いのちの博物館 解説講義の学生感想レポート:PDF(192KB)

麻布大学獣医学部獣医学科の学生の感想
高槻上級学芸員は獣医学科の1年生の講義(獣医学概論)で麻布大学いのちの博物館を
紹介しました。その講義を聞いた学生の感想文の一部を紹介します。名前はイニシャル
としました。
T.K.
麻布大学の歴史は 1890 年にまでさかのぼり、歴史のある学校である。そんな麻布大
学の歴史を一つにして形にしたものがいのちの博物館だと感じた。そして、話を聞いて、
いのちの博物館に対する印象も変わった。一回目初めて行ったときは大学に博物館があ
るなんてすごい、さすが獣医学の勉強ができる大学だという気持ちで見ていたので、大
きく飾ってあるものにばかり目がいっており、大きなゾウやキリンの標本、肺のカラフ
ルな標本、寄生虫のホルマリン漬けなど、初めて見る物ばかりでどれもすごい物だった。
だが、講義を聞いた後改めて行ってみると違った見方もできた。たとえば、いのちの博
物館自体がどういう風に建てられたかや、開館するまでに準備期間が短かったこと、ゾ
ウの標本はバラバラに入れたなど、裏側を知ると感慨深くなる。また、一回目では通り
過ぎていた江戸時代の馬具は先生がおっしゃっていたとおりすばらしいものだった。馬
の血管を切るものなのにとても凝った作りをしていて、この時代の馬の扱いがどのよう
なものだったのか感じ取れ、昔の獣医師はこれを使っていたのかと思うと胸が高鳴る。
ただ飾ってあるものをすごいと言って見るのではなく、その更に一歩踏み込んで考える
という見方は初めてだった。これは授業を受け、もう一度訪れないとできなかっただろ
う。今回、麻布大学の歴史といのちの博物館がどのようにしてできたかを一つの授業と
して聞けて、麻布大学の偉大さ、先人達の立派さを知ることができたように感じる。こ
の大学の一生徒であることを自覚しながら、自分の将来のため、未来の後輩のためでき
ることを一つ一つしていきたい。
M.A.
私が高校生の頃麻布大学のオープンキャンパスに訪れた時、いのちの博物館はまだな
かった。入学するまで博物館の存在も知らなかったので、食堂のあったあの小さな建物
にあると知って驚いた。規模が小さいのではじめは期待していなかったが、tier とい
うサークルの説明を聞きに初めて博物館に入ってみると、展示の仕方や照明のあたり方
など雰囲気がよく、ゾウ・キリン・アナコンダの全身骨格が配置され、予想を大きく上
回る迫力に圧倒された。また、博物館と言えば全身骨格など骨ばかりというイメージを
持っていたが、ブタの鼻の断面やホルマリン漬けの臓器の展示もあり、実際に生きてい
た動物だということがより感じられ、興味をそそられた。ハンズオンコーナーでは実際
の骨に触ることができ、重さや感触などを確かめられ、より身近に見ることができるの
で動物種ごとの違いや同種でも年齢・性別などによる違いなども知ることができた。ま
た、骨の立体のパズルは組み合わせるのが難しいが、ぴったりと重なることに感動し、
骨の複雑さや機能性、動き方を体感することができたのがとても良かった。説明をして
くれた先輩方は知識が豊富で説明の仕方や誘導も流暢で憧れを抱いた。短い時間でも、
訪れる価値があると感じることができ、じっくり見直しに行きたいと思うとともに、外
見によらずとても充実している博物館を、より多くの人に見てもらいたいと感じた。
Y.K.
