The Investor日本版

日本
THE INVESTOR
1
海外投資家の注目を集める国内不動産市場
景気回復基調を足がかりに、多くの投資家が続々と参入
世界最大規模の機関投資家やソブ
リン・ウエルス・ファンドの一部が、
日
本に押し寄せている。
最近の大型取引において、中国
のソブリン・ウエルス・ファンドである
中国投資有限責任公司(CIC)が、
ラ
サール・インベストメント・マネージメ
ントとの共同事業として、東京の目
黒雅叙園を1400億円(11億8千万
ドル)で森トラストから取得したこと
が明らかになったが、不動産情報会
社リアル・キャピタル・アナリスティッ
クスによれば、2014年、
日本の不動
産市場への外国資本の投入は前年
比29%増の約1兆円(84億ドル)に達
し、2008年以来の高水準であった。
日本に狙いを定めた外国資本
が特に注目している都市が東京だ。
買い手には東京の中心である丸の
内地区のパシフィックセンチュリー
プレイスに17億ドルを投じたシンガ
ポールのソブリン・ウエルス・ファンド
であるGICや、GEキャピタルから東
京のマンションポートフォリオを16
億1千万ドルで購入したブラックス
トーンなどの名前を見つけることが
できる。
JLLのアジア・パシフィックキャ
ピタルマーケット事業部調査担当
部長であるMegan Waltersは、
「最
近、
中国の投資家たちが日本に続々
とやって来ている」
と述べている。
中国本土からの旺盛な投資
意欲
これまで中国企業は先の大戦の記
憶に起因する心理的な障壁や、昨今
の東シナ海における領土権の主張
に関する地理的な緊張関係などの
歴史的経緯により、
日本については
投資対象とは見ていなかった。
しか
し、緊張状態が徐々に和らいでいく
につれ、積極的に投資を進めようと
いう機運が高まっている。
CICは2011年にはグローバル・
ロジスティック・プロパティーズと共
同で16億ドルをかけて物流ポートフ
ォリオを買収するなど、早い段階から
日本市場に投資をしてきた。中国本
土最大の民間複合企業である
「復
星国際」
も2014年に日本の不動産
会社であるイデラ・キャピタルマネジ
メントを買収するなど、GICの後に続
いている。
海外の投資家の狙いは東京だ
けではない。
カタール・インベストメン
ト・オーソリティ(QIA)が、
日本国内
に点在するボウリング場を取得した
り、世界的な物流専門機関が地方
の物流拠点を購入し開発していると
報じられている。
このように、海外の多様な投資
家が、大規模な単一資産向け好立
地物件のみならず、
日本国内の複数
の都市のポートフォリオにも再び注
目していることがうかがえる。
アジア非上場不動産投資家協
会(ANREV)が行った投資意欲に関
する年次調査に協力した337名の
投資家およびファンド・マネージャー
によると、
日本は2015年の投資先と
して最有力候補となり、そのうちの
45%が今年度中に東京のオフィス
に投資すると予測している。ANREV
のリサ ー チ・ディレクターである
Amelee Delaunay氏は
「投資家た
ちは去年から日本に注目している。
日本は地域最大のコア/成熟市場で
あり、海外の投資家がアジア太平洋
ポートフォリオの多様化を希望した
場合、
日本とオーストラリアに狙いを
定めるのは当然の帰結」であると分
析する。
日本への投資分散
一部の投資家の間では、特定の国
への投資が集中していたり、
自国経
済の減速が原因でこれまでの投資
方針を変更する必要に迫られてい
次頁へ続く
賃貸マーケット回復にともない賃料が上昇基調へ
第1四半期の米国のオフィス空室率
は15.6%と不変であったが、JLL予
測では、企業の拡大により空室が減
るため年末までに15%未満に下がる
こものとみている。
「 2 万 平 方フィート以 上のリー
スを見れば、
テナントの55%近くが
その規 模を拡 大している。これは
12ヵ月前から見たらほぼ倍に近い
値だ」」JLLの米国リサーチ担当マ
ネージング・ディレクターであるJohn
Sikaitisは述べている。
これに呼応するかのように、貸主
は3.0%、都市部では最大6.0%とい
うこれまでで最もアグレッシブな賃
料の値上げを提示している。
第 1 四 半 期では全 市 場の3 分
の1以上で
「貸し手市場」
となってお
り、2017年まで75.0%にまで上昇す
ると予想される。
「1年前の倍近いスピードで建
設ラッシュが続いている」
とSikaitis
は述べている。
米国市場は第1四半期に1,100
万平方フィートのオフィス賃貸床が
新規供給され、年末までには過去最
高の新規供給量になることが想定さ
れている。
ヨーロッパ - 世界
一 魅力的なホテル
投資先
ジョイント・ベンチャー
取引の重要性の拡大
アジア投資家が注目
する米国のインダスト
リアル市場
3ページ
4ページ
7ページ
2
THE INVESTOR
Market Perspective
www.jll.com/investor
水野明彦 取締役執行役員 キャピタルマーケット事業部長
活況を呈す国内不動産市場を裏付けるかのよう
に、2014年の国内不動産取引は4兆6,400億円と、
ほぼ2008年の水準にまで回復しました。J-REITや
私募REIT、大手不動産デベロッパーをはじめとする
国内勢に加え、昨年は海外投資家の姿も一段と目
立つ一年となりました。円安の進行、
アベノミクスへ
の期待、
オフィス賃料の上昇局面など、
投資する環境が徐々に整いつつあ
ることが海外勢にとっての大きな後押しとなったのは言うまでもありませ
んが、一番の理由は東京や大阪の
「都市としての魅力」
が極めて高いこと
に他ならないのではないかと考えます。
アジア非上場不動産投資家協会(ANREV)
の最新の調査で、
アジア
太平洋地区において投資家が選ぶ投資先の都市として東京が第1位に、
大阪が第5位にそれぞれ選ばれています。域内で最も洗練された都市機
能が非常に高いレベルで維持され続けている日本の大都市は、
とりわけ
海外からの評価がきわめて高いものであることが調査で裏付けられまし
た。
そこに景気回復基調とともに増加するオフィスをはじめとした旺盛な
需要が加わることで将来的にも安定した投資リターンを確保できるとな
れば、東京や大阪の国際的なプレゼンスはいやがおうにも高まります。
ま
た特にアジアの投資家の中には日本に物件を保有することである種のス
テイタス感が醸成され、競って物件購入に動くことも不動産価値の向上
に一役買っているのではと考えます。
2015年は昨年を上回る取引量が期待され、
とりわけ海外勢が購入・
売却の両面でより積極的に転じる一年になると予想されます。一層の経
済状況の好転・安定を願いつつも、海外からより多くの投資を呼び込む
