後の施策の方向性を模索します。
①運動やスポーツをする市民の現状と課題
◆運動やスポーツの実施状況
市民アンケートによると週 1 回以上運動する人の割合は 37.9%(18 歳以上)でした。国の調査注7で
は「週に 3 日以上」
「週に 1~2 日以上」運動する人の合計は 45.3%です。国と市では調査方法が「個
別聞取り」と「郵送」と異なり、その上設問の内容等にも相違があるため単純に比較はできませんが、
7.4%低い結果となっています。しかしながら、県の調査注8では 26.4%で、設問内容等が異なるため
単純な比較はできないものの、市の方が 11.4%高いという結果でした。
運動やスポーツをする理由には「健康の維持・増進」が 1 番で、
「ストレス解消・気分転換」
「ダイ
エット・肥満解消」と続き、
「好きだから」は 4 番目、「仲間との親睦」が 5 番目でした。
一方で、この一年の間に運動を「ほとんどしてしない」という人は、丸亀市では 47.6%と高い数字
が出ています。前述のように単純な比較はできませんが、国の調査で「運動やスポーツをしなかった」
人は 22.2%、県の調査では、「まったく行わなかった」が 30.0%、
「年に 1~3 日」が 17.5%でした。
■運動やスポーツの実施頻度
ほとんど毎日
1週間に1回
その他
6.9 6.9
0%
注6
14.0
1週間に4~5回
2週間に1回
ほとんどしていない
10.1 5.1 6.5
20%
40%
1週間に2~3回
1ヶ月に1回
無回答
47.6
60%
80%
100%
丸亀市スポーツに関するアンケート調査
市民(18 歳以上対象・調査方法:郵送法)
、小学 5 年生、中学 2 年生、地区コミュニティ、競技団体、スポーツ尐年
団を対象にしたアンケート調査。平成 24 年 2 月から 9 月の期間で実施。
注7
国の調査
国のデータの出典 内閣府『体力・スポーツに関する世論調査(平成 21 年度)
』(成人対象・調査方法:個別面接聴
取法)
注8
県の調査
県のデータの出典 『香川県県政世論調査(平成 22 年度)』
(20 歳以上対象・調査方法:郵送法)
14
中でも、男性で 40 歳から 50 歳代、女性で 30 歳未満から 50 歳代、運動をほとんどしていない人
が 50%を超えていました。全体に働き盛り世代の運動不足が顕著となっており、運動やスポーツをす
るための環境づくりも大切です。
■年代別運動やスポーツの実施頻度
ほとんど毎日
1週間に1回
その他
8.3
30歳未満
13.5
12.3
30歳代
60歳代
10.1
70歳代
9.1
80歳以上
7.7
9.0
12.2
50歳代
10.4
11.0
10.7
40歳代
1週間に4~5回
2週間に1回
ほとんどしていない
14.3
9.1
45.8
10.3
51.0
8.5
11.2
10.7
12.5
21.7
54.2
8.7
52.0
10.4
43.3
10.0
37.4
6.9 6.9
0%
1週間に2~3回
1ヶ月に1回
無回答
62.1
20%
40%
60%
80%
100%
■運動やスポーツの男女別年齢別実施頻度
ほとんど
1週間に
1週間に
1週間に
2週間に
1ヶ月に
ほとんど
その他
毎日
男
性
女
性
4~5回
2~3回
1回
1回
1回
無回答
していない
30 歳未満
8.3
10.4
14.6
14.6
0.0
16.7
0.0
35.4
0.0
30 歳代
4.5
5.7
12.5
11.4
5.7
6.8
1.1
52.3
0.0
40 歳代
1.5
6.1
7.6
10.6
12.1
10.6
1.5
50.0
0.0
50 歳代
4.7
1.6
14.1
12.5
7.8
18.8
3.1
37.5
0.0
60 歳代
5.9
2.9
8.8
8.8
5.9
2.9
2.9
61.8
0.0
70 歳代
10.9
13.0
22.8
6.5
2.2
3.3
5.4
34.8
1.1
80 歳以上
13.1
11.7
13.1
11.7
4.4
8.0
