課題研究集録 (H21年度)

平 成 2 1 年 度
課 題 研 究 集 録
福 島 県 立 相 馬 高 等 学 校
【目
次】
物理
万華鏡の不思議
1
化学
イカ墨液晶の研究
2
化学
発光バクテリアの光を求めて
3
生物
アサリの浄化作用について
5
生物
サキグロタマツメタ脅威の繁殖力
7
数学
統計学の基礎を学ぶ
8
国語
相馬方言のとんぼぐち
物理
大気圧鉄道
化学
ポリグルタミン酸
生物
魚 類 の 耳 石 !!
13
数学
小町算
15
英語
日米間の歌の比較
17
生物
シロイヌナズナ突然変異体の研究
19
生物
形と遺伝の関係
20
生物
アブラナ科植物の研究
~認知度の差について~
9
10
~浄水効果~
~法則を求めて~
アブラナ科植物のアイソザイム解析
11
~土壌編~
21
生物班
サキグロタマツメタの繁殖力と稚貝の弱点~駆除を目指して~
23
化学班
イカ墨液晶の研究
32
化学部
生分解性プラスチック合成に関する研究
39
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-2-
発光バクテリアの光を求めて
化学班3年
遠藤唯
授業担当者
佐藤友恵
豊田優
門馬包美
箭内麻美
1年次に相馬高校 SSH 行事である松川浦研修に行った際、刺激を受けると体の色が変わるイカ
を見た。私たちはイカが変色する様子に興味を持ったので調べることにした。実際に調べてみる
と、私たちの本来の目的の光とは違う光を発生していることが分かった。それはイカに付着して
いる発光バクテリアから成される光だった。そこで私たちは、文献などを元に発光バクテリアの
基本知識を学び、発光バクテリアを培養し、イカの体表面に付着している発光バクテリアを取り
出し、増殖させることで光を持続させ光エネルギーとしての利用を考えることを目的とし、実験
を行った。
【イカから発光バクテリアを取り出す】
イカを切り開きこれを3%の食塩水に浸し、冷蔵庫で1週間放置した。暗い所で観察すると、
イカの体表が微弱ながら青白く発光した。この光は発光バクテリアの発光によるもので、イカ
の体の表面に生息し、増殖しながら生存している。発光バクテリアを滅菌した白金耳で取り出
した。
【培地の作成と培養方法】
発光バクテリアをイカの表面から取り出し、培養するためイカの足の煮汁、食塩、寒天を混
ぜ合わせて作った。寒天培地だけでなく、液体培地も用いた。寒天培地と液体培地に光った発
光バクテリアを白金耳で移し1週間置いて培養した。
寒天培地、液体培地に加えて、マリンボース(海水の成分が含まれている灰色の粉末)を水
に溶かしたものを作った。
【発光バクテリアの発光条件を探る】
発光バクテリアの増殖が適している環境をつくる必要があると考えた。まず、地元相馬松川
浦の海水を用いてイカが生息していた環境にできるだけ近づけ、発光バクテリアの光が持続す
るかを確かめた。松川浦の海水を変える以外にもどのような発光条件があるのかを模索するた
め、発光バクテリアと同様な働きをもつホタルの体内に含まれる発光物質(生体触媒)を用い
て実験した。ホタルの体内の発光物質を 60 度のお湯、氷水、室温の温度の違う水に浸し、発光
条件が温度によるものかを確かめた。
【結果・考察】
イカを3%の食塩水に浸した場合、松川浦の海水に浸した
場合の両方で体表面が全体的に青緑色に光った。(図1)
イカに付着している発光バクテリアを培養するために寒天
培地、液体培地とマリンボースを用いた培地でそれぞれ培養
を行った。液体培地、マリンボースを用いた培地では培養が
できなかったが寒天培地では成功し、光は増殖して青白くシ
図1 イカの表面の発光バクテリア
-3-
ャーレ全体に広がった。
(図2)発光バクテリアの種類はたく
さんあるが、文献等によると取り出した発光バクテリアはフ
ォトバクテリウムキシタニという種類であることが分かった。
また発光している色から、だいたい波長は 490~500nm く
らいではないかと予想できた。予想に基づき、取り出した発
光バクテリアの光エネルギーの大きさを分光光度計で測定す
ることを考えた。しかし発光バクテリアの光は一週間くらい
しか持続できず微弱なので、たくさんの光を集める必要があ
図2 寒天培地で光る発光バクテリア
った。発光バクテリアを寒天培地に移したが発光バクテリアの増殖も光の持続も観察すること
ができなかった。
寒天培地の原因以外に発光するための条件があるのではないかと考え、イカ以外の発光生物
の光るしくみについて調べた。ホタルやキノコといった発光生物は体内に発光物質(酵素)を
もっており、発光バクテリアにはルシフェラーゼとルシフェリンの2つの酵素が存在し、イカ
の体内のATPがそれらの酵素と反応して光ることが分かった。発光していたイカを放置して
おくとATPが減ってしまったことで光は消滅していたことも分かった。
私たちはホタルが光を持続するのと同様に発光バクテリアが光を持続するための条件として、
温度の違いが影響しているのではないかと考え、実験を行った。化学反応は一般的に温度が高
いほど反応速度が大きくなるが、60 度の高温での発酵物質の働きはほとんどみられず発光物質
本体のタンパク質が変性したので働きを失ってしまい、発光物質の働きで最も強く光った温度
は室温の状態であった。この実験
からイカの発光バクテリアの温度
の変化による発光物質の働きの違
いを実験で確認したが、ホタルの
場合とは違い室温による光の持続
を確認することができなかった。
図3
温度の違いによる発光バクテリアの発光
温度以外にも酸素との反応が発光バクテリアの光の持続に影響があるのではないかと考える。
【感想】
3年間実験を続けてきて、発光バクテリアという未知の生物に出会ったことは大きな驚き
であり、そして発見でもあった。実験は成功することが少なく、生物を使って実験すること
がどれだけ難しいかもわかった。私たちは最初の目標であった、発光バクテリアを増殖させ、
それらの光エネルギーを利用するところまでには至らなかった。目標を達成できなかったこ
とは残念だったが、その過程で発光バクテリアを通じてでなければ知り合うことができなか
った人たちと出会い、たくさんの知識を得ることができた。これまでご指導下さった方々に
感謝したい。
【参考文献】
・秀文堂-生物図説
・今堀宏三編集-生物観察実験ハンドブック
-4-
研究主題
対象生徒
アサリの浄化作用について
理数科
授業担当者
3年6組
本校理科教員
(生物分野)
5名(男子2名、女子3名)
(草野
久)
主題設定の理由
干潟などの浅海域に生息する二枚貝の水質浄化作用は高く、過去 3 年間、地元松川浦に
生息するアサリを使って水質浄化作用に関して研究をしてきた。今年度は、アサリの水質
浄化作用と物質(粒子)の大きさ、および、浄化作用の過程で生じる排出物(沈殿物)と
の関連を、エラの構造を踏まえながら調べ、生徒の科学的思考力や分析力を養うことを目
的に設定した。
研究計画
①研究内容
物質の違いによるアサリの水質浄化作用を比較するとともに、物質の種類による水質浄
化作用の違いを、エラの構造と沈殿物(排出物)を手がかりに検証する。
②研究方法
(1) アサリの入った海水に、1 種類のケイソウを加え、プランクトン計数板を用いて光
学顕微鏡で個体数の時間的変動を測定し、さらにケイソウを追加した場合の浄化作
用と沈殿物(排出物)を比較する。
(2) アサリの入った海水に、食紅(赤)とチョークの粉(赤)をそれぞれ加え、浄化の
様子を比較するとともに、沈殿物(排出物)について調べる。
(3) アサリのエラの構造と浄化作用との関連を調べる。
(4)食紅(赤)、チョーク粉(赤)の粒子の大きさを比較する。
研究の実態と考察
(1)次のグラフは単一のプランクトン(ケイソウ)を加えた場合の実験結果であり、昨
年度と同様の実験結果が得られた。
1ℓあたりのケイソウの数の変化
350,000,000
ケ 300,000,000
イ 250,000,000
ソ 200,000,000
ウ 150,000,000
の 100,000,000
数 50,000,000
0
ケイソウ追加
糞を確認
ケイソウの数
粘液の塊を確認
0:00
0:30
1:00
1:30
2:00
2:30
3:00
3:30
経過時間
実験開始から 1 時間後にアサリを入れた海水がほぼ透明になった。さらにケイソウの
濃縮液を追加した場合も浄化の様子が観察されたが、追加前より浄化速度は緩やかにな
った。また、それぞれの沈殿物(排出物)を観察すると、開始30分後は糞の状態であ
ったが、1 時間後およびケイソウを追加した後は、粘液に包まれたケイソウの形をした
物(偽糞)が観察された。
-5-
(2)次図はアサリの入った海水にチョークの粉(赤)を加え、25 時間後の様子を示した
ものである。海水はほぼ透明になるとともに、粘液に包まれた赤い塊状の沈殿物が観察
された。食紅(赤)では浄化作用は観察されなかった。
開始時
25 時間後
(3)アサリのエラを顕微鏡で観察を行ったところ、表面に多数の穴らしきものが観察さ
れた。
(4)次図はチョークの粉と食紅の粒子の顕微鏡写真である。
チョークの粉 150 倍
食紅 150 倍
約 5.0μm
約 20.0μm
(1)の実験で、ケイソウ追加前後の沈殿物(排出物)の違いから、アサリは満腹状態に
なると(消化吸収能力が限界に達すると)、入水管から入った物をエラで濾し取って口
から消化器官に送るのではなく、粘液で包んで出水管から直接「偽糞」として排出して
いると考えられる。
(2)の実験では、食紅では浄化されなかったが、チョークの粉では浄化の様子が観察さ
れた。これは、物質の粒子の大きさが関係していると考えられる。粒子の大きさは、チ
ョークの粉が約 5.0μm に対し、食紅の粉(コーンスターチが含まれている)が約 20.0
μm と大きく、食紅の粒子はエラで濾過されなかったためと考えられる。また、(1)
と同様に粘液で包まれたチョークの粉の「偽糞」が観察されたことから、エラで濾過さ
れても餌とならない物質は「偽糞」として排出していると考えられる。
(3)の実験で、エラの表面に穴らしきものが観察されたが、微少な穴なのかどうか、今
回の実験では確認することはできなかった。今後の課題として、エラの微細構造と濾過
のしくみ、濾過される物質の粒子の大きさとの関係をさらに研究していきたいと思う。
-6-
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-7-
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研究主題
統計学の基礎を学ぶ(数学分野)
対象生徒
授業担当者
理数科 3年6組 5名(男子5名)
本校数学教員(佐藤 博之)
研究の主旨
情報化時代である現代においては、様々の資料を体系的に処理し、規則性、法則性を見つけだし、どの
ように判断し、推測すればよいかなど、データの持つ特性や全体をとらえる力を育成することは大切なこと
と思われる。
そのためには、どのような方法で情報を得て、得られた情報をどのように処理するか、また処理したデー
タからどのように特性を読みとるのかなどの様々な統計的技術が必要になる。
また、統計的な考え方は、日常的な社会生活でもよく使われ、基本的な知識や技術をもつことで実際の生
活に役立つと思われる。また、データ処理の過程で用いる計算などの体験的活動を通して、計算力や、数学
的な見方、考え方を育成したい。 3年次においては、標準偏差の数学的な意味について調べ、これま
での学習のまとめとしたい。
研究計画
①研究内容
(1)様々なデータを統計的に処理する技術を身につける。(1年次)
(2)2項分布の平均、分散、標準偏差を求めることができるようにする。(2年次)
(3)正規分布について理解し、標準化して正規分布表を使うことができるようにする。(2年次)
(4)2項分布を正規分布に近似し、正規分布表で確率を求められるようにする。(2年次)
(5)統計処理を、コンピュータを利用しても求めることができるようにする。(2年次)
(6)資料において、分散や標準偏差の数学的な意味について考察し、偏差値の役割について考察す
る。(3年次)
②研究方法(3年次)
2年次までに、平均値、最頻値、中央値などの代表値や、ヒストグラムなどのグラフの役割に関
