「企業の社会的責任に関する意識調査」から。

データ分析
「企業の社会的責任に関する意識調査」から。
「企業の社会的責任
(CSR)
」
を意識し、
環境対策、
要と考えているかについては、
明確な論拠がまだ
法令順守、
人権配慮、
消費者対応などにバランス
整備されていないのが現状です。
そこで、
日本経
よく取り組もうという動きが産業界に広がり始
済新聞社広告局では
「企業の社会的責任に関する
めています。
先進企業では専門部署を設置するな
意識調査」
を企画し、
CSRに関するビジネスピープ
どの画期的な動きが見られますし、
欧米から広が
ルの意識を調査しました
(調査概要は別掲)
。
調査
りつつある社会的責任投資
(SRI)
も注目を集めて
結果の概要、
CSRイメージと企業イメージとの関
います。
しかし、
情報の受け手がCSRをどう理解し
連について解説します。
とらえているか、
どのような具体的取り組みを必
(調査概要)
調査目的
ビジネスパーソンに企業活動に対する意識、
購買行動を測定することにより、
CSRに対する意識や実態を把握し、
今後のマーケティングの基礎資料とする
調査対象者
首都圏40km圏に居住し、
上場企業または資本金5000万円以上かつ従業員数100
人以上の非上場企業に勤務するビジネスパーソン
(男女)
抽出方法
日経企業イメージ調査
(毎年8月実施)
をもとに調査協力意向者をリスト化し
た
「日経消費者総合パネル」
より上記該当者を無作為抽出
サンプル数
1400s
回収数
(有効回収率)577s
(41.2%)
調査方法
質問紙郵送法
調査時期
2003年9月5日∼9月19日
調査実施機関
日経リサーチ
CSRコミュニケーション
日本経済新聞社広告局
広告局業務推進部
塚田 剛志
逆に、
「企業はもっぱら利益をあげることに注
CSRは企業の存続条件と見られてい
る
力すべきで社会性を追求する必要はない」
(5.2%)
まず、
企業活動についての意識を尋ねた結果を
では77.8%があてはまらないと回答。
環境問題、
雇
図1に示しました。
回答率が高かったのは、
「企業
用の確保、
情報公開をはじめとして企業に対する
が地球環境に配慮するのは当然の義務である」
(94.1%:
要請は日増しに強くなっています。
企業の社会的
「あてはまる」
「まああてはまる」
の合計、
以下同)
責任に対する意識の高さが改めて浮き彫りにな
を筆頭に
「今後、
従業員や社会を軽視する企業は
ったと言えるでしょう。
存続できないと思う」
(89.8%)、
「企業は事業報告
をはじめとした自社の情報公開を積極的に行う
べきだ」
(87.9%)でした。
図1
以下の項目について、どの程度あてはまりますか(それぞれ1つ○印)(N=577)
あてはまる
まああてはまる
どちらとも言えない
あまりあてはまらない
あてはまらない
無回答
%
企業が地球環境に配慮するのは
当然の義務である
64.6
0.2
0.0
5.0
0.7
今後、従業員や社会を軽視する
企業は存続できないと思う
59.8
企業は事務報告をはじめとした自社
の情報公開を積極的に行うべきだ
30.0
51.5
企業は環境対策や社会貢献活動
には多くの労力を傾けるべきだ
36.4
36.0
企業は地域社会、市民との交流
を積極的に行っていくべきだ
48.9
38.8
企業の利益追求と社会性は両立
する考えである
13.2
企業は短期収益性が低下しても
環境対策や社会貢献活動に取り
組むべきだ
11.8
4.2
1.0
【企画・制作】 日本経済新聞社広告局
20.8
34.0
32.6
16.3
12.7
41.6
34.1
2.8
10.1
1.0
13.5
42.1
1.7
5.4
5.7
12.5
38.0
35.7
6.4
12.5
42.3
30.2
企業は何よりも株主への配当を
優先に考えるべきだ
企業はもっぱら利益をあげること
に注力すべきで社会性を追求す
る必要はない
29.5
5.5
0.3
0.7
0.3
0.7
0.2
0.7
0.3
0.5
1.0
0.7
0.5
3.5 0.7
0.7
データ分析
「企業の社会的責任に関する意識調査」から。
CSR専任部署を設置する企業が急増
また一方で、
調査対象であるビジネスピープルの勤務先企業ではどのようにCSRに取り組んでいるかを
尋ねました
(図2)
。
CSRを担当する組織に関して、
「設置あり」