1.5
36.5
0.0
30 歳未満
2.1
6.3
12.5
6.3
8.3
8.3
0.0
56.3
0.0
30 歳代
6.5
4.6
12.0
11.1
3.7
10.2
0.0
51.9
0.0
40 歳代
5.4
4.5
12.6
8.1
6.3
1.8
4.5
56.8
0.0
50 歳代
4.4
0.0
11.0
9.9
7.7
4.4
2.2
60.4
0.0
60 歳代
3.9
5.9
5.9
5.9
3.9
0.0
7.8
60.8
5.9
70 歳代
8.1
6.6
21.3
11.8
5.9
4.4
1.5
39.0
1.5
80 歳以上
7.1
10.0
15.3
9.4
2.4
3.5
2.9
48.8
0.6
15
◆健康づくり目的の運動やスポーツへの関心
国の医療制度改革に伴い、平成 20 年度からは特定健康診査、特定保健指導が始まったこともあり、
いわゆるメタボ(メタボリックシンドローム)という言葉が流行するなど、生活習慣病予防、また運
動習慣の重要性が再認識されて、健康づくりのための運動やスポーツへの関心が高まっています。
本市地区コミュニティでの運動やスポーツの活動状況をみてみると、全てが何らかの運動やスポー
ツの推進に取り組んでいます。
本市においても、運動やスポーツをする理由の 1 番は「健康の維持・増進」でした。
2 位の「ストレス解消・気分転換」と 3 位の「ダイエット・肥満解消」を合わせると、運動やスポ
ーツに「美容と健康」の効果を期待していることがわかります。
■運動やスポーツをする理由(上位 5 位)
30.8
健康の維持・増進
23.2
ストレス解消・気分転換
ダイエット・肥満解消
15.2
運動・スポーツをすることが好きだから
12.5
仲間との親睦
9.9
0.0
5.0
10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0
(%)
◆ウオーキングの普及
それでは、どんな運動やスポーツをしているのでしょうか。トップは「ウオーキング・散歩」の 29.6%、
次に「体操・エアロビクス」の 6.4%と続きます。
全国的にもウオーキングやジョギング・ランニングや体操など、特別に器具や装備の必要がなくて
も気軽に、どこでも、一人でも楽しめる運動やスポーツが近年急速に普及しています。
国の調査 (複数回答可)でも、この 1 年間で行った運動やスポーツとして「ウオーキング(歩け歩
け運動、散歩などを含む)
」が 48.2%と最も高く、2 位の「体操(ラジオ体操、職場体操、美容体操、
エアロビクス、縄跳びを含む)
」が 26.2%となっています。約半数の人が「ウオーキング」をしてい
るという結果が出ています。
また、笹川スポーツ財団のスポーツライフデータ 2010 によると、種目別実施率は散歩(ぶらぶら
歩き)とウオーキングで 59.3%、人口は 6,157 万人と推計しています。
16
■実施している運動やスポーツの種目(上位 5 位)
ウオーキング・散歩
29.6
体操・エアロビクス
6.4
ゴルフ
5.9
5.3
スポーツジムに通う
4.7
登山
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
(%)
身近なところで気軽にできるということでは、ウオーキングが地区コミュニティでも注目されてい
ます。聞取り調査では、運動やスポーツの効果的な取組として、10 地区がウオーキング大会を挙げて
いました。健康増進のための効果的なスポーツ推進の取組として、ウオーキング大会を開催している、
または、今後開催したいと考えている地区コミュニティが多数ありました。また、地域の歴史探訪や
クリーン活動など異なる要素を取り入れることで単調にならず、幼児から高齢者まで誰でも参加でき
る世代間交流行事として、新たにウオーキングの行事を企画している地区も 4 地区ありました。
丸亀市健康増進計画「健やか
まるがめ21」の「運動(体力づくり)」の目標には、身近なウオ