私はこの授業を受ける前に、いのちの博物館を訪れたことがあった。その時私はいの
ちの博物館について良く知らず、ただ展示品を眺めるだけだった。だが、この講義を受
け、いのちの博物館のできた経緯、展示品についてなどを知った後にもう一度いのちの
博物館を訪れると、さらに楽しむことができた。私がこの講義を通して学び、感じたこ
とは、まず第一に、様々な人の力があってこの麻布大学、そしていのちの博物館がある
ということだ。獣医師が日本では軍馬の治療をするためにあった職であり、麻布大学が
できた背景にもそのようなものがあり、第二次世界大戦で校舎が燃えてしまい現在の麻
布大学があるといった基本的な獣医学、麻布大学についての歴史は知っていたが、麻布
大学の設立、再建には與倉東隆氏、中村道三郎氏、藤岡富士夫氏を筆頭にたくさんの人
の思想、行動、協力があったことを改めて知り、自分は恵まれた環境で勉強をしている
のだと深く感じた。いのちの博物館についても同様だ。もともと食堂だった場所を標本
等の資料を保管するため、そして本物を見ることによって、感動を生むために高槻成紀
先生を始めとした多くの人の力があっていのちの博物館ができた。それによって私達は
本物の標本を見、触れることで知識、理解をより深めることができる。更に、象の標本
はボトルシップのように博物館の中で組み立てた、などといった背景知識を得ることに
よっていのちの博物館をより楽しむことができる。私はいのちの博物館を通して、様々
な事に興味を持ち、学んで行きたいと思う。
N.N.
いのちの博物館は、私が入学する前、受験生のときに行って、とても魅力を感じた場
所であった。それは、いのちの博物館ができるまでに、多くの人たちの絶え間ない努力
があるからであったと、今回の授業を聞いて改めて理解することができた。麻布大学は
創立 125 周年であるが、これまでの道のりは決して平らなものではなかった。私が一番
印象に残ったのは、東京大空襲によって、校舎が全焼するということは、大学にとって
致命的な出来事であり、そこからの復興はかなりの苦労があっただろう。だがそれを乗
り越えて、現在は2学部置き、社会のニーズにあった技術者、科学者を輩出している。
このような歴史を持つ麻布大学に今入学し、勉強していることの意味を理解しなければ
ならないと感じた。だから、勉学に励み、将来は社会に貢献できる獣医師になりたいと、
今回のいのちの博物館の話を通じて強く思った。
Y.O.
今回いのちの博物館ができるまでについての話を聞いて、まず麻布大学が興倉東隆先
生の強い意志のおかげで創立され、現在まで続いてきたことに誇りを感じました。私の
家系では麻布大学に通っているのが私で三代目なので、麻布大学は長い歴史があって私
も祖父や両親のように立派な獣医師になりたいと思います。
いのちの博物館に関しては、キリンやゾウなど家畜とは別の野生動物の骨格など、獣
医学では学ばない動物の骨格なども展示され、動物が純粋に大好きだった頃の童心をか
きたてられました。
獣医学を学ぶにあたって主に犬や猫、家畜を中心に学習していきますが、麻布大学は
地球全体のあらゆる動物、生物の共生を目指しているので、他の動物に対する関心も失
わず、またいのちの博物館を訪れてみたいなと思いました。
N.Y.
まず、設計者という立場からの、博物館の見方を聞けたことに関してである。博物館
を作るに至った経緯、設計から建築の過程などを聞いて、博物館を見に行くだけでは思
い至らないような視点を得られたことが新鮮だった。見に来る人が一番興味を持って読
める文字の大きさは?などといった疑問は特に、私にとって新しかった。文字が大きす
ぎても、情報量が少なくなってしまうし、逆に小さすぎると、とっつきにくく、読む気
がしなくなってしまうというのは確かにそうだと思った。講義を受けた後に、改めて博
物館を訪れた時、書いてある文章は、本当に自然に読み進められる文字サイズと文章量
であった。来館者として、展示物を見ている時にはあまりに自然すぎて気付かなかった
が、解説文の文字サイズや文章量などの細かな設定さえも、試行錯誤の末に、今の形に
落ち着いているということに気付かされ、驚いた。
それから、骨格標本の並べ方について、オオカミと犬、イノシシと豚、のように、野
生動物を家畜化する過程を、対比しやすいように並べてある、というのも、来館した人
の知識量の差に関わらず、等しく理解し楽しめるように、工夫された結果であると思う。
講義を受ける前より、そういったふとした工夫が、とてもありがたく思えるようにな
った。
そして、最後に、骨格標本の骨が、本物であるということについてである。講義では、
「よく、『この標本の骨は本物ですか、レプリカですか?』という質問を受けるが、レ
プリカならにせものとすぐに分かる」というお話をされていた。実際私も、レプリカだ
と思っていた。しかし、骨が本物であるという話を講義で聞いてから、もう一度博物館
を訪れた時、この標本の前には、生きた命があったことを強く実感して、以前に見たと
きより、明らかに、強いありがたみと、学びの意欲を感じた。そういった自分自身の変
化にも驚いた。骨格標本に、本物の骨を用いる意義は、ここにあると思う。
“いのちの博物館”という名前の意味をはじめて体感できたようであった。
N.I.
