平成19年度 - 国立大学法人 信州大学 サテライト ベンチャー ビジネス

信州大学 サテライト ベ・ンチャー ビ・ジネス ラ・ボラトリー 活動報告書
平成19年度
ACTIVITY REPORT of SATELLITE VENTURE BUSINESS LABORATORY,
SHINSHU UNIVERSITY
Vol. 3, 2008
平成十九年度
目次
巻頭言
信州大学SVBLの紹介
1.
概要 ······················································································ ⅰ
2.
組織図 ··················································································· ⅰ
3.
学生広報担当(P-DEX)作成パンフレット ································· ⅱ
目次
Ⅰ.ベンチャー創出支援事業
1.
信州大学SVBLベンチャーコンテスト ········································· 1
2.
学外ベンチャーコンテスト 信州大学受賞者報告会 ······················· 2
3.
学生ベンチャー企業育成支援 ·················································· 34
Ⅱ.SVBL研究成果
1.
重点研究 ············································································· 41
2.
支援研究 ············································································· 58
Ⅲ.ベンチャー教育・広報事業
1.
起業家育成集中セミナー ························································ 75
2.
機器エキスパート(P-DEX)養成事業 ····································· 78
3.
機器講習会 ·········································································· 94
4.
国内研修支援 ······································································· 95
5.
研究者の招聘 ······································································ 103
6.
展示会出展 ········································································· 111
7.
ものづくり教育GPへの協力 ·················································· 112
1.
事業歴 ··············································································· 113
2.
業績リスト ········································································· 118
Ⅳ.資料
Ⅰ.
ベンチャー創出支援事業
1. 信州大学SVBLベンチャーコンテスト
~あなたの起業アイディアは実現できる?~
開催日時:平成 19 年 9 月 5 日(水) 9:00~12:00
開催場所:信州大学 繊維学部 総合研究棟 7 階 ミーティングルーム 1
本学学生 6 組が、1 人 8 分の発表に挑みました。
熱いプレゼンテーションを厳正に審査した結果は下記の通りです.
審査結果
<最優秀賞>
繊維学部
感性工学科 3 年
栗原美穂さん
繊維学部
感性工学科 3 年
庵谷有紀子さん
<優秀賞>
繊維学部
機能機械学科 4 年
発表者一覧と発表テーマ
学部学科
繊維学部 機能機械学科
大学院工学系研究科
機能機械学専攻
繊維学部
感性工学科
工学系大学院研究科
機能機械学専攻
繊維学部 機能機械学科
大学院工学系研究科
電気電子工学専攻
学年
B4
大嶋啓介さん
氏名(敬称略)
大嶋啓介
テーマ
ホームガラ紡の開発・販売
M1
松永
憲明
ペットボトルサスペンションのビジネス展開
B3
栗原
庵谷
美穂
有紀子
外国人留学生のための日本語学習教材
M1
藁科
泰輔
マイクロ水力発電システムのビジネス展開
B4
和木
信悟
M1
重倉
崇良
ROBOKON コンテンツ販売
要介護者の心拍数、血圧、体温を遠隔監視
できるシステムの開発と提供
審査員一覧(敬称略)
所属
SVBL 長
SVBL 運営委員(理学部)
SVBL 運営委員(医学部)
SVBL 運営委員(工学部)
SVBL 運営委員(農学部)
SVBL 運営委員(地域共同研究センター)
SVBL 運営委員((株)信州 TLO 代表取締役社長)
上田産官学連携室長
AREC 産学連携コーディネータ
社団法人 21 世紀ニュービジネス協議会 副会長((株)デンセン 代表取締役社長)
SVBL 運営委員(繊維学部) SVBL 専門部会長、ベンチャー・コンテスト実行委員長
主催:信州大学 SVBL
共催:信州大学繊維学部/(財)上田繊維科学振興会/AREC/AREC プラザ
後援:社団法人 21 世紀ニュービジネス協議会
1
氏名
藤松 仁
武田 三男
池田 宇一
杉本 公一
土井 元章
三浦 義正
倉沢 喜一
大口 正勝
岡田 基幸
若林 邦彦
小西
哉
2. 学外ベンチャーコンテスト 信州大学受賞者報告会
「信州大学発 学生ベンチャー大集合」
~今、学生が考えるビジネスプランとは?
開催日時:2008 年 2 月 19 日(火)15:00 ~ 18:00
会場:信州大学長野若里キャンパス(工学部)内
UFO 5 階交流室
主催:信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(信州大学 SVBL)
共催:地域共同研究センター(CRC)・CRC 協力会/イノベーション研究・支援センター/上田市産学
官連携支援施設(AREC)/UFO サロン
発表者および受賞内容
1)キャンパス・ベンチャー・グランプリ東京(CVG 東京
◆ 第 2 回 CVG 東京(2005 年度)<特別賞
日刊工業新聞主催)
日刊工業新聞社賞(ニュービジネス部門)>
「オンデマンドプリント事業」
繊維学部感性工学科 2 年
大重幸人さん(オンデマンドリメイク代表)
繊維学部感性工学科 4 年
鳴澤真文さん(前代表)
◆ 第 3 回 CVG 東京(2006 年度)<優秀賞(環境・健康・福祉部門)>
「大学生のためのリサイクルシステム」(信州大学 SVBL 支援)
工学系研究科博士前期課程 2 年
◆ 第 3 回 CVG 東京<優秀賞(ニュービジネス部門)&
市川高希さん
特別賞
ソーシャルアントレプレナー賞>
「地域活性化事業への障害者の参加」
経営大学院 2 年
北條友裕さん
◆ 第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<優秀賞(情報通信部門)>
「大学生による地域企業のマーケティング支援
~キャンパス内・携帯電話・瞬時納入~」(信州大学 SVBL 支援)
繊維学部精密素材工学科 3 年加藤久登さん
繊維学部繊維システム工学科 3 年山崎一也さん
◆ 第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<優秀賞(ニュービジネス部門)>
「宇宙技術(ロケット、衛星、ロボット)競技大会『スペースグランプリ』の開催」
経営大学院 1 年
田中和生さん
◆ 第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<第一次審査通過>
「留学生のための日本語教材」(信州大学 SVBL 支援)
繊維学部感性工学科 3 年
栗原美穂さん
繊維学部感性工学科 3 年
庵谷有紀子さん
2)全国学生環境活動コンテスト(ecocon)
◆ 第 4 回 ecocon 2006 <特別賞
里山道楽賞>
「学食の残渣を堆肥化して作った野菜を学食のサラダバーへ」
信州大学「里山ボランティアサークル
2
洞楽村!!」
受賞報告会
資料(2008.2.19)
◆ 第 2 回 CVG 東京(2005 年度)<特別賞
日刊工業新聞社賞(ニュービジネス部門)>
事業名
オンデマンドアパレル事業「Ondemand
Remake」
事業計画
※できる限り具体的に記述してください。
●事業内容について
(1)ビジョン・経営理念
「手軽に愛着ある服作り」そして「服を通したコミュニティネットワーク形成」
(2)事業の概要(できる限り詳しく)
この事業は消費者が持っている低価格衣料、またはお店の中古衣料やTシャツを消費者がデザインに参
加して愛着のある服に作り上げる事業です。現在の事業のサービスとしては、Tシャツの場合は、25
色の無地のTシャツと100種類に及ぶデザインアイコンの中からデザインとTシャツを選んでいただ
き、デザインのサイズと色など消費者が変更したい点を言っていただき、パソコン上のディスプレイを
見ていただきながらデザインを変更していきます。初めからオリジナルのデザインが作りたい場合は、
写真や絵などのお客様のデータをいただき、そこから一緒にデザイン案をデザイナーと作成していきま
す。そしてすぐにデザインを印刷します。印刷は縫製物専用のプリンタでフルカラー印刷できます。こ
のようにプリンタやパソコンなどの技術とコミュニケーションデザイナーの存在により消費者がデザ
インに参加して世界に自分だけのデザイン衣料を安価で作る事ができます。今後は中古衣料の前身頃や
袖などのパーツの組み合わせも消費者がデザインできるように考えています。
(3)セールスポイントやオリジナリティ(ライバルとの違いなど具体的に)
1点目は消費者がデザイナーとお店の中でコミュニケーションしながらデザインできる点です。消費者の
様々なウォンツに対応するデザインアイコンから消費者がデザインしたいものにデザイナーがその場で
デザインを作成します。そうすることで消費者に"デザインに参加したという愛着"を提供します。2点目
がすぐに5分で印刷できる点です。他の業者は後日やたくさんの時間を印刷に有しますが、私達のシステ
ムは消費者にすぐに提供できます。3点目は消費者の持ち込んだ衣料の印刷です。綿衣料ならば、何でも
印刷できるため様々な衣類に印刷できます。中古衣料リサイクル業者から回収された中古衣料を素材に
し、衣服を作る事は中古衣料業界でも高付加価値製品として作られています。今後本事業では消費者
の持っている衣服から本ブランドの衣服に作り直し、提供する衣服リプロデュースシステムを導入し
ます。この点で新規性をもち消費者が新たな視点から満足感を得ることができます。
(4)ターゲット市場とその市場規模(市場創出効果と規模)
アパレル市場は卸価格で約13兆円の市場規模があります。その中で中古衣料市場の規模は約1073億円
(01年度)と急増しています。中古衣料を扱う古着販売業者は全国で約2000社、またファッション
のオピニオンリーダーとなりうる若年層がこの市場顧客となっていて、この層において欲しいデザインを
手軽に顧客自身が作れるオンデマンドシステムのニーズが高まっているためこの年齢層をターゲットと
します。またこの層は革新性の高いデザインや流行に興味がありオピニオンリーダーとなりうるポジショ
ンです。現在店舗を構える上田市周辺では市場規模4万人、今後web上での運営が可能になるならばその
市場規模は世界に広がります。そして消費者参加型デザイン市場のパイオニアとなることができると考え
ます。
3
(5)具体的な販売方法
現在は大学近辺の上田市に店舗を構えて店舗で販売しております。今後は HP 開設後 web 上でのオンライ
ンシステムでの販売を視野に入れて作りたいと思います。
(6)メンバーのプロフィール
林伸樹 信州大学大学院工学系研究科 感性工学専攻 2 年
山下徹也 信州大学大学院工学系研究科 感性工学専攻 1 年
濱本健太郎 信州大学繊維学部感性工学科 4 年
永山 智著 信州大学大学院工学系研究科 感性工学専攻 1 年
中山 陽平 信州大学大学院工学系研究科 繊維システム工学専攻 1 年
(7)売上計画(単位 千円)
今後3年間の売上見込みを記入してください。既に起業済の方は、1年目には本年度売り上げを
記入してください。
1年目
売上高(A)
2年目
3年目
1792千円
13000千円
30000千円
593千円
3300千円
9900千円
1199千円
6700千円
20100千円
販売管理費(C)
420千円
1600千円
3000千円
営業利益
(売上総利益−販売管理費)
779千円
5100千円
17100千円
売上原価
(B)
売上総利益(A-B)
(8)今後必要な資産
今後、必要なヒト・モノ・カネ(いくら)
現在のサービスに関しては粗利益率、営業利益率を保ちながら、デザイナー数の増加と縫製物プリンタ
の技術とシステムの改良をすすめていきます。現在は(株)ミマキエンジニアリングの社内IM開発部と
交渉し、プリンタが新規性のある本事業に使用されることでのプリンタのマーケティングデータを提供
することで、低価格でリースすることが可能となり、実現することができました。今後は積極的にプリ
ンタの開発に関わっていく必要があります。またネットワーク構築のための HP 開設とそのために学生
と地域とがよりコミュニケーションできるようにデザインを通じてPRをしていくことが必要である
と考えます。また今後 3 年以内にオンラインでのデザインシステムのための設備がモノとして必要とな
りそのためにはシステム会社との提携も必要となってきます。現在大学内では PC 上に 3 次元で衣服の
パターン操作をできるシステムなどの開発も進んでおり、現在は上田市産学官連携支援施設(AREC)
事務局長岡田基幸氏協力の中で学生仲介の産学官連携によるニットやその他オンデマンドアパレルシ
ステムの形成に必要な技術を持つ企業との提携を検討しています。
4
(9)自由記載欄
(1)~(8)以外に記載したい事項がある場合はご使用ください。
本事業のブランドコンセプトと現在の購入方法などについて説明したいと思います。
(a)背ブランドコンセプト「リプロデュースと愛着」について
現在は低価格帯の商品には手軽さを、高価格帯の商品にはブランドを持つという優越感とそれに対する
愛着という付加価値を消費者は求めています。愛着とはものの新しい情報的価値を発見し続けていくこ
とです。モノのライフサイクルを長くする上で愛着は切り離せないものです。人間の持つ創造性を喚起
していくためにはリサイクルするだけでなく、その材料に付加価値を与え、新しいものを作り続けてい
くリプロデュースという視点が、これからの時代にモノを考えていく上で重要だと考えています。また
これからは消費者デザイナーの時代ともいわれ、個々の商品を消費者の欲しい形に変えるコーディネー
ター的なデザイナーが台頭してくると考えられます。これをブランド化し、消費者自身がブランドを形
成していく事を楽しみとしていく考え方を世の中に伝えていければと考えます。
(b)購入方法
本事業商品購入にはサンプル購入とイージーオーダーの2つのパターンがあります。まず、顧客はデ
ザインを選びます。
①サンプル購入
顧客は自分の衣料を持っていなくても選んだサンプル(Tシャツなど)を購入することが出来ます。
顧客は服サンプルとデザインを選び組み合わせ、大きさ、色、配置を選択します。
②イージーオーダー(リメイク)
顧客は選んだデザインサンプルのイージーオーダーします。
顧客は中古衣料のどこの部分にどのデザインを使うか選択します。
提供された中古衣料からデザインのリメイクを製作します。
(c)価格
価格はサンプルが T シャツ 2500 円で、イージーオーダーは中古衣料が衣服に使われる分プリント代 1500
円という価格にし消費者からのイージーオーダーによる注文を促しています。現在リピーターの方から
のイージーオーダーでの注文があり、そうする事で在庫を抱えるリスクを減らす事ができます。
(d)品質におけるリスクマネージメント
繊維製品は、再生使用をすると繊維長が短縮し性能の低下が避けらない。そのためリプロデュースによ
る製品の品質の高度化はとても困難であります。しかしイージーオーダーの場合、消費者側に品質の情
報があるため品質の劣化に対して問題にならない。そのためイージーオーダーの本事業内の販売シェア
拡大により回避できると考えます。
(e)販売促進
販促は主に地域ホームページやコミュニティサイトからの口コミと印刷物からの普及で行っています。
ターゲットの顧客層はユニクロなどの低価格衣料品を購入することが多いため本町商店街の周りの高
校、大学のそれぞれにチラシを配り、またサンプルをセレクトショップや古着屋に売り込むことで販売
チャネルを拡大しています。
(f)産学官の連携
地方が産学官連携を通して活性化させていく事は、地方都市と国立大学において鍵となるものです。私
達は学生が地域のために学業を通じて何かできないかということについて考え、この事業を実行に移し
てきました。それは私達地方大学生にとって第 2 のふるさととなる地域を盛り上げていきたいという思
いがあるからです。これまで説明してきた 3 つの事により地方都市と学生のあり方を見つめなおす、学
生と地方行政のプロセスモデルにこのプランがなれるようにしていきたいです。
お問合せ:ドリームゲートGRANDPRIX事務局 [email protected]
5
◆ 第 3 回 CVG 東京(2006 年度)<優秀賞(環境・健康・福祉部門)>
2006CVG提案用紙
登録番号
東京 27
代表者氏名
市川 高希
学 校 名
信州大学大学院
応募部門
3.環境・健康・福祉部門
応募テーマ
(1)
大学生の為のリサイクルシステム
プランの具体的内容
(1)背景
私は現在大学で「大学発学生ベンチャーに関する研究」というテーマで研究を行っています。この「大学発学生ベ
ンチャー」には様々な問題や課題があります。そこで私は「学生ベンチャー立ち上げを本研究の実験的アプローチと
して推進し、そのプロセスを通じて学生自らの視点で学生による起業の問題点を見つけ、解決すべき課題を明らかに
する」という目的で研究を進めています。そして平成 18 年 1 月に大学内に初めて学生ベンチャーとして有限会社 High
Hope を設立しました。今回はその会社で実行したビジネスと併せて、新規のビジネスプランを応募します。
(2)提案理由・ビジネスの内容
現在大学では、今秋に ISO14001の取得を目指し活動しています。私も ISO 学生実行委員となって活動するこ
とにより環境問題への関心が高まりました。そんな中、大学内に放置してあった大量の粗大ゴミを見て今回のビジネ
スを思いつきました。毎年卒業時期になると、学校の粗大ゴミ置き場にはテレビ・冷蔵庫・洗濯機・机・椅子などた
くさんの家電製品や家具が捨てられていました。この捨てられていた物の大半は使用可能です。そこで私は、この大
量のゴミを無くしたいと思い、下記のビジネスで起業しました。尚、今回応募するビジネスはビジネスモデル特許と
して特許出願しました。
(名称:リサイクル品の需給システム 特願2006-284967)
信州大学には県外出身の学生が多く在籍しています。つまり自宅から大学に通う学生は少なく、多くの学生が一人
暮らしをしている状況です。又、卒業生の大半が県外の企業に就職していきます。私のビジネスはこの学生たちに焦
点を当てました。まず、卒業生の多くは他県へ就職するので、引越しをしなければなりません。その引越しに伴い、
多くの学生が家電製品や家具を処分します。
卒
一方、県外から信州大学に来る学生の大半
①
ません。これら全てを買い揃えると、大き
な経済的負担になります。そこで私は、卒
業生から不用になった家電製品や家具を
引き取り、それを新入生に低価格で提供す
卒
卒
ジネス」を考えました。
(図1)
新
倉庫
②
新
③
品物リストを提示
品物を販売
新入生宅まで宅配
品物を倉庫に保管
→倉庫を借りる
品物リストを作成
=卒業生
新
新
②
自宅までの引き取りサービス
品物が正常に動くかチェック
品物の状態により価格決定
不良品は引き取らない
→引き取る場合は有料
るという「家電製品・家具のリサイクルビ
③
会社
卒
が一人暮らしをするので、新入生は各人で
家電製品や家具などを揃えなければなり
①
=新入生
図1.リサイクルビジネスの物流
(3)新規ビジネスとコンセプト
今回このビジネスに加えて提案する新規のビジネスプランは、大学内に放置してある自転車のリサイクルビジネス
です。上記のビジネス同様、毎年大学ではたくさんの放置自転車が処分されます。この放置自転車の大半は、卒業生
が卒業時に大学内にそのまま放置していきます。この放置自転車の大半は、パンク修理などのメンテナンスを行えば
使用できる物ばかりです。そこで、この放置自転車をメンテナンスし、家電製品や家具同様、新入生に販売出来ない
かと考えました。
これらのビジネスプランには「ゴミを少しでも減らしたい」という私の強い思いが込められています。それと同時
に卒業生、新入生のニーズに応えられる物と確信しています。また、廃棄物品の処理経費を節約できる、キャンパス
内の景観の悪化を防げる等、大学にも貢献できるビジネスプランであり、環境負荷の低減につながるビジネスです。
6
(2)
プランの優位性
(1)新規性
私の通う信州大学では現在卒業生から新入生へのリサイクルシステムというものはありません。そういった点
で大学内では新規性があります。また特許においても大学生を対象としたリサイクルシステムはありません。
(2)独創性
個人的に自分の不用物品を後輩に譲るといったことは、誰でも考え実行しますが、その一連のプロセスをビジ
ネスとして大学の中で大学と協力して行うというレベルには達しません。本提案は学生自信が自発的に不用物品
リサイクルをビジネス展開するという点で独創性があります。
(3)コアコンピタンス
県内の大手リサイクルショップの社長も、大学生が卒業時に残していく家電製品や家具のリサイクルに目を付
けたことがあるとおっしゃっていました。しかし、「学生の情報が得られない、学内に協力者がいないと実行出来な
い」という問題点があり、断念したそうです。この点でも、大学内の情報を得やすく、人脈もある学生の私が、この
ビジネスを行う事は強みです。
(4)特徴
このビジネスプランの特徴は大学内で行うことです。学生の視点で考えたビジネスであり、関係者全てのニー
ズに応えることができます。すなわち、「卒業生のニーズ」・「新入生のニーズ」・「大学のニーズ」です。「卒業生の
ニーズ」とは、引越しの際に家電製品や家具などを処分したいというサービスに対する需要です。「新入生のニー
ズ」は、入学に伴い家電製品や家具等を必要とする、物質的な需要です。「大学のニーズ」とは、大学内に放置さ
れているゴミを解消し、景観を回復・維持したいという景観と環境保全に対する需要です。
(5)分析
SWOT分析
内部
外部
強み
学生の情報が得られる。
コミュニケーションがとりやすい。
環境問題に対する社会的関心が高まる
弱み
実績が乏しく、信用が薄い。
技術保証体制がしっかりしていない。
電気用品安全法
ファイブフォース分析
項目
内容
脅威
リサイクルショップ(ハードオフ、サンタの創庫)
なし
業界内の競争
→学生向けのリサイクルシステムを行っているところは無い。
学生の情報を得るというのは、外部の企業にとって容易ではないので、企業が参入するのは難しい
なし
新規参入
利益を得にくいので新規参入の脅威は少ない。
リース品、中古品(リサイクルショップ)、新製品
あり
代替品の脅威
買い手の圧力
売り手の圧力
価格が低い為、圧力も少ない。
保証体制の問題がある。
卒業生の欲求(不用品を処分したい)に応えるので、圧力は少ない。
なし
なし
*ファイブフォース分析 : 市場に存在する5つの競争要因から、業界の魅力度を測る分析のフレームワーク
7
(3)
実現方法、実行時期、課題
~不用品のリサイクルシステムについて~
3 月の引越し時期に卒業生から不用となる家電製品や家具を提供して頂き、3 月末から 4 月初めにかけて新入生に販売・
リースします。不用品の回収は、学生同士のネットワークを有効活用し、学内の卒業生に不用品回収の旨を PR します。新
入生への PR は大学入試会場でチラシを配布します。
問題点として 2006 年 4 月より施行された電気用品安全法により、PSE マークの無い家電製品を販売出来なくなったことで
す。この問題に関しては PSE マークが付いている電気製品だけを扱うことで解決できます。また PSE マークが付いていない
電気製品はリサイクルショップに引き取っていただきます。
尚、このリサイクルシステムを行う為に古物商(第481100600006号)を取得しました。
~放置自転車のリサイクルシステムについて~
(1)実現方法
~回収作業
①
大学内に放置してある自転車を大学側と協力して回収する(図2)
②
回収した自転車の防犯登録番号を警察に届け出て盗難車であるかの確認を取る
③
同時に警察の方で自転車の持ち主に「自転車をどうするのか?」という連絡を取ってもらう
~自転車の権利を譲り受ける為には~
①
自転車の持ち主が所有権を放棄する場合に権利を譲り受ける
②
放置自転車の持ち主が分からない場合などは、警察に遺失物として届け出る
③
6 ヶ月経過しても持ち主が現れない場合に、自転車の所有権が移る
~自転車の権利を譲り受けたら~
①
多少のメンテナンスを行えば使用出来そうな自転車を選別する
②
選別した自転車にパンク修理などのメンテナンスを施す
③
使用不可能な自転車は使えそうなパーツを取り、残りを処分する
~ターゲットに販売~
①
新入生を主なターゲットとして販売する
②
学内で自転車盗難にあった人に、自転車が見つかるまでレンタルをする
図 2.回収後の自転車
(2)実行時期
大学では放置自転車の処分を、毎年夏季休業中に行います。そこで放置自転車の回収も大学側と協力してこの時期に行い
ます。そして入学シーズンに合わせ自転車のメンテナンスを行い、新入生に販売します。また学内関係者及び在学生には、随
時販売やレンタルをします。
(3)課題と解決方法
・ このビジネスプランだけで年間を通して収益を上げることが出来るのか?
→販売だけでは収益を上げるには無理があるので、年間を通して自転車のレンタル事業を行います。例えば自転車盗難にあ
った人に自転車が見つかるまでの間貸し出しをしたり、地域の人や一般の人へも自転車の貸し出しを行います。更に自転
車だけではなく家電製品や家具のレンタル事業を併せて行うことにより収益を上げることが出来ます。
・ 商品の保証をどうするのか?
→商品を販売して一ヶ月以内で不具合が生じた場合、無料でメンテナンスを行うか販売した金額を全額返金します。また地域
の自転車専門店に協力してもらい、商品のメンテナンスを行ってもらうことにより商品の信頼性を向上させます。
・ 放置自転車を無くす為にはどうするか?
→家電製品や家具の回収同様、卒業予定の学生に自転車を提供していただけるように呼びかけを行います。そして卒業時に
自転車を回収することにより、放置自転車の台数を減らせると予測できます。
8
(4)
市場性
【現状と将来予測を立ててください。ターゲットは「どこ」「だれ」なのか。マーケットのニーズはどうゆうところにあるのか。調査資料、予測デ
ータがあれば、添付して下さい。】
(1)ターゲット
信州大学では毎年約 2000 人の学生が卒業し、同時に約 2000 人の学生が入学します。そこで卒業生と新入生
をリサイクルビジネスのターゲットとします。
(2)予測データ
一部の卒業生と新入生にアンケートをとり、卒業生のニーズと新入生のニーズを予測しました。予測した結果を
「図3.卒業生と新入生のニーズ」に示します。図3のグラフをみると、新入生のニーズとして家電製品が高いの
がわかります。そこで新入生には家電製品を中心に販売することが望ましいと考えられます。また卒業生のニー
ズとして自転車が高いのがわかります。このことから自転車のリサイクルも行う必要があると考えられます。
卒業生と新入生のニーズ
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
エアコン
電子レンジ
コンロ
机
椅子
品目
新入生のニーズ
卒業生のニーズ
コタツ
スタンド
本棚
カラーBOX
扇風機
ヒーター
電気ポット
ベッド
自転車
0
500
人数
1000
図3.卒業生と新入生のニーズ
※独自に予測したデータを添付資料として別紙に記します。
9
(5)
事業採算・収支予測
(1)何で収入を得るか
放置自転車をメンテナンスしたもの、そして卒業生から回収した自転車・家電製品・家具を新入生に販売・リース
することにより収入を得ます。
(2)現在までの事業収支
2006年の春休みに試験的に事業を行い15万円の売上がありました。今回扱った品物は卒業生から全て無
料で提供していただいたので原価は0円です。経費はメンテナンス費・倉庫費・人件費・ガソリン代で 9 万円でした。
よって営業利益は 6 万円となりました。
表 1.収益見込み
メンテナンス費
倉庫費
人件費
ガソリン代
経費
売上
収益見込み
1年目
10,000
20,000
50,000
10,000
90,000
150,000
60,000
2年目
50,000
50,000
200,000
40,000
340,000
450,000
110,000
3年目
500,000
350,000
1,000,000
400,000
2,250,000
3,150,000
900,000
収益見込み
4年目
1,000,000
700,000
2,000,000
800,000
4,500,000
10,000,000
5,500,000
5年目
1,500,000
1,000,000
3,000,000
1,200,000
6,700,000
16,500,000
9,800,000
(3)今後の事業収支予測と経営戦略
今後 5 年の経費・売上・収益見込みを「表1.収益
20000000
見込み」に示し、表1の売上と収益見込みの今後の
15000000
推移を「図4.売上と収益見込み」に示します。1 年
売上
収益見込み
金額 10000000
5000000
目は倉庫の大きさが小さく、扱える商品数に限りが
でてしまったので、2 年目からは大きな倉庫を借り、
扱える商品数を増やします。また 1 年目は私の在籍
する上田市の繊維学部限定でビジネスを行ったの
0
で、今後は長野県内の全学部を対象としたビジネス
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
年
を展開していきます。また「表2.会社経費」に 1 年
目の会社のコストの結果を示します。
図4.売上と収益見込み
(4)今後の展望
表2.会社経費
内容
公証人承認手続き
登 記 申 請 (有 限 会 社 )
会社実印代
古物商取得費
消耗品費
税金
合計
現在、上田市産学連携支援施設(AREC)事務局
長の岡田基幸氏協力の基、産学官連携の仕事にも
金額
91,500
60,000
20,000
19,000
20,000
70,000
280,500
関わらせていただいています。産学官連携を通じて
地方を活性化させていく事は、地方都市と国立大学
においてとても重要な事です。私の身近には AREC
という素晴らしい支援施設があるので、AREC そして
(有)High Hope を通じて学生の視点に立ったビジネ
ス、そして大学や社会に貢献できるビジネスを考え
実行し、大学と地域を元気付けていきたいです。
●事業化の意思について・・・すでに起業している
10
◆ 第 3 回 CVG 東京<優秀賞(ニュービジネス部門)& 特別賞 ソーシャルアントレプレナー賞>
2006CVG提案用紙
登録番号
東京 78
代表者氏名
北條 友裕
学 校 名
信州大学経営大学院
応募部門
ニュービジネス部門
応募テーマ
(1)
地域活性化事業への障害者の参加
プランの具体的内容
【内容とともに、プランの着想点(思いついたきっかけ)、提案理由、背景、ミッション・ビジョン(ビジネスの理念、意義、価値、目標など)が
分るようにまとめてください】
„
全ての着想点
大学(信州大学工学部)2 年の時、趣味の渓流釣りを通じて長野県大鹿村に足を運んだところ、鹿塩温泉(塩化
物泉:塩分濃度約 1%)の温泉水を煮詰めて塩(商品名「山塩」)を作っていることを知った。「山塩」の製作場所は
村内の特産品直売所「塩の里」であり、そこの責任者の方から大鹿村の地域資源から生まれた特産品「山塩」の
希少性(1万円/kg)、そして「山塩」製作の現状と問題点をお聞きした。
その問題点とは、
1.「山塩」を作る際、水分を飛ばすため(=塩分濃度を高めるため)
に火力を使っているので目を離せず、本業の店舗の管理ができない。
しかし、「山塩」の製作現場(図1.大きな鍋で温泉水を煮詰めている)
は観光客への大事な見世物となっているため続けていきたい。
2.「山塩」の生産が需要に間に合っておらず、もっと生産したいが、
現在の手法ではこれが限界である。
これら問題点をお聞きし、工学部で学んだ知識を活かしてなんとかし
て差し上げたいと思い、一装置を開発するに至った。
„
図1.山塩作り 長野県大鹿村
開発背景
まず、上記「山塩」を製造する上で最も問題となっていることを客観的に再確認した。
①最もコストが掛かっているのは、火力で煮詰め水分を飛ばし塩分濃度を高める過程にある。
②火力であるがゆえに目を離せない。(=人件費が掛かっている。)
この2点を解決するため、火力を使用せずに温泉水を濃縮(=液体を濃縮)し、限りなく塩分濃度を高めた状態の
液体を、大鍋で煮詰めるようにすれば良いのではと考えた。
参考にしたことは、古来からの製塩法である「塩田法」である。「塩田法」では海水を浜辺に撒き、空気にさらす
事で海水中の水分を気化させていた。しかし、これは臨海地の浜辺という特殊地形が必要であり、雨天など天候
にも左右される。この原理を応用し、動力源は電気として、海辺はもちろん内陸地でも、天候にも左右されず、24
時間無人運転で液体の濃縮を可能にする、常温気化式液体濃縮装置「水太郎」(図2)を開発した。
・特許出願番号 2005-105663 (2005 年 4 月 1 日出願)
・特許公開番号 2006-281113 (2006 年 10 月 19 日公開)
図2.「水太郎」前後
群馬県富士見村
「富士見温泉見晴らしの
湯」様にて
11
„
事業化への着想点(理念)
「水太郎」開発当初は、「個人製塩業」をおもな対象と捉えていたので、とりわけ事業化しようとも考えてはいな
かったが、「信州なら温泉水を濃縮して各地の「濃縮温泉水」を作ってみたら面白いのでは」、という御意見を公的
温泉施設の方から頂いた。その御意見をお聞きしたちょうどその頃、テレビで「障害者自立支援法」に反対する多
くの障がい者の方々を目にした。聞けば、障がい者の方々が通っている授産施設への補助金が大幅に減額され
るとのことである。この影響で、施設へ通いたくても通えない方が増え、障がい者と社会との接点が薄れてしまう
との現場の御意見もお聞きし、「授産施設にも行政におんぶにだっこではなく、自分達で利益を上げなければい
けない時代がきたんだな」と考えさせられた。では、現在の授産施設ではどういった作業をしているのかと調べた
ところ、多くが「ラベル貼り」や「箱詰め」といった銭/個の作業をしており、最近では収益性の高い「パン」や「クッキ
ー」なども作り始めていた。「ラベル貼り」や「箱詰め」は重要な作業であるが、「パン」や「クッキー」などは、同じ原
料であってもプロが作った方が美味しいものができてしまい、温情で買ってもらうといった形である。そういった熟
練技術が必要な作業は、授産施設に向かないのではないかと考えた。
「誰が作っても最後には同じモノができる作業」こそ授産施設で行うべきであり、「濃縮温泉水」や「製塩」につい
て考えてみたが、これらは原料が一緒であれば誰が作っても同じものができる「普遍性」を備えている。「濃縮温
泉水」を授産施設で製造すれば、製造過程の全作業を授産施設で行うことができ、授産施設が「製造元」となる。
即ち、「責任あるモノづくり」を行い、あらゆる改善を考えるきっかけになる。
ここで、本事業「濃縮温泉水」製造の意味は、大前提として地域資源活用による「地域活性化」である。この事
業に障がい者が主体的に参加することの意義は、「地域資源から生まれた利益で地域の障がい者を支える」とい
う点にある。本事業目標と理念をまとめると、以下の2点となる。
1.各地の地域資源(温泉や海洋深層水・・・)を活用して、地域活性化事業を創出したい。
2.上記事業を民間だけで行うことは容易いが、願わくばこの事業に地域の授産施設を参加させ、自立への一助
を築き上げたい。
これら理念を学術的な研究や発表に止まらせず、実業として事業化できることを証明するため、2005 年 4 月に
起業させて頂いた。(有限会社 S.I.D (Shinshu Industry Development))
(2) プランの優位性
【新規性、独創性、コアコンピタンス(独自の強み、競争力、差別的優位性)、明確な特徴などを強調してください】
上記事業を民間で行うか、授産施設を参加させておこなうか、いずれにしても必要なのは、液体を濃縮する装
置である。問題はコストである。私が開発した液体濃縮装置「水太郎」と他企業の装置を比較してみた。
私が調べた限り、温泉水を濃縮して「濃縮温泉水」を作るための装置を販売している企業は2社である。2社の
製品に共通しているのは、液体の濃縮方法が「真空減圧式」という点だ。容器内を真空にし、減圧し、沸点を下げ
ることで低い温度で急速に水分を蒸発させる方式である。容器を真空にし、さらに加熱するので、装置の構造は
複雑であり、2社の装置の販売価格は 1,500~2,000 万円とのことである。リースで考え、5 年間の償却を考えると、
約 25~30 万円/月と予想される。この高いリース料金によって、2社の装置を用いて「濃縮温泉水」を製作してい
