留学生レポート

留学生レポート
イタリア/ボッコーニ大学
山木 華(経済学部 3 年)
イタリアのボッコーニ大学に留学していた経済学部4年の山木華です。昨年1月にミラ
ノに到着し、年末に帰国しました。イタリアというと、ファッションや観光、芸術といっ
たイメージの強い国ですが、ボッコーニ大学はビジネス、ファイナンス、経済学が優れて
いることで有名で、イタリアで最も知名度の高い大学です。多くの優秀な経済学者、ビジ
ネス界で活躍する著名人を輩出しています。ボッコーニ大学のビジネススクールはウォー
ルストリートジャーナル誌が選出する世界のビジネススクールトップ 20 に入っています。
一橋大学とボッコーニ大学間の学部交換留学は本年度よりはじまりました。ボッコーニ
大学は多くの留学生を受け入れていますが、日本人は少なく、秋学期は学部で日本人 1 人
でした。授業が英語とイタリア語から選択することが可能ですが、私は金融工学とマクロ
経済を中心に英語の授業を履修しました。2 学期目にはイタリア語の授業も履修しました。
履修した科目のなかでは European Economic Policy という授業が印象に残っています。
EU の農業政策の変遷や加盟国拡大のプロセスを通じ、政治の影響をうけながらも経済調査
と研究が政策に生かされていることを実感しました。一方で、金融政策は中央銀行が行い、
財政政策が各国にまかされていることによる歪みや、加盟国政府の政治的な思惑がEUの
弊害になっていることも事実です。金融の授業では、EUの銀行がどのように金融危機の
被害をうけたか、アメリカの金融市場に関わっているか、EUとアメリカの金融規制に関
する姿勢の違い、など時事問題も絡んで非常に興味深かったです。金融規制については、
格付け機関を取り締まることによって自由競争が阻害される可能性もあります。また金融
機関に対する金融規制は流動性を悪化させることも考えられ、非常に難しい問題です。日
本もバブル崩壊については言及されることがあるものの、アジアでは中国への関心が高く、
日本の存在感の低下を感じました。
ボッコーニ大学の学生は、おしゃれで派手な一面ももちつつ、常に勉強している印象を
受けました。学生のほとんどは英語を話しますが、仲良くなるためにはイタリア語が必須
です。海外での留学や大学院を志望している学生も多いですが、日常生活では日本人が日
本語を話すようにイタリア人はイタリア語を話します。イタリア語を学ぶことによってル
ームメイトのイタリア人やボッコーニ大学のイタリア人との距離が縮まりました。イタリ
ア語は非論理的な言語といわれますが、音が美しく、歌のような言語です。方言も多く、
イタリア各地の友人の家を訪ねるたびに新たな発見がありました。イタリア以外ではポル
トガルやスペインでもイタリア語が通じました。今後もイタリア語の勉強を続けていきた
いです。
学外ではボッコーニ大学の教授から依頼されたファッション関係のインターンを半年間
経験しました。英語とイタリア語が飛び交うなかで仕事をすることは容易ではありません
でした。しかし目標を達成したときや自分の提案が反映されるときにはやりがいを感じ、
またインターンを通じて学生以外の人とも出会うことができ、貴重な体験ができました。
長期の夏休みにはイタリア各地を旅行する機会に恵まれました。各都市が異なった外観、
雰囲気、文化を残しています。イタリアは交通機関も公共サービスも非常に悪く、構造的
な問題を数多く抱えていますが、イタリア各地の美しさから経済とは別のイタリアの豊か
さを感じました。
特にトスカーナ地方のブドウ畑にある友達の別荘に一週間滞在した経験は忘れがたいも
のです。ブドウ、オリーブ畑のなかに別荘があり、世の中にこれほど美しいところがある
のか、と感動しました。財政赤字、南北格差などイタリア国内での問題は多くあるものの、
古い街並みを残し、食生活も豊かなイタリアは他の国とは違う良さをもっています。観光
業やファッションデザインはもちろんですが、イタリア人一人ひとりの生活の豊かさが羨
ましく映りました。
11 か月に及ぶミラノでの生活を振り返ってみると、ミラノの濃い霧の中で夢をみていた
気がします。日本、アメリカとも大きく異なる成熟したイタリア社会を学生時代のうちに
体験できたことは非常に幸運でした。
留学を支えてくださった社団法人如水会、明治産業株式会社、明産株式会社様に心より
御礼申し上げます。一橋大学国際課、斎藤誠教授、高岡浩一郎准教授には留学前後を含め、
大変お世話になり、どうもありがとうございました。
平成 24 年度以降、ボッコーニ大学との交換留学は実施されないようですが、近い将来再
開されることを願っております。
(2011/1/12)