(
「専任部署あり」
+
「専任ではないがCSRの一
部を担っている部署あり」
)
と回答したのはちょうど半数(50.0%)でした。
勤務先企業に関する属性別で見
ると、
従業員数が多くなるほど
「設置あり」
の割合が高くなっています。
業種では、
金融・証券・保険業にお
ける設置率の高さが目立ちました。
図2
あなたのお勤めの会社にCSR担当の関連部署は設置されていますか。(1つだけ○印)
専任部署あり
専任ではないがCSRの一部を担っている部署あり
まったくない
無回答
%
性
別
全体(N=577)
9.4
40.6
48.7
1.4
男性(n=463)
9.7
41.0
47.9
1.3
女性(n=114)
勤
務
先
企
業
の
従
業
員
数
500人未満(n=134)
500∼999人(n=86)
1000∼4999人(n=169)
7.9
4.5
3.5
39.6
1.2
52.1
18.6
13.1
22.3
44.4
4.5
40.2
42.4
12.5
34.5
運輸業(n=44)
4.5
36.4
CSRコミュニケーション
31.0
1.1
2.3
53.0
55.4
5.2
6.3
2.4
58.0
建設・不動産業(n=58)
通信・サービス業(n=126)
0.7
61.6
5.9
金融・証券・保険業(n=56)
1.8
73.1
33.7
製造業(n=214)
産
業
分
類
51.8
21.6
5000人以上(n=188)
物流業(n=66)
38.6
0.0
32.1
0.0
60.3
0.0
59.1
61.1
0.0
1.6
日本経済新聞社広告局
広告局業務推進部
塚田 剛志
組織立ったCSRへの取り組みが求められている
さらに、
勤務先で専任部署を設置すべきかを尋ねた結果を図3に示しました。
「ぜひ必要」
「まあ必要」
合
わせた割合が74.2%と、
CSR先進企業の動向を後追いした結果になっています。
CSR担当の関連部署の設置
状況と同様に、
勤務する企業の従業員数が多いほど必要意識が高くなるという傾向が見られ、
従業員数
5000人以上の大企業では実に
「必要」
とする回答は86.2%にものぼります。
図3
あなたのお勤めの会社に今後(も)CSR専任部署の設置が必要だと思いますか。(1つだけ○印)
ぜひ必要だと思う
まあ必要だと思う
あまり必要ないと思う
まったく必要ないと思う
わからない
無回答
「必要」 「必要ない」
合計
合計
%
性
別
全体(N=577)
26.0
48.2
男性(n=463)
26.3
48.6
24.6
女性(n=114)
11.6
0.9
13.0
46.5
6.1
10.6
1.1
2.8
74.2
12.5
2.4
74.9
14.0
4.4
71.1
6.1
3.0
60.4
23.9
4.7
67.4
15.1
4.1
75.1
10.1
8.0 0.5
0.0
86.2
5.3
8.6
18.4
0.0
勤
務
先
企
業
の
従
業
員
数
500人未満(n=134)
500∼999人(n=86)
1000∼4999人(n=169)
5000人以上(n=188)
14.9
45.5
17.4
22.4
50.0
26.6
12.8
48.5
37.2
1.5
2.3
9.5
48.9
12.7
12.8
0.6
10.7
5.3
組織立ったCSRへの取り組みが求められている
これまでの結果を見て、
CSRに関してのビジネスピープルの関心が急速に高まっていること、
企業はCSRに
十分配慮した経営をしていかなければならないことが明らかになりました。
では、
消費行動にどの程度
CSRへの取り組みが影響するのか、
CSRが企業経営にとって利益をもたらす可能性について、
製品購買との
関連という視点で探ってみましょう。
図4に、
「消費者重視」
などの条件を満たす企業と、
そうでない企業を比較購買する際に、
どちらを選ぶか
についての回答結果を示しました。
「価格が高くても
(条件に)
あてはまる企業のものを買う」
割合が最も
高かったのは、
「消費者重視の企業」
(38.8%)。
次いで
「地球環境に配慮した企業活動を行っている企業」
(31.4%)。
さらに、
いずれの条件においても
「同
一価格なら
(条件に)
あてはまる企業のものを買う」
が過半数でした。
とりわけ消費者重視、
環境配慮では、
条件に関係なく
「価格の安いほうを買う」
