高度な先端技術で新市場を開拓する高機能繊維

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富士経済 GROUP
第08033号
PRESS RELEASE
株式会社 富士経済
2008年5月2日
〒103-0001 東京都中央区日本橋小伝馬町
2-5 F・Kビル
TEL.03-3664-5811 FAX.03-3661-0165
URL:http://www.group.fuji-keizai.co.jp/
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広報部 03-3664-5697
高度な先端技術で自動車、エレクトロニクス、航空・宇宙産業など新市場を開拓する
高機能繊維主要52品目を調査
― 世界市場2011年予測 ―
●アルミナ短繊維 1,040億円(07年比159.8%)ディーゼル車排ガス触媒保持材として有望
●パラ系アラミド繊維 3,000億円(07年比150.0%)米国同時多発テロ後の軍事、警察需要の継続
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 阿部界 03-3664-5811)
は、このほど、日常生活品から、産業用に軸足を移して発展を目指す、高機能繊維市場を調査した。その結果を報
告書「高機能繊維市場実態総調査 2008」にまとめた。
この調査は、付加価値を高めて収益拡大を目指し、各社が開発を競い合う高機能繊維の市場動向やメーカー各社
の参入、用途展開などを明らかにし、今後、この事業を展開するにあたりその方向性や可能性を把握する有用な情
報を提供することを目的とした。
1.調査結果の概要
経済産業省の「工業統計」によると、2000年、日本の繊維製品出荷額は7兆5,670億円であった。しか
しその後中国や東南アジア諸国の技術水準が向上し生産量も増大してこれらの安価な製品が輸入され、
07年には
4兆3,900億円(弊社推定)と急激に縮小している。
国内繊維メーカー各社は、従来の事業で培った基盤技術に加え、コンポジット化、高分子、バイオ、ナノ技術な
ど高度な先端技術を応用し、自動車、航空機、宇宙ロケット、エレクトロニクス、メディカルなどの産業分野に高
機能素材を供給する新しい事業を活発化している。また、従来の衣料品分野では、より快適な機能を持つ高付加価
値繊維やテキスタイルを開発して、中国や東南アジア諸国の生産設備を有効利用するなど、海外の低価格製品と差
別化を図る取り組みを積極化している。
市場規模推移
2007年
前年比
2011年(予測)
11/07年比
高機能素材繊維(19品目 世界)
6,547億円
117.8%
9,534億円
145.6%
快適性機能繊維(20品目 国内)
1,450億円
105.4%
1,579億円
108.9%
高機能素材繊維は、産業用資材としての需要を開拓し世界市場で成長を遂げつつある。特にパラ系アラミド繊維
(07年2,000億円、前年比14.3%増)とPAN系炭素繊維(07年1,340億円、前年比16.5%増)
は1,000億円を超える巨大市場を形成して、国内メーカーも収益性の高い製品分野として積極的な展開を進め
ている。また、環境意識の高まりと健康配慮の面から、生体溶解繊維は07年177億円から11年には、2.1
倍の市場に成長すると予測する。今後も、苦戦が続くアパレル用途を中心に展開する快適機能繊維とは異なり、産
業用資材として展開する高機能素材繊維は11年には07年比46%増の高い成長が予測される。
快適機能繊維のうち07年の国内市場で100億円を超えた製品は、弾性繊維(07年300億円、前年比8.
