政)金融資本(独) [4] 帝国主義段階のドイツの銀行 金融資本・ドイツ型(日高,第17章[4]-[6]) A.ドイツにおける企業と銀行の関係 原理論では抽象的一般的な資本の形態,運動を 取り上げていたが,段階論ではその段階を規定 する主要産業(ここでは19世紀末の鉄鋼業・石 炭業)における大企業に焦点を当てる。 ドイツで は重工業 化に際し 1870年代に 株式会社の 創業が激増 1.ドイツにおける銀行・企業関係 2.株式会社の創業と(銀行による)支配 それには銀 行が積極的 に係わった ① もともとドイツでは 銀行が取引先企業 の貨幣取扱業務 (両替,送金等)の すべてを代行し,一 定期間毎に手数料, 利子,残高を計算 する交互計算業 務を担当していた。 2 [4] 帝国主義段階のドイツの銀行 A.ドイツにおける企業と銀行の関係 だから*貸出では手形割引の占め る割合が小さく,交互計算業務を 通じて与える資金は,取引先の振 出した小切手のうち,取引先の預 金額以上の分まで支払ってやる1) 当座貸越という形をとった。 B.金貸資本的銀行も19世紀末には大銀行へ集中 ③ ドイツの銀行は自由主義段階にも古い金貸資本的 性格*を帯びていた。 *原論の銀行資本は,産業資本の遊休資金を預金とし その資金 回収法 て仕入れ,産業資本の資金不足に手形割引で応じる のに対して,自己資本を元手に貸付ける。 ドイツの銀行は,自己資本が大きく,預金はわずか だった。 取引先を株式 会社にする ⇒自分の資本で株式を引受け,発行する *ドイツでは交互計算業務により企業へ の/から受払いはすべて銀行口座を 通しているので,企業に支払資金が足 りなくなったときは,銀行が企業の口座 残高を超えて相手からの支払請求に 応じる当座貸越で済ませた。 その株式の 引受(後述) 3 ③ 19世紀末大不況で小銀行倒産=大銀行へ集中* ⇒中心地ベルリンに少数の大銀行が成立 *資本集積・蓄積;利潤を再投資して大きくなる ⇔資本集中;大が小を合併し市場のプレーヤーが少なくなる,独占化 4 [4] 帝国主義段階のドイツの銀行 C.金融資本の成立 【補足】 ⑤ ドイツの大銀行は預金業務と株式の引受発行を行 なう証券業務を兼ねた。 1. 大銀行は産業に小規模な資金は当座貸越で与え 2. 大規模な資金は増資をさせて,株式の引受発行 で与えた。そして(大株主として役員を派遣し)産業の 銀行は,さまざまな産業の,あるいは同じ産業部門 の複数の企業の主な融資元かつ大株主として,企 業に対し競争制約的な方向で影響力を行使した。 融資先の企業同士の熾烈な競争は共倒れ=融資 の回収不能を招く虞オソレがあるからだ。 ⇒生産量,価格の取り決め=カルテル ドイツ型金融資本の産業への影響;独占形成 経営状態を監視し,そこに固定された資金を,様子を 見ながら株式を売ることで回収した。 ⇒資本市場と貨幣市場が不可分に結合 ⑥ こうして大銀行と密接に結びついた株式会社 である金融資本が形成された。 5 アメリカ型;国土が広大なアメリカでは協定は維持されがたく, 同業他社の株主より株式を受託する代わりに合同会社への 参加証書,トラスト証券を渡し,独占を形成するトラスト方式 が普及。例;1882年ニュージャージー・スタンダードオイル (エッソ,モービルの前身) 6 1 政)金融資本(独) 株式会社が創業されるためには,株式が発行されて資金 が大量に集中されなくてはならない。 けれども発行された株式がすぐさま一挙に売り切れること はありえない そこで大銀行が___る=一度に額面で買い取る 折をみて適当な量の株式を売り出す 手元に大量の株式が残っている間,銀行は大株主 融資先企業同士が激しく競争して共倒れ=融資回収不要にならない 7 ように____を結ばせた 純粋資本主義モ デル (原理論) 資本 金融資本独型 (発展段階論) 個人企業 信用 の基 遊休資金 盤 信用 原材料(流動資 の対 本)購入;製品を 象 売って返済=短 期 固定 自己資金 資本 銀行と 預金を引受け, 企業と 手形割引で貸付 の関 け(短期の繋が 係 り) 戦後の日本 (金融自由化以前) 巨大株式会社 交互計算業務 預金 短期資金は当座貸越 で,固定資本向けの 長期資金(資本信用) は,株式引受けで与 え,株式売却で回収。 長期貸付(系列融資) +株式の相互持ち合 い(売却しない)。 株式発行引受は証券 会社が担当。 銀行が融資元かつ大株主(役員派遣) ⇒長期固定的関係 9 [7]第1次大戦前の対外投資 19世紀,自由主義段階の資本主義をリードしたイギリ スは,ドイツとアメリカの工業力の進出によって,世界 の工場としての独占的地位を失い,産業的発展が鈍っ た。 国内に過剰な資金が滞留し,大銀行は,企業との 関係が希薄化し,南北アメリカへの証券投資を強めた。 他方,大銀行と結びついたドイツの金融資本も19世紀 末から対外投資を急増させた。国外で直接に企業を創 る直接投資が主だった。投資先は主としてオーストリア, バルカン諸国,トルコであって,そこへの政治的進出と 結びついていた。 ⇒(植民地再分割をめぐる)帝国主義戦争の勃発 8 【今日のまとめ】 ドイツ型金融資本 元々ドイツでは銀行が企業の取引に関わる代金の受払 を行ない,一定期間ごとに記帳する1)________業務を 行なうなど,両者の関係は密接であった。19世紀末,産 業の重工業化により,投資資金が膨らむと,短期の資 金は2)________で与え,長期の資金は,企業を株式 会社化し,その発行する株式を額面で買い取る 3)________によって与えた。銀行は大株主として企業 に役員を派遣して経営を監視すると同時に,折を見て株 式を売却することにより資金を回収した。同時に,融資 先企業同士が共倒れにならないように,予め生産量を 取り決める4)________を結ばせた。このように,融資と 出資を通じて大銀行と密接な関係のある株式会社を 5)________と呼ぶ。 10 【先週の感想】教室が明るすぎてスクリーンがぼやけている,前 の方だけでも照明を消して/冷房を止めて/教室が狭すぎる スライドショーにして全画面表示にして どこの株を買うのが良いですか 「所有と経営の分離」を表で表わすとわかりやすくなる。 非 所有と経営は 公 一致 開 全 株 広義の「所有 式 公 と経営の分 会 開 離」 社三 狭義の「所有 千 と経営の分 社 離」(経営者 支 ) 株主が直接経営に当たるか,経営者を選任。 株式非公開=広範に資金を集める意思がな い 経営に参加できるのは持株比率の高い大株主 のみ,一般の投資家は配当益・売買益目的。 筆頭株主でさえ持株比率低く,ほとんど株式を 保有しない経営者が多くの株主から白紙委任 11 状を集め株主総会,会社を支配。 2
© Copyright 2024 Paperzz