する発表を行ったが、今回は、グラフのもう一方の特徴としての散らばりを考察する。ここでは
分散、標準偏差、そして偏差値の役割についてまとめる。
③研究計画
4月~5月
資料の散らばりについて考察する。
6月 分散、標準偏差についての数学的な意味について考察する。
7月 コンピュータ(エクセル、パワーポイント等)を利用して、研究結果を資料にまとめる。
研究の実際と考察
・生徒の変容
3年になってからの時間が十分取れず、思うように作業が進まないこともあったが、実験結果から
母集団と標本の関係については興味をもって取り組んだ。1・2年次に学習していたので検定の考え
方は難なく理解され、とても熱心に取り組んだ。
参考資料
「ゼロから学ぶ統計解析」小寺平治著
数研出版教科書 数学B
(講談社サイエンティフィック)
-8-
福島県立相馬高等学校 3年国語班
宇佐見景子、大久保周作、齋藤 光
佐藤 瞬、立谷紗耶華、目黒麻耶
目黒麻里、柳本莉子、山野辺春香
横山いづみ
授業担当者 長谷川美穂 渡部義弘
なぜ国語なのか
先輩方の相馬方言についての発表をみて、私たちも相馬方言に関心を持ち、別の視点から方言を調査しようと
思った。私たちは、方言の使用頻度より、広まり方について関心を持ったので、そちらを調べることにした。科学的
に分析することによって、科学につながるのではないかと考え、このテーマを選んだ。
1年次の研究
相馬方言がとこまで広まっているかを調べるために、県内の各地域の高校1年生を対象に、11個の言葉につい
て使うか、知っているか等を答えてもらうアンケートを実施した。その結果、言葉を4つのグループに分類することが
できた。そのうちの一つが北相地区だけに広まっていたので、その言葉が「真の相馬方言」ではないかと考えた。
2年次の研究
1年次の調査結果を受けて2年次は、2つの班に分かれて調査を続けることにした。
1つめの班(甲)は1年次に引き続き、方言がどこまで広まっているのかをより詳しく調査することにした。
2つめの班(乙)は相馬市内で方言に違いがあるのか、年代ごとに違いはあるのかを調査することにした。
-甲-
研究内容と方法
-乙-
研究内容と方法
相 馬 方 言 がどこまで広 まっているのかを調 査 す
方言の認知度を、地域別と年代別に分けてアンケ
る。
ート調査した。地域別は、小学生を対象に、年代別
県内の浜通りの高校生を対象としたアンケートを実
は、小 学 生 、高 校 生 、中 年 層 、高 年 層 を対 象 にし
施。
た。
仮説
仮説
相馬藩の領地を関係があるのではないか。
西 側 には山 脈 があるのであまり広 まっておらず南
・高年層の認知度が高い。
・相馬市内でも、地域によって認知度に差がある。
北に広まっているのではないか。
考察
考察
仮 説 通 り南 に広 まっていたが西 側 はデータ不 足
仮 説 通 り、高 年 層 の認 知 度 は高 かった。市 内 全
のためわからなかった。
域に知られている方言もあれば、市内の一部でしか
「うるかす」「ちみぎる」の分 布 は相 馬 藩 の領 国 とほ
知 られていない方 言 もあって、ほぼ仮 説 と同 じであ
ぼ重なっていた。
った。
-9-
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- 11 -
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- 12 -
魚類の耳石!!
1.はじめに
生物班2年
相良拓真
佐藤大介
佐藤響
平澤亜衣
門馬侑輝
矢吹武
米本一樹
授業担当者
中川こずえ
私達相馬高校SSH生物班は、中村城跡お堀でブルーギルが優先種になっていることを知り、この魚に興味を持ちまし
た。また、魚について調べていくうちに耳石という器官を知り、耳石についても興味を持ちました。魚の生態を知
るために耳石を採取し、年齢査定等の研究を行うことにしました。また、耳石の形状が類似している魚の関連性を
調べることにしました。
2.中村城跡お堀について
3.ブルーギルについて
『ブルーギル』
(スズキ目サンフィッシュ科)
原産地は北アメリカ。1960年に移
入され、各地に放流されたものが
全国に分布を広げている。青い
(blue)斑点がえら(gill)の所
にある(小さいうちは目立たな
い)。雑食性でえび類、水草、魚
の卵や稚魚を食べ、オスは25㎝
くらいまで成長する。
現在はブルーギルが優占種となっている。
植物ではオオカナダモやキショウブなどの外来種の生息
が目立ってきている。
4.実験Ⅰ:耳石の溝数と年齢の関係
【方法】
①捕獲したブルーギルの全長を測定後、耳石を採取する。
②取り出した耳石をよく水洗いし、サイズを測定する。
③シャーレに入れた状態で実体顕微鏡で観察し、溝の数
を数え年齢を査定する。
耳石高
耳石長
ブルーギルの耳石
【耳石とは】
脊椎動物の内耳にある炭酸カルシウムの結晶からなる
組織。断面に木の年輪のような輪紋構造がみられ、1日
に1本が形成され,成長の差により溝ができる。そのため
年齢推定などに利用される。
【結果】
ブルーギル7個体について耳石を採取できた。体長
と耳石溝数の間には比例関係が見られる。
グラフ: 体長と耳石溝の関係
体長(㎝) 耳石長(㎜) 耳石高(㎜) 耳石溝数
耳石溝数
ブルーギルA
9
4.5
2.8
1
5
ブルーギルB
10.7
5
3.4
2
4
ブルーギルC
11.8
5.2
3
2
3
耳石溝
ブルーギルD
13
5.3
3.8
2
2
線形 (耳石
ブルーギルE
14
6
3
2
ブルーギルF
19
6.8
4.4
3
ブルーギルG
20
7
4.8
4
y = 0.2156x - 0.7176
1
0
0
10
20
30
体長(㎝)
【考察】
本校の生物部が行った研究や文献等を照らし合わせると、ブルーギルの場合、耳石の溝の数は年に一度作
られ、そのまま年齢を表していると考えられる(魚種によっては、一年に数本の溝を作るものいるので注意
が必要)。ただ、ブルーギルの耳石の溝は採取しそのまま観察しただけではわかりにくいため、今後は耳石
の表面を削ったり、染色したり等の工夫も必要だと思われる。
- 13 -
5.実験Ⅱ:耳石の形状と魚種
【方法】
①様々な種類の魚の耳石を採取する。
②耳石長・耳石高・耳石溝数・耳石の質量を測定する。
③魚の種類や形態、②から耳石を分類し魚の形態や性質などとの相関関係を探る。また、魚の種目
が同じであれば耳石は同じ形になるのか調べる。(今回は一番多く採れたスズキ目で検証する)
【スズキ目】
・オオクチバス
(Micropterus salmoides)
サンフィッシュ科
・ブリ
(Seriola quinqueradiata)
アジ科
【カレイ目】
・マガレイ
(Limanda herzensteini)
カレイ科
・マアジ
(Trachurus japonicus)
アジ科
・ブルーギル
(Lepomis macrochirus)
サンフィッシュ科
・ヒラメ
(Paralichthys olivaceus)
ヒラメ科
・シログチ
(Argyrosomus argentatus)
ニベ科
・スズキ
(Lateolabrax japonicus)
スズキ科
【カサゴ目】
・キチジ
(Sebastolobus macrochir)
フサカサゴ科
・イボダイ
(Psenopsis anomala)
イボダイ科
・クロマグロ
(Thunnus Thynnus)
サバ科
・キツネメバル
(Sebastes vulpes)
フサカサゴ科
【キュウリウオ目】
・アユ
(Plecoglossus altivelis)
キュウリウオ科
・マサバ
(Scomber japonicus)
サバ科
・メジナ
(Girella punctata)
メジナ科
・メバル
(Sebastes inermis)
フサカサゴ科
【ニシン目】
・ニシン
(Clupea pallasi)
ニシン科
【タラ目】
・エゾイソアイナメ
(Physiculus maximowiczi)
チゴダラ科
・マイワシ
(Sardinops melanosticta)
ニシン科
【ダツ目】
・サンマ
(Cololabis saira)
サンマ科
魚の形を3種類に分ける
細長い
丸い
皿型
針型
針型
中間
ボトル型
グラフ1
耳
石
高
/
耳
石
長
=X
目による耳石高/耳石長の違い
0.800
0.700
0.600
0.500
0.400
0.300
0.200
0.100
0.000
スズキ目以外
の値の範囲
0
2
4
6
グラフ2
ボトル型
耳
1.000
石
高 0.500
長
/ 0.000
耳
石
皿型
皿型
【結果】
・スズキ目のXの値の範囲がそれ以外の魚の範囲よりも
大きいことから、同目の魚だからといって耳石の形が似
ているとはいえないことが分かる(グラフ1)。
・針型⇒ボトル型⇒皿型と魚の形が丸みを帯びるにつれ
て、耳石の形も丸みを帯びることから、魚の形と耳石の
形には傾向が見られることが分かった(グラフ2)。
スズキ目の
値の範囲
8
10
スズキ目
カレイ目
ニシン目
カサゴ目
タラ目
ダツ目
キュウリウオ目
12
個体数
魚の形と耳石の形の関係
針型 ボトル型 皿型
【考察】
魚の形はその魚の「行動」に重要であり、魚の特徴や生態を表す
1つの要素である。似た形の魚は似た行動をする。そのために、行
動にとって重要な平衡感覚を司る耳石の形も似ているのではない
か。一方、系統的に近い同目の魚であってもその「行動」や生態は
大きく異なることがあるので、耳石の形も大きく異なる場合もある
のではないかと考えられる。
- 14 -
「小町算
2年 数学班
大澤 昌平
~法則を求めて~」
島 優太
山本
涼
授業担当者
鈴木 和義
研究のテーマ
小町算とは数学パズルの一種で、1□2□3□4□5□6□7□8□9=100 という数式の□の
中に、+、-、×、÷、空白を入れて正しい数式を完成させるというものである。
本研究は小町算において+、-、空白だけを使うことにし、数式を完成させる法則があるのかを調べ
るというものである。
研究内容
① 空白0個の場合(すべての□に演算記号を入れる場合)
すべての□に+を入れたとき
1+2+3+4+5+6+7+8+9=45
このことから、空白を使い2桁の数、3桁の数を利用しなければ数式を完成できないことが分かった。
② 空白1個の場合(1個の□には演算記号は入れず、2桁の数を1個作る場合)
例えば2と3の間に空白を入れると23という2桁の数が作れる。
1+23+4+5+6+7+8+9=63
1個の□に空白を入れ、それ以外の□に+、-を入れたときの結果が以下の通りである。ただし、和
が自然数であることを前提にした。
空白の位置 和の最大・最小と偶数・奇数 結果
1と2の間
2と3の間
3と4の間
4と5の間
5と6の間
6と7の間
7と8の間
8と9の間
Min.0
Min.1
Min.0
Min.11
Min.24
Min.37
Min.50
Min.63
Max.54
Max63
Max72
Max.81
Max.90
Max.99
Max.108
Max.117
偶数
奇数
偶数
奇数
偶数
奇数
偶数
奇数
×
×
×
×
×
×
○
×
このことから、78か89の2桁の数がなければ、
和が100に満たないことが分かった。さらに重要な
ことは、どの□に空白を入れるかによって、使う数字
の偶数、奇数の個数が決定されるため、和が奇数にな
るのか、偶数になるのかが決まるということである。
完成式が1つできたが以下の通りである。
1+2+3-4+5+6+78+9=100
③ 空白2個の場合
(1) 2桁の数を2個作る場合
[ⅰ] 「2桁の偶数を2個作る場合」、「2桁の奇数を2個作る場合」はどちらも使う数字におい
て奇数が3個、5個となり、和は奇数になってしまい、100になるのは不可能になる。
例
2桁の偶数を2個の場合
2桁の奇数を2個の場合
12+34+5+6+7+8+9
1+23+45+6+7+8+9
[ⅱ] 「2桁の偶数を1個、奇数を1個作る場合」は使う数字において奇数は4個となり、和は
偶数となるので、100になる可能性はある。
例 12+3+45+6+7+8+9
- 15 -
この場合において、②同様にそれぞれの□に+、-を入れ、和の最大値、最小値を見ながら調べ
たところ完成式を見つけることができた。
