取調べを受ける心がまえ

13/01/05
2013年1月版
もし突然逮捕されたら…
取 調 べ を 受 け る 心 が ま え
弁護人の立場からの連絡事項
弁護士
秋田真志
(このノートは、岐阜弁護士会の美和勇夫弁護士が作成された「弁護人の立場からの連絡事項」ー「美和ノート」
と呼ばれていますーに、秋田真志弁護士が、大阪での取調べの実情や「被疑者ノート」などを踏まえ、いくつか
の補充・修正を入れたものです。)
1、
逮捕、勾留手続(身体拘束)は1回につき、少なくと
も原則23日間ぐらいは続くと思って覚悟して下さい(刑
事訴訟法では、逮捕後勾留請求まで最大 3 日間、勾留は
原則として 10 日と決められていますが、さらに 10 日間
勾留が延長されることが多いのです)。
調べは山登りやマラソンのように長くつらいものです。
23日後、裁判所に起訴されれば、保釈で出られる場
合もあります。
『起訴』(裁判)されないか『罰金』処分ですめば釈放されることもあります。その
間、裁判官が『面会禁止の処分』(接見禁止)を出すと『弁護人以外の者』とは会わせ
てもらえないとか、『弁護人以外の者』からの手紙等の文書の差し入れも原則として2
3日間届きません(重大事件などでは起訴後にも接見禁止が続く場合があります。その
ような場合、一部でも接見禁止の解除ができないか、弁護人と相談してみてください)。
2、
取調べは相当厳しく、大声で怒鳴られることもあるかもしれません。
密室では、怒った取調官が暴力を振るってくることもないとは言えません。不当な取
調べを受けたと思ったら、その取調官に対し、すぐに 「弁護人を呼んでください」
と言ってください。取調官には、あなたが弁護人との面会を求めると、弁護人にすぐに
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連絡をとる義務があります 。遠慮する必要は全くありません。
*1
ひどいことを言われたら、その『セリフ』をよく覚えておいて、差入をした「被疑者
ノート」に書いて報告して下さい。
「てめぇこのやろう」
とか
「警察をなめるなよ、ばかやろう」
というようなたぐいのセリフです。
警察官は、『犯罪捜査規範』(国家公安委員会規則)によれば、『個人の基本的人権を
尊重して捜査をしなければならない』とされています*2。
あなたの取り調べにあたって、大声で脅せば、警察官の方が『脅迫罪』を犯している
ことになりますし、そういう取り調べ方法は違法です。
『朝早く』からと、『夜遅く』まで無理に調べが行われたり、体調の悪い時の調べが
あった場合は、
「体調が悪い」
と言って断って下さい。
それでも無理な調べがあれば月日、時間、担当者の名前等をよく覚えておいて、被疑
者ノートに記録し、その時の『調書』には指印を押さず、弁護人に報告して下さい。弁
護人は、警察署長や検察官に抗議し、あるいは裁判所へ法的な手続をとって、無理な取
調べをやめさせます。
抗議をしたら、もっとひどい取調べになるのではないかと、不安にな
る必要はありません。彼らが、ひどい取調べをするのは、証拠が弱いか
らです。あなたから自白をとらないと、彼らも不安なのです。インター
ネットで、ある県警関係者が所有していたという「被疑者取調べ要領」
*1 平成20年5月1日付最高検次長検事依命通達「取調べの適正を確保するための逮捕・勾留中の
被疑者と弁護人等との間の接見に対する一層の配慮について」、同月8日付警察庁刑事局長通達「取
調べの適正を確保するための逮捕・勾留中の被疑者と弁護人等との間の接見に対する一層の配慮につ
いて」
*2 犯罪捜査規範2条2項
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という文書が流出しましたが、そこには、「被疑者の言うことが正しいのでないかとい
う疑問を持ったり、調べが行き詰まると逃げたくなるが、その時に調べ室から出たら負
け」「お互いに苦しいのであるから逃げたら絶対ダメ」「相手をのんでかかれ、のまれ
たら負け」などと書かれていました。取調官のホンネをよく表していると言えるでしょ
う。取調官も「人の子」、否認されると実は不安なのです。不安な人間ほど、居丈高(い
たけだか)になって、相手を屈服させようとしてきます。しかし、もし、そんな彼らに、
正々堂々と抗議をすれば、少し時間はかかるかもしれませんが、必ず、彼らはおとなし
くなります。