る熱海温泉などでは、最終商品の販売単価が 1,500 円/本/500ml と非常に高価になってしまっており、これでは
温泉地のお土産として売れるものも売れない。しかも、装置の液体濃縮性能が過剰に高性能なため、1ヶ月で売
れる本数(何本かは未調査)を製造するために、装置は 5 日/月しか稼動しておらず、25 日近くは遊んでいる状況
の場所もある。こんな高価な装置では、超有名な温泉地以外、小さな温泉施設や温泉街では到底導入すること
はできない。
対して、私の開発した液体濃縮装置「水太郎」であるが、濃縮方法は「常温気化式」である。液体に風を当て、水
分を気化させる方式である。真空ポンプや減圧装置、火力を使用しないため、装置の構造は極めて簡素である。
また、駆動力が電気のみであるため、24 時間無人運転が可能であり、温泉施設でも授産施設でも、副業として開
始が可能である。原料(温泉水)の補給や運搬といった一時的な作業以外、装置の見張り番という、固定的な新
たな人件費も必要ない。また、装置がこれ以上ないくらい簡素な作りゆえに、維持費(メンテナンス費)もほぼ無い
12
に等しい。装置稼動において複雑な工程もないため、授産施設での稼動も十分に可能である。
「水太郎」の概要を以下にまとめる。
①「装置の販売価格」
・100~120 万円
・リース料:2 万円/月 (期間は 5 年間)
②「装置概要」
・大きさ:長さ約 8,000mm×横幅約 1.000mm×高さ約 1.800mm
・材質:オールステンレスもしくはアクリル (泉質や用途によって対応)
・駆動力:電気(家庭用 100V 1口で可能
ON/OFF はコンセントを抜くか挿すか)
③「諸性能」
・液体気化能力:約 1,000 ㍑/月 (1ヶ月間、毎日 24 時間フル稼働時)
・必要電力コスト:約 1,700 円/月 (1ヶ月間、毎日 24 時間フル稼働時)
・生産可能本数(月産)
10 倍濃縮の場合:500ml ペットボトルで約 200 本
20 倍濃縮の場合:500ml ペットボトルで約 100 本
※濃縮倍率は、対象の泉質によって変化させます。
「水太郎」については http://www.s-id.jp/ を参考にして下さい。
これら「水太郎」の持つ特性と、他社の製品を比較すると、(温泉地の)地域活性化事業としてどちらが導入し易
いかは明白である。この導入コスト、運転コスト、維持管理コストの低さこそが最大の強みであり、小規模な温泉
事業者や授産施設でも導入可能な点が他社との差別的な点であると考えている。また、地域活性化事業に障が
い者も参加させるという、社会的にも関心や理解を得られやすい理念である点に新規性があると考えている。
(3) 実現方法、実行時期、課題
【プランの実現に向けてどのようにして推進していくのか。具体的な事業活動計画、目的、基本戦略を明記してください。その中で課題・問題
点とともに、その解決方法を示してください】
プランは大きく分けて2つある。
„
①地域活性化という理念だけに即して、民営もしくは公営温泉施設で製造する場合。
„
②①に障がい者も参加させて、製造を授産施設に任せる場合。
①のケースを想定した場合、事業活動は
1.ひたすらに民営もしくは公営温泉施設への宣伝(ホームページ開始済み) だけである。
②のケースを想定した場合、まず公的機関もしくは志の高い民営温泉施設への理解と参加を求めることから始
める。順序として、
1.村や町など公営温泉施設や民営温泉施設へ、本事業の理念への理解を得て、原料(温泉水)の提供(有償も
しくは無償)を確定する。
2.どういった最終製品(濃縮温泉水)が完成するのか、サンプル作り(有償もしくは無償)を行う。
3.役場や公営&民営温泉施設の協力を頂きながら、最終商品のデザインや価格、販路を具体的にする。
4.役場や民営温泉施設を通じて、地域内の授産施設へ事業を紹介して頂く。
5.授産施設側の理解も得られた時点で、「水太郎」を設置する。(ペットボトルやラベルなど一式の付帯用具は、
公的機関で手配できないようであれば、こちらで用意する。)
6.経過を記録し、改善へは適宜協力&アドヴァイスしていく。
13
次にプラン実行における問題点であるが、
①,②で共通して問題となったことは、最終製品への法律の問題である。
まず、「「濃縮温泉水」は温泉法の対象になるのか」であるが、「濃縮温泉水は温泉水を加工したもので温泉法
第2条で定める温泉には該当しない」と、環境省が見解を出している。次に、「濃縮温泉水」の効能についてであ
るが、「濃縮温泉水」は浴用入浴剤であるため、「薬事法」の対象になる。そのため、「アトピーに効きます、ガンに
効きます」などの医学的根拠が求められる具体的効能を表記してはならないことになっており、既存の商品には
そういった効能は表記されていない。これらのことから、「濃縮温泉水」の導入にあたって、法律的な参入障壁は
極めて低いと考えられる。
次に必ず課題となるのが、公的機関の体質だ。最近の役場や第三セクター化が進んだ公営温泉施設では、新
たな事業への提案を前向きに聞いていただける傾向にあるが、公的機関の一部である授産施設の所長さんは
未だに極めて官僚的な考えであり、新たな仕事を増やすことに前提として嫌な顔をする傾向にある。本事業をあ
る地域で提案するにあたっては、最初に私個人から授産施設へ打診するのではなく、役場や温泉施設の方から
事業を紹介して頂くように、段取りを進めていかなければいけないと考えている。
(4) 市場性
【現状と将来予測を立ててください。ターゲットは「どこ」「だれ」なのか。マーケットのニーズはどうゆうところにあるのか。調査資料、予測デ
ータがあれば、添付して下さい。】
まず、現状であるが、
„
2005 年 8 月:長野県松代大室温泉「まきばの湯」様(塩化物泉)にて、「濃縮温泉水」と「温泉水からの製塩」
を「水太郎」を用いて試作。近所であるため、現在も試験中である。
„
2006 年 1 月~4 月:群馬県富士見村「富士見温泉見晴らしの湯」様(塩化物泉)にて、「濃縮温泉水」と「温泉
水からの製塩」を「水太郎」を用いて試作。村の方々に御利用いただき、良い感触のお声を頂いた。
„
2006 年 6 月:長野県大鹿村に「水太郎」を設置。現在、村内の特産品「山塩」の生産をフォローしている。
また、鹿児島県指宿の温泉業者からサンプル作りについてお問い合わせを受けるが、遠距離のため断念。
„
2006 年 11 月~:長野県松代温泉(含鉄塩化物泉)にて「濃縮温泉水」の試作を開始中。
„
2006 年 11 月:青森県奥入瀬「古牧温泉」グランドホテルよりお問い合わせを頂いた。
上記の通り、「濃縮温泉水」製造ということに絞れば、本事業のターゲットは全国各地の「小規模温泉事業者」や
「小規模温泉地」、理念に即せば「温泉を有する地域の授産施設」である。信州だけに限っても約 340 箇所の温泉
があり、一つとして同じ泉質は存在しない。単純計算ではあるが、340 種類の「信州濃縮温泉水シリーズ」が構築
可能である。ネット等による温泉地の情報だけでなく、「各地の濃縮温泉水」という具体的な商品に当地のパンフ
レット等の情報を添えて消費地で展開する(特に冬)ことで、当地への集客を期待している。
また、上記の通り、泉質の特性によっては「温泉水からの特殊な塩」を低コストで生産することも可能なため、
臨海地で高付加価値な「食塩」を製造している「個人製塩業者」もターゲットになると考えられる。また、異質なとこ
ろとしては、液体肥料の濃縮やハーブエキスの濃縮などを依頼されたこともある。
さらに、将来の理念ではあるが、体が不自由で温泉に入れないが、温泉の持つ効能に期待をしている方(家で
寝たきりの方、特別養護老人ホーム等の方)に、温泉地の風景や風情までは無理であるが、当地の泉質に近い
お風呂を週一回でも手軽に楽しんで頂ければという考えと、「そういった体が不自由な人の楽しみを生む製品を
障がい者が作る」という、今までになかった良い関係を構築できればという理念もある。
将来は、「各地の濃縮温泉水」と「(温泉水や海水(海洋深層水))からの製塩」にターゲットを絞り、全国の温泉
を有する地域や新たな質の地域活性化に取り組んでいる地域へ、本事業の社会的意味と理念の普及を進め、並
行してゆっくりと事業の拡大を図りたい。
14
(5) 事業採算・収支予測
【収入(何で収入を得るのか、経費・支出(必要なコスト、会社設立の場合は人件費も試算)、収益見込みなどを盛り込んで5ヵ年計画を立て
てください】
本事業プランにおける私の収入源は、「水太郎」のリース料金(2万円/月)だけである(初期設置費用等は別
途)。各地の「濃縮温泉水」の売り上げの何%を・・・というような考えは一切無い。地域資源から生まれた利益は、
どんな形であれ地域に還元されるべきと考えているからだ。決して大きな収入額ではないが、塵も積もれば山と
なる的な前向きな発想でいる。
会社経営についてであるが、当分は私と、実業界を引退した父親と母親の3人で運営していくため、具体的な
人件費等は試算していない。
また、私自身も 2008 年度春からは一般的に就職し、社会的経験を積む予定である。しかし、会社はそのまま
存続させておき、インターネット等を通じて御依頼等があった場合は、適宜対応していく考えでいる。
現在は、信州大学経営大学院にて、経営や経済,マーケティングなどを、就職先で頑張るため、そして将来当
社を本格的に運営するときの糧とするために勉強している。本大学院での私の研究テーマは、本理念に即した
事業モデルを一つ実践することであるため、残り僅かな今年と来年1年を通じて一生懸命取り組む。その一環と
して、本キャンパスベンチャーにも応募している。
以上の点をふまえ、大まかではあるが 5 ヵ年計画を立ててみる。
・今年中(11,12 月):現在取り組んでいる長野県松代温泉の「濃縮温泉水」の商品化を進める。
・来年:就職活動をする傍らで、新たな温泉地でも本事業を展開するため、さらに理念の普及に努める。
・再来年以降:就職先の事業に専念する傍らで、週末を上手く利用して、非常にゆっくりではあるが事業を動かし
続けていく所存である。
--------------------------------------------------------------------------------------------以上、乱筆で大変恐縮ですが、私の理念を汲み取っていただければ幸いです。
「濃縮温泉水」について添付させて頂きたい資料も多数ありましたが、今回はできませんでした。
上記文章では不案内な部分も多数あると思います。
何かご不明な点等が御座いましたら、お手数ですが御連絡頂ければと思います。
以上、宜しくお願い申し上げます。 2006/11/09 北條 友裕
><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><
有限会社 S.I.D (Shinshu Industry Development)
代表 北條 友裕(Tomohiro Hojo) 信州大学経営大学院1年
〒380-8553 長野県長野市若里 4-17-1
信州大学イノーベーション研究・支援センター学生起業家支援オフィス内
TEL.090-2616-3570
FAX.026-269-5679
Email : [email protected]
Web : http://www.s-id.jp/
><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><
●事業化の意思について・・・ある(
年
月予定)
ない
○すでに起業している
いずれかに○を付けて下さい。
15
◆ 第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<優秀賞(情報通信部門)>
2007CVG提案用紙
登録番号
東京-14
代表者氏名
加藤久登
学 校 名
信州大学
応募部門
応募テーマ
大学生による地域企業のマーケティング支援 ~キャンパス内・携帯電話・瞬時納入~
情報通信部門
(1) プランの具体的内容
【プランの着想点・背景】
昼の生協食堂の行列
昼の生協食堂の混雑
■ 昼食時、300 人超の学生が、大学構内にある生協食堂を利用
■ 混雑のため、着席できるまでの約 15 分間、学生は手持ち無沙汰な状態
⇒ 私たちは、ここにキャンパスベンチャーの種があると考えました。
信州大学は、CVG 東京大会で地方大学として初受賞し、かつ 2 年連続受賞しています。
○2005 年 日刊工業新聞社賞(オンデマンドプリント事業「Ondemand Remake」繊維学部 修士 2 年)
○2006 年 環境・健康・福祉部門優秀賞 (大学生の為のリサイクルシステム 繊維学部 修士 1 年)
○2006 年 ニュービジネス部門優秀賞&特別賞(地域活性化事業への障害者の参加 経営大学院修士 1 年)
大学内でも、
「CVGに対する関心」
「キャンパスベンチャーの種を考えること」
「挑戦する気持ち」が大
いに高まっています。そのような大変良いキャンパスの雰囲気の中で、大学・学生・地域の人々が共に利益
のあることとして学生の視点から考えたのが、今回提案する
「大学生による地域企業のマーケティング支援~キャンパス内・携帯電話・瞬時納入~」です。
【プランの内容】
①調査活動の受託
②アンケート実施
③回答集計・納入
図 1-1 アンケート実施工程図
①大学周辺の地域の企業や団体から学生対象のアンケートを請け負う
②携帯電話でアンケートに回答できるシステムを導入し、大学生協で学生に対してアンケートを実施する
③学生によるアンケートの回答結果を集計・図式化して納入する
【プランの意義】
・信州大学繊維学部キャンパスには約 1500 人の学生がいる
・さらに長野県上田市内には 3 つの大学と短大、13 の専修学校があり、総学生数は約 5000 人
・12 万人規模の都市で学生がこれだけいるところは全国的にも少ない(合併前人口の約 4.2%程)
・信州大学のような地方の大学に通う自宅外学生のほとんどは大学の周辺に住んでいる
→ 学生の声を地域に反映し、学生に地域のことを知ってもらうことがプランの意義です。
【プランの目標】
・信州大学繊維学部キャンパスで既にこのアンケート集計システムを導入しており、これを信州大学の他
キャンパス(長野市、松本市、南箕輪村)、他大学などでも導入する
16
(2)プランの優位性
【新規性】
・地域の学生を囲い込んでいる大学生協を通じて、地域の企業に学生の声を届ける環境を作る
・アンケートの設問内容を依頼主と学生で検討することにより、地域と学生との交流をはかる
・携帯電話をアンケート回答端末とすることで書面におけるアンケートに比べて学生が気軽に参加しやすい
【工夫した点】
・プログラムによる自動集計によって回答集計時間を大幅に削減出来る
・携帯電話の固体識別番号を用いて回答者を識別することにより、同じアンケートは 1 度しか回答できないよ
うになり、正確な回答結果を得られるシステムとなっている
【強み・弱みの分析】
表 2-1 強み・弱みの分析
人
強み
■山崎一也
・プログラムを作成できる
・Webアプリケーション作成の知識あり
・基本情報技術者の資格取得
■加藤久登
・広告物等をデザインできる
・パソコンで広告物を作成できる
・信州大学SVBL広報
弱み
・学生なのであまり時間がとれない
・現在は他大学で協力してくれる学生がいない
・アドバイザーとして信州大学SVBL・上田市産
学官連携支援施設ARECがいる
設備・資金 ・特に設備等に資金がかからない
・「大学キャンパス内等でのマーケティング情
技術・特許 報演算処理装置とそのシステム」に関して特
許出願中
・現在は山崎がプログラミングをしているが、
外注すると高額になる
チャネル
・生協、上田市産学官連携支援施設ARECの ・実績があまりないためPRが難しい
マーケティング 協力で地域の企業へのルートが確保しやすい ・他の地域での宣伝が難しい
・携帯電話の保有率やQRコードの普及率から
市場の環境は良い
・携帯電話の操作が苦手な人からアンケートを
マーケット環境
・学内や他大学の情報が得やすく、アンケート 回収しづらい
の実施の宣伝がしやすい
競業他社
・地域企業に的を絞ったアンケートが実施可能 ・大手他社の方がモニター数が多い
・学生に対してアンケートが実施できる
・現在は学生以外のモニターがいない
【特徴】
・回答した学生に特典を与えることで、より多くの学生にアンケートに答えてもらえる環境を作る
→回答に対する特典・希望対価について学生にアンケート調査したところ、図 2-1 の結果となりました。
図 2-1 学生がのぞむアンケートに対する特典とその対価
17
(3)実現方法、実行時期、課題
【プラン実現に向けた事業】
・事業名
1メールベンチャーコンテスト
・事業期間
2007 年 7 月~8 月
・システム提供先
上田市産学官連携支援施設 AREC、信州大学 SVBL
・事業趣旨
長野県の学生が考えているビジネスアイデアを知る
図 3-1 1メールベンチャー告知カード
・長野県内の応募総数
107 件
・事業名
生協ひとことカード モバイル版
・事業期間
2007 年 10 月~
・システム提供先
信州大学繊維学部生協
・事業趣旨
生協ひとことカードのモバイル化によって、生協に対
する学生の意見をより多く集める
図 3-2 生協ひとことカード モバイル版
・回答件数
告知カード
70 件(開始 3 週間)
※1メールベンチャーならびに生協ひとことカードモバイル版に関する添付資料として別紙に記します。
・事業名
紳士服アオキの学生対象アンケート
・事業期間
2007 年 12 月予定
・システム提供先
紳士服アオキしおだ店
・事業趣旨
就職活動期の学生のリクルートスーツに対する意識
図 3-3 アオキ学生対象アンケート告知カード
調査をする
【課題と解決方法】
(1)アンケート回答者への特典付与方法
現在は回答する画面をレジで見せることで特典を与えますが、将来は携帯電話の画面に映るバーコードをレジの
バーコードリーダーで読み取るシステムにしようと考えています。
(2)他の地域での宣伝方法
他の大学の生協や、地域の産業支援施設、学生団体などと連携して他の地域でも行っていきます。今後は岩手
大学の NPO 法人「学生ビジニティいわて」と共同で事業を実行する予定です。
18
(4)市場性
【学生対象アンケート実施に対する市場のニーズ】
企業に直接出向いて学生対象アンケート実施に対する聞き取り調査したところ、以下のような意見がありました。
表 4-1 聞き取り調査の結果
英会話イーオン上田校
AOKIしおだ店
希望する
希望する
200人
100人
まだわからない
まだわからない
希望する実施費用は? (30,000~50,000円程度 (30,000~50,000円程度
の感触を得ている)
の感触を得ている)
調査を希望するか?
希望する回答数は?
上田自動車学校
希望する
200人
50,000円
【企業が学生に聞きたいこと】
表 4-2 希望する設問内容
・学生の居住地・就職・進路先
英会話イーオン上田校
・学生の英会話の必要性について
・リクルートスーツ購入予定場所(百貨店、大型スーパー、取扱専門店など)
・就職活動開始時期
AOKI しおだ店
・スーツを選ぶポイント(デザイン、値段、着心地、耐久性など)
※紳士服のイメージが強い AOKI は市場開拓のため、特に女学生のスーツに
対する意見が欲しいという要望がありました。
上田自動車学校
・教習所を選ぶポイント(自宅からの距離、値段、周りの評判など)
【携帯電話を使ったアンケートの将来性】
[利用者層の拡大]
QR コードを実際に使ったことがある層は、男女ともに若年層
に多く、19 歳以下で 9 割近くを占めている(2005 年株式会社イ
ンフォプラント社による QR コードに関する調査)
→将来は若年層以外でも QR コードが使えるようになり、市場
が拡大する
[技術の向上]
QR コードを読み取るソフトウェアの技術向上により、仰角、回
転、歪み、照明ムラ、印刷面にじみ、焦点ずれ等の画像も補
QR コードを読み取る学生
正されるようになった(株式会社メディアシークのバーコードリ
ーダーに関する技術仕様より)
【他社との比較】
表 4-3 ヤフー株式会社のアンケート調査サービス「YAHOO! リサーチ」との比較
このプラン
YAHOO!リサーチ
50,000円
100,000円
幅広い層
パソコン
データの加工
地域の学生
携帯電話
携帯電話の個体識別番号による
回答者識別
集計と図式化
1回あたりの特典
回答者全員50~60円その場で割引
・設問数10問程度
・サンプル数200人
のアンケート料金
モニターの種類
回答手段
重複回答防止方法
口座照会による本人確認
リサーチャーによる分析(別料金)
抽選で200円が振り込まれる
(ただし確率は低い)
企業側 → 地域に絞ったアンケート調査を行う場合は最適である
回答者側 → 面倒な手続きなしにどこでも回答でき、特典もわかりやすい
19
(5)事業採算・収支予測
【5 ヵ年計画】
1 年目
モニターの保有人数と拠点拡大、利益計画を下記のように考えています。
信州大学全5キャンパス
現在加藤・山崎は学部 3 年なので、大学院 2 年まではアルバイト程度の収益
で実施
を計画し、卒業後から収益を大きく増やしていきます。
人文、経済、理、医学部
(松本市)
40,000
45
30,000
人
20,000
数
10,000
繊維学部(上田市)
40
30
農学部(南箕輪村)
2年目
長野県内の他大学
(長野大学、松本大学、
諏訪東京理科大学など)
5年 目
4年 目
3年 目
2年 目
拠
30 点
20
3 2 ,2 0 0 2 0 数
15
1 7 ,2 0 0
5
10
1 ,2 0 0 2 ,2 0 0 7 ,2 0 0
0
1年 目
0
教育、工学部(長野市)
50
専修学校、店舗で実施
3 年目以降
長野県外で実施
図 5-1 モニター数と拠点数の推移
(岩手大学、会津大学など)
表 5-1 利益計画
項目 時期
サービス売上高
サービス原価
売上総利益
人件費
経
費 サーバレンタル料
販管費合計
経常利益
法人税
当期利益
拠点数
拠点毎年間実施数
年間実施数
(円)
加藤・山崎 加藤・山崎 加藤・山崎
学部3年
学部4年
院1年
第1期
第2期
第3期
平成19年 平成20年 平成21年
3月
3月
3月
250,000 1,500,000 3,000,000
60,000
360,000
720,000
190,000 1,140,000 2,280,000
150,000
900,000 1,800,000
10,000
10,000
10,000
4,500
27,000
54,000
25,500
203,000
416,000
0
80,000
160,000
25,500
123,000
256,000
5
1
5
15
2
30
20
3
60
加藤・山崎
院2年
第4期
平成22年
3月
9,000,000
2,160,000
6,840,000
5,400,000
10,000
162,000
1,268,000
500,000
768,000
加藤・山崎
卒業後
第5期
平成23年
3月
40,500,000
6,480,000
34,020,000
21,600,000
10,000
486,000
11,924,000
4,760,000
7,164,000
30
6
180
45
12
540
売
実施費用
上 50,000円/回
高 (5期から 75,000円)
特典にかかる費用
原
価 60円割引×200人
=12,000円/回
販 告知パネル作成費
管 30円/枚×30枚
費 =900円/回
人件費
時給 1,500円
(5期から 2,000円)
各拠点のスタッフは
時給 800円
×20時間/人/回
≒30,000円/回
サーバレンタル料金
10,000円/年
※2 年目から法人化する予定です。
生協ひとことカードに回答する学生①
●事業化の意思について・・・□ある(
生協ひとことカードに回答する学生②
年
20
月予定)
□ない
○すでに起業している
◆ 第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<優秀賞(ニュービジネス部門)>
2007CVG提案用紙
登録番号
東京-21
学 校 名
信州大学経営大学院
応募テーマ
宇宙技術(ロケット、衛星、ロボット)競技大会『スペースグランプリ』の開催
(1)
代表者氏名 田中 和生
応募部門
ニュービジネス部門
プランの具体的内容
【内容とともに、プランの着想点(思いついたきっかけ)、提案理由、背景、ミッション・ビジョン(ビジネスの理念、意義、価値、目標など)が
分るようにまとめてください】
①プラン内容
合同会社スペースビルディング(以下、当社)は、一般消費者と宇宙開
発をより密接なものとし、宇宙市場の裾野を広げることを目的とした会社
です。当社では、広義の宇宙市場が図 1 のような状態にあると考えていま
す。当社のドメイン(事業領域)は丸で囲んだ部分です。
宇宙開発を支えていくためには、図 1 で示す「狭義の宇宙市場」を活性
化させる必要があると考えます。そのために、当社は宇宙技術の素晴らし
さ、感動を伝えるイベント『スペースグランプリ』を提供します。
②『スペースグランプリ』の概要と目標
『スペースグランプリ』とは、ロケットの打ち上げや宇宙での利用を主と
した自律型ロボットの競技を間近で見られる技術競技イベントです。競技
を中心に、宇宙食やスピンオフ商品のコンテストや見本市も開催し、一般
消費者に「珍しさ」、「新しさ」、「利便性」を感じていただきます。
『スペースグランプリ』は初期段階において、大学や企業から参加団体
を募り、ミッション達成に応じてポイントを付け、優勝を競う形式で行いま
す。収入はスポンサー企業の協賛金と観客の入場料になります。
中期段階として、観客数が 1 万人を超え、参加団体が 20 団体まで増加
すれば、地域毎にチームを作っていきます。サッカーの J リーグのように、
地元競技チームを応援する文化を生み出し、地域の大学、企業などが連
携していく流れを作ります。それにより、宇宙を通じたモノづくりの絆が生
まれ、地方の中小企業においてもロケット、衛星、ロボット分野を通じた産
学連携を促進することになると考えています。
最終段階としては、国際リーグを設置し、全世界的な宇宙技術競技会
を開催していきます。
このイベントの開催に加えて当社では、イベント映像やグッズのライセン
ス販売、宇宙技術の解説書籍の販売、宇宙モノづくり塾の開催などを行い、
事業を拡大させていきます。
図 1 広義の宇宙市場
図2 能代宇宙イベント開会式
③背景・理念
私は子供の頃から宇宙が大好きでした。将来は、ロケットや宇宙ス
テーションを作りたいと思い、大学時代には、小型人工衛星を模擬した
電子工作(通称、缶サット)に取り組みました。技術を学ぶ傍ら、宇宙開
発の最前線で働く人から聞いたことは、「匠と呼ばれる技術者達が日
本の技術力を支えているが、その技術者、さらに言えばモノづくりがで
きる技術者は減少傾向にある」ということです。その理由として、宇宙
に関連するモノづくりに好奇心を持つ「きっかけ」がないからだと感じて
います。そこで、私が宇宙をテーマにモノづくり技術の競技大会を開催
し、宇宙とモノづくりへの好奇心を刺激する事業を行いたいと考えまし
た。このイベントをきっかけに、技術者が増加し、日本が宇宙開発分野
における先進国になった欲しいと願っています。
図3 ハイブリッドロケット打ち上げ
④プランの着想点
21
当社が提案する『スペースグランプリ』は、2005 年から開催されている「能代宇宙イベント」(図 2)を参考にしています。2007
年には、当社が民間唯一の運営受託企業として参加しました。
「能代宇宙イベント」とは、秋田県能代市で毎年 8 月中旬に行われる日本最大規模の学生によるロケット打ち上げ及び自律
ロボット競技大会です。秋田県、能代市、JAXA(宇宙航空研究開発機構)などからの後援を受け、今年度で 3 回目を迎えまし
た。イベント内容を以下に示します。(参考:能代宇宙イベントHP http://www.noshiro-space-event.org/ )
1)ハイブリットロケット(図 3)の打ち上げ実験
爆発物を使わない全く新しいタイプのロケットの打ち上げ実験を行っています。現在は競技でなく、実験のみです。
2)缶サット(Can-sat)(図 4)のフライバック競技
缶サットと呼ばれる自立制御型のロボットを気球から落下させ、目的地を目指す競技が行われています。
3)ローバー競技
月や火星等の天体地表上の観測を目的とした移動型のロボットであるローバーを模擬
し、目的地まで自律で走行させる競技を行っています。
2006 年度は競技者と観客を合わせて、300 人を超える人が集まりました。2007 年度
も大学や任意団体から約 20 チーム(1 チーム 5~20 名程度)、計 800 人ほどの競技者
と観客が訪れました。また、NHK をはじめ、報道機関も取材に訪れていました。
私は 2005 年に競技者として、このイベントに参加しました。2007 年には運営受託企
業として支援しました。立場を変えた理由は、モノづくりを行う人たちにとって、進捗管
理や機材準備等の支援を行う「裏方」が必要であり、私もその仕事にやりがいを感じた
からです。このような経験を通じ、このイベントをさらに発展させることで多くの人に感動
と興奮を与え、宇宙ファン、モノづくりファンを増やせると感じました。
(2)
プランの優位性
図4 缶サット(Can-sat)
【新規性、独創性、コアコンピタンス(独自の強み、競争力、差別的優位性)、明確な特徴などを強調してください】
①新規性・独創性
ロケットの打ち上げおよび宇宙利用を主とした自律型ロボット競技を商業目的で行うイベントは国内初であり、新規性があり
ます。宇宙技術を良く知らない人たちにも見た目で楽しめて、何が行われているかを理解できるイベントを提供したいと考えて
います。競技を見ることで、技術を学べば、将来何ができるようになるのかを知ることができます。明確な目標を見せることで、
子供が宇宙やモノづくりに興味を持てる機会を提供します。
表 1 に示すように、学生の実験を主体にした「能代宇宙イベント」や子供を対象としたペットボトルロケット体験大会は既に開
催されています。しかし、一般観客を顧客に据え、商業性とエンターテイメント性と学術性を兼ね備えたイベントは過去にあり
ません。「能代宇宙イベント」をさらに拡大、発展させる形で、観客を楽しませるコンテンツに力点を置き、安定した運営体制と
財源によってさらに魅力的なイベントを作っていくことが本プランの独創性です。
表1
「能代宇宙イベント」と『スペースグランプリ』との違い
「能代宇宙イベント」
『スペースグランプリ』
出場者
実験をしたい学生
魅せる技術を披露できる社会人+実験をしたい学生
競技目的
実験重視(アマチュア競技)
観客重視(セミプロ競技)
観客
実験がしたい学生
「宇宙」、「SF」、「未来的なもの」、「モノづくり」が好きな人
財源
補助金が主
スポンサー収入、入場料収入が主
運営体制
研究者、学生が主体
企業が主体
②コアコンピタンス
コアコンピタンスは、イベントの運営ノウハウと開催に必要な人脈です。当社は、2007 年開催の「能代宇宙イベント」では、民
間唯一の運営受託企業として運営支援を行いました。観客からの声を直に聞くことができ、イベントに何を求めているのかも
知ることができました。また、私は競技者としての経験もあり、イベントの意義や面白さについても十分に理解しています。さら
に、「能代宇宙イベント」の事務局長をはじめ、関係者との人脈も多いため、開催にあたって必要となる実務、特に上空使用許
可、地方自治体との交渉において適切なアドバイスを受けることが可能です。また、先輩、同輩、後輩たちは技術分野で研究
を行っており、最新技術やモノづくり現場のニーズ、特許などを十分考慮した上で、魅力的なイベントを作ることが可能です。
イベント自体は他の人もできないとは言えませんが、上記の経験と人脈があること、専門的な技術を扱うことから全く最初か
ら始めるよりも有利な点が多いと考えます。また、大規模な開催を定期的に行うことができれば、同様のイベントを他で開催す
る意味合いが薄れること、準備期間等の関係から1年の間に複数回イベントを行うことが困難であることから、2 番手以降の
事業拡大は非常に困難が予想されます。
③競合分析
宇宙技術を一般消費者向けのイベントにするという民間企業の試みは日本国内で前例がないため、現在のところ純粋な競
合はいないと考えています。ただし、代替品という概念からイベントの競合として、技術競技を観客に見せるイベントである「ア
イデアロボットコンテスト(以下、ロボコン)」、「F1」が考えられます。これらと比較して、『スペースグランプリ』の優位性を示しま
す。競合とは、「イベント目的の違い」と「珍しさ」によって区別が可能であり、『スペースグランプリ』のターゲット顧客に対して
22
優位性があると考えます。
まず、「イベント目的の違い」について説明します。「ロボコン」は教育面が重視され、商業的なお祭りとして意味合いやロボ
ット開発と一般消費者の間を埋める位置づけではありません。観客は学生たちの努力の結果を楽しみに来ています。「F1」は
観客にとって技術発展を楽しむイベントいう枠を超え、人間ドラマを楽しむイベントになっていると考えます。来年度からは新
規のエンジン開発も禁止され、技術発展を楽しむイベントしての意味合いはさらに薄れると考えます。この事からも技術発展
を楽しむイベントとは言いにくいと考えます。
次に、「珍しさ」について説明します。「ロボコン」は毎年競技内容を変更し、競技自体は珍しさがあると言えます。ただし、ロ
ボットを目にすることは日常化しつつあると考えます。2足歩行型格闘ロボットが人気となり、手に入れようと思えば、手に入る
値段で販売されるようになりました。よって、見ることに対する珍しさは減少しているのではないかと考えます。「F1」は高速で
の自動車競技であり、日常的に見られるものではありません。ただし、自動車自体は日常で楽しめるものであり、自動車の構
造を理解することもロケット技術と比較すると容易です。以上 2 点から、「F1」は競合イベントではないと判断します。
『スペースグランプリ』は「宇宙に関心がある人」、「技術発展に関心がある人」をターゲットにしています。よって、「ロボコン」
と多少顧客層が被るところがあります。しかし、「珍しさ」においてロケットや宇宙用に特化したロボットは「ロボコン競技」で扱っ
ているロボットよりも魅力的であると考えます。さらに、企業同士の対戦があること、会場で技術に触れ合えるという点でも顧
客を重視したイベントになっていると考えます。以上の点から、競合と比較しても、『スペースグランプリ』は想定している顧客
に受け入れられるイベントであると考えます。(添付資料図Ⅱに「ロボコン」、「能代宇宙イベント」とのポジショニングを記載。)
(3)
実現方法、実行時期、課題
【プランの実現に向けてどのようにして推進していくのか。具体的な事業活動計画、目的、基本戦略を明記してください。その中で課題・問題
点とともに、その解決方法を示してください】
事業活動計画(3ヵ年マイルストーン) 時系列は添付資料の表Ⅲを参照してください。
<2008 年>
Ⅰ.目標
『スペースグランプリ』開催に向けたノウハウの強化と運営資源の確保
Ⅱ.活動内容
①「能代宇宙イベント」の運営支援(運営ノウハウの強化、会場内アンケート、技術体感コーナーの設置)
2008 年度「能代宇宙イベント」にも運営受託企業として参加予定です。2007 年度に引き続き、学生が満足できる実験環境と
観客が理解しやすい環境(掲示・説明)を提供します。試験的に、簡単なロボット技術に触れたり、ロケットを飛ばしたりする技
術体感コーナーや観客からのロケットに対する人気投票も実施予定です。また、自社の弱みであるビジネススキルの不足を
補うためにも、積極的に運営に参加し、成功・失敗経験を通じて、交渉技術、金銭感覚を鍛えます。
②『スペースグランプリ』の準備(競技内容の明確化、広報戦略の立案、開催場所の選定、スタッフ募集、協賛企業の募集)
観客が面白いと感じる競技内容の分析を行います。具体的には、「能代宇宙イベント」のアンケートに加えて、競技内容を想
定顧客にビデオで見せて調査を行います。そのデータと仮定した競技内容(添付資料の表Ⅱ)を分析し、競技を選定します。
さらに、イベント開催において重要となる広報戦略も検討します。これは「能代宇宙イベント」の広報戦略と並行して行い、効
果的な広報手段を分析します。現在の戦略では、TV 放送依頼、秋葉原での PR を行い、メディアに対してどういうイベントが行
われるかをアピールします。また、全国の高校、大学、研究機関に対してもポスター等を配布し、認知度を向上させます。
また、開催場所についても検討を行います。現在のところ、開催実績がある「能代宇宙イベント」と同じ場所を想定していま
す。しかし、関東圏から近い場所が集客においては有利と考えるので、新規の場所を検討中です。基準としては、ロケットの
打ち上げが可能で、顧客の利便性が良く、安価で使用できる場所を探す必要があります。全国の花火会場を検討中です。
Ⅲ.課題
①想定顧客からのデータ収集(2008 年 9 月までに完了)
(解決策)身近な宇宙仲間からのヒアリングだけではなく、「能代宇宙イベント」の来場者、全国各地の宇宙関連イベントの来
場者にもアンケートを依頼します。また、インターネットも利用し、想定した顧客から可能な限り多くのデータを収集します。
②技術体感コーナーの集客分析(2008 年 9 月までに完了)
(解決策)技術体感コーナーに集客できた場合は成功要因を分析し、集客できなかった場合は、改善を行います。
③スタッフの確保(2008 年中に完了)
(解決策)イベントを運営する社員と技術体感コーナーのスタッフを確保し、育成する必要があります。そのためには、『スペー
スグランプリ』を一緒に実現したいと考えてもらえる様に、プランをさらに具体化します。また、2008 年度「能代宇宙イベント」に
おいて、アルバイトスタッフを独自に募集し、どの程度の応募があるのかを調査する予定です。応募数が少ない場合には、求
人情報誌への依頼を行います。スタッフに対して、適切な教育が行える体制作りも準備します。
④運営資金、協賛資金の確保(2008 年中に完了)
(解決策)協賛企業のメリットを明確にし、このイベントへの出資を依頼します。2008 年中に協賛企業が集められるかが計画全
体の重要なポイントです。会社収支は「(5)収支予測」の表 3 にて示すとおり、4 年で黒字化の予定ですが、開催までの運転資
