資料 - 日本経済研究センター

(経済百葉箱番外編)
クラウドファンディングを
起業への架け橋に!
~ワンコインから始まる経済活性化~
公益社団法人 日本経済研究センター
2013年度研究生
西村
敏 (日本政策金融公庫国民生活事業本部)
北松 円香(日本経済新聞社)
登地 孝行(三井住友信託銀行)
1.日本経済の低迷
~事業家への資金供給不足が一因~
(1)
1-1.起業活動率の低迷が経済成長を妨げている
【「起業活動率と1人当たりGDPの関係」割合】
(起業活動率※)
日本はボトム

発展途上国では、起業活動が活
発であり、経済が発展するにつ
れて起業活動が低下する傾向が
ある。

一方、先進国では、起業活動が
活発な国ほど一人当たりGDPの
水準が高いという関係がある。
アメリカ
(国民一人当たりGDP(米ドル))
(資料) GEM, Global Entrepreneurship Monitor 2010 Global Report,2011
※起業活動率は18歳から64歳までの人口100人当たりに占める、
起業活動を行っている者(起業準備中および起業後3年半以内
の企業を経営している 経営者)の割合
(2)
1-2.起業が増えれば雇用とイノベーションが生まれる
雇用創出効果
【開業・廃業と雇用変動状況(10年間)】
(注)1.1994年と2004年の調査で接続可能な事業所を存続事業所とする。
2.1994年調査に存在せず、2004年調査時点に存在した事業所を開業
事業所 とし、1994年調査に存在し、2004年調査時点に存在しなかっ
た事業所を廃業事業所とする。
(資料)中小企業庁「2007年版中小企業白書」より作成
イノベーション効果
【起業に際しての経営上の工夫】
COSMOS2企業概要ファイルより2001年から2010年までに起業した
10,000社を抽出し調査対象とした「起業に関する実態調査」
(上記項目への回答数2280)
(資料)中小企業庁「2011年版中小企業白書」より作成
(3)
1-3.資金調達が大きな障壁
【萌芽期における起業・事業運営上の課題】
資金調達
(資料)中小企業白書2013より作成
(4)
1-4.事業開始直後の支援が重要
クラウド
ファンディング
ベンチャー
キャピタル
自己資金
株式市場、社債市場
事業開始
金融機関からの融資
エンジェル
(資料)2013年3月15日 第4回産業競争力会議 資料5
「新規・成長企業へのリスクマネーの供給について」
を基に作成
資金不足!
(5)
2.クラウドファンディング
~事業家と潜在資金を結ぶ新手法~
(6)
2-1.北米、欧州でクラウドファンディングが拡大
Crowd (幅広い人々による)
Funding (資金提供)
個人や企業、非営利団体などが、
インターネットで幅広い人々に小口
の資金提供を呼びかける調達方法


インターネット経由の資金決済
など技術進歩(*)
魅力的なプロジェクトを応援した
い個人が反応
ここ数年、急速に市場が拡大
百万ドル
【クラウドファンディングによる調達額】
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
2009
2010
2011
2012
(資料) Massolution, Crowdfunding Industry Report (May 2012),
2013CF The Crowdfunding Industry Report
(*)Amazon Payments, PayPal などの電子決済サービス
が使われる
(7)
2-2.既存の資金調達手段を補完する存在に

米ベンチャーPebble Technologyはベンチャ
ーキャピタル(VC)からの資金調達に失敗後、
クラウドファンディングで1,026万ドルを集める
→その後VCからも調達成功
Pebble社は調達資金でスマート
フォンに接続できる時計を開発
(同社提供のプレス向け写真)

制作費の一部を調達した米映画「Inocente」はアカデミー賞で短編ドキュ
メンタリー賞を受賞
その他の主な用途 ‐途上国援助や地域振興
‐ゲーム、音楽などの制作費
‐店舗の開設費
‐製品・商品開発費
(8)
2-3.「共感」と「直接支援」がキーワード



