海岸の生態系保全

藻場とは
海藻の生い茂った場所。多くの海の
生物に酸素を供給し、海の栄養分を
吸収して水をきれいにしたり、根が
農学部 海洋生物環境学科
海底を安定させる機能もあります。
また、藻場は魚、ウミガメ、ジュゴ
みうら
ンなどの餌になり、魚・エビ・カニ
ともゆき
三浦 知之 教授
などの産卵・生育場所、隠れ場にも
なるなど、沿岸域の多様な生物に生
息の場を提供しています。
干潟の生きもの図鑑
三浦先生が、宮崎の干潟を調査し始
めて 8 年目に、これまでの研究成果
をもとに、南九州の干潟に出現する
生物をとりまとめた図鑑です。
一ツ葉入り江
宮崎港の北に位置する阿波岐原公
園にある 9.6ha の入り江。宮崎ら
しいオープンな海岸にできる干潟
で、他ではみられない貝も生息して
宮崎の河川や海岸の生態系保全に
関する研究や取組について、三浦先
生にお聞きしました。
 宮崎の海岸
宮崎の海岸には、「宮崎にしかいな
いもの」、「宮崎には元気なものが
いる」など、「藻場」の生物を調べ
ると、新種や、日本で見つかったの
が 5 例目のめずらしい種や、絶滅危
惧種が多く出てきます。マニアが知
ると本当に見に行きたくなるほどの
場所もあります。これら干潟の生物
を多くの人々に知ってもらうため、
「干潟の生きもの図鑑」を出版して
います。
 檍(あおき)地域の環境保全活動
檍地域まちづくり推進委員会の環境
部会と宮崎市檍地域事務所が中心に
活動しています。活動内容は、干潟
観察会、コアジサシの保護活動、雑
草(移入種)の駆除、ホタルの活動、
清掃などです。このうち、当研究室
では毎回、干潟観察会とコアジサシ
の保護活動に協力しています。
 一ツ葉入り江干潟観察会
平成14年に研究室だけで、一ツ場
入り江の干潟観察会を計画しました
が、人が集まらない上、雨で中止に
なりました。そこで檍地区の公民館
にお願いして、片っ端から講演し、
結局は一緒に実施することになりま
した。現在では、檍地域事務所が主
体となり、当研究室からは、指導員
を派遣するなどして協力していま
す。平成 23 年 10 月に開催した時
は、児童・保護者を含めて 145 名
が参加しました。
います。生きている貝が見られるの
は、世界でここだけという貝、ムラ
サキガイが食べられるほど獲れる
のは、山口とここだけ、世界で約
3,000 羽しかいないカラシラサギ
もここに飛来します。

研究者のたまごたち
干潟観察会で使用する観察シート
一ツ葉入り江でおこなわれた干潟観察会の様子(平成23年10月23日)
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一ツ葉の地名
松の葉は、通常 V 字形の一対の葉
(2
本)になっていますが、まれに一本だ
けの「一葉松」が存在します。普通
の松葉に混じって、まれに現れ、見
つけると縁起が良いと言われてい
ます。その名が一ツ葉稲荷神社や一
ツ葉という地名の由来になってい
ます。
こどもたちから
檍小学校の3年生へ講義したあとに
届いたお礼の手紙
宮崎ミニ水族館の様子(平成23年9月21日~9月29日)
 コアジサシの保護活動
毎年、決まった場所に営巣地をつく
ろうという活動。営巣しやすいよう
雑草を刈ったり、鳥の模型(デコイ)
を作ったり、地域の人々が自分で考
え「カラスを追い払ってもいいか」
など相談に来るので、指導したりも
します。地域の人々が、本当に興味
を持って活動している取組です。
 小学 3 年生への出前講座
檍小学校では、地域の自然を勉強す
るカリキュラムがあり、地域の方が
歴史や農業などの話をします。その
一部として、3年生を対象に話をし
ています。講義には、おみやげ(め
ずらしい貝)を持っていき、自然に
ついての話をしています。少し難し
いかもしれませんが、毎年お礼の手
紙が届くのが楽しみです。
 宮崎ミニ水族館
宮崎ミニ水族館は、平成 14 年から
続いています。最初は、研究室の学
生が卒論で使った生物を水族館のな
い宮崎で紹介したいということから
始まりました。現在では、学科の先
生も学生も、地域の方や海洋高校の
生徒さんも参加し、10~30 本の水
槽を展示します。
また、タッチプール、さわれる貝、
貝拾いコーナーなどの展示がありま
す。
 こういった活動の評判は?
干潟観察会もミニ水族館もリピータ
ーが多いです。ミニ水族館には、お
じいさんのリピーターまでいます。
ミニ水族館は、小さな水槽を置いて
いるだけですが、「楽しい」と言っ
てもらえるのがうれしいです。
 様々な取組で期待すること
一ツ葉入り江にはローカルですが、
ほとんど知られていない価値ある生
物が、たくさん生息していることを
観察会などを通じて知ってほしいと
思います。
 今後やりたいこと
海岸の背後の松林が面白いです。県
有地の松林で、松露(キノコの一種)
を復活させないかと提案していま
す。手入れがされていない松林の下
草を刈って、松葉を除去し、裸地に
しておけば、松露が自然に生えてき
ます。そうすると松枯れも減ってき
ます。わかっているができないでい
ることです。
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