かぼちゃ栽培マニュアル

かぼちゃ栽培マニュアル
1
作物特性
(1)
気象条件
ア
ウリ科の植物で、原産はアメリカ、熱帯アジアとされている。
イ
生育適温は 17 ~ 20 ℃。かぼちゃの中でも道内で一般的に栽培されている西洋かぼちゃは、比較
的低温を好むため、冷涼な地域での栽培が多い。
(2)
土壌条件
ア
他のウリ類と同様に土壌適応性は広いが、排水性のよい砂土~壌土を好む。
イ
ほ場の土壌 pH は、6.0 前後が適し、リン酸含量が多い方がよいとされている。
2
求められる品質
(1)
目標品質と基準
図1 目標品質と基準(
「北海道野菜地図」より抜粋)
(2)
等級と規格
ア
イ
等級
規格
※等級と規格は JA 新おたる赤井川事業所・南瓜部会参考
(3)
生産目標
目標収量は、
「みやこ」は 1,200kg/10a、
「マルチ+トンネル」作型で「味平」は 1,500kg/10a 以上、
マルチべたがけの「くり将軍」は 1,700kg/10a 以上である。
3
栽培技術体系と品種特性
(1)
年間作業スケジュールと旬別労働時間
※ウリ科は生育が早く、摘心などの作業の適期幅は3~4日短い。定植をずらすなど、一回の作
付面積を適期作業ができる範囲内にするのが経営の勘所である。
(2)
栽培技術体系
(3)
4
(1)
品種特性
育苗(べたがけ+マルチ、露地+マルチの場合)
種子浸漬
種子浸漬は10~12時間、温水(25℃)で行う。
(2)
育苗床土
表1
育苗床土の作り方例(製品 1,000 ㍑あたり)
左表は、12cm ポットで 1,250 鉢分の量となる。
育苗床土は無病でpH 6.0 ~ 6.5、EC 0.5 ~ 1.0ms/cm を
目安とする。
(3)
は種の準備とは種(ポット直播)
ア
は種7日前までに育苗ポットに
土を入れ十分にかん水し、ポリ
イ
新聞紙が濡れる程度に水をかける
マルチなどで被覆する。地温は
種子は横にして、先端(とがっ
20 ℃以上に上げておく。
た方)を揃える。覆土は 1cm
覆土は1cm程度。覆土後は軽
程度で軽く押さえる。
く抑えておく(図2、写真1)。
ウ
適期作業するには、同一作型で
はは種時期を 5 ~7日ずらすと
図2 は種の様子
よい(写真2)
。
(2)
ア
は種後の管理
発芽の最低温度は 15 ℃、適温は 25 ~ 30 ℃である。10 ℃以下、40
℃以上にしない。
イ
4月中旬は種の場合は、ポットにシルバーをかけて保温する。
ウ
は種後5~7日(子葉が展開)で、10 ~ 12cm ポットに鉢上げす
る。
エ
電熱線で加温するのが望ましい。
オ
育苗日数は 25 日を目安とし、本葉 3.5 ~ 4.0 葉が定植適期であ
(3)
ア
写真1 一方向には種した場
合、同じ向きに子葉が展開す
るので扱いやすい。
育苗管理
育苗後半は、隣接株と葉が重ならないうちに鉢ずらしをする(写
真3)。
イ
定植の 7 日前からは外気に慣らし、夜温 10 ℃ 程度まで下げる。
写真2 適期作業ができるよう
に、は種時期をずらす。
5
定植
(1)
定植の準備
ア
基肥は、マルチ幅程度(1.5m 幅位)で行う。
イ
マルチングは1週間前に終わらせ、地温を上げておく(写真4)。
ウ
苗は定植前日に十分かん水しておく。
エ
苗立ては 1 回の定植作業を 2 ~ 3 日とすると、2 本立ての場合 1
回の定植作業はマルチ+トンネルの場合は3人で 30a、露地+マ
ルチの場合は3人で 50a が目安である。
写真3 隣り合った苗の葉が
重なりだした様子
定植は色々な方法があ
る。
作業畝はブームスプ
レイヤーの長さに合
わせて設置する。
左図の場合は往復 3 畝
(片側 1.5 畝)を防除
できる。
図3
定植設置例(子づる 2 本仕立て・