ーキングコースの認知度のアップや 1 日の歩行数 10,000 歩以上など「歩く」ことに注目しています。
丸亀市健康増進計画市民会議の「運動グループ」では、活動目標を「誰もが気軽にできるウオーキン
グの普及」として、啓発のために平成 20 年度から年 2 回のペースで、丸亀城や飯山楠見池などのウ
オーキングコースを紹介するとともに正しいウオーキングの姿勢や効用などを掲載した「かわら版」
を作成し、全世帯に配布しています。
「今より 1,000 歩、多く歩こう」という呼びかけもしています。
各地区コミュニティでもウオーキング大会やバスハイクなど実施していますが、市全体でも、香川
県健康保険協会や香川県里山ボランティアガイド組合などの団体とともに「健康ウオーク in まるが
め」や、県内他市町とともに「こんぴら健脚大会」を開催しています。
◆ジョギング・ランニングブーム
ウオーキングとともに、ジョギングやランニングの人気が高まっていることから、近年全国各地で
新たに市民マラソン大会が開催されるなどマラソンが身近なスポーツとして盛んになっています。
本市でも、歴史ある「香川丸亀国際ハーフマラソン大会」を共催しており、市民ランナーも第 66
回大会では全市民の 1%にあたる 1,196 人が参加しています。(・・・詳細については、③スポーツによ
るまちの賑わいづくりの現状と課題
◆市民が育んできた「香川丸亀国際ハーフマラソン大会」で後
述)
今後も、「香川丸亀国際ハーフマラソン大会」が、市民が一流のアスリートを身近に感じられる機
会となるとともに、市民ランナーにとって自ら健康の増進を図る手段として、一流のランナーと一緒
に走るという一つの目標となるとともに、走る喜びや楽しさを満喫する有意義な大会となるよう一層
17
の充実を図っていくことが大切です。
「こんぴら健脚大会」
◆きっかけづくり
さて、最近 1 年の間に運動やスポーツをほとんどしていない人は約半数近い 47.6%という結果でし
た。しかしながら、68.7%の人が運動やスポーツ活動など体を動かすことが好き、またはどちらかと
いうと好きと答えています。それにも関わらず、していない理由としては、「仕事や家事などが忙し
い」という時間的な制約や、
「仕事や家事での疲れ」や「体が弱い」からといった肉体的な理由に加
え、
「きっかけがない」という理由も 1 割と多かったことにも注目しなければなりません。
また、健康の維持増進と運動の関連について、
「健康の維持増進に運動は必要」と答えた人が 68.2%
で「どちらかというと必要」の 27.3%とあわせると 95.5%の人が、健康の維持増進には運動が必要だ
と考えていることがわかりました。
ところが、
「非常に運動不足」
「運動不足」との回答が全体で 71.4%であり、健康に運動が必要と考
えている人でもほぼ同じ割合で運動不足を感じているという結果で、必要だとわかっている人は運動
しているという相関関係はありませんでした。全体の 7 割近くの市民が運動不足だと感じています。
■運動不足かどうか
非常に運動不足
あまり運動不足ではない
わからない
19.2
0%
運動不足
運動不足ではない
無回答
52.2
20%
40%
16.2
60%
18
80%
10.5
100%
■運動やスポーツをしない理由(上位 5 位)
仕事が忙しい
11.6
きっかけがない
11.3
嫌いではないが積極的になれない
10.4
仕事や家事で疲れている
10.0
年をとって体力に自信がない
0.0
8.2
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0 12.0 14.0
(%)
■生活の中に運動やスポーツが必要かどうか
必要
あまり必要でない
わからない
どちらかというと必要
必要ない
無回答
68.2
0%
20%
27.3
40%
60%
80%
100%
◆高齢者、障がい者と運動やスポーツ
高齢者や障がい者にとって運動やスポーツは、健康・体力づくりや介護予防、機能回復などといっ
