近郊都市紹介~浙江省 義鳥市(上海)~

「安かろう、悪かろう」といわれてきた中国
製品ですが、最近は随分と認知されてきたの
ではないでしょうか。100円ショップなどの
店頭で多くのメイド・イン・チャイナ商品が
陳列されている光景は、日本でもごく当たり
前となりました。これらの商品はいったい中
国のどこからやって来るのでしょうか?
今回は、中国卸売市場の売上高ランキング
において1991年から14年間全国第1位を続
け、
“中国最大の日用品雑貨卸売市場のある街”
として知られる浙江省義烏
(ギウ)
市を紹介いたします。ここ数年、日本からの買い付
けも多くなっていますが、まだまだ穴場的な存在です。連日、世界中のバイヤーが訪
れるこの義烏市の卸売市場としての魅力について、紹介したいと思います。
上海近郊都市紹介
1.義烏市の概要
義烏市は、浙江省金華市の管轄下にある県
(市の下部行政単位)
レベルの市
(県級市)
です。浙江省の省都・杭州市から南へ約120kmに位置し、総面積1,105km2、総人
口160万人
(うち戸籍をもつ人口は68万人)
です。上海市の南西約300km、車で約4
時間の距離にあります。伝統的な農業を営んでいた小さな県が、行政主導でいまや中
国一、いえ世界一の巨大マーケッ
トを持つ経済都市へと変貌してい
きました。
改革解放後、軽工業品を中心と
した卸売産業の発展により1988
年には県から市へ昇格し、2004
年の1人あたりGDPは4万元
(約52万円)を超え、杭州市を抜
き浙江省で第1位となりました
(右図参照)
。
上海近郊都市紹介
2.中国小商品城の発展
義烏市の経済成長を牽引してきたのは、小商品城
(雑貨ビル)
の存在です。乾隆年間
(1735−1798年)、もともと砂糖の産地であった義烏の農民たちは鶏の羽と砂糖を
交換し、それを使って“はたき”を作り各地を回って商売し始めました。その後も日
用雑貨と物々交換しては故郷で販売するようになり、これが義烏の雑貨経営の原型で
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あるといわれています。1980年代に入
り、地域産業発展のため「興商建市(商
業により市を作る)」
のスローガンの下、
近隣の国有企業の売れ残り在庫を集め、
卸売市場(小商品城)
で売り出しました。
改革開放後の物資不足が深刻な時期で
もあり、爆発的に売れることとなりま
した。その後も取扱商品を増やすとと
もに市場の整備を進めた結果、今では
義烏市全体の売り場面積は260万m 2 、
経営店舗(ブース)は5万軒にまで増加
しました。また、これらの市場に従事
する人口は20万人に上り、義烏市の一
大産業にまで成長しています。
義烏市の公表資料によりますと、義
義烏市内の市場分布図
烏市に集積する商品群は34業種、
1,502分野に大別され、取扱商品の種類は32万種類にも及びます。国連が公表して
いる全世界の商品が50万種類といいますから、その取扱商品の豊富さが伺えます。
義烏市が「小商品海洋、購物者天堂(雑貨品の数は海のように際限なく、買い物客に
とっては天国である)
」といわれる所以です。
3.何でも揃う義烏の
「中国小商品城」
と
「専門問屋街」
1993年、市政府が中心となって市場ビルの建築と管理を行なう浙江中国小商品城
集団股 有限公司を設立しました。同社の管理下には
「中国義烏国際商貿城」
「
、篁園市
場」
「
、賓王市場」の3大市場があり、義烏市の卸売市場の中心的存在となっています。
それでは、中国最大規模を誇る「中国義烏国際商貿城
(以下、国際商貿城)」
につい
て少し触れてみましょう。今年1∼6月の取引額は前年同期比15.5%増の114億元
(約1,482億円)と初めて100億元を突破しました。
国際商貿城
(第1期)
は、近代的
な巨大総合市場として2002年10
月に開業しました。建築面積は
34万m 2、地下1階地上4階の商
業ブースは9,000軒余りで、主な
取扱商品は花類、玩具、宝飾・装
飾品および工芸品の4分野です。
第1期だけでもじっくり見て回る
のに丸1日かかる規模ですが、道
路を挟んだところに更に大規模な
第2期部分が2005年10月までに
中国最大規模を誇る中国義烏国際商貿城
完成予定です(2004年10月に部
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分開業済み)。第2期全体の建築面積は100万m2、商業ブースは13,000軒が入居可
能です。第2期部分はホテルやオフィス棟を含み地下1階、地上16階建てとなる予
定です。完成すれば、まさしく世界一の巨大マーケットが誕生することになります。