7%増)
、リサイクル繊維(同298億円、同12.5%)
、吸汗速乾繊維(同189億円、同0.3%増)
、抗菌防
臭・制菌繊維(同117億円、同0.4%増)
、など5品目になり、主要製品として安定した需要を維持している。
また、市場規模は小さいが、アレルゲンを分解するアレルギー対策繊維(同18億円、同50.0%増)や、環境
意識の高まりから生分解性繊維(同10億円、同15.9%増)が成長市場として期待される。
2.注目される主要高機能繊維
高機能素材繊維と快適機能繊維39品目のうち、特に今後の成長が注目される品目の市場推移と要因を見る。
(1)高機能素材繊維
●パラ系アラミド繊維 (防弾・防護、摩擦材・ガスケットなど)
07年の世界市場 2,000億円(前年比 114.3%) 11年予測 3,000億円(11/07年比 150.0%)
鋼鉄の約5倍の引っ張り強度を持ち、摩擦や熱に強く、有機溶媒に対して安定で、産業用途で広く利用されてい
る。
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防弾・防護用途では、90年代後半以降の光通信ケーブルや01年米国同時多発テロ以降の軍事、警察関連需要
が高まり、品不足と取引価格の上昇が続いている。07年現在、供給過少の状態であり、10年にはデュポン、帝
人両グループの大規模な生産設備増強が完了する見込みでこれ以降は価格も安定すると見られる。
摩擦材やガスケ
ット用途ではアスベストの代替材として、他の繊維素材や金属と混合して用いられる。ゴム補強用途では、高性能
ラジアルタイヤへの採用が目立つ。タイヤの軽量化や強度向上に対応できる素材として注目されている。
デュポングループと帝人グループが世界市場を二分して来た。ポリマー生産の技術的なハードルに加え、川下の
紡績、織布の行程にも専門技術が必要であること、生産、消費の中心が西ヨーロッパ、北米、日本などの先進地域
であることからデュポングループ、帝人グループの2社寡占が続く。また、デュポン「ケブラー」
、帝人「トワロン」
のブランドが確立しているため、
短期的には新興国のメーカー参入による大規模な市場変化は起こらないと見られ
る。
国内では90年代後半の阪神大震災後の土木建築資材需要や、
2000年前後の光ファイバー敷設などによる好
調が落ち着き、微増を続けている。
●PAN系炭素繊維(航空機、風力発電ブレード、スポーツ用品など)
07年の世界市場1,340億円(前年比 116.5%) 11年予測1,950億円(11/07年比 145.5%)
特殊なアクリル繊維を原料とし、焼成して精製された炭素含有率90%以上の繊維。世界生産の70%以上を東
レ、東邦テナックス、三菱レイヨンの大手3社が占める寡占市場である。航空機用途および風力発電などの産業用
途を中心とした旺盛な需要のため需給の逼迫が続いており、各社で増産が相次いでいる。
05年以降、航空機市況の回復に合わせた最新航空機への大量採用、風力発電のブレードなど新たな産業用途開
発により市場は急成長に転じている。
04年に東レによるボーイング社への長期供給契約を契機として需要が拡大
しており今後も堅調な伸びが予想される。燃費削減のための航空機の軽量化を目的に、1機あたりの使用量が従来
の3∼4倍にまで増加して需要も急激に拡大している。
スポーツ用品分野はこの製品の開発が早くから進められ、ゴルフクラブ、釣り竿、テニスラケットが「三種の神
器」と呼ばれ、アジアの需要が増加した。生産拠点の中国移転も見られるが、精巧な仕様の製品は川下の企業にも
高度な加工技術が要求されるため、依然として日本で生産されている。日本では2010年まで前年比10∼1
5%増の2桁成長が見込まれ、各社による生産設備の大型増設が相次いでいる。
大手3社が本拠を置き、世界市場の約15%に相当する日本市場は、欧州、北米に次ぐ市場と見なされている。
今後は風力発電などの需要が高まっている海外市場に需要がシフトすると予想されるが、
開発中の自動車での用途
開発が進めば、予想以上の市場拡大も期待できる。
●アルミナ短繊維(ディーゼル車用排ガス触媒保持材、高熱炉断熱材など)
07年の世界市場 651億円(前年比 122.6%) 11年予測1,040億円(11/07年比 159.8%)
1975年に英ICI社がこの短繊維を世界で初めて商業化し、
現在は三菱樹脂が50%を超えてトップシェア
にある。アルミナ短繊維は従来のセラミック繊維やロックウールに比べて、高温でも収縮が少なく、軽量かつ熱伝
導率が小さく、断熱材として用いられる。
主な用途は自動車分野で、自動車の排出ガス(窒素酸化物など)を浄化する触媒コンバーターの保持材として使
用される。最近の排気ガス規制強化を背景に触媒反応を高温(約 1000℃)で行うことが求められ、マット状に成
型したアルミナ短繊維の無膨張型保持材の需要が急速に拡大しつつある。国内市場のDPF(ディーゼル車用排ガ
ス浄化装置)向けも今後法改正により、さらに需要が増すと期待される。DPF向け触媒保持材は、ディーゼル化
が進む欧州・北米の需要が先行しているが、日本や中国などの需要を取り込めば、大幅な市場拡大に繋がると考え