べく日本の不動産の魅力を積極的に発信することが求められているとい
えます。
前頁より続き
る。
その結果、投資を分散する狙い
も含め再び日本が投資先として注目
されている。外国投資家は2020年
の東京オリンピックと、安部首相の
公約である意欲的な景気刺激策に
より数十年も続いた景気低迷から
抜け出すという
「アベノミクス」の成
功の両方を注視している。
半年ほど前、米国の投資会 社
であるローン・スターは目黒雅叙園
を森トラストに12億4千万ドルで売
却した。
ダラスを拠点とするローンス
ターは、2002年の債権買取を介し
てこの複合施設の大部分を手に入
れ、2014年には残りも取得してい
た。
A X Aリアル・エステートなど、
その 他 の 新 規 参 入 組も、同 様 に
早期に利益を確定しようと考えて
いる。A X A はそのファンドの 1 つ
であり、2012年に三井住友トラス
ト・ホールディングスの不動産事業
部とともにに創立したジョイント・ベ
ンチャーは、1億7000万ドル相当の
中規模のオフィス用不動産を東京に
所有している。
日本への海外投資を促進する
ために設立されたサービス機関で
ある東急リバブルでマネージング・
ディレクターを務める佐藤秀幸氏に
よると
「円安ドル高と日本の金融緩
和政策が海外の買い手に影響を及
ぼす重要な要因となっている」
とい
う。
佐藤氏はアベノミクスの成功に
ついてはまだ懐疑的な声が聞こえる
ものの、
日本に対する海外からの期
待は2~3年前から明らかに高まっ
ており、資金力のある外国ファンドは
日本で積極的に物件取得を行って
いると述べている。
また佐藤氏は「為替レートは昨
年10月の金融緩和前の1ドル110円
から120円まで円安が進んでいる。
これにより0.5%程度安く日本への
お問い合わせ先
日本
水野 明彦
キャピタルマーケット事業部長
+81 3 5501 9947
[email protected]
長期的な融資を行えることになるた
め、機関投資家にとっては投資の十
分な理由となる。
」
と現状を分析する。
また東京および大阪の主要都
市部の空室率の低下も賃料の緩や
かな上昇を後押しし、東京では四半
期ごとに11回連続の上昇を記録し
ている。
東京の中心部では国内最大の
デベロッパーのひとつである三菱地
所が、丸の内エリアの一部のグレー
ドAオフィス賃料を、次回の契約更
新にあわせて坪(3.3m2)単価4万円
から6万円程度に引き上げるとので
はないかという憶測が流れている。
JLLのWaltersは、
「 今後3年間
で東京の中心部にあるAグレードの
オフィス賃料が20%以上上昇するこ
とを示唆している」
と述べている。
一方、佐藤氏は「建設業での人
材不足が喫緊の課題となっている」
と分析している。労働力が不足して
いる他のアジア諸国は労働力を国
外から呼び寄せる中、
日本は政府の
政策によって移民を受け入れられな
いため、人手不足は深刻さを増して
いる。
日本の民間企業は、人口減少
を埋め合わせるため、移民政策を緩
和するように政府に働きかけている。
こうした人材不足は今後、新規
供給が先細る大きな要因になるおそ
れがあり、
それと同時に不動産の補
修費用も上昇し続けることを意味し
ている。
いずれにせよ、不動産オーナー
は日本の商業用不動産市場が再び
活況となると確信しており、
投資家か
らの旺盛な取得意欲を背景に、今年
さらに大規模な取引が行われる可
能性があると考えられている。
外資系物流開発企業が日本
の倉庫業の大きなギャップ
を埋めようとしている
日本には高品質かつ近代的な物流
日本
吉田 薫
マーケティング&コミュニケーション
+81 3 5511 3283
[email protected]
施設への潜在的需要は大きいと語
るのは、シンガポールに拠点を置く
グローバル・ロジスティック・プロパ
ティーズ(GLP)の日本法人代表であ
る帖佐義之氏だ。帖佐氏によると、
日本国内の4億7千万平米の物流・
倉庫施設の中で、近代的であると言
えるのはわずか3%であるという。
日 本 の 製 造 業 者 は 倉 庫 を自
社所有し運用する傾向があるが、
それらの拡張や物流費用の削減と
いう課題に直面している。
また最先
端の配送センターを求めるAmazon
などのグローバル電子商取引企業
も需要を押し上げている。
これらの
要 因 が日本の小 売 業 者にサプラ
イチェーン管理の改善というプレッ
シャーをかけていると帖佐氏は指摘
している。
GLPは日本がまだ不況にあえい
でいた2008年にプロロジスの日本
および中国の企業を買収すること
で、早い段階で日本の物流部門に
参入していた。今日、同社は竣工済
および開発中をあわせておよそ100
棟の物流施設を所有し、その70億
ドルものポートフォリオは、日本の
近代的物流 施設全体の3分の1を
占めている。
同社はカナダ年金基金投資委
員会と21億ドル規模の開発ジョイ
ント・ベンチャーを立ち上げ、その
うち8億ドルはすでに投資が完了
している。また、中国投 資有限責
任 公司ともパートナーシップを結
び、2011年にはラサール不動産投
資顧問から物流施設15物件を16
億ドルで買収した。
一方、オーストラリアのグッドマ
ン・グループも日本に投資機会を
見出している投資家のひとつだ。
グッドマン・ジャパンのチーフ・エグ
ゼクティブであるPaul McGarry氏
は、同グループのグッドマン・ジャ
パン・コア・ファンド(GJCF、2008
ASIA PACIFIC
Stuart Crow
Head of Asia Pacific Capital Markets
+65 6494 3888
[email protected]
年設立)は、開発を加速させること
で今後5年間で自社ポートフォリオ
を24~25億ドルに倍増させる予定
と、将来図を描く。
グッドマンはさらにアブダビ投
資庁と新たな物流開発パートナー
シップを締結し、日本に10億ドル
を投資する計画だ。McGar r y氏
は、このベンチャー事業は投資完
了後、GJCFに優先的な交渉権を与
えるとしている。
昨年2億5千万ドルの投資を実
行したMcGarry氏は、日本でのさ
らなる事 業 展 開を進めるため、3
億ドルを目標とする新たな資金調
達を7月に開始できるものとしてい
る。前回の調達時と同様、新規お
よび既存の投資家からの応募が殺
到すると予想される。
しかし、日本の物 流 部 門の黎
明期はすでに終わっているとも言
える。McGarry氏は「開発現場の
費用は上昇を続け、人気のある地
域の地価は最大50%上昇し、開発
現場の競争の激化により、利幅が
食われている」
とコメントしている。
建 設 費の上 昇に輸 送および物 流
の人材不足が加わるなど、市場は