普段はなかなか知ることのできない博物館の制作課程とその展示内容を通して麻布
大学の歴史の一端を学ぶことができた。
博物館の設営には、設計から展示物の配置、パネル製作等々沢山の努力の上に成り立
っていると感じた。照明や壁の色などほんの少しの違いでも、異なる印象を与えるとい
う話が興味深く、高槻先生は、様々な考慮をしながら、一番表現されたかったものを作
り上げていかれたのだと痛感した。その中でも特に麻布大学の歴史を重視されているよ
うに思った。またその歴史も、ただでき事を淡々と紹介されるのではなく、当時の学生
の方や先生方の視点を取り入れながら語られていて想像しやすく、麻布大学への愛着が
沸いた。全体を通して 126 年の歴史をもつ麻布大学でどのように“いのち”が教育され
てきたのかが伝わるような展示であったからこそ、自分自身がいのちの博物館を伺った
際に、充実した時間を過ごすことができたのだろうとわかった。解剖学などの授業が少
しずつ始まっている今、またたずねたいと思っている。
M.T.
麻布大学へ入学してから初めていのちの博物館に行ったとき、ゾウやキリンの骨など
に目を奪われ、麻布の歴史等の展示は読み飛ばしてしまっていた。しかし、今回、展示
を作った人から直接話を聞けて、かなり考えが改まった。私の両親と祖父は麻布大学出
身で、祖父は約 50 年程前に、両親は約 25 年程前に本学に通っていた。それぞれが語る
麻布大学はまた違った一面を持っており、もちろん私が見ている麻布大学とも違う学校
であった。歴史とはこういうものかと感じられた。
今回、学生寮の完成の話が出たが、私の祖父は学生寮に入っていて、在学中に学生寮
が焼失したそうである。祖父の話や、両親の話、また大学の先生方の話が、私の中で少
しずつ繋がっていくような気がする。また私も、麻布大学の歴史を歩む者として、歴史
に目を向けてみたいと考えた。
M.O.
麻布大学のいのちの博物館はとても資料が豊富でかつ説明もとても分かりやすかっ
たというのが、私が初めて訪れた時の印象だった。初めて麻布大学に来た時には食堂だ
ったはずの場所がいつの間にか変わっていて驚いたことを今でも覚えている。迫力のあ
る骨格標本を中心に寄生虫や器具が展示してあって本物の博物館に来たのかと思った。
いのちの博物館を設立するにあたって様々な苦労があったと今回初めて知り、私ももっ
といのちの博物館を大切にしようと考えさせられた。食堂を博物館へと改装するにあた
り、カーテンを設置したり、壁や床も変え、食堂の時の内装とは見違えるほどに変わっ
ていた。標本を入れる時には手作業で大きい骨格標本は分解して中に入れていたことに
はとても驚いた。いのちの博物館には様々なお客様が来館していて、子供にも分かりや
すいようにふりがなをふったり、またサークルなどでお客様に詳しい説明などもしてい
て、とても良い活動であるなと思った。麻布大学の歴史についても知ることができ、ま
すます自分は麻布大学に入学することができて恵まれていると感じたので、この場で教
育が受けられることに感謝をしながらこれから 6 年間を過ごしたい。
M.O
私はいのちの博物館に 2 回入ったことがあります。1回目は入学前で、父と姉と一緒
に入りました。父は医療関係の仕事をしていて、姉は人体に関する学問を学んでいます。
2 人がヒト以外の動物の骨格を見て、真っ先に発した言葉が「これ、踵骨じゃない?」
でした。私はまだ入学前で 2 人が何を言っているのかさっぱりわかりませんでしたが、
骨格を見て興奮気味に話す 2 人はとても楽しそうに見えました。今、授業を聞いて思う
ことは、いのちの博物館がもっと広がって、様々な交流の場になってほしいということ
です。最近では人畜共通感染症の研究も進んでおりますが、人体に関する専門家とヒト
以外の動物に関する専門家がお互いの知恵と知識を出しあえば、より高度な医療技術の
開発や新しい発見につながるかもしれません。そして、専門家だけでなく、一般の方々
にも公開されているのは、本当にいいことだと思いました。年齢を問わず、たくさんの
方々が訪れて、時には学びの場として、時には交流の場として活躍するいのちの博物館
の重要性を感じました。
また、いのちの博物館がそんなに短い期間でできたものだとは思いもしませんでした。
大学にこのような施設があるのは学生にとって強みだと思います。これから獣医学を深
めていく中で、増え続ける新しい知識を目で見て確認したり、過去に学んだことを再確
認できるのはありがたい限りです。何度も訪れて、大いに活用したいと思いました。
M.N.
