鮎の味は水で決まる / 釣り師 大西 満

すい 滴
鮎の味は
水で決まる
釣り師 大西 満
日本人は鮎が好きです。鮎釣りも非常に面白いのです
こんな鮎は、焼くときに内臓から赤紫色の汁がにじみ
が、鮎の味もまた格別ですね。
出ます。もちろん、その内臓はほろ苦く、それが口の中
北海道南部から九州まで各地の川に鮎がいて、ほとん
で広がると「爽やかな苦み」と言いたいレベルです。
どの川で地元の人は「ウチの鮎が一番!」とその味を自
もちろん、身の味は香ばしさと甘さと独特のうまみ・・
・
慢します。
これに内臓の苦みがミックスされて日本人好み、と言うよ
天然遡上もありますが、遡上できない区域には放流も
りは日本人しか分からない味のようです。
して、鮎が棲めるような美しい流れがあれば鮎がいるの
鮎の味は、一に水質、二に水温、三に鮎の鮮度、で
です。
決まると思います。
私は全国各地へ鮎釣りに行きますが「どこの(川の)
水が冷たくてきれいな川の鮎をすぐ食べたら、確実に
鮎が一番おいしいか」と、よく尋ねられます。
おいしいのです。
確かに、川によって鮎の味が大きく異なることも事実
以前、釣り仲間で鮎の食べ比べをしました。
です。
おいしい、と言われる川へ分散して釣りに行き、その
頭からむしゃむしゃと、いくらでも食べたい鮎もあれ
夜に持ち寄って焼いて食べ比べてみたのです。
ば、一口食べただけで「もう、ええわ」と横を向きたく
結論は「どれもおいしい」。
なる鮎も・・・。
味で有名なブランドの川も、全然知られていない無名
おいしい鮎は、生の時の芳香(スイカのような香り)
の川も、全く区別ができなかったのです。
が違います。釣りをしていて、鮎を握った手をいつまで
水温は変えられませんが、水質は人の手で変えられま
も自分の鼻の前に置いておきたい―そんな香りなので
す。
す。
水がきれいになったら鮎がおいしくなった―兵庫県揖
保川、千種川などが流域の町の下水道設備を完成させた
ら、本当に鮎がおいしくなったのです。
和歌山県日置川では、ダム湖の表層水を流すようにし
たら、雨で水が濁るとこれまで 15 ~ 20 日も濁りが続い
たものが2~3日で澄んだ水が流れるようになり、鮎が
格段においしくなりました。
川の水は、元々はきれいで鮎もおいしかったのですね。
それを、私たちが変えた。
今、少しでも元に戻せたら―今後の私たちの課題です。
すい滴/鮎の味は水で決まる
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