金(人件費、通信費、出張費)を確保する必要があります。よって、自己資本(借入を含む)によってこれらの資金を準備する
か、企画賛同者に出資を求めるか、いずれかの手段によって資金を確保する必要があります。できるだけ、後者で資金を確
保したいため、イベントの協賛企業および投資家から賛同を得られるビジネスプランを目指し、改良を続けます。
⑤出場チームの確保(2008 年中に完了)
(解決策)競技出場チームの確保を行います。出場チームのメリットとしては、広報効果、人材育成効果、優勝賞金があると考
23
えます。これらのメリットを企業、大学に十分アピールすることで出場チームを確保します。プレ大会に向けて最低でも、ロケッ
ト 4 チーム、ロボット競技は 10 チームの出場を確保したいと考えています。
<2009 年>
Ⅰ.目標
『スペースグランプリ』プレ大会の開催
Ⅱ.活動内容
『スペースグランプリ』のプレ大会を行い、開催時期や競技内容、業務フローについてより詳細なフィードバックを行います。
開催時期は、長期休暇期間(8 月)または3連休に開催します。イベント開催期間は1日間(10:00~20:00)を予定しています。
Ⅲ.課題
①予想集客数未達成(プレ大会終了後、2ヶ月以内に完了)
(解決策)原因の究明を行います。特に、4P(コンテンツ、場所、価格&販売手法、PR)、開催時期、偶発条件(天候不順など)
に問題がなかったかを分析し、その点を改善します。達成できた場合は、満足度調査を行います。
②業務改善(プレ大会終了後、2ヶ月以内に完了)
(解決策)運営において管理面、広報面、接客面などに問題があった場合は、どこを改善すれば良いかを特定します。特に、
チケットの販売については、当日来場者に対して会場入り口での当日販売を予定しています。その結果を受けて、本大会で
は当日販売にするか、チケット代理店で前売り券発売をするかを決定したいと考えています。
③採算性の確認(プレ大会終了後、2ヶ月以内に完了)
(解決策)想定収益(イベント収益、イベント外収益)を確保できたのかを確認し、できなかった場合は理由を分析します。また、
予算内でコストが収まったかどうかも確認します。
④未知の要因の抽出(プレ大会終了後、2ヶ月以内に完了)
(解決策)開催にあたって、想定していなかった問題が発生した場合にはそれに対処する戦略を考えます。
⑤『スペースグランプリ』開催の有無(プレ大会終了後、3ヶ月以内に判断)
(解決策)2010 年に『スペースグランプリ』を開催しても問題ないかを判断します。主に、業務改善と採算性において問題がな
ければ本大会を行います。
<2010 年>
Ⅰ.目標
第1回『スペースグランプリ』の開催
Ⅱ.活動内容
『スペースグランプリ』の本大会を開催します。想定来場者数は 5000 人に設定します(国内ロボット競技大会のデータを参
考に算出)。開催時期、日数、時間についてはプレ大会での分析によって決定します。
Ⅲ.課題
①次年度開催の有無(大会終了後、1ヶ月以内に判断)
(解決策)採算性が想定通り確保されているかを確認します。確保されていない場合は、改善できるかどうかを分析し、来年度
も開催できるかを検討します。
②業務改善(大会終了後、1ヶ月以内に完了)
(解決策)業務で改善できるところの洗い出しを行います。
③事業展開の検討(2010 年中に完了)
(解決策)『スペースグランプリ』の集客力が予想以上の場合は、新規事業が行えないかどうかを検討します。想定顧客と実際
の顧客層に大きな違いがない場合は、自宅で楽しめるモノづくりキットの販売を行いたいと考えています。
(4)
市場性
【現状と将来予測を立ててください。ターゲットは「どこ」「だれ」なのか。マーケットのニーズはどうゆうところにあるのか。調査資料、予測デ
ータがあれば、添付して下さい。】
①ターゲットと市場規模予測
狭義のターゲットは、「宇宙」、「技術発展」、「モノづくり」に関心がある人、さらに広義のターゲットとして「SF」、「未来的なも
の」が好きな人(性別、年齢問わず)を対象とします。2005 年に実施された宇宙旅行に関する市場調査(添付資料の図Ⅲ)か
ら、約 3 割の人は積極的に宇宙旅行に行きたいと考えています。この人々は宇宙が好きであると考えられます。よって、日本
において潜在的には 3000 万人が宇宙に対して関心を持っていると考えられます。上記のキーワードが好きな人は重複してい
ると考えられることから、3000 万人を潜在顧客数と考えます。関東から離れた場所で行う可能性が高いこと、会場まで足を運
ばない人がいることなどを考慮に入れると 3 万人程度が宇宙技術イベントを見に来る市場規模ではないかと考えます。
イベントの市場環境については、(社)日本イベント産業振興協会の「国内イベント市場の動向と今後(2005 年)」を参考に、
検討しました。レポートによると、イベントは地域振興を推進していく上で重要だとイベント来場者の 75%が答えています。した
がって、イベント自体のニーズも存在し、地域が一丸となれるコンテンツを作り上げることができれば、札幌の「よさこいソーラ
ン」のように 100 万人規模のイベントを行うことも可能です。よって、開催地と密着し、開催地にメリットを提供できるイベントを
作ることが『スペースグランプリ』が発展していく重要要素だと考えています。
②ターゲットニーズ
ターゲットニーズは、今までに見たことがないような「かっこいいもの」、「珍しいもの」、「感動するもの」が見たいというもので
す。ロボット技術を競う「ロボコン」も日本のみならず世界に広がりを見せていることからニーズの存在を確認できます。
24
また、2008 年度からは民間の宇宙旅行が本格的に開始されるため、宇宙に対する関心が高まる可能性が高いと考えてい
ます。しかし、宇宙旅行は依然高額のため、宇宙旅行と一般消費者の間を埋める宇宙コンテンツが求められるようになると考
えています。このことからも『スペースグランプリ』のニーズは高まると予想しています。
このニーズを背景にして、表 1 に示す狭義の宇宙市場を活性化させます。それにより、宇宙に対するニーズ全体が顕在化
し、広義の宇宙市場全体を活性化するというこの事業の目的を達成したいと考えています。
③ターゲットニーズを満たす手段
そのターゲットニーズを満たすためには、迫力のあるロケットの打ち上げ、工夫が凝らされたロボット競技、モノづくりに熱中
する競技者の人間模様を観客に十分伝えられるイベントを提供する必要があります。学生の実験をただ見学するだけでは、
宇宙技術の面白さが十分には伝わりません。ターゲットのニーズを満足させるためには、「宇宙開発への繋がり」、「技術の進
歩」、「技術開発現場の臨場感」を伝えることが重要になります。今まで開催したイベントでは、「ペットボトルだけでは迫力に欠
け、遠くでロケットが打ち上げられていても見えないし、臨場感がない」という観客の意見もありました。そうした観客のニーズ
に応えることで、ファンを生み、継続的に開催が望まれるイベントになると考えています。
(5)
事業採算・収支予測
【収入(何で収入を得るのか、経費・支出(必要なコスト、会社設立の場合は人件費も試算)、収益見込みなどを盛り込んで5ヵ年計画を立て
てください】
①『スペースグランプリ』の収支計画
『スペースグランプリ』での主な収入源は、次の3つ分かれます。
1.イベント収入 具体的な収入予測を表 2 に示します。
2.スポンサー収入 年間 1000~1200 万円を確保します。
3.イベント外収入 イベント外収入とは、イベントに関連したグッズのライセンス料や映像、画像コンテンツの販売収入です。
表 2 スペースグランプリの顧客予測と収支予測
1 年目
2 年目
3 年目
4 年目
総来場者数(3 日間合計)
4,800 人
6,500 人
9,300 人
13,100 人
中学生以下(無料来場者)
1,000 人
1,500 人
2,500 人
3,500 人
3 日券(@5000 円)購入者数
400 人
1,000 人
1,500 人
2,200 人
1 日券(@2000 円)購入者数
2,600 人
2,000 人
2,300 人
3,000 人
入場料合計(円)
7,200,000
9,000,000
12,100,000
17,000,000
スポンサー収入(円)
10,000,000
10,000,000
12,000,000
12,000,000
出店料、駐車場収入(円)
600,000
1,000,000
1,000,000
1,200,000
収入合計(円)
17,800,000
20,000,000
25,100,000
30,200,000
5 年目
15,200 人
4,500 人
2,500 人
3,200 人
18,900,000
12,000,000
1,200,000
32,100,000
また、「能代宇宙イベント」の経験から支出予測を行うと、1700 万円ほど必要と考えられます。支出項目は添付資料の表Ⅰを
ご覧下さい。設備、資材は初期費用を抑えるために、可能な限りレンタルで調達します。
②必要資金
表 2 の『スペースグランプリ』の収支予測から、当社の収支予測を示したものが表 3 です。0 年目とは、プレ大会の開催年を
指します。会社運営費とは、人件費、通信費、交通費です。オフィス等は自宅を最大限に活用し、固定費削減に努めます。表
3 より、『スペースグランプリ』開催から 4 年目で完全黒字化できる予想です。しかし、1~3 年目にかけては赤字経営となるた
め運転資金を確保する必要があります。さらに、プレ大会の開催から得られるデータによって、予想来場者数を変更する必要
があるかもしれません。このリスクを加味すると資本金(初期運転資金を含む)として、1500 万円程度必要と予測しています。
イベント収入
イベント支出
イベント利益
イベント外収益
会社運営経費
単年収支
合計収支
表 3 会社収支予測(単位:万円)
0 年目
1 年目
2 年目
3 年目
700
1780
2000
2510
700
1700
1600
1500
0
80
400
1010
0
300
500
800
650
650
650
1300
-650
-270
250
510
-650
-920
-670
-160
●事業化の意思について・・・□ある(
年
4 年目
3020
1300
1720
1000
1300
1420
1260
月予定)
25
5 年目
3210
1300
1910
1200
1300
1810
3070
□ない
○すでに起業している
◆ 第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<第一次審査通過>
2007CVG提案用紙
登録番号
東京-11
代表者氏名
栗原 美穂
学 校 名
信州大学
応募部門
ニュービジネス部門
応募テーマ
(1)
「外国人留学生のための日本語学習教材」の開発と販売
プランの具体的内容
【内容とともに、プランの着想点(思いついたきっかけ)、提案理由、背景、ミッション・ビジョン(ビジネスの理念、意義、価値、目標など)が
分るようにまとめてください】
<プランの着想点>
日本で学ぶ外国人留学生の数は約 10 万人にものぼっている。近年では特にアジア圏の留学生の数が増加している。また、経
済のグローバル化と日本の少子化によって、ますます留学生の数は増加する。このような現状にもかかわらず、日本語学習の
教材は一向に改善される気配がない。従来のテキスト教材では、日常生活に必要とされる日本語は身につかない。道を尋ねる、
アルバイトを探す、店で自由に買い物をする。こういった私たちが普段何の苦労もせずにこなしていることが、外国人留学生に
ももっと気軽にできるように日本語学習教材を工夫することで手助けをしたい。このような思いから弊社は、従来にない機能的
かつ効果的な「外国人留学生のための日本語学習教材」の開発と販売を目指す。
<背景>
外国人留学生の生活は出身地域によって分類される。欧米出身者は金銭的に余裕があり、日本の漫画やアニメーション、伝
統文化を学ぶために留学している人々が多い。これに対しアジア圏出身者は金銭的に恵まれておらず、将来は日本の企業に
就職するために留学している人が大半だ。特に中国では人口が多く、大学進学が難しいため日本の大学に進学し、そのまま日
本で就職するというパターンが多い。また、同じアジア圏でも中国のように漢字を使用する国とそうでない国では日本語の上達
に大きな差が生じている。さらに、金銭的な面では国費留学生と私費留学生の差は大きい。国費留学生は資金が支給される
が、私費留学生は全てを負担する。そのため、学業とアルバイトを両立することになる。このように留学生の生活は多様であり、
これらに対応した日本語学習教材が必要と考えた。
<プランの内容>
従来のテキスト教材ではなく、パソコン上で動作するソフトウェアによるリスニングを中心とした学習方法にする。このソフトウェ
アはテレビやインターネットから映像を取り込み、それらを編集することで手軽に、なおかつ日常会話に近い内容の教材を作成
できるものである。1 つのシーンを 15~30 秒程度にし、会話内容に対応する日本語字幕や、文化背景、各母国語への訳などを
表示する。出来上がった教材はオンラインで提供し、利用者はいつでもどこでも日本語学習ができる。また、利用状況が作成者
にフィードバックされるので、より良い教材を作成できる。従来のテキストは発行後何年も内容が更新されることなく、情報は
日々古くなる。本教材では、内容はフレキシブルに更新可能である。利用者からの使用料は徴収せず、広告費によって利益を
得る。無料化によって利用開始時の敷居が下がり、普及を加速的に進めることができる。
<ミッション・ビジョン>
弊社の目標は、インターネットを通したコミュニティの作成である。様々なバックグラウンドを持つ人々と教材を作り上げていくこ
とで、様々な言語に対応した教材や多様なニーズに対応した内容にする。さらに、内容の充実を図ることでターゲットを広げて
いく。例えば、長野県上田市には工場で働くブラジル人労働者が多い。日本語が苦手な彼らのために、工場に教材を配信し日
本語の上達とコミュニケーションの円滑化を図る。このことは結果的に日本の経済効果につながると考えている。将来的にはタ
ーゲットは国外にも広げていく。日本語教育が行われている国は 2003 年に 120 ヶ国 7 地域、235 万人である。このように弊社
が位置する市場は今後海外に発展する可能性が高い。このことは弊社の発展以外に、外国人留学生の増加や国際社会への
貢献につながる。
26
図 1:留学生の人数の推移と教材のイメージ図
(2)
プランの優位性
【新規性、独創性、コアコンピタンス(独自の強み、競争力、差別的優位性)、明確な特徴などを強調してください】
<新規性、独創性>
この教材が従来の教材と大きく違う点は、日常会話に重点を置いている点とオンライン教材であるという点である。従来の教材
では日常会話とはかけ離れた学習になる。本教材は、ニュースやアニメーション、街頭インタビュー、バラエティ番組など留学生
の身近にあるものをトピックに使用しているため、従来のテキスト教材ではわかりにくい日本語のあいまいな表現、独特な言い
回しが徐々に理解できるようになる。流行語や若者言葉は従来の教材では説明がないが、私たち日本人の日常会話の中では
多く使われている。そういった、以前ならば教材の中からはじき出されている表現も網羅することができるのが弊社の提案する
教材である。言い回しの使用場面など、生活とリンクしたアドバイスを載せることができるので、知識が偏ることなく他の情報と
の関連性やつながりも見えてくる。また、オンラインということは、いつでもどこでも日本語の学習ができること以外にも様々な
利点がある。まず、利用者の立場になって考えてみる。このコンテンツを利用する人は、カリキュラムに縛られることなく、多くの
トピックスの中から自分が本当に興味のあるもの、あるいは専門分野に関するトピックを好きな形で組み合わせることができる。
レベルの設定も既存の教材と違い、色々なパターンを設定できる。ごく初歩的な分野から、ある程度日本語が使いこなせる人
までフレキシブルに対応できる。また、情報を常に新しいものに更新していくことができるので、時代の流れに合った学習が可
能である。次に、提供者の立場に立って考えてみる。出版物の場合、利用者が現状で満足しているのか、あるいは使い物にな
らないと不満に思っているのか把握しづらい。それに対し、オンライン教材の場合は、どのトピックが一番利用されているのか、
あるいは一番評価の低いトピックは何かが瞬時に把握できる。そのため、ピンポイントに効率よく教材の修正が可能である。ま
た、出版物のように紙に印刷する必要がないので、短時間か
つ低コストで新しいトピックスを提供できる。
※教材のサンプルはすでに作成済み
図 2:「オーシャン・ブルー戦略」による弊社の位置づけと教材の再生時の画面
27
<コアコンピタンス>
弊社の独自の強みとして挙げられる点は、第一に市場に脅威となる他の企業がないことである。日本人のための英語学習教
材は充実しているが、日本語学習教材を手がける企業は少ない。また、<新規性、独創性>の部分で述べたように、既存の教
材では弊社の目指す「日常にマッチした日本語」の習得は難しい。さらに、動画を用いたパソコン上で動作するソフトウェアであ
るという特徴をもつ教材は普及していない。これらの点から、弊社が位置する市場はチャンスに富んだものであるといえる。第
二に、ターゲットの存在が明確であるという点である。弊社の提案する教材のターゲットはアジア圏出身の留学生である。大学、
短大、専門学校に所属する留学生の数はすでにわかっている。また、「国際交流基金(ジャパンファウンデーション)」の調査に
よって、海外の日本語学習者数と、学習者が集中する地域が具体的にわかっている。このように、ビジネスにおいて重要なマ
ーケットリサーチがほとんど行われていることで、ダイレクトに教材の PR をすることができる。第三に、教材を無料で利用できる
点である。既存の教材は値段が高い。例として「みんなの日本語」(スリーエーネットワーク)を示す(表 1)。教材を無料化するこ
とで、利用者は安心して利用することができる。また、既存の教材と差別化することができる。
表 1:「みんなの日本語」の価格例
みんなの日本語-初級 1 本冊
みんなの日本語-初級 1 翻訳・文法解説
みんなの日本語-初級 1[CD](1)
みんなの日本語-初級 1 標準問題集
みんなの日本語-初級 1[ビデオ](1)
(3)
\2625(税込み)
\2100(税込み)
\5250(税込み)
\945(税込み)
\10500(税込み)
実現方法、実行時期、課題
【プランの実現に向けてどのようにして推進していくのか。具体的な事業活動計画、目的、基本戦略を明記してください。その中で課題・問題点
とともに、その解決方法を示してください】
<事業計画>
2007 年 10 月から 2008 年 3 月までの期間は「テスト期間」とする。具体的には、「上田ケーブルビジョン」や「松本ケーブルテレ
ビ」といった長野県の地元テレビ局とコンタクトを取り、過去の番組の使用許可をとる。許可を取れたものから順に教材として作
成する。目標は 200 トピックスとする。この期間に信州大学に所属する留学生を対象に作成した教材を使用してもらい、アンケ
ート調査を行う。結果をもとに教材の改善を図る。2008 年 4 月には本教材に関するダイレクトメールを各大学、短大、専門学校
宛に送付する。2008 年 4 月から 2009 年 3 月までを「オープン期間」とする。今まで作成した 200 トピックスを用いてホームペー
ジを立ち上げ、事業を開始する。準備として、サーバのレンタル、コンピュータの購入、メンバーの確保、大学施設内の事務所
の確保をする。2008 年 10 月にはスポンサーへのアタックを開始する。これまでのアンケート調査の結果、利用者数、利用者の
声を基にプレゼンテーションを行う。「オープン期間」の間も更なるコンテンツの充実を図り、2009 年 3 月までには 380 トピックス
を作成し、前年度からのトピックスと合わせて 580 トピックスにする。2009 年 4 月から 2011 年 3 月までの二年間は信州大学大
学院に在籍し、コンテンツの充実とともに事業の安定化を図る。大学院卒業後は事務所を長野県上田市に開く。上田市に事務
所を開く理由は、①弊社の事業によって地域を活性化したいから、②インターネットを用いた事業なので、家賃の高い都心に事
務所を構える必要がないから、が挙げられる。将来は、広告費による収入以外も視野に入れる。具体的には、過去のトピックス
の中で効果的だったものを集め、DVD 化して販売する。また、日本語学校や大学などの教育機関や、外国人労働者の多い職
場への DVD の貸し出しを行う。
<課題>
弊社が抱える課題は、
①現在のメンバーが 2 人で、全ての業務をまかなうには人数が足りない。
②スポンサーを説得する材料が足りない。
③今現在の教材だけでは日本語の「読み」「書き」が弱い。
④既存の教材と比較して正確性が弱い(図 2)。
の 4 点が挙げられる。次に、これらの課題への解決策を説明する。①今必要としている人材は、システムエンジニア、事務担当
者である。前者は、信州大学の工学系の学部から選出する。後者は、外部から非正社員として選出する。また、インターネット
の特質を生かしたコミュニティ作りも行う。様々なバックボーンを持った人々によって、より多様な教材作りが可能となる。具体
28
的 な 人 員 の 推 移 は 図 3 を 参 照 の こ と 。 ② は ス ポ ン サ ー を 説 得 す る 材 料 と し て 過 去 の 利 用 者 数 だ け で な く Alexa
(http://www.alexa.com/)での 10 万位以内にランクインすることを目標とする。10 万位という数値は世界的に見たレベルなので、
スポンサーを説得するより客観的な材料となる。③は、利用者の声に応じて「読み」「書き」の学習もできるコンテンツの作成を
行う。さらにレッスンごとに確認テストができるようなシステムを構築し、自分のレベルを客観的に評価できるようにする。しかし、
弊社は「日常生活にマッチした教材作り」をコンセプトにしているので、「読み」「書き」に重点を置くのではなく、「聞く」「話す」に
重点を置く。そのため、全体を網羅するためには他の教材との併用がより効果的である。ホームページでは、弊社が推薦する
「読み」「書き」を学習する上で役立つ教材を掲載する。④については、①で指摘したように、コミュニティを作るので、日本語の
専門家をメンバーとすることで、既存の教材以上に正確性のある教材とする。
図 3:人員とスポンサー数の推移
(4)
市場性
【現状と将来予測を立ててください。ターゲットは「どこ」「だれ」なのか。マーケットのニーズはどうゆうところにあるのか。調査資料、予測データ
があれば、添付して下さい。】
<現在の市場>
弊社の提案する教材のターゲットはアジア圏出身の留学生とする。アジア圏出身の留学生は全体の約 85%を占めており、今
後もますます増加すると考えられる。(中国:66%、韓国:13%、台湾:3%)そのため、我々が位置する市場は今後も成長し続け
るものであるといえる。また、弊社の教材の利用料は無料なので、利用者の数は加速的に増加する。次に、図 4 の説明をする。
まず、強みである低コストの理由は、既存の教材と比べ本教材は利用者と提供者との距離が近いため時間がかからないから
である。市場の様子がわかりやすい理由は、利用者からのフィードバックがあることと、ターゲットがすでに明確であるというこ
とである。出版物と比べて教材作成が容易であり、すでにサンプルが出来上がっているため、手間をかけず、利用者の声に合
わせてのグレードアップできる。市場の様子がわかりやすく、教材作成が容易であることは、弊社の事業が低コストであること
につながる。売り上げが安定する根拠は、収入が広告費ということである。弱みとしては人員不足、正確性が弱い、ブランド力
がないことが挙げられる。前者 2 点に関しては、<実現方法、実行時期、課題>で指摘済みであり、解決策も検討済みである。
ブランド力に関しては「みんなの日本語」の伝統は否めない。しかし、「強み」や「機会」、にある他社にはない特長を生かし、独
自の新たなブランドを作り上げていく。次に機会は、市場に競合相手がいない、ターゲットが明確、市場の拡大化がある。前者
2 点は「強み」にも関連性があり、弊社の事業を支える要因となっている。最後に脅威は、他の教材のブランド力、他社の介入、
個人情報への責任がある。他者の介入とは、新規事業者による脅威と、ウィルスへの脅威である。個人情報への責任も、近年
問題視されており弊社の事業にとっても脅威となる要因である。
29
図 4:SWOT 分析
<将来の市場>
現在のターゲットはアジア圏出身の留学生であるが、今後は世界で日本語を学ぶ人々にも焦点を当てる。ターゲットの拡大に
伴い、ニーズの多様は必至である。その対策として、コミュニティ作成は有効的である。レベルの細分化(初心者~上級者まで
細かく)、トピックスの多様化(小学生向け、ビジネス向けなど)を行い、多言語への対応を図る。また、(3)でも述べたような、
DVD の販売も市場拡大につながる。
(5)
事業採算・収支予測
【収入(何で収入を得るのか、経費・支出(必要なコスト、会社設立の場合は人件費も試算)、収益見込みなどを盛り込んで5ヵ年計画を立ててく
ださい】
表 2:収支計画表
第一期
第二期
第三期
第四期
第五期
2008/4~2009/3
2009/4~2010/3
2010/4~2011/3
2011/4~2012/3
2012/4~2013/3
売上(円)
-
11,385,600
22,771,200
35,174,400
46,848,000
費用(円)
5,518,045
7,614,560
16,603,120
25,108,940
25,976,300
営業利益(円)
-5,518,045
3,771,040
6,168,080
10,065,460
20,871,700
営業利益率(%)
0.0
33.1
27.1
28.6
44.6
累積利益(円)
-5,518,045
-1,747,005
4,421,075
14,486,535
35,358,235
留学生(%)
15
15
30
40
50
国内の外国人(%)
1
1
2
4
5
30
弊社の収入はスポンサーから
千
円
の広告費とする。利用者一人が
50000
教材を再生するごとに 3 円が加
40000
算されていく(第二期~第四期)。
留学生の利用者が 50%、国内
30000
売上
費用
累積利益
20000
10000
えた時点で、3 円から 5 円へ値
上げをする(第五期)。値上げの
理由としては、一般的には利用
0
-10000
の外国人の利用者が 5%を越
第一期
2008/4~2009/3
第三期
2010/4~2011/3
者の数が増加すれば値段を下
第五期
2012/4~2013/3
げるが、弊社の教材による広告
は他の媒体と比較して質の高
図5:五ヵ年収支計画
いものなので、スポンサーにと
って有利なものになるからである。費用は、サーバーのレンタル代、コンピュータの購入費、事務所の家賃、消耗品(紙、インク)、
著作権料、人件費である。第一期はスポンサーとの契約がないため、売り上げは 0 円、事業を立ち上げるための費用として 550
万円程度かかるため赤字となる。第二期からはそれまでの実績を基にスポンサーと契約するので売り上げが年々増加する。弊
社の事業は、初期に大きな投資が必要となるが、図 5 で見るように第二期に単年度黒字を達成し、第三期には累積黒字を達成
する。このように初期の投資が後の利益に確実につながっているため、長期的には利益率の高い事業となる。売り上げの算出
法は下式となる。
(全留学生の数)×(利用者のパーセンテージ)×(広告費¥3or¥5)×(1人当たりの 1 ヶ月の利用回数平均)
…①
(国内の外国人の数)×(利用者のパーセンテージ)×(広告費¥3or¥5)×(1 人当たりの 1 ヶ月の利用回数平
均)…②
(売り上げ)=①+②
※全留学生 12 万人、国内の外国人 188 万人とする。(文部科学省 2005 年データより)
●事業化の意思について・・・□ある(2008 年 4 月予定)
□ない
□すでに起業している
いずれかに○を付けて下さい。
31
◆ 第 4 回 ecocon 2006 <特別賞
里山道楽賞>
「学食の残渣を堆肥化して作った野菜を学食のサラダバーへ」
団体名(正式名・よみがな)
里山ボランティアサークル
洞楽村
(さとやま
ぼらんてぃあさーくる
どうらくむら)
団体種別(学内サークル・学生団体・生協・NPO・その他)
学生団体
団体所在地(住所・電話・ファックス・メール・ホームページ)
長野県松本市
http://www.geocities.jp/dohrakumura/
メンバー人数
約60人
メンバー所属大学・学部
信州大学
理学部
農学部
繊維学部
人文学部
医学部
工学部
教育学部
経済学部
設立年
2004年
代表者(氏名・所属大学・学部学年・連絡先(電話・メール等)
)※可能な範囲で記入
渡邉祐喜・信州大学・理学部3年
[email protected]
活動のテーマ・概要
・里山復興事業
長野県松本市北東部の約70戸からなる洞地区において、里山の復興事業・村おこしを行っている桜柿羊の里農事組合
をサポートしています。
・学生独自の活動
上記の活動に参加する中で学生の意識が高まり、学生独自の活動を始めました。ビオトープの整備・生物の観察、学生
の畑での野菜の栽培、里山の理解を深めるための洞ゼミを行っています。
アピールポイント
洞好き。洞大好き。生き甲斐。貴重な体験。やる気。実践力。経験。成長。自主性。チャリンコ。すがすがしい朝。9
時直売所。太陽の香り。のんびり。おだやか。のびのび。ほのぼの。まったり。もっさり。行動力。人情。農小の子供
たち。組合のおじさん。地域密着性。協力性。地域活性化。8 学部集合。多学部交流。連携。つなぎ。多世代交流。ふ
れあい。なんでも手作り。美味い飯。収穫。生協食堂。食農教育。おいしい野菜。新米。無農薬。手間暇。柿干し。マ
コモダケ。かわいい羊。ジンギスカン。かわいい鴨。鴨鍋。ラッキー&ウランちゃん(馬)。銀嶺祭の餅つき。ダルビッ
シュ百瀬。地産地消。生産力。伐採。腰痛。遊休荒廃地解消。ビオトープ。ニセアカシア。後輩かわいい。先輩ステキ。
軽トラ。薪ストーブ。夏キャンプ。冬スキー。登山。夕暮れのキャッチボール。
32
活動データのページ
活動場所
長野県松本市洞地区一帯の里山および田畑。信州大学旭キャンパスより自転車で15分。
連携・協働の相手
桜柿羊の里農事組合の方々、洞地区内外の農家の方々、農業小学校に参加している家族の方々、女鳥羽川のホタルの里
を守る会の方々、信州大学生活協同組合の方々、ISO 学生委員会の方々。
活動期間・回数・頻度
洞地区におけるボランティア活動(毎週土・日および祝祭日)、農業小学校(月1回)
活動沿革(設立のきっかけ・背景・これまでの経緯など)
6年前、桜柿羊の里農事組合の活動主旨に賛同した信州大学の学生数名が里山復興事業の手伝いを始めた。農事組合の
活動規模が次第に拡がりを見せると共に、学生間の意識も高まり始めた平成16年に「里山ボランティアサークル
洞
楽村」を発足しました。
活動内容
①ボランティア活動
(1) 四季を通じて里山の整備・復興のサポート
(例:ニセアカシアの伐採、牧場の整備、マコモダケの栽培・収穫)
(2) 農業小学校のサポート
月1回、農事組合主催の農業小学校が行われており、農作業や里山遊びを通して、参加されている家族の方々
の体験学習を大学生がサポートしています。農業小学校では「食農教育」をテーマにしており、洞地区で自分達
が苦労して育てた作物や家畜を参加されている家族の方々と共に食べるなどの活動を通して“命を頂く”とは何
かを学ぶことができます。
②休耕田の活動
休耕田を整備してその中にビオトープを作り、希少な動植物の保全・観察の場にしました。
③学生の畑
「一人一野菜制度」を設けました。それぞれが育てたい野菜の栽培方法や調理方法を調べることで、野菜につい
ての知識が深まります。愛着と責任を持って育て、収穫して食べました。
④生協への野菜の出荷
学生が洞地区で栽培した野菜を信州大学生協食堂と連携して食堂のサラダバーの一部で提供しています。生協食
堂から残飯を提供していただき、私たちがそれを利用して野菜を栽培することで、地球に優しい循環システムを確
立しました。「地産地消」を実現できると共に、洞楽村の活動を学生に知ってもらえる機会が増えました。
活動の成果
①信州大学生協食堂の残飯を堆肥化して、その堆肥を畑に再利用することで無駄の少ない循環システムを実現しました。
②除草・害虫駆除の農薬を使わずに野菜を栽培することができました。
③栽培した野菜を大学内の生協食堂へ出荷し、多くの人に洞産の野菜を食べてもらい洞楽村の活動について知ってもら
うことができました。
③信州自然誌科学館2007「自然の彩」
(主催信州大学理学部)に参加しました。大学内の植物に関したビンゴゲーム
やクイズを通して身近な自然の面白さを子供達と共に学びました。
④ビオトープが形になり、アズミノへラオモダカ、サンショウモのような希少な生物も見られるようになりました。ま
た、子供たちの観察会の場ともなっています。
⑤洞楽村の活動を通して自然を体感し、環境意識が高まりました。
⑥テレビ、新聞などのメディアを通して、活動を周囲にアピールすることができました。
課題
①学生の里山に関する知識が不足しています。
→農事組合の方々とよりコミュニケーションをとり、教えていただく。
②生協への野菜の出荷を始めたので作業量が増えました。
→みんなで協力して作業の負担を分散させる。
③信州大学は長野県内五箇所にキャンパスが点在しています。他キャンパスへ移った学生が洞地区に活動に来ることが
困難。
→検討中・・・
将来展望
①里山の荒廃や農村の過疎化によって里山本来の自然や文化が失われつつあります。里山の自然や文化を維持していく
ために、洞地区が多世代にわたって交流することができる一つのコミュニティーとなることを目指します。
②現在は洞楽村と生協間の規模で野菜の出荷が行われています。この活動を地域の人々に知ってもらい、それをきっか
けに最終的には学生間に留まらず、地域全体を巻き込んだ地産地消を実現できることを目指します。
33
3. 学生ベンチャー企業育成支援
企業の活動状況の報告
【社名】
有限会社 High Hope
【会社概要】
会 社 名 有限会社 High Hope
所 在 地 〒386-8567 上田市常田 3-15-1
連 絡 先 TEL: 090-7181-5487
AREC 内
FAX:
e-mail:[email protected]
Web
立 2006 年
設
1月
30 日
資本金
900,000
円
3人
従業員
役
員 取
事
業
内
容
締
役 市川高希(工学系研究科 感性工学専攻)
リサイクル事業
WEB アプリケーションの製作
2006 年 9 月 5 日
事 業 暦 2007 年 2 月 8 日
2008 年 2 月 8 日
信州大学 SVBL 主催ビジネスコンテスト
最優秀賞受賞
キャンパスベンチャーグランプリ東京
優秀賞受賞(環境・健康・福祉)
キャンパスベンチャーグランプリ東京
優秀賞受賞(情報通信)
① 地域の企業または団体から学生対象のアンケ
ートを請け負う
② 携帯電話でアンケートに回答できるシステム
を構築する
宣伝・
商品紹
介
③ 学生にアンケートを実施する
④ 集計した結果をデータチャート化して、クラ
イアントに納入する
今後はホームページの作成代行事業も実施する
【所感】
大学内で起業をしたのですが、多くの人の協力があったおかげで今まで活動できたのだと私自身感じ
ております。後輩たちへのメッセージとして、感謝の気持ちを忘れないこと、そして縁を大切にして欲
しいと考えております。
34
Ⅰ.事業報告
1.会社の現況に関する事項
1-1.事業の経過及びその成果
リサイクル事業に関しては、合理的な物流システムの構築が出来なかったため、昨年度に比べて売上
が減少。また地理的な問題もあり、この事業からの撤退を決定。新たな事業として WEB アプリケーシ
ョンの製作に力を入れ始めた。
売上
¥83,950
売上原価
¥30,000
売上総利益
¥53,950
営業費用
¥150,980
営業損失
¥97,030
当期繰越損益
¥60,011
当期未処理損失 ¥36,137
1-2.資金調達等についての状況(重要なものに限る。)
•
(1)資金調達
特になし
•
(2)設備投資
特になし
•
(3)事業の譲渡、吸収分割又は新設分割
特になし
•
(4)他の会社(外国会社を含む。)の事業の譲受け
特になし
•
(5)吸収合併(会社以外の者との合併(当該合併後当該有限あるいは株式会社が存続するものに限
る。)を含む。)又は吸収分割による他の法人等の事業に関する権利義務の承継
特になし
•
(6)他の会社(外国会社を含む。)の株式その他の持分又は新株予約権等の取得又は処分
の場合に限る)
特になし
35
(株式会社
1-3.直前三事業年度の財産及び損益の状況
36
1-4.対処すべき課題
取締役である市川が卒業のため、辞任。それに伴い、新たな役員として 2 名が就任する。そこで新た
な役員への引継ぎ作業がスムーズに行うことが最初の課題である。
事業に関しては、どのように進めていくか次期役員と検討中。
1-5.当該事業年度の末日における主要な事業内容
WEB アプリケーションの製作
37
1-6.当該事業年度の末日における主要な営業所及び工場並びに使用人の状況
•
(1)主要な営業所及び工場
なし
•
(2)使用人の状況
使用人数
2名
平均年齢
21 歳
1-7.主要な借入先及び借入額
教授
¥100,000
2.会社役員に関する事項
2-1.氏名
市川高希
2-2.地位及び担当
全般
2-3.他の法人等の代表状況
なし
2-4.事業年度中に辞任した会社役員又は解任された会社役員に関する事項
なし
2-5.取締役、会計参与、監査役又は執行役ごとの報酬等の総額
なし
38
Ⅱ.決算報告
1.貸借対照表
39
2.損益計算書
以上
Ⅲ.謝辞
本事業の遂行において、ご指導、ご協力を頂いた方々に感謝の意を表します。
まず、本事業の遂行ならびに本報告書の作成にあたって、終始ご指導とご鞭撻を賜った
阿部隆夫教授に心から深甚なる感謝の意を表します。
また事業の遂行に際して様々な協力とご助言を賜った小宮良雄教育特任教授と岡田基幸
客員准教授に心から感謝の意を表します。
40
Ⅱ.