た効用とともに、生きがいや仲間との絆づくりという社会参加の促進の意味もあります。高齢者を中
心とする国民の健康の保持・増進、社会参加、生きがいの高揚等を図り、ふれあいと活力のある長寿
社会の形成に寄与することを目的として始まった「ねんりんピック(全国健康福祉祭)」などを契機に
高齢者の運動やスポーツによる仲間づくりが活発に行われています。また、「パラリンピック」での
障がいを持つアスリートたちの活躍が大きく報道され、人々に勇気と感動を与えています。
「障害者スポーツ大会」
「シニアスポーツ大会」
19
本市では高齢者向けに「シニアスポーツ大会」を開催していますが、老人会などの団体が主体的に
運動やスポーツ行事を行っており、全市的に「老人スポーツ大会」を開催し、「ペタンク大会」など
も行われています。
また、地区コミュニティにおいては、介護予防を目的とした「しゃんと体操」のほかにストレッチ
体操や 3B体操もしており、認知症予防の高齢者教室を開催してバランスボールや簡易な体操をして
いる地区もありました。ウオーキング大会のほかに、身体運動ということで「清掃活動」や「老人農
園」など工夫を凝らした企画を実施している地区もあります。
一方で高齢者の定義も 65 歳以上としたり、70 歳以上、75 歳以上とするなど一律ではありません。
高齢化が進行する中、高齢者の志向やニーズも多様化しており、体力にも差異があります。そのよう
なことから、10 の地区コミュニティでは、高齢者に特化した行事ではなく世代間交流ができるような
取組が必要であると回答しており、高齢者だけという年齢を限定しない幅広い世代が参加できる運動
やスポーツの機会を増やす取組も大事になっています。
障がい者の運動やスポーツについて、
「丸亀市障害者基本計画・障害福祉計画」では、
「住み慣れた
地域で健やかに暮らせるまちを目指して」という基本理念のもとに、「スポーツ・レクリエーション
および文化活動の推進」を施策の柱に掲げています。
また、障がい者が運動やスポーツを通じて自らの障がいを克服し、明るく勇気を持ってたくましく
生きる能力を育てるとともに、社会の障がい者に対する認識を深めることを目的に、身体障害者福祉
連合協会や障害者施設とともに様々な団体が協働で、「障害者スポーツ大会」を開催しています。ボ
ランティア団体が各種運動行事のサポートなどを行っています。
しかしながら、体育施設や運動公園の設備、スポーツ用具などの充実についての要望も寄せられて
おり、障がい者が気軽に運動やスポーツを行える場や機会が十分とは言えません。
今後は、高齢者や障がい者のノーマライゼーションを進める観点から、身近な地域において誰もが
気軽に運動やスポーツを行えるように環境を整える必要があります。身近な地域で活動を支えるスポ
ーツボランティアなどの人材を育成することが大切です。
また、施設面では体育館や地区コミュニティセンター、運動公園、学校などの施設をユニバーサル
デザイン注9の考え方を踏まえたバリアフリー化を図る必要があります。
注9
ユニバーサルデザイン
できるだけ多くの人が利用できるようにすることを基本コンセプトに障がいや能力を問わずに利用することができ
る施設・製品等を設計デザインすることをいう。「バリアフリー」が高齢者や障がい者の障壁(バリア)を取り除くと
いう発想なのに対し、最初から多様な人が使えるようにデザインする考え方である。
20
②子どもの運動やスポーツの現状と課題
◆現代っ子の体格はアップ、体カはダウンするも回復の兆し
文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、子どもの体力・運動能力は、昭和 60
年ごろを境にして低下が続いていましたが、教育現場などで運動習慣の改善に取り組んだ結果が実り
つつあり、平成 22 年度の体力・運動能力調査では回復が鮮明になっています。しかしながら、今の
子どもの結果をその親の世代である 30 年前と比較すると、ほとんどのテスト項目において、子ども
の世代が親の世代を下回っています。逆に、今の子どもは親の子どものころよりも全体的に背が伸び