3m×3mほどの商業ブースには整然と商品が陳列されており、日本の100円ショッ
プやディスカウントショップの商品と同じようなものが数多くあるのを見て、圧倒さ
れてしまいます。「篁園市場」、「賓王市場」
など従来からある卸売ビルとは異なり全館
空調を完備し、各ブースにはインターネット回線が準備されるなど、環境は飛躍的
に整備されています。
義烏の街は商品分野ごとに特徴を持つ
巨大な卸売ビルが点在し、数百メートル
間隔で離れた巨大な卸売ビルの間にさら
に多くの小規模な卸売店が集中してお
り、街全体があらゆる商品で埋め尽くさ
れています。義烏市内中心部には近代的
な大型の卸売ビル
(小商品城)
以外に、衣
類、工芸品、メガネ、化粧品、家具などの専門問屋街が点在しています。また、義烏
市は中国の靴下生産の6分の1を占める一大産地としても有名であり、市内の卸売市
場とその近郊に各種メーカーが集積する、非常に魅力ある街を形成しています。義烏
市ではカートン単位の小ロットで契約できるのが特徴で、店舗や商品によっては1、
2個でも小売りしてくれます。単品ですとやや高めの価格となりますが、それでも上
海や日本の小売店で購入するよりは安いものが多いようです。商品価格は数円から数
十円のものが大半を占めます。
4.1日の訪問客は20万人…ビジネスは慎重に!
ここ義烏市を訪れるバイヤーは1日延べ20万人といわれています。主な輸出先は
香港、韓国、パキスタン、アメリカ、ナイジェリア、南アフリカ、中東、ロシアなど
世界206ヵ国に及びます。ここ数年、日本からのバイヤーも増加していますが、品質
や納期に関して非常に厳しい日本人の
場合、商談がスムーズにいかずトラブ
ルになるケースも多いようです。
取引としては、直接取引
(現地での直
接仕入れ、日本からの注文)
と仲介業者
の利用などが考えられます。直接取引
の場合、言葉の問題はありますが現地
の商業ブースや卸売店を見て回り、気
に入った商品があればその場で商談を
行います。また、卸売店からの紹介を
通じて生産工場での直接買い付けがで
きれば、商品の細部変更の注文などが
国際商貿城内の玩具(ぬいぐるみ)販売ブース
しやすいため他社とは違うオリジナル
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商品の開発が可能となります。現
地業者と直接取引する場合は、日
本人と見て価格を吊り上げたり、
粗悪品を掴まされたりするケース
も多いので十分注意が必要です。
最近では日本語対応可能な仲介業
者や、日本人経営の仲介業者も増
えており、日本からの買い付けツ
アーを企画し、現地での通訳や商
談に同行してくれるところもあり
ます。仲介業者を利用する場合も、
直接仕入れの場合と同様、必ずし
も品質保証されるわけではありま
せんし、また仲介手数料がかかる
ため仕入れコストは高くなります。
日系企業向けに商談・貿易の仲
介を行う現地の業者にヒアリング
義烏市地図
1 商談の際のサンプ
したところ、○
2 品質にバラつき
ル(店頭商品)と実際に送付されてきた商品が異なる、○
(不良品)
が
3 納期が守られない、などのトラブル事例が多いとのことでした。また、輸送
ある、○
に使うダンボールが薄いため、日本に到着するまでに商品が毀損することもあるため、
ダンボールの仕様まで指定するなど細部にまで神経を使う必要があるそうです。
仕入れを行う企業が逐次、現地で検品や輸送手続きができる体制を備えていれば一
番良いのですが、そうでない場合は商談仲介、品質管理・工場指導、貿易手配など一
連の手続きを代行してくれる信頼のおける業者を見つけるのが良いかもしれません。
最近の傾向として、中国内外の大手企業が義烏市内に販売代理店や現地法人を設立し
たり、インターネットショッピング業者が進出し始めています。
5.終わりに
義烏市は多種多様な商品が集積し、世界でも類を見ない卸売市場として成熟を続け
ています。日本に出回っている日用雑貨類の多くも、ここ義烏市から運ばれてきたこ
とが現地を見て一目瞭然です。
しかしながら、「安い、品質はまずまず」だけでは日本の消費者にもやや飽きられ
てきています。既存の商品をそのまま買い付けるのではなく、自分で良い工場や仲介
業者を探し出し、日本の消費者ニーズに合った独自商品を作っていくことが必要にな
ってきているのではないでしょうか。上海を訪れる日本人は多いですが、足を延ばし
てぜひ義烏市を訪れてみてはいかがでしょうか。ビジネスのヒントを見つけることが
できるかもしれません。
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