露地+マルチ)
マルチ+トンネルの場合は畝幅を5 m とる
(2)
追肥
追肥はつる長が2m位になったら、つる先の除草を兼ねて行う。できれば着果を確認して行う。
着果揃い後に行うのが望ましい。
施肥例
(3)
栽植密度
写真4 マルチをした畑
本資料では管内で主に行われている 2 本仕立てを扱う
※うどんこ病の多い地域なので、密
植はせず、適正な栽植密度でうど
んこ病の発生を防ぐ。
(4)
定植方法(写真5,6、図4)
ア
1回の定植株数は、定植及びつる管理(芽かきなど)が2
本葉1枚目を
通路方向方向
に向けて定植
する
日間位でできる範囲内が望ましい(30a・3 人が目安)
。
イ
作業は組作業が効率が良い(定植1人、運搬1人、本畑で
の苗運び1人など)
。
ウ
根鉢を壊さないように植える。
エ
深植えはせず、株元がこころもち高めになるよう定植する。
オ
鉢と植え穴(特に底)に隙間ができないようよう注意する。
カ
定植作業は温かく風のない日に行い、なるべく午前中に終
図4
定植する際の苗の向き
わらせる。
キ
かぼちゃは霜害に弱いので、いたずらに早植えはしない(作型を守る)。また、天気予報を参考
に定植日を決める。
ク
定植後は、活着促進と風害防止のため、被覆資材で保護する(写真7)
。
写真5(右) 定植の様子
写真6(左) 立ったままでマルチの穴を開けポット苗が
定植できる道具(ウエラック)もある。
6
写真7 ビニールトンネルは裾(つ
る先)換気または穴あき換気を行
う(写真は裾換気)。
定植後の管理
(1)
摘心、整枝、摘果、着果、その他管理
ア
摘心は活着5~7日後(5~6葉が見えた時期)に4葉目で
摘心する。
イ
つるが1m位伸びたら(定植2週間後位)子づるを 2 本に整
理し、芽かき、ゆう引、つるの仮留め(割り箸や、ヨモギな
ど 20 ~ 25cm 位の長さのものを使うと便利)を一度の作業で
行う(写真8)
。
写真8
整枝作業中のほ場
ウ
低節位の果実は小果や奇形果になりやすいので 10 節までは摘果をする。
エ
つる整理、2本仕立て、脇芽かきつる誘引が遅れると後々の作業効率が落ちるので、適期作業を
心がける(1人でできる作業量は 1 日 15a 位)。
オ
かぼちゃの開花適温は 10 ~ 12 ℃である。保温資材の除去は早くしすぎないよう注意する。
カ
ほ場全体の着果のピークを記録しておくと、収穫時期の目安となり便利である。
キ
果実の汚れや黄帯部分が生じるのを防ぐため、皿敷きやマルチ麦を用いる場合がある。皿敷きは
着花後 15 ~ 30 日頃で果実がおわん大~どんぶり大になった頃に敷く。また、マルチ麦は、マル
チングと同時に秋小麦をは種する。
ク
果実肥大期以降は、うどんこ病が発生しやすいので早期防除を行
う。特に、果実周辺の葉が被害を受けると日焼け果が発生しやすくなり品質を落とすので、予防
に努める。
7
収穫、調整、貯蔵、出荷
(1)
ア
収穫
収穫適期の目安は、①開花後 45 ~ 55 日、②果梗部に縦にコルク
果梗部にコルク状の
ヒビが 3~4本以上
果実まで入る
状のひび割れが生じる(図5)、③果面の光沢が消える、などで
ある。
イ
成熟日数はその年の気象に左右されるので、収穫を始める際は必
ず試し切りし品質を確かめる。
ウ
収穫は、晴天日に朝露が乾いてから行う。収穫時間の目安は午前 10
時~午後4時頃の6時間位である。
エ
図5 収穫時期の果梗
果梗部はかぼちゃ収穫専用のハサミを使用し、果実の肩より低く
切り取る。
オ
畑で収穫した果実を運ぶ際は、だいこんネットを利用すると便利
である(写真9)
カ
作業作業は重労働である。図6のように効率的な作業ができるよ
う、作付け体型を含め十分に
の基本である。
図6
検討しておくのがかぼちゃ栽培