12+3+4+5-6-7+89=100 12+3-4+5+67+8+9=100
12-3-4+5-6+7+89=100 1+23-4+56+7+8+9=100
1+23-4+5+6+78-9=100 1+2+34-5+67-8+9=100
これまでを通して、使う数字の奇数の個数に注意しながら空白を入れた後、和の最大値(すべての
□に+を入れる)をもとに考えると効率よく見つかることが分かった。
例
12+3+4+5+6+7+89=126・・・
(A)
(A)において26が余分であるので、26が消去するように考える。
+を-に替えるとその2倍の数が引かれる(左を
12+3+4+5+6+7+89=126
参照)ことを考慮すると、
(A)において-13を
4を除くと
作り出せればよいことになる。
12+3
+5+6+7+89=122
-13=-(6+7)
-4を加えると
であるので、
12+3-4+5+6+7+89=118
(A)において
12+3+4+5-6-7+89=100
(2) 3桁の数を1個作る場合
(1)のことを踏まえ、3桁の数を作り、和の最大値をもとに調べた。ここでは和の最大値は
100以上、最小値は100以下になっていなければいけないことにも気付いた。例えば3桁の
数が789の場合、残りの□に-を入れても、100になることはない。完成式は以下の通り。
123-4-5-6-7+8-9=100
④
空白3個の場合
4桁の数を用いることや、和が奇数になってしまうと100になることはないので、100になる可
能性のある場合を考え、以下の場合に分けて調べた。
[ⅰ] 3桁の奇数を1個、2桁の奇数を1個作る [ⅱ]3桁の偶数を1個、2桁の奇数を1個作る
[ⅲ]2桁の奇数を2個、2桁の偶数を1個作る
[ⅳ]2桁の偶数を3個作る
これらの場合で調べたが、100になる式はなかった。
⑤
空白4個の場合・空白5個の場合
空白を入れ、2桁や3桁の数字を作り出すが、それによって使うことができる数字の偶数・奇数の個
数に配慮しながら場合を行い、100になる式を①~④までを生かして調べた。完成式は以下の通り。
123+4-5+67-89=100
123-45-67+89=100
123+45-67+8-9=100
研究結果
1.使う数字において奇数が偶数個になるように空白を入れる。
2.その式の最大値と最小値(自然数であること)の間に100があるときは完成する可能性がある。
3.最大値(すべての□に+を入れた値)-100=N を求め、-(N÷2)が作り出せれば式の完成。
以上、今回私たちが見つけたものであるが、式を完成させる「手順」のようであり、
「法則」とまでは言
えないと考える。
今後は×、÷を入れたとき、どのような場合分けをすれば100になる可能性があるか、または可能
性がないかなど、研究を進めたい。
- 16 -
研究主題
日米間の歌の比較(英語分野)
対象生徒
理数科2年6組
授業担当者
菊池
浦島
駿哉
大澤
綾
大畑
普子
吉村
菜央(以上4名)
あかね
研究の目的
人にとって最も身近な存在のひとつである歌は、それらが作られ歌われる国や時代のメンタリティを
含めた文化を反映するものであり、時にはひとつの時代を作り出すことさえある。歌詞はその最良のテ
クストサンプルと捉えることができる。多くの洋楽が日本の若者に共感され受け入れられている昨今、
日本・アメリカがお互いに抱いているであろうとされる文化のステレオタイプは、もはや通用しないも
のとなってきているのではないか。特に若い世代に広く受け入れられている、なるべく最新の歌を分析
することで、文化、とりわけ日米の若者の意識の相違や類似を探っていくことを目的とする。
仮
説
両国の若者のイメージ
日本:物静か。おとなしい。すぐに周りに流される。授業を受けるときは受動的。
アメリカ:行動的。授業を受けるときは能動的。
これらのイメージがそれぞれに愛されている歌の歌詞に反映されている可能性もある。
もしそうでないとしたら、どのような価値観が反映されているか探りたい。
研究方法
ある研究論文(What values do high school students in Japan find in texts in pop songs?
2007 年
本校大須賀教諭による)を和訳し、歌詞分析の方法の参考とした。その方法をもとに日本とアメリカの
人気のある歌の歌詞を分析した。
分析について
テーマ別・言語の構造別に歌詞の分析を行った。分析に用いる歌詞については、日本語の歌は生徒
の好きな歌、英語の歌は米ビルボードチャート 2008Top20 にチャートインした歌を使用した。
分析1
テーマ別
Love 愛・恋 / Friendship 友情 / Life 人生・生活の3パタンに分類
分析1の実際
テーマが Love のものとして分析された歌の例:
日本語
『M』(1988
Princess Princess)
英語 『Bleeding Love』(2008
『Lovers Again』(2007
EXILE)など。
Leona Lewis イギリス出身。アメリカ・ビルボード
チャート1位)
テーマが Friendship のものとして分析された歌の例:
日本語
『トモダチ』(2002
ケツメイシ)
『Best Friend』(2001
Kiroro)
※ 英語の最近の歌では、特に Friendship をテーマにしたものを検索できなかった。
テーマが Life のものとして分析された歌の例:
日本語
英語
『I believe』(2006
絢香)
『Stop and Stare』(2007
『歩み』(2009
ONE REPUBLIC)
- 17 -
GReeeen)
分析結果
日本語の歌
Love 75%
Life19%
英語の歌
Love76%
Life33%
Friendship 6%
テーマ分析からわかったこと
恋愛をテーマにした歌が多い/普段は口に出せなかったり伝えづらい気持ちでも、歌を通
してだと言葉に出すことが出来る/英語の歌は日本語の歌にはない特徴があった⇒同性愛
を直接的に歌った歌もあり驚いた。
(特にヒップホップのジャンルで)性的な表現が多用さ
れ、破廉恥に感じられる歌詞が多かった。
分析2
言語の構造別
Event と Idea の2パタンに分類
『動作など具体的行動をあらわすテクスト』を Event、
『心情や思考、抽象的内容をあらわ
すテクスト』を Idea と分類する。Event の多い歌詞はわかりやすい(日常的・幼稚的)。
Idea の多い歌詞は理解が難しい内容(観念的・成熟的)といえる。
分析2の実際
歌詞の1行1行を Event/Idea のいずれになるかを吟味し、分析したテクスト中での割合を
出した。
分析結果
日本語の歌の Event/Idea の割合
Idea43%
Event57%
英語の歌の Event/Idea の割合
Idea37%
Event63%
言語構造の分析からわかったこと
日本語の歌も英語の歌も Event のほうが Idea を上回った/具体的で分かりやすい(行
動が見えやすい)歌詞が比較的多い/ストーリーや実際の場面が浮かびやすい歌を日本人
も英語圏の人々も好むのではないか
現在取り組んでいること
より正確で最新のデータを得るため、学年全体(233名)に歌についてのアンケートを実施した。
好きな歌・アーティスト・どんなときにそれらを聞きたいかなどについて調べ、3月現在まとめ・分
析中である。また、過去に本校と交流があったアメリカ・ローレンスアカデミーの学生へ同様のアン
ケートを作成し、メールでの協力を依頼する準備ができている。
今後はローレンスの学生たちとのやり取りを通してアメリカの若者の意識をダイレクトに知り、以
後の分析の中心としていきたい。
- 18 -
福島県立相馬高等学校生物アブラナ斑
2年 白木 由香 根岸美優 山崎 楓
蛯原 千晶 太田 陽恵
授業担当者
小平裕子
重イオンビーム
シロイヌナズナは26000個の遺伝子を持つ
新たにM2を播種
実験①
M1
遺伝子:体のはたらき、
形を決めるもの。DNAか
らできている。
種子
突然変異を起こした種子(M1)を育て、
自家受精させて次世代種子(M2)を得る。
(ここまでは理化学研究所で行われた)
×
観察された変異体
z 葉の縁が赤い個体
z 根元が黒い個体
自家受精
DNA
M2
遺伝子(これが26000個ある)
この種子を相馬高校に
送って頂いた。
×
DNA、遺伝子の模式図
色素に関するDNA 領域
に変異がある
z 前回も体色が赤い個体が観察されており、同様に遺伝子に関
する変異か環境による変異か調べる必要がある。
z WTの発芽がほとんどみられなかった。種子の劣化が原因と
推測される。
××
すべての遺伝子の働きがわかって
いるわけではない。
実験②
実験の目的①
zシロイヌナズナの持つ遺伝子の働きを知る。
①M2種子を寒天培地に播種
②7日目に観察
(発芽率、形態)
③その後随時観察
z hy変異体
z gl変異体
z 胚軸が長くなる
z 光を感じる器官に異常がある
z トライコーム(紫外線や捕食か
ら植物を守る働きがある)がな
くツルツル
DNA
④変異体の種子を得る
暗い所でも光があると
勘違いして伸びる
⑤その種子(M3)を播き、M2と同じ表現型が見られるか観察する
遺伝子
⑥DNAを抽出し、どこに変異があるかを解析する
実験の概要
突然変異を起こす
DNA
これらの変異体は壊れた遺伝子の様子がDNAレベルで調べ
ることが容易である。
hy変異体の観察条件
M2観察結果
6000
①遺伝子に傷をつける(突然変
異を起こす)。
×
観察された変異体
遺伝子
②突然変異が起きた個体を育て、
どのような異常が生じたかを観察。
例
【光量】
推測
色素に関するDNA領域に変異がある
z ①体色が赤い個体
z
形態に関するDNA領域に変異がある z
z ②葉がギザギザの個体
葉緑体の色素に関するDNA領域に変異があ z
z ③アルビノの個体
z
る
0枚
1枚
2枚
3枚
5000
88(μmol/m2・s)
54
41
31
茎 4000
の
3000
長
さ 2000
(μm)1000
0
・・・の三種類の変異体が観察された。
③傷がついた遺伝子が、異常が
起きた形質に関与していることが
わかる。
zまた変異体はWTに比べ成長が遅い
正常な個体
0枚
0枚
M3観察結果
M2
z ①体色が赤い個体
z ②葉がギザギザの個体
z ③アルビノの個体
重イオンビーム(炭素イオン 400gy)を
種子に照射し、突然変異を起こす。
しかし重イオンビームでは
特定の遺伝子を壊すことはできない
n=4
n=4
1枚
2枚
キムワイプの枚数
3枚
n=4
①と③ 光合成が十分
に行われないため
突然変異体
(変異がおきた遺伝子
は花の形態に関わる)
遺伝子の働きを知るために・・・
n=4
M3
1枚
2枚
3枚
今後の展開
観察されなかった
観察された
種子を得られなかった
z新たにWTと変異体の種子を播き観察する
重イオンビーム
種子
×
どこの遺伝子がどのように壊れて
いるかまでは分からない
z この結果よりM2で見られた変異体①は遺伝子に関する変
異ではなく環境による変異ではないかと推測される。
z 変異体②に関してはM3でも変異が見られたので遺伝子に
変異があると考えられるが、WTとさらに比較する必要が
ある。
z アルビノの個体は種子がつかないためM3を得られない。
z変異体が得られたら次世代の形態を観察す
ると共にその個体の塩基配列を調べる
Special Thanks
実験の目的②
東北大学 大学院
渡辺正夫先生
z 重イオンビームでどのように遺伝子が壊れる
かを調べる
理化学研究所
阿部知子先生
風間裕介先生
に協力をいただきました。
ありがとうございました。
- 19 -
アブラナ科植物のアイソザイム解析
福島県立相馬高等学校
鈴木健太
アブラナ科の植物
小平裕子
考察(イソクエン酸脱水素酵素:IDH)
電気泳動後
„
„
ブロッコリー
授業担当者
電気泳動後、ゲルを染色液に浸し酵素がある場所を染
色する。
-
今回解析する酵素
„
両実験で、芽キャベツ由来のIDHが他のものよ
りも泳動距離が小さい。
„
2/23では、ブロッコリー、コールラビ―、芽キャ
ベツ由来のIDHのバンドが二つ見られた。
マリックエンザイム
イソクエン酸脱水素酵素
カリフラワー
植物の形態の類似と遺伝情報の類似に
+
相関関係はあるのか?