拠出の形態は寄付、商品・製品の購入、融資、出資などさまざま
資金の受け手は「プラットフォーム」と呼ぶウェブサイトで調達目的を説明。
資金の出し手は共感するプロジェクトを指定して資金を提供
プラットフォームはベンチャー企業による運営が一般的。調達資金の一部
を手数料として徴収
資金の出し手(主に個人)
ウェブサイト(プラットフォーム)
資金が必要な個人や企業、
ボランティア団体など
応援したい!
こんなプロジェクトやります!
(9)
2-4.従来の資金調達と比べた特徴とメリット、デメリット

収益性だけでなく、共感できるかを基準に個人が直接資金を提供
金融機関やプロの投資家から調達できなかったプロジェクトにもチャンス

非常に小額から資金提供可能
資金の出し手はリスク許容度に応じて「ちょっとだけ」支援、投資ができる
目標額まで積み上げるには、支援呼びかけなど労力がかかる

インターネットで幅広い人々に資金提供を呼びかける
需要調査や顧客獲得にも有効。支援者=優良顧客
ウェブで起業のアイディアなどの情報を公開しなければならない
(10)
2-5.ウェブで魅力が伝わる小規模プロジェクト向き
資金拠出の形態
特徴
親和性の高い調達目的
寄付型・物品購入型
融資型・エクイティ型
非営利や消費者向けなど、ウェブサイト上の説明で
意義や魅力が伝わりやすいもの
共感する事業を応援する充実感
資金提供への対価
感謝や物品、サービス
金利、配当
調達額
全体の35%が2500ドル以 全体の26%が5万0001ド
(1プロジェクトあたり)* 下
ル~10万ドル
金融規制の対象
ならない
なりうる
*(資料) Massolution, Crowdfunding Industry Report (May 2012)
(11)
2-6.プロジェクト選別の仕組みが埋め込まれている
資金提供の
流れ
①プラットフォームの
サイトを閲覧
②気になるプロジェク
トへの資金提供を検
討。疑問点を質問
③クレジットカードな
どで支払い
“All or Nothing”による選別:期
限日までに目標金額が集まらな
いと、資金がもらえない
調達成功!
③支援呼びかけなど、
支持を集める努力
②わかりやすい説明
文など透明性の工夫
①プラットフォームに
掲載を依頼
資金調達の
流れ
プラットフォーム運
営者による審査
ウェブで多くの人の目に
触れることによる選別
評判に基づく選別:プロジェクト成功への
努力や進捗報告を怠ると、次回の資金
調達が難しくなる
(12)
3.米国・英国の利用状況と普及の要因
(参考)2012年4月プラットフォーム数
米国191 英国44 日本3
(資料) Massolution, Crowdfunding Industry Report (May 2012)
(13)
3-1.米国
行政による資金調達や利用支援で認知度が向上


