GSICS 国際公務員プログラム GSICS 国際公務員プログラム インターンシップ実施記録① 実施機関:国連教育科学文化機関 2 月 15 日 【インターンシップ準備】 1. インターンシップ応募 1.1 応募動機 私が本インターンシップに応募した動機は、主に次の 3 つです。まず、国際機関で働くということ がどのようなものか体験したかったからです。私は以前から将来国連で働くことを目標にしていま した。しかし、先輩や先生方から話を聞いているだけでは何も始まらないと思い挑戦することにし ました。次に、将来の就職活動を見据えてのことです。CV に書くことができる実績を積むこと、 そして何より今まで GSICS で学んできたことを実際に使う経験を得ることができます。最後に、 UNESCO は最も興味があった国際機関であったからです。教育開発分野では有名な機関であり、な かでもバンコク事務所は知り合いがインターンを経験していたこともあって、彼らから話を聞いて いるうちに、いつか自分も行きたいと願っていました。 1.2 志望書類準備 私の場合、志望書類作成と採用までのプロセスはとても早かったと記憶しています。11 月中頃に指 導教官の小川啓一教授より、UNESCO バンコク事務所でのインターンについてお話をいただきまし た。小川教授が直前にバンコクでの国際会議に出席し、UNESCO バンコク事務所と学術協定を結ば れたこと恩恵を授かりました。書類一式を整えるなかで、最も大変だったのは、ビザの取得です。 12 月中旬出発で約 1 ヶ月にすべてを終えねばなりません。今回は 3 ヶ月以上の滞在でしたので、マ ルチプルビザの申請が必要でした。UNESCO より正式な受け入れ承諾書を待つと同時に、GSICS か ら発行してもらう渡航申請書を小川教授や GSICS のスタッフ・教授、皆さんのお力をお借りして迅 速に用意していただきました。 また、本国際公務員養成プログラムへの申請準備も重なり、渡航まで書類準備に慌しかったことを 覚えています。幸い、ビザも本プログラムへの申請も出発までに滞りなく終えることができました。 この場を借りて、前田先生および、私の出発に携わっていただいた皆様に御礼を申し上げたいと思 います。 1.3 採用決定から出発まで 先方より正式に受け入れ承諾を頂くとほぼ同時に、住まいや航空券の手配など準備を開始しました。 UNESCO バンコク事務所でのインターン経験者から、生活情報を聞き、現地のアパートにメールで コンタクトを取りました。航空券の手配等も小川教授に紹介して頂いた旅行代理店の方を通して、 迅速に確保することができました。幸い、バンコクは必要なものはほぼすべて現地で手に入る地域 でしたので、生活品の準備等は問題ありませんでした。 1 TOR を頂いたのが、出発の約 10 日前くらいだったと思います。急いで、インターネットサーチを 行い、可能な限りの準備をしました。また、私は博士後期課程の学生でもあるので、必要な論文や 参考書をできるだけ電子媒体のものを選びつつ、最低限の研究の準備もしていきました。 (オフィスと自分のデスク) 【インターン報告】 1. インターン先について UNESCO バンコク事務所のなかでも、私が所属したのは教育改革局(Education Policy and Reform Unit:以下 EPR)というところになります。アジア・オセアニア地域の教育省に対して、政策提言 や技術サポートを行っています。現在、特に力を入れているのが中等教育や技術教育体制の改善で す。EPR の教育スペシャリストは、担当の国やセクターごとに技術協力やアドバイスを行っていま す。 また、EPR では各セクターの教育問題について研究・調査を行っています。たとえば、「中等教育 の試験システムについて」というブックレットが最近出版されました。東アジアを中心に過熱する 受験競争について注意を喚起するためのものです。 2. インターン仕事内容 2.1 国際学力調査を用いたアカウンタビリティの研究・調査 EPR では、中等教育における試験制度・受験の状況について調査をしていましたが、初等教育にお ける国際・国内学力調査にも注目をしています。私は、PISA や TIMSS といった国際学力調査に参 2 加している国を対象にして、各国・地域がその結果をどのように活用し、教育政策に活かしている のかを探ることを目的として調査しています。それと同時に、アジア・オセアニア地域の学力調査 の種類・内容等を整理することも仕事のひとつです。オンラインで手に入る情報を中心に調べてい ます。 2.2 アジア、オセアニア地域における内部効率性の研究・調査 東南アジアを中心に初等教育・中等教育に関わらず留年や中退率の高い国・地域が存在します。自 動進級を採用している地域もあれば、そうでない地域もあり、多様な社会背景を持つアジア地域に おいていかにして教育成果が上がるようにアドバイスをしていくのか、ということが現在の EPR の 課題です。