つながる 人権便り 第 19 号 2013.12.10 三田市立長坂中学校 人権教育委員会 ◆巨星墜つ 1991 年と言うから、みなさんが生まれるほんの少し前まで、南 アフリカでは大変おかしな政策が続いていた。それはアパルトヘ イト(人種隔離)政策といって、少数の白人が大多数の黒人をは じめとする有色人種を当たり前のように差別する政策だ。たとえ ば、住むところや使用する交通機関、買い物をする場所、学校、 はては公衆トイレまで白人と黒人は分けられていた。アパルトヘ イト政策は、日本社会で生まれ育った者にとって、殆ど想像でき ないほど残酷な政策である。人種差別を徹底するために黒人居住 区を別国とし区分し、あたかも別国のように扱った。そして黒人 の生活は劣悪を極めていた。当然、そんな理に合わないことに対 して世界の国々から批判の声が上がったが、南アフリカには金やダイヤ、ウランなどの豊富 な鉱産資源に恵まれていて、世界の批判に耳を貸そうとしなかった。そんな差別の中で立ち 上がったのがネルソン・マンデラ氏。彼は大学を卒業したあと、弁護士となる。同時に反ア パルトヘイト運動に取り組む。44歳のとき国家反逆罪で逮捕され、終身刑となる。その後27 年間を刑務所に収監されるが、国家権力に屈することはなかった。27年間といえば、みなさ んが生まれて今までの年月の2倍です。いかに長きにわたってマンデラさんは自由を奪われ、 人権を侵害され続けたか。しかしマンデラさんは正義を貫き通し決して人権闘争を諦めなか った。その不屈の精神は世界中の人の心を動かした。それを物語るのが、刑務所に収監中の 彼に、世界から彼を称える幾多の賞が贈られていることだ。やがて時代は大きく変化。南ア フリカ政府もアパルトヘイトの方針を転換し、マンデラさんは1990年に釈放される。そして その3年後にはノーベル平和賞を受賞している。翌年の1994年、南アフリカ初の全人種参加選 挙を経て同国大統領に就任。民族和解・協調政策を進めた。彼のすごいところは、今まで自 分たちを差別してきた白人に対しても同等の権利を認め、決して差別しなかったことだ。そ して国家反逆罪で27年余も投獄された“恨みや憎しみ”を国の未来のために捨てたことだ。 怨讐を乗り越え、本当に人間の平等を実現しようとしたところだ。 さて彼の残した名言をいくつか紹介しよう。 「生まれながらにして肌の色や出身や宗教を理由に他人を憎む人は誰もいない。憎しみは後 から学ぶものであり、もし憎しみを学ぶことができるなら、愛することも教えられるはずだ。」 「自由や正義への我々の闘争は人々の力を合わせて行うものだ。そこに生きるすべての人の ために、より良い世界を作り出すのはあなた自身だ」 「あまりにも長く続いた途方もない人間の苦しみの経験からは、すべての人が誇りを持てる 社会が生まれなければならない」 「自由に通じる容易な道が存在しないことは分かっている。単独で行動したのでは成功でき ないことはよく分かっている。だから国家の和解のため、国家建設のため、新しい世界の誕 生のために、一丸となって共に行動しなければならない」 「人権を否定することは、その人間そのものを否定することだ。飢えと搾取の悲惨な人生を 強いることは、人間性を奪うことだ。だが我が国ではアパルトヘイトの制度の下、そのよう な恐ろしい状況がすべての黒人の運命だった」 「監獄で27年も過ごせば人生は無駄になったと人は言うかもしれない。だが重要なのは、 自分の人生をかけた理念がまだ生きているかどうか、その理念が最後には勝利しそうかどう かだ。そして、これまで起きてきた全てのことが、我々の犠牲が無駄ではなかったことを示 している」 「自分がどれほどその習慣に誇りを持っていようと、自分自身の習慣に照らして他者を断罪 する権利は一切ないと思うようになった」 「抑圧された側も、圧制者の側も、偏見と不寛容から解放されなければ、本当の自由は達成 されない」 「私は白人の独占支配とも、黒人の独占支配とも闘ってきた。全ての人々が、調和と平等な 機会の下に暮らすことが私の理念だ。必要ならこの理念の実現のために死ぬ覚悟がある」 みなさんも知っているだろうが、 マンデラさんは 12 月 5 日にヨハネスバーグの自宅で死去。 享年 95 歳。この報道は一気に世界を駆け巡った。そして世界中が哀悼の意を表した。いかに 偉大な人権闘争家だったことがあらためてわかる出来事だった。 世界のメッセージを紹介しよう。 ◎イギリス;英スカイニューズ・テレビによると、英国のキャメロン首相は5日、南アフリ カの元大統領でノーベル平和賞受賞者、ネルソン・マンデラ氏の死去を受け「世界の大き な灯が消えた」と語った。キャメロン氏は「マンデラ氏は英雄だった」と死を悼んだ。ロ ンドンの英首相官邸では、弔意を示すために半旗掲揚が行われる。BBC放送によると、 野党労働党のミリバンド党首も「マンデラ氏は、人々に勇気と希望を与えた」とコメント を発表した。 ◎フランス;オランド大統領は5日、南アフリカのマンデラ元大統領の死去を受け「人生の 最期まで平和に尽くした」と追悼する声明を発表した。オランド氏は「南アフリカの歴史、 全世界の歴史に名を残した」と功績をたたえ、「マンデラ氏のメッセージは決して消える ことなく、自由のために闘う人々にインスピレーションを与え続けるだろう」と指摘した。 ◎オーストラリア;アボット首相は6日、南アフリカのマンデラ元大統領の死去を受け声明 を公表し「彼は単に政治の指導者にとどまらず、道徳的な指導者として永遠に人々の記憶 に残るだろう」と述べ、功績をたたえた。アボット氏は、アパルトヘイト(人種隔離)撤 廃に人生の多くをささげただけでなく、マンデラ氏自身を含む黒人を弾圧した白人を許し、 人種間の融和に尽力した同氏の功績に触れ「もっと勇敢に、そして公正に生きるよう世界 中の人々を鼓舞した」と述べた。 ◎欧州連合(EU);ファンロンパイ大統領とバローゾ欧州委員長は5日、南アフリカのマ ンデラ元大統領の死去を受けて共同声明を発表、「(マンデラ氏は)正義、自由、人権の 尊重を体現した」と功績をたたえた。両首脳は「南アフリカだけでなく、国際社会全体に とって悲しい日だ。私たちの時代の、最も偉大な政治家の一人の死を悼む」と表明。「マ ンデラ氏の闘争の目的だった真の民主主義を擁護することをあらためて約束する」と強調 した。 ◎アメリカ合衆国;南アフリカのマンデラ元大統領の死去を受け、オバマ米大統領は5日、 ホワイトハウスで、「われわれは最も影響力があり、勇敢な人物を失った」と追悼する声 明を発表した。オバマ氏は声明でマンデラ氏を、人々の自由のために自らの自由を犠牲に した不屈の意志をもった人物だったと称賛。マンデラ氏の釈放の際には、オバマ氏自身も 人類が恐怖ではなく希望に導かれたときにどのようなことを達成できるかを直観したとし、 「マンデラ氏が示してくれたお手本のない私の人生は想像もできない」と話した。またオ バマ氏はマンデラ氏のような人物は二度と表れないとし、残された人類の責務は「憎しみ ではなく愛情によって決断し、一人の人間が成し遂げることができる変化を決して軽視し ない」ことだと呼びかけた。米国初の黒人大統領であるオバマ氏は、南ア初の黒人大統領 となったマンデラ氏に生前から敬意を表してきた。 ◎南アフリカ;アパルトヘイト(人種隔離) 撤廃の基礎を築いたとして、1993年 にマンデラ元大統領と共にノーベル平和 賞を受賞した南アフリカのデクラーク元 大統領は5日、マンデラ氏の死去を受け 「マンデラ氏は南アで憲法に基づく民主 主義の確立や、国民和解に比類なき貢献 を果たした」と述べた。英BBC放送が 伝えた。デクラーク氏は南アの旧白人政 権最後の大統領。マンデラ氏が示した模 範は今後も生き続けるとし功績に敬意を 表した。南アの与党アフリカ民族会議 6日、南アフリカ・ケープタウンで、同国の国旗を手にマンデラ元大統領の 死を悼む少女(ロイター) (ANC)も、同国と世界は「謙虚と平 等、正義、平和の巨人」を失ったとする 追悼声明を発表。「彼の生涯は、われわれに発展と飢餓・貧困撲滅に向け前進する勇気を 与えてくれた」と評価した。 ◎インド;シン首相は6日、南アフリカのマンデラ元大統領の死去を受け、短文投稿サイト 「ツイッター」を通じて追悼の意を示し、「彼の生涯と、成し遂げたことは、これから生 まれてくる世代を永遠に感化し続けるだろう」とたたえた。インドの“国父”ガンジーが 南アで弁護士をしていた時代に有色人種に対する差別反対運動に取り組み、そこで培った 経験が非暴力不服従を柱とする英国からの独立運動につながったことから、インドではマ ンデラ氏に強い共感がある。シン氏は「南アフリカだけでなく、インドにとっても損失だ。 彼は真のガンジー主義者だった」と死を惜しんだ。インド主要紙もそろって現地時間の6 日早朝から、電子版で特集を組むなど、関心の強さをうかがわせた。 ◎イギリス;南アフリカのマンデラ元大統領が5日死 去したとの訃報が報じられた際、英王室のウィリア ム王子とキャサリン妃はちょうどロンドンで開かれ ていたマンデラ氏の自伝映画の試写会に出席中だっ た。ウィリアム王子は試写会後、英メディアに「と てつもなく悲しいニュースだ。マンデラ氏がいかに 素晴らしい人物だったかをあらためて思い知らされ たばかりだった」と語った。 ◎ミャンマー;ミャンマーの最大野党党首アウン・サ ン・スー・チー氏は6日、南アフリカのマンデラ元 1990年10月、「ネルソン・マンデラ歓迎西日本集会」 で、会場を埋めた支援者に手を振るネルソン・マンデラ氏 大統領の死去を受け、「人権と平等のために闘った =大阪市北区の扇町公園 人物の死去に際し、深い哀悼をささげる」と述べた。 ロイター通信などが伝えた。マンデラ氏と同様にノーベル平和賞を受賞し、かつての軍事 政権によって自らも自宅軟禁されていたスー・チー氏は「誰しもが、肌の色や出自によっ て罰せられるべきではないと知らしめてくれた」と称賛。「姿勢や認識をあらためること で、世界を変えられると示してくれた」とした。 まだまだ書ききれないほどのメッセージであふれているのだが・・・ さて、差別は人間の偏見と無知が生み出したもの。だから人間の手で 解消できるのだ。我々の寛容の精神、公正な判断、そして英知と行動に よって必ず無くすことができるのです。正義は必ず実現する。私たちも マンデラさんに続いて、この世にある不合理を突き崩していこう。人類 の明るい未来のために、そしてなによりも自分自身のために・・。
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