SVBL 研究成果
1. 重点研究
研究テーマ
研究者
指導教員
PD 研究員
高崎 緑
繊維学部
染色体操作による水産育種に関する研究
PD 研究員
張 雪蓮
理学部
浅見 崇比呂
電磁波遮蔽効果を有する金属磁性材料コーティン
PD 研究員
曽根原 誠
工学部
佐藤 敏郎
骨髄細胞を用いた新たな血管新生療法の開発
DC 研究員
柴 祐司
医学部
池田 宇一
バンレイシ科アセトゲニン類の合成と構造活性相
DC 研究員
服部 恭尚
農学部
真壁 秀文
DC 研究員
藤森 良枝
繊維学部
奈倉 正宣
DC 研究員
査 明
繊維学部
森川 英明
DC 研究員
小林 聡
医学部
レーザーエレクトロスピニング法による極細繊維
平井 利博
の開発
グナノファイバー不織布の作製と特性評価
関
ヨウ素を利用した有機/無機ナノコンポジットの
創成とその特性
物理的・化学的改質による絹繊維の特性変化に関す
る研究
ラット心筋細胞における糖鎖結合分子の探索
41
池田 宇一
レーザーエレクトロスピニング法による極細繊維の開発
信州大学 SVBL
PD 研究員
高崎緑
1.研究目的
極細繊維、特に超極細繊維は 1 デニール未満、直径にして約 10 μm 以下と定義される。その極細繊
維の特徴は、比表面積が大きく、柔軟性が高いことからフィルター、ワイピングクロス、人工皮革等に
応用されている。
最近、極細繊維を作製する方法として、エレクトロスピニングが注目されている。この方法は、通常
高分子溶液を静電力によって噴射・スピニングし、対極に向かってスピニングされる間に溶媒が蒸発し
て固化することで繊維を形成する。しかしながら、溶媒を利用するためコスト・環境に高負荷がかかり、
得られた繊維中の溶媒残存しやすいデメリットがある。
一方、溶媒を不要とする溶融型のエレクトロスピニングに関する研究も試みられている。この溶融型
エレクトロスピニングは、加熱によって高分子を軟化あるいは溶融し、静電力により引き伸ばして繊維
を作製する方法であるが、熱分解を起こしやすい点が難点である。熱分解を防ぐために、われわれは加
熱源としてレーザー光照射を利用した“レーザーエレクトロスピニング(LES)”法を開発した。レーザ
ー光照射では、繊維を急速かつ均一に加熱できるため、熱分解を極力減らすことができる。
本研究では、poly(ethylene terephthalate) (PET)、 Nylon 6、polypropylene (PP)および poly
(L-lactide-co-ε-caprolactone) (P(LLA/CL))を用い、LES 法による極細繊維の作製を試みた。さらに、
PET について繊維直径おける印加電圧およびレーザーパワー依存性についても検討した。
2.実験
LES 実験条件を Table 1 に示す。試料として PET、
Nylon 6、PP および P(LLA/CL)モノフィラメントを
使用した。
LES 装置の概略図を図 1 に示す。ノズル部で電圧
を印加した状態で試料を一定速度でノズルから押し
出した後、ノズル部先端で炭酸ガスレーザーを照射
し、対極の捕集板で繊維を採取した。この LES 挙動
を CCD カメラで観測した。さらに、得られた繊維
について走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、
直径を測定した。
3.結果および成果
LES 法によっていずれのポリマーも原料繊維か
Fig. 1 Schematic diagram of laser electrospinning
system.
らより細い繊維を作製することができた。特に
Nylon 6 および P(LLA/CL)については、平均直径約 1 μm、変動係数(CV)20%以下の比較的均一な極細
繊維が得られた。(Table 1 No.1 and 6)
42
次に、PET の繊維直径に対する印加電圧依存性をみると、印加電圧の減少に伴い、得られた繊維の平
均直径も減少した。(Table 1 No.8-11)
この結果は、印加電圧が低いほど引き伸ばす力が弱くなるため
加熱時間が長くなり、温度が高い状態で引き伸ばされることを示す。したがって、印加電圧が低いほど
静電力が低下し、低い溶融粘度状態で引き伸ばされやすくなるのではないだろうか。また、LES 挙動を
CCD カメラで観測した結果から、印加電圧が低すぎると加熱時間が長くなりすぎて分解することがわ
かった。これらの結果より、LES の繊維形成に印加電圧が大きく依存することから、極細繊維を作製す
る際に重要なファクターとなることが明らかになった。
レーザーパワー依存性をみると、レーザーパワーの増加に伴い繊維径も低下した。(Table 1 No.9,
12-14)
これはレーザーパワーの増加に伴い繊維温度も高くなることを意味し、溶融粘度が低下するこ
とが推測できる。
Table 1 Laser electrospinning conditions and electrospun fiber diameter.
LES conditions
No.
Polymer
Initial fiber
Feed speed
d
diameter (mm)
(m/min)
(mm)
1
2
Nylon 6
188
0.04
2
3
4
5
P(LLA/CL)
193
0.02
2
Laser
voltage
power
(kV)
(W)
15
Average
CV
(μm)
(%)
20
1
20
15
15
4
21
20
14
3
14
7
2
7
20
2
14
20
1
16
5
38
13
4
95
51
7
20
0.04
PP
190
0.04
5
8
9
Applied
0.04
6
7
Diameter
20
10
PET
196
0.04
2
15
5
10
20
81
5
11
25
102
7
4
74
20
6
10
86
7
4
86
12
13
PET
196
0.04
2
14
43
15
染色体操作による水産育種に関する研究(最終報告)
信州大学SVBL研究員
張雪蓮
1、卵割阻止による染色体倍数化機構の適応性の検討
背景と目的:
1)、安全・安心、優良な蛋白源を提供できる水産動物を生産するには染色体操作の中の卵割阻止は極
めて重要である。魚類では染色体操作の卵割阻止によって、同質四倍体の作出、新種複二倍体の合成、
クローンの作出、全雌・全雄集団の作出、不妊性三倍体の大量生産、絶滅種の保存などができる。本人
の博士課程ではニジマスの受精卵の第一細胞周期の中期に水圧或は熱処理を行い、受精卵の第一卵割が
処理後再生した二極紡錘体により正常に進行し、阻止されず、第二細胞周期に単極紡錘体を形成するこ
とで染色体セットが倍数化することを初めて明らかにした。これに基づき、革新的な卵割阻止の手法開
発ができ、卵割阻止の成功率は大きく向上することが考えられる。従ってニジマスを用いた卵割阻止機
構が他魚種にも適応していれば、水産業に大きな貢献が期待できる。卵割阻止機構について中心子の観
点から考えているので、他魚種にも適応すると予想される。そこで、本研究ではアマゴを用いてニジマ
スで解明した卵割阻止機構の適応性を検討した。
方法:
アマゴの受精卵を 10℃で培養し、受精後 6 時間 10 分、6 時間 30 分、7 時間 10 分に固定し、組織学的に
卵割阻止処理の基礎である発生ステージを調べた。さらに第一細胞周期の前中期に水圧処理(650 気圧
で 6 分間)を行い、処理直前から第四細胞周期まで固定し、外観観察と組織学的に卵割阻止機構の適応
性を調べた。
結果:
受精後 6 時間 30 分(10℃)にアマゴの受精卵は第一細胞周期の前中期であることを確認できた。また、
水圧処理後紡錘体が一度消失したが、すぐに再生し、第一卵割を起した。しかし、第二細胞周期に各娘
細胞に単極紡錘体が形成され、染色体セットが倍数化された。ニジマスを用いて解明された卵割阻止機
構がアマゴにも適応していることを判明した。
2、卵割阻止法の開発
背景と目的:第一細胞周期に1次卵割阻止処理により、染色体の塊、再生した二極紡錘体の異常、多極
分裂などで、異数体が出現する。また、処理によって、無核細胞、モザイク、高倍数性個体も出現する。
これらは卵割阻止の成功率を低下する。第一細胞周期に2次処理により、娘中心子と再生した紡錘体を
壊して、染色体の後期移動を妨害して、終期核が1つ形成されることが予想される。第一卵割もスキッ
プされることで、染色体セットが第一細胞周期に倍数化する。よって、1次卵割阻止処理による生じた
異常がなくなり、倍数化率や生存率が高くなると予想される。そこで本研究では第一細胞周期に2次処
理による染色体セットの倍数化法を開発した。
44
方法:
水圧処理の場合:ニジマスの受精卵を 10℃の循環水で培養し、受精後 5 時間 15 分(第一細胞周期の前
中期)に第一回水圧処理(650 気圧で 6 分間)を行い、1時間後に第二回処理(650 気圧 3 分間)を行
った。処理胚と対照を固定し、外観観察と組織的観察を行った。
熱処理の場合:ニジマスの受精卵を 10℃の循環水で培養した。受精後2時間と4時間に受精卵を 30℃
のお湯に 5 分間高温処理を行った。実験群は対照群と2次処理群(受精後2時間と4時間に処理)を設
定した。第一卵割の阻止効果を受精後9時間の胚を用いて卵割の状態を調べた。処理後の核と紡錘体の
動態を組織学的に調べた。倍数化率を受精後 15 時間の胚を用いて調べた。
結果:
水圧処理の場合:約 90%の処理胚の第一卵割が阻止された。第一回処理後全ての胚に紡錘体が消失した。
第二回処理直前、全ての胚に二極紡錘体の再生が観察された。第二回処理によって再生した紡錘体が再
び消失したが、第二回処理後 30 分と 1 時間に二極紡錘体の再生が再び観察された。しかし、二度再生
した二極紡錘体が第一卵割を起こせず、1割球のままで第二細胞周期に入った。第二細胞周期に、1/5
の胚に1核或は1つ正常な二極紡錘体が形成された。この実験で率が低いにもかかわらず、第一卵割阻
止と第一細胞周期に倍数化ができたということは初めて成功した。また、水圧処理の場合、本研究で用
いた第一回処理開始時間が早いと判明した。次の実験では第一回処理は第一細胞の中期に行って、その
後 45 分、1 時間と 1 時間 30 分に第二回処理を行うと予定している。よって、成功率が良くなると期待
する。
熱処理の場合:第一卵割の阻止効果、受精後9時間に、対照は2細胞期の胚約 90%で、1細胞期の胚は
約 2%であった。2次処理群では、2細胞期の胚約 10%で、1 細胞期の胚約 90%で高かった。組織学的
に観察した2次処理群の1細胞期の胚は 80%以上1つ核を有した。2次処理群の倍数化率(4倍体率)
は 85% 以上で高かった。
以上の研究で初めて2次処理により第一卵割が阻止され、熱処理に用いた条件で高い率で染色体セッ
トが倍数化された。本研究で開発した2次処理の卵割阻止法により高い率で、確実に整4倍体や整ホモ
接合体2倍体の作出が可能となった。本研究の成果により水産育種に大きな貢献が期待できる。
3、卵割阻止の応用 ―
卵割阻止による新たな魚種複2倍体の作出
背景と目的:魚類の場合、人為的な種間交雑は容易である上、近年染色体の倍数化に関する研究が進ん
でいる。交雑と染色体の倍数化を組み合わせることで複 2 倍体を人為的に作られることが考えられる。
複2倍体は配偶子を形成する際姉妹染色体が相同染色体として振る舞い、妊性が回復する可能性がある。
かつ、次世代では遺伝的分離は起らない。兄妹交配によって、常に種間での対立遺伝子が維持される。
従って、2 つの種からこのような特性を持つ新たな種が生じる。魚類では雑種強勢や雑種の両方或は一
方の親種のメリットが良く利用されている。複2倍体化することによりこれらのよい形質が維持できる。
複2倍体とその親種の一方の交配で簡単かつさまざまな利点(不妊、生存、大型化、肉質の向上など)
45
を持つ雑種3倍体の大量の作出も可能になる。そこで、サケ科魚類の複2倍体の作出を試み、その生存
性と妊性を検討する。
材料と方法:ニジマス(♀)×アマゴ(♂)の受精卵の第一細胞周期に卵割阻止処理を行った。全卵に
対する孵化した稚魚の割合を孵化率とした。複2倍体の確認には受精後 10 日間前後の胚を用いて核型
分析を行った。1年後に複2倍体であることを体細胞の核の仁の数で確認した。妊性の確認には生殖腺
を用いて組織学的観察を行った。
結果:
孵化率は対照群の 60%以上に対して処理群は 7%であった。処理群は1齢魚まで2個体生存していた(全
卵:7365)。処理胚の核型分析によりほぼ 100%胚は倍数化され、処理胚は対照の2セット染色体を持っ
て、複2倍体であることが確認できた。処理群の1令の2個体はそれぞれの体細胞に4つの仁を有し、
4倍体であることを判明された。また、対照の1齢魚の配偶子の形成はザイゴテンとパキテン期に止ま
った。処理群の2個体の1齢魚は配偶子の形成が順調で、卵黄形成期に入った。妊性のあることが示さ
れた。本研究で核型や核の仁の数、生殖腺についての調査によって、サケ科魚類の生存性と妊性がある
複2倍体の作出が確認された。初めて卵割阻止処理により新たな種を人為的に合成することが成功した。
4、卵割阻止による4倍体化に用いる魚種の検討
背景と目的:
卵割阻止による染色体セットの倍数化には処理胚の生存率が非常に低い。卵割阻止処理により異数体や
無核細胞などの異常が出現し、生存率を低くする原因であることが知られている。また、ニジマスは原
来四倍体性の魚類であるため、卵割阻止処理による染色体セットを倍数化すると、八倍体に相当する。
魚類の場合は倍数性の上昇に伴いむしろ成長が不良になる可能性がある。そこで、本研究では、ニジマ
スの4倍体を用いてその可能性を検討し、卵割阻止に用いる魚種の選別に寄与した。
材料と方法:
実験群
ニジマス×ニジマス対照群、
ニジマス四倍体×ニジマス四倍体交配群
受精卵を 10℃で培養し、受精率、生存率、稚魚の形態などについて調べた。
結果:
対照群及び4倍体交配群のそれぞれの受精率は 90%以上であった。4倍体交配群の孵化期に無胚卵は約
30%で、対照群の 5%より高かった。孵化後 4 倍体交配群に水腫、充血、体軸の湾曲などの異常個体が
見られ、浮上できずに死亡した。その後の死亡も見られた。受精後5ヶ月頃、対照群の生存率は孵化用
の全卵に対して約 70%であった。しかし、4倍体の交配群は約 20%であった。4倍体交配群の異常魚を
組織学的に観察した結果、心臓などの発育不全を観察された。以上の結果は高倍数性も生存率を低下す
る原因の1つであることを示唆した。卵割阻止に用いる魚種について高倍数性のものをなるべく避けた
ほうがよいと提唱した。
46
電磁波遮蔽効果を有する金属磁性材料コーティングナノファイバー不織布
の作製と特性評価
(信州大学 SVBL
PD 研究員) 曽根原
誠
1.研究背景・目的
高度情報化社会の発展に伴い,GHz 帯を使用周波数とするパソコンや携帯電話など様々な情報通信機
器が普及している.これら情報通信機器には EMI(Electromagnetic Interference:電磁波障害)対策が重
要視されている.EMI 対策を行なわないと,電子デバイスより発生するノイズが他の電子デバイスに影
響し,誤動作を招き重大な障害や事故を引き起こしてしまう.特に,心臓ペースメーカーなどの医療機
器にも影響することから人命にも係わる深刻な問題である.情報通信機器内部では磁性薄膜を用いた
EMI 対策用ノイズフィルタ[1]などが開発されているが,心臓ペースメーカーなど医療機器への対策は不
十分であり,これらへの EMI 対策は急務である.
そこで筆者は,電磁波遮蔽効果を有する着衣に注目した.具体的には,エレクトロスピニング法によ
って作製される直径約 500~600 nm のナノファイバー不織布に電磁波遮蔽効果を有する金属磁性材料を
スパッタ法を用いてコーティングするものである.ナノファイバー不織布は,薄く軽量であり,通気性
を有し,かつ柔軟性に優れる.また金属磁性材料をコーティングすることで,電磁波を反射かつ吸収す
ることができると考えられる.本報告では,金属磁性材料コーティングナノファイバー不織布の作製方
法と電磁波遮蔽効果の測定結果について述べる.
2.実験方法
ナノファイバー不織布の材料には,Polyacrylonitrile (PAN) (Ardrich 製;平均分子量 150,000)と
N,N-Dimethylformamide (DMF) (Wako 製;試薬特級)を用いた.またナノファイバー不織布は,エレクト
ロスピニング法によって紡糸した.エレクトロスピニング用の紡糸液は,12 wt.% PAN/DMF を 70 ℃
で 6 h 攪拌し調製した.紡糸にはエレクトロスピニング装置(カトーテック㈱製;NEU-010)を用い,
印加電圧 12 kV,飛散距離 100 mm,室温および湿度 40 %未満の条件で行ない,時間は 1 h とした.
金属磁性材料には Ni-Fe (Ni83Fe17 (at.%))を用いた.コーティングには RF マグネトロンスパッタ装
置(ANELVA 製;SPF-313)を利用し,スパッタ法で行なった.到達真空度は 1.0×10-4 Pa 未満とした.
Ar 圧力 0.5 Pa,RF 電力 100 W,室温でナノファイバー不織布上にスパッタした.
3.測定方法
電磁波遮蔽効果には,ベクトルネットワークアナライザ
Vector network analyzer
(HEWLETT PACKARD 製;8510C),S パラメータ・テス
トセット(HEWLETT PACKARD 製;8515A),導波管コン
S-parameter test set
ポーネント(MILLIMETER PRODUCTS 製;418A, 435A,
Coaxial cable
HEWLETT PACKARD 製;S281A, G281A, J281A, X281A)
を使用した.
図 1 の測定系より測定される S パラメータから入力電力
Sample
Pin に対する反射電力 Pref,損失電力 Ploss,透過電力 Pthru を
Waveguide component
図 1 電磁波遮蔽効果測定装置の模式図
求めるためには次の(1)~(3)式を用いた[2].
入力電力に対する反射電力:Pref / Pin = 10 ( S11 [dB] / 20 ) 2
(1)
入力電力に対する損失電力:Ploss / Pin = 1-( 10 ( S11 [dB] / 20 ) 2 + 10 ( S21 [dB] / 20 ) 2 )
(2)
入力電力に対する透過電力:Pthru / Pin = 10
( S21 [dB] / 20 ) 2
47
(3)
図 2 入力電力 Pin に対する反射電力 Pref,損失電力 Ploss および透過電力 Pthru の周波数特性
(a) ナノファイバー不織布のみ,(b) 不織布に Ni-Fe を 15 min スパッタしコーティングした試料
図3
Ni-Fe の成膜時間 ts に対する入力電力 Pin に対する反射電力 Pref,損失電力 Ploss,透過電力 Pthru
4.結果および成果
図 2(a), (b)にナノファイバー不織布のみおよびその不織布に Ni-Fe を 15 min 間スパッタしコーティン
グした試料の入力電力 Pin に対する反射電力 Pref,損失電力 Ploss および透過電力 Pthru の周波数特性の測定
結果を示す.
図 2(a)より,ナノファイバー不織布のみの場合では,測定された周波数の範囲において,10 %程度し
か電磁波遮蔽効果が得られていないことが分かる.一方,図 2(b)より,ナノファイバー不織布に Ni-Fe
を 15 min 間スパッタしコーティングした試料では,測定された周波数の範囲において,約 90 %の電磁
波遮蔽効果が得られた.
図 3 に周波数 f = 5.8 GHz(ETC 機器の使用周波数)の場合における Ni-Fe の成膜時間 ts に対する入力
電力 Pin に対する反射電力 Pref,損失電力 Ploss,透過電力 Pthru の測定結果を示す.
図 3 より,測定された周波数帯において,Ni-Fe の成膜時間 ts が厚くなるに伴い,入力電力に対する
反射電力 Pref / Pin ならびに入力電力に対する損失電力 Ploss / Pin が増大し,入力電力に対する透過電力 Pthru
/ Pin が減少している.これは金属磁性材料による電磁波の反射および吸収による効果である.
5.参考文献
[1] M. Sonehara, T. Sato, K. Yamasawa, Y. Miura, and M. Yamaguchi, Trans. Mat. Res. Soc. Jpn., 29, 4, 1735-1738 (2004)
[2] M. Yamaguchi, K.-H. Kim, T. Kuribara, and K.-I. Arai, IEEE Trans. Magn., 38, 5, 3183-3185 (2002)
6.謝辞
本研究に有益なるご助言を頂戴した SVBL 教職員および関係者各位,桂博史氏に深謝致します.
48
骨髄細胞を用いた新たな血管新生療法の開発
(信州大学大学院医学系研究科循環器病態学分野)
柴
祐司
1.研究目的
動脈硬化を基盤として発症する虚血性心血管病は、わが国の死因の上位を占めており、より有効な治
療法の確立は重要な課題である.1997 年、血液中に血管に分化する血管内皮前駆細胞 (Endothelial
Progenitor Cell: EPC)が存在することが報告されたことを契機として重症虚血性疾患に対する細胞療法が
行われてきている.特に、重症虚血下肢への自己骨髄細胞移植の有効性と安全性はわが国の多施設共同
研究 (Therapeutic Angiogenesis using Cell Transplantation-1: TACT-1)で明らかとなった.しかしながら、こ
の治療法の問題点として、骨髄採取をする際に全身麻酔等の負担が生じることと、治療効果が十分でな
い症例が少なからず存在することが挙げられることから、より低侵襲で効率の良い治療法の開発が望ま
れている.そこで、この開発のために私は今年度、動物モデルを用いた以下の二つの研究に従事してき
た.
2.実験
(1)マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の傷害血管に対する作用検討
(2)ケモカイン Stromal Cell-derived Factor 1 (SDF-1)とその受容体 CXCR4 の相互作用の
血管新生への応用
3.結果および成果
(1)これまでに顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)や顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子
(GM-CSF)の血管新生作用については数多くの報告がなされているが、ごく最近、一部の EPC の起源
が骨髄中の単球であることが示された.M-CSF は日本において発見されたサイトカインであり、単球の
分化や成熟を促進し、さらに、G-CSF、GM-CSF 分泌促進作用をもっていることから、M-CSF の血管新
生作用には多くの研究者が期待を寄せていた.そこでマウス下肢に血管傷害を加え、その修復過程にお
ける M-CSF の作用検討を行った.Flow cytometry による解析では、M-CSF 投与で末梢血中の EPC は増
加せず、CXCR4 陽性細胞が増加した.傷害血管では CXCR4 のリガンドである SDF-1 が強く発現し、
M-CSF 投与群では、末梢血中に増加した CXCR4 陽性細胞と傷害血管の SDF-1 の相互作用により、傷害
後早期に動脈硬化が形成されることを初めて明らかにした.この研究はサイトカインを用いた血管再生
療法の臨床応用に警鐘を鳴らし、貴重な一石を投じた研究である.
(2)M-CSF 投与によって末梢血中に増加した CXCR4 陽性細胞は、動脈硬化の進行を誘導することが
明らかとなった一方、SDF-1/CXCR4 シグナルが、血管新生に重要な働きを果たしていることが報告され
るようになった.すなわち SDF-1/CXCR4 シグナルは、動脈硬化促進作用と、血管新生促進作用を併せ
持つことが示唆された.そこで我々は、CXCR4 陽性骨髄細胞を虚血部位に直接投与し、SDF-1/CXCR4
シグナルの虚血組織における役割と血流改善効果を検討することとした.我々は、通常の培養液による
短時間の培養により、骨髄細胞上の CXCR4 発現が特異的に増加することを発見した.そこでマウス下
肢虚血モデルを作製し、この CXCR4 陽性骨髄細胞または通常の骨髄細胞を虚血部位に直接投与した.
Laser Doppler 法を用いて、虚血部位の血流量を評価したところ、CXCR4 陽性骨髄細胞投与群では、通
常の骨髄細胞投与群に比べ有意に血流が改善していた.その作用機序を調べるために、まず虚血部位に
49
おける SDF-1 の発現を評価したところ、虚血部位の骨格筋周囲に SDF-1 の強い発現が確認された.次に
虚血部位の移植細胞数を Flow cytometry 法で検討したところ、移植後早期には CXCR4 陽性骨髄細胞群
でより多くの移植細胞の残存を認めた.しかしながら、移植後 3 週間後には、移植細胞は両群ともに虚
血部位にほとんど残存していないことが示された.更に CXCR4 陽性骨髄細胞は VEGF 等の血管新生因
子をより多く分泌することも明らかにした.これらの結果から CXCR4 陽性骨髄細胞は、虚血部位の
SDF-1 との相互作用により、より長く虚血部位に留まり、より多くの血管新生因子を分泌し血流を改善
することが明らかとなった.さらに移植後期に移植細胞がほとんど残存していないという結果から、こ
の治療においては、従来から考えられていた骨髄由来 EPC が血管内皮細胞に分化し直接的に血管新生を
促進するという機序は、主体的でないことが示唆された.この研究は、虚血下肢に対する骨髄細胞移植
治療において、CXCR4 陽性骨髄細胞が通常の骨髄細胞よりも血流改善効果が高いことを初めて報告し、
更にその機序についても明らかにした.
50
バンレイシ科アセトゲニン類の合成と構造活性相関
信州大学 SVBL 研究員(DC) 服部恭尚
1.研究目的
バンレイシ科アセトゲニン類は熱帯・亜熱帯産のバンレイシ科植物により生産される二次代謝産物で
あり、下記の一般構造により表される化合物群の総称である(Figure 1)。バンレイシ科アセトゲニンの生
物活性は抗腫瘍や殺虫、昆虫接触阻害、抗マラリアなど広範な活性が現在までに報告されている。また、
活性発現のメカニズムの一つとしてミトコンドリア電子伝達系の complex I を強力に阻害することが明
らかになっている。
R
R
O
m
OH
O
O
n
OH
Figure 1. Usual Structure of Annonaceous Acetogenins.
現在までに、種々の mono-THF 型および直鎖型アセトゲニン類の合成による構造活性相関を明らかに
してきた。次の段階として mono-THP 型アセトゲニン類の合成を行いさらに詳細な構造活性相関の研究
を行うことを目的とし、Pd(II)触媒を用いた立体選択的 THP 環形成反応を鍵反応に pyranicin (1)の合成研
究に着手した。
2.結果および成果
(−)-Muricatacin (2)を出発物質に数工程で環化前駆体 3 の合成を行った。Pyranicin 合成の鍵反応となる
立体選択的 THP 環形成反応に際し種々の条件を検討した結果、エステルの置換基にビフェニル、溶媒に
ジクロロメタン、触媒に Cl2Pd(CH3CN)2 を用い、−10 oC で反応を行った際に最も良い結果を得ることに
成功した。得られた THP 環 4 から Sharpless 不斉ジヒドロキシル化等の反応を経て THP 環部分 5 を合成
した。別途合成した 6 と 5 を反応させた後、数工程で pyranicin (1)の全合成を達成した(Scheme 1)。合成
した pyranicin (1)の complex I 阻害活性は mono-THF 型アセトゲニン類と比較すると若干低い値を示した
(annonacin: IC50 = 3.8 nmol/L, pyranicin (1): IC50 = 7.5nmol/L)。
OTBS
C12H25
C12H25
O
O
O
OH
OH
C12H25
3
MOMO
+
O
TBSO
Pd(II)
O
(−)-muricatacin (2)
C12H25
R
O
TBSO
O
4
HO
OH
O
C12H25
O
OH
OMOM
5
O
6
pyranicin (1)
Scheme 1. Synthesis of Pyranicin (1).
51
OH
O
O
ヨウ素を利用した有機/無機ナノコンポジットの創成とその特性
(信州大学大学院総合工学系研究科後藤研) 藤森
良枝
1.研究目的
近年、材料の高機能化が様々な分野で求められている。そのような背景のもと、高分子基材中に無機
微粒子を導入した有機/無機コンポジットが、高機能を有する高分子材料として盛んに研究されている。
高分子は成型加工性やハンドリング性が良く、無機成分は様々な機能性を持つという利点をそれぞ
れ持っているためである。
本研究では、ポリヨウ素イオンの高分子への易吸着性を利用して、繊維・フィルム・布などの高分子
基材を水溶液中へ浸せきさせるだけの簡便な方法で、ヨウ化銀(AgI)またはヨウ化銅(CuI)ナノ粒子
をこのような高分子基材中に導入し、導電性や抗菌・抗ウイルス性を付与した有機/無機コンポジット
を作製し、その特性評価を目的とする。
2.実験
[1] 高分子基材(フィルム、繊維、布など)をヨウ素ヨウ化カリウム水溶液(I2-KI aq.)に撹拌下で任
意の時間浸せきさせ、高分子基材にヨウ素を吸着させた後、蒸留水で軽く洗浄する.
[2] [1]で作製したヨウ素吸着シートを、硝酸銀水溶液(AgNO3 aq.)または塩化銅水溶液(CuCl aq.)に
任意の時間浸せきし、その後蒸留水で洗浄する.これにより AgI または CuI を導入した有機/無機コン
ポジットが作製できる.
3.結果および成果
本研究では、基材となる高分子を任意濃度のヨウ素-ヨウ化カリウム水溶液へ浸せき後、さらに硝酸
塩水溶液と反応させるという簡便な方法による、有機/無機コンポジット材料の作製法を見いだした。
この手法において、無機成分となる金属ヨウ化物の導入率は、濃度や温度、反応時間などによって任意
に調整できることがわかった。このようにして金属ヨウ化物を導入できた高分子は、ナイロン6、ナイ
ロン66、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、綿、レーヨン、羊毛、絹、ポリビニ
ルアルコール、ポリ(p‐フェニレンテレフタルアミド)(ケブラー)、ポリメタクリル酸メチル、ポリアク
リル酸となり、多岐にわたる導入が可能であった。一方、導入できなかった高分子は、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリテトラフロロエチレンであった。導入できなかった高分子の共通点は非極性であ
るということである。銀や銅の金属イオンの溶液が、高分子マトリックス中に浸透しなかったために、
高分子マトリックス中に導入したヨウ素と金属イオンが反応しなかったと考えている。
ヨウ化銀およびヨウ化銅は半導体であるため、高分子マトリックス中に導入することで、コンポジッ
トの導電性を絶縁体から半導体の領域まで自由にコントロールできた。その結果の一部として、ナイロ
ン6(Ny6)およびポリエチレンテレフタレート(PET)について、AgI および CuI を導入したコンポジ
ットの体積および表面抵抗率とそのときの金属ヨウ化物の導入量をまとめたものを、表 1 に示す。また
比較として、CuI、AgI、Ny6、PET のそれぞれ単体の値も示している。各コンポジットの抵抗率は金属
ヨウ化物単体の結果とほぼ同等かそれ以上の値となった。これらの値は,AgI を導入したコンポジット
は静電気分散材料として、CuI を導入したコンポジットは、導電性材料と使用できるオーダーの値であ
ったことから、このような静電防止材料としての使用が期待できる。
52
また、本研究において、AgI および
表1
各コンポジットの抵抗率と金属ヨウ化物の導入量
CuI には抗菌性があることが分かった。
さらに CuI は抗ウイルス性も示した。
試料
そこで、高分子基材として織物を使用
AgI
してコンポジット布を作製し、その抗
菌試験および抗ウイルス試験を行った。
表2には、レーヨン/CuI コンポジ
ット布についての抗菌試験の結果を示
している。無加工布では、培養後に菌
が増殖しているが、レーヨン/CuI コ
抵抗率
表面 (Ωcm-2)
wt%
2.4×106
-
-
1.3×10
5
PET/AgI
4.0×10
6
Ny6
~1011
PET
18
Ny6/AgI
CuI
Ny6/CuI
PET/CuI
金属ヨウ化物の重量増加
体積 (Ωcm)
cm)
6
105
7
4.0×10
5.1
-
0
5.9×10
15
~10
~10
1
1×10
2.8×10
0
1.4×10
1
0
-
2
145
2
7.2
1.6×10
7.8×10
ンポジットでは、菌数は<10となっ
ており、菌が死滅していた。Ny6/AgI
表2
レーヨン/CuI コンポジットの抗菌特性
についても同様の結果が得られた。こ
のことから、非常によい抗菌性をもつ
コンポジット布の作製に成功した。
レーヨン/CuI については、豚伝染性
胃腸炎ウイルス(TGEV : コロナウイル
ス) を使って、抗ウイルス試験をおこ
なった。急性の細胞毒性もなく、非常
に良い抗ウイルス性を示した。
以上のことから、ヨウ素を利用する
ことによって、非常に多岐にわたる高
分子・繊維材料に対して、後加工で金属ヨウ化物を導入でき、導電性や抗菌・抗ウイルス性を併せ持つ
機能材料の作製に成功した。AgI,CuI 成分は水に難溶解性であり、高分子マトリックス中に含まれて
いるため、静電防止材、固体電解質、抗菌材料として長期にわたっての使用が期待できる。
53
物理的・化学的改質による絹繊維の特性変化に関する研究
生命機能・ファイバー工学
D3
査
明
1.研究目的
近年,繊維産業においては健康・快適性の追求や地球環境問題の解決をテーマとして,生活用繊維
素材や産業用途の繊維資材の研究開発が活発になっており,市場もみすえた応用展開もはかられてい
る。新しい機能材料の開発に関連して,繊維の形態的変化や改質に関する研究が進んでおり,繊維表
面や繊維内部へのマイクロボイド,ナノポーラスといった微孔の付加も重要テーマとなっている。内
部にマイクロボイドを持つ繊維は,機能性材料を充填したり他の繊維と組み合わせることによって,
各種用途に向けた展開が行われている。
シルクの分野においても,健康や快適性を志向した消費者ニーズに沿って,多様で高度なシルク繊
維新素材の開発が極めて重要な課題となっている。天然タンパク質繊維であるシルクには,フィブロ
インおよびフィブリル間にマイクロボイドが存在している。シルク繊維に対して特殊な処理・加工を
行うことによって,シルク繊維の内部,表面に新たな多数のマイクロボイドを生じさせることができ
れば,これらの空隙に機能性物質を埋め込むことなど,充填基材として利用することも可能となる。
本研究では,シルク繊維に化学的処理,および物理的処理を加えることによって,繊維間の分繊を
促し,新たな形態,機能を持った絹素材の作出を目的とした。シルク繊維に塩縮処理や稀土類元素由
来の塩化物(LaCl3)によってシルク繊維を処理し,その構造変化,物性,機能の改良について分析
を行うと共に,その作用原理を明らかにした。これは新型機能性絹素材の開発に理論的根拠を提供し,
シルクの新用途開拓,およびシルク産業が今後発展するための重要な技術のひとつになるものと考え
る。
対象としたシルク繊維は,家蚕糸,および代表的な野蚕品種に由来する柞蚕糸を用いた。柞蚕糸は
家蚕糸に比べて元来ポーラスな内部構造を有している。
2.実験
(1) 稀土類元素の浸漬処理条件(濃度,処理温度,処理時間等調整)による物性変化の検証。
(2) 多種の絹素材(柞蚕糸,精練糸,塩縮糸,微溶糸繊維など)に対する改質処理効果の検証。
(3) 稀土類元素処理した絹素材の形態特性,構造特性,表面性能,力学的物特性の解析。
(4) 物理的な方法(冷凍処理,加熱処理,分繊処理等)による絹糸繊維の改質に関する検討。
(5) 稀土類元素処理及び物理的処理を行った絹素材を対象とした可充填性の検討及び複合材料の開
発。
3.結果および成果
(1)超音波処理を行うことによって,家蚕糸・柞蚕糸の表面に凹溝が観察された。また横断面には
若干のマイクロボイドの出現が確認できた。20 分程度の超音波処理過程によってシルク繊維の強伸
度物性も変化し,破断強度と伸長率は下降傾向を示した。繊維内部の分子形態は,超音波処理によっ
てもあまり変わらなかった。
(2)塩縮処理,微溶解処理した家蚕糸・柞蚕糸には,塩類イオンの侵蝕によって繊維のフィブリル
形状が変化し,表面には裂け目,横断面にはマイクロボイドの発生が確認できた。構造分析の結果,
処理したシルク繊維の大分子構造はβ構造からランダムコイルに転移し,繊維内部の構造も疎になっ
ていることが確認できた。力学特性については,破断強度と伸長率が若干上がる傾向を示した。
(3)稀土類元素由来の塩化物(LaCl3)による処理を行った家蚕糸・柞蚕糸の表面には,裂け目や
塊状物が観察され,横断面には明瞭なマイクロボイドが出現するとともに多くのフィブリル状繊維が
観察された。広角 X 線回折,FT-IR など物性分析結果から,LaCl3 処理した繊維の内部構造は,分子
54
鎖が不規則なランダムコイルからβ構造へ転移し,結晶化度も下がっていることが知られた。これに
よって繊維内部の構造が密になり,結果的に繊維の配向が増加した。力学特性は, LaCl3 の濃度を高
くするにつれて,家蚕糸の強伸度はやや大きくなり,弾性も上がる傾向を示した。
(4)稀土類元素由来の塩化物(LaCl3)処理に塩縮および微溶解処理を組み合わせた場合,家蚕糸
表面にも塊状物が観察され,その横断面には多くのマイクロボイドが確認できた。また繊維の内部構
造(分子構造)は変化し,結晶化度は下がったと考えられる。力学特性については, LaCl3 の濃度を
高くするにつれて強伸度は大きくなり,微溶解処理を組み合わせた場合,強伸度は逆にやや小さくな
る傾向を示した。この繊維表面の微細構造変化は新しい表面を形成し,この活性表面の形成は繊維新
素材の開発に役立つと考えられた。処理した繊維表面は,物理的な形状変化だけでなく,稀土類元素
塩化物(LaCl3)による化学的な変化も大きいことが認められた。こうした作用が繊維表面の活性を
強くし,表面の接着性,架橋などを高める効果も期待できる。
55
ラット心筋細胞における糖鎖結合分子の探索
(医学系研究科
臓器発生制御医学講座
循環器病態学分野, 信州大学 SVBL DC 研究員) 小林
聡
1.研究目的
生体内では、タンパク質や脂質などにさまざまな糖が連結して出来る糖鎖修飾が知られている. 心筋
細胞における糖鎖修飾の解明は、心筋組織での再生や炎症現象の新たな生理機能の解明や傷害心筋を標
的とする薬物輸送システムの確立において大変興味深い. 今回、我々は心筋細胞に発現する新規の糖鎖
結合分子の探索を行った. 今までに心筋細胞膜表面に発現する糖鎖結合分子の報告はない. このような
分子の同定は、心筋傷害部位への特異的な細胞・遺伝子・薬物輸送システムによる新たな再生医療が期
待される.