アイソザイムとは、酵素として同じ働きを持ちな
がら、活性部位以外のタンパク質の形がちがう
ものである。この違いは遺伝的な違いにより現
れる。
大根
白菜
„
チンゲ ンサイ
結果(アガロースゲル、マリックエンザイム)
アイソザイム
„
中央部が青紫色になっ
ていた。
今後の課題
„
„
活性部位
活性部位
„
泳動、染色方法の改良(ゲルの濃度、電流)
酵素の抽出方法の改良
実験個体数を増やす
50V、20時間、-10℃
酵素a
酵素b
マー カー
ミミズ
キ ャベツ
芽 キャベツ
コー ルラビ
ブ ロッコリー
マー カー
アカ ムシ
キャベツ
芽 キ ャベツ
コー ルラ ビ
ブロッコリー
結果(デンプンゲル、マリックエンザイム)
酵素の抽出
植物の葉を細かくきる
↓
氷で冷やしながらすりつぶす
今回使用した植物
参考文献
大根、白菜、チンゲンサイ、ブロッ
コリー、キャベツ、
↓
遠心分離して上澄みをとる
コールラビ、芽キャベツ、アカムシ、
ミミズ
↓
„
上澄み液を小さく切ったろ紙
270V、2時間半泳動
に染みこませる。
2010年12月24日
研究の主な流れ
270V、1時間半泳動
2010年2月23日
考察(マリックエンザイム:ME)
„
„
アイソザイムをゲルの中に入れ、電気泳動をおこなう。
+の電荷を持つ物は-へ、-の電荷を持つ物は+へ、移動す
る。
„
12/24と2/23の二つの実験とも芽キャベツ
由来MEは他のものよりも泳動距離が小さい。
12/24のコールラビ由来MEは、ブロッコリー
由来MEと同じくらいの泳動距離であった。
しかし、2/23のコールラビ由来MEはブロッコ
リー由来MEよりも泳動距離が小さい。
タンパク質の構造によって、泳動後の位置が異なる。
電気泳動
結果(デンプンゲル、イソクエン酸脱水素酵素)
マーカー
ミミズ
キャベツ
芽キャベツ
コールラビ
ブロッコリー
ブ ロッコリ ー
キ ャベツ
コー ルラ ビ
アカ ムシ
芽 キ ャベツ
マー カ ー
ここに粗酵素
溶液を染み
込ませたろ紙
を入れる
マーカー
アカムシ
キャベツ
芽キャベツ
コールラビ
ブロッコリー
ゲルに粗酵素溶液を入れ、流す。
-
+
270V、2時間半泳動
電気泳動槽
2009年12月24日
270V、1時間半
2010年2月23日
- 20 -
„
神奈川県城ヶ島産天然メガイアワビの遺伝的特性
について:神奈川県水産試験場研究報告(第10
号)(1989年)高田 啓一郎
水族における遺伝資源の存在様式と保全
編著 藤尾芳久
福島県立相馬高等学校 2年 今田弘樹 渡部哲矢 鈴木健太
授業担当者 小平裕子
研究の動機
先日、東北大の渡辺先生が相馬高校に来校したときに私たちが育てているアブラナ科植物の様子を見て栄養が足りないとの
ご指摘を受けた。そこで私たちは発芽時とその後の生長の際に栄養はどのくらい必要なのか、また、酸性やアルカリ性の土
壌でも発芽または生長できるのか疑問に思い研究を始めた。
研究方法
①種子を播く培地を簡単に条件を変えられるように寒天培地にし、5つのパターンとその濃度を変えた物の計15種の培地
を用意する
②カイラン、カリフラワー、キャベツ、ケール、コールラビ、ブロッコリー、芽キャベツの種子をまく
③発芽率と生長度を調べる
用意した培地について
(1)アガー+水(basic:b)
(2)b+1/2500hyponex
(3)b+1/500hyponex、
-2
-2
(4) b+CH3COOH1.7×10 M (5)CH3COOH1.7×10 M+1/2500hyponex 、
(6)b+CH3COOH1.7×10-1 M (7)CH3COOH1.7×10-1 M+1/2500hyponex、
(8)b+NaOH2.5×10-2M
(9)b+NaOH2.5×10-2M+1/2500hyponex、
-1
(10)b+NaOH2.5×10 M
(11)b+NaOH2.5×10-1M+1/2500hyponex、
(12)b+CaCO31.0×10-2M
(13)b+CaCO31.0×10-2M+1/2500hyponex、
-1
(14)b+CaCO31.0×10 M
(15)b+CaCO31.0×10-1M+1/2500hyponex
結果
basic
カイラン
カリフラワ
キャベツ
ケール
コールラビ
ブロッコリ
芽キャベツ
8/11 (73%)
5/10 (50%)
6/6 (100%)
9/10 (90%)
5/6 (83%)
8/9 (89%)
7/7 (100%)
b+1/2500hyp b+1/500hyp
5/5 (100%)
7/10 (70%)
7/7 (100%)
9/10 (90%)
4/4 (100%)
8/8 (100%)
7/7 (100%)
7/10 (70%)
6/8 (75%)
7/7 (100%)
12/12 (100%)
8/8 (100%)
6/6 (100%)
1/5 (20%)
CH3COOH
1.7×10-2 M
0/5
0/4
0/5
0/5
0/6
0/7
0/7
(0%)
(0%)
(0%)
(0%)
(0%)
(0%)
(0%)
CH3COOH
1.7×10-2
M+1/2500hyp
2/10 (20%)
0/6 (0%)
0/6 (0%)
2/10 (20%)
0/7 (0%)
0/7 (0%)
0/7 (0%)
カイラン
カリフラワ
キャベツ
6/7 (86%)
4/5 (80%)
4/4 (100%)
CaCO3
1.0×10-2M+
2500hyp
8/9 (89%)
7/10 (70%)
5/6 (83%)
ケール
4/7 (57%)
9/9 (100%)
8/8 (100%) 10/10 (100%) 10/10 (100%)
コールラビ
ブロッコリ
芽キャベツ
6/6 (100%)
8/8 (100%)
3/3 (100%)
9/10 (90%)
6/7 (86%)
6/7 (86%)
5/5 (100%)
8/8 (100%)
2/3 (67%)
CaCO3
1.0×10-2M
表1
CH3COOH
1.7×10-1 M
0/10 (0%)
0/10 (0%)
0/6 (0%)
0/11 (0%)
0/5 (0%)
0/8 (0%)
0/5 (0%)
CaCO3
NaOH
NaOH
-1
1.0×10 M+
2.5×10-2M+
2.5×10-2M
2500hyp
2500hyp
5/7 (71%)
6/10 (60%) 6/10 (60%)
5/10 (50%)
8/11 (73%)
4/5 (80%)
5/10 (50%)
6/10 (60%)
3/4 (75%)
5/5 (100%)
5/6 (83%)
6/6 (100%)
0/5 (0%)
0/4 (0%)
0/6 (0%)
NaOH
2.5×10-1M+
2500hyp
0/5 (0%)
0/4 (0%)
0/4 (0%)
9/10 (90%)
0/5 (0%)
0/5 (0%)
6/7 (86%)
7/8 (88%)
3/7 (43%)
0/5 (0%)
0/8 (0%)
0/7 (0%)
0/5 (0%)
0/8 (0%)
0/7 (0%)
CaCO3
1.0×10-1M
6/6 (100%)
5/5 (100%)
5/5 (100%)
4/5 (80%)
8/8 (100%)
1/7 (14%)
CH3COOH
1.7×10-1M+
2500hyp
0/11 (0%)
0/10 (0%)
0/6 (0%)
0/11 (0%)
0/6 (0%)
0/8 (0%)
0/7 (0%)
NaOH
2.5×10-1M
播種後1日目の発芽の観察結果( 発芽個体 / 播種個体(発芽率%))
発芽率80%未満を青文字で示した。
Hyponex2500倍の方が500倍より発芽率が高かった。
CH3COOHが含まれている培地では、発芽は全く見られなかった。また、CaCO3が含まれている培地では、8~9割ほ
ど発芽したのを確認した。NaOHの培地では、濃度2.5×10-2Mでは、発芽はほとんど見られなかったが濃度2.5×10-1M
では、6~7割の発芽が確認できた。発芽率が高い植物は、キャベツ、ケール、コールラビ、ブロッコリーであっ
た。また、発芽率が低かったものは、芽キャベツであった。
.
↑実験のようす↑
- 21 -
1↓
C
0a
C
0
O
0 3
1
M
× .
×
3
0C
0O
1O
MH
+
h
y
p
2
5
0
0
倍
.
.