3、あなたの言い分を、取調官に分かってもらえる、という期待をもってはいけません。
取調官は、あなたがほんとうのことを言っても、とにかく疑ってかかるようにと教育
を受けてきたからです 。「ほんとうのことを言えば、分かってもらえる」と思っていた
*1
無実の人が、どんなに言っても、信じてもらえなかったことに絶望し、ウソの自白に至
ってしまうことは非常に多いのです。
彼らは、「被疑者はウソをつくものだ、被疑者の言うことは信じるな」と教育されて
きたのですから、あなたの説明を信じず、それをつぶすようなことばかり言ってきたと
しても何の不思議もありません。そのような取調べが続くと、絶望的になり、結局、取
調官の言うとおりに合わせてしまおう、という気持ちになってしまうのです。
被疑者となってしまった以上、発想を変えなければいけません。
「彼らは、疑うのが仕事なんだ」
「本当のことを言っても伝わらないのはあたりまえだ」
と思ってください。そう思えば、絶望することもありません。あなたの言い分を説明
する機会は、これからいくらでもあります。目の前の取調官が信じる態度を示さないか
*1 平成24年12月、警察庁は、ようやく心理学的な踏まえた「取調べ教本」を作成し、発表しま
した。警察として初めて心理学的な観点から取調べを検討したものと言えます。しかし、それが現場
の取調べでどこまで活かされるのか、まだまだ不透明と言わざるを得ません。
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らといって、絶望する必要など全くないのです。
4
真実をありのまま、正確に説明することは簡単なことではありません。
無実であっても、一見不利に思える証拠があるかもしれません。
人間は、ついつい有利な部分を「大げさ」にいい、不利な部分を「小さく」言ってし
まうことがあります。私たち刑事弁護人は、よく依頼者に
「
『大げさ』にも『小げさ』にも言わないように」
とアドバイスします。「大げさ」はともかく、「小げさ」というのは、変な日本語です
が、雰囲気は分かってもらえるのではないでしょうか。
5、 作成される調書は、最後にみせてもらった上、よく読んでもらって、違ったことが(ニ
ュアンスも含めてです)書かれていたら、署名押印をしてはいけません。調書は、録画
・録音のように、あなたの言い分を正確に記録するものではありません。取調官が、あ
たかもあなた自身が話した言葉であるかのように、まとめて作文してしまいます。あな
たの言ったことや思っていることとは違う内容になることはよくあるのです。あなたに
は、誤った内容を訂正してもらう権利があります。刑事訴訟法198条4項は、取調官
が供述調書を作成した後、「被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうか
を問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければなら
ない」と定めています。あなたは取調官に対し、供述調書の記載内容を訂正することを
求める権利があるのです。納得がゆく訂正がなされるまで(いえ、仮に納得できる訂正
がなされたとしても)、署名押印をする必要はありません。
ただ、長い調書が作成された場合、その一部分だけをとりあげて、訂正を申し立てる
のは、むずかしいものです。しかも、訂正が一部だけだと、訂正しなかった部分は、あ
なたが納得した部分だと思われてしまいます。よく取調官は、たくさん訂正すべき箇所
がある場合に、「こちらはお前の言うとおりに訂正してやるから、こちらの部分は俺の
言うとおりに認めろ」と妥協を迫ってきます。人間というものは、一つ相手に譲っても
らうと、こちらも譲ってあげないといけないような気持ちになってしまいます。しかし、
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それは大変危険なことです。ですから、訂正をするときは、よく考えて、すこしでも疑
問が残れば、供述調書全部の署名押印を拒否して、弁護人と相談することをお勧めしま
す。警察などの『誘導』に乗せられたり、作文調書に妥協したりしてしまって、不利益
なことを認める調書はとらせてはいけません。
訂正する場合でも、取調官はよく、調書に「弁護人に○○の点は認めてはいけない、
と言われたから訂正します」などと書き加えようとします。これは、訂正を弁護人の責