私は、特に教育に投資した資源とその効率性に注目し、自動進級制度や能力別学級と いった教育制度がどのようにして教育成果に結びつくのかを調査しています。 2.3 その他アシスタント業務 ディレクターが高等レベル会議などで発表する資料の作成補助、世界銀行と一緒に行っている教育 到達度設定調査の運営補助、およびグローバルモニタリングレポート 2011 の地域レポートの作成補 助等、プロジェクトの運営や教育スペシャリストのアシスタント業務も行っています。 (EPR で年明けのティーパーティー) 3 3. インターンからの学び インターン 2 か月を経て、主に 3 つのことを学んでいます。 3.1 仕事のスタイルの違い UNESCO の仕事のスタイルは、教育スペシャリストがいくつかのプロジェクトを抱え、そのプロ ジェクトの運営責任や権限は全て彼らにあるというものです。雇用タイプも 3 つしかなく、EPR に おいてはユニットのチーフと数名のプログラムスペシャリスト、プログラムアシスタント、そして 事務スタッフになります。個人への責任や権限の委譲がはっきりしていない日本の仕事スタイルと は違い、こうした環境で働くことは、ある種のカルチャーショックでした。 まず、直属の上司との関係の近さです。まるで、大学院での教授と学生の関係のように緊密で、仕 事も各スペシャリストを中心にまわっていきます。次に、各プロジェクトは各々が進めているので、 ミーティングの数が非常に少なく、個人で仕事をする時間が圧倒的に長いということです。 この違いを実感できたことはとても良かったと思っています。GSICS で小川教授のもとでリサーチ アシスタント等の仕事をさせていただいた経験が直接活かすことができています。職場の仲間やス ペシャリストの方々と話すなかで、一つ一つの仕事の実績が、人づてに伝わり、かつてのインター ンが他の部署でプログラムアシスタントとして採用されたというケースもよく聞きます。スペシャ リストが人事にも強い権限を持つことを知り、改めてネットワーキングをすることが重要であるこ とを実感しました。 3.2 作業の効率化 UNESCO は様々なパートナーと仕事をしています。突然、急ぎの仕事が舞い込むことも多々ありま す。私は、大学院で研究活動をするなかで、知らず知らずのうちに一つのことにじっくり時間をか けるようになっていました。UNESCO で働くことは素早く確実にアウトプットする習慣をつけるの にとても役立っています。仕事の優先順位をつけ、その日にやるべきことを時間と相談しながら、 割り振り、集中して確実に成果を出していく。最初の 2 週間程度は、とまどいましたが、少しずつ 慣れてきました。また、分担作業の際には早く自分の分担を終えてしまえば、他の人がよりその仕 事に対して時間をかけることができます。計画性、判断力といった効率的な仕事に必要な力を日々 養えていると実感しています。 4 (パタヤで EPR メンバーと共に一泊二日の集中研修) 3.3 コミュニケーション、チームワーク 仕事上での英語の使用は思ったほど困りませんでした。これも小川教授のもと GSICS で日々培った ことの賜物であります。しかし、上司の求めている水準や、EPR や UNESCO の国際社会やこの業界 での位置づけについては、理解するのに時間がかかります。言語上ではなく、そういった慣習のよ うなレベルにおいて、ミスコミュニケーションをすることが多々ありました。「何を求められてい るのか」を素早く察知していく力はこれからももっと磨いていくべきだと思っています。 また、チームワークを円滑に進めていく「調整力」がものすごい大切なことだと実感しています。 UNESCO は、個人単位で仕事が進んでいくので、各スペシャリストは自分の携わっているプロジェ クトしか把握しておらず、あるプロジェクトが遅延していても気軽にヘルプという訳にはいきませ ん。ユニット内や事務所内での協力体制が課題であり、この問題については継続的に改善のための 全体ミーティングを持つようにしています。 「調整力」といっても、構成員の一人として自分の役割を察知するだけでなく、自らがチームを牽 引しているリーダシップも必要です。このような力は日本人にとって長所といえる点であり、今後 国際機関で多いに必要とされるものだと実感しています。 最後になりますが、UNESCO バンコク事務所での毎日は、すべて貴重な経験です。ここに来て本当 によかったと実感しています。自分の新たな課題を見つけることができ、その克服に向けて日々前 進することができていると思います。本インターンシップを実現させてくれた、小川先生、「国際 公務員養成プログラム」関係者をはじめ、多くの皆様に心より感謝しております。 文責 島田健太郎(GSICS 博士後期課程) 2011 年 2 月 15 日 5
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