ボストン、タンパ、フィラデルフィア、ユージーンが資金調達に利用し、
市民の認知度を高めた
(The Economist等のメディアに取上げられた)
ボストン
目が不自由な子供に対するiPadを使った教育支援
6,480ドル
タンパ
ハッカソン(ソフトウェア開発イベント)の開催
2,700ドル
フィラデルフィア
市民農園の運営
2,163ドル
ユージーン
自転車置場の設置
1,080ドル
ニューヨーク市議会はプラットフォームのKickstarterの中でニューヨーク
市内の低所得地域を対象とする紹介ページを特設し資金調達を支援
(14)
3-2.英国
金融機関としての認定により利用が加速
■
■
2013年2月、金融サービス機構がエクイティ型クラウドファンディング
プラットフォームを金融機関(Financial Service Firm)として認定
倒産した場合は1人につき5万ポンドまでの補償が受けられる
(万ポンド)
金融サービス
機構の認定で
利用が加速
(資料)トムソン・ロイター、エクイティ型クラウドファンディング運営各社
ウェブサイト、英国ベンチャーキャピタル協会より大和総研作成
(資料)Crowdcubeウェブサイトより作成
→エクイティ型クラウドファンディングがベンチャーキャピタルに引けを取らない
規模で活用されている!
(15)
4.米・英における普及要因の日本への応用
(16)
4-1.普及への課題は認知度と法整備
■
日本の主要プラットフォームの資金調達合計額は年間3億円程度であり、
世界全体の0.1%に満たない
課題
①インターネットを前提とした新しい資金調達の方法であるため、
事業家・投資家の認知度が低い
(利用開始時期:米国2000年、英国2001年、日本2009年頃)
②第一種金融取扱業者でなければ株式を取扱うことができないため、
エクイティ型での資金調達は困難。投資家保護の仕組みも未整備
(17)
(図表18)
4-2.提言① 行政の利用により認知度向上を!
■
米国では地方公共団体が公共プロジェクトの財源確保に利用したことで、
資金調達手段としての認知度が向上
夕張市は、市民の地域活性化プロジェクトをホームページや公式ツイッタ
ーで紹介
→114人から1,489,000円を集めてプロジェクトが成立
■
行政による資金調達だけでなく、市民プロジェクト
の支援によっても認知度の向上に繋がる!
4-3.提言② 法整備により利便性・安全性の改善を!
■
欧米では法整備後に利用が拡大
(参考)米国では2012年4月にリスクマネー供給策としてJOBS法が制定
クラウドファンディング関連部分は未施行であるが世間の注目が集まった
(百万ドル)
【クラウドファンディングによる調達額】
英国 エクイティ型クラウド
ファンディングを認定
6000
5000
米国 JOBS
法成立
4000
3000
2000
1000
0
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年(予測)
(資料) Massolution, Crowdfunding Industry Report (May 2012), 2013CF The Crowdfunding Industry Report
日本でもクラウドファンディングの市場育成に向けた
規制緩和や税制改正、投資家保護の仕組みが必要!
(19)
5.まとめ
Ⅰ起業時の資金不足
→クラウドファンディングで個人が資金を直接供給
Ⅱクラウドファンディング普及に向けた行政への提案
→①認知度向上を後押し
②利便性・安全性の改善に向けた仕組みづくり
(20)
参考
(21)
米国の現行制度
クラウドファンディング除外規定(JOBS法第3編)
‐資金調達の仲介業者として、米証券取引委員会(SEC)と自主規制機関
に登録された証券会社に加え、投資を募集するプラットフォームも新たに
付け加えられた
‐プラットフォームは、SECおよび自主規制機関に登録し、SECの定める
規制に服さなければならず、投資に伴うリスクその他投資の理解のため
に必要となる情報開示を行わなければならない

‐1社当たりの投資上限額
①年収または純資産額が10万ドル未満の投資家
2000ドル、または純資産あるいは年収の5%の大きい金額
②年収または純資産額が10万ドル以上の投資家
純資産あるいは年収の10%、かつ10万ドル以下
(22)
英国の現行制度
金融サービス機構がエクイティ型クラウドファンディングのプラットフォー
ムを金融機関として認定、登録
‐ 認定を受けると、金融サービス補償制度の対象になり、プラットフォーム
が倒産した際に、投資家1人につき5万ポンドまでが補償される。また金
融被害等が発生した場合に裁判外の方法により解決を図ることができる

プラットフォーム12社は自主規制機関としてクラウドファンディング協会を
設立
‐ 所属会員の行動規範を定め、投資家保護を図っている

(23)
日本の現行制度と改革案
現行制度



クラウドファンディングを直接規定する法律はない
第一種金融商品取引業者でなければ未公開株式を取扱うことができない
寄付型による調達資金が贈与税等の課税対象になる
改革案



参入事業者の条件緩和
事業者に対する情報開示ルールの制定
寄付型による調達資金の非課税化
(24)
日本における小口投資の先行例


ミュージックセキュリティーズは、ウェ
ブサイトを通じ個人投資家の小口投
資を支援。2000年創業。累計で192
本のファンド組成・運用を支援(総募
集額34億円)。
手数料
プラットフォームの
情報提供
事業紹介
プラット
フォーム
事業家
銀行融資との住み分けは可能
リターン
同社は14の地域金融機関と業務提
携。資金調達ニーズがあり、個人投
資家の投資対象となりうる企業の紹
介を受けている。
金融機関
VC/BA
融資型・株式投資型
クラウドファンディング
銀行融資
リスク
(25)