転 換 期にさしかかっているとされ
る。
「 これ まで 、新しい 物 流 セン
ターを開発する第一条件は輸送イ
ンフラが整った場所であった。今で
もこれは重要だが、現在注目されて
いるのはテナントに手頃な賃料を
提 供し、すぐに働ける人材を確保
するため住宅地の周辺に物流セン
ターを配 置することである。去 年
計 画を発表し、今後段階的に建設
される1 0 億ドル規 模の巨 大 開 発
である「グッドマン・ビジネスパーク
千葉」は、
これらの要件をすべて満
たしている」
とMcGarry氏は述べ
ている。(著:Real Estate Capital)
USA
Jay Koster
Head of Americas Capital Markets
+1 212 418 2685
[email protected]
EMEA
Richard Bloxam
Head of European Capital Markets
+44 20 7852 4668
[email protected]
本紙はJLL発行「THE INVESTOR」
の翻訳版です。本紙に記載の情報は作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。
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THE INVESTOR
3
www.jll.com/investor
台湾の投資家が世界
を席巻
JLLによると、台湾の投資家は世界の
不動産市場で、抜きん出た存在感を
ますます高めている。
2014年、台湾の投資家は海外の
不動産市場に12億ドルを投じた。
こ
れは前年度の2億ドルの5倍以上の
勢いであり、規制政策の緩和を受け
た結果である。
J L Lのグローバル・キャピタル
マーケット、
リサーチ・ディレクターで
あるDavid Green-Morganは、
「台
湾では保険会社の規制が緩和され
たことで海外の不動産に投資できる
ようになって以降投資の伸びが特に
顕著である。」
と述べている。
「台湾の保険会社グループが世
界中の主要都市での投資に関心を
寄せ続けていることから、
当社は今後
数年間、台湾勢による海外投資の拡
大を見越している。」
2014年は不動産取引額が大幅
に増加した年であった。世界中の不
動産市場環境の改善によって、不動
産投資に回るエクイティも増加してい
る。
こうした状況は、2015年に向けて
継続すると予想される。
米国商業用不動産
への融資は2015年
も堅調にスタート
米 国 経 済の力強い成 長を背 景
に、2014年の米国の商業用不動産
向け融資は堅調に残高をつみあげ
た。2015年もこうした状況は継続す
ると予想されている。豊富な流動性
と競争の激化により、
レンダー側は
すべて物件タイプにおいて融資機
会を提供、
リスク要素を見極めなが
らセカンダリーマーケットおよび付
加価値の高い投資への歩みを進め
ている。投資家およびレンダー側双
方の関心事は原油価格の行方と返
済期限の到来であり、JLLは、銀行、
生命保険会社および商業不動産担
保証券(CMBS)
のレンダー側の競
争は増々激化すると予想している。
世界一魅力的なホテル投資先-ヨーロッパ
力強いリターン、
公正な価格、
借り入れのしやすさから、
ヨーロッパは世界中のホテル投資家の
「ウィッシュリスト」
の上位に位置している
ヨーロッパ 、中 東 およびアフリカ
(EMEA)のホテル投資市場は、世界
で最も魅力的なホテル投資先として
の栄誉を受け、今年も当たり年とな
ることが確定的である。
JLLのホテル&ホスピタリティ・
グループによる最 新データによる
と、EMEAは今年250億ドルのホテ
ル取引が行われるであろうと見込ま
れている。
これは2014年の215億ド
ルから拡大しており、世界中すべて
のホテル取引の36%を占める。
この活況の大部分は、
ロンドンお
よびパリが主導する大型資産の単
体取引によって引き起こされる一方、
ポートフォリオ取引はイギリスとドイ
ツで行われると推測される。
いない。2015年、引き続きチャンス 資家の「ウィッシュリスト」の上位に
世界的なホテル不動産の取引量
並んでいる。
アジア地区の保険会社
は、2015年には680億ドルに達する を求めるため、南ヨーロッパやヨー
は、
この数年間で国外への資本の流
と想定され、主なプレイヤーとしては ロッパの新興国などの高利回り市
れを毎年数億ドルずつ拡大させ、
そ
場にプライベート・エクイティの投資
米国および西ヨーロッパに拠点を置
の額は2014年には10億ドル近くに
家が注目すると我々は考えている。
」
くグローバル・ファンドとプライベー
JLLのEMEAにおけるホテルズ&ホ まで達している。
ト・エクイティ・グループである。
イギ
北米のプライベート・エクイティ・
スピタリティ・グループCEOである
リス、
ドイツ、
アメリカは、世界中のプ
Christoph Härleはこのように述べ ファンドは短期的に投資を展開する
ライベート・エクイティ・キャピタルの
ための投資資金を準備し、
ヨーロッ
ている。
最大の投資先である。
中国資本を原動力としたアジア パの利回りは、特に不動産価格が上
「業界全体で公正な価格に関
昇傾向にある時には最も魅力的な
して疑 念の声があがっているが 、 からの投資も2015年はより力強い
ヨーロッパはまだ回復途上にあり 動きを見せることが確定的である。 水準を維持する。
Härleは
「加えて、多くのヨーロッ
東ヨーロッパとヨーロッパの新興国 また、中国からの直行便が就航して
いる世界の大都市、例えばロンドン、 パ諸国は客室稼働率の上限に達し
のどちらも資産の部屋当たりの価
ている。
そのため、平均稼働率が平
アムステルダム、
ドバイなどは投
値は未だに前回ピークにに届いて パリ、
均売上高(RevPAR)を前進させる重
要な原動力となり、
ホテル収益率増
加を予感させる。中東も同様に成長
が見込まれ、
アフリカのホテルでは
RevPARが2桁成長を実現する場合
もあるだろう。」
と述べている。
債券市場の開放
昨年、
バランスシートの貸し手はホテ
ルの貸出分野に戻ってきたことを受
け、
ユーロ圏では統制が取れた形で
債券市場が開放された。
Härleは
「2015年には、
イギリス
とヨーロッパ大陸で商業不動産担
保証券(CMBS)市場の回収が債券
投資商品となる」
と予測している。
またHarleは「引受基準の改善
と従属水準の増加により、債券投資
家はホテル資産を担保としたCMBS
を受け入れることで業界内の資金
不足のいくらかを埋めると考えられ
る。CMBSの回収は成長の機会を提
供し、
これがEMEAにおける投資家
による企業買収への需要を支え、
さ