任にすると同時に、訂正した内容に信用性がないように見せかけるためのテクニックで
すから、気をつけてください。弁護人に言われたからではなく、それが真実であるから
訂正するのです。そのような付け加えは一切不要です。そのような書き加えがある以上、
やはり署名押印を拒否すべきです。
あなたを逮捕するまでに、また、逮捕してからも、古い出来事について、警察はいろ
いろと調べていることは事実です。しかしそれが本当かどうかは、『相手の言い分』で
あって、分かりません。反対にあなたは忘れてしまって、記憶にないことがたくさんあ
ります。特に日時は忘れています。そういう時は、とりあえず覚えていないことは
「覚えていません」
と言わなければなりません(思い出してください。大げさにも小げさにも言わないので
す)。
調書には、あなたが『しゃべった通りのことが書かれない』ことがよくあります。あ
とで
「警察が勝手に書いた」
と裁判で主張しても、なかなか通りません。
「調書をよく見せて欲しい」
と言って、見せてもらって、納得できなかったら、署名押印を拒否して下さい。
たいがい取調べされる事実は、『古い出来事』です。今、突然逮捕されたあなたの手
元には、事件についてのノートも覚書(メモ)も日記もありません。誰かに確かめるこ
とも出来ません。ひとつずつゆっくり思い出して、記憶にないこと、忘れてしまってい
ること、違っていることは、認めてはいけません。
「そこは、よく覚えていません」
と言うべきです。
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「相手がこう言っているからこうだ」
「共犯者はこう言っておるぞ」
と言われても、自分の記憶が違っている以上、認めてはいけません。実際には、相手や
共犯者が言ってもいないのに、取調官がうその説明をすることが、よくあります。これ
を「偽計による取調べ」といいます。もちろん違法ですが、多くの取調べは密室で行わ
れるため、本当に偽計があったかどうかを立証するのが難しいのです。
忘れたことは
「忘れました」
「覚えていません」
と言うべきです。
調書は警察に有利に、つまり、あなたに『不利益なストーリー』として構成されて書
かれることが普通です。しかし、あなたがやかましく主張すれば、警察も慎重に調書を
取るでしょう。言いなりになれば、彼らが考えたストーリーが、あたかもあなたが話し
たことであるかのように、書かれてしまいます。彼らが考えたストーリーであっても、
・
・
・
・
あなたが署名・指印を押してしまえば、立派な『自白調書』の出来上がりですから、後
になって裁判所で
「違っている」
と言っても、通らないことが多いのです。(特に検事調書)
『指印』は法律的には、押さなければならないという義務はありません。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
断ることも法的には自由です。法的には、取調官の方が、あなたに署名押印をお願いで
きるだけなのです(刑事訴訟法198条5項には「被疑者が、調書に誤のないことを申
し立てたときは、これに署名押印を求めることができる」と書いてあります。さらに、
「但し、これを拒絶した場合はこの限りでない」とも書いています。つまり、あなたが
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拒絶すれば、取調官は、それ以上にどうすることもできないのです)。
署名指印をするのは、調書を見て、よく読んで、本当に納得がいった場合だけだとい
うことです。ただ、気をつけなければいけないのは、取調官と話していると、取調官の
書いた文章が、自分の言ったとおりに書かれているように思えてしまうことです。第三
者である裁判官が読むと、あなたが思っていたとは別の意味やニュアンスに受け取られ
てしまうかもしれません。ですから、本当にそのような調書でよいのか、第三者の立場
から検討してもらうことをお勧めします。そのために、
「弁護士に相談する」
と言って、弁護人が面会にくるまで署名・指印は断ってかまいません。取調方法に納得
がいかない場合も署名・指印は断ってかまいません。もし、取調官がそのことを責めて
くるのであれば、弁護人が代わりに文句を言ってあげます。
調書は『白紙』でもかまいません。調書を、取るも取らぬも法的にはあなたの自由で