授業でいのちの博物館の話を聞く前に、母と博物館を訪れたことがあります。そのと
きに、「これは本物なのか」と二人で疑問を抱いていましたが、教授が「本物だ」と授
業で言っていたのを聞き、麻布大学が貴重な資料をこんなにも多く持っていることに感
動しました。入ってすぐのところにオオカミとイヌの全身骨格が置いてあり、その違い
を探しながら見ていたことを思い出し、自然と目が行くように、自分で「いのち」につ
いて考えるように設計されてあるのだなと気づくことができました。これ以外にも様々
な工夫がされていると教授がおっしゃったので、今度また行ってみたいと思います。私
が授業の中で一番感動したのは、麻布大学の歴史の中にたくさんの偉大な人物達がいた
ことです。まず麻布大学の元となる東京獣医講習所を開設した興倉東隆先生、彼の「学
術の探究のみでなくそれを応用できる力の育成」という教育理念は、今の麻布にもつな
がる所があると思います。また同じ女性として、増井光子氏もすごくかっこいいと感じ
ました。彼女は男子学生に混じって率先して実習を行っていたと書いてあるのを見つけ、
私もこのように積極的に学びたいと憧れを持ちました。積極的な態度の結果、動物園の
園長まで務めてしまう姿に、女性でもいくらでも上を目指せると分かり、励みにもなり
ました。その他にも様々な方が麻布にいたという事実を知って、麻布大学はすぐれた大
学だと理解できました。今日の授業を聞いて、単にいのちの博物館のことを知っただけ
ではなく、骨格や標本を見て自らいのちについて考えなければならないと感じたと同時
に、麻布大学の非常に長い歴史についてももっと理解を深めようと感じました。
Y.T.
入学して間もない頃に博物館に入館しました。こうして実際に監修をされた先生から
博物館ができるまでの経緯、展示品の説明を伺うことができ、とてもうれしかったです。
授業を聞いて、まず、博物館が開館されるまでに実に多くの経緯があったことに驚き
ました。もともと食堂として利用されていた建物のリフォームの仕方に始まり、ライテ
ィングの仕方、標本や模型などの配置、展示品を説明する文章の作成など様々なことが
なされて現在のいのちの博物館がある。自分がもし博物館を監修するとして考えてみる
と、これらのことは考えつくと思いますが、実際にされてとても大変だったと思います。
しかし、そのような経緯があったからこそ、このすばらしい博物館ができたということ
が分かりました。
また、標本の数や種類の多さにも驚きました。入館した際にとても印象に残った家畜
の全身骨格や寄生虫やプラスティネーションなどの標本だけでなく、かつての実習の様
子など麻布大学の歴史に関する写真パネルは珍しいと思いました。これらの解説すべて
に目を通せなかったのですが、拝見させていただいたものは展示品の背景がよく分かり、
より深く内容を理解できました。数多くの展示品の一つ一つにていねいな説明がされて
いて、とても見応えがありました。
今回の授業を聞いて様々な背景を知ることができたので、これを活かし、ぜひまたあ
らためていのちの博物館に行きたいと思います。ありがとうございました。
T.K.