らには株価の上昇につながる。加え
て、
ますます多くの直接貸付ファンド
(影の銀行)が、現在の50%-55%の
シニアポジションと75% LTVの間の
LTVのギャップを埋めている。
中国お
よび中東の資本輸出国からの後押
しにより、取引量は増加の一途をた
どるだろう」
とも予測する。
4
THE INVESTOR
OPPORTUNITIES
ミシガンアベニューの高級
都市型店舗 - メトロポリタ
ンタワーのショップ群
Zeller Realty Group所有のメトロポリ
タンタワーのショップ群の投資機会をご
案内する。
メトロポリタンタワーのショッ
プ群は、30階建ての高級コンドミニアム
を242室備えたメトロポリタンタワー内に
ある、
約36,386平方フィートのプレミアス
トリートと下層階の店舗で構成される。
サウスミシガンアベニューとミシガンアベ
ニュー沿いのイーストジャクソン大通り
の南西側の角地に位置し、世界有数の
商業地区としても名高い。
投資ハイライト:
• 2階の店舗は約14,456平方フィート
からなり、2015年5月現在、
その内の
約半分は、JPMorgan Chase (S&P
の格付けA+) 、FedEx (S&Pの格付け
BBB) およびBow & Truss Caféが入
居している。
• 7,143平方フィートが利用可能な最高
級のサウスミシガンアベニューの商業
空間は、
オープンなフロアと高い天井
(1階のスラブからスラブまでの高さは
13フィート)、開放感のある窓により、
大変人気となっている。
• 多くのテナントから多数の関心が寄せ
られていることから、将来的にも安定
した賃貸経営が可能。
詳細については、下記までお問い合わせ
ください。
水野 明彦
[email protected]
+81 3 5501 9947
Rebecca Wells
[email protected]
312-848-2048
Bruce Miller
[email protected]
312-228-2340
www.jll.com/investor
ロンドンのアイコン、
グロブナーホテル
が売却プロセスへ
ロンドンの一等地であるメイフェア
最大のホテル、JWマリオットグロブ
ナーハウスホテルが売り出し中だ。
グロブナーハウスホテルは今週
売りに出された。
自社の物件ポートフ
ォリオに
「知名度の高いホテル資産」
を加えることを望んでいる世界中の
裕福な投資家からの関心が高まるこ
とが予想されている。
「この資産は地域および世界中
の幅広い投資家を惹きつけることが
予想される。同ホテルは、その大規
模なバンケット施設と魅力的なボー
ルルームなどにより、同系列のパー
ク・レーン・ホテルからは一線を画し
ている。
これが独自のセールス・ポイ
ントとなり、投資家たちを魅了するこ
とは疑いの余地がない。」資産管理
者およびLPAの管財人に代わって
ホテルのマーケティングを任命され
た、JLLのホテルズ&ホスピタリティ・
グループのグローバルCEOである
Mark Wynne-Smithは、
このように
最も有名なバーやレストランの発祥
語っている。
の地でもある。
ハイド・パ ークを見 渡 す 好 立
Wynne-Smithは
「パーク・レー
地 に 位 置 するこのホテルは 、7 4
のスイートル ー ムを 含 む 4 2 0 の ンの最後のホテル取引は2年前であ
客 室 数 、ならびに2 7 の 会 議 室を り、市場はその時から力を蓄えてき
ている。多くの投資家が参加するこ
56,700平方メートルの敷地に擁
と期待を寄せ
し、ヨーロッパ 最 大 の 5 つ 星ダン とを楽しみにしている」
スホールがあることでも知られて る。
グロブ ナ ー は 、2 0 0 5 年 から
いる。Corrigan’s Mayfair、Park
Room & Library、
Bourbon Barと 2008年の間に1億3,500万ポンドを
かけて改装を実施し、2010年の売
Park Lane Marketなど、
ロンドンで
却時には、
ロンドンにおける記録上
最高額のホテル取引となった。
1929年の開業当時は、
イギリス
で初めて各ベッドルームに専用の
バスルームが備え付けられ、冷水が
通ったホテルであった。
このホテル
は、
かつてウェストミンスター公爵が
ロンドンでの住居とし、公爵の姓で
あるグロブナーという名を冠したグ
ロブナー・ハウスの敷地内に建設さ
れた。
ジョイント・ベンチャー取引の重要性が拡大
今年のANREV投資家意識調査は、
ジョイント・ベンチャー(JV)の取引が
アジア太平洋の商業用不動産市場
でいかに重要になっているかを示し
ている。調査回答者の40%(管理中
の資産規模によって重み付けを行
った)が、自社のアジア太平洋のア
ロケーション内でJVおよび
「クラブ・
ディール」に投資を専念させると回
答している。
8年目となるこの調査では、いく
つかこれまでとは趣向を変えた調査
を行っている。ANREVおよびEPRA
との合併により、運用不動産の総額
が5,856億ドルに達する144もの機
関投資家から回答が得られた。ま
た、同調査では運用不動産の総額
が1兆6,750億ドルを超えるファン
ド・マネージャーとファンド・オブ・フ
ァンズ・マネージャーの合計193名
の回答者も含まれた。
この調査を通
してアジア太平洋のすべての取引の
商業用不動産取引額の合計は、約
1,300億ドルに達することが判明し
た。
アジア太平洋に拠点を置く回答
者の60%近くが不動産への投資比
重を増加させるとし、
その最大の理
由は引き続き投資分散であることが
この調査から分かった。
アジア太平
洋の投資家は、北米に30%近く、欧
州ではさらに26%を目標とする地理
的な投資分散を示している。
アジア
太平洋の投資家による地域別投資
比率は、
アジア太平洋に約68%、欧
州に17%、米国に14%である。
アジア太平洋以外の投資家の
回答は、欧州や米国がアジア太平洋
より魅力的であると見なす傾向にあ
るが、
ファンド・マネージャーの94%
はアジア太平洋への投資を増加さ
せる意思を示している。
今年の調査で行われた改訂や
改善点の中で、特に重要なことが報
告結果の調整である。管理中の不動
産資産の規模に応じて回答に重み
付けを行うことで、大規模および小
規模な投資家の違いをより深く理解
することができる。
また同様にJVの
重要性がいかに増していくかを示す
所見が明らかになった。
JVを進める主な理由は、投資へ
の支配力を高めるという願望と物件
数の不足という2つの理由が考えら
れる。
またJV形式を取ることでより多
くの売却物件情報を得ることも可能
である。今回調査開始後初めて、投
資拡大における最大の障壁が前年
までの市場の透明性ではなく、物件
数の不足となった。