心筋傷害部位に対する治療として、骨髄幹細胞を利用した骨髄幹細胞移植療法が注目されている. こ
の治療法は、骨髄細胞を心筋傷害部位へ直接投与することで、心筋組織の修復や血管新生を促進して傷
害部位を治療するもので、その有効性は広く報告されている. しかしながら、骨髄細胞の採取や投与時
には、全身麻酔等の負担が生じるなど侵襲性が高いことや、移植した骨髄細胞が、心筋の傷害部位へ充
分に集積しないことが問題となっていた. そこで本研究では、骨髄細胞を効率良く心筋傷害部位へ集積
させる方法として、糖鎖及び糖鎖結合分子であるレクチンを用いる糖鎖工学を利用して、標的部位への
細胞輸送システムの開発に取り組んだ. 心筋細胞に存在する糖鎖結合分子を認識するように細胞表面の
糖鎖を改変させた骨髄細胞を全身投与で、効率よく心筋や血管に集積させることが期待できる. 本研究
により、骨髄細胞を効率良く心筋傷害部位へ集積させることで、現在行われている治療法の有効性を高
めながら、より患者さんに優しい、副作用や侵襲性を軽減した血管再生療法の開発が期待される.
2.実験
(ⅰ). ラット心筋細胞における新規糖鎖結合分子の探索
ラット新生仔心筋細胞の糖鎖に対する相互作用を検討するため、様々な糖鎖をポリマー化した糖鎖高
分子 PV(N-p-vinylbenzyl)-sugar を用いて相互作用の高い糖鎖を探索した. 次に心筋細胞からタンパク質
を抽出し、イオン交換カラムによって精製を行い、二次元電気泳動を行った. そして、FITC-PV-GlcNAc
を用いた Western Blotting により、GlcNAc に特異的に結合する分子を検討した. この二次元電気泳動よ
り得られたタンパク質のスポットについて、アミノ酸シークエンスによる内部配列解析により同定を行
った. さらに、その糖鎖結合分子が細胞表面において GlcNAc 認識するかを、免疫沈降法及び共焦点レ
ーザー顕微鏡による観察によって検討した. また、ビアコア®を用いて、同定した糖鎖結合分子の結合を
検討した. 最後に心筋細胞内で GlcNAc-GlcNAc 結合分子の相互作用がどのように機能するかを、GlcNAc
修飾リポソームを用いて、蛍光顕微鏡および電子顕微鏡による観察にて検討した.
(ⅱ). 人工的な糖鎖修飾を行った骨髄細胞の心筋組織へのターゲッティング法の開発
ラット骨髄細胞を採取し、糖鎖高分子との反応による細胞表面の糖鎖修飾を検討した. そしてその
GlcNAc を修飾した骨髄細胞とラット心筋細胞と共培養し、心筋細胞に対する接着能を検討した. また、
過酸化水素による傷害に対する骨髄細胞の心筋細胞に対する保護効果の検討を行った.
3.結果および成果
56
(ⅰ). ラット新生仔心筋細胞の糖鎖に対する相互作用を検討の結果、GlcNAc(N-acetylglucosamine)を末
端に持つ PV-GlcNAc が、心筋細胞に対して高い相互作用を示した. このことから心筋細胞表面には、
GlcNAc を認識する分子の存在が推測された. そして、心筋細胞からのタンパク質の二次元電気泳動を行
い、FITC-PV-GlcNAc を用いた Western Blotting による GlcNAc に特異的に結合する分子の検討により、
約 52 kDa で pI=5.1 付近に GlcNAc に特異的に結合するタンパク質の存在を確認し、
その分子の同定を行
ったところ、
細胞骨格タンパク質の desmin と vimentin であることが推測された. そして、desmin、vimentin
は共に細胞表面に存在し、GlcNAc を認識すると推測された. そして、ビアコア®を用いた検討からも、
共に GlcNAc に対する特異的な結合能を示した. さらに、糖鎖修飾蛍光リポソームの心筋細胞への取り
込みを検討したところ、GlcNAc 修飾を行ったリポソームにおいて、より効率的に心筋細胞へ取り込ま
れることが示され、その状況を電子顕微鏡にて観察したところ、desmin と vimentin を介して GlcNAc 修
飾リポソームが心筋細胞内へと取り込まれる様子が観察された. このことから、GlcNAc 修飾リポソーム
が心筋細胞へ効率的に取り込まれることが示された.
(ⅱ).骨髄細胞の人工的な糖鎖修飾の検討から、PV-GlcNAc による人工的な GlcNAc 修飾が可能である
ことが示された. そして、GlcNAc 修飾骨髄細胞とラット心筋細胞との共培養による接着能の検討から、
GlcNAc を修飾した骨髄細胞が心筋細胞に対して高い接着能を示した. また、今回使用している骨髄細胞
には、心筋細胞に対して保護効果を示すことが示された.
本研究により、心筋細胞において、GlcNAc-GlcNAc 結合分子相互作用を利用した薬物や細胞などの心
臓へのターゲティング法の構築の基礎となり、骨髄細胞を用いた心疾患に対する治療効果のメカニズム
の解明が期待される.
57
2. 支援研究
所属
研究テーマ
微生物群変動過程の環境 DNA を用いた解析
植物の糖転位反応の解析
研究者
(申請時)
繊維学部
佐藤 一昭、田口悟朗
応用生物科学科
下坂 誠
繊維学部
田口 悟朗
応用生物科学科
カイコの遺伝子の解析
繊維学部
塩見 邦博
応用生物科学科
レーザー加熱延伸による高性能繊維の開発
繊維学部
大越 豊
繊維システム工学科
多環芳香族基を導入したナイロン 6/VGCF-S からな
繊維学部
るコンポジット繊維
繊維システム工学科
大学院工学系研究科
後藤 康夫
内堀 恵太
繊維システム工学専攻
エネルギー散逸を抑制した大変形駆動材料の開発
繊維学部
山本 圭一
- SBP 含有 PVC 膜の光と電場による駆動 -
素材開発化学科
平井 利博
SVBL
高崎 緑
繊維学部
白神 信吉、山田竜二、
素材開発化学科
平田 雄一濱田 州博
繊維学部
村上 泰
繊維の染色性に関するレーザー共焦点顕微鏡研究
レンズ用高屈折率酸化チタンの開発
精密素材工学科
有機色素と無機半導体を複合化した LB 膜の製造と
繊維学部
光機能
精密素材工学科
炭化ポリアニリンナノチューブの電気伝導特性
繊維学部
宇佐美 久尚
滝沢 辰洋
精密素材工学科
家庭用電子レンジによる有機金属錯体からカーボ
大学院総合工学研究科
太田 和親
バイオエンジニアリングに関連した生体材料の研
繊維学部 感性工学科
藤井 敏弘
究開発
繊維学部 機能機械学科
小林 俊一
3 次元形状データを用いた個人対応衣服
繊維学部
高寺 政行
ンナノチューブを高速合成するための最適条件
感性工学科
腕時計の装着性に関する感性工学的研究
繊維学部
川崎 有加、猪飼 万由子
〜女性の手首形態3次元データベース作成のため
感性工学科
細谷 聡
繊維学部
Michael Honywood
の手首3次元形状計測〜
感性視聴覚教育研究センター
感性工学科
58
微生物群変動過程の環境 DNA を用いた解析
(繊維学部応用生物科学科)
佐藤一昭、田口悟朗、下坂
誠
1.研究目的
自然環境中で物質循環に重要な役割を果たしている微生物群の動態を解明するため、環境由来サンプ
ルから培養を経ずに直接調製した環境 DNA を用いた解析を行う。今回は、自然環境中のキチン分解微
生物群を出発材料にして、キチンを効率よく分解できる安定な細菌群を構築し、構成する細菌種を DNA
解析から推定した。
2.実験
千曲川流水、上田城堀水および繊維学部付属農場に設置したキチンフレーク表面に付着した微生物群集を
混合してスターターとし、継代培養 (25℃, 150 rpm) をおこなった。培地として、キチンパウダー (0.2 %)
を唯一の炭素源として含む合成培地を用い、培地中のキチンパウダーが消失するタイミングで培養液 100 分
の 1 量を植え継ぎに用いた。各代の培養液中に存在する細菌群集の構造を 16S rRNA 遺伝子の一部をターゲッ
トとする PCR-DGGE 法によって可視化した
3.結果および成果
継代を繰り返すにつれてキチンパウダーの消失は早くなり、最終的には植え継ぎ後およそ 30 時間で培地中
のキチンパウダーが消失した。PCR-DGGE 法によって細菌群の構成を調べたところ、13 代目以降でバンドパタ
ーンに変化は見られなかったことから、細菌群集構造は安定化したと判断した(Fig. 1)。
安定化した細菌群集から、コロイダルキチン (0.2 %) を唯一の炭素源として含む合成寒天培地および LB
寒天培地を用いて細菌を分離した。16S rRNA 遺伝子の一部をターゲットとして配列解析をおこない、得られ
た配列を BLAST 検索にかけて細菌種を推定した 。PCR-DGGE 法によって得られたバンドを元の細菌群集のバ
ンドパターンと比較したところ、単離された 5 種のうち 4 種が元の細菌群集のバンドと一致した。また、単
離された 5 種のうち 4 種がそれぞれ単独でキチン資化能を示した。
4.学会発表
○佐藤 一昭,安座間 安仙,吉田 智,小平 律子,下坂 誠:各種環境中でフレーク状キチン表面に付着す
る微生物群の PCR-DGGE を用いた解析、日本農芸化学会 2007 年度大会講演要旨集(2007 年 3 月、東京)
○安座間 安仙,佐藤 一昭,吉田 智,小平 律子,下坂 誠:キチン投与土壌における細菌キチナーゼ遺伝
子群の環境 DNA を指標とした解析、日本農芸化学会 2007 年度大会講演要旨集(2007 年 3 月、東京)
佐藤一昭,安座間安仙,小平律子,○下坂 誠:キチン投与土壌における微生物群およびキチナーゼ遺伝
子群の環境 DNA を指標とした解析、キチン・キトサン研究、12(2007 年7月、神戸)
59
植物の糖転位反応の解析
(繊維学部応用生物科学科)田口
悟朗
1.研究目的
植物における糖転位反応などのフェノール性化合物の代謝に関わる反応を解明し、さらにそれらの
反応を利用した物質変換を行うことを目的として、植物に蓄積されている化合物の解析、反応に関
わる酵素遺伝子の取得、および酵素反応解析を行った。
2.実験
LC−MS装置による、植物の代謝産物の解析ならびに、種々の代謝関連酵素遺伝子配列の解析を
行った。
3.結果および成果
1. フェノール性化合物を投与した植物をメタノール抽出し、LC-MS 装置で解析した。その結果、
投与したフェノール性化合物にグルコースおよびアシル基が付加された物質、および、ヘキソース
2 分子が付加された物質として植物体内に蓄積されていることを確認した。
2.上記反応に関わるシロイヌナズナのアシル化酵素遺伝子や、サツマイモの糖転位反応に関わる
酵素遺伝子を単離し、それらを大腸菌で発現させた組換え酵素を用いて酵素学的解析を行った。
4.学会発表
・産形峰久、小林裕希、栗木祥伍、野末はつみ、林田信明、田口悟朗、タバコにおけるフェノール
性異物配糖体の培地への放出の解析。第25回日本植物細胞分子生物学会千葉大会・シンポジウム
講演要旨集 p114(2Ba4)、千葉、2007 年 8 月
・小林裕希、井上和義、野末雅之、田口悟朗、サツマイモ Ipomonea batatas の t-桂皮酸類配糖化酵
素の解析。第25回日本植物細胞分子生物学会千葉大会・シンポジウム講演要旨集 p113(2Ba3)、
千葉、2007 年 8 月
・田口悟朗、産形峰久、小林裕希、高樋真希、野末はつみ、林田信明、フェノール性異物に対する
シロイヌナズナのマロニル化反応の解析。2008 年度日本農芸化学会大会(2A17p19)、名古屋、2008
年3月
60
カイコの遺伝子の解析
(繊維学部応用生物科学科) 塩見邦博
1.研究目的:カイコのもつ有用遺伝子の配列決定を DNA シークエンサーを用いて行う。特に休眠誘
導に関連する遺伝子の同定を行う。
2.実験:休眠誘導に関連する遺伝子をカイコよりクローニングし、塩基配列を決定した。
3.結果および成果:カイコの温度センサー遺伝子群や休眠ホルモン放出抑制候補遺伝子群の配列を決
定することが出来た。
4.学会発表:
1) Sato, A., Uehara, H., Fukushima, Y., Hirabayashi, M., Kajiura, Z., Nakagaki, M., Shiomi, K. ; Molecular
cloning and expression analysis of thermoTRP homologs of the silkworm, Bombyx mori. ; Asia-Pacific Congress
of Sericulture and Insect Biotechnology (APSERI 2008 NAGOYA), Nagoya, 2008. 3.21-22.
2) Uehara, H., Sato. A., Fukushima, Y., Shiomi, K., Kato, Y. ; Molecular cloning and functional analysis of
cDNA encoding the dipause hormone on diapause induction and seasonal polyphenism in the Orgyia thyellina ;
Asia-Pacific Congress of Sericulture and Insect Biotechnology (APSERI 2008 NAGOYA), Nagoya, 2008.
3.21-22.
3) 福島義久・梶浦善太・中垣雅雄・塩見邦博・田中良明・安河内祐二;カイコの様々な細胞での reaper
発現による DH 放出抑制細胞の探索;日本蚕糸学会第 77 回大会講演要旨集, 39, 2007.
4) 上原裕史・梶浦善太・中垣雅雄・塩見邦博;ヒメシロモンドクガにおける休眠ホルモン cDNA の同
定と多様な季節的多型の誘導;日本蚕糸学会第 77 回大会講演要旨集, 39, 2007.
5) 上原裕史・加藤義臣・梶浦善太・中垣雅雄・塩見邦博;ヒメシロモンドクガにおける多様な季節的多
型の誘導とホルモン作用;昆虫 DNA 研究会第 4 回研究集会, 2007.5.3.
6) 福島義久・上原裕史・安河内祐二・梶浦善太・中垣雅雄・塩見邦博;カイコの GABA 性神経の脳内
分布と休眠ホルモン分泌への関与;日本蚕糸学会中部支部講演集第 63 号, 5, 2007.
7) 佐藤
梓・福島義久・上原裕史・梶浦善太・中垣雅雄・塩見邦博;カイコの ThermoTRP 相同体の cDNA
の全塩基配列の決定と様々な組織でのタンパク質の蓄積;日本蚕糸学会中部支部講演集第 63 号, 7,
2007.
8) 佐藤 梓・平林麻利子・梶浦善太・中垣雅雄・塩見邦博;カイコの温度センサー (ThermoTRP) 遺伝
子群の高温・低温による発現量の増加;第 30 回日本分子生物学会年会、第 80 回日本生化学会大会合
同大会講演要旨集, 653, 2007.
9) 上原裕史・佐藤
梓・福島義久・梶浦善太・中垣雅雄・塩見邦博・加藤義臣;ヒメシロモンドクガの
FXPRL アミド受容体のクローニングと発現解析;日本蚕糸学会第 78 回大会講演要旨集, xx, 2008.
5.投稿論文:
1) Shiomi, K., Fujiwara, Y., Yasukochi Y., Kajiura Z., Nakagaki M., Yaginuma, T. ; The Pitx homeobox gene in
Bombyx mori: Regulation of DH-PBAN neuropeptide hormone gene expression. ; Mol Cell Neurosci. 34, 209-18,
2007.
61
レーザー加熱延伸による高性能繊維の開発
(繊維学部繊維システム工学科) 大越豊
1.研究目的
繊維製造過程にレーザー光照射加熱を適用することにより、高強度繊維、極細繊維等の高性能繊維を
開発する。
2.実験
レーザー光照射と複合紡糸の組み合わせ、レーザー光照射と電界紡糸の組み合わせ、レーザー光照射
によるものフィラメントの高強度化
3.結果および成果
サイドバイサイド型複合紡糸とレーザー延伸の組み合わせによる高強度 PET 繊維、レーザー加熱延伸によ
る高強度 P(LLA/CL)縫合糸の開発、溶融エレクトロスピニングにおける電場が繊維の分子配向におよぼす影
響の評価等。
4.出願特許
なし
5.学会発表
・ サイドバイサイド型複合紡糸とレーザー延伸によって作製したポリエチレンテレフタレート繊維の力学物性:
繊維学会予稿集 2007 62 巻 1 号 249-249 2007:中村文彦, 仲田一尋,大越豊,奈倉正宣,後藤康夫,高田
悟史,鞠谷雄士
・ レーザー加熱延伸による高強度 P(LLA/CL)縫合糸の開発:繊維学会予稿集 2007 62 巻 1 号 250-250 2007:
遠藤雅紀、黒田幸司、伊香賀敏文、大越豊、後藤康夫、奈倉正宣、鴻野勝正、中井浩一
・ 複合溶融紡糸とレーザー延伸によるポリエチレンテレフタレート繊維の高強度化:2008 年度繊維学会秋季
研究発表会 62(3):101:仲田一尋,中村文彦,大越豊,後藤康夫,奈倉正宣,高田悟史,鞠谷雄士
・ ポリビニルアルコール(PVA)繊維の炭酸ガスレーザー延伸:成形加工シンポジア'07 219-220 2007
三船麻記,伊香賀敏文,大越豊,後藤康夫,奈倉正宣
・ 溶融エレクトロスピニングにおける電場が繊維の構造に及ぼす影響:プラスチック成形加工学会 成形加工
'07 279-280 2007:仲田一尋,高崎緑,藤井健司,小川雄大,符浩,小木曽祐介,大越豊,木村睦,平井利
博,後藤康夫,奈倉正宣
・ The Influences of Electric Field on the Structure of Melt Electrospun Fiber:The 4th International Conference
on Advanced Fiber/Textile Materials 2007 in Ueda 126-127 2007:K. Nakata, M. Takasaki, S. Kinugawa, H.
Fu, K. Morie, Y. Ohkoshi, M. Kimura, T. Hirai, Y. Gotoh, M. Nagura
・ Poly (ethylene terephthalate) Nanofiber Made by Sea-islands Type Conjugated Melt Spinning and
Laser-heated Flow Drawing: International nano-fiber symposium 2007::Kazuhiro Nakata, Kenji Fujii,
Yutaka Ohkosh, Yasuo Gotoh, Masanobu Nagura, Miyuki Numata, Mie Kamiyama
・ レーザー延伸した PVDF モノフィラメントの構造と物性:第 16 回ポリマー材料フォーラム 69-69 2007::伊香
賀敏文、小沼光、大越豊、後藤康夫、奈倉正宣、増村信之、穀野裕司
・ レーザー延伸した P(LLA/CL)モノフィラメントの力学物性および直径ムラ:第 16 回ポリマー材料フォーラム
70 2007:伊香賀敏文、遠藤雅紀、大越豊、後藤康夫、奈倉正宣、鴻野勝正、中井浩一
・ エレクトロスピニングによって作製したポリエーテルサルフォンフィルターの性能評価:繊維学会予稿集 2007
62 巻 1 号 30 2007:仲田一尋,Seong Hun KIM,大越豊,後藤康夫,奈倉正宣
6.投稿論文
・ Electrospinning of poly(ether sulfone) and evaluation of the filtration efficiency, SEN-I GAKKAISHI, 63,
(12), 307-312 2007 Nakata, K; Kim, S H; Ohkoshi, Y; Gotoh, Y; Nagura, M
・ Poly(ethylene terephthalate) nanofibers made by sea-island-type conjugated melt spinning and laser-heated
flow drawing, Macromolecular Rapid Communications, 28, (6), 792-795, 2007, Nakata, K; Fujii, K; Ohkoshi,
Y; Gotoh, Y; Nagura, M; Numata, M; Kamiyama, M
62
多環芳香族基を導入したナイロン 6/VGCF-S からなるコンポジット繊維
(繊維学部繊維システム工学科) 後藤
康夫
(大学院工学系研究科繊維システム工学専攻) 内堀
恵太
1.研究目的
カーボンナノファイバー(CNF)は,高強度・高弾性率,導電性など優れた特性を有することから様々
な応用が検討されている.我々は,これまで CNF の一つである気相成長カーボンファイバーVGCF(Vapor
Grown Carbon Fiber,直径 150nm)を用いてナイロン 6 とのコンポジットの作製を行ってきた.この際,
VGCF の分散性向上のため,多環芳香族基であるペリレン基を有するペリレンテトラカルボン酸二無水
物(PTCDA)を少量導入しナイロン 6 と共重合させると,ペリレン部が VGCF のグラフェンシートと π-π
相互作用により吸着し,結果的に VGCF の分散性の向上が見られた.また更なる分散性の向上のためコ
ンポジット中に残存する VGCF の凝集物の解砕を溶融混練により行った後,溶融紡糸により繊維化し物
性を比較することを目的として検討を行った.本研究では,VGCF よりもさらにアスペクト比の高い
VGCF-S を使用し,同様の実験を行った.
2.実験
ナイロン 6/VGCF-S コンポジット作製方法は,ナイロン 6 モノマー(ε-カプロラクタムおよび 6 アミノ
カプロン酸),VGCF-S,PTCDA の混合物を約 90℃に加熱し,回転数約 12000 のブレンダーを約 3 分間
使用することにより重合前に試料を均一に撹拌させた.その後,240℃で 6 時間,続いて 260℃で 2 時間,
窒素雰囲気下,低速(約 20rpm)で撹拌しながら重合を進める in-situ 重合によりコンポジットを作製した.
この際,VGCF の含有量を 0,0.01,0.1,1,3wt%と変化させ,PTCDA をペリレン部の面積(約 51Å2)
に基づき導入するペリレン部による VGCF-S 表面の被覆率が 50%になるように導入した.重合後,
VGCF-S の分散性の向上のため,ラボプラストミル 30C150 を用いて,260℃,100rpm,7min で溶融混練
を行った.作製した試料を N2 下 260℃で溶融紡糸を行い,その後 N2 下 180℃で 6 倍延伸を行った.
3.実験結果
Fig.にナイロン 6/VGCF-S/PTCDA コンポジット
900
繊維の強度を示す.この結果から VGCF-S 含有量
800
維と比較して約 35%増加した.これは,VGCF-S の
最適含有量が 0.1wt%付近に存在することを示して
いると考えられる.また 0.1wt%のコンポジットは光
学顕微鏡観察により良好な VGCF-S の分散性を確認
している.0.01wt%のコンポジットについては,
VGCF-S が不純物となってしまい強度が向上しなか
ったと考えられる.1,3wt%についても、ナイロン
6 単体繊維と比較して強度は同等か,それ以下とな
700
Strength (MPa)
0.1wt%の時に最大の強度を示し,ナイロン 6 単体繊
600
500
400
300
200
100
0
0
0.0
VGCF
1
0.
3
content
Fig. Strength of composite
ってしまった.これは,重合前のブレンダーを使用する際に VGCF-S の含有量が多くなると粘度が高く
なり,効果的に分散できなかったため強度が低下してしまった可能性がある.今後の予定として,1wt%
以下の VGCF-S 導入量で更なる最適条件の検討や熱安定剤の添加による紡糸安定性の検討を行う.
63
エネルギー散逸を抑制した大変形駆動材料の開発
- SBP 含有 PVC 膜の光と電場による駆動 (繊維学部素材開発化学科)山本圭一、平井利博(SVBL)高崎緑(TTRI)Bencheng Israel Lu
1.
研究目的
当研究室では、フォトクロミック化合物である
スピロベンゾピラン(SBP)を含有したポリ塩化ビ
ニル(PVC)膜の光誘起非対称性や各種の可逆的光
応答挙動について報告してきた。また可塑剤含有
PVC 膜の電場による駆動についても検討した結
果、アメーバ様のクリープ変形を示すことが明ら
かになっている。そこで本研究では SBP 含有 PVC
膜の光と電場を組み合わせた駆動について検討
した。
2. 実験
SBP含有PVC膜の作製
PVC:フタル酸ジブチル(DBP)=10:90 wt%の溶液を
テトラヒドロフランに溶解したのち、SBP を 3.6
wt%となるように加え撹拌した。撹拌は遮光して
行った。撹拌後、溶液をテフロンシャーレにキャ
ストし、乾燥機中に約 30oC で 2~3 日放置して SBP
含有 PVC 膜を作製した。この膜を縦 15 mm×横 5
mm に切り出し、サンプルとした。また、比較と
して SBP を含有しないサンプルも同様の手順で
作製した。
UV-VISスペクトル測定
SBP 含有 PVC 膜である SD90 の UV-VIS スペクト
ルを測定した。リファレンスには SBP 非含有 PVC
膜である D90 を使用した。
変位量測定
サンプルに電圧を印加したのち、紫外光(UV)(波
長 300-400 nm)を照射し、変位センサを用いてサ
ンプルの厚さ方向の変位量(曲げ変位量)を測定し
た。同時に微小電流計を用いて電流値も測定した。
3. 結果・成果
Fig. 1 に SBP 含有 PVC 膜 (SD90)の UV-VIS スペ
クトル測定の結果を示す。UV 照射後、サンプル
は約 450 nm から約 650 nm の範囲で吸光度が増大
した。これは開環型 SBP に由来する吸収帯に対応
する。Fig. 2 に 500 V を印加した後に、UV 照射を
行った際のサンプルの変位量と電流値を時間に
対してプロットした結果を示す。変位量は電圧印
加直後に急激に増加し、その後飽和する傾向が見
られた。5 分後の変位量は約 300 μm に達した。そ
の後、電圧印加とともに UV を照射すると、変位
量は緩やかに増加し、UV 照射後約 3 分で 100 μm
ほど増加した。この結果より、SBP 含有 PVC 膜
は電圧印加と光照射を組み合わせることで、より
大きな駆動が得られること明らかとなった。
4. 学会発表
International Nanofiber Symposium 2007
The 6th China International Silk Conference
第 56 回高分子学会年次大会
64
第 18 回プラスチック成形加工学会年次大会
平成 19 年度繊維学会年次大会
第 56 回高分子討論会
平成19年度繊維学会秋季研究発表会
第 16 回ポリマー材料フォーラム
第 68 回応用物理学会学術講演会
第 24 回「センサ・マイクロマシンと応用システ
ム」シンポジウム
5. 特許出願
特願 2007-074967(センサ)
特願 2007-267670(センサおよびその製造方法)
Fig. 1 UV-VIS spectra
UV
500V ON
500V OFF
Fig. 2 Time courses of displacement and current of
SD90.
繊維の染色性に関するレーザー共焦点顕微鏡研究
(繊維学部素材開発化学科)
白神信吉、山田竜二、平田雄一、濱田州博
1.研究目的
繊維の染色性を評価するためには、繊維断面の染色結果を評価し、内部まで染色されたかどうかを見
極める必要がある。走査型共焦点レーザー顕微鏡は、装置準備や試料の前処理が不要で、試料をそのま
まステージへ置けば測定が可能な顕微鏡で、リアルタイムに高解像観察、高精度計測が可能である。さ
らに、明視野をはじめ、暗視野やレーザー微分干渉などの多彩な観察方法で、よりリアルな試料の解析
が簡単に行える。本研究では、直接染料で染色した綿糸のレーザー共焦点顕微鏡写真を撮影する前段階
として直接染料綿糸の染色について詳細に検討した。
2.実験
図 1 に示す直接染料 C. I. Direct Blue 1(以下 Blue 染料)を使用した。直接染料は、東京化成工業より
購入し、精製後純度を確認し、使用した。直接染料を純水に溶解し、調製した溶液に綿糸を浸し、染色
を行った。その際、助剤として無機塩あるいはボラ型電解質(図 2)を添加した。染料収着量は、綿糸
から染料をソックスレー抽出し、その濃度を測定することにより決定した。
3.結果および成果
Blue 染料を綿糸に染色す
る際に使用した助剤の濃度
H3CO
NH2 OH
NaO3S
OCH3
N N
により染料収着量を大きく
OH
NH2
SO3Na
N N
変化した。無機塩として使
用した臭化ナトリウム
(NaBr)及び硫酸ナトリウ
SO3Na
SO3Na
図 1 使用した直接染料(C. I. Direct Blue 1)
ム(Na2SO4)の場合には、
+
N (CH2)n
添加濃度ともに染料収着量は直線的に増加した。
これに対して、ボラ型電解質の場合には、ある濃
-
より解析した結果、無機塩の場合には分配型の収
図 2 使用したボラ型電解質
着が、ボラ型電解質の場合には Langmuir 型の収
16
14
ラ型電解質は、綿の中で収着座席を提供し、そこ
12
に染料が染着したと思われる。このため、低濃度
10
106CF / mol g-1
着が起こっていることが分かった。すなわち、ボ
果が大きいが、高濃度領域では逆に小さくなった
-
DCPyn (n = 4, 6, 8)
ついて、収着等温線を測定し、二元収着モデルに
領域では、ボラ型電解質の方が促染剤としての効
+
Br
Br
度以上で染料収着量は一定となった。この結果に
N
と考えられる。
NaBr
Na2SO4
DCPy4
DCPy6
DCPy8
8
6
4
2
今後、レーザー共焦点顕微鏡によりどのように
0
染料が収着しているかを調査し、無機塩とボラ型
0
電解質が助剤としてどのように効果が異なるか
2
4
2
6
8
10
-3
10 CBL / mol dm
を詳細に検討する予定である。
図 3 染料収着量の助剤濃度依存
65
12
レンズ用高屈折率酸化チタンの開発
(繊維学部精密素材工学科)
村上
泰
1.研究目的
デジタルカメラや液晶プロジェクター等の小型光学器機の普及にともない、色収差を取り除く
ための凹レンズを含む複数のレンズ群からなる光学系を小型化することが求められている。光学系
の小型化には高屈折率の凹レンズが不可欠であるため、高屈折凹レンズの需要が近年急速に伸び、
レンズ用高屈折率ガラス材料が非常に大きな市場を持つようになった。
伝統的に、レンズ用ガラス材料の高屈折率化はガラス材料に鉛を添加することにより行われてき
たが、近年、環境への配慮から鉛の使用が大幅に制限され、鉛添加高屈折率レンズ用ガラスの製造
が困難になりつつある。これに変わって現在大規模に生産されているのが酸化チタンを添加するこ
とによって高屈折率化を行ったレンズ用ガラス材料であり、鉛フリーで高い屈折率が発現する。し
かしながらこの材料は 400〜500 の可視光領域に吸収を持つため黄色の着色が生じ、鉛含有レンズ
ほどの良好な特性が得られておらず、着色のメカニズムもよく分かっていないのが現状である。
本研究では、酸化チタン含有高屈折率光学ガラスの着色機構を提案するとともに、ゾルゲル技術
を用いた酸化チタンの複合化プロセス新たに導入することによって着色を低減し、光学特性をより
向上させることを目的とする。
2.実験
チタンアルコキシド溶液からゾルゲル法によって低次元な酸化チタン複合体を合成した。合成し
た低次元の酸化チタン複合体をガラス成分に混ぜて溶融させ、レンズを作製した。
3.結果および成果
チタンアルコキシド溶液からゾルゲル法によって合成した低次元な酸化チタン複合体を酸化チ
タン成分としてレンズを作製することによって、高屈折率でかつ黄色の着色を低減することを可能
にした。これに対して、ガラス成分として用いる前に、550℃で加熱することによって低次元な酸
化チタン複合体に含まれる有機物を取り除いた場合は、作製したレンズの着色がほとんど低減しな
かった。これらの結果から、着色の低減に低次元成長した酸化チタンに、低次元性を保持するため
の成分が複合化していることが、着色の低減に必要であると考えられる。
4.出願特許
出願日:平成 20 年 2 月 6 日
出願番号:特願 2008-25971
出願人:㈱コシナ、信州大学
名称:レンズの製造方法及びレンズ
66
有機色素と無機半導体を複合化した LB 膜の製造と光機能
(繊維学部精密素材工学科) 宇佐美久尚
1.研究目的
両親媒性分子を積層したLangmuir-Blodgett
膜(LB 膜)は、効率的な光電子移動に適した
凝集
階層型反応場として期待されてきた。膜構造の
縮合
安定性と積層方向の電子伝達を両立するLB膜
は層状チタン酸のナノシートの例が知られて
図1
いるが、部分的にナノシートが重なる点を克服
複合 LB 膜の製造プロセス
できれば電子移動を制御する上で好ましい。本研究では、新たな酸化物半導体層としてLBトラフの気液
界面で無機層を縮合する手法により酸化ルテニウムとの複合LB 膜を作製し、その膜構造とエネルギー
準位幅を測定した。
2.実験
水酸化ルテニウムの水溶液表面にステアリン酸(SA)のクロロホルム溶液を展開し、界面で形成され
るルテニウムイオンとステアリン酸の複合単分子膜を作製した。酸化ルテニウムの前駆体として塩化ル
テニウムを検討した。塩化ルテニウム水溶液の表面にステアリン酸のクロロホルム溶液を展開し、π-A
等温曲線および製膜条件の最適化をすすめた。得られた膜をガラス、FTO透明導電ガラス、およびシリ
コンウエハ上に製膜し、それぞれ、透過吸収スペクトルとX線回折、表面構造観察(AFM)を測定した。
3.結果および成果
π-A等温曲線と累積比から二分子膜構造を単位とするY
1000
型累積膜と判断された。累積した複合膜の紫外可視吸収スペ
800
クトルを測定すると、焼成により長波長側に新たな吸収帯が
600
観測された。長波長端の波長から求められるエネルギー準位
/ nm
幅は、製膜直後の膜で2.3eVであったが400℃焼成後には2.5
400
eV に拡大した。シリコンウエハ上に製膜された膜のXRD観察
200
により、焼成前には4.6 nmの間隔を持つ層状構造が観測され、
累積比から求められた構造解析からステアリン酸の2分子膜
型骨格を持つことが示唆された。これらの準位の帰属には光
電流、UPS等の詳細な解析が望まれる。得られた膜を焼成す
ると面間の規則性に基くX線回折ピークは消失し、ステアリ
0
200
0
5.4 nm
4.0 nm
図 2 5 層積層膜の AFM 像
ン酸層の消失ともなって積層構造が大きく乱れたと考えら
れる。しかし、in-planeのX線回折では面内の規則性が確認され、特に焼成後には明確な酸化ルテニウ
ムの回折が確認された。従って、積層方向の規則性は乱れながらも層状酸化ルテニウムが生成したこと
が分かった。一方、焼成前後の膜の表面構造をAFMにて観察すると、焼成前に表面粗さ5 nmであったが
焼成後には3 nmとなり、焼成により若干ながら平滑性が高まる傾向が見られた。焼成により有機層が焼
失することが積層構造に大きく影響することが判った。
67
4.出願特許
なし
5.学会発表
1)宇佐美久尚・得丸光夫・鈴木栄二, 水酸化コバルトと長鎖アルキルカルボン酸を複合化したLB 膜
の作製と半導体特性の評価、日本化学会代88春季年会 4L739, 2008/3/26-30 立教大学.