す。署名がなければ、その調書は裁判所に出されることはありません。
もっとも、被疑者の人は、ちゃんと調書をとってもらわないと不利になるのではない
かと思い込みがちです。取調官もそのような被疑者の心理をよく知っていて、「そんな
否認をするなら、これ以上は取調べをしない」などと突き放してくることもあります。
しかし、不安になる必要はありません。言いたいことを言うチャンスはいくらでもあり
ます。必要な言い分は、弁護人から伝えることも可能です。しかし、取調官は、決めら
れた期間のうちに、捜査を終えなければなりません。彼らは否認されて、調書がとれな
いことを実は大変怖がっています。その怖さを隠すために、居丈高になって大声を出す
取調官もたくさんいます。ずっと調書を拒否していたら、根負けした取調官の方が、被
疑者に「調書を取らせてくれ」と頼んできたこともあります。実際には、調書を取りた
いのは取調官の側なのです。とにかく少しでも悩んだら、弁護人とよく相談してくださ
い。署名指印をするのは、弁護人と相談してからでも、決して遅くはありません。
否認をしていると、取調官は、よく「そんなことを言っていると不利になるぞ」と言
ってきます。しかし、よく考えてみてください。彼らは、「真実」を語るように求めて
いるでしょうか?「真実」ではなく、「彼らが考えている嘘のストーリー」を押しつけ
ようとしているのではないでしょうか。嘘のストーリーを認めなければ、不利になると
いうのはおかしくないでしょうか。しかも、彼らは「重い罪を認めないと不利になる」
と言っているのと同じです。実際は逆です。嘘で重い罪を認めたことによって、有利に
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なるはずはないのです。
また、取調官は、よく弁護士の悪口を言ってきます。「あの弁護士の言うことを聞い
ていたら、お前の不利になるぞ」「弁護士は金のことしか考えていない」などと言った
悪口です。しかし、これもよく考えてみてください。どうしてそんなことを言わなけれ
ばならないのでしょうか。弁護士を依頼するのは、憲法や刑事訴訟法で認められた正当
な権利です。弁護士は、違法なことをアドバイスしたりしていないはずです。事実をあ
りのままに述べることや、署名押印拒否権、黙秘権など、どれも法的に正当な権利につ
いてアドバイスしているはずです。その弁護士の悪口を言うとしたら、取調官の方が、
法的に間違ったことをしているはずです。
一度、調書を取られても、訂正したかったら
「間違っていたので、そのことを調書に書いてください」
と、言ってください。
よく、一度言ってしまったことは、撤回や訂正ができないかのように思い込んでしま
う人が多いのですが、撤回も訂正も可能です。要は、あなたにとって、何が真実かなの
です。もし、取調官が撤回や訂正に応じないのであれば、それ以上の調書作成は拒否し
た上で、被疑者ノートに取調官が、どのようなことを言って、撤回や訂正に応じないの
かを記録してください。そして、弁護人にもその状況を報告してください。弁護人は、
取調官が、撤回や訂正に応じなかったこと自体を問題にして、間違った内容の調書が信
用されないように弁護活動をします。
・
6、
・
・
裁判でも取調でも当然『黙秘権』というものがあります。これはあなたの重要な『法
律上の権利』です。
警察は『しゃべりたくなければしゃべらなくてもよい』という黙秘権があることを取
調の前に本人に伝える義務があります。(刑事訴訟法198条2項)
検察庁でもその後の裁判所でも同じです。しかし、警察では、正確には『黙秘権があ
ること』について分かるように教えてくれず、
「正直にしゃべれ」
と、どなったりして、自白を強要することが多いものです。それが『警察の仕事』だと
思って下さい(しかも彼らは、被疑者により重い罪を認めさせることが自分たちの使命
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だと思い込んでいます)。しかし自白の強要は『違法』です。将来、裁判所で、調べた
警察官が証人として呼び出されるかもしれません。その場で彼らは、自白を強要したと
は絶対に言いません。なぜなら、彼らは自白の強要が違法な取調べであることをよく知
っているからです。彼らは、あえて違法な自白強要をしているのです。
しゃべりたくないことがあれば
「言いたくありません」
「しゃべりません」