2013年と2014年の数値を比較
すると、合計取引量の成長をはるか
に超えるペースでJVの取引が増え
たため、
オーストラリアにおけるJV取
引量(合計取引量の割合)が8%から
16%に増加した(前年比)。
同様に、
シ
ンガポールのJVの取引量も10%か
ら25%に跳ね上がった。
これはシン
ガポールでは全体の取引量が低下
したにも関わらず、JVは15億ドル規
模で安定していたためである。中国
と日本はどちらもJV取引量では前年
比で下落したが、
アジア太平洋のJV
やクラブ・ディールに資産を配分する
ファンド・マネージャーが増えること
から、JLLは、2015年にはこれらの
国でもJVのトレンドが上向くと想定
している。
前年の流れに沿って、東京のオ
フィス市場は57%で上位を守り、
シ
ドニーが53%と僅差で続き、
その後
にメルボルンが続く。
中国のTier1都
市は、投資先として第4位にランクイ
ンした。
THE INVESTOR
5
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世界中のホテル投資家がニューヨークでの
滞在期間を延長している理由
Megan Dolan (JLL)著
経済の活性化と安定した長期リター
ンの確約に目をつけた外国投資家
が、ニューヨークのホテルに過去最
大規模の資金を投入している。
JLLの調査では、オフショア投
資家は2014年のニューヨークのホ
テル取引に19億ドルを投じている。
これは2013年はわずか12%しかな
かった同市のホテル取引における
合計取引量の58%を占めるに至っ
た。今年、JLLはオフショア資本によ
るニューヨークでの取引量は30億ド
ルに達すると予想している。
新興資本の大部分は、海外での
買収に関する新しい中国国内政策
に刺激された中国投資家からもたら
されている。JLL発行のホテル投資
市場調査であるHotel Investment
Outlookによると、2015年の世界中
のホテルの取引高のうち、50億ドル
相当を中国人が占めるということで
ある。
しかし、
カタール、バーレーン、
ク
ウェート、
マレーシア、シンガポール
他各国からの投資家も、知名度の高
いオフィス不動産への投資から、
アメ
リカのホテル部門へ進出する意思を
示している。2014年には、
これらの
国々からの投資家が、合計15億ドル
にのぼるニューヨークの7件のホテ
ル資産を買収した。
「 ニューヨークは長い 間 世 界
屈指のホテル市場であり続け、オフ
ショア投資家にとっては確実で安全
な選択肢の代表となっている。
ホテ
ル投資をしているのは中国人だけで
はない。経済への信頼感、市場参入
者の数の増加、
そして堅調なファン
ダメンタルがトップクラスのホテル資
産へ競争が集中する原動力となって
いる。」JLLのマネージング・ディレク
ターであるJeffrey Davisは昨今の
ホテル投資への背景をこう分析して
いる。
これが、世界的な不動産市場の
収縮が発生しても長期的に価値の
増加が見込まれる
「永遠の不動産」
といわれる所以である。当然ながら
外国人投資家は合理的な利回りを
求めるが、Davisによれば、利回りは
必ずしも最優先事項ではないとい
う。Davisはこのような投資家は特に
資産を長期間所有する傾向があり、
そのため、主要市場での高品質な高
級ホテルを主に追い求めることが多
いと話す。
ここでレジデンス・イン・ニュー
ヨーク・ワールド・トレード・センター
の売却を事例として考察してみよう。
マンハッタン南部にあるこの新しい
ホテルは、多数のFortune500選出
企業、著名なショッピング店や飲食
店、
そして多数の市場を変革させる
ような開発プロジェクトが揃っている
ワールド・トレード・センター複合施
設にほど近い場所に位置している。
このホテルはその立地の良さから多
くの投資家の注目を集めたが、最終
的には中東の投資会社が取得した。
ニューヨークのホテル市場へ信
頼感を寄せる投資家のひとつが、
マ
レーシアと香港に拠点を置くKeck
Sengグループである。
同社は去年ス
プリングヒル・スイート・ニューヨー
ク・ミッドタウン・マンハッタン/フィフ
ス・アベニューとソフィテル・ニュー
ヨークを取得した。
サンフランシスコに米国オフィ
スを展 開しているK e c k S e n gグ
ループの社長でるPeter Wongは、
「ニューヨークは世界屈指の都市
であり、長期的な投資に理想的な強
力なファンダメンタルを誇っている。
現在、当社では国際的な大都市の
中心業務地区でホテル資産の多く
を所有し運営している。特にニュー
ヨークについては今後の展望に信
頼を寄せている。具体的には、新し
い高品質な物件が長期にわたって
良好な業績を残すと確信している。」
と期待を寄せている。
他 の 外 国 人 投 資 家と同 様
に、Keck Sengが米国のホテルへの
関心を回復させた理由の一部は、雇
用の上昇とドル高傾向に主導された
力強い経済復興によるものである。
とりわけニューヨークのホテル
市場は特に魅力的なファンダメンタ
ルを示している。
スミス・トラベル・リ
サーチによると、
ニューヨーク市のホ
テル客室稼働率は2013年と2014
年に85%に達し、米国の最高記録
を塗替え、世界でも有数の稼働率
となっている。ニューヨークはすで
に世界的に見ても物価の高い都市
のひとつだが、2013年から2014
年にかけて平均客室単価(ADR)は
2%近く上昇し、263.45ドルに達し
た。
また、客室当たりの平均売上高
(RevPAR)は2.1%上昇し、223.53ド
ルに達している。
オフショア投資家からの資金流
入により、
すでに取得競争が展開さ
れていたニューヨークのホテル市場
での物件取得レースはさらにヒー
トアップしている。また昨年は市場
に6,400室以上の新規供給がなさ
れたにも関わらず、価格の上昇と投
資利回りの低下をもたらしている。
ニュー ヨ ー クの ホ テル の 平 均
キャップレートは 、2013年 の 6 %
から、2014年には5.5%となった。
「世界中の投資家がニューヨー
クのあらゆるグレードのホテルに注
目している。彼らは大規模改修や移
転の機会が見込める老舗の大型ホ
テルに狙いを定めている。」
とJLLの
エグゼクティブ・バイス・プレジデン
トであるGilda Perez-Alvaradoは
語っている。
Perez-Alvaradoはまた、
「2015
年は、オフショア資本が引き金とな
り、
かつて無い規模の取引活動が行
われる年になると予想している。」
と、
今後状況がさらに激化するとも考え
ている。
6
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日本のホテル取引が世界金融危機前の水準に回復