て、体格がよくなっています。このように、体格が向上しているにもかかわらず、体力・運動能力が
低下していることは、身体能力が低下していることを示しているともいえます。
子どもの時期に運動やスポーツに親しむことは、成長や発達に必要な体力を高め、生涯にわたりよ
り健康な状態をつくっていくことにつながると考えます。
さて、本市の子どもたちの運動やスポーツの実施状況をみてみますと、小学 5 年生と中学 2 年生へ
のアンケートでは、男子については、8 割以上の児童、生徒が体育の授業以外で週に 1 回以上運動や
スポーツを実施していますが、全国や県に比べるとその値は低いことが分かります。中学 2 年生の女
子に関しては、週に 1 回以上運動やスポーツを実施する割合が 7 割を下回っており、男子同様、全国
や県より低いことがわかりました。
■週 1 回以上運動やスポーツをする割合
小学5年生
市
100.0
80.0
84.1
県
中学2年生
全国
88.9 89.4
100.0
79.9 79.7
市
60.0
60.0
40.0
40.0
20.0
20.0
0.0
全国
89.6 91.890.4
80.0
71.0
県
65.4
71.9
70.5
0.0
男子
女子
男子
※データの出典『平成 22 年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果』
21
女子
■新体力テストの結果(50m 走)
小学5年生
(秒)
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
S60
9.1
9.2
9.3
男子
9.5
9.1
女子
中学2年生
H22
(秒)
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
9.2 9.4 9.6
男子
全国
女子
S60
H22
7.9
7.9
8.8
8.6
8.0
8.0
8.8
8.6
男子
女子
男子
女子
全国
県
県
■新体力テストの結果(ボール投げ)
小学5年生
(m)
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
S60
29.9
26.0
25.5
女子
全国
17.3
15.0
15.0
男子
S60
H22
(m)
35.0
30.0 22.1
21.9
21.9
21.5
25.0
16.0
20.0
15.4
13.9
13.7
15.0
10.0
5.0
0.0
男子
女子
男子
女子
28.6
17.6
男子
中学2年生
H22
女子
全国
県
県
※データの出典『香川県体力・運動能力調査』
学校体育においては、子どもの運動能力の現状を適切に把握・分析し、それに応じた方策を講じな
がら、子どもの発達段階に応じて指導内容やその方法を工夫・改善するとともに、遠足などの校外行
事を通して、児童生徒が郷土の豊かな自然と触れ合いながら体力の向上を図っています。
一方で、地域にあっては、学校の部活動などにスポーツ指導者などを派遣し、外部の人材による活
性化を目的としたスポーツボランティアなどのしくみをつくることも大切です。
現在、学校部活動を活性化するために外部から指導者を招いて指導を行うなどの機会をつくり、教
育委員会がその支援をしています。
今後は、指導者だけでなく、地域との連携による体力増強の取組が行われることが期待されていま
す。
◆子どもの外遊びの現状
小学 5 年生については、外遊びをする児童は「よくする」と「する」合わせて 7 割以上います。中
学 2 年生については、
小学 5 年生に比べると低くなりますが、
6 割以上の生徒が外遊びをしています。
ただし、それは男女平均した場合の数字で、小学 5 年生、中学 2 年生ともに外遊びをしない女子の割
合は男子の約 2 倍で、小学 5 年生で 27.5%、中学 2 年生で 49.4%が外で遊ばないと答えています。
22
■外遊びの実施頻度
よくする