「黙秘します」
と言えばよいのです(憲法38条、不利益供述強要の禁止)。
あるいは、何も言わず、
ただ、黙っている
だけでよいのです。「しゃべらない」理由も言う必要はありません。
黙秘することはあなたの権利ですから、取調官にしゃべらなければならない義務はあ
りません。しゃべるもしゃべらぬも、法律的には自由です(勾留質問の時に、裁判官が
裁判所で説明してくれるとおりです)。
取調官も人間だから相当怒ると思いますが、怒るのは『向こうさんの勝手』『向こう
さんの仕事』であって、それを強制的にどなりつけてしゃべらせることは『違法捜査』
です。
もしそのようなことがあって調書を無理矢理取られたりしたら、年月日・時間・捜査
官の名前・そのセリフを、「被疑者ノート」に記載して、接見の際、『そのときのやり
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とり』を弁護人に詳しく報告して下さい。「被疑者ノート」は、接見の際に、接見室に
持参して下さい。弁護人は、署長なり、府警・県警本部、あるいは検察庁に抗議します。
裁判所に手続きをとることもあります。
逮捕されているからといって、あなたが卑屈になることはありません(人間は、いつ
立場が逆になるかもしれないものです)。
繰り返しますが『黙秘権』(しゃべらなくてもよい権利)は逮捕された人に対して、
日本の憲法・法律が当然に保障している権利です。
「黙っていることは認めたと同じだ」
「逮捕されたお前等に黙秘権などあるか」
「はずかしくないか」
「正直にしゃべれ」
などという取調官がいるかもしれませんが、そんなことはありません。
この書面を見せて、
「ここにはこう書かれていますが、どこが間違っていますか?」
と尋ねてみればわかります。
「今はしゃべりたくありません」
「裁判になったら裁判所でしゃべります」
「調書は取りたくありません」
と言ってもよいのです。
何も言わず黙っているだけ
それでいいのです。
調書は無理に取る必要はありません。
「今日は取りたくない」
と言ってもよいのです。
法律上は『任意』に取られた自白調書しか刑事裁判上は効力がありません。
このことをよく覚えておいてください(刑事訴訟法319条1項、322条1項但書)。
7、
警察には、仕事の性格上、『逮捕して、取調を強行すること』は正義であり、『黙秘
したり、弁護をされること』は悪であるという感覚を持つ人が多いのですが、そうでは
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ありません。
「悪いことをしておいて、なんで弁護士をつけるんだ」
とよく言われますが、そんなことはありません。
かつてロッキード事件で逮捕された田中角栄元総理も『黙秘権』を使っています。ま
・
・
・
・
・
た神奈川県警の現職警察官ですら、警察が共産党の『電話盗聴事件』をおこし、検察官
の調べを受けたとき、この『黙秘権』を使ってしゃべらなかったのです(どちらも、法
律的には違法ではなく、全く合法です。)。
このように、普段怒鳴って、取調べをする警察官でも、いざ自分が逮捕された時には、
『何もしゃべらない』ということもあることをよく覚えておいて下さい。
日本では、黙秘権は非常に重要です。
なぜなら、日本の取調べは、後に述べる例外を除いて、録画・録音もなく、弁護人の
立ち会いもない密室で行われるため、被疑者の供述を簡単にねじ曲げられてしまうこと
ができるからです。また、被疑者の弁解を聞いた上で、その弁解をわざとにつぶしてし
まうような捜査が行われることもよくあります。
このような捜査を防ぐ最大の武器が、黙秘権なのです。
8、
このように『黙秘権』は、憲法上、刑事訴訟法上、保障された国民の(逮捕されたあ
なたの)権利なのです。
現代は、テレビの『遠山の金さん』の
「やい!ありていに申さんと為にならんぞ!」
という取調べの世界とは違います。
また(法的には)、裁判所からあなたへ『接見禁止決定』が出されていても、弁護人
・
・
・
には手紙が出せます。『接見禁止決定』は、あなたと一般人との面会を禁止するという
『裁判所(官)の決定』であって、弁護人を拘束するものではありません。(刑訴法8
1条)
だから弁護人には、自由に手紙が書けます。弁護人からの手紙も届きます。
弁護人には、必ず接見出来ます(法律が認めていることです)。
警察官も検察官も、あなたが、