られる。
三菱樹脂は、07年50%の世界シェアを10年には70%以上に引き上げるため設備能力を8,000トンに
拡大する計画である。英サフィル社は、自動車と高温断熱材の二つの分野で事業を展開しており、DPF需要への
対応が当面の課題となっている。
(2)快適機能繊維
●蓄熱・発熱保温繊維(衣料・アパレル、スポーツ・レジャーなど)
07年の国内市場 90億円(前年比 105.9%) 11年予測 98億円(11/07年比 108.9%)
近年は、汗を吸湿し繊維自体が発熱する吸湿発熱系の繊維が、体感性の高さや機能のわかり易さから消費者に支
持され、需要が高まっている。ミズノの「ブレスサーモ」やユニクロの「ヒートテック」、ワコールの「ウェルサーモ」
など、各社が積極的に製品投入を行っている。同機能の認知度向上とともに日常用途のインナーとしての支持も増
加していることから、「衣料・アパレル」のウエイトが高まっている。布団などの寝具類やカーテン、カーペットな
本件に関するお問合せ:広報部 (Tel.03-3664-5697
Fax.03-3664-5842またはmail address:[email protected])
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どのインテリア関連用品でも一定のニーズがあり安定した動きを見せている。
日常用途の高機能肌着は需要拡大が
見込める数少ない分野として業界内でも注目度が高く、今後も堅調に推移していくと思われる。近年は、最終製品
に対し快適性に関する複数の機能を付与する傾向が強まっており、
今後は最終製品のアプローチ方法をユーザーの
性別によって変更していくことが更に重要となる。
●生分解性繊維(寝具類、インテリアなど)
07年の国内市場 10億円(前年比 125.0%) 11年予測 16億円(11/07年比 160.0%)
自然界の微生物が分泌する酵素によって分解される合繊繊維のポリ乳酸(PLA)繊維、芳香族ポリエステル(PLC)
繊維を対象とする。2つの繊維のうち、ポリ乳酸繊維は生分解性にとどまらず二酸化炭素の発生量を削減できる素
材としても注目を集め、この市場の90%と大きなウエイトを占めている。今後も一部製品のエコマーク、グリー
ン購入法認定や安定した原料供給といった追い風を受け、ウエイトは更に高まると思われる。
この繊維市場は、世界規模での環境意識の高まりを背景に、インテリア・寝具関連の需要に支えられ安定した推
移を続けており従来の分野に加えて、
耐熱性など物性を改善した付加価値化が進みユニフォームや自動車など徐々
に他の分野でも用途開拓が進むと考えられる。
現在は詰め綿やベッドマットなど寝具分野中心で、ユニチカファイバー「テラマック」と東レ「エコディア」の
2社並立市場となっている。
以上
<調査対象>
快適機能繊維(22 品目)
吸汗速乾繊維、透湿防水繊維、蓄熱・発熱保温繊維、清涼涼感繊維、抗菌防臭・制菌繊維、
消臭繊維、防汚繊維、制電性・導電性繊維、弾性繊維、形態安定繊維、アレルギー対策繊維、
防虫防ダニ繊維、紫外線遮蔽繊維、電磁波シールド繊維、防塵繊維、芳香性繊維、リサイク
ル繊維、生分解性繊維、PTT 繊維、新植物繊維、水溶性繊維、光発色繊維
高機能素材繊維(24 品目)
パラ系アラミド繊維、PBO 繊維、超高分子量 PE 繊維、高強力ポリアリレート繊維、高強度
PVA 繊維、PAN 系炭素繊維、GPCF(汎用ピッチ系炭素繊維)
、HPCF(高性能ピッチ系炭素繊維)
、
カーボンナノファイバー、活性炭素繊維、メタ系アラミド繊維、PPS 繊維、耐炎化繊維、フ
ッ素繊維、アルミナ短繊維、アルミナ長繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維、生体溶解性繊維、
バサルト繊維、新規高耐熱繊維、ポリアセタール繊維、PEEK 繊維、ホウ酸アルミニウムウ
ィスカ
機能繊維応用製品(6 品目)
CF プリプレグ、C/C コンポジット、SiC/SiC、多軸補強用繊維基材、ガラス繊維織物、ケナ
フ繊維強化バイオプラスチック
<調査対象> ◆快適機能繊維 22品目 ◆高機能素材繊維 24品目 ◆機能繊維応用製品 6品目
<調査方法>
弊社専任調査員による参入企業、業界団体へのヒアリング主体に、関連データを補完材料として活用して調査を
まとめた。
<調査期間> 2007年12月∼2008年3月
資料タイトル:
「高機能繊維市場実態総調査 2008」
体
裁 :A4判 240頁
価
格 :97,000円(税込み101,850円)
調査・編集 :株式会社 富士経済 大阪マーケティング本部 高機能繊維プロジェクト
TEL:06-6228-2020(代) FAX:06-6228-2030
発 行 所 :株式会社 富士経済
〒103-0001 東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 F・Kビル
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