男子
する
しない
46.2
無回答
39.7
13.9
小学 5 年生
女子
25.9
男子
46.3
37.7
27.5
39.0
23.0
中学 2 年生
女子
17.2
0%
33.3
20%
49.4
40%
60%
80%
100%
「なぜ運動をしないのか」との問では、小学 5 年生は、
「家の中で遊ぶ方が好き」が 1 位で、中学 2
年生については、
「他の事で忙しい」が 1 位となっています。
■運動やスポーツをしない理由(上位 5 位)
小学5年生
中学2年生
11.0
体を動かすことが好きではない
家の中で遊ぶ方が好き
23.0
15.3
10.4
やる気がしない
16.4
12.6
他の事で忙しい
18.7
10.6
11.1
特に理由はない
0.0
15.1
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
(%)
小学 5 年生では 7 割がスポーツ以外の習い事や塾に通っています。中学 2 年生では 39.8%が一週間
のうち 2~3 日通うと答えており、4 日以上通うと答えた生徒も 16.4%を数え、運動やスポーツをし
ない大きな理由となっていると思われます。
23
■一週間のうちでスポーツ以外の習い事や塾へ行く日数
ほとんど行かない
1日
29.9
小学5年生
中学2年生
4~5日
18.7
33.7
0%
2~3日
33.7
9.9
20%
ほとんど毎日
10.3 6.9
39.8
40%
無回答
8.1 8.3
60%
80%
100%
また、学校から帰宅後にテレビを見たり、ゲームをする時間は 1~2 時間程度という答えが小学 5
年生、中学 2 年生ともに約 4 割で一番多く、5 時間以上との答えも1割程度を数え、ゲームのような
家の中での遊びも、運動やスポーツをしない原因の一つになっているようで、概ね中学 2 年生の方が
テレビの視聴やゲームの実施時間は長い傾向にあります。
■ゲームやテレビの視聴時間
ほとんどしない
1時間以内
13.3
小学5年生
中学2年生
20.7
11.1
0%
1~2時間
3~4時間
37.6
18.4
41.8
20%
5時間以上
40%
29.2
60%
無回答
9.8
11.5
80%
100%
では、子どもたちは運動やスポーツのことが嫌いかというとそうではありませんでした。
「運動や
スポーツが好きか」との問に、女子は成長するにつれスポーツ離れする傾向があり、中学 2 年生女子
では「嫌い」が 2 割となりますが、平均すると運動やスポーツを好んでいるという結果が出ています。
小学 5 年生では 87.4%、中学 2 年生では 80.9%が「好き」または「どちらかというと好き」と答え
ています。
24
■運動が好きか嫌いか
好き
どちらかというと嫌い
わからない
どちらかというと好き
嫌い
無回答
60.2
小学5年生
27.2
54.2
中学2年生
0%
20%
26.7
40%
60%
7.9
8.7
80%
100%
また、小学 5 年生で 4 割、中学 2 年生で約半数の子どもたちが、
「運動不足、または尐し運動不足」
と思っていることがわかりました。
一方では、9 割以上の児童、生徒が生活の中で運動やスポーツの必要性を感じているという結果が
出ています。
■運動不足かどうか
とても思う 思わない
小学5年生
12.0
中学2年生
尐し思う
わからない
29.5
16.5
0%
20.7
31.6
20%
あまり思わない
無回答
40%
28.1
21.3
19.5
60%
80%
100%
■生活の中に運動やスポーツが必要かどうか
とても必要だと思う
あまり必要だと思わない
わからない
尐し必要だと思う
必要だとは思わない
無回答
小学5年生
62.8
29.5
中学2年生
62.4
28.3
0%
20%
40%
25
60%
80%
100%
アンケートでは子どもたちが運動やスポーツを嫌いなのではなく、生活に必要なものであると感じ
ていながら、外遊びが減っているのは、テレビやゲームなどの室内での遊びの増加や、塾や習い事に