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「弁護人に会いたい」
といえば、弁護人にすぐ連絡を取らなければなりません。取調べ中であっても、遠慮は
いりません。
9、
「誰々の調書がこうなっているからこうであるはずだ」
「これを認めないと保釈もきかない、刑が重くなるぞ」
「認めれば罰金で済む」
と言われても、『事実と異なっている記憶の場合』『よく覚えて
いない場合』は、真実と違ったこと、あるいは『忘れてしまって記憶にないこと』につ
いて警察官・検察官に間違った調書を取らせてはいけません。
「そんなことでは調書にならぬ」
と言われても、それは向こうさん(警察・検察庁)の都合が悪いということだけであっ
て、簡単に妥協して後でバカを見ることがあってはいけません。
「○○は、・・・・と言っているかもしれないが、私の記憶とは違います。」
「古いことなので私には覚えがありません」
と言うべきです。
もし、無理に調書を取られてしまった場合は、すぐに、被疑者ノートに、そのときの
取調官の言葉を記録して、弁護人に報告してください。
警察では、共犯者がいる場合、
「○○はこのように認めているぞ」
と言ってきます。しかし、実は、後からそれがウソであったということがままあります
(偽計による取調べ)。気をつけてください。
10、
検察官(検事)は、警察ほどひどく怒鳴りつけたり、怒ったりはしないはずです。
比較的よく話を聞いてくれるはずです(但し、一部に怒鳴ったりする例外的なひどい検
事もいます。そのような検事に当たった場合は、無能な検事に当たったと思い、むしろ
運が良かったと思って、黙秘した上で、弁護人にそのことを報告して下さい)。
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検事調べのときに警察とは違ったことをしゃべってもかまいません。
警察、特に検察庁の取調の段階で、『間違った自白調書』が作られてしまうと、後で
裁判所での裁判手続に入ってから、
「あれは間違っていました」
と言ってひっくり返すのは非常に困難となります(95%は通りませんよ!)。
残念ながら、多くの裁判官は、被告人の言い分を信用してくれません。このことをよく
承知して、くれぐれも調書は慎重に取るようにして下さい。
11、
すぐばれるような『ウソの言い訳』などはしないことです。
あなたを逮捕するまでに、あるいは逮捕後、警察はすでに彼らなりの下調べをやって
います。
ウソを言えば、警察には何人も捜査官がいますから、すぐに裏付けの調査をされて、
「お前ウソを言ったな!・・・・」
ということになります。
弁護人にもいい加減なウソは言わないで下さい。ウソを言われて、それを弁護人が信
じて行動したばかりに、捜査がとんでもない方向へ動くことがよくあります。
「大げさ」にも「小げさ」にも言わない
というアドバイスを思い出してください。
ウソを言ってつじつま合わせをするくらいなら、あなたには『黙秘権』があるのです
から、
「私はしゃべりたくありません」
と言うべきです。
取調べの期間は、逮捕されてから原則23日間もあって、マラソンをはじめて走るく
らいにとんでもなく長いものですから、ゆっくり思い出して、確実なことのみを調書に
取るようにして下さい。
「誰々がこう言っているから、○月○日○時には、こうこうであったはずだ・・・」
と言われても、既に記憶がなければ、
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「はっきりしません」
「手元に手帳もなく確認できません」
・・・・
などと答えてください。
そうすれば、法律的には警察は、それ以上あなたを強く追及で
きないのです。
弁護人に対して、
「○○に対して連絡をとって、○○○だと答えるように伝えて欲しい」
と言って、ウソのつじつま合わせをするようなことはやめて下さい。
そんなことは警察の裏付け捜査ですぐばれますし、その人がまたウソを言うことにな
って『証拠隠滅罪』で警察に調べられることになります(よく身代わり運転などでウソ
を言った人が逮捕されていることと同じです)。
繰り返しますが、すぐにばれるようなウソを言ってごまかすことはしないで下さい。
ウソを言ってボロを出すくらいなら
「しゃべりたくありません。黙秘します」
「黙秘します」
と言った方が賢明です。
単に「黙秘します」とだけは言いにくいというのであれば、