のは1割未満の少数となっています。
これらの結果から、
CSRに関する自社の取り組みを消費者に伝えていくことが価格プレミアムとなって
利益に貢献する可能性が高いことが示唆されます。
少なくとも他社と同一価格圏内での競争においては、
CSRが勝因であることが明らかになったわけです。
【企画・制作】 日本経済新聞社広告局
データ分析
「企業の社会的責任に関する意識調査」から。
図4
以下の条件に“あてはまる企業”と“そうでない企業”があるとき、あなたはどちらの製品を購入しますか。(それぞれ1つの○印)
(N=577)
価格の安い方を買う
同一価格なら“あてはまる企業”のものを買う
価格が高くても“あてはまる企業”のものを買う
わからない
無回答
%
『従業員を大切にしている企業』と
“していない企業”
『消費者重視の企業』と
“していない企業”
19.4
5.9
『地域社会・市民への貢献に
積極的な企業』と“していない企業”
『地球環境に配慮した企業活動を
行っている企業』と“していない企業”
63.1
53.6
38.8
18.0
8.0
2.1
1.6 0.2
64.5
58.6
5.4 0.0
13.0
31.4
4.3 0.2
1.9 0.2
CSRへの積極性が企業イメージにも好影響
広告でCSRを取り上げる場合、
従来の広告分類では
「企業広告」
となります。
企業広告のテーマとして当
該企業の社会性、
環境性、
人間性を訴求することになると思われます。
その場合、
広告目標が企業イメージ
の向上となることも想定され、
「CSR活動の訴求がどのように企業イメージと結びつくのか」
を明らかにし
ておく必要があります。
この意識調査では、
CSR活動に積極的と思われる社名を具体的に挙げてもらいました。
そこで上位に挙
がった企業について
(5名以上から挙げられた26社)
、
その回答率と2003年日経企業イメージ調査
(ビジネ
スマン編)
の項目別スコアとの間で相関係数を算出しました。
その結果、
全項目でプラスの相関が認められ、
少なくとも
「CSR活動に積極的な企業は企業イメージも高
い」
(その逆も言えます)
と言うことができそうです。
具体的なイメージ項目としては、
「財務内容が優れて
いる」
「優秀な人材が多い」
が相関係数0.8を超え、
もっとも相関性の強い項目であることがわかりました。
次いで
「国際化が進んでいる」
「自社の経営情報の公開に積極的」
「製品・サービスの質がよい」
が相関係数
0.7を超え、
やや強い相関を見せています。
これらの傾向から、
CSRをテーマとしたコミュニケーション活動は財務健全性や経営資源としての
「従
業員」
の質の高さを印象づけるという見方ができます。
IR
(投資家への情報開示)
やコーポレートブランデ
ィングと並び立つ、
新しい企業コミュニケーションの形態と定義することができます。
企業イメージを高
めブランド競争力を強化するための有力なコミュニケーション手法と言えるでしょう。
CSRコミュニケーション
日本経済新聞社広告局
広告局業務推進部
塚田 剛志
図5
相関係数
マ
|
ケ
テ
ィ
ン
グ
イ
メ
|
ジ
0
0.1
0.2
0.3
0.5
顧客ニーズへの対応に
熱心である
親しみやすい
0.6
技
個
人
イ
メ
│
ジ
研究・商品開発力が旺盛
である
0.8
0.119
0.573
0.499
個性がある性
0.436
文化・スポーツ・イベントに
熱心
0.476
0.657
技術
0.639
製品・サービスの質がよい
0.716
活気がある
0.374
成長力がある
0.655
新分野進出に熱心である
0.625
社会の変化に対応できる
0.700
国際化が進んでいる
企
業
力
イ
メ
│
ジ
優秀な人材が多い
の
れ
ん
イ
メ
│
ジ
安定性がある
0.9
0.405
営業・販売力が強い
センスがよい
0.7
0.471
よい広告活動をしている
個
人
イ
メ
│
ジ
活
力
イ
メ
│
ジ
0.4
0.766
0.821
経営者が優れている
0.690
財務内容が優れている
伝統がある
0.867
0.599
0.287
信頼性がある
スピード経営を進めている
企業
自己改革に積極的な企業
0.660
0.543
0.514
自社の経営情報の公開に
積極的な企業
地球環境に気を配っている
企業
【企画・制作】 日本経済新聞社広告局
0.728
0.642
1.0