JLLホテルズ&ホスピタリティ・グループによると、
日本のホテル市場の流動性と取引量に活気が戻っている
JLLのホテルズ&ホスピタリティ・グ
ループによると、日本のホテルの今
年の取引総数が初めて世界金融危
機前の水準を上回った。2014年、
国 内のホテル施 設 の取 引は合 計
101件を記録し、取引額は、かつて
大 規模な取引が見られた2007年
と2013年には及ばなかったが、取
引形態と買い手の性質は当時に比
べ変化している。
JLLによるとホテル事業の業績
の改善により、日本市場における
ホテル資産の流動性が高まってい
る。さらにホテルを取得する投資家
の顔ぶれも、民間投資会社にとど
まらず多様化している。
JLLホテルズ&ホスピタリティグ
ループ東京オフィスのエグゼクティ
ブ・バイス・プレジデントの寺田八
十一は「世界金融危機の直後、日
本のホテル産業の流動性は瞬く間
に低下した。これは、当時の市場
では民間の不動産ファンドが実質
的に唯一のホテル投資家であった
ためである。」近年、投資家のプロ
フィールは多様化し、ホテル投資市
場はこれまで以上に健全に機能し
ていると感じていると分析する。
2014年、JLLが記録* する資産
取引の内、アジアの投資家や外国
人投資家が約23%を占める一方、
資産売却高の残りを占めるのが国
内投資家である。そのうち単独グ
ループとして最大の投資規模を誇
るのがJ-REIT部門である。また世
界金融危機後に資産を取得したホ
テル事業者およびアジアの投資家
は、引き続き市場で活発に取引を
行っている。JLLホテルズ&ホスピ
タリティ東京のマネージング・ディレ
クターである沢柳知彦は、
「国内お
よび外国人投資家は、日本の観光
およびホテル産業に楽観的な見通
しを持っている。2020年の東京オ
リンピックをはじめとする今後行わ
れる大規模なイベントによって、よ
り安定した国内のレジャー需要と、
外国からの旅行者数の成長が予測
されることから、投資家にとってよ
り魅力的な市場となるであろう」と
期待を寄せる。
建設費が予想通り上昇の一途
をたどる場合、新しいホテル建設は
限定的となり、2015年は売り手優
位の市場となるであろう。
J L L のホテルズ&ホスピタリ
ティ・グループは、2 014 年および
2015年初頭に10件のホテル資産
の取引を手がけた。最近では札幌
の2つの「ネストホテル」の取引で
アドバイザーを務め、2014年12月
に完了した (売主:IPC、買主:いち
ごグループ・ホールディングス、価
格:合計約27億円)。また、5つの
「ビー・ホテル」を含むポートフォリ
オ取引が2015年1月に完了した(売
主:イシン・ホテルズ・グループが管
理するSPC資産、買主:ジャパン・
ホテル・リート投資法人、価格:合
計約200億円)。
* 注記:JLLのデータは、公開された
取引、または独自の情報ソースから取
得したもので、オフマーケットでの取
引ならびにJ-REIT内部での取引は含
まない。
ロンドン最大のオフィスタワーが売却
JLLがロンドンのHSBCタワーを売
却した。EMEAにおける単一資産の
販売高としては2014年最高額にな
ると見られる。
JLLは売主である韓国国民年
金基金(NPS)のアドバイザーとし
て、NPSのアセットマネージャーであ
るJPモルガン・アセット・マネジメント
とともに約11億8千万ポンドでの売
却に成功した。
売却販売活動は10か月かけて
行われ、ピーク時にはJ L Lの営 業
チームは10日間に14か国、50回に
わたり投資家向けプレゼンテーショ
ンを開催した。
J L L のチームのリーダーはシ
ティ・オブ・ロンドン・オフィスの
Andrew HawkinsとRob Jackson
が務め、
リース、債券金融、資本市
場、マーケティング、国際資本の各
チームの参加者がサポートした。
「 元々1 0 億 2 , 6 0 0 万ポンドで
この物件を購入していたクライアン
トにとって、
この売却は素晴らしい
成果であった。入札に応じた投資
家はすべてJLLのネットワークによ
るものであった。
これはわが社のグ
ローバルな展開によるところが大き
いと自負している」
と、JLLの都市投
資担当ディレクターであるAndrew
Hawkinsは述べている。
国際金融機関大手のHSBCが
グローバル本社を置くHSBCタワー
は、
ロンドンのCanary Wharfにあ
るエイト・カナダ・スクウェアに位置
する44階建てのオフィスタワーであ
る。
HSBCはこのビル唯一のテナン
トであり、ロンドンの最大規模のオ
フィスビルでもあるこの物件を長期
リースしている。
この象徴的なビル
は、
フォスター・アンド・パートナーズ
によって設計された。
HSBCタワーのマーケティングは
GMリアル・エステートと共同で行わ
れた。
THE INVESTOR
7
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アジア投資家が注目する米国のインダ
ストリアル市場
さまざまな要因があいまって、米国インダストリアル市場は世界中の投資家の注目を集めている
今年、業界を震撼させる取引が行
われると予想されている。ブラック
ストーン・グループLPが、1億平方
フィートの米国の倉庫および配送セ
ンターの所有者である同グループの
IndCorプロパティーズ・インクを、80
億ドル以上で売却する予定であると
いうものである。
買い手はシンガポー
ル政府のソブリン・ウエルス・ファン
ドを代表する、シンガポールのGIC
Pteである。IndCorは、
この取引が膠
着状態となる前に株式公開を開始
することを定めていた。
ブラックストーンとGICの取引は
アメリカの物流施設に対するアジア
からの関心が高まっていることを示
している。JLLアメリカのインダストリ
アル部門ヘッドであるCraig Meyer
は
「2012年以降、
アジアおよびその
他の世界中の投資家らによる米国
のオフィス、住宅および商業施設の
取得が大幅に増加しており、現在で
は物流部門まで検討を拡大してい
る。
これはブルックフィールドによる
IDI Gazeleyの取得を通じて、2013
年後半には実際に開始している。」
と
分析する。
米 国 の 産 業 用 不 動 産 への 海
外 からの 投 資は、オフィスおよび
小売部門の投資よりもまだ遅れて
いる。
しかしながら2014年の取引
量は10年 前の5 倍に相当する2 6
億ドルにまで拡大している。2014
年の取引量の5 0 % 近くをカナダ
の 投 資 が 占めている一 方 で、契
約間近のGIC/IndCorのディール
や、2 0 1 5 年に予 想される取引量