写真9 だいこんネット
に入れ運ばれてきたかぼ
連携プレーで効率的な収穫(3人で作業の例・収穫物の運搬は後で行っている)
<収穫時の注意>
①果実に付いた土などは、乾くと取れにくくなるので土をぬぐいながら収穫する。
②収穫後は果梗部の切り口を上にして速やかに乾かし、キュアリングする。
③適期収穫をめざすために、2~3回に分けて行う。
(1回目はおおよそ 50%位の収穫)
(2)
キュアリング(写真10)
望ましいキュアリングの条件は、①温度 25 ℃、湿度 70 ~ 80 %、②風通しがよい場所で行い、
果実の積み重ねは3段以内とする。果梗部が完全に硬化するまで(7~ 14 日間)行う。
写真 10
キュアリングの様子
3段に整然と積まれているかぼちゃ(写真左)。速やかに風乾するため扇風機を利用する場合もある(写真中央)。
キュアリング場所を遮光し、適温になるようにしている(写真右)。
(3)
出荷
キュアリングが不十分な場合もあるので、出荷の際は十分にキュア
リングされたか確認する。キュアリング後にブラシやタオルで磨き、
規格別に箱詰めし、出荷する(写真 11)。
写真 11
8
(1)
奥にあるのが磨き機
生理障害と対策
日焼け果
症状
日光が直接果実にあたった部分が白くなる。
発生条件
日光が直接果実にあたることで、発生する。
対策
・着果後の草勢管理
・うどんこ病などの早期防除
9
(1)
病虫害と対策
キスジトビハムシ
発生条件
・定植間もない苗に群生する。
・幼苗期に食害が激しいと、全体が枯死したり生育が遅
れる
・株の小さいセル苗(72 穴)や直播の場合はポット苗
よりも被害を受けやすく、生育に影響しやすいので注
意する。
対
策
・多発した場合は、薬剤防除する。
(2)
アブラムシ
症
状
・直接の吸汁被害で肥大を低下させる。
・果実が光ったようになり、品質が低下する。
発生条件
・高温年に発生が多い。
対
策
・発生が認められたときは、防除を行う。
(3)
うどんこ病
症
状
・葉にうどん粉をふりかけたようなかびを生じる。
・葉が傷むと、日焼け果が生じやすくなり収量や品質の低下をまねく。
発生条件
・乾燥気味の気象で発生しやすく、日当たりが悪い場合や施肥量が多
い場合に発生しやすい。
施肥が少な過ぎ草勢が極端に弱い場合でも発生する。
・果実肥大期以降に発生しやすい。
対
策
・適性施肥を守る。
・密植を避け、適正な栽植密度で作付ける
・発生を確認したら(発生初期)に薬剤防除を行い、まん延しないよ
うにする
(4)
疫病
症
状
・茎の地際部や幼果、果実や茎の柔らかい部分に発生しやすい。
・果実では、初期は暗褐色の水浸状病斑を生じる。茎では、地際部や滞水した箇所の多湿な土
に接した部分で暗褐色にくびれ、軟腐する。
発生条件
・高温多湿時に発生する。
・排水不良や湿潤なほ場に発生が多い。
・苗床での発生も多いので注意する。
・降雨が続くと多発する。
対
策
・育苗中は過度のかん水を避け、換気をしっかり行う。
・連作を避ける。
・ほ場の排水性を改善する。
10
経営指標
(1)
収入
(2)
経費
(3)
10a あたりの収支総括
※苗は購入苗した
場合で試算
※一部 JA 新おた
るかぼちゃ部会
参考
(4)
旬別労働時間(ろ地マルチ栽培の場合)
(5)
その他・経営のポイント
かぼちゃ栽培の経営上のポイントは、極力経費の節減に努めることである。また、適期の作業と
細やかなほ場把握が収益性を高めることにつながる。
かぼちゃ栽培は労働面では、省力的作物であるが軽労摘作物ではない。体力に応じた作付けと作
業性を重視すべきである。
参考資料:「北海道野菜地図」
(北海道農業協同組合中央会・ホクレン農業協同組合連合会)
協力:JA 新おたる
JA 新おたる赤井川南瓜部会