1↓
C
7H
basic
カイラン
カリフラワ
キャベツ
ケール
コールラビ
ブロッコリ
芽キャベツ
b+2500hyp b+500hyp
○
○
○
△
○
△
○
◎
◎
◎
△
◎
◎
○
CaCO3
CaCO3
1.0x10-2M+
1.0×10-2M
2500hyp
カイラン
カリフラワ
キャベツ
ケール
コールラビ
ブロッコリ
芽キャベツ
表2
◎
◎
○
◎
◎
○
◎
◎
◎
◎
△
◎
◎
○
△
◎
◎
◎
◎
○
○
CH3COOH
1.7×10-2 M
CH3COOH
CH3COOH
1.0x10-2
1.7×10-1 M
M+2500hyp
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
CaCO3
NaOH
CaCO3
NaOH
-1
1.0x10
2.5x10-2M+
M+
2.5×10-2M
1.0×10-1M
2500hyp
2500hyp
○
△
△
△
○
△
○
○
○
○
○
○
△
△
△
△
△
△
△
△
△
CH3COOH
1.7 × 1 0 - 1 M +
2500hyp
×
×
×
×
×
×
×
NaOH
2.5×10-1M
◎
◎
○
△
◎
◎
◎
×
×
×
×
×
×
×
NaOH
2.5x10-1M+
2500hyp
×
×
×
×
×
×
×
播種後4日目の生長の観察結果(特に生長している=◎ 生長している=○、
あまり生長していない=△、発芽していない=×)
↓NaOH
2 5.×0 0.1M
(△)
↓アガー+水
(○)
↓アガー+水+
hyp500倍
(◎)
↓温室の様 子
↓アガー+水+
hyp500倍
考察
〈発芽〉
Hyponex2500倍の方が500倍より発芽率が高かった。
CH3COOHが含まれている培地では、発芽は全く見られなかった。また、CaCO3が含まれている培地では、8~9割ほ
ど発芽したのを確認した。NaOHの培地では、濃度2.5×10-2M(pH11.6)では、発芽はほとんど見られなかったが濃度2.5
×10-1Mでは、6~7割の発芽が確認できた。ケールとブロッコリーは塩基性が高い(pH11.6)培地でも発芽率は高
かった。芽キャベツ、カイラン、カリフラワーは塩基性が高い(pH11.6)培地では発芽率が低かった。
〈生長〉
2500倍Hyponexを加えた培地では全ての種で生長が良かった。hyponex使用の際の適正濃度が2000倍であることからも予
想される結果であった。今回用いた酸性培地(pH3.1~pH2.1)では全く生長しなかった。酸性が強すぎたためだと思
われる。もう少し弱い酸性培地で発芽し、生長するか調べてみたい。CaCO3を加えた培地では、10-2Mではよく生長し
ていたが、10-1Mでは生長度合が低いものが見られた。NaOHを加えた培地では10-2M(pH11.6)+1/2500hyponexの場合
はよく生長していたが、hyponexを加えない培地では生長度合が低かった。
種類別に見るとカイラン、カリフラワー、コールラビ、キャベツはhyponexを加えた場合で生長度合が高かった。ただ
し、カイランについてはhyponexが多いと生長が抑えられた。ブロッコリーについてはhyponexを多く加えた場合と
CaCO3を多く加えた場合で生長が抑えられた。ケール、芽キャベツの結果については不規則なため謎である。
今後の課題
生長したアブラナ科植物を砂地等さまざまな粒度の土で生育し、どのような生長を見せるのか観察を行いたい。
- 22 -
平成21年度
野口英世賞
第53回日本学生科学賞
応募作品
応募作品
最優秀賞
読売支局長賞
「サキグロタマツメタの繁殖力と稚貝の弱点」
~駆除を目指して~
福島県立相馬高等学校
Ⅰ
課題研究生物班
研究の動機と目的
相馬市の東沿岸には県内では唯一の干潟、松川浦がある。ここは、栄養塩類や有機物が
豊富なため、ノリやアサリなどの養殖が盛んである。その中で、アサリは漁業や観光潮干
狩りに不可欠な存在である。
2002年、このアサリを捕食する外来種のサキグロタマツメタが相馬でも発見され、
アサリの食害が問題になっている。
サキグロタマツメタは今や岩手県から熊本県の全国十ケ所で発見されており、全国的な
問題になってきた巻き貝であるが、本種に関する文献や研究は少なく、生活史や生態など
はあまり分かっていない。その為、有効な駆除方法は確立されておらず、関係者が干潮時
に目視で本種個体や卵塊を捜し、手で除去しているのが現状である。
我々は、このことを先輩の研究で知り、この外来種に興味を持った。先輩たちはこの貝
の文献検索を行い、人工飼育を確立させ、捕食の仕方や孔の開け方について研究された。
私たちは本種の駆除方法の立案のため、本種の生殖・発生の仕組みと稚貝の行動面の研究
に取り組むことにした。
《サキグロタマツメタについて》
①科名・形態的特徴
学名はEuspira fortunei。和名サキグロタマツメタ。
軟体動物(タマガイ科)の巻き貝、和名の通り、殻頂
部分が黒色を帯びている(図1)。
(今後、サキグロタマツメタをサキグロと記載)
②採餌の方法
図1 サキグロタマツメタ
サキグロの一番の特徴は主に二枚貝の殻に穴を開けて
中身を食べることである(図2)。共食いなどの跡もた
まに発見される。
③繁殖
繁殖期に砂茶碗というお茶碗をひっくり返したような
形の卵塊(図3)をつくり、繁殖する。図3の様な卵塊
一つから1000~4000個体が出てきて、直接砂の
図2
上をはいだす形で稚貝が孵化する。
- 23 -
穿孔
Ⅱ
研究の内容
1
卵塊の作り方について
(1)方法
繁殖期である9月末~10月末にかけて、飼育下のサキ
グロ(10匹)について、昼は定期的な目視観察、夜は暗
視カメラを設置してビデオに録画し、翌日以降にそのビデ
オを観るという方法で観察を続けた。
図3
(2)結果と考察
卵塊
合計7個の卵塊を作製した。このうち2件は卵塊作
成途中のサキグロ(図5)に遭遇することができた
(卵塊は完全に砂中で作製されるため、普通は観察す
ることはできない。砂中を手でやさしく掘り起こしな
がら観察していたところ、遭遇することができた)。
以下に特徴をまとめる。
①卵塊は砂中で作製され、完全にできあがると突然
砂上に現れた(30分以内)。
②できたばかりの卵塊は弾力がありやわらかいが次
図4
人工飼育水槽
第に硬くなっていった。
③卵塊は二重に作製されるものがあった。
④外套膜で卵塊を挟み込むようにして、サキグロが回転(時計回り1件・半時計回り1
件)するように作製する(図5)。
⑤卵塊作製途中の卵塊からは稚貝は孵化しなかった。さらにこの卵塊の表面の小部屋
(中のう:図12)の中には発生途中の細胞の塊の様なものが観察できた。(図6)。
時計回り
①
②
図5
卵塊作成途中のサキグロ
図6 発生途中の細胞塊
上記の結果から考察すると、サキグロが砂に潜って産卵をするのは、生殖活動はその個
体にとって無防備な状態であるので外敵から身を守るため、さらに産卵中は外套膜を使用
するので不安定となるので姿勢を保つためであると考えられる。産卵した卵に砂をまぶし
て形を整える(砂茶碗を作る)のは、卵の捕食を防ぎ、さらに卵の発生を助け、稚貝の孵
- 24 -
化を助ける形にするためと考えられる。卵塊は一層の中のうからなっているので、水中の
酸素等が行き渡りやすく、さらには孵化する際に他の個体が邪魔になりにくく、行動範囲
を広めるには都合が良い形であると考えた。また、卵塊は突如として隆起してくる(30
分以内)ため、サキグロ自身が卵塊を砂の上に持ち上げると考えられる。また、卵塊は不
完全だと卵の発生が正常に行われないことから、卵塊作成途中の卵は無精卵であり、受精
は卵塊作製後の可能性があると考えられる。専門家によるとサキグロは雌雄異体で繁殖期
には交尾をするとのことなので、雌は精子を蓄える貯精膿を持ち、卵塊作成後に受精させ
る、もしくは正常発生に不可欠な何らかのシステムを開始させるのだと考えられる。
2
孵化の仕方・孵化数について
文献によるとサキグロの卵塊からは1000~4000個の稚貝が孵化するという。数
値の開きが気になったので、われわれも独自の方法で試算を行うことにした。
(1)方法
①孵化のしかた
卵塊を海水に浸し、エアーポンプを付けて観察する(人工飼育水槽に入れたままにする
と、稚貝は恒温装置や循環器に吸われてしまうので水温の上昇に注意してこの方法し
た)。
②孵化数の試算の仕方
方法Ⅰ:卵塊(松川浦から駆除してきた卵塊のうち形のよいもの任意に50個体抽出)
と中のうの面積を測り、卵塊に対する中のうの数を計算する(昨年実施)。
方法Ⅱ:(方法Ⅰを改善)卵塊(飼育水槽で作成させたもの)を1cm×1cmに切り
取り(図7)、この面積中(1cm 2 )にある中のうの数を数え、卵塊の平均面積を
かける(今年実施)。
図7 切り取られた卵塊
図8 作業の様子
(2)結果と考察
《孵化のしかた》
観察の結果、中のうにははじめ多くの胚が存在しているが、発生が進むと個体数の減少
- 25 -
がみられ、孵化する頃になると1つの中のうに3個体程度になり(図9)、それが稚貝と
孵化済み
の中のう
③
①
図10
図9 中のうの中身
孵化が始まった卵塊
して孵化することが分かった。卵塊は中のうごとに不規則に孵化が起こり(図10)、二
ヶ月程度で全て孵化した。また、昨年の卵塊(乾燥)を海水に戻しても孵化は起こらなか
った。
発生段階の様子を図11~図16に示す。
多数の卵
中のう
図11
図12 中のう
卵塊
個体数の減少
図14 中のう内(中期)
結果Ⅰ(方法Ⅰによる)
図13 中のう内(初期)
殻ができはじめる
図15
中のう内(後期)
《孵化数》
図16 孵化した稚貝
A:卵塊の平均面積=65.8cm 2
B:中のうの平均面積=0.044cm 2
C:中のうの数(A÷B)=1496個
D:1つの中のうから孵化する稚貝の数=3個体(観察による:図9)
式
C×D=4485(個体)
- 26 -
結果Ⅱ(方法Ⅱによる)
A:卵塊の平均面積=75.3cm 2
B:1cm
2
(台形の面積の公式を使用して算出)
あたりの平均中のう数
=13.8個
C:1つの中のうから孵化する稚貝の数
=3個体(観察による:図9)
式
A×B×C=3117.4(個体)
上記の結果より、一つの卵塊から孵化する稚貝の数は卵塊の大きさに大きく寄与する
が、平均3000以上にも及んだ。サキグロ1匹からこの数が発生するためサキグロの繁
殖力の脅威が伺えた。専門家の話によると、ツメタガイでは1匹が1シーズンに複数個の
卵塊を作製することが知られているそうだ。1の実験で観察された二重に作製された卵塊
が1個体によるものかどうかは分からないがサキグロでもこの可能性は高いと思われる。
また、一度完全に乾燥状態にさらされると、卵は発生孵化能力が消滅することが分かっ
た。サキグロの駆除については成体だけではなく、卵塊を駆除しなければならないことを
身にしみて感じた。
3
稚貝の行動について
水槽内で孵化したサキグロの稚貝を観察していると、その行動に特徴があるように思わ
れたので、実験を行うこととした。
ⅰ)光に対する反応
仮説
サキグロの稚貝には正の光走性がある(観察によると稚貝は昼夜問わず砂の上を
歩行しているため)
(1)方法
①シャーレの半分を黒のビニルテープで遮光したものを用意する(図17)。
②サキグロの稚貝をシャーレの明暗の境目に並べる(図18)
③上から光源装置による光を当て、5分後に稚貝の位置を観察する(図19)。
図17
図18
- 27 -
図19
(2)結果と考察
明るい
暗い
中央
1回目
17
3
0
2回目
13
7
0
3回目
7
13
0
稚貝は明るい方へ移動した。結果より、サキグロの稚貝には正の光走性があると考えら