2)大野達也、宇佐美久尚、鈴木栄二、酸化物半導体と長鎖アルキルカルボン酸を複合化した LB 膜の
作製と光電流測定、2007 光化学討論会
3P93,2007/9/26-28 信州大学
68
炭化ポリアニリンナノチューブの電気伝導特性
(繊維学部精密素材工学科) 滝沢辰洋
1.研究目的
導電性高分子の1つであるポリアニリン(PANI)ナノチューブの炭化度と電気伝導の関係については
詳細には言及されていない。特に炭化された PANI の電気伝導の温度依存性について調べることは炭化
度に伴う電気伝導機構の変化を解明するのに重要である。PANI ナノチューブに 2.45GHz のマイクロ波
を照射すると照射に伴って温度上昇が観測されるが、ある温度以上には加熱されないことがわかった。
この事実は、温度変化に伴う PANI の電気的性質の変化を意味する。また電気抵抗の温度依存性を測定
することで、炭化度による電気伝導機構の変化を確認した。
2.実験
モノマーとしてアニリンを、ドーパントとしてカンファースルホン酸を、重合開始剤にペルオキソ二
硫酸アンモニウムを用いて PANI ナノチューブを合成した。
それを窒素雰囲気下において 100℃、200℃、
…、1200℃と 100℃間隔で変えて、それぞれ 30 分間焼成した。焼成物を TEM, SEM で形態を観察し、
粉末 XRD により結晶状態の変化を評価した。また SVBL の顕微ラマン分光器を用いて焼成物の変化を
観察した。さらに電気抵抗の室温以下での挙動を詳細に測定し、大気中での仕事関数測定を行った。
3.結果および成果
300℃までの温度で焼成したものはホッピングと呼ばれるメカニズムでの電気伝導特性を示すが、
300℃から 500℃の焼成範囲では完全な絶縁体となった。しかし更に焼成温度を高くすると 600℃から電
気伝導を示すようになり、800℃までの焼成温度では再びホッピングに良く似た伝導特性が観察された。
900℃以上での焼成は抵抗が温度と伴に減少する金属的振る舞いを示した。一方 XRD によれば焼成温度
が高くなるにつれ PANI ナノチューブの炭化が進行していることが確認できた。また焼成物の仕事関数
を測定すると焼成温度によって変化することが確認できた。この結果は PANI の炭化度による電気抵抗
の挙動と関連付けて考察することができる。
4.出願特許
なし。
5.学会発表
(1) Takahiro Murai, Tohru Muraoka, Hiroyuki Taniguchi, Tokihiro Takizawa, and Takehiro Matsuse,
“Electrical Conductivity of Carbonized Polyaniline Nanotubes”, The 4th International Conference on Advanced
Fiber/Textile Materials 2007 in Ueda (ICAFTM2007), PA-10(pp59-60),
(2) 2008 年春季 第 55 回応用物理学関係連合講演会 予定
(3) 平成 20 年度繊維学会年次大会
予定
6.投稿論文
なし。
69
December, 2007.
家庭用電子レンジによる有機金属錯体からカーボンナノチューブを高速合成
するための最適条件
(大学院総合工学研究科) 太田和親
【緒言】以前、我々は家庭用電子レンジを用いて有機
Thermocouple
N2 gas
金属錯体を蒸し焼きにすることでカーボンナノチュー
ブを合成することに成功した。その後、合成条件を見
N2 gas
直し最適条件を求めるため原料にニッケルベンゾエー
トとニッケルステアレートを用い、温度条件を変えて
合成されるカーボンナノチューブの量や構造を比較し
たところ、ニッケルステアレートを 700℃で蒸し焼きに
した場合が最も量も質も良いカーボンナノチューブが
Door
Art boxTM
Microwave radiation
time and power controller
Fig. 1 Our apparatus modified a domestic microwave oven and an art boxTM.
得られた。
【結果と考察】家庭用電子レンジを改造して温度制御できるよう
にし、マイクロ波により発熱する炉を組み込んだ合成装置(上の
図 1)に、Nickel benzoate・nH2O、または Nickel stearate・nH2O
を入れた反応容器を入れ、合成する温度をそれぞれ 600, 700, 800,
900℃として、5 分間で目的温度まで昇温しその温度で 10 分間有
機化合物を加熱した。濃塩酸処理した焼成物の透過型電子顕微鏡
観察を行ったところ、Nickel benzoate では 800℃で焼成したも
のしか CNT が観察されなかったが、Nickel stearate では全ての温度の焼成物で CNT が観察された。中
でも 700℃で焼成したものが最も多くの CNT が観察され、比較的長くて真直ぐな CNT が多数観察できた
(下の TEM 写真)。700℃より高い、または低い温度になると短くて縮れた CNT が多く観察された。なぜ
Nickel stearate を 700℃で加熱したときが最も量も質も良い CNT ができたのかを既知の実験データと
照らし合わせて解明した。まず、Nickel stearate を構成するパラフィン炭化水素の熱分解反応の自由
エネルギーの変化の近似式(ΔG°(C-C 開裂) =19100-33.6T [cal/mol], ΔG°(C-H 開裂) =31600-
33.6T [cal/mol])から、アルキル鎖は約 300℃で C-C 結合の開裂が、約 670℃で C-H 結合の開裂が有利
になることがわかる。つまり Nickel stearate を約 700℃まで上げて加熱すればアルキル鎖が炭素原子
の状態まで分解され、それがニッケルに溶け込み、冷却過程で炭素がチューブ状にグラフェン化して析
出していくことで CNT が生成されると考えられる(ニッケルには炭素をグラフェン化する触媒能がある)。
しかし温度がより高くなると、炭素は共役系を広げてより安定な状態になろうとするためニッケルの触
媒能を借りなくてもグラフェン化が進行するため、わざわざニッケル粒子を介してチューブ状になるよ
りも共役系を広げてグラフェンシート構造をとるようになる。また、Nickel benzoate の場合、結合解
離エネルギーが大きなベンゼン環を有しており、Nickel stearate よりも炭素原子の状態に分解されに
くく、もともと共役系の構造なので炭素原子の状態まで分解される前に共役系を広げていき、グラフェ
ンシートが多く生成され CNT は生成されにくいのだと考えられる。このように、用いる有機金属錯体と
温度をうまく調整することで家庭用電子レンジのような安価な器材でも CNT を簡単に合成できることが
わ
か
っ
70
た
。
バイオエンジニアリングに関連した生体材料の研究開発
(繊維学部) 藤井 敏弘、小林 俊一
1.研究目的:生体組織および生体情報を含んだメモリアル製品の開発を行う。
2.実験:生体組織として毛髪を利用しこれを含む製品開発の中で、① 毛髪の粉砕方法と粒子サイズ、
形状、等の測定と観察。 ② 毛髪を含むファイバーへ加工する方法についての実験と製品化への検討。
3.結果および成果
複数の粉砕機器を用いて粉砕時間などの条件を変化させて粒子形成を調べた。また、天然高分子材料
を利用して、これらの試料のファイバーへの導入を行った。これらの結果、製品とするのに安定に導入
できる条件を見出すことができた。また、加工品を製品とするための色、形状、等を含めたデザイン、
試作、調査、等を行い成果が得られた。
出願特許: 藤井敏弘、小林俊一、久保壽一、溝部達司:生体組織を安定に導入した成形品とその製造方法、
特願 2007-306771
学会発表:
高山裕美子,長友拓,平尾嘉則,小林俊一,藤井敏弘:ヒト毛髪成分を含む天然ファイバーの作製と性質;第 17
回バイオフロンティア講演会講演論文集,29-30 (2006)
投稿論文:
Kobayashi, S. and Fujii, T.:Preparation and Properties of Individual Protein Products. Current Topics Biochem.
Res. 9(1), 29-37 (2007)
71
3 次元形状データを用いた個人対応衣服
(繊維学部感性工学科)高寺政行
1.研究目的
個人対応衣服の作製支援システム開発のために,衣服作製手法の一つである立体裁断を自動化した自
動立体裁断システムを用いて個人対応スカート及びパンツ型紙を作製する研究が行われている.立体裁
断とは,衣服作製用人台等の立体に直接布を押し当て,布にしわのよらない範囲内で裁断し組み立てて
いく方法で,型紙を部囲によって倍率を変え拡大縮小し衣服を作製するグレーディングよりも個人体形
を反映させやすいという利点がある.本研究では,立体裁断をコンピュータ上でシミュレーションする
際に必要となる衣服作製用人台を代わりに使用する衣服型ポリゴンモデルをスカート及びパンツを対
象とし,人体の三次元形状を衣服に必要なゆとりを考慮し作製する方法を考案することを目的とする.
2.実験
本研究では,衣服作製用人台の代わりとなる,スカート及びパンツ型ポリゴンモデルの作製方法を考
案した.衣服型ポリゴンモデルは人体の三次元形状を変形して作製するため,人体の三次元形状が必要
となる.本研究では人体の代わりに衣服作製用人台(サイズ:9AR/Ladies/(株)キイヤ)を使用し,
本学 SVBL 非接触型三次元測定装置(VOXELAN)を用いて測定した三次元形状を用いる.
2.1 スカート型ポリゴンモデルの作製
スカート型ポリゴンモデルの作製方法について述べる.まず,変形に必
要となるライン(ウェストライン(WL),腹部最大突出幅囲,ヒップライン
(HL))を抽出する.腹部最大突出部囲とは人体の形状を側面から見たとき
に腹部で最も前方に突出している部位のことである.これらのラインを基
準とし,WL から腹部最大突出部囲までは原形を利用し,腹部最大突出部
囲から HL にかけては腹部最大突出部囲の形状をコピーし,同平面状に得
た 2 本のラインに凸包を行い変形させる.さらに HL 以下では先の変形で
得たヒップラインをスカート丈に合わせコピーしていくことでスカート
型ポリゴンモデルを得る.以上の変形を行い作製したスカート型ポリゴン
モデルを Fig.1 に示す.
Fig.1 Skirts type polygon model
2.2 パンツ型ポリゴンモデルの作製
パンツ型ポリゴンモデルの作製では織物モデルでのフィッティングを
考慮し可展面に近づけるよう,筒状のモデルを作製した.股上部囲,股下
部囲,股上股下連結部囲の 3 つの部位に分けて変形を行った.股上部囲で
は股下と滑らかに連結できるよう半身部分を残し片方を円弧状にした.股
下部位ではゆとりを考慮し円形に変形した.股上股下連結部囲では股上形
状を徐々に円形にしていくことで股上と股下を滑らかに連結した.以上の
変形を行い Fig.2 のようなパンツ型ポリゴンモデルを得た.
3.結果および考察
上述した方法により得たポリゴンモデルを用いてフィッティングを行い,
スカート(Fig.3)及びパンツ型紙(Fig.4)を作製した.さらにそれらの型紙を用
いてスカート(Fig.3)とパンツ(Fig.4)を作製した.作製した結果,衣服作製用 Fig.2 Pants type polygon model
人台にフィットした衣服を作製することができ,本研究で考案したモデル
作製方法が自動立体裁断システムを用いた個人対応衣服型紙作製に有用であることが証明された.
Fig.3 Completed skirt pattern and skirt
Fig.4 Completed pants pattern and pants
4.学会発表
平成 19 年 7 月 繊維学会年次大会,
「三次元形状を用いたズボンの設計方法」
平成 19 年 8 月 日本感性工学会年次大会,個人対応パンツ設計のための下半身モデリング」
平成 19 年 10 月 The international conference on Kansei Engineering and Emotion Research,
「Individual Pattern Making of Skirts and Pants Using Computerized Draping Method」
72
腕時計の装着性に関する感性工学的研究
〜女性の手首形態3次元データベース作成のための手首3次元形状計測〜
(繊維学部感性工学科) 細谷 聡、川崎有加、猪飼万由子
1.研究目的
腕時計のフィッティング向上のためには、手首形状へのベルト形状の追随性が重要である。そこで、
本研究では個人差の予想される手首の3次元形状を計測し、その分類やベルト設計のためのデータベー
ス化に向けた基礎的データ構築を目的とする。昨年度は男性の計測を行なったことから、今年度は女性
を対象に計測を実施した。
2.実験
被験者は女子大学生 50 人で、計測部位は左前腕の肘から拳までとした。計測に使用する装置は浜野
エンジニアリング社製の Voxelan LPW-2000(図 1)で、中本体の中心部にて 4 方向からのレーザー照射
を行い、前後に設置された 5 台のカメラで画像処理を行なうものである。計測時間は約 5 秒間で、被験
者にかかる負担は少ない。
図1
Voxelan LPW-2000
3.結果および成果
図 2 に計測した 2 人分のデータを示す。3D 化した全体図と手首の断面形状分類を示している。50 人
分について、手首の断面形状を 4 分類できた。今後は、各形状と時計ベルトの位置関係から腕時計のフ
ィッティング向上を目指したベルトの駒ピッチや追随性に関する研究を進める予定である。
①卵型
②細型
③中間型
図 2 手首の3次元形状データベース画面(左)と形状分類(右)
73
④丸型
感性視聴覚教育研究センター
(繊維学部感性工学科) Michael Honywood
1.研究目的 – To develop KANSEI educational materials that promote effective learning
2.実験 – Experiment:
To develop Japanese and English language programs using interactive software
The keys are to produce highly motivating material, that teaches suitable language at the appropriate level
3.結果および成果 – Results: We showed how software could be used to allow people without programming
skills to create software for learners that are suitable to their needs. The next step is to create more content
and trial with learners, especially moving from Macintosh base to a wider PC base with e-learning trials.
4.出願特許 – Make a patent – Looking into the possibilities of patenting this process
5.学会発表 – Presentation – SVBL competition – 1st place, CVG business competition
6.投稿論文 – Publish – students create a masters thesis based on this work.
74
Ⅲ.
ベンチャー教育・広報事業
1. 起業家育成集中セミナー
「自分の会社をつくろう!」
~起業のノウハウを身につけ,起業をバーチャルに体験できます~
本学学生を対象に,学生発ベンチャー起業を目的とした起業家育成集中セミナー「会社をつくろう」を
開催しました.
最終日に全課程を修了した 8 名に,修了証を発行しました.
実施日時:平成 19 年 8 月 6 日(月)~平成 19 年 8 月 9 日(木)9:00~17:00
実施場所:信州大学繊維学部
講師
大会議室
社団法人 21 世紀ニュービジネス協議会
相馬豊恒氏
株式会社価値創造研究所
代表取締役
森田舞氏
もりたサポート・オフィス
副所長
(社会保険労務士,2 級 FP 技能士,キャリアコンサルタント・コーチ)
小原知子氏
有限会社ワン・アンド・カンパニー
小川一弘氏
小川一弘税理士事務所
原山陽一氏
株式会社八十二銀行
代表取締役
所長(税理士)
グループ長(中小企業診断士)
アドバイザー
大澤住夫氏
信州 TLO 株式会社
技術移転グループ部長
共催:信州大学繊維学部
75
◆ カリキュラム
8月6日
テーマ
オリエンテーション
内容
講師
研修の受講姿勢について,アイスブレーキング
森田舞氏
事例紹介
相馬豊恒氏
自己紹介
起業体験談
起業体験談
森田舞氏
起業するとは
店舗を持つビジネスをはじめる時に,どのような
相馬豊恒氏
準備をするか,グループで話し合い,発表する.
起業の条件
午前中に検討した内容を,グループごとに発表す
相馬豊恒氏
る.その上で,起業をするためのポイントを説明
する.
起業に向けた方針づくり(1)
販売する商品に関する検討
相馬豊恒氏
売れる仕組みづくりに関する検討
相馬豊恒氏
起業によりどんなことを実現したいかの方針を
相馬豊恒氏
何を商品とするのか?
起業に向けた方針づくり(2)
誰に販売するのか?
起業に向けた方針づくり(3)
起業方針の策定
宿題
検討
起業方針づくり
8月7日
テーマ
私の起業方針 1
誰に何を販売するのか.
内容
商品,売れる仕組みづくりについての検討
講師
相馬豊恒氏
グループに分かれ,お互いに企業のための方策を
検討し合う
企業会計の基本
決算書が理解できるよう,企業会計の基本を学ぶ
小川一弘氏
企業の利益の考え方について
小川一弘氏
決算書を読める
管理会計の基礎
損益分岐点と利益
損益,利益とも0となる損益分岐点の意味とその
活用方法について
起業化プランづくり(1)
起業を進めるための計画の立て方について
宿題
経営計画の作成
76
相馬豊恒氏
8月8日
テーマ
内容
講師
資金調達について
資金調達のあれこれ,金融機関とのつきあい方
原山陽一氏
会社の設立方法
会社を設立するための具体的な方法について,設
相馬豊恒氏
立趣意書の書き方について
効果的なプレゼンテーション
より分かりやすく,効果的なプレゼンテーション
小原知子氏
を行うために
起業化プランづくり(2)
組織の作り方,あり方について
宿題
会社設立趣意書作成
相馬豊恒氏
プレゼンテーション資料作成
8月9日
テーマ
起業化プランづくり(3)
内容
起業化プランを完成させる
講師
相馬豊恒氏
森田舞氏
小原知子氏
プレゼンテーションの準備
プレゼンテーションのポイント
相馬豊恒氏
午後のプレゼンテーションの準備
私の起業化プラン
自身の起業化プランを 5 分で発表する.
大澤住夫氏
相馬豊恒氏
森田舞氏
小原知子氏
起業を成功させるために
起業化プランに対する総評,起業を成功させるため
相馬豊恒氏
のポイント
まとめ
森田舞氏
修了式
77
2. 機器エキスパート(P-DEX)養成事業
(繊維学部授業「ひと・ものづくりプロジェクト」との連携)
工学系技術者および研究者にとって分析機器・評価機器の利用技術を習得することは重要である.一
方,“ものづくり”で起業を考えている学生にとっても,ベンチャー活動を進めていく上で基礎的な技
能の一つである.
本 SVBL では分析機器・評価機器のエキスパートを養成する目的で,P-DEX (Publicity-Device EXpert)
なる組織を立ち上げ,その支援を行なってきた.P-DEX は学部学生が主体となり,本 SVBL に設置され
ているμEDX(エネルギー分散型微小部蛍光 X 線分析装置)と走査型共焦点レーザ顕微鏡の技能研究会
の企画・運営を行ってきた.P-DEX の平成 19 年度の活動内容は下記のとおりである.
なお,平成 19 年度より,P-DEX 活動に参加している学生は,繊維学部 2・3 年生対象の授業「ひと・
ものづくりプロジェクト A,B」(通年,自由,1 単位)を履修することで,単位取得が可能となった.
1)技能研究会
◆ 使用機器
・μEDX(エネルギー分散型微小部蛍光 X 線)分析装置(μEDX-1300,㈱島津製作所製)
・走査型共焦点レーザ顕微鏡(OLS3000MS,オリンパス㈱製)
◆ 修了者所属学年氏名
中級技能レベル(微小部蛍光 X 線測定装置(μ-EDX))
繊維学部応用生物科学科
4年
小寺 拓也
繊維学部精密素材工学科
4年
砂原 賢二
初級技能レベル(微小部蛍光 X 線測定装置(μ-EDX))
繊維学部応用生物科学科
2 年 和泉 文徳
繊維学部応用生物科学科
2 年 中西 忍
工学系研究科繊維システム工学専攻修士課程 2 年 池田寛之
初級技能レベル(走査型共焦点レーザ顕微鏡)
繊維学部機能機械学科
3 年 淺倉 一眞
繊維学部機能機械学科
3 年 山口 竜太
◆ 講習実施時間・内容
勉強会
平成 19 年 5 月~12 月(但し 8 月~10 月は除く)
毎週木曜日
17:30~19:30 2 時間(テキストによる勉強会を 30 分行なった後,機器操作実施)
計 40 時間程度
他,機器講習会への参加および自主研修を行った.
78
2)技能検定の実施
◆ エネルギー分散型微小部蛍光 X 線(μEDX)
平成 19 年 12 月 12 日 16:00~17:00
SVBL 棟 201 号室
評価者:高崎緑(SVBL 助教),丸山昌明(SVBL 技術補佐員)
オブザーバ:上野満夫(繊維学部技術専門職員),中村美保(繊維学部技術専門職員)
技能レベル基準表
【初級】
□ 錠剤成形器を用い,粉末試料をバルク試料に調製法を示すことができる.→和泉
□ 機器の起動・停止が行える.→中西
□ 基本的な操作(試料のセット,X 線操作,試料のフォーカス・倍率設定,ステージの位置の設定)
が行える.→池田
□ バルク状の金属を試料とし,定性定量分析(メソッドの作成,測定,および未知試料分析)が行え
る.→池田
□ バルク状の金属を試料とし,ファンダメンタルパラメータ(FP)法による定量分析(メソッドの作
成,測定,および未知試料分析)が行える.→和泉
□ 標準試料を分析し,検量線を作成できる.→中西
□ バルク状の金属を試料とし,検量線法による定量分析(メソッドの作成,測定,未知試料分析お
よび共存元素補正)が行える.→中西
□ 簡単なトラブルシューティングについて説明できる.→池田
・ 試料台がタッチセンサに接触したとき
・μ-EDX 制御ソフトがフリーズしたとき
・分析時の液体窒素不足によるエラー
【中級】
□ 錠剤成形器を用い,粉末試料からバルク試料への調製法を指導できる.→砂原
□ 機器の内部構造および測定原理について説明できる.→小寺
□ 機器の起動・停止について指導できる.→小寺
□ 基本的な操作(試料のセット,X 線操作,試料のフォーカス・倍率設定,ステージの位置の設定)
について指導できる.→小寺
□ バルク状の金属を試料とし,定性定量分析(メソッドの作成,測定,および未知試料分析)につい
て指導できる.→砂原
□ バルク状の金属を試料とし,ファンダメンタルパラメータ(FP)法による定量分析(メソッドの作
成,測定,および未知試料分析)について指導できる.→砂原
□ 標準試料を分析した検量線の作成法について指導できる.→小寺
□ バルク状の金属を試料とし,検量線法による定量分析(メソッドの作成,測定,未知試料分析お
よび共存元素補正)について指導できる.→砂原
□ 簡単なトラブルシューティングついて指導できる.→砂原
79
・ 試料台がタッチセンサに接触したとき
・μ-EDX 制御ソフトがフリーズしたとき
・分析時の液体窒素不足によるエラー
□ 高度な分析を行うためのメソッドを作成できる→小寺
・ppm オーダの重金属分析
・有機化合物中に含まれる金属の定性(定量)
・マッピング分析
・フィルム試料の測定
・バルク表面層の膜厚測定
□ 保守点検時に機器の校正法を説明できる.→砂原
【上級】
□ 中級者への指導(高度な分析のメソッド作成)ができる.
□ 様々な形状の試料(バルク,フィルム,液体,粉末)の分析ができる.
□ 有機化合物中の金属の定性(定量)が行える.
□ バルク表面層の金属膜厚が測定できる.
□ ppm オーダでの重金属分析ができる.
□ マッピング測定および高速マッピングができる.
□ 定量分析の各種補正方法(定量分析の各種機能(付加計算など),マッチング)に対応でき
る.
◆ 走査型共焦点レーザ顕微鏡
平成 19 年 12 月 13 日 16:00~17:00
SVBL 棟 201 号室
評価者:平田雄一(繊維学部助教)
,高崎緑(SVBL 助教),丸山昌明(SVBL 技術補佐員)
オブザーバ:上野満夫(繊維学部技術専門職員),中村美保(繊維学部技術専門職員)
技能レベル基準表
【初級】
□ 走査型共焦点レーザ顕微鏡の起動および停止の操作ができる.→淺倉
□ 試料のセット(XY ステージの操作,焦準部の操作)ができる.→淺倉
□ 金属試料を用い,TV 明視野モードで観察条件設定(対物レンズ切替え,明るさ調整,ピント調
整およびズーム調整),画像取り込み,および画像保存ができる.→山口
□ 金属試料を用い,非共焦点モードで観察条件設定(対物レンズ切替え,明るさ調整,ピント調整
およびズーム調整),画像取り込み,および画像保存ができる.→山口
□ 金属試料を用い,共焦点モードで観察条件設定(対物レンズ切替え,明るさ調整,ピント調整お
よびズーム調整),画像取り込み,および画像保存ができる.→淺倉
□ 画像表示(2D,3D)切替えおよび設定ができる.→山口
□ 金属試料観察画像の処理ができる.→山口
・ 平滑化補正
・ 高さノイズ除去
80
□ 金属試料観察画像の解析ができる.→淺倉
・ 距離・面積の計測
・ 線幅の計測
・ 段差の計測
・ 面粗さ解析
【中級】
□ 走査型共焦点レーザ顕微鏡の原理について説明できる.
□ 走査型共焦点レーザ顕微鏡とその他の顕微鏡の相違点を説明できる.
□ 装置本体の名称を説明できる.
□ 走査型共焦点レーザ顕微鏡の起動および停止の操作について指導できる.
□ 試料のセット法(XY ステージの操作,焦準部の操作)を指導できる.
□ 金属試料を用い,TV 明視野モードで観察条件設定(対物レンズ切替え,明るさ調整,ピント調
整およびズーム調整),画像取り込み,および画像保存法について指導ができる.
□ 金属試料を用い,非共焦点モードで観察条件設定(対物レンズ切替え,明るさ調整,ピント調整
およびズーム調整),画像取り込み,および画像保存法について指導ができる.
□ 金属試料を用い,共焦点モードで観察条件設定(対物レンズ切替え,明るさ調整,ピント調整お
よびズーム調整),画像取り込み,および画像保存法について指導ができる.
□ 画像表示(2D,3D)切替えおよび設定法について指導ができる.
□ 金属試料観察画像の処理法について指導ができる.
・ 平滑化補正
・ 高さノイズ除去
□ 金属試料観察画像の解析法について指導ができる
・ 距離・面積の計測
・ 線幅の計測
・ 段差の計測
・ 面粗さ解析
□ 金属試料観察画像の解析ができる.
・ 幾何計測
・ 粒子解析
・ 体積の計測
・ 線粗さ解析
・ エッジ解析
□ 表面被膜を有する試料の膜厚測定(XZ 計測),画像処理,および解析ができる.
□ 繊維,金属(基板),およびプラスチックフィルムを試料に用い,共焦点観察・画像処理・解析が
できる.
【上級】
□ 金属試料観察画像の解析法について指導できる.
・ 幾何計測
・ 粒子解析
・ 体積の計測
81
・ 線粗さ解析
・ エッジ解析
□ 表面被膜を有する試料の膜厚測定(XZ 計測),画像処理,および解析について指導できる.
□ 繊維,金属(基板),およびプラスチックフィルムを試料に用い,共焦点観察・画像処理・解析法
について指導ができる.
□ 金属試料観察画像の高度な処理ができる.
・ FFT(表面形状の分離)
・ デジタルズーム
・ ワンショットノイズ除去フィルタ
□ レーザ顕微鏡観察の詳細設定(Z 位置の詳細設定(Focus),明るさの詳細調整(Laser),取込み画像
の自動保存(Auto Save),画像取込みの詳細設定(Aquire),観察方法の詳細設定(Live),TV 観察の
詳細設定,3 次元観察の詳細設定(Smart 3D View),同点補正)ができる.
□ オートステージの機能(移動先の登録,登録点の読み出し,登録点の保存,アライメント,原点
座標の変更,登録点への移動,自動取込み,画像貼り合せモードでの画像取込み)を用いること
ができる.
□ 暗視野モードで観察・画像処理・解析ができる.
□ 落射ノマルスキー微分干渉観察・画像処理・解析ができる.
□ レーザノマルスキー微分干渉観察・画像処理・解析ができる.
□ あらゆる試料を適切に観察・画像処理・解析ができる.
3)修了発表会・修了証授与式の実施
平成 19 年 12 月 19 日(水)16:00~18:00 繊維学部大会議室
(Ⅳ.資料
1.事業歴
成果報告会
参照)
82
◆ 修了発表会資料(2007.12.19)
2007.12.19
2007.12.19
P-DEX
P
DEX 機器部門 修了報告会
P-DEX
P
DEX 機器部門 活動概要
P-DEX機器部門
P-DEX機器部門
精密素材工学科 4年 砂原 賢二
2
1.P-DEX機器部門活動概要
1.P-DEX機器部門活動概要
P-DEX 組織紹介
P-DEX機器部門活動目標
Publicity Device EXpert → P-DEX
SVBL棟にある機器 →学内の限られた人しか扱えない
広報と機器のエキスパートを目指そう
利用希望者が容易に利用できる環境の実現
2005年度 組織発足 (SVBLによるメンバー募集)
→ 活動体制が整わず計画を実行できなかった
活動目標
2006年度 機器部門,広報部門に組織を分割
SVBL棟にある機器の操作技術の習得
機器部門:SVBL内の機器技術の習得など
習得した知識・技術を利用希望者へ普及
広報部門:SVBLパンフレットの作成など
2007年度 P-DEXにより新たにメンバー募集
新体制で活動開始
目標達成のための活動と認定が必要
3
1.P-DEX機器部門活動概要
1.P-DEX機器部門活動概要
活動目標実現に向けて
活動内容
以下の2つの装置について,機器操作の履修
機器操作
の習得
認定
習得技術
の利用
走査型共焦点レーザ顕微鏡
目標実現
エネルギー分散型
微小部蛍光X線分析装置(μEDX)
機器操作の習得 → 現在の最優先の活動目標
P-DEXで履修計画を立て,習得を目指す
認定
→ SVBLによる認定(修了証の交付)
型番:LEXT OLS3100MS
習得技術の利用 → 現在この段階まで至っていない
講習会等の実施で技術を広めていく段階
メーカ:オリンパス(株)
5
83
型番:μEDX-1300
メーカ:(株)島津製作所
1.P-DEX機器部門活動概要
1.P-DEX機器部門活動概要
活動内容
活動体制
各装置ごと初級,中級の技能レベルに分かれて活動
初級 → 装置の基本的な操作が可能
中級 → 初級者への指導と発展的な操作が可能
レーザ顕微鏡
μEDX
初級
2人
3人
中級
1人
2人
・週1回のペースで機器操作・勉強会(全9回)
技能判断基準
具体的な履修項目をまとめた基準表を作成
→P-DEXで作成した履修計画に沿って実施
・定例会を毎月開催
基準表をもとにしたSVBLによる技能検定に合格
→履修内容の報告,意見交換
7
84
履修目的
2007.12.19
• 基本的な測定を行えるようにする
μEDX初級報告
μ
• 基本的な試料調製が行える
• メンテナンスを行える
繊維システム工学専攻 修士2年 池田寛之
応用生物科学科 学部2年 和泉文徳
応用生物科学科 学部2年 中西 忍
活動日程
履修内容
第1回 装置の起動・終了と簡単な扱い方
第2回 蛍光X線分析の基礎
1.μEDXの原理
第3回 蛍光X線分析の原理
2.μEDXの用途
第4回 簡単な定性定量分析
3 基本的な分析
3.基本的な分析
第5回 試料調整法と定量分析
4.高度な分析
第6回 FP法と検量線法
第7回 試料調整法及び検量線の作成と定量分析
5.トラブルシューティング
第8回 データの解析
第9回 トラブルシューティング
μEDXの原理
μEDXの特徴と用途
EDXの特徴
• X線を照射して生じた蛍光X線を検出
• Bより原子番号の大きな元素の情報を得られる
• 点分析・線分析・面における元素分布を測定
• 試料を無傷で元素分析可能
• 軽元素から重元素までを大気中で分析可能
• 広範囲のエネルギー領域のスペクトルを同時に測定可能
マイクロである利点
イク
ある利点
• ピンポイントでの分析が可能
• 試料画像を見ながら簡単に測定位置を指定し,分析を
行うことが可能
• 多元素同時・自動高速マッピング機能により,短時間で
元素スペクトルの取得が可能
•半導体・電子部品・機械材料などの
ただし,感度が悪い
微小部の短時間分析に最適
85
標準試料の定性定量
分析方法
1.定性定量分析
・含有元素の大まかな測定
・標準試料不要
・定量値の精度は低い
自作試料を測定
試料成分
Cu,Fe,Zn,各20%
Base:Al
基本的な分析
2.FP法による定量分析
・試料の組成情報の把握が必要
・標準試料が1点必要
・定量値の精度は中程度
高度な分析
• Fe,Cu,ZnはKα,Kβとも観測
• AlとVはKαのみ観測
• Rhスペクトルが観測
3.検量線法による定量分析
成分
Cu
Fe
Zn
Al
V
分析結果
含有量(%)
26
25
25
24
Balance
高度な分析
スペクトルを読む時の留意点
• 入射X線の散乱ピーク
• エスケープピーク
• Kα線,Kβ線が観測される
検量線による定量分析
•標準試料を用い検量線を作成
•信頼性のある定量値を得ることが可能
標準試料の選択が重要
検量線法
高度な分析
:標準試料
FP法と検量線法の違い
:未知試料
検量線
標準試料測定→理論強度計算
→未知試料測定→定量値
未知試料測定 定量値
X線強度
X線強度
•FP法
•検量線法
標準値 (%)
複数標準試料測定→検量線
→未知試料測定→定量値
測定値 (%)
試料の蛍光X線強度から定
量値が求められる
86
検量線法~分析例~
標準試料について
標準試料:Fe, Cu, Znを含むペレット(Base:Al)
5%,10%,20%の3試料
必要とされる条件
Fe検量線
•未知試料に近い組成
未知試料に近い組成
•信頼性を確保するため3~5点必要
トラブルシューティング
まとめ
μEDXを用いた基本的な操作
動作の不具合
各種エラー発生
•定性定量分析
•FP法による定量分析
•検量線法による定量分析
•簡単なトラブルシューティング
実践により対処可能
定期的な維持管理には経験が必要
今後の課題
より精度の高い分析を目標に
各種詳細設定
補正の有効な活用
試料調製の正確さを目標に
ばらつきへの対処
87
中級技能習得項目
2007.12.19
1)初級者への指導
P-DEX第3期生への初級技能講習を実施
μEDX 中級報告
2)様々な分析法の習得
担当者 P-DEX機器部門
精密素材工学科 4年 砂原 賢二
応用生物科学科 4年 小寺 拓也
島津製作所による講習会を受講
技術還元
第3期生募集
マッピング
第1回ミーティング
・自作標準試料の検定
講習開始
10月25日
株式会社島津製作所
μEDX技能講習会
初級技能講習全9回
11月21日
12月12日
12月19日
分析条件一覧「μEDX虎の巻」を作成
2)応用分析
1)初級者への指導
4月〜
5月23日
6月7日
新規利用者に対する技能講習会実施可能
技術還元
膜厚測定
講習修了
・バルク表面上の金属膜厚測定
技能検定実施
初級・中級 修了発表会
2-1)マッピング
Zn Kα
・高速マッピングを用いた試料解析
→自作試料の均一性を検定
※マッピング比較
Ti
100%
Cu Kα
Cu
100%
Ti Kα
・偏りがある場合の試料
Cu Kα
Mo合金
自作試料
Base:Al
Zn,Fe,Cu 20%
圧縮成型
分析条件
範囲:30x40点
間隔:50 μm
分析時間:0.05 sec
時間:1 min
付属標準試料
Fe Kα
Mo Kα
結果
・元素の偏りは少ない
→均一な調製である
分析条件
範囲:30x40点
間隔:50 μm
分析時間:0.05 sec
時間:1 min
88
S Kα
2-2)膜厚測定
分析条件
定量分析(FP法)
フィルム測定
1層:Pt 100%
Base:SiO2+Na2CO3
分析時間:100 sec
虎の巻 μEDXの応用分析条件一覧・・・
※試料を真上から観察しています
試料
・蒸着した膜厚の測定
Pt薄膜(Base:ガラス)
分析条件を設定するときのポイントを記した図説
Pt薄膜
結果
・45 nm
2006年作成した基本操作マニュアルと合わせて
μEDXの操作をほぼ網羅
内容
ガラス
・フィルタの選択
・定量分析(ppmオーダ)
・フィルム分析
・マッピング
・有機試料中の金属分析
・膜厚測定
・校正方法
(株)フィッシャーインストルメンツ製
高エネルギー分解能蛍光X線分析器XDAL
分析結果
平均40.86 nm
分析点数:25点
Max.12.8 nm
分析時間:60 sec
Min.54.3
多層試料各層の膜厚測定可能
合金の膜厚測定可能
まとめ
μEDX中級技能習得者は・・・
新規利用者に対して基礎的な操作法の講習をおこなえる
μEDXで可能な分析手法の知識を有し
様々な試料に対応できる
ただし・・・
実践経験が不足
各種補正機能の知識不足
89
初級技能習得項目
2007.12.19
1)顕微鏡の仕組み
• 光学顕微鏡の歴史や基本的構造の学習
• レーザ顕微鏡の仕組み
走査型共焦点レーザ顕微鏡
初級報告
2)試料の観察(2D,3D)
• 画像の取り込み,表示
2D表示: カラー画像,非共焦点画像,共焦点画像
カラー画像 非共焦点画像 共焦点画像
3D表示
3)観察画像の処理
• ノイズの除去
→高さノイズ除去,平滑化補正
担当
4)観察画像の解析
機能機械学科3年 淺倉 一眞
• 試料計測
→距離,面積,線幅,段差,粗さ など
機能機械学科3年 山口 竜太
活動日程
•
•
レーザ顕微鏡の仕様
講習内容は勉強会,実習
実施回数は合わせて9回
6月7日
実習
6月15日
勉強会
顕微鏡の歴史,光学顕微鏡の基礎知識
6月22日
実習
画像表示
7月4日
勉強会
観察法,レーザ顕微鏡について
起動から終了まで
7月5日
実習
デ タ管理
データ管理
11月29日
実習
金属試料の画像処理
11月30日
実習
繊維試料の画像処理
12月5日
実習
繊維試料の画像解析
12月7日
勉強会
トラブルシューティング
12月11日
講習会
オリンパス(株)製
[型番]
LEXT OLS3100MS
[用途]
試料の2次元及び
3次元画像観察・解析
メーカーの方を招いての操作説明
12月13日
技能レベル検定(初級)
12月19日
修了発表会
レーザ顕微鏡の特徴
レーザ顕微鏡の特徴
非破壊観察
多彩な情報の取得
• 試料は破壊して細片化することなくステージに設置
• 装置準備や試料の前処理は不要
• リアルタイムに高解像観察,高精度測定可能
• 光学顕微鏡では不可能だった3D形状観察
• SEMでは不可能だったカラー観察
• 等高線表示やメッシュ表示による3D情報表示
高分解能観察
用途
• 408 nmレーザを採用
平面分解能: 0.12 μm
垂直分解能: 0.01 μm
• モニタ倍率14,400倍.SEMに迫る拡大率
電子部品,金属表面,セラミック,繊維など
90
レーザ顕微鏡の原理
レーザ入射光
スキャン方向
• レーザビームを対物レン
ズで微小なスポットに絞り,
試料上をX-Y 方向に走査
レーザ顕微鏡の原理
円形共焦点ピンホール
• 試料からの光を検出器で
とらえモニタ上に試料像を
出力
光検出器
• 共焦点ピンホールにより,
試料上の焦点の合った部
分のみの反射光を検出,
画像化する
対物レンズ
焦点外
合焦位置
焦点外
• 焦点外の光は画像中にお
いては暗黒になり,段差
のある試料を光学的にス
ライスすることができる
全ての高さにピントが
合った画像
三次元表示画像
レーザ顕微鏡が苦手な試料
反応がない試料
• 急な凸部
→高さの測定だけなら出来る可能性もある
• 壁面
→60°以上の斜面は困難
• 深い穴
→開口:深さ=1:1なら底面観察可能,長作動対物レンズ使用で
な 底 観察 能
物
ズ使
1:4でも深さ計測できる可能性もある
解析の流れと機能
試料 10円硬貨
他の影響を受ける試料
• 高反射率物体が背面にある透明体表面
• 干渉を起こす透明体
画像表示 2D
TV表示
3D表示
サーフェース表示
NCF表示
CF表示
テクスチャー表示
ワイヤー表示
91
高さノイズ除去、平滑化補正
処理(高さノイズ除去,平滑化補正)
未処理
サーフェース表示
高さノイズ除去
テクスチャー表示
平滑化補正
ワイヤー表示
面積計測
解析 距離計測
4
2
3
2
1
1
線幅計測
段差計測
92
粗さ解析
これから
レーザ加工機で製作した試料の解析
膜厚測定などの解析技術の向上
93
3. 機器講習会
教職員・学生の研修及び P-DEX の教育、SVBL 設置の測定機器の有効利用をはかるため、下記機器
について講習会を実施した。
実施日
機器名・講習名
参加人数
4 月 27 日
ラマン分光光度計(Hololab 5000,カイザー製)
28
5 月 30 日
走査型共焦点レーザ顕微鏡(OLS3000MS,オリンパス㈱製)
20
7 月 11 日
液体クロマトグラフ質量分析(LCMS-2010A,㈱島津製作所製)
8
9月 4日
表面プラズモン共鳴測定装置(Biacore X,Biacore AB 製)
10
10 月 4 日
エネルギー分散型微小部蛍光 X 線分析装置(μEDX-1300,㈱島津製作所製)
17
10 月 23 日
レーザ加工システム(HPS301T,㈱ハイパー・フォトン・システム製)
18
12 月 11 日
走査性共焦点レーザ顕微鏡―応用編(OLS3000MS,オリンパス㈱製)
13
1 月 10 日
測定機器 技術セミナー「工業材料分野で活躍する MALDI-TOFMS」
12
走査性共焦点レーザ顕微鏡講習会の様子
94
4. 国内研修支援
◆ 報告者
大学院工学系研究科 機能機械学専攻 修士課程 2 年
児島寿子
◆ 研修期間
2007 年 9 月 5 日
2007 年 9 月 10 日~14 日
◆ 受け入れ先・担当者
北海道衛星株式会社
佐鳥 新 氏
◆ 調査研究題目
ハイパースペクトルカメラによる分析データを利用するため,それを搭載
した人工衛星と,データ取得・解析について学ぶ
◆ 支援内容
滞在費・交通費の一部 助成
95
◆ 研修報告書
(1) 所属・学年
信州大学大学院工学系研究科機能機械学専攻
(2) 氏名
児島寿子
(3) 研修期間
2007 年 9 月 5 日・2007 年 9 月 10 日~14 日
(4) 研修先
北海道衛星株式会社
(5) 受入担当者氏名
佐鳥新
(6) 調査研修題目
人工衛星スピンオフ事業について
修士課程 2 年
(7) 研修目的
ハイパースペクトルカメラによる分析データを利用するため,それを搭載した人工衛星と,データ取
得・解析について学ぶ.
