卒業生の声はこちらから

季村奈緒子(Naoko Kimura)
Relationship Manager, United Nations Global Compact
2001~2005 年 筑波大学第二学群生物学類 学士(生物科学)
2003~2004 年 マンチェスター大学 交換留学
2005~2007 年 ユネスコ・バンコク 科学および教育セクターでプログラム・アシスタント
2007~2008 年 コロンビア大学ティーチャーズカレッジ 修士(Economics and Education)
2009~2012 年 モルガン・スタンレー 資産運用会社および持ち株会社でアソシエイト
2013 年より現職
自分らしく生きる
2016 年 6 月現在、ニューヨークから振り返る筑波生活は大変懐かしいものであり、学部を卒業
してから 10 年経ってアメリカ東海岸で国際開発に関わる仕事をしているとは当時想像もつきま
せんでした。とは言え、幼少期を米国で過ごしたことから、日本にいる間は常に海外に目が向
いていました。高校時代、大学を選ぶ際にかなり要因として考慮したのが大学の学風と国際性
でした。私も、国際総合学類を卒業した双子の姉も、筑波大学の開かれた校風と国際性に惹か
れ、受験することにしました。入学する前からマンチェスター大学との交換留学制度があるこ
とを知っており、必ず留学したいと心に決めていました。マンチェスター大学では本格的な実
験に携わることができ、自己発見にも繋がりました。ひとつ大きかったのが、それまで漠然と
研究者の道を進むだろうと考えていたことに変化があったことです。動物実験、そして研究室
で送る生活に自分が不向きなのではと疑いを持ったのがきっかけでした。
学部卒業と同時に、進学しようと考えていたところ、たまたまタイのユネスコ・バンコク事務
所で働く機会をもらいました。訪れたことのない国にいきなりスーツケース 1 つ抱えて飛び込
んでいきました。小さい頃から父親の仕事の関係でそれなりに海外を旅していたつもりでいた
が、初めての発展途上国での暮らしはそれまでしてこなかった勉強をさせてくれました。世界
各国から来ていた同僚のお陰で自分の世界観が広がり、また、帰国子女として 2 つの国、文化、
言葉の狭間に立ってしばらく自分探しで煩悶していたのが、バンコクで自分と似た境遇の人た
ちと出会うことで、「自分らしさ」とは何なのかがより明確になった時期でもありました。そ
の後、日本で数か月間の滞在を経て大学院進学のため、ニューヨークに旅立っていきました。
大学院で「経済と教育」を専攻しようと思ったきっかけになったのが、タイで暮らして目の当
たりにした貧富の差でした。マルクス主義思想が流行していた頃に学生時代を過ごした父親の
影響を私も少なからず受けていたこともあり、平等や社会のあり方について考えることがバン
コクで増えました。ユネスコで教育セクターの仕事をさせてもらえたことも大きく影響し、教
育を通じて社会を変えていく方法を学ぼうと思ったのです。当然その答えは得られなかったが、
後に様々な形で役に立つスキルや思想を得たことは確かです。
大学院を卒用して、今度は東京で外資系金融会社に就職しました。金融業界で働きたいと強く
望んでいた訳ではないが、日本で仕事をするにあたって国際的で日常的に英語が使える職場を
求めていたら、自然と金融業界にたどり着いたのです。優秀な人材に囲まれて仕事をすること
ができ、多くの刺激をもらいました。良き上司にも恵まれ、育成してもらえたことに感謝する
反面、利益追求が主たるドライバーである企業・業界でずっと仕事をしていくことに疑問を感
じ始め、少しずつ心と会話をしながら他の選択肢を模索し始めたのです。
退職して次の一歩を考え出したのがちょうど 30 歳の節目を迎えた
2012 年の半ばでした。それまで紆余曲折しながら辿ってきた学歴と
職歴を生かして何ができるのか、そして何がしたいのか。レールの
敷かれた人生から完全に脱線していた自分は、その後の生き方につ
いて真剣に考えざるを得なかったのです。それまで 30 年間生きて
きて分かったことが、自分が幸せに仕事をするには、社会への貢献
(インパクト)が必要であるということでした。そしてグローバル
な課題に取り組みたいという願望もありました。いくつかのポジシ
ョンに応募した結果、最終的に決まったのが国連グローバル・コン
パクト(UNGC)でした。就職してから思うことは、自分が UNGC で
のポジションを強く望んでいたとしても、この種の仕事のために備
えることはできなかったということです。UNGC で扱っているコーポ
レート・サステナビリティの概念はまだ新しく、最近やっと有名大
学でサステナビリティのプログラムが立ち上がっているものの、私
が学生だった頃にはなかった分野で、サステナビリティなどを専攻
することは不可能でした。
そこで思い出されるのがスティーブ・ジョブズが 2005 年にスタンフォード大学の卒業式で届け
たスピーチの一部です。「未来に先回りして点と点を繋げて見ることはできない、君たちにで
きるのは過去を振り返って繋げることだけなんだ。だからこそバラバラの点であっても将来そ
れが何らかのかたちで必ず繋がっていくと信じなくてはならない。自分の根性、運命、人生、
カルマ…何でもいい、とにかく信じること。点と点が自分の歩んでいく道の途上のどこかで必
ずひとつに繋がっていく、そう信じることで君たちは確信を持って己の心の赴くまま生きてい
くことができる。」
今まで歩んできた道はもちろん山あり谷ありで、不安に感じるターニング・ポイントも当然あ
りました。但し、貫き通してきたのは自分の価値観に忠実な生き方であり、学生の皆さんには
何事も失敗を恐れずにチャレンジする精神を常に抱くように言い残したいと思います。自分自
身「calculated risks」を取るようにしていますが、他と違うことを考えたりやってみること
で自分の人生、また、世の中の大きなシフトに繋がっていくと信じています。自分らしさを見
出し、自分らしい生き方を是非歩んで欲しいと思います。