れるが、同じ個体で繰り返し実験を行っていると、回数を重ねる毎に反応が見られなくな
るため断定はできない。サキグロの成体は夜行性の性質をもつので、この行動の違いはと
ても興味深いと考えられる。
ⅱ)重力に対する反応
仮説
サキグロの稚貝には負の重力走性がある(飼育水槽の壁によじ登っている個体が
多いため)
(1)方法
①海水の量を変えた3種類の試験管(海水なし・試験管の半分まで海水を入れたもの・
試験管の上まで海水を入れたもの)を用意する。
②各試験管に幼貝を10匹ずつ入れ、5分間放置する(図20)。なお、光に対する反
応の違いをみるためアルミホイルで遮光した群(図21)も用意した。
図20
図21
(2)結果
サキグロの個数
光遮断なし
海水なし
下 8匹 上 2匹
海水あり(半分) 下 0匹 上 10匹
海水あり(全部) 下 0匹 上 10匹
サキグロの個数
光遮断
海水なし
下 10匹 上 0匹
海水あり(半分)下 1匹 上 9匹
海水あり(全部)下 0匹 上 10匹
遮光しなかったものも遮光したものも、海水がある場合に限り試験管の上方へ移動し
た。サキグロの稚貝には負の重力走性があるものと考えられる。
- 28 -
ⅲ)地面の違いによる移動能力について
ⅱ)の実験において海水がない場合にサキグロの移動は見られなかった。さらに、一連
の実験・観察を通して、シャーレの縁の表面の加工の違い(つや有り(焼口)・つや消
し)によって、シャーレに入れておいた稚貝の移動能力に違いが生じることに気づいた。
(つや有りシャーレの場合シャーレの縁を乗り越えて脱出する稚貝が多いが、つや消しシ
ャーレの場合、縁を乗り越えるのは困難なようで脱出する稚貝はいなかったという事実)
そこで、地面の材質や地面の水分量などの環境がサキグロの移動能力に大いに影響を及ぼ
すのではないかと考え実験を行うこととした。
・仮説
サキグロの稚貝は表面に凹凸がなく、なめらかで、十分な水分がある地面の移動
を得意とする。
(1)方法
①寒天・ゼラチン・砕いた貝殻入り寒天をそれぞれ純水・海水で固めたものを用意す
る。
②で用意したものに稚貝を10個体乗せ、行動を観察する。
③それぞれの上に純水・海水を2~3mmの深さになるように入れたものに稚貝を10
個体乗せ、行動を観察する。
(2)結果と考察
培地 作成 時の溶 液
( 水道水 :水 海水 :海)
水 水 水 水 水 水 水 水 海 海 海 海 海 海 海 海
培 地の 成分
(ゼラチ ン: ゼ 寒 天:寒 )
寒 寒 寒 寒 寒 ゼ ゼ ゼ 寒 寒 寒 寒 寒 ゼ ゼ ゼ
実験 時に加えるもの
(貝殻 :貝 純粋: 純)
貝
海
貝
純 海
海 純 貝
海
貝
純 海
海 純
結 果
(歩 行可能 :○ 歩行 不可 能 × × × × ○ × △ × × × × × ○ × △ ×
×
培地のみの場合、活発に移動することはできない。純水が入れられると、殻に閉じこも
り(図22)、海水を入れたものでは活発に動いていた。しかし、寒天・ゼラチンとも表
面はなめらかであるが、ゼラチンの場合、歩行が上手くいかず、滑って転んで上手く移動
できない様子の個体が多く観察できた(図23)。
図23 転倒する稚貝
図22 閉じこもる稚貝
- 29 -
文献等によるとサキグロの駆除方法の一案として、潮干狩り場にカキ殻を砕いて地面に
撒き、サキグロのスムーズな移動を妨げることでアサリへの捕食活動を制限させるなどの
方法も考えられているようである。サキグロの行動面の研究はサキグロの駆除に繋がる重
要な研究であることが確認できた。
Ⅲ
まとめ~駆除棒の設計について~
上記の実験によって、サキグロの稚貝は、孵化後、昼夜を問
わず盛んに移動すること、そして、正の光走性・負の重力走性
があり、ゼラチンのような摩擦の少ない地面を上手く歩行する
ことが困難だということが分かった。この結果に基づき、我々
はガラス製の筒の内側にゼラチンを付着させた「駆除棒(図2
4)」を考案した。サキグロの稚貝は外側のガラス面を容易に
よじ登るが、内側のゼラチン質まで来
ると滑ってしまい脱出不可能になるという仕組みになってい
る、実際、実験室の飼育水槽で試してみたところ、一日で20
匹の稚貝の獲に成功した(図27)。しかし、松川浦において
は潮の干満や風・雨の影響があること、ゼラチンは数日でカビ
図25
駆除棒と稚貝
図26 稚貝取り外し
図24
図27
駆除棒
駆除された稚貝
が繁殖してしまうこと等、課題が多く、実用化にはほど遠い。しかし、今後、稚貝の行動
に加えて成体の行動やサキグロが好む水質や底質などの環境条件等についての研究が進
み、より効果的なサキグロの駆除法が確立できれば、安心して潮干狩りのできる松川浦が
実現すると思う。そのような研究ができればと考える。
〔ご指導・ご協力頂いた方々〕
本研究を進めるに上で、サキグロ研究の第一人者・石巻専修大学大越健嗣教授には研究
に対してのご助言・ご指導を賜りましたことに対し、心より御礼申し上げます。また、人
工飼育のための海水の採水・サキグロの提供などの便宜を図って頂いた相馬双葉漁業協同
組合の関係者にも御礼申し上げます。
石巻専修大学
大越健嗣教授
相馬双葉漁業協同組合
- 30 -
〔参考文献〕
1)日本近海産貝類図鑑
奥谷喬司
2)貝殻、貝の歯、ゴカイの歯
東海大
大越健嗣
学出版会
成山堂
〔共同研究者〕
荒
光信
紺野和教
富田和輝
三浦隆寛
〔指導者〕
教諭
中川こずえ
- 31 -
平成21年度 第53回日本学生科学賞福島県審査応募論文
「イカ墨液晶の研究」
福島県立相馬高等学校 課題研究3年化学班 櫻 雅貴 齊藤大喜 持立 完 山家史大
1 はじめに
私たちは地元相馬市にある日本百景のひとつである松川浦の研修会に参加して、松川浦にはイ
カがいることを知った。そのイカは、液晶の性質を含むイカ墨を持っている事を聞き、私たちは
ぜひイカ墨液晶を作りたいと考えた。また、今日テレビ画面の材料である液晶をイカ墨から作る
ことによりコスト削減を可能にでき、さらにほとんど廃棄されているイカの墨嚢を有効利用する
ことができるのではないかと考えた。
液晶とはその名前の通り、液体と固体の中間的な存在で、図1のように分子が棒状や円盤状な
どの特殊な形をしている場合にその特徴が現れる。液晶は、私たちに身近な携帯電話やパソコン
のディスプレイや液晶テレビの画面などに利用されているほか、イカやタコが吐く墨にも含まれ
ていると言われている。
【図1】液晶の分子模型
液晶には、熱や電気により螺旋構造のピッチが変化し、反射する波長が変化するために色が変
化する性質があるが、今回の実験においては、温度による色の変化が見られれば液晶の性質が見
られたと定義することにした。
なお、文献等を調べたところ、液晶にはリオトロピック液晶(濃度を適当に調節したときに液
晶状態になるもの)とサーモトロピック液晶(ある温度範囲だけで液晶状態になるもの)の2種
類がある。
2 実験
私たちは、実際にイカ墨から液晶を抽出する前に、液晶に関する基礎的な理論を学ぶために、
リオトロピック液晶とサーモトロピック液晶の2種類を作成することにした。
(1)リオトロピック液晶
リオトロピック液晶の性質について確認するために、実際に市販されてい
る薬品を用いてリオトロピック液晶を作成した。リオトロピック液晶とは濃
度を適当に調節したときに液晶状態になるものである。
【実験器具】
・サンプル瓶
・割り箸
【実験試薬等】
・蒸留水
・ヒドロキシプロピルセルロース(図2)
【図2】
- 32 -
【実験方法】
①蒸留水を0,9gから1,4gまで0,1g刻みでそれぞれはかり取り、サンプル瓶に入れる。
②ヒドロキシプロピルセルロースを2,0gずつはかり取る。
③それぞれのサンプル瓶にヒドロキシプロピルセルロースを加える。
(図3)
④ガラス棒で気泡が入らないようにゆっくりとかき混ぜて均一な濃厚溶液とする。
⑤そのまま一晩放置する。
(図4)
【図4】
⑥下に黒い紙を置き反射光の様子を観察する。
⑦最も良い反射光を示した1,1gのサンプル瓶の底から温風を当てる。
(図5)
⑧白濁したらゆっくり室温に
戻し色の変化を観察する。
【実験結果】
①一晩放置した後の様子(図6)
【図3】
【図5】
蒸留水の量
色の変化
0,9g
無色
1,0g
1,1g
1,2g
無色
青紫色
青色
1,3g
緑色
1,4g
赤緑色
【図6】
【図7】
- 33 -
②1,1gのサンプル瓶の底から温風を当てた結果(図7)
温度
高
低
色の変化
白濁 → 赤緑 → 緑 → 青緑 → 青紫
【考察】
濃度による変化は、濃度が高くなるにつれて青紫色から緑色、赤色へと変化し、温度による変
化は、温度が高くなるにつれて青紫色から緑色、赤色へと変化した。
これらのことから、リオトロピック液晶は、温度や濃度が高いほど、波長の長い光を反射する
ことが分かった。
(2)サーモトロピック液晶
次に、サーモトロピック液晶についても性質を確認するために、実際に市販されている薬品を
用いて作成した。サーモトロピック液晶とは、ある温度範囲だけで液晶状態を示すものである。
【実験器具・装置】
・スライドガラス
・下敷き
・ガスバーナー
・ビーカー
【実験試薬等】
(図8)
・コレステリルオレイルカーボネート
・コレステリルノナノエート
・コレステリルベンゾエート
・石油エーテル
【図8】
・エポキシ系接着剤
【実験方法】
①コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルノナノエート、コレステリルベンゾエート
の3種類の試薬を3:6:1の割合になるように正確に秤量する。
②秤量した3種類の試薬を1つのサンプル瓶に入れ、約3倍の石油エーテルを加える。
③蓋をしたあと、容器を振りながら溶かす。④溶けた溶液をスポイトにとり、黒い下敷きに1滴
たらし、2cm×2cm ぐらいになるように、厚紙で厚さが均一になるようにのばす。⑤石油エーテ
ルが蒸発するまで放置する。
⑥文字などを中抜きにした2cm×2cm ぐらいの大きさの黒い紙
を用意し、液晶の紙に重ね、その上にスライドガラスを重ね、その周囲をエポキシ系接着剤でシ
ールし、液晶を作る。
⑦ビーカーに水を入れて液晶を浸し、ガスバーナーで加熱して温める。
(図9)
⑧温度変化による、液晶の色の変化を観察する。
(図10)
【図10】
【図9】
- 34 -
【実験結果】
37℃前後で発色し始め、温度が高くなるにつれて赤褐色から緑色を経て青紫色に変化した。
【考察】
温度が高くなるにつれて、赤褐色から緑色、青色と変色することが分かった。このことから、
温度が高くなるにつれて波長の短い光を反射することが分かった。また、リオトロピック液晶の
色の変化と比較してみると、全く逆の色の変化が見られた。このことから、サーモトロピック液
晶とは分子の配列の仕方が違うことが分かった。
(3)イカ墨からのコレステロール抽出
次に、実際にイカ墨からのコレステロール抽出を行った。コレステロールは油脂であるため、
有機溶媒に溶けると考え、ジエチルエーテルを用いて単純な溶媒抽出を行った。
【実験器具・装置】
・時計皿
・スライドガラス
・絵筆
・ドライヤー
【実験試薬等】
・イカ墨
・ジエチルエーテル
・蒸留水
【実験方法】
①イカの墨嚢から墨を取り出し純水に溶かす。②溶かした溶液にジエチルエーテルを加え、溶媒
抽出する。
③有機溶媒以外の溶液を取り除き、溶媒抽出したものを時計皿に移し、エーテルだけを蒸発させ
る。
④コレステロール油脂と思われる白い固形物を取り出す。
⑤絵筆を使い、コレステロール油脂をジエチルエーテルで溶かしながらスライドガラスに塗る。
⑥ドライヤーで温めて、色の変化を調べる。
【実験結果】
温度変化による色の変化は見られなかった。