を加えると、
この勢いは劇的にアジ
アへとシフトするだろう。すべての
地 理 的セグメントにわたって成 長
は確かなものであるが 、最も重 要
なことは、ポートフォリオとエンティ
ティレベルの取引に大きく焦点が当
てられていることである。JLLの調
査によると、2012年以降のすべての
外国からの投資による買収の内、
こ
のような取引が59%を占めている。
相対的な米国のマクロ経済の強
さ、
アジア太平洋市場における国内
競争の激化と価格の上昇、土地不
足による開発機会の限定、機関投
資家とソブリン・ウエルス・ファンドか
らの投資の増加、
インダストリアルセ
クターへの総合的な安心感などが、
アジアなどからの投資が増えている
主な要因と分析される。全体の取引
において物流および工業部門は10
~15%を占めていると推測される。
米国の産業用不動産は、著名な
オフィスビルや華やかな大通りに面
した商業施設などの存在感の大き
な建物の影に隠れがちであった。
し
かし現在ではアジアの投資家たちに
とっての投資先として、その真価が
明らかになろうとしている。大規模倉
庫や配送センターの出現も、海外の
投資家たちにとって魅力的に映って
いる。
これらの大型物件には投資評
価を左右する信頼度の高い多国籍
企業が入っている場合が多く、投資
が増加する要因ともなっている。
電子商取引の成長にけん引さ
れ、FedExやAmazonなどのテナン
トは、最新の物流設備を最も積極
的に吸収している企業の一部であ
る。JLLが現在売却活動を行ってい
るFedExポートフォリオなどの売却
物件は、10年を超える長期的な加
重平均リース期間が確保されてお
り、
これも海外投資家にとっては魅
力的である。
こうした賃貸契約体系
の増加は、
インフレに対する防衛策
としても機能し、一般的にはトリプ
ル・ネット・リースの形態である。
これ
は、保有期間中に安定した収入源
を受け取りながらも自社のポートフ
ォリオを管理したい投資家にとって
は、魅力的な提案となる。
さらに、産
業/物流部門は改装費用の引当金
が低く、保守義務も最小限であるた
め、多くの資本的支出が必要となる
投資手段ではなく、長期的に優れた
投資収益率を生むことが実証されて
いる。
JLLのインダストリアル・キャピタル
市場のヘッドであるJohn Huguenard
は、
「 米 国の産 業 用不 動 産に関
心を示すアジアの投資家にとって
重 要な問 題は、資 産 に 関 する経
験 不 足 と 、市 場 の 拡 大 に 伴 っ
て重 要 度を増す配 送 センター へ
の理解が不足していることである。
しかし今後世界で最も洗練された
投 資 家であるアジアの 投 資 家 の
理解が進めば、2015年にはアジア
投 資 家は米 国の産 業 市 場 への
オフショア資本の流れのダイナミク
スをけん引する」
と予 測している。
OPPORTUNITIES
シンガポールのランドマークとなるオフィス物件
シンガポールCBDの一等地であるラッフ
ルズプレイス地区に位置するキャピタル
スクエアは、
シンガポールの高級オフィス
物件の1つだ。16階建てのこのビルは、店
舗施設と伝統的な
「ショップハウス」
を備
えている。
このビルの50パーセントの株
式を取得できるというまたとない機会を
紹介する。
JLLシンガポールのキャピタルマー
ケット事業部長のGreg Hylandは
「シン
ガポールのオフィス市場は堅調に推移し
ている。CBDのオフィス賃料は2014年に
14パーセントを超える上昇を示し、
アジ
ア太平洋全体で最も好調である。
この活
気溢れる市場の中心部に、他にはない高
品質物件を取得するというのは投資家に
とって素晴らしい機会である」
と当物件
に期待をよせている。
投資概要:
• 1988年竣工。
デベロッパーはシンガ
ポールを代表するKeppel Land
• 現在満室稼動。
• ラッフルズプレイスのグレードAオ
フィス賃 料は、1平方フィート当たり
12~14シンガポールドルと、2008年
のピーク時には未だ届いていない。
一方で市場の透明性の高さとシンガ
ポールの好景気により、高級オフィス
物件の需要が高まっている。一例とし
て、
マリーナベイファイナンシャルセン
ター(MBFC)の33パーセントの持分
が約12億4,800万シンガポールドル、
賃貸可能面積1平方フィート当たり
2,790ドルで売却されている。
• この開発は一流の建築および建物に
関連する賞を10個も受賞し、最近では
シンガポール建築・建設庁のグリーン
マークゴールド賞 (2012年)、
およびナ
ショナルセーフティアンドセキュリティ
ウォッチグループ賞 (2013年) を獲得
している。
また、最近ではメインエント
ランスロビーとエレベーターホール、共
用部を刷新するための大規模修繕を
実施している。
• 賃貸可能面積は3棟合計で約
388,215平方フィート。
1. チャ ー チストリート2 3 は 1 6 階
建 て の グ レ ー ド A オ フィス ビ
ル で あり 賃 貸 可 能 面 積 は 約
340,605平方フィートである。主
なテナントはCitibank、Morgan
S t a n l e y 、B l o o m b e r g 、そして
Amazonである。基準階面積面積
は約30,000平方フィートであり、
梁のないオフィス用床面積としては
ラッフルズプレイス最大規模を誇る
2. チャ ー チストリート2 1 は 、3 階
建 てのショップハウスの 独 立 型
テラスハウスで あり、賃 貸 可 能
面 積 は 約 2 0 , 6 2 4 平 方フィート
で ある 。現 在 は オフィスとして
使用されており、Aberdeen Asset
Managementが一棟借りしている
3. チャーチストリート25も3階建ての
ショップハウスの独立型テラスハウ
スで、1階はF&B、上階はオフィスで
ある。複数のテナントが入居してお
り、NLAは約26,986平方フィート
である。
詳細については、下記へお問い合わせく
ださい。
水野 明彦
+81 3 5501 9947
[email protected]
Greg Hyland
+65 9818 1537
[email protected]
Stuart Crow
+65 6494 3888
[email protected]
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THE INVESTOR
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グラン・パリ・プロジェクト 投資機会
JLLが選ぶ
「グラン・パリ・プロジェクトで注目すべき
3つのエリア」
とは?