(8) 研修概要
北海道工業大学発のベンチャー企業である北海道衛星株式会社で研修させていただいた.北海道衛星
株式会社では,「北海道で設計され,開発され,製造される」人工衛星(北海道衛星)を開発している.
北海道衛星第1号機の名前は『大樹(たいき)』である.農林水産業分野のリモートセンシングを行う.
ハイパースペクトルカメラで宇宙から北海道を撮影し,おいしいお米作りの手助けをする.米国特許も
取得している軌道維持用のマイクロ波エンジン,最先端の光通信システムを装備する小型衛星である.
北海道衛星株式会社は「宇宙」という新しい視点で,北海道経済を再生しようとしている.
今回は,北海道衛星株式会社で行っている次の事業について,基礎的研修を行ってきた.
ⅰ)超小型衛星『HIT-SAT』の運用についての研修
ⅱ)宇宙開発技術のスピンオフである「鮮度アシスト」を用いた計測実験
ⅲ)北海道衛星『大樹』に搭載するハイパースペクトルカメラを用いた計測実験に関する研修
ⅰ)超小型衛星『HIT-SAT』の運用についての研修
北海道衛星株式会社では,北海道内で設計・製造した
小型衛星を用いて,日本における民間主導の新しい宇宙
産業の創造を目指している.北海道衛星の開発に先立っ
て,体積 12 cm3,質量 2.7 kg の北海道初の超小型衛星
『HIT-SAT』を打ち上げた.Fig.1 に『HIT-SAT』の外
観を示す.『HIT-SAT』は北海道衛星『大樹』の軌道実
験用である.2006 年 9 月 23 日に JAXA(宇宙航空研究開
発機構)の M-V ロケット 7 号機で,太陽観測衛星
「SOLAR-B」の サブペイロードとして地球周回軌道上
へ打上げられた.『HIT-SAT』に搭載したアマチュア無
96
Fig.1
『HIT-SAT』の外観
線局は,北海道工業大学内に設置した地上局により現在も追跡管
制運用している 2).Fig.2 に北海道工業大学内に設置してある地
上局の外観を示す.
HIT-SAT 開発の主たる目的は,北海道衛星開発に向けて集ま
っている研究者,学生,エンジニアらが実際に衛星の打ち上げに
携わることにより,短期間で実際の宇宙開発の経験を蓄積するこ
とにある.HIT-SAT は主衛星である SOLAR-B が放出された後,
分離機構によりロケットから宇宙空間へ射出された.ミッション
の内容は,
①
太陽指向制御実験
②
熱設計の軌道上での評価
③
衛星分離機構の機能確認
④
衛星通信の基礎データ取得
⑤
電源系の充放電サイクルに伴う軌道上での劣化評価
Fig.2
等を予定している.
HIT-SAT 地上局の外観
ⅱ)携帯型鮮度測定器「鮮度アシスト」を用いた計測実験
ⅱ-1)
「鮮度アシスト」について
「鮮度アシスト」とは,植物細胞の活性度により「鮮度」として数値で表示できる携帯型鮮度測定器で
ある.鮮度の定義は曖昧であった.そこで,北海道工業大学の佐鳥研究室では,植物細胞の活性度を鮮
度と定義し,それを数値で表す携帯型鮮度測定器「鮮度アシスト」を開発した.これは,人工衛星に使
うハイパースペクトルカメラ(※ⅲ)参照)という特殊カメラの技術を利用している 3).
植物細胞の活性度は葉緑素による光吸収量,つまり光合成をどのくらい行っているかという能力と相
関関係がある.植物の葉の表面に可視から近赤外までの光を照射して,各波長の光の反射強度を読み取
ることにより,植物細胞の活性度を直接計測し,鮮度を数値化する.植物細胞の活性度,すなわち「鮮
度」を測定できる「鮮度アシスト」は,さまざまな分野での活躍が期待される.作物の生育状況や果実
の収穫適期予測,野菜,花や木の品質評価や鮮度管理,流通におけるトレーサビリティの指標などへの
応用が考えられている.
ⅱ-2)
色計測用鮮度アシストの基準色を求める実験 4)
本研修では,色計測用鮮度アシストのキャリブレーシ
ョンを行うための基準色を見つける実験を行った.使用
した実験器具を Fig.3 に示す.左から測定治具,鮮度ア
シスト,カラーチャートである.
鮮度アシストは,8 個の LED(R0~R7)が発した赤外
線の反射をフォトリフレクタで読み取り,その受光値に
より鮮度を決めている.鮮度アシストを色計測用にも活
用できるように,キャリブレーションを行う基準色を見
つける.8 個の LED は受光値にばらつきがある.R1,
R2 は飽和してしまっているカラーがあり,R0,R7 は全
97
Fig.3
実験器具
Table 1
体的に受光電圧が低い.
カラーチェッカー24 色と標準白色,暗電流を
white0
調べるためのブラックボックスの計 26 色につい
カラーチェッカー
bulishgreen
標準白色
white(.05)
orange
neutral8
yellowgreen
neutral6.5
moderatered
neutral5
purplishblue
ふさわしい色の条件は,
neutral3.5
purple
・ LED が飽和しないこと.
black(1.50)
orangeyellow
・ 電圧の平均値が低すぎないこと.
black(0)
以上のことから,blueflower ,neutral6.5 を選ん
darkskin
green
だ.
lightskin
red
bluesky
yellow
foliage
magenta
blueflower
cyan
て測定した.Table 1 にカラーチェッカー26 色を
示す.Fig.4 に 26 色の受光電圧値を示す.この 26
色の中からキャリブレーションを行うのにふさ
わしい色を選んだ.
ブラックボックス
blue
5000
white0
white(.05)
neutral8
neutral6.5
neutral5
neutral3.5
black(1.50)
black(0)
darkskin
lightskin
bluesky
foliage
blueflower
bulishgreen
orange
yellowgreen
moderatered
purplishblue
purple
orangeyellow
blue
green
red
yellow
magenta
cyan
4500
4000
3500
電圧[mV]
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
R0
R1
R2
R3
Fig.4
R4
R5
R6
R7
26 色の受光電圧値
次に,blueflower を基準として設定した鮮度アシストを用いて,基準色の反射率を調べた.Table 2 に
blueflower の反射率とその誤差率を示す.シリアル番号 11A00001025,11A0000408,11A0000555,
11A0000566,No.2 の 5 台の鮮度アシストを用いて,個体差を調べた.さらに,Neutral6.5 を基準として
設定し,同じように反射率を調べた.Table 3 に Neutral6.5 の反射率とその誤差率を示す.blueflower ,
Neutral6.5 ともに,誤差率は 0~3%以内であった.
98
Table 2
blueflower の反射率とその誤差率
シリアル番号
R0
R1
R2
R3
R4
R5
R6
R7
平均値
11A0000102
10510.00
10433.17
10336.67
10592.33
10410.00
10450.42
10457.50
10470.83
10457.61
0.012
11A0000408
10433.85
10341.92
10357.77
10525.23
10227.92
10289.38
10272.92
10306.77
10344.47
0.014
11A0000555
10509.64
10410.64
10475.45
10654.91
10227.09
10181.36
10011.00
10052.82
10315.36
0.031
11A0000566
10707.09
10422.73
10464.36
10619.27
10531.09
10599.36
10463.45
10465.18
10534.07
0.013
No2
10290.13
10282.00
10225.13
10393.53
10213.33
10349.67
10240.73
10248.40
10280.37
0.009
Table 3
誤差率
Neutral6.5 の反射率とその誤差
シリアル番号
R0
R1
R2
R3
R4
R5
R6
R7
平均
11A0000102
10134.65
10171.65
10169.18
10231.47
10168.12
10020.47
10085.12
10251.00
10153.96
0.011
11A0000408
10099.23
10109.23
10107.23
10169.62
10105.62
10053.31
10108.31
10035.85
10098.55
0.007
11A0000555
10202.54
10143.85
10181.69
10239.54
10087.38
10016.00
10004.23
10014.85
10111.26
0.012
11A0000566
10145.06
10069.13
10131.94
10180.81
10076.88
10060.44
10149.31
10296.69
10138.78
0.012
No2
10096.13
10099.00
10158.00
10201.44
10161.19
10056.88
10130.69
10129.38
10129.09
0.007
誤差率
鮮度アシストの R1,R2 の LED の出力が高いこともあり,受光電圧値にばらつきがある.これを均等
にするようなキャリブレーションを行うために,基準となる色を選んだ.候補として,blueflower ,
Neutral6.5 があげられた.どちらを用いた設定でも,反射率においてそれぞれの誤差率は 0~3%以内で
あった.サンプルによる個体差もその程度であった.Blueflower と Neutral6.5 を比較すると,標準白色
に近い白系である Neutral6.5 がより適切であると考えられる.
ⅲ)ハイパースペクトルカメラを用いた計測実験に関する研修
ⅲ-1)
ハイパースペクトルカメラについて
ハイパースペクトルカメラ(HSC:Hyper Spectrum Camera)とは,撮影画像の1画素毎に,その画素
位置におけるスペクトル情報を持つ画像を撮影することができる特殊カメラである.北海道工業大学の
佐鳥助教授らが中心となった北海道衛星プロジェクトが,日本国内で初めてハイパースペクトルカメラ
の製品化に成功した宇宙開発技術のスピンオフ商品である.HSC で撮影された画像データをハイパース
ペクトルデータという.ハイパースペクトルデータとは,光を波長として捉え,高い波長分解能を持ち,
各波長における光の強さを測ったハイパースペクトル情報を撮影画像の画素毎に持つデータの事であ
る.ハイパースペクトルデータは画像の 1 画素毎にスペクトルデータを持つという特徴から,画像とし
ての二次元的要素と,スペクトルデータとしての要素をあわせ持った三次元的構成のデータである.
HSC は 1 回の撮影で形状認識と物性に関わるスペクトル情報を同時に測定できる特徴が注目され,リ
モートセンシングの分野において,農作物の作柄や生育状況,タンパクマップなどの作成に活躍してい
る.また,他のセンサにはないその驚異的なデータ量から農業の他,品質管理や医療,コンクリートの
歪み調査など,様々な分野で利用する研究が開始されている.
99
ⅲ-2)HSC を用いた実験に関する研修
HSC は対象物をさまざまな種類(波長)の光にわけて撮影することができる特殊なカメラである
(Fig.5).ここでは,発芽から出荷されるまでのさまざまな時期のある植物を撮影しサンプルを作る.
どのサンプルが撮影したある植物の出荷適正時期なのかを見つける.そして,そのデータを用いて,他
のある植物において,適正出荷時期を判別するのである.
Fig.5
HSC が撮影した映像 5)
HSC を用いて,植物の生育状況を測定した.江別市にある農家の畑で行った.その日の太陽の照度を
調べ,キャベツについて測定し(Fig.6).また,エンドウマメの葉の葉緑体の数を調べた(Fig.7).さ
らに HSC で葉の撮影も行った.佐鳥研究室の研究テーマの 1 つで,私はそれを手伝った.
(a) 測定装置設定
(b)
Fig.6
キャベツの測定
100
HSC
(a)
(b)
葉緑体測定装置
Fig.7
実験の様子
エンドウマメの葉の測定
ⅳ)全体のまとめ
この研修を通して,人工衛星スピンオフ事業について学んだ.「HIT-SAT」は超小型衛星であり,今後北海道
衛星『大樹』を打ち上げるための,軌道実験用である.佐鳥研究室にて,『大樹』に搭載する予定であるハイパー
スペクトルカメラについての研究,その仕組みを利用した鮮度アシストの研究を行った.鮮度アシストの使用方法,
ハイパースペクトルカメラの利用方法などを学んだ.これら衛星のスピンオフが意外なものに有効活用できること
がわかった.
参考文献
1) HIT -SAT project ,http://www.hit.ac.jp/~satori/hitsat/,(2005).
2) エバ・ジャパン株式会社,http://www.ebajapan.jp/,(2007).
3) 大野努,北海道工業大学大学院工学研究科 応用電子工学専攻,キャリブレーション方法について
の報告”(2007).
4) 北海道衛星「大樹」,北海道衛星株式会社,http://www.hokkaido-sat.jp/explain3.html,(2004)
<謝辞>
この研修を受けて入れていただきました北海道工業大学工学部電気電子工学科助教授佐鳥新先生に
は厚く感謝いたします.1 週間という短い期間でしたが,佐鳥先生の秘書である山崎さん,研究のサポ
ートをしていただいた佐鳥研究室の M1 の大野君,青柳君,M2 の竹内君,西舘君には大変お世話にな
りました.そして,その他の佐鳥研究室の皆さんには,突然来た私を暖かく迎え入れていただきいただ
きました.色々とありがとうございました.
101
◆ 研修経験談
信州大学大学院工学系研究科機能機械学専攻
修士課程 2 年
児島寿子
1. 研修先における就労・教育システムの新たな知見
研修先は北海道工業大学(Fig.1)発のベンチャー企業である「北
海道衛星株式会社」であった.この会社を起こしたのは,北海道工業
大学電気電子工学科の佐鳥先生とその研究室の学生であったので,研
修は佐鳥研究室で行った.北海道衛星株式会社は大学と 200 m ほど離
れたところに一軒家を借り,そこで活動していた(Fig.2).北海道衛
星株式会社は 2004 年に設立された.まだ社員はおらず,社長の佐鳥
先生 1 名だけの会社である.研究室の学生が研究活動の一環として会
Fig.1
北海道工業大学
社の業務を行っている.
Fig.2
北海道衛星株式会社
2. 研修先で印象に残った事柄(所属大学との比較など)
大学院修士課程 2 年生が大学院修士課程 1 年生に,大学院修士課程 2 年生,大学院修士課程 1 年生が
学部 4 年生に指導する体制が徹底していた.
3. 後輩へのアドバイス
(1) 研修先で活動を行うに際して注意する事柄
この研修先は大学発ベンチャー企業であった.他の一般企業でのインターンシップや,今まで
SVBL において行われてきた海外派遣の研修と違い,研修の申し込みをする段階から受け入れ先
とのコンタクトに手間取った.受け入れ先も初めての経験だったと思われる.受け入れ先の状況
を優先し,把握してから期間を決める.
(2) 事前に必要な調査や準備について
当たり前のことであるが,できる限り研修内容について勉強しておく.研修内容が特異であった
り,企業秘密であったりすると,詳しい事前調査ができない可能性もある.あらかじめ,研修期間
内の打ち合わせを受け入れ先としっかりと連絡を取り行っておく.
(3) 研修先での生活について
研修先が実家の近くであったため,実家から電車で通った.
研修は佐鳥研究室で行い,研究室の学生に指導していただいた.研究生活は信州大学繊維学部機
能機械学科の研究室での生活と同じであった.
(4) その他
ベンチャー企業は一般企業と違い,設備が整っているわけではない.見るべきところは,どのよ
うな事業で企業を起こせたかというところだと思う.
102
5. 研究者の招聘
◆ 招聘者一覧
招聘研究者
Prof.Heinrich Planck 氏
ITV デンケンドルフ繊維研究所所長.シュトゥットガルト大学教授
招聘期間
2007 年 6 月 20 日
テーマ
Application of fibers in medical application
招聘研究者
Andrew Nafalski 教授
南オーストラリア大学
招聘期間
2007 年 7 月 12 日
テーマ
南オーストラリア大学の技術環境と教育
招聘研究者
大宮
昭博
氏
(有)九芝エンジニアリング
招聘期間
2007 年 10 月 11 日
テーマ
ものづくりとカイゼン
招聘研究者
村田 朋美 氏(Ph.D)
顧問
北九州市立大学 環境空間デザイン学科
招聘期間
2007 年 11 月 14 日
テーマ
「モノづくり」から「価値づくりへ」
103
特任教授
◆ 招聘研究者による特別講演会
Application of fibers in medical application
講演者
Prof.Heinrich Planck 氏
(ITV デンケンドルフ繊維研究所所長.
シュトゥットガルト大学教授)
日時
平成 19 年 6 月 20 日(水)13:30~14:30
場所
繊維学部
総合研究棟7F ミーティングルーム1
南オーストラリア大学の技術環境と教育
講演者
Andrew Nafalski 教授
(南オーストラリア大学)
日時
平成 19 年 7 月 12 日(木)13:00~14:30
場所
繊維学部
総合研究棟7F ミーティングルーム1
ものづくりとカイゼン
講演者
大宮 昭博 氏
((有)九芝エンジニアリング
顧問)
日時
平成 19 年 10 月 11 日(木)13:00~14:30
場所
繊維学部
総合研究棟7F ミーティングルーム1
「モノづくり」から「価値づくりへ」
講演者
村田 朋美 氏(Ph.D)
(北九州市立大学 環境空間デザイン学科
特任教授)
日時
平成 19 年 11 月 14 日(水)13:00~14:30
場所
繊維学部
総合研究棟7F ミーティングルーム1
104
◆ 特別講演会資料(2007.10.11)
職 務 経 歴 書
大宮 昭博
生年月日 : 1943年02月20日 (64歳)
要 約
航空宇宙分野の工場部門で、製造部長、生産技術部長、生産管理部長、
工場長を歴任し、数々の新規事業を立上げ、軌道にのせた。
次いで関連会社の精密鋳造メーカーで常務取締役生産本部長として、中
長期ビジョンの策定、工場の統廃合の策定と推進、工場生産のカイゼンを
推進した。
推進した
職 歴
1965年03月;信州大学繊維学部繊維機械学科卒業
1965年04月~1999年06月;石川島播磨重工業(株)航空宇宙事業本部
田無工場; 生産技術部技術グループ課長、
呉第2工場; 製造部長、生産技術部長、生産管理部長、副工場長、工場
長.
瑞穂工場; 副工場長兼生産計画部長
1999年06月~2004年06月;石川島精密鋳造(株)
常務取締役生産本部長
ものづくりとカイゼン
プロダクション & ファクトリー
マネージメント コンサルタント
大宮 昭博
ものづくりとカイゼン
コンサルタント実績
2004年07月;(株)ヒロコージェットテクノロジー( 広島県:ジェットエンジン部品
機械加工 )
2004年07月;(有)九芝エンジニアリング( 北九州市:深穴加工機械メーカー )
非常勤顧問
2004年07月;(株)エムエムケー( 東京都:工作機械販売商社 )
2005年06月;住友商事株式会社 / ロシアNPO Saturn社( ガスタービン製
造 )
2005年09月;IHI Turbo ( Thailand ) Co; Ltd.( 石川島播磨重工業のタイ現
地法人・・車両用ターボチャージャー製造 )
目次
1. ものづくりとは?
3
1.1 ものづくりはモノに付加価値をつける
3
1.2 ものづくりは利益を生み出さなければならない 4
1 3 ものづくりはカイゼンし続けなければならない 5
1.3
1.4 ものづくりはヒトづくり
6
2. 組織とは?
7
2.1 組織の3要素
7
2.2 日本のものづくり文化
8
2.3 トヨタのものづくり文化-トヨタ ウエイ( 経営上
の価値観や手法 )と TPS( トヨタ生産システム )
9
ものづくりとカイゼン
1. ものづくりとは?
1.1 ものづくりはモノに付加価値をつける
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使うトヨタ
ウエイ
10
3.1 長期的考え方
11
3.2 正しいプロセスが正しい結果を生む
12
3 3 人とパートナー企業を育成して会社の価値を高める
3.3
人とパ トナ 企業を育成して会社の価値を高める
鉄鉱石
素材工場
付加価値をつける
ボデイ・タイヤ
19
3.4 継続して根本問題に取り組んで組織的学習を行う
22
4. TPS( トヨタ生産システム )
25
4.1 TPSの家
25
4.2 TPSの真髄・・・ムダ取り
27
4.3 価値システムの中のムダ
30
鉄板・鉄棒
1 1 ものづ
1.1
ものづ
製品(組み立て)工場
部品工場
付加価値をつける
自動車
付加価値をつける
付加価値とは、素材を消費者(顧客)が使える形に近づける。
消費者(顧客)は、その付加価値(品質、価格、納期等)が自分の期待を満たしていれば、お金を払う。
ものづくりにかかった費用に対して払うわけではない。
105
1. ものづくりとは?
1. ものづくりとは?
1.2 ものづくりは利益を生み出さなければならない
1.3 ものづくりはカイゼンし続けなければならない
売り手市場では、
社会環境、消費者(顧客)のニーズは絶えず変化する。従って、ものづくりはモ
ノへの付加価値のつけ方を絶えずカイゼンしていかなければならない。
製造コスト(製造にかかった費用)+利益=売値
工場ではまず、消費者(顧客)の注文を受けて現金を手にするまでの時間の流
れの中で、付加価値を生まない時間とモノのムダをとり除かなければならない
( 大野 耐
耐一 )。
市場経済では、
市場価格-製造コスト(製造にかけられる費用)=利益
カイゼンではとりあえず実際にやってみること。行動を起こすことをもっとも重
視。
利益を上げているということは、消費者(顧客)が付加価値
を認めるモノを、効率よく作っている証拠。
世の中には分からないことが多いから分からないんだったらまずやってみる。
そうすると自分の無知に気づき失敗の原因を考えてまたやる。2回目でも別の
失敗をして,もうちょっとカイゼンできるところが見つかるのでまたやってみる。
そうやって絶え間ないカイゼン、まずやってみるカイゼンで自分のレベルや知
識をどんどんあげることが出来る(張 富士夫)。
逆に赤字を出している工場は、世の中から貴重なヒト,モノ,
カネを預かり、限りある原材料を委託されながら、消費者
(顧客)の生活に役立つモノを効率良く生み出せずにいる。
成功の秘訣は成功するまでチャレンジし続けること
1. ものづくりとは?
1.4
2.組織とは?
ものづくりはヒトづくり
2.1 組織の3要素
伝達; 互いに意見を伝達できる人々がおり
変化に対応できるモノを作る技術とそれを活かす管理の仕組
みが必要。
貢献意欲; それらの人々は行為を貢献しようとする
意欲を持って
Q( Quality; 消費者の期待を満たしている )、C( Cost; いか
に安く作るか), D( Delivery; 生産量と納期の管理 )で管理
する。
共通目的; 共通目的の達成を目指す
技術、仕組みを創り、カイゼンし、それを活かすも殺すもヒト
次第。
経営者、管理者は組織の目標を明確にし、共通の
目標に向かってその達成方法を示し(価値観の共
有)、
会社のトップが、絶え間ないカイゼンのカルチャーを定着させ
るために、ヒトへの投資を惜しみなく続けること。
一致団結する(チームワーク)ような動機付けをおこ
ない、障害を取り除き、メンバーを助ける。
トヨタのトップは、トヨタは自動車を作る会社ではなくヒトを育て
る会社であると思っている。
2.組織とは?
2.組織とは?