いのちの博物館が麻布大学にあることは知っていたが、最近できたこと、食堂からで
きたことは知らなかった。授業ではいのちの博物館についてや、設立されるまでについ
て紹介していたが、標本が悪くなってしまわないために、カーテンをしていることは興
味深かった。またいのちの博物館にある馬具、プラスティネーション、病理標本、寄生
虫、模型教材について紹介され、興味を持ち、実際にいのちの博物館に足を運んでみた
が、どれもとてもリアリティーがあり、特に二宮博義先生の残されたプラスティネーシ
ョンが細部までとてもこだわっていると感じた。授業中先生が模造品より、本物、実物
を置くことにより、本物のすごさが際立つとおっしゃっていてとても印象的であったが、
実際にいのちの博物館に行くことによってその意味がわかったような気がした。また授
業で與倉東隆、中村道三郎、増井光子先生について紹介されたが、増井光子先生につい
て、いのちの博物館にある資料で見て、当時女子学生が 2 人しかいないなか、率先して
獣医学について学び、腸に肩まで腕をつっこみ男子学生をおどろかせたというエピソー
ドが特に印象に残った。いのちの博物館について、土曜日にハンズオンコーナーという
直接骨にさわれるコーナーがあるようなので今度行ってみたいと思う。
K.W.
今回の講義で建学の過程から麻布大学のことを知ることができ、また博物館のことも
より深く知ることができた。
今年で 126 周年を迎えるのだから戦争を経験しているのは当然のことだが、一度大学
が全焼していたということにはとても驚いた。再建の時に卒業生がお金を出し合ったこ
とや、そのほとんどが寄付という形をとったことは、当時の獣医師の社会的立場や、富
裕の度合いを考えると、おそらく自分にはできないことであったし、今でも続いている
麻布生、麻布卒業生のつながりの強さが、その当時から感じることが出来て、麻布生で
あることがとても誇らしかった。入学してから今日まで権威主義的教育を嫌った創設者
の與倉東隆先生や、その他一部の強い意志を持った人達が引っ張ってきたのだと思って
いたが、麻布の名前を背負った人達は、そのほとんどが同様に強い意志を持っているこ
とが分かり、今後この分野で自分がリーダーになるのだという気持ちが強まった。全体
を通して思ったのが、獣医師の在り方についてだった。戦争のための職から人の福祉の
ための職へ、学習環境の向上など、自分がより良い状況で学べていることの再確認と、
その背景を知ることができた。
T.T.
今回、先生の講義の中で博物館が作られるまでの過程を知って、教授や先生方の学へ
の熱愛が感じられ、より麻布大学が好きになりました。先生のおっしゃる通り、大学で
の研究の中で貴重な標本や資料が生まれると思います。しかしそこから、それを展示し
て生徒、地域の方に見てもらって人々の学びの一つに変えようとしたのはすばらしいア
イデアだと思います。その発案のお陰で今私たちはこうして一番身近な博物館に行くこ
とができます。
私はこのレポートを書くにあたって、まずテーマの博物館を訪れないといけないと思い、
行ってみました。正直なところ、失礼ですが、大学にあるし、建物も他の博物館と比べ
ると大きくはないので、頭の中にある程度無意識のうちにハードルを設けていました。
しかし、博物館を出た時には非常に驚き、そのハードルを大きく上回る内容でした。一
時間半ほどかけてじっくり見て回らせていただきました。
まず館内に入ってすぐの銅像と彫られた金属の板ですが、今までの麻布に関わった
方々を見て麻布の風を感じることができました。そして次の棚に並べられた標本たちは、
様々な分野から集められた骨や標本がありました。中でも興味深かったのはバビルサの
頭蓋骨です。角がのびる豚がいるのは少し知っていましたが、実物を見ると本物の迫力
に圧倒されて、帰宅後、バビルサについて調べてしまった程です。その隣の犬と狼の骨
格でも、犬は狼から進化してきたんだと見た目や人との関係からは推測できませんが、
納得させられる物でした。また、馬具のコーナーでは、動物そのものではなく、それに
付随する道具ということで、背景の赤ともあいまって、独特の雰囲気を感じました。馬
の治療具が多く並んでいましたが、江戸時代の時点でここまでの道具を作ることから日
本人の物作りの才能を感じ、これが今の獣医療の大元であると思うと、少し不思議な気
持ちにさせられます。
次のコーナーでは体の器官や骨格など、獣医療に近づいてきました。牛の骨格や足の
骨を見ると、学内で見た牛が頭に浮かび、外観と骨格の位置関係を探ったりしてしまい
ました。また内臓は人間の私たちにも同じような器官が体の中にあるのでじっくりと見
とれてしまいました。
そして次がこの博物館で一番興味深く、私の興味の中心であったところです。
様々な動物の同じ骨を並べて進化について深く考え、生物の進化の素晴らしさと全て
生物は今の段階で最終進化形でありそれぞれの種としての DNA が貴重であることを再
確認しました。そしてその生物たちに配慮してのことと言わんばかりに次には環境への
麻布大学としての取り組みのコーナーがありました。これはとても素晴らしいことであ
るし、力を入れるべきところであるのでよく読ませていただきました。
最後は麻布大学の歴史について詳しくまとめられていました。
麻布は獣医大学の中でも歴史のある大学なのでその学生である以上、歴史について知
らないといけないという使命感から、歴史を追体験するかのように読み、学ばせて頂き
ました。
最後にもう一度書きますが、本当にこの博物館のクオリティに驚きました。身近にこ
のような素晴らしい博物館があるなんてとても恵まれていると思います。これから何度
も通って、一度目では分からなかったこと、新発見を探していきたいと思いました。
N.T.