通う子どもの増加が原因であると推測できます。
それとともに、尐子化などにより一緒に活動する仲間が減尐したことや都市化による空き地や生活
道路といった子どもたちの手軽な遊び場の減尐、交通事故や不審者などの安全面での不安もその要因
となっています。
また、日常生活の様々な要因が相互に作用し、体を動かす機会が減尐しているのではないかと考え
られます。
◆肥満傾向児注 10 の出現率
近年では、子どもたちの体力低下とともに、小児肥満が深刻化しメタボリックシンドロームとの関
連が問題視されています。小児肥満の子どもは、その約 70%が成人肥満に移行すると考えられており、
高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を合併する可能性が高くなることから、子どもの頃から
の肥満予防が大切であると言われています。
肥満傾向児の出現率について本市の現状をみると、女子についてはすべての年代において全国と県
を上回っています。肥満傾向児の数としては多くはないですが、小学生から出現率が高くなる傾向に
あります。
■肥満傾向児の出現率
男子
市
県
15.0
13.4
12.0
8.4
9.0
6.0
3.0
5.8 5.7
3.1
2.3
2.1
女子
全国
14.8
10.3
9.5
県
全国
15.0
10.1
9.0
6.8
5.9
市
12.0
9.0
6.0
5.2
10.4
3.0
4.3
3.2
2.4
6.56.4
4.9
6.8
5.8
10.4
10.6
10.1
8.0
8.1
7.5
0.0
0.0
5歳児
小2
小4
小6
5歳児
中2
小2
小4
小6
中2
※資料:子育て支援課(平成 23 年度)
肥満の二大要因は、食べすぎと運動不足であると言われています。体重の減量というと、運動より
もダイエット(食事制限)がすぐにイメージされがちですが、肥満の予防や解消には、運動もおなじ
注 10
肥満傾向児
性別・年齢別・身長別に出した標準体重から求めた肥満度がプラス 20%以上の体重の児童。
※肥満度=(体重-身長別標準体重)÷身長別標準体重×100
26
くらい大切です。運動そのものによるエネルギー消費に加えて、筋肉がつき基礎代謝量が増えること
で体脂肪を燃えやすくする、という理由があるからです。食生活とともに日常生活の中で、身体を動
かすことも大切です。
◆子どもの運動やスポーツを支える学校と家庭、地域の連携
学校教育においては、子どもたちの体力向上の取組が行われています。そして、学校教育以外の時
間、つまり放課後や土曜日・日曜日・祝日、或いは夏休みなどの長期休業期間中においても、子ども
たちが家庭や地域の中で、運動やスポーツの楽しさを体感できるように、生活習慣の改善や地域が一
体となった取組が大切になってきています。運動やスポーツを通じて子どもたちの心身の健全育成を
図る役割は保護者や学校だけに課せられた問題ではなく、地域全体で子どもたちを見守り支援する環
境づくりが必要と思われます。
一方で、子どもたちが運動やスポーツの習慣を身につけるためには、大人の生活習慣を改善する必
要があります。アンケートでは、ちょうど親の世代にあたる 40 歳代男性の 86.3%、女性の 81.0%が
運動不足と答えています。このことから、子どもだけでなく大人に対しても、生活習慣の改善啓発を
行うとともに、親子が一緒になって身体を動かす楽しさを実体験できるような場や機会をつくること
も子どもたちが運動やスポーツの習慣を身につけるための有効な方策と考えられます。また、親子で
運動やスポーツを楽しむことでスキンシップによる絆が深まり、加えて将来的に小児肥満などによる
生活習慣病の予防にもつながることも期待されます。
さて、各地区コミュニティの「まちづくり計画」では、スポーツ・レクリエーションを、健康増進
の目的とともに世代間交流の手段、コミュニケーション向上の要素としてとらえており、コミュニケ
ーション向上のために親と子、そして孫という三世代が交流できる運動やスポーツの行事にしていき
