『アフリカの真珠・ウガンダの交通事情-活躍する⽇本⾞と歩く⼈々-』 前駐ウガンダ⼤使 加藤圭⼀ ウガンダはアフリカ⼤陸のほぼ中央に位置し、⾚道直下の緑豊かな国です。 ⾯積は⽇本の本州とほぼ同じです。タンザニア、ケニアとの 3 ヶ国にまたがる広⼤なビクトリア湖は⽇本 の琵琶湖の100倍、九州の 2 倍の⼤きさです。 かって、英国のチャーチル元⾸相が植⺠地担当⼤⾂時代にウガンダを訪れ、ビクトリア湖をはじめとする 多くの湖、緑に覆われた⼤地、ナイル河の雄⼤な流れや⼭々の美しさに魅了され、ここは「アフリカの真珠」 であると語ったとされています。 時を経て今⽇のウガンダは⼈⼝が 3200 万⼈ほど、地⽅の主要都市への道路が整備され⾞が交通の主役と なっています。⾶⾏機や鉄道もありますが、⾶⾏機は⼩型(10 ⼈から 20 ⼈乗り)で地⽅の⾶⾏場はエアー ストリップと呼ばれる⼟の滑⾛路を利⽤していますが便数は限られています。鉄道は英国の保護領時代に 建設されたケニアのモンバサからウガンダの⾸都カンパラまでの鉄道をそのまま利⽤していますが設備が 旧式で維持管理も⼗分ではなく平均時速は20キロ/時となっており貨物輸送以外には殆ど利⽤されてい ません。 トラックやバスなどの⼤型⾞両は、ガソリン、⽇⽤品、⾷糧、⻑距離旅⾏者の輸送⼿段です。国内の主要 都市間のみならず、ケニア、タンザニア、南スーダン、コンゴ(⺠)、ルワンダとの往来も盛んです。ウガ ンダ国内ではこれら周辺の国々のナンバープレートをつけた⾞両が⽬につきます。 ⽇常⽣活の中で活躍しているのはタクシー、⾃家⽤⾞、バイク、⾃転⾞、そして徒歩です。ウガンダ国内 の⾞の80%以上は⽇本の中古⾞です。中には⽇本で⾛っていたベンツも⾒かけます。タクシーは通常の タクシーとマタツと呼ばれる乗り合いタクシーがあります。 市場など⼤勢の⼈々が集まる場所での主役は、マタツとボダボダと呼ばれるバイクタクシーです。⼤きな 荷物を抱えた⼈々が利⽤するマタツはワゴン⾞を改良して 10 ⼈ほどの乗客をぎっしり詰め込んで⾛りま す。降りる場所はお客しだいです。ボダボダはバイクの後ろに座席を取り付けたもので通常は乗客は 1 名 ですが 3 名を載せて⾛っている光景も頻繁に⽬にします。ボダボダは運転者、乗客共にヘルメットの着⽤ が義務付けられていますがあまり徹底されていません。⾸都カンパラの朝⼣は⼦供達を学校に送り迎えす る⾃家⽤⾞で込み合います。いつもは 5 分ほどのところを 1 時間近くもかかったりします。混雑時には⾞ の合間を縫って⾛るボダボダが⼈々の⾜代わりとなっています。 地⽅に⾏きますとマタツ、ボダボダ、⾃転⾞そして徒歩が主役です。 マタツは主要道路以外は舗装されていない⼭間を⾛る道路を⼟埃をあげながら村⼈の⼤事な⽣活の⾜とな っています。⼭奥の村々までは道も狭くボダボダの出番です。地⽅の多くの町には⾃転⾞タクシーも活躍 しています。後ろの荷台にお客を乗せたり、荷物を積んだりしています。 地⽅では徒歩も忘れてはなりません。⼤きな荷物や洗濯物を頭に載せて黙々と歩く⼥性、⽔を運ぶ⼦供達、 学校の⾏き帰り⾚、⽩、⿊、緑などさまざまな⾊鮮やかな制服を着て数⼈から数⼗⼈ほどかたまって歩き、 ⾬が降れば⼤きな⽊の葉っぱを起⽤に頭に乗せて歩く、歩く、そして、ひたすら歩く⼦供たち。⼭間の⼩ 学校では家から4キロの距離を毎⽇歩いて通学する⼦供達も珍しくありません。学校は 8 時半から始まり ますので、⼦供達は朝7時前には家を出て⼭道を歩き始めます。⾸都カンパラと地⽅の主要都市を結ぶ良 く整備された幹線道路は、カンパラからはケニアから輸⼊されたガソリン、機械製品、⽇⽤品など(内陸 国であるウガンダの輸出⼊の 85%はケニアのモンバサ経由となっています)が、地⽅から⼤消費地である カンパラへはウガンダの主⾷であるマトケと呼ばれる⾷⽤バナナ、野菜などの⾷料品、⽜などが運ばれて きます。⼤型のタンクローリーがガソリンを運んだ帰りにマトケを屋根や横の部分にいっぱいに積んでい る光景も珍しくはありません。 ビクトリア湖から北上し、さらに⻄に流れ、コンゴ(⺠)との国境の湖アルバート湖に流れ込み、更に、南 スーダン、スーダン、エジプトを経て全⻑6500キロにおよぶ世界最⻑のナイル河、東部や⻄部の国⽴ 公園、5000メートルを超える⼭や多くの湖、ゾウ、キリン、カバ、ゴリラなどの動物、そして、野⿃ など観光資源に恵まれた景勝地には年間を通じて主に欧⽶から多くの観光客が訪れます。最近は⽇本から も 1 週間のツアーが組まれ⽇本⼈観光客の姿も⽬にするようになりました。これら観光客の主要な交通⼿ 段もバス、ツアー会社のミニバスなど⾞が主要な交通⼿段です。 このように、⽇本から遠く離れたウガンダで⽇常⽣活に⽋かせない存在となっている⽇本⾞が、第⼆の⼈ ⽣を⼈々に頼りにされ今⽇もあちこちを⾛り回っている姿を想像してみてください。 (10 ⽉ 1 ⽇寄稿)
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