公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 【OA 機器・オーディオ用クリーナー】Ver.1.00 公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 OA 機器・オーディオ用クリーナー 1.概要 OA 機器、CD などのディスククリーナー、テープレコーダーやオーディオ 用ヘッドクリーナー等は製剤として液体(クロスで拭くタイプ、綿棒に浸すタ イプ、注入タイプ)とスプレータイプの 2 種類がある。液体のクリーナーでは 容量が 5~25mL である。成分はエタノール 10~40%、イソプロピルアルコ ール 4~50%と界面活性剤数%含有されている商品が多いが、スプレータイ プでは、石油ベンジン、石油エーテルを 50%以上含有し、メタノール、噴射 剤として LPG、フロンを含む商品もあるので商品の確認は重要である(フロン についてはフロンガスの項参照)。 2.毒性 イソプロピルアルコール:ヒト経口推定致死量 240mL(1) 陰イオン界面活性剤:ヒト経口推定致死量 約 200g(4) ラット・マウス経口 LD50 1~5g/kg(2) ベンジン(5):ヒト経口重症中毒量 20~30g(約 27~47mL)、 ヒト経口推定致死量 80~100g(約 108~135mL)、 {小児は 10~15g(約 13~23mL)の摂取で死亡すること あり}、ヒト吸入推定致死量 3%・5 分または約 4mL エタノール:成人経口致死量 5~6g/kg(2) (比重から換算して 6.3~7.6mL/kg) 幼小児経口致死量 3g/kg(2)(比重から換算して 3.8mL/kg)、 ただし個人差大(2)。幼小児が 100%エタノール 6~30mL を 30 分以内に摂取すると危険である(5) 3.症状 イソプロピルアルコールによる 循環器系:低血圧、徐脈、ショック 呼吸器系:呼吸不全 神経系:頭痛、昏睡、低体温、重症例では反射消失を引き起こす 消化器系:悪心、嘔吐、出血性胃炎 その他:軽度の肝障害、ケトーシス、 接触により皮膚炎 異常を示す検査:尿糖を伴わないアセトン尿。ケトーシス(アシドーシ スを伴わないことが多い)。イソプロピルアルコール とアセトンの血中濃度 陰イオン界面活性剤による 口腔・咽頭の炎症、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、鼓腸 大量服用時には運動麻痺、体温低下、痙攣、血圧低下、GOT・GPT 上昇 の報告あり エタノールによる 嘔吐、紅潮、頻脈、酩酊、代謝性アシドーシス、血圧低下、血糖低下、 痙攣、呼吸抑制、昏睡(2)(6) 1/3 copyright © 2009 公益財団法人 日本中毒情報センター All Rights Reserved. 公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 【OA 機器・オーディオ用クリーナー】Ver.1.00 4.処置 家庭で可能な処置 経口:牛乳(120~240mL、幼児 15mL/kg 以下)、卵白などを与える 眼 :流水で 15 分以上洗浄 医療機関での処置 胃洗浄、吸着剤・下剤の投与など基本的処置 対症療法 5.確認事項 1)商品名、成分:イソプロピルアルコールを主成分とする商品が多いが、 エーテル、ベンジンなどを主成分にするものあり 2)患者の状態:気管に入って咳込みや呼吸困難など吸入した様子はないか。 その他変化の有無 3)摂取量 6.情報提供時の要点 イソプロピルアルコール 70%溶液を 3 口摂取で小児が中毒症状をきたす ことがある。吸収も早く症状発現も早いと考えられるので、多量に摂取 したときには受診を指示(3) 7.体内動態 エタノール:胃・小腸粘膜から主に吸収される。経皮吸収はわずか。経口 時の最高血中濃度到達時間は 30 分~2 時間(2) イソプロピルアルコール 吸収:経口摂取量の 80%が摂取後 30 分以内に吸収。大量の場合には吸 収が遅くなる場合もあり。経皮吸収は少ないが、長期接触によっ て毒性発現の可能性あり 分布:分布容積 0.6L/kg 排泄:吸収量の 20~50%未変化体で腎から排泄(3)。肝で代謝を受け てアセトンとなり、最終的には二酸化炭素となる。 半減期:2.5~3 時間(1) 8.中毒学的薬理作用 エタノール:中枢神経系、とくに大脳機能、体温調節中枢、血管運動中枢 に対する抑制作用、粘膜刺激作用(2) 9.治療上の注意点 1)イソプロピルアルコールに対する拮抗剤、解毒剤はない。 強制利尿は無効 2)イソプロピルアルコール 70%溶液のヒト中毒量は 1mL/kg と考えられる が、0.5mL/kg でも症状発現の可能性あり(3) 3)イソプロピルアルコール中毒量摂取での症状発現は 30~60 分であり、 ピークは数時間であるが、代謝物としてのアセトンによって作用が持続 することが考えられる。症状はエタノールに類似するが、初期の興奮は みられない。重症例では深昏睡と呼吸抑制と低血圧が初期に起こる(3) 4)エタノール含有品は酒類(エタノールの項参照) 2/3 copyright © 2009 公益財団法人 日本中毒情報センター All Rights Reserved. 公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 【OA 機器・オーディオ用クリーナー】Ver.1.00 10.参考文献 (1)RTECS (1997) (2)Poisindex (1997) (3)澤田祐介、他:救急医学、12(10):1415、1988 (4)救急中毒ケースブック (1986) (5)急性中毒情報ファイル (1996) (6)Medical Toxicology (1988) (7)Medical Toxicology (1997) 11.作成日 19900215 Ver.1.00 ID M70001_0100_2 3/3 copyright © 2009 公益財団法人 日本中毒情報センター All Rights Reserved.
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