たいと考えている地域が多く見受けられました。総合型地域スポーツクラブと連携・協働して夏休み
子ども教室を実施し、地域で勉強を教えたり、運動やスポーツを取り入れながら工夫を凝らした活動
をしているコミュニティもあります。
なお、小学生ぐらいまでは地区コミュニティの行事へ祖父母や両親とともに参加しているようです
が、中学生になるとあまり参加しなくなり、コミュニティセンターの利用も尐ないとのことでしたが、
子どもに特化したスポーツ行事などの取組をするためには、人的な要因もあって余裕がないというの
が実情のようです。
しかしながら、子どもは未来をつくる大事な地域の宝として、子どもを取り巻く環境を十分に理解
したうえで、地域全体で子どもの成長を見守り育てていくという観点から、学校と家庭、そして地域
が連携・協力し、子どもが幼尐期から日常的に運動や外遊びに親しむことができるよう、また、小学
校入学以降も放課後や休日等も地域において自由に遊べる環境や場所をつくることが必要です。
更に、子どもが自ら進んで体を動かすようになるためには、地元のプロスポーツチームの協力を得
てスポーツの楽しさや魅力を体験できるスポーツ教室の開催など、子どもが夢を育めるような機会を
つくることも大切です。
27
◆スポーツ尐年団の活動と指導者の育成と確保
子どものころから何らかの競技スポーツに関心を持ち、親しむことは、青尐年の健全育成とともに、
それぞれの競技スポーツのすそ野を広げる意味からも重要です。
本市のスポーツ尐年団の活動を見てみますと、平成 24 年 9 月 30 日現在では、15 種目 67 の団体で
297 人の指導者のもとで 1,843 人の団員が活動しています。平成 22 年度の 69 団体、1,878 人と比べ
ると、団数や団員が減尐しているように見えますが、尐子化の時代にあって子ども全体に占める割合
において変化はなく、高い組織率を維持しており、各団での活動とともに交流大会など各種競技スポ
ーツの振興を行っています。生涯スポーツを推進するという観点から、尐年期のスポーツの出会いと、
スポーツに接する場を提供しスポーツの楽しさを伝え入団を促すために、各団で初心者教室なども行
っております。また、市のスポーツ尐年団本部では、スポーツ尐年団を支える母集団への啓発研修や
指導者養成講習なども行っています。
アンケートによると、7 割の団体が週に 3~5 日活動しており、ほとんどが他の団体(同種・異種
競技の団体、学校、地区コミュニティなど)と交流を行うなど、活発に活動していることがわかりま
した。
■スポーツ尐年団の団数と団員数(各年度 4 月 1 日現在)
団数
(団数)69
60
1,878
団員数
69
67
1,847
1,815
(人)
2,000
45
1,500
1,000
30
500
15
0
0
平成22年度 平成23年度 平成24年度
さて、競技スポーツには、スポーツそのものを楽しむという側面と、それぞれが能力や勝敗を競い
合うという側面があります。スポーツを通じて互いに競い合い切磋琢磨することは、心身の鍛錬や競
技力の向上が期待できる一方で、過度な鍛錬や高い競技力の追及が子どもの肉体や精神に大きな負担
を強いることも懸念されます。子どもたちが無理なくスポーツを楽しむためには、発達段階に応じた
指導内容や指導方法を取り入れた適切なスポーツの指導者を確保することが重要と思われます。今後
は、進化するスポーツ科学に基づいて指導できるような研修なども必要になると思われます。
アンケートでは、半数以上の団体が「指導者はやや尐ない」と感じており、指導者の高齢化を感じ
るとの答えも 3 割程度ありました。スポーツ尐年団の更なる活動基盤の強化のためには、優秀な指導
者を確保し、育成するための方策を講ずる必要があると考えます。
28
■スポーツ尐年団の指導者数
指導者数
(人)
350
300
250
200
150
100
50
0
289
299
296
平成22年度 平成23年度 平成24年度
29