2.3 トヨタのものづくり文化 - トヨタウェイ( 経営上の価値観
や手法 )とTPS( トヨタ生産システム )
2.2 日本のものづくり文化
・貢献意欲が強い
・ 日本のものづくり文化を発展させたのがトヨタのモノづくり文化
・共通の目標に向かって、作業者と上司が一緒になってチームと
して行動し、問題を解決する。
・ 継続的カイゼンと個人の尊重継続的カイゼンの真の価値は、継続的学習
の雰囲気を作り、変化を受けいれるだけでなく歓迎する環境を作ること。こ
のような環境は個人の尊重なしには作りあげることができない。
・チ ム全体で考え出した最良の方法に、みんなが従うという考
・チーム全体で考え出した最良の方法に
みんなが従うという考
え方は極めてあたりまえ。
・ 経営者や管理者の最大の役割は、目標を定め、明らかにすること、目標
の達成方法を示すこと、一緒に目標達成に努力するように動機付けること、
目標達成の障害を取り除き社員を助けること。
・日本では良い点は指摘せず、悪い点を集中して指摘する。
・ TPS( トヨタ生産システム )は単なる手法の集まりではなく、構造( 屋根
は最高品質、最低コスト、最短リードタイムというゴール、二本の柱はジャス
トインタイムと自働化、システムの中心は人、基礎は標準化や安定して信
頼性の高いプロセスや平準化等 )に立脚したシステム。
・反省は日本のカルチャーの一部。
・日本の子供は反省することを学びながら育つ。
人々をカイゼンに追い立てるのは向上心、つまり完全を目指す
心からの情熱
・ 社員一人ひとりが継続的カイゼンに参加するのを尊重する組織やカル
チャーでのヒトの役割と、付加価値を高める”流れ”を重視する技術システ
ムのバランスで成り立っている。
106
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として
使う トヨタ ウエイ
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイの4Pモデル
3.1 長期的考え方
問題解決;継続的に根本問題に取り組んで継続的学習をおこなう
12. 現地現物を徹底的に理解するように自分の目で確かめる
13. 意思決定は、じっくりコンセンサスを得ながらあらゆる選択肢を十分に検討するが、
実行はすばやくおこなう
14. 執拗な反省と絶えまないカイゼンにより、学習する組織になる
人とパートナー; 人とパートナー企業を育成して会社の価値を高める
9. 仕事をよく理解し、思想を実行し、他人に教えるリーダーを育成する
10. 会社の考え方に従う卓越した人とチームを育成する
11. パートナーや部品メーカーの社外ネットワークを尊重し、カイゼンするのを助ける
プロセス;正しいプロセスが正しい結果を生む
2. 淀みの無い流れを作って、問題を表面化させる
3. プルシステムを利用して、作りすぎのムダを防ぐ
4. 生産量を平準化する(ウサギでなく亀のペースで仕事する)
5. 問題を解決するためにラインを止め品質を最初から作りこむカルチャーを定着させる
6. 標準化作業が絶え間ないカイゼンと従業員の自主活動の土台になる
7. 全ての問題を顕在化させるために目で見る管理を使う
8. 技術を使うなら、実績があり、枯れた人や工程に役立つ技術だけを使う
哲学;長期的考え方
1. 短期的財務目標を犠牲にしても長期的考え方で経営判断する
原則1; 短期的財務目標を犠牲にしても、長期的考え方で経営判断する
・経営者は、短期利益を超越した目的意識の思想を持つこと。
会社を単なる金儲けより大きな共通目標に向かわせ、方向付けして成長させること。
経営者自身の会社の歴史の中での役割を理解し、会社を次のレベルに高揚させるた
めに努力する。
めに努力する
経営者の思想的な使命こそが他の全ての原則の基礎になる。
・行動の出発点は、顧客、社会と経済に対して付加価値を創造することである。
会社のあらゆる機能をこの観点から見直す。
・自己責任を持つ。
自らの運命を切り開くように努力する。
自立精神で行動し、自分の能力を信じる。
自分の行動の責任は自分で取り、付加価値を生み出すための能力を改善する努力を
続ける。
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として
使う トヨタ ウエイ
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として
使う トヨタ ウエイ
3.2 正しいプロセスが正しい結果を生む
原則3; プルシステムを利用して、作りすぎのムダを防ぐ
原則2; 淀みの無い流れを作って問題を表面化させる
・ 仕事のプロセスを、高い付加価値と淀みの無い流れを実現するよう
に再構築する。
仕事、製品、プロジェクトなどについて、次の作業が始まるまで何も
しないで待っている時間を出来る限りゼロにする。
しな
で待 て る時間を出来る限りゼ にする。
・ 製品や情報が速く流れるように流れを作ると同時に、問題点がすぐ
に顕在化するようにプロセスや人の間を緊密に繋げる。
・ 流れを組織カルチャーの中で重視する。
これが真の絶え間ないカイゼンのプロセスを実現し、従業員を育て
るための最も重要な要素である。
・ 製造工程中、あなたの下流にいる顧客が必要とするものを、必要とする
ときに、必要とする量だけ供給する。
JITの基本原則は、消費された分だけ材料を補充することである。
・ 各製品の在庫を少しづつだけ持ち、顧客が実際に消費した分だけ補充す
ることにより、仕掛と在庫の倉庫での保管を最小限にする。
・ コンピューター上の生産計画や、ムダな在庫を管理するための情報シス
テムに頼らず、毎日の顧客の需要の変化に敏感に反応する。
設備を止めて、生産しないほうが良い場合がしばしばある。
出来るだけ早く作業者に製造させることが最優先で無い場合がある。
生産リードタイムを縮めて生産ラインをフレキシブルにする努力を積み
重ねれば、品質、顧客ニーズへの対応、生産性、設備稼働率、フロ
アー使用効率がよくなる。
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う トヨタ
ウエイ
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として
使う トヨタ ウエイ
原則5; 問題を解決するためにラインを止め、品質を最初から作りこむ
カルチャーを定着させる。
原則4; 生産量を平準化する
(ウサギでなく亀のペースで仕事する)
・ 顧客にとっての品質が、あなたの会社の提供する価値を決定づける。
・ 品質管理のツールをすべて使いこなす。
・ ムダの排除はトヨタ ウエイを成功させる秘訣の3分の1にすぎない。
人や設備に対する過負荷を防止し、生産計画の時期による変動を取
り除くことは、ムダ取りと同様に重要でありながら、トヨタ ウエイを導
入しようとしている会社でそれほど良く理解されていない。
・ まとめてロットで作ることは一般企業でよく見られるが、そうではなく
あらゆる生産、サービス工程での負荷を平準化する。
・ 生産設備に、問題を自動的に検出して停止する機能をつける。
自動化された工程で人の助けが要ることをチームやプロジェクトリーダーに視覚で
伝達する
伝達する。
目で見る管理システムを開発する。
自働化は品質の作りこみの基礎である。
・ 工場のサポート部門の中に問題を素早く解決し、改善策を実行する機能を組み込む。
・ 長い目で見て生産性を高めるために、不良発生時には生産を止めたり遅らせたりす
一個流し
シングル段取り
る思想をカルチャーに組み込む。
後工程はお客様( 後工程と社外の最終顧客 )
QC七つ道具、新QC七つ道具
顧客の需要の変動とまったく連動して生産するよりも、完成品の在庫を
持つことで生産を平準化するほうが良い場合がしばしばある。
アンドン、黒子、標準手持ち
手作業のほうが良い場合がしばしばある
107
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイ
暗黙知と形式知
原則6; 標準化作業が絶え間ないカイゼンと従業員の自主活
動の土台となる
暗黙知と形式知
・ 工程の信頼性を高め、生産が同じペースで同じアウトプットに安定化するよ
うに、枯れた再現性の高い手法をどこにも使う。これが流れ化とプルの基礎
である。
・ 現在使われているベストプラクテイスを標準にすることによって、工程に関
して今まで組織として学習した全てを集大成して定着させる
して今まで組織として学習した全てを集大成して定着させる。
採用した標準に対して個人の創意工夫によるカイゼンを可能にし、それを
また新しい標準に採用することで従業員が他の工程に移ってもそれまで学
習されたことを次の人に引継ぎ出来るようにする。
共同化
Socialization
個人
暗黙知
組織
暗黙知
内面化
Internalization
表出化
Externalization
個人
形式知
ナレッジマネージメント; 野中 郁次郎
暗黙知と形式知、個人と組織
組織
形式知
連結化
Combination
組織的知識創造
個人的、暗黙的知識を基礎に、組織レベルの明示的革新を生み出していく
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイ
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイ
原則7; 全ての問題を顕在化させるために目で見る管理を使う
原則8; 技術を使うなら、実績があり、枯れた人や工程に役立つ
技術だけを利用する
5定( 定位置、定量、定姿、定時、低質 )
・ 新技術は人をサポートするために入れるのであって、人を減らすために入れるべ
きではない。
自動化する前に人手作業のままでカイゼンするほうが良い場合が多い。
新しい技術はしばしば信頼性が低く 標準化が困難なため 流れを乱しやすい
・ 新しい技術はしばしば信頼性が低く、標準化が困難なため、流れを乱しやすい。
一般的には実績の無い新技術より、安定して動く枯れた技術を優先すべきである。
・ ビジネスプロセス、生産システム、製品に新技術を入れる場合には、実地試験を
必ずおこなう。
・ 会社のカルチャーと相反したり、安定性、信頼性を低下させたりする新技術は導
入しないが、するにしても手直しを加えてからおこなう。
・ 以上の方針にもかかわらず、全員が作業のカイゼン方法を探す場合には、新技
術の検討を促す。
新技術でも、実地試験を合格して工程の流れをカイゼン出来るのであれば、素早
く導入する。
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイ
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイ
・ シンプルで視覚に訴える表示方法を導入し、誰でも自分たちが正
常な状態のか、そこからいるのかがひと目で分かるようにする。
従業員の注意を本来の作業からそらす場合、コンピューターは導
を本来 作業
そ す場合、
導
・ 従業員
入しない。
・ 実際に作業がおこなわれている現場にシンプルな目で見える管理
の仕組みを導入し、それで流れ化とプルを促進させる。
・ たとえ最も重要な仕事上の判断をする場合でも、報告書は可能な
限り紙一枚以内に限定する。
5S( 整理、整頓、清掃、清潔、躾 )
原則10; 会社の考え方に従う卓越した人とチームを育成する
3.3 人とパートナー企業を育成して会社の価値を高める
原則9; 仕事を良く理解し、思想を実行し、他人に教えるリーダーを育成する
・ 会社の価値観や信念が何年にも渡り全員に共有され実行されている強い、
安定したカルチャーを醸成する。
・ リーダーは社外からスカウトするのではなく、内部で育成する。
・ リーダーは単に職務を実行する能力や対人関係能力が高けれ
リ ダ は単に職務を実行する能力や対人関係能力が高けれ
ば良いと考えない。
リーダーは会社の基本思想と事業のやり方を身をもって示す模
範でなければならない。
・ 良きリーダーは、会社の基本思想を部下に教育出来るように、
日常の業務を詳細に理解していなければならない。
・ 会社の基本思想に忠実に行動して卓越した成果を出せるような、卓越した
個人やチームを育成する。
カルチャーを常に強化するための努力を続ける。
・ 難しい技術的な問題解決のためには、機能横断チームを組織化して、 品
質や生産性を改善し、流れを良くする。
・ 各個人がチームの中で上手く働けるように教育する努力を継続する。
チームワークは全員が先天的に持っているわけではなく、 意識的に教育し
なければならない。
108
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイ
3. 卓越したものづくりの力を戦略的武器として使う
トヨタ ウエイ
原則14; 執拗な反省と絶え間ないカイゼンにより学習する組織になる
原則13; 意思決定はじっくりコンセンサスを得ながら、あらゆ
る選択肢を十分に検討するが、実行は素早く
・ 一度安定したプロセスが出来たら、非効率の根本原因を見つけ、効果的な対策を
採るために、継続的改善のツールをつかう。
・ 在庫を必要としないプロセスを設計する。
そうすると全ての人が時間と資源のムダに気づく。
ムダが明るみに出たら従業員に継続的改善プロセスに取り組ませ、ムダを除去さ
せる。
・ 安定した個人、緩やかな奨励、非常に注意深い継承システムを作ることで、組織
の知識基盤を守る。
・ プロジェクトのあらゆる欠点をオープンに確認するために、重要な節目やプロジェ
クト終了後に反省する。
そして同じ間違いを避けるために対策を立てる。
・ 新しいプロジェクトや新しい管理者毎に一から始めるのではなく、ベストプラクテイ
スを標準化することで学習する。
・ 完全に検討が終わるまでは、ある方向を選択して行動しない。
・ 根回しは衆知を集め、前向きな合意を得るために問題を議
論し、影響する全てに関して可能な解決を探る
プロセスである。この合意のプロセスは時間がかかるが、解
決の幅を広げ、いったん決まると直ちに実行される。
7つの方法
4. TPS ( トヨタ生産システム )
4. TPS ( トヨタ生産システム )
4.1 TPSの家
豊田 佐吉; 自分の手を汚すという手法が、トヨタウエイの
土台のひとつである” 現地現物 ”の源になった。また佐吉
の発明のひとつに紡績中に糸が切れると自動的に紡績機が
停止するという機構があり、この発明はその後、トヨタ生産シ
ステムの二つの支柱のうちの一つである”自動化
ステムの二つの支柱のうちの
つである 自動化 ”へと発
と発
展した。
最高品質・最小コスト・最短リードタイム
最も安全で、最高の勤労意欲
ムダ取りによって生産の流れを短くする
JIT
従業員とチームワーク
必要なものを、必要なだけ、必要なときに ・選択 ・稟議による意思決定
自働化(停止することによる
品質管理
品質管理 )
問題を視覚化
・ タクトタイムで計画
・共通の目標・多能工として訓練
・自動停止
・ 継続的な流れ
継続的カイゼン
・アンドン
ムダ取り
・ プルシステム
豊田 喜一郎; ジャストインタイムは喜一郎の発案による。
ジャストインタイムのアイデアは、喜一郎が米国ミシガン州
のフォードの工場を見学した際、 スーパーマーケットで客
がモノを買うたびに棚の商品を補充するのを見たことに触発
されて生まれた。スーパーマーケットを模したこのビジョンが、
ジャストインタイム、カンバン、プルシステムの土台となった。
・人と機械の分離
・ 素早い段取り換え
・現地現物 ・ムダを見抜く
・間違い防止
・ 統合された物流
・五つのなぜ ・問題解決
・問題の本当の原因に取り組む
平準化
安定して標準化された工程
目で見る管理
トヨタ ウエイ の カルチャー
4. TPS ( トヨタ生産システム )
4. TPS ( トヨタ生産システム )
1) 作りすぎのムダ
4.2 TPSの真髄・・・ムダ取り
実際の需要以上に製品を作ることによって、過剰人員や過剰在庫による保
管、移動 のムダを生む。
顧客( 次工程と社外の最終顧客 )は、この工程から何を欲しがってい
るのか ?
2) 手待ち時間のムダ
この工程は、顧客に対してどのような付加価値を生みだしているの
の 程は、顧客 対してどのような付加価値を みだして るの
か ?
作業者が、自動化設備が動くのを監視しているとか、次の工程、工具、部品
などを待つ、部品の欠品によりやる作業が無い、ロットの作業の完了待ち時間
などを待
部
欠
作業が無
作業 完 待 時
など、設備の故障や生産能力のボトルネック。
大野 耐一は、加工されている材料も長い行列で待たされると、人間と
同様にいらいらしていると考えた。
3) 搬送のムダ
原材料に付加価値を付けていくプロセスだけを探し出して、それ以外を
全て排除する。
仕掛品を長距離運搬したり、非効率的な搬送方法を採用したり、工程間で部
品や製品を倉庫に出し入れすること。
黒子、水すまし; 直接労働を限定的に間接部門に置き換えることが良
い場合がしばしばある。
4) 加工のムダ
部品加工の際に不要な作業を含めること。工具の状態が悪かったり、設計が
まずかったりして加工が非効率になり、不要な動作や不良品を生みだすこと。
また必要以上に高品質の製品を作る際にもムダが生じる。
医者と看護師
109
4. TPS( トヨタ生産システム )
4. TPS( トヨタ生産システム )
4.3 価値システムの中のムダ
5) 在庫のムダ
過剰な材料、仕掛かり、完成品在庫によりリードタイムの長期化、ものの陳腐
化、劣化、保管や移動コストや停滞といったムダが生じる。
時間
6) 動作のムダ
鋳造
移動
ラインに移し替え 取付け
切削加工
検査
組み立て ラインに移
原材料
部品を探す動作、取ろうと腕を伸ばす動作、部品や工具を積み上げる動作な
部品を探す動作
取ろうと腕を伸ばす動作 部品や 具を積み上げる動作な
ど、従業員の仕事中のあらゆる不要な動作。動き回ることもムダ。
最終段階
付加価値時間
非付加価値時間(ムダ)
7) 不良のムダ
不良部品の製造や手直しのムダ。修理、手直し、廃棄、代替品の生産や検
査は、ハンドリング、時間、作業のムダを発生させる。
8) 従業員の創意工夫を利用しないムダ
・
付加価値時間は全体の中でほんの少ししかない
・
伝統的なコスト削減は、付加価値部分にだけ目を向ける
・
トヨタの思考は非付加価値部分を減らすために価値の流れに目を向
スパゲッティ図
従業員の提案に耳を貸さないために作業時間、アイデア、スキル、カイゼン
や学ぶチャンスを失う。
非付加工程の中にはどうしても必要なものもある。時間を最小化する。
4. TPS( トヨタ生産システム )
4. TPS( トヨタ生産システム )
トラック用シャーシーの組み立てラインのムダ
10) 部品のほうに電動工具を下ろす
1) 部品を組み立てラインに運ぶ
11) 部品にボルトを取り付ける
2) 部品を取りにいき、25M歩く
12) 電動工具でシャーシーのボルトを締める
3) 部品に手を伸ばす
13) 次の部品を取りに25M歩いて戻る
4) 部品を取り付けるボルトを取る
5) 組み立てラインのシャーシーまで25M歩く
6) シャーシーに部品を取り付ける
7) 電動工具を取ってくる
8) 電動工具に手を伸ばす
9) シャーシーに部品を取り付けるため、歩いて電動工具を引っ張る
110
6. 展示会出展
期間
7 月 17 日~7 月 18 日
展示会名称
VBL フォーラム
発表場所
京都大学桂キャンパス
展示内容
SVBL の概要
ローム記念会館内大ホール
9 月 22 日
地域連携フォーラム
信州大学農学部
VBL フォーラムの様子
展示物
111
SVBL の概要,研究成果
7. ものづくり教育GPへの協力
信州大学繊維学部において平成 19 年度から 3 年計画で実施されている「ものづくり技術者育成支援
事業(教育 GP)」に参加している学部学生と連携し、SVBL 研究員の研究成果展示用模型を収納する LED
照明ショーケースの開発に協力した。
平
翔太さん
112
Ⅳ.
資料
1. 事業歴
平成 19 年度
4月1日
曽根原誠 研究員 着任(信州大学工学部、PD)
4 月 27 日
ラマン分光光度計講習会
5 月 10 日
平成 18 年度信州大学 SVBL 成果報告会
5 月 30 日
走査型共焦点レーザ顕微鏡講習会
6 月 20 日
研究者招聘(Prof.Heinrich Planck(ITV デンケンドルフ繊維研究所所長、
シュトゥットガルト大学教授)
Prof.Heinrich Planck 氏による特別講演会開催
7 月 11 日
LCMS(液体クロマトグラフ質量分析)講習会
7 月 12 日
研究者招聘(Andrew Nafalski 教授(南オーストラリア大学))
Andrew Nafalski 教授による特別講演会開催
7 月 17 日~18 日
第 4 回全国 VBL フォーラム参加(高崎・曽根原研究員、in 京都大学)
7 月 31 日
藤森良枝 研究員、査明 研究員 退職(信州大学繊維学部、DC)
8 月 6 日~9 日
起業家育成集中セミナー開催
8 月 16 日
桑野幸 技術補佐員 退職
8 月 21 日
丸山昌明 技術補佐員 着任
9月4日
表面プラズモン共鳴測定装置講習会
9月5日
第 2 回信州大学 SVBL ベンチャー・コンテスト開催
9 月 5 日~15 日
国内研修支援(北海道衛星株式会社、児玉寿子)
9 月 22 日
地域連携フォーラム(南箕輪キャンパス)
9 月 26 日
平成 19 年度信州大学 SVBL 成果報告会
9 月 30 日
柴祐司 研究員 退職(信州大学医学部、DC)
10 月 1 日
小林聡 研究員 着任(信州大学医学部、DC)
10 月 4 日
μEDX(エネルギー分散型微小部蛍光 X 線分析装置)講習会
10 月 11 日
研究者招聘(大宮昭博氏((有)九芝エンジニアリング顧問)
パネル出展
大宮昭博氏による特別講演会開催
10 月 23 日
レーザ加工システム講習会
11 月 14 日
研究者招聘(村田朋美氏(Ph.D、北九州市立大学 環境空間デザイン学科 特任教授)
村田朋美氏による特別講演会開催
11 月 30 日
高崎緑 研究員 退職(信州大学繊維学部、PD)
12 月 1 日
高崎緑 助教 着任(SVBL 専任教員)
12 月 11 日
走査性共焦点レーザ顕微鏡(応用編)講習会
12 月 19 日
平成 19 年度信州大学 SVBL P-DEX 機器部門修了発表会
1 月 10 日
張雪蓮 研究員 退職(信州大学理学部、PD)
1 月 10 日
測定機器 技術セミナー「工業材料分野で活躍する MALDI-TOFMS」
2 月 19 日
キャンパスベンチャーグランプリ東京(CVG 東京)信州大学受賞者報告会
3月4日
平成 19 年度信州大学 SVBL 成果報告会
キャンパスベンチャーグランプリ東京信州大学受賞者座談会
3 月 31 日
曽根原誠 研究員 退職(信州大学工学部、PD)
113
◆ 成果報告会
1)
平成 19 年度 信州大学 SVBL 成果報告会
日時:平成 19 年 9 月 26 日(水)
場所:信州大学繊維学部大会議室
(敬称略)
SVBL 研究員成果報告
「レーザーエレクトロスピニング法による極細繊維の開発」
信州大学繊維学部 高崎 緑
「染色体セット操作による水産育種に関する研究」
信州大学理学部 張 雪蓮
「骨髄細胞を用いた新たな血管新生療法の開発」
信州大学医学部 柴 祐司
114
2)
平成 19 年度 信州大学 SVBL P-DEX 機器部門 修了発表会
日時:平成 19 年 12 月 19 日(水) 16:00 ~18:00
場所:繊維学部事務棟 2F 大会議室
(敬称略)
1. 活動の概要説明
y 信州大学繊維学部精密素材工学科 4 年 砂原 賢二 16:15~16:55
2. 微小部蛍光 X 線測定装置(μ-EDX)の講習成果報告
初級技能レベル
y 信州大学繊維学部応用生物科学科 2 年 和泉 文徳
y 信州大学繊維学部応用生物科学科 2 年 中西 忍
y 信州大学修士課程繊維システム工学専攻 2 年 池田寛之
中級技能レベル
y 信州大学繊維学部応用生物科学科 4 年 小寺 拓也
y 信州大学繊維学部精密素材工学科 4 年 砂原 賢二
3. レーザー共焦点顕微鏡の講習成果報告
初級技能レベル
y 信州大学繊維学部機能機械学科 3 年 淺倉 一眞
y 信州大学繊維学部機能機械学科 3 年 山口 竜太
4. 修了証授与式
115
3)
平成 19 年度信州大学 SVBL 成果報告会
/キャンパスベンチャーグランプリ東京(CVG 東京)受賞者座談会
日時:平成 20 年 3 月 4 日(火) 13:30~17:00
場所:信州大学繊維学部総合研究棟 7F ミーティングルーム 1 (報告会)
ミーティングルーム 2(座談会)
(敬称略)
信州大学 SVBL 成果報告会
第Ⅰ部
1. SVBL 研究員成果報告
「電磁波遮蔽効果を有する金属磁性材料コーティングナノファイバー不織布の作製と特性評価」
信州大学工学部
曽根原誠
信州大学農学部
服部恭尚
「ヨウ素を利用した有機/無機ナノコンポジットの創成とその特性」信州大学繊維学部
藤森良枝
「物理的・化学的改質による絹繊維の特性変化に関する研究」
査
明
小林
聡
「バンレイシ科アセトゲニン類の合成と構造活性相関」
「ラット心筋細胞における新規糖鎖結合分子の探索」
信州大学繊維学部
信州大学医学部
2. 国内研修支援成果報告
「人工衛星スピンオフ事業について」
信州大学大学院工学系研究科修士課程 2 年
児島寿子
信州大学大学院工学系研究科修士課程 2 年
市川高希
3. ベンチャー支援成果報告
「大学生のためのリサイクルシステム」
「大学生による地域企業のマーケティング支援 ~キャンパス内・携帯電話・瞬時納入~」
信州大学繊維学部精密素材工学科 3 年
加藤久登
信州大学繊維学部繊維システム工学科 3 年
第Ⅱ部
山崎一也
キャンパスベンチャーグランプリ東京(CVG 東京 日刊工業新聞主催)
信州大学受賞者座談会
参加者
第 2 回 CVG 東京(2005 年度)<特別賞
日刊工業新聞社賞(ニュービジネス部門)>
「オンデマンドプリント事業」
繊維学部感性工学科 2 年
大重幸人(オンデマンドリメイク代表)
・同 4 年
鳴澤真文(前代表)
第 3 回 CVG 東京(2006 年度)<優秀賞(環境・健康・福祉部門)>
「大学生のためのリサイクルシステム」
工学系研究科博士前期課程 2 年
市川高希
第 3 回 CVG 東京(2006 年度)<優秀賞(ニュービジネス部門)&ソーシャルアントレプレナー賞>
「地域活性化事業への障害者の参加」
経営大学院 2 年
北條友裕
第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<優秀賞(情報通信部門)>
116
「大学生による地域企業のマーケティング支援~キャンパス内・携帯電話・瞬時納入~」
繊維学部精密素材工学科 3 年加藤久登・同繊維システム工学科 3 年山崎一也
第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<優秀賞(ニュービジネス部門)>
「宇宙技術(ロケット、衛星、ロボット)競技大会『スペースグランプリ』の開催」
経営大学院 1 年
田中和生
第 4 回 CVG 東京(2007 年度)<第一次審査通過>
「留学生のための日本語教材」
繊維学部感性工学科 3 年
栗原美穂・同 3 年
117
庵谷有紀子
2. 業績リスト
重点研究に関する業績リスト
◆ 出願特許
1) 森村佳司,廣田満,服部恭尚,真壁秀文,「クロマン化合物およびその製造方法」
,ゲオール化学株
式会社,特願 2007-247760,国立大学法人信州大学
「プロシアニジンB1-B4 およびカテキン重合
2) 真壁秀文,提箸正義,山田大士,毛利圭宏,服部恭尚,
体の製造方法」,ゲオール化学株式会社,特開 2007-084536,国立大学法人信州大学
3)
伊勢裕彦,小林聡,高橋将文,麻生真一,池田宇一,「N-アセチルグルコサミン糖鎖認識タンパク
質」, 特願 2007-213039,国立大学法人信州大学
◆ 学会発表
1)
劉 野,木村睦,高崎緑,平井利博,三原孝士,LU Jian,高分子修飾水晶振動子センサによるVOCs
の検出,第 56 回高分子学会年次大会予稿集, 56 (1), 1607 (2007).
2)
高崎緑,藤井健司,符浩,小木曽祐介,小川雄大,仲田一尋,大越豊,木村睦,平井利博,後藤康
夫,奈倉正宣,レーザーエレクトロスピニング -PET 繊維の延伸挙動-,第 56 回高分子学会年次
大会予稿集, 56(1), 893 (2007).
3)
野間聡雅,北出康仁,高崎緑,平井利博,PMMA 膜の電場駆動に及ぼす可塑剤の影響,第 56 回高
分子学会年次大会予稿集, 56( 1,) 1423 (2007).
4)
仲田一尋,高崎緑,藤井健司,小川雄大,符浩,小木曽祐介,大越豊,木村睦,平井利博,後藤康
夫,奈倉正宣,溶融エレクトロスピニングにおける電場が繊維の構造に及ぼす影響,プラスチック
成形加工学会予稿集,279-280 (2007).
5)
符浩,仲田一尋,藤井健司,小川雄大,小木曽祐介,高崎緑,大越豊,木村睦,平井利博,後藤康
夫,奈倉正宣,レーザーエレクトロスピニングによる極細繊維の作製,繊維学会予稿集 2007,62(1),
35 (2007).
6)
高崎緑,仲田一尋,符浩,藤井健司,小川雄大,小木曽祐介,大越豊,木村睦,平井利博,後藤康
夫,奈倉正宣,レーザーエレクトロスピニングによる極細繊維の作製,繊維学会予稿集 2007,62(1),
272 (2007).
7)
劉野,木村睦,高崎緑,平井利博,三原孝士,LU Jian,高分子を製膜した水晶振動子によるVOCセ
ンシング特性,繊維学会予稿集 2007,62(1), 183 (2007).
8)
山本圭一,高崎緑,平井利博,Bencheng Israel Lu,SBP含有PVC膜の光応答特性,繊維学会予稿集
2007,62(1), 184 (2007).
9)
高崎緑,荻原孝文,藤井勝哉,平井利博,木下健,可塑剤含有PVCゲルの電場による特異的駆動と
その応用,高分子学会予稿集 2007, 56(2), 4738(2007).
10) 高崎緑,荻原孝文,藤井勝哉,平井利博,木下健,可塑剤含有PVCゲルの電場による駆動,繊維学
会予稿集 2007, 62(3), 25(2007).
11) 野間聡雅,北出康仁,高崎緑,平井利博,PMMA膜の電場駆動に及ぼす可塑剤の影響,繊維学会予
稿集 2007, 62(3), 162(2007).
12) 山本圭一,高崎緑,平井利博,Bencheng Israel Lu,SBP含有PVC膜の光と電場による駆動,繊維学
会予稿集 2007, 62(3), 163(2007).
13) Midori TAKASAKI, Kenji FUJII, Hao FU, Yusuke KOGISO, Yudai OGAWA, Kazuhiro NAKATA,
Yutaka OHKOSHI, Mutsumi KIMURA, Toshihiro HIRAI, Yasuo GOTOH, and Masanobu NAGURA,
118
Preparation of Ultra-Fine Fiber Using Laser Electrospinning Process , Proceedings of International
Nanofiber Symposium 2007, 273 (2007).
14) Midori TAKASAKI,1* Kazuhiro NAKATA, Hao FU, Shinya KINUGAWA, Kengo MORIE, Kenji
FUJII, Yusuke KOGISO, Yudai OGAWA, Yutaka OHKOSHI, Mutsumi KIMURA, Toshihiro HIRAI,
Yasuo GOTOH, and Masanobu NAGURA, Proceedings of Laser Electrospinning, The 6th China
International Silk Conference, Researches and Progresses of Modern Technology on Silk, Textile and
Mechanicals (1), 442 (2007).
15) 高崎緑,仲田一尋,符浩,衣川信矢,森江健吾,大越豊,木村睦,平井利博,後藤康夫,奈倉正宣,
レーザーエレクトロスピニング法による極細繊維の作製,第 16 回ポリマー材料フォーラム, 103
(2007).
16) 張雪蓮,サケ科魚類の複二倍体の作出,平成 19 年度日本水産学会春季大会,講演要旨集,p108
17) M. Sonehara, T. Sato, M. Takasaki, H. Konishi, K. Yamasawa, and Y. Miura, INTERMAG2008,
CV-12 (2008.5)
18) Makoto Sonehara,Toshiro Sato,Midori Takasaki,Hajime Konishi,Kiyohito Yamasawa,Yoshimasa Miura,
MMDM 6(6th International Workshop on High Frequency Micromagnetic Devices and Materials),09p-5,
(2008.5)
19) Yasunao Hattori, Shin-ichi Furuhata, Yoshihiro Mohri,Hidefumi Makabe The 4th Asia-Pacific Conference
on Chemical Ecology, Abstract Paper, P-110, Tsukuba, Japan, September, 2007.
20) Yasunao Hattori, Shin-ichi Furuhata, Tetsuhisa Goto, Hidefumi Makabe 14th IUPAC Symposium on
Organometallic Chemistry directed towards Organic Synthesis, Abstract Paper, P-168, Nara, Japan,
Auguest, 2007.
21) Yoshihiro Mohri, Masayoshi Sagehashi, Taiji Yamada, Yasunao Hattori, Keiji Morimura, Tsunashi
Kamo, Mitsuru Hiroto, Hidefumi Makabe 14th IUPAC Symposium on Organometallic Chemistry directed
towards Organic Synthesis, Abstract Paper, P-74, Nara, Japan, Auguest, 2007.
22) Shin-ichi Furuhata, Yasunao Hattori, Tetsuhisa Goto, Hidefumi Makabe Japan Society for Bioscience,
Biotechnology, and Agrochemistry, Nagoya, Japan, March, 2008.
23) Yoshihiro Mohri, Yasunao Hattori, Tsunashi Kamo, Mitsuru Hirota, Hidefumi Makabe Japan Society
for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry, Nagoya, Japan, March, 2008.
24) Mitsuru Hirota,Kenji Hiramatsu,Keiji Morimura,Tsunashi Kamo,Yasunao Hattori,Hidefumi Makabe
51th Symposium on the Chemistry of Terpenes, Essential Oils, and Aromatics, Abstract Paper, 1AIII-2,
Shiga, Japan, November, 2007.
25) Masayoshi Sagehashi, Yasunao Hattori, Hidefumi Makabe 150th Japan Society for Bioscience,
Biotechnology, and Agrochemistry, Central Branch, Abstract Paper, A-11, Nagoya, Japan,
September, 2007.
26) Shin-ichi Furuhata, Yasunao Hattori, Hiroyuki Konno, Tetsuhisa Goto, Hidefumi Makabe 150th Japan
Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry, Central Branch, Abstract Paper, A-10,
Nagoya, Japan, September, 2007.
27) Arif M. D, Mahmud, Shotaro Ohno, Masaki Fukuda, Akiyoshi Yamada, Yasunao Hattori, Hidefumi
Makabe 51st Annual Meetng of the Myclogical Society of Japan, Abstract Paper, D 18, Tsukuba, Japan,
May, 2007.
28) Yoshie Fujimori, Yasuo Gotoh, Akio Kawaguchi, Masanobu Nagura, and Yutaka Ohkoshi,
“Introduction of Inorganic Components into Polymer Using Iodide”, The 4th International Conference on
119
Advanced Fiber/Textile Materials 2007 (ICAFTM 2007), PB-20, Ueda, December 2007.
29) Zha Ming, Md. Majibur Rahman Khan, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, Effects of a Ultrasonic and
salt-shrunk Treatment on the Structure and Physical Properties of Bombyx mori Silk Fibroin Fiber,
Proceedings of The 6th China International Silk Conference, p135-141, ( 2007).
30) Zha Ming, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, Chen Yuyue, Lin Hong, Research on the performance
Change of Silk Fibers Modified with Rare Earth , The 3rd International Conference on Advanced
Fiber/Textile Materials in Ueda, p205-206, (2005).
31) Zha Ming, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, Chen Yuyue, Lin Hong, Research on the performance
Change of Silk Fibers Modified with Rare Earth;日本蚕糸学会中部支部講演集, 61, p13, (2005).
32) Zha Ming, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, Chen Yuyue, The Properties Research of partially
dissolved Silk Fibers Modified with Rare Earth;日本蚕糸学会中部支部講演集, 62, p37, (2006).
33) Zha Ming, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, The Properties Research of partially dissolved Silk
Fibroin Fibers Modified with Rare Earth Chloride, 日本蚕糸学会中部支部講演集, 63, p34, (2007).
34) Zha Ming, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, Structure and properties of Partially Dissolved silk
fibroin fibers modified with Rare Earth Chloride, 日本シルク学会第 55 回研究発表会講演要旨集,
p152-153, (2007).
35) 伊勢裕彦,小林聡,高橋将文,麻生真一,森本創,池田宇一,
「Vimentin and desmin have a binding capacity
for N-acetylglucosamine and express on surface of cardiomyocytes and vascular smooth muscle cells」,『日
本細胞生物学会』,3P-023,福岡,2007 年 5 月
36) 小林聡,伊勢裕彦,高橋将文,後藤光昭,麻生真一,森本創,伊澤淳,池田宇一,
「ラット心筋細胞
における新規糖鎖結合分子の探索」
,『日本糖質学会』,P2-93,福岡,2007 年 8 月
37) 小林聡,伊勢裕彦,高橋将文,後藤光昭,麻生真一,池田宇一,
「人工的な糖鎖修飾を行った骨髄細
胞の心筋組織へのターゲッティング法の開発」
,『日本再生医療学会』
,O-29-1,名古屋,2008 年 3
月
◆ 投稿論文
1)
M. Takasaki, H. Fu, K. Nakata, Y. Ohkoshi, and T. Hirai, Ultra-Fine Fibers Produced by
aser-Electrospinning,
2)
Sen’i Gakkaishi, 64(1), 29-31 (2008).
Xuelian ZHANG,Takahiro ASAMI and Hiroshi ONOZATO. Polypolar spindle formation during first cell
cycle in rainbow trout Oncorhynchus mykiss.embryos after heat-shock treatment. FISHERIES SCIENCE, 73,
1325-1331 (2007).
3)
M. Sonehara, T. Sato, M. Takasaki, H. Konishi, K. Yamasawa, and Y. Miura, IEEE Trans. Magn.
(投稿中)
4) Yoshioka T, Takahashi M, Shiba Y,Suzuki C, Morimoto H, Izawa A, Ise H, Ikeda U.Granulocyte
colony-stimulating factor (G-CSF) accelerates reendothelialization and reduces neointimal formation after
vascular injury in mice. Cardiovac Res. 2006; 70: 61-69 (JCR2006: 5.826)
5)
Shiba Y, Takahashi M, Yoshioka T, Yajima N, Morimoto H, Izawa A, Ise H, Hatake K, Motoyoshi
K, Ikeda U. M-CSF accelerates neointimal formation in the early phase after vascular injury in mice: the
critical role of the SDF-1/CXCR4 System.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2007; 27: 283-28 (6.883)
6)
Morimoto H, Takahashi M, Shiba Y,Izawa A, Ise H, Hongo M, Hatake K, Motoyoshi K, Ikeda
U. Bone marrow-derived CXCR4+ cells mobilized by M-CSF participate in the prevention of cardiac
120
dysfunction and remodeling after myocardial infarction in mice. Am J Pathol. (in press) (5.917)
7)
Shiba Y, Takahashi M, Morimoto H, Ise H, Ikeda U. Bone marrow-derived CXCR4-positive cells as
a new source for therapeutic angiogenesis. Arterioscler Thromb Vasc Biol. (revised) (6.883)
8)
Shiba Y, Takahashi M, Ikeda U. Models for the study of angiogenesis. Current Pharmaceutical Design. (in
press) (5.270)
9)
Hattori, Y.; Furuhata, S.; Okajima, M.; Konno, H.; Abe, M.; Miyoshi, H.; Goto, T.; Makabe,
H. Org. Lett. in press.
10) Mahmud, M. A.; Ohno, S.; Fukuda, M.; Yamada, A.; Hattori, Y.; Makabe, H. Mushroom Science
and Biotechnology in press.
11) Morimura, K.; Yamazaki, C.; Hattori, Y.; Makabe, H.; Kamo, T.; Hirota, M. Biosci. Biotechnol.
Biochem. 2007, 71, 2837-2840.
12) Mohri, Y.; Sagehashi, M.; Yamada, T.; Hattori, Y.; Morimura, K.; Kamo, T.; Hirota, M.; Makabe,
H. Tetrahedron Lett. 2007, 48, 5891-5894.
13) Hattori, Y.; Horikawa, K.; Makabe, H.; Hirai, N.; Hirota, M.; Kamo, T. Tetrahedron: Asymmetry
2007, 18, 1183-1186.
14) 藤森良枝,後藤康夫,奈倉正宣,大越豊,川口昭夫,本島信一,中山鶴雄,“高分子-ヨウ素錯体を
前駆体としたナイロン6/ヨウ化銀コンポジット繊維の創成”,繊維学会誌,繊維学会,64(2),pp
62-65,2008.
15) Yoshie Fujimori, Yasuo Gotoh, Akio Kawaguchi, Yutaka Ohkoshi, and Masanobu Nagura,
“Conductivity and structure of polyamide/silver iodide nanocomposite”, Journal of Applied Polymer
Science, WILEY, in press.
16) Zha Ming, Md. Majibur Rahman Khan, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, Effects of a Ultrasonic and
salt-shrunk Treatment on the Structure and Physical Properties of Bombyx mori Silk Fibroin Fiber, Journal
of The Society of Silk Science and Technology, Japan, vol.16, p91-98, ( 2007).
17) Zha Ming, Hideaki Morikawa, Mikihiko Miura, Chen Yuyue, The Properties Research of partially
dissolved Silk Fibroin Fibers Modified with Rare Earth Chloride, Journal of The Society of Silk Science and
Technology, Japan, vol.16, p99-106, ( 2007).
18) Md. Majibur Rahman Khan, Zou liyun, Mikihiko Miura, Hideaki Morikawa, Zha Ming, Masayuki
Iwasa, Surface morphology of low-temperature argon-plasma -treated Bombyx mori silk fibroin fiber,
Journal of The Society of Silk Science and Technology, Japan, vol.16, p107-114, ( 2007).
19) Md. Majibur Rahman Khan, Hideaki Morikawa, Yasuo Gotoh, Mikihiko Miura, Zha Ming,Yuji Sato,
and Masayuki Iwasa, Structural characteristics and properties of Bombyx mori silk fiber obtained by
different artificial forcibly silking speeds,International Journal of Biological Macromolecules,accepted for
publication.
20) Shin-ichi Aso, Hirohiko Ise, Masafumi Takahashi, Satoshi Kobayashi, Hajime Morimoto, Atsushi
Izawa, Mitsuaki Goto, and Uichi Ikeda: Effective uptake of N-acetylglucosamine-conjugated liposomes by
cardiomyocytes in vitro. J Control Release. 2007 Sep 26;122(2):189-98. Epub 2007 Jul 12
121
信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー
活動報告書
平成 19 年度
編集
信州大学 SVBL 活動報告書編集委員会
発行日
平成 20 年 12 月 22 日
発行
信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(信州大学 SVBL)
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FAX
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C 2008
○
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