【考察】
水とエーテルは混ざりにくいため、エーテルに触れている部分の面積が小さいので、取り出す
ことができたコレステロールの量が少ないと考え、この抽出法は適切ではないと判断した。
(4)分液漏斗を用いたイカ墨・肝臓からのコレステロール抽出
単純な溶媒抽出では、コレステロールを抽出できなかったと考えたので、有機溶媒とその他の
溶液を分離して抽出することのできる分液漏斗による溶媒抽出を行った。さらに今回はイカ墨だ
けでなく、イカの肝臓からのコレステロール抽出も行ってみた。
【実験器具・装置】
・分液漏斗
・ビーカー
・時計皿
・黒い下敷き
・ドライヤー
【実験試薬等】
・ジエチルエーテル
・イカ墨
- 35 -
・イカの肝臓
・蒸留水
【実験方法】
①イカ墨と肝臓の中の液体を取り出す。
②それぞれのビーカーに蒸留水とジエチルエーテルを加えて、分液漏
斗に入れる。
③分液漏斗をよく振り、ジエチルエーテルにコレステロール油脂を溶
かす。
(図11)
④エーテル層と水層が分離したら、ジエチルエーテル層のみをビーカ
ーに取り出す。
⑤抽出したジエチルエーテル層を時計皿に移して蒸発させ、白色(肝
臓からは橙色)固形物を取り出す。
(図12)
【図11】
⑥絵筆を用いて、コレステロール油脂を黒い下敷きに塗る。
⑦ドライヤーで温めながら、温度による色の変化を調べる。
【実験結果】
温度変化による色の変化は見られなかった。
【考察】イカ墨から抽出されたコレステロール油脂は白色だった
が、肝臓から抽出されたものは橙色であった。取り出した油脂に
温度変化を与えても、色の変化は見られなかった。抽出時間は十
分に行ったが、コレステロールが思ったほど取り出せず、取り出
したものには不純物が多く含まれていたと考えられる。よって、
効率の面からも、この抽出法は適当ではないと判断した。
【図12】
(5)ソックスレー抽出器による抽出
分液漏斗によるイカ墨、肝臓のエーテル抽出では結果が得られなかったため、ソックスレー抽
出器を用いての油脂抽出を行った。ジエチルエーテルの加熱、冷却を繰り返しながら、長時間抽
出を行うことができる方法で、この実験でもイカ墨と肝臓の両方でコレステロールを抽出した。
【実験器具・装置】
・ソックスレー抽出器
・丸底フラスコ
・水浴器
・シャーレ
・ガスバーナー
・黒い下敷き、絵筆
・ドライヤー
【実験試薬等】
・イカ墨
・イカの肝臓
・ジエチルエーテル
・蒸留水
【実験方法】
①イカ墨およびイカの肝臓をそれぞれ刻んで円筒ろ紙
に入れ、ソックスレー抽出器に取り付ける。
(図13)
②丸底フラスコにジエチルエーテルを適量入れ、抽出
器に取り付ける。水浴器に丸底フラスコの下半分が入
る程度の水を入れる。
【図13】
- 36 -
③水浴器をガスバーナーで加熱し、ジエチルエーテルの加熱、冷却を
1 時間程度繰り返し、コレステロール油脂を抽出する。
(図14)
④丸底フラスコのジエチルエーテルを、ドラフト内でシャーレに少量
ずつ垂らして蒸発させ、コレステロール油脂と考えられる固形物を取
り出す。
(図15①②)
【図15①】
【図15②】
【図14】
⑤固形物をジエチルエーテルで溶かしながら絵筆で黒い下敷きに塗る。
(図16)
⑥ドライヤーで温めながら、色の変化を観察する。
(図17)
【図16】
【図17】
【実験結果】
ドライヤーで温めてみた結果、
イカの肝臓から抽
出したコレステロール油脂の方に、
わずかではある
が一部色の変化が見られた。また、さらに温め続け
ると発色が消えた。
(図18)
【考察】
分液漏斗で行った抽出方法と比較すると、イカ
の肝臓のコレステロール抽出に使われたエーテル
は若干薄い黄色みがかっているが、
ほとんど透明で
あった。取り出されたコレステロール油脂では、温
度変化による発色の変化が見られたため、
ソックス
レー抽出器による抽出法が、この実験
【図18】
に適していることが分かった。しかし、取り出したコレステロールの量は分液漏斗よりは少なく、
抽出に時間がかかるため、今後はさらに効率良くコレステロール油脂が取り出されるように改良
していきたいと考えている。
- 37 -
3 今後の課題
今後の課題としては、次の点を考える。
(1)コレステロール油脂を、効率良く抽出するために改良の方法を検討する。
(2)温度変化による液晶の反応を見やすくするために改良の方法を検討する。
(3)温度による変化が見られるため、イカ墨液晶による温度計を製作し。実際に作用するのか
どうかを実践する。
(4)テレビの液晶を製作するためには、電圧による反応が必要なので、実際に電圧をかけて液
晶の変化を観察する方法を検討する。
4 参考文献及び謝辞
(1)
『トコトンやさしい液晶の本』
鈴木八十二 編(日刊工業新聞社)
(2)
『液晶(月曜班)』によるサイト www.ed.kagu.tus.ac.jp/~kaken/old/02mon.html
最後に本研究のために『液晶実験キット』を提供してくださった,(株)ベネッセコーポレーシ
ョン様に、この場を借りて御礼申し上げます。また、私達の課題研究をサポートして多くのアド
バイスをくださいました、福島県立相馬高等学校の関係教員の皆様に、深く感謝いたします。
ありがとうございました。
- 38 -
平成21年度 野口英世賞応募論文(優秀賞受賞)
「生分解性プラスチック合成に関する研究」
福島県立相馬高等学校 化学部3年 櫻 雅貴 木幡篤志 齊藤 遥
Ⅰ 研究動機
プラスチックは、非常に強く様々な機能を持ち、長期にわたって使用可能な物質であり、現代
の生活には必要不可欠なものである。しかし問題点として、次の様な点が挙げられる。
①自然界で分解しないので、ゴミとして堆積したり、誤飲等により生物へ影響を与える。
②石油を原料としているので、将来的な石油資源枯渇が、製品化に大きく影響する。
このような背景のもと、近年、自然界において分解する「生分解性プラスチック」が注目され
ている。そのほとんどが、植物や微生物由来の物質を原料としており、石油に依存しない材料と
しても期待されている。中でも乳酸を原料とするポリ乳酸は最も代表的なものであり、レジ袋等
日常生活にも用いられるようになってきた。
一方、健康志向の高まりから、乳酸菌を用いた食品が世の中に多く溢れている。乳酸菌は糖を
分解して乳酸をつくり出す菌であり、この乳酸菌を使えば、ポリ乳酸の原料である乳酸が作れる
のではないかと考えた。
そこで本研究では、市販品の乳酸菌飲料や乳製品を用いて、乳酸を自分たちの手で合成し、さ
らに合成した乳酸からポリ乳酸を作ることを目指して実験を行った(下図)。
研究の全体像
ブドウ糖
CH2OH
H
C
C
H
OH
OH C
H
ポリ乳酸
乳酸
O
H
H
C
C
OH
HO
乳酸発酵
H
O
C*
C
CH3
OH
OH
重合
O
H
O
C*
C
CH3
n
私達は2年前に、ポリ乳酸合成過程を中心に論文発表した。本論文は、その継続研究としての
報告だが、密接に関係するため、以前の発表部分についても改めて報告する。
Ⅱ 研究内容
(1)乳酸発酵による乳酸塩(乳酸カルシウム)の合成
私達は乳酸を大量に合成することを検討し、試行錯誤の結果、次の実験を試み成功した。
実験 ヨーグルトは明治ブルガリアヨーグルトを用いた。MRSブイヨンは関東化学から、ブド
ウ糖・炭酸カルシウムは昭和化学から、ろ過剤であるハイフロスーパーセルは昭和化学から、そ
れぞれ購入して用いた。水はイオン交換水を使用した。
2Lフラスコに、MRSブイヨン50g(ブドウ糖20gを含む)、ブドウ糖210g(MR
Sブイヨンに含まれるものも含めて230g(1.28mol))、ヨーグルト50g、炭酸カルシ
- 39 -
ウム142g(1.42mol)、水1.6Lを入れた。この混合物にラップで蓋をして、マグネチ
ックスターラーで撹拌しながら38℃で2週間放置した所、炭酸カルシウムの固体は徐々に消失
し、新たな固体が析出してきた。最終的には、混合物のほとんどが白色固体の状態になった。こ
の白色固体は、赤外吸収スペクトルの測定の結果、乳酸カルシウムであることが分かった。発酵
終了後、混合物を沸点近くまで加熱すると溶解した。この混合物に活性炭を加え、ブフナーロー
トにろ紙をのせ、お湯にハイフロスーパーセルを分散させたものを注いでろ過床をつくり、発酵
混合物をろ過した。ろ液を冷蔵庫で2日間放置すると、乳酸カルシウムの白色固体が析出した。
これをろ過により分離乾燥させ、乳酸カルシウムを得た。再結晶操作を2回繰り返し、最終的に
乳酸カルシウムを183g(0.84mol)得た。収率は66%であった。
結果 乳酸発酵の反応過程は、次のようになる。
ブドウ糖
乳酸
CH2OH
H
C
C
H
OH
OH C
H
乳酸
2
HO
+
H
O
C*
C
O
H
H
C
C
OH
乳酸発酵
2
HO
H
O
C*
C
OH
CH3
OH
炭酸 Ca
OH +
乳酸 Ca + 水 + 二酸化炭素
H
CaCO3
O
Ca + H2O + CO2
HO C* C O
CH3
CH3
2
乳酸発酵で生成した乳酸は炭酸カルシウムと反応し、乳酸カルシウムに変化する。乳酸カルシ
ウムの水に対する溶解度はそれほど高くないので、生成した乳酸カルシウムは、固体として析出
してきた。得られた乳酸カルシウムの中の乳酸部分は光学異性体であると思われるが、現段階で
はまだ確認できていない。
このような大量合成を行う前段階として、発酵の条件を次のように検討した。
培養液 資料より、菌の培養にはその菌にあった培養液が必要であることがわかった(資料1)。
調査したところ、乳酸菌の培養にはMRS培地が良いことがわかったので、以後、市販のMRS
ブイヨンを使用することにした(資料2)。実際にMRS培地を使用すると、発酵がよく進むこ
とが確認できた。
乳酸菌 乳酸菌については、当初、純粋なものを購入することを考えていたが、経費もかかるた
めに断念した。身近な食品であるヨーグルトは純粋な乳酸菌ではないが、乳酸菌を含んでいるた
め使用できると考え利用した。実験の結果、十分使用可能と判断し、明治ブルガリアヨーグルト
をそのまま用いた。
中和剤 炭酸水素ナトリウムと炭酸カルシウムを検討したが、炭酸カルシウムを使用した場合に
のみ乳酸塩の沈殿が生成した。また、相馬市はホッキ貝の産地であり、その貝殻(炭酸カルシウ
ム)は海岸で容易に入手可能なので、身近な素材を活用できる可能性もあり、炭酸カルシウムを
使用することにした。後に見つけた資料(資料3)によると、工業的にも乳酸発酵を行う工程で
は炭酸カルシウムを使用していることがわかった。
精製 発酵後の混合物には、目的とする乳酸カルシウム以外にも多くの物質が含まれており、そ
- 40 -
れをとり除く必要がある。乳酸カルシウムは固体として分離できるため、ろ過と再結晶を組み合
わせて精製することにした。
まず、発酵後の混合物を加熱し、乳酸カルシウムを溶解させた。乳酸菌や未反応の炭酸カルシウ
ムは溶解しないため、ろ過により除去できると考えた。しかし、乳酸菌などの不溶分は非常に細
かいため通常のろ紙ではろ過できず、すぐに目詰まりした。そこで、セライト(珪藻土)をろ過
助剤として用いた。ろ紙が平面でろ過するものであるのに対し、セライトは立体形状でろ過する
ものである。表面が目詰まりを起こした時には、その表面を少し削って新しいろ過面を出すこと
により、ろ過することができた。得られたろ液には、MRSブイヨンや原料のブドウ糖が残って
いるが、これは乳酸カルシウムを再結晶することで除くことができた。しかし、再結晶を一度行
うだけでは不純物を完全には除去することができず、このまま放置するとすぐカビが生えてしま
った。そこで、再結晶の操作を2~3回繰り返すことにより、純度の高い乳酸カルシウムを得る