グラン・パリ・プロジェクトとはパリと
その周辺部を結ぶ大掛かりな地域
交通計画である。
グラン・パリ・エクスプレスの路
線上に設置予定の72駅すべてに新
しいビジネスエリアが乱立するとは
考えにくいものの、
グラン・パリ・プロ
ジェクトはパリ周辺部にとってはまさ
に画期的な計画であることは間違い
ない。
JLLが上梓した同プロジェクトに
関するレポート
「グラン・パリおよび
商業用不動産:将来の展望」
では、
グ
ラン・パリ・プロジェクトの資産およ
びビジネスへの意味合いに関する考
察を記載している。
その第一弾のレポートで、JLLは
すでに大きな変貌を遂げている地
域を紹介している。
この地域はPorte
d’AubervilliersからSaint-Ouen経
由でPorte d’Asnièresまで広がる。
この地域の中で、グラン・パリ・
プロジェクトの成功のカギを握ると
思われる3つのエリアが存在する。
その場所とは、パリ北東部の18区と
19区、17区のClichy-Batignolles、
そしてSaint-OuenのDocksエコ・デ
ィストリクトである。
これらの地域製造工場の相次ぐ
進出によって労働者階級の住宅が
並び、
それに伴いオフィスビルが建
設されるなど大きな変貌を遂げてい
る。
クリティカル・マスに達するのは
時間の問題であるが、開発用地がま
だ多く手に入る状況下であり、新し
い交通インフラの導入によってさら
に多くの開発が見込まれる。
これら3つの地区すべてにおい
て、大規模な多目的プロジェクトが
始動している。
短 中 期 的にはこれら3 つの地
域は通勤需要がメトロまたはRER
線に大きく依 存することになるた
め、新築オフィスビルが竣工しても、
そこへの通勤経路は限定されたまま
となる。
ただし中長期的にはグラン・パ
リ・プロジェクトの恩恵をうけること
により、
オフィステナントや地元住民
にとっても魅力ある街づくりが可能
であると考えられる。
JLLではこうし
た複合型の開発がパリ首都圏のさ
らなる広がりを後押しするものと考える。
JLLのレポートで検討した3つの
各地域では、
これらの地区をより広
範囲な都市の戦略的地域に結び付
ける、
より強力で改善された交通網
が作られると考えられる。
さらに、経済および居住地の中
心の間に新たな連絡手段が作られ
るべきであり、
これがこの地域の開
発にさらに拍車をかけることになる。
3つの地 域での開 発の潜 在力
と、計画されている交通網の改善に
ついて、
ここに簡単まとめる。
パリ北東部(18区 と19区 ):
再開発面積:約 200ヘクタール
パリ北東部はオフィイスの拠点とし
てのイメージを高める必要があり、
そ
の成熟速度はパリ北部のオフィス
エリアと関連する。
交通網の改善:
• 2015年12月のPER E号線の駅の
開通により、パリの主要駅へのア
クセスが改善し、パリ中心部へ直
接アクセスできるようになる。
• 2017年にはT3B号線がPorte
d’Asnieresまで延伸開業する。
こ
れによりパリ西部の住民がパリ中
心部を通ることなくこの地域に出
かけることができるようになる。
の地域のオフィス市場としての重要
度はさらに高まることになる。
交通網の改善:
• 2019年までにメトロ14号線が延
伸し、
この場所からパリへのアク
セスが改 善される。長 期 的には
Sain-Denis-Pleyelに建設が予定
されている交通拠点に通じる予定。
これら3つのエリアはいずれも高い
ポテンシャルを有しているが、立地
面などからそれぞれ 違った「 街の
Clichy-Batignolles(17区): 顔」を持って成長してくものと考えら
れる。
• 再開発面積:約 50ヘクタール
まず Clichy-Batignollesは 、
• Clichy-Batignollesは長期的に
パリ中心部への近さから完全に首
はパリ首都圏西部のビジネス区
都の一地区として取り込まれていく
域の一部となるだろう。
その地理
だろう。
この新しい地区がパリにおけ
的な位置関係と、既存のビジネス
るオフィス街として完全に浸透すれ
区域へ隣接していることから、
オフ
ば、
すぐに成熟するはずである。
しか
ィスエリアとしての成長は比較的
し、
この場所の面積はそれ自体で独
早いと見込まれるこのエリアで供
立したオフィス・センターとなるほど
給される新規のオフィスビルはパ
大きくない。
リ西部のオフィスエリアとして組み
Saint-Ouenおよび パリ北 東
込まれることで、
ステータスの向上
部は、Saint-DenisやSaint-Denisが期待できる。
Pleyelとともにパリ北 部 のビジネ
交通網の改善:
ス エ リアとして の 発 展 が 期 待
• 2019年の14号線の延伸と2つの
される。オフィス市 場の成 熟ペー
新駅により、
この場所へのアクセ
スは2 地 区では大きく異なると考
スは大幅に改善されることになる。
えられる。Saint-Ouenはすでにオ
Saint-OuenのDocksエコ・ フィス街のイメージが 定 着してお
り、Docksプロジェクトによってこ
ディストリクト:
の イメー ジはさらに 強 化 される
• 再開発面積: 100ヘクタール
事になる一 方 、パリ北 東 部はどち
ここ数年、複数の企業がこの地域を らかと言うと工 業 地 区 のイメー
オフィス用地区として開発に動いて ジがあり、今 後イメージの確 立が
いる。
こうしたプロジェクトにより、
こ 最優先で求められる。