N.T.
麻布の歴史は長く、一度は戦火で焼け落ちたものの再建し、ただならぬ努力により今
の麻布大学があり、その現れがいのちの博物館であるということを知り、麻布学生とし
て身の引き締まる思いがした。標本も、ハムスターからゾウ、キリンなどがあり、いわ
ゆる「偽物」が持たない迫力や説得力、感動がそこにはあるのだ、と感じた。
建物の構造から壁の配色、照明などまで様々な配慮がなされており、少しでも標本を
良い形で、良い環境で展示したいという熱意が感じられた。先人たちが残した貴重な標
本に対する博物館創設者の方々の敬意の現れなのだろうと思う。また、ハンズオン、と
いう「標本を手で直接触れる」コーナーは、本来貴重なものとして手を触れることが許
されない博物館の展示物としては画期的でおもしろく、人気が出るのも当然だろうと思
った。骨の標本だけでなく、昔の馬具や病理標本、肺や血管系のプラスティネーション
も展示されているのは、獣医大学らしく、見ていて飽きないだろうと思う。出来て一年
も経たない施設ではあるが、この博物館が将来、麻布大学を代表する施設の一つになれ
ば、標本を作った先人の方々や創設した方々の喜びにもなるだろうし、大学にとっても
大きなメリットとなるだろう。私も楽しみである。
N.H
私は、入学したばかりのまだ授業が始まっていない時間のあるときに友人といのちの
博物館に行ってみたことがあります。その時は、自分もあと何年かしたらここにあるよ
うなものを使ったり理解できるようになるのだろうかというように学外の者として客
観的に展示品を眺めていました。
しかし、今回の講義でいのちの博物館のできる過程をきいて、館内にある展示品の一
つ一つが麻布大学や獣医学、そして獣医学を学ぶ我々のために先人たちが残された貴重
な遺産であるということが分かりました。
特に展示品の中で私の印象に残ったものは、小さなウシの模型です。博物館に行った
ときはその模型よりもカラフルなプラスティネーションや歴史を感じさせる馬具、そし
て圧倒的な大きさのゾウやキリンの骨格標本に目を奪われていました。しかし、小さな
ウシの模型が、古い卒業アルバムの写真の中に全く同じものが写っているのを見たとき、
まるでその模型がタイムスリップして現代にでてきたかのように思えて、歴史のロマン
を感じました。
また、麻布大学の歴史については今まではほとんど知っていることがなかったので大
変勉強になりました。知人に大学をきかれ、
「麻布大学」と言うと、だいたいの人は「都
会だね」と言います。それは、きっと麻布大学が東京都港区の高級住宅地のあの麻布に
あると勘違いしているからで、「相模原にある」と言うと不思議な顔をされます。今ま
では「なんだ、田舎か」というように思われるのが恥ずかしいと思っていましたが、東
京大空襲で全焼し、それでも中村道三郎先生が苦労の末、相模原の土地を確保し、同窓
生が力をあわせて復興したという経緯がその裏にあったと知り、自分がその偉大な先人
たちの後進であることを誇らしく思いました。
このように、いのちの博物館について知るということは、同時に麻布大学について知
るということだと思います。今回の講義で私は、本学を愛する気持ちがより強くなった
と感じました。