ことができるようになった。
考察 この方法には次の通り、非常に大きな利点があることに気づいた。
①乳酸そのものは常温で「液体」であり、その状態では、発酵後の混合物からきれいに取り出す
ことは非常に難しい。しかし、今回の発酵ではpH調節剤として用いた炭酸カルシウムとの反応
により、乳酸を乳酸カルシウムとして「固体」で分離することができた。固体は再結晶で容易に
精製することができる。純粋な形で分離できたことは、後のステップの重合段階に非常に良い効
果をもたらしたと考えている。一般に重合反応では、わずかな不純物が重合を止めてしまい、高
分子量のプラスチックを作ることができない。この段階で乳酸塩をきれいな状態で単離できたこ
とが今回の実験の成功の大きな要因となった。
②発酵後の溶液や、一度再結晶した乳酸カルシウムは、2~3日放置するだけですぐにカビが生
えてしまうのに対し、乳酸発酵の途中では、そのようなカビの発生は全く見られなかった。これ
は、今回の条件では、乳酸と炭酸カルシウムの反応で二酸化炭素が発生し、酸素を含まない嫌気
性条件になったためであると考えられる。一般的に菌の培養では、雑菌の混入を防ぐため、全て
の溶液や器具類をオートクレーブで滅菌する必要があるが、今回の乳酸発酵では滅菌する必要が
なく、容易に発酵を進めることができた。
(2)身近なものを用いた乳酸発酵
これまで使っていたブドウ糖や炭酸カルシウムは試薬として購入したものである。それらの代
わりに、身近にある素材を活用できないかと考えてみた。ブドウ糖はデンプンを分解することで
作ることができる。また、炭酸カルシウムは貝殻を使うことを検討した。貝殻については、相馬
市大洲海岸でホッキ貝殻を採取した(図1)。新しいものは表皮などのタンパク質があるため、
なるべく古く白くなったものを用いた。これを金槌や乳鉢で細かく粉砕して使うことにした。貝
殻と試薬のブドウ糖とを使った乳酸発酵を行った結
果、上記の実験と同様に、乳酸カルシウムが得られ
た。
次に、ジャガイモからデンプンをとりだし、さら
にデンプンを分解してブドウ糖を作り、それを乳酸
発酵に用いることを検討した。
図1 ホッキの貝殻
- 41 -
実験 ジャガイモ935gをおろし金ですりつぶし、布巾でろ過した。ろ液の下に白色固体が沈
殿してきた。得られた固体を数回水で洗浄し、さらにろ過・乾燥させ、61.9gのデンプンを
得た。このうち10gをビーカーにとり、水を加えて全体を100mLとした。この混合物を撹
拌しながら加熱し、糊状のデンプン溶液を作った。これを40℃まで冷却し、αアミラーゼ(昭
和化学から購入)を0.15g添加し、撹拌した。粘性の高かったデンプン溶液はすぐに粘性の
低い溶液になった。38℃で2日間撹拌し、ブドウ糖を含む水溶液を作り、これを加熱しアミラ
ーゼを失活させ、さらにろ過した。この水溶液に、貝殻17g、MRSブイヨン2.5g、ヨー
グルト4.0gを入れ、1週間撹拌した。その結果、量は少ないものの、白色の固体が得られる
ことを確認することができた。
結果と考察 ジャガイモから得られたデンプンは加水分解によりブドウ糖に変換することができ
る。この分解にはアミラーゼを用いた。アミラーゼを加えると、ドロドロのデンプン溶液は数秒
で急激に粘性が低下した。2日間38℃で撹拌し、ブドウ糖を含むと思われる溶液を作った。次
の工程でアミラーゼが影響を及ぼす恐れもあったため、一度、溶液を高温にし、アミラーゼを失
活させた。得られたブドウ糖溶液を用いて、乳酸発酵を行った結果、市販のブドウ糖を用いた場
合と同様に、乳酸カルシウムの固体が析出を確認することができた。ただし、固体の析出量がそ
れほど多くなく、デンプンからのブドウ糖への変換があまりうまく起こっていない可能性もある。
そのため、他にブドウ糖が得られるようなものを用いて乳酸発酵を行うため、伊藤園の天然水
サイダーを使って乳酸発酵を行った。この清涼飲料は図2のように透明でかつ『ブドウ糖果糖液
糖』を多く含んでいるので煮詰めたものは乳酸発酵に適しているのではないか、またこの実験が
成功したら賞味期限切れになった清涼飲料のリサイクルが可能でごみの削減にも繋がるのではな
いかと考えた。
図2
実験 天然水サイダー500mLを煮詰めて100mLにした。このことによりブドウ糖の濃度
を上げ、炭酸を追い出すことができた。生成した糖液に炭酸カルシウム17g、MRSブイヨン
2.5g、ヨーグルト4.0gを加えて1週間乳酸発酵を行った。
結果と考察 1週間後に観察したが、乳酸カルシウムらしき白い固体は得られなかった。
これは、清涼飲料に含まれているブドウ糖が少ないので乳酸発酵が起こらなかったか、清涼飲
料には不純物が多く含まれ、うまく乳酸発酵が出来ないからであると考えた。
上記の実験から清涼飲料は不純物が多くブドウ糖の割合があまり多くないので乳酸発酵に向か
ないため、効率的にブドウ糖が得られ方法を今後検討していくつもりである。
(3)乳酸カルシウムからのポリ乳酸の合成
乳酸発酵により得られた乳酸カルシウムを乳酸に変換し、さらにポリ乳酸に変換することを検
討した。理論的には、乳酸カルシウムを強酸と反応させると乳酸を得ることができ、さらに乳酸
を加熱重合することによりポリ乳酸を合成することができる。この段階は簡単にできると安易に
考えていたが、予想以上に課題が多く困難を極めた。この段階は、不純物や副生成物の塩をいか
- 42 -
に除くかが大切なので、陽イオン交換樹脂を用いることにした。
陽イオン交換樹脂は硫酸と同等の強酸であり、陽イオンを水素イオンと
交換する機能を持っている。地元の相馬市にはイオン交換樹脂製造工場
があり、そこから、陽イオン交換樹脂(アンバーライト)をご提供いた
だいた。
実験 乳酸カルシウム11.4g(0.052mol)をイオン交換水38
0gに溶かした。ホース(長さ2.5m、直径1.5cm)に陽イオン
交換樹脂を1.8mほどの長さまで充填した。ホースを真っ直ぐにする
ために、机・スタンドを使用した。陽イオン交換樹脂の上部から乳酸カ
ルシウム水溶液をゆっくり流し入れた(図3)。ホース下から流出する
水溶液はpHが低く、乳酸が含まれていることが伺えた。流出水溶液の
pHが中性になるまで約2Lのイオン交換水を流し続けた。得られた水
溶液を蒸留して濃縮し、乳酸を無色の液体として5.0g(0.055
mol)得た。収率は53%で、この液体は200℃まで加熱しても炭化し
なかった。
陽イオン交換樹脂を用いることで、ようやく重合可能な乳酸を合成する
ことができたので、次にこれを用いての重合反応を検討した。
(4)乳酸からのポリ乳酸の合成
乳酸からポリ乳酸を合成するときの反応過程は次の通りである。
H2O
H2O
乳酸
HO
H
O
C
C
OH
ポリ
乳酸
H2O
HO
CH3
H
O
C
C
OH
HO
CH3
O
H
O
C
C
図3
O
CH3
O
C
C
OH
CH3
H
O
C
C
CH3
H
O
H
O
C
C
CH3
この反応は縮合重合反応であり、乳酸を200℃程度まで単純に加熱するだけで進行すること
が知られている(資料4)。そこで、同様な操作を行ってみたが、粘性の高い液体が得られるだ
けで、固体状のポリ乳酸を得ることはできなかった。そこで、ラクチドからポリ乳酸を合成する
ための重合触媒として知られている2-エチルヘキサン酸スズ(オクチル酸スズ)を添加して重
合反応を検討した(資料5)。しかし、これでもやはり粘性の高い液体状のものが得られるのみ
であった。粘性が高くなっていることは重合がある程度進行している証拠であり、さらに重合度
を上げることで固体状のプラスチックが得られると考えられた。そのためには発生する水を効果
的に除去することが必要であると考え、減圧下で重合することを検討した。
- 43 -
実験 50mLのサンプル瓶に(3)の実験で得られた乳酸5.0gを入れた。ここに2-エチ
ルヘキサン酸スズ(和光純薬から購入)をガラス棒の先端に少し付けて加え、軽く混ぜた。この
とき白色の固体の発生が見られた。この瓶をガスバーナーで加熱し、200℃で5分程度放置し
た。さらにガラス管をつけたシリコンゴムでこのサンプル瓶に蓋をし、ガラス管に水流アスピレ
ーターをつないだ。アスピレーターでサンプル管内を減圧にした状態で、さらに加熱を続けた。
加熱の間、乳酸は若干茶褐色に変化した。減圧加熱を5分間行った後、温度が下がるまで放置し
たところ、固体状のポリ乳酸が得られた(図4)。
図4
この実験により、乳酸をポリ乳酸にすることができた。得られたポリ乳酸は高温の柔らかい状態
で引くと糸状になり、高分子の性質である曳糸性を示すことも確認できた。
(5)合成したポリ乳酸の生分解性の確認
(4)で得られたポリ乳酸が自然環境下で実際に分解するかを確認することを検討した。
実験 (4)で得られたポリ乳酸をサンプル瓶に入れ、6月から9月の3ヶ月間サンプル瓶ごと
本校の裏庭に埋めて分解の様子を確認した(図5)。サンプル瓶ごと埋めたのは、観察・回収を
行い易くするためである。
図5
結果と考察 約1ヵ月後にはポリ乳酸と土が接している部分に白く変色したことが確認され、約
3ヵ月後にはポリ乳酸が分解され、サンプル瓶の内部には微量に水滴が確認された。この実験に
より私たちが合成したポリ乳酸は生分解性が確認された(図6)。
↑埋める前
↑約1ヵ月後
図6
- 44 -
↑約3ヵ月後
Ⅲ 本研究のまとめと今後の展望
身近な物質を使用して、生分解性プラスチックのひとつである「ポリ乳酸」を合成することを
目的として研究を行ってきたが、乳酸発酵、乳酸塩の精製、乳酸への変換方法、重合方法等につ
いて検討し、最終的に、以下の手順でポリ乳酸を合成することに成功した。
①ブドウ糖、炭酸カルシウム、ヨーグルトを培養液中で乳酸発酵させることにより、乳酸カルシ
ウムを大量に合成した。
②乳酸カルシウムは、ジャガイモ、貝殻、ヨーグルトといった身近な素材を原料として用いても
合成することができた。ジャガイモからデンプンを取り出し、さらに酵素を用いて加水分解しブ
ドウ糖水溶液を作成して用いた。
③乳酸カルシウムは固体で採取されるため、ろ過・再結晶の簡単な方法で分離精製した。
④乳酸カルシウム水溶液を、陽イオン交換樹脂を用いて乳酸に変換した。さらに乳酸を触媒の存
在下、減圧して重合させることによりポリ乳酸を合成した。
⑤合成したポリ乳酸は、自然環境下で生分解することが確認できた。
今後は、デンプンから効率的にブドウ糖を取り出し、生分解性プラスチックをより効率的に精
製できる方法を検討していきたいと考えている。また、フィルム状などの形に整形する方法も検
討していきたいと考えている。
Ⅳ 謝辞
本研究にあたり、ローム・アンド・ハース・ジャパン㈱相馬工場様より陽イオン交換樹脂「ア
ンバーライト」をご提供いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
V 参考資料
①初めて学ぶ人のための微生物実験マニュアル(安藤昭一著、技報堂出版、2003年)
②理研バイオリソースセンターのHP http://www.brc.riken.go.jp/inf/proj/
③乳酸発酵の新しい系譜(雪印乳業健康生活研究所編、中央法規出版、2004年)
④田中、村上、化学と教育、49巻、p510(2001年)
⑤天然素材プラスチック(高分子学会編、共立出版、2006年)
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平成 21 年度
課題研究集録
発行年月日
平成 22 年 3 月 28 日
発
福島県立相馬高等学校
行
者
〒976-0042
福島県相馬市中村字大手先57-1
TEL
0243-36―1331
FAX
0244-36-6149