「弁護人からのアドバイスにしたがって、黙秘します」
というのもかまいません。
もちろん、このようなことを一切言わずに、
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ただ、黙っている
だけでいいのです。それが、もっともわかりやすく、かしこい方法と言えます。
答え方など分からないことがあれば、弁護人に面会を求めて下さい。なるべく早く駆
けつけるようにします。ただ、弁護人は、他の事件も抱え、すぐには面会できないこと
もありますので、被疑者ノートを活用して下さい。
また、弁護人との接見では「秘密交通権」が保障されていますので、弁護人との接
見で話した内容について、取調官から追及すること自体が違法です。接見内容を詳し
く聞いてきたら、違法なことをしてきたことになりますから、その問いには、一切答
えず、遠慮なく弁護人に連絡を求めて下さい。弁護人の方で然るべき措置をとります。
また弁護人との信書や被疑者ノートの記載内容を見られたり、見ることを求められ
ても「秘密交通権」で守られていますので拒否して下さい。それでも見せるように強
要されたら弁護人に連絡を求めて下さい。
いずれにしても弁護人との接見内容や信書、被疑者ノートについては弁護人にも「守
秘義務」がありますので、これらを無断で第3者に漏らしたりはしませんので、安心
して何でも相談して下さい。
12
あなたの事件は録画・録音がなされるかもしれません。
2013年1月時点で、警察で取調べを録画するとしているのは、以下のような事件で
す 。
*1
○裁判員裁判対象事件
○知的障がい者の人が被疑者となっている事件
検察庁では、それに加えて、さらに
*2
○責任能力が問題となる事件
○検察庁が、独自に捜査する事件
*1
平成24年3月29日警察庁発表の「捜査手法、取調べの高度化プログラム」
*2
平成24年10月23日最高検次長検事依命通達「被疑者取調べの録音・録画の試行について」
- 15 -
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です。
それ以外の事件でも、弁護人は、密室でウソの供述調書が作成されないように、取調
べのすべてを録画するように申し入れますが(取調べの可視化の申入れ)、実際に録画
がなされるのは、今述べた事件に限られる可能性が高いのです。詳しくは、弁護人に聞
いてください。
もし、録画・録音されることになれば、大きなチャンスです。あなたの言い分が正確
に記録されるのですから。
録画されている場面で供述をする場合には、あなたの言い分を、きっちりと述べるよ
うにしましょう。これまでも繰り返したとおり、
「大げさ」にも「小げさ」にも言わない。
自分の記憶どおりに話す
のです。それまでの調書で、どのようなことを書かれたか、を気にする必要はありませ
ん。仮に、署名押印してしまっていたとしても、それに合わせる必要もありません。あ
くまで自分の記憶のままに述べてください。もし、それまでの取調べに不満があれば、
その不満も述べてください。遠慮する必要はありません。
ただし、勘違いしないでください。録画・録音されているからと言って、あなたの言
い分を言わなければならない、という意味ではありません。
録画されていても、黙秘することは自由です。
密室の取調べでは、黙秘権を行使しようとしても、黙秘権を侵害するな取調べ(例え
ば、大声で怒鳴ったり、黙秘したら不利になるかのような脅しをしたりなど)をしてく
るかもしれません。しかし、録画されていれば、そのような取調べはできません。黙秘
をしやすいはずです。
これまでも述べてきましたとおり、取調べで話をするのかどうか、話をするとして、
どのように話をするのかについては、
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弁護人と相談してからで遅くありません。
録画されていても、はっきりと
「弁護人と相談してからお話しするかどうかを決めます」
と言えばよいのです。いえ、何も言わず
ただ、黙っている
だけでかまいません。黙秘している以上、その録画があなたに不利に使われることは
ありません。
そのほかに分からないことがあれば、必ず、弁護人に聞いてみて下さい。
頑張りましょう。
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