- 運用のスペシャリストが語る - メキシコ経済の現状と今後の展望 ご参考資料 2013年2月 BRICsに続く、新たな成長国として注目される「メキシコ」。1990年代、通貨危機という苦い経験を味わい ましたが、これを教訓に経済は生まれ変わり、近年、自動車産業を中心に海外企業の製造拠点としての 地位を高めています。そこで、HSBCグローバル・アセット・マネジメントのビル・マルドナドにメキシコ経済 の動向や株式市場をどのように見ているのかについて聞きました。 (本文内容は、2013年2月5日のセミナー時点のものです) ビル・マルドナド HSBCグローバル・アセット・マネジメント グローバル株式部門 CIO 兼 アジア・パシフィック地域 CIO HSBC グローバル・アセット・マネジメントのグローバル株式部門 CIOとして株式運用およびスト ラテジーを管掌。また、アジア・パシフィック地域のCIOとしてアジア全体の投資戦略および運用 を指揮・監督。1993年にHSBC入社。ファンドマネジャーを経て、インデックス運用やファンド・オブ ・ファンズ、ヘッジファンドなどの運用チームを指揮。2011年6月より現職。 - 90年代に通貨危機を経験したメキシコ経済が大きく改善した理由は何ですか? 長期にわたる改革の実施により経済状況は改善 1994年、政情不安を懸念する海外投資家の資金逃避により通貨が暴落する通貨危機(テキーラ・ショック)が発 生しました。これを受け、政府は外的ショックに耐えられるよう、経済改革を実施してきました。 金融面では、中央銀行の独立性を強化し、さらにイン フレ目標*(現在は3%±1%)を導入しました。為替面 では、2009年に国際通貨基金(IMF)によるフレキシブ ル・クレジット・ライン(過去の経済は良好であるが、世 界的な経済危機により流動性の懸念が出てきた国に 対する融資制度)の供与を受けており、また豊富な外 貨準備を保有していることから、外的ショックによる通 貨の暴落の可能性は以前に比べ大幅に低下したと考 えられます。 政府債務残高(対GDP比)の推移 (2001年~2011年) また、財政面では、2006年に制定された、長期的に 財政収支の均衡を義務付ける「財政責任法」によって 財政の規律が強化されました。現在、多くの先進国が 債務問題に直面する中、メキシコは、規律ある財政政 策を維持しており、政府債務残高(対GDP比)は低水 準です。 このような経済の安定を背景に海外の企業や投資家 の信頼が回復し、近年、海外からメキシコへの投資も 好調に推移しています。 * 物価安定に向けて、中央銀行が物価上昇率(インフレ率)の目標 を設定し、一定範囲内に収まるように金融政策を行うこと。 1 巻末の「留意点」を必ずご覧ください 出所:IMF World Economic Outlook Database (October 2012)のデータをもとにHSBC投信が作成 HSBC × Mexico - メキシコ経済の中核である製造業の強みを教えてください。 低い労働コストが大きな武器 製造業の労働コスト比較 (2011年) 製造業は、名目GDP(2011年)の約2割を占める重 要なものです。メキシコの製造業は、1965年に始まっ ドイツ * たマキラドーラ制度 により大きく成長を遂げました。 日本 自動車・同部品、電気・電子機器などの工業製品は、 米国 輸出全体の約8割を占めています。メキシコは、低い シンガポール 労働コスト、消費大国である米国に隣接することによ 韓国 る低い輸送コストなど、多様な競争優位性を持ってい ブラジル ます。中でも、世界の主要自動車メーカーがこれらの ハンガリー 優位性を最大限に利用することを目的にメキシコに 進出しています。最近では、日産自動車やゼネラル ポーランド モーターズなどが工場拡張を発表するなど、この動き メキシコ が一層活発になってきています。また、貿易収支 フィリピン (2012年)は15年ぶりに黒字となりましたが、製造業 0 の競争力向上による輸出拡大がその背景にあります。 47 36 36 23 19 12 9 9 7 2 10 20 30 40 50 (米ドル) ※時間当たりの労働コスト(米ドル換算) 出所:米国労働省のデータをもとにHSBC投信が作成 * 製品を輸出する場合、製品を製造する際に用いた原材料などを 無関税で輸入できる制度。 - 個人消費などの内需はどうですか。 豊富な若年人口による持続的な消費市場の成長が期待される GDPの約7割を占める民間消費は堅調に推移して おり、メキシコの経済成長を下支えています。 民間消費の動向を見ると、2012年11月の小売売 上高は、前年同月比で+3.5%となりました。また、全 国スーパーマーケット・百貨店協会が発表した既存 店売上高(前年比)は2012年が+4.7%、 さらに2013 年も +5.0%を予想しています。 銀行の貸出残高 は伸びており、中でも、個人向け貸出残高は前年 比20%前後の高い伸びを示しています。 メキシコは、30歳未満の人口の割合が約55%と、 若年層が厚い人口構成です。 今後も人口増加が 予想されているため、長期的に労働力の供給と消 費の拡大が見込まれ、今後の成長を後押しするも のと考えられます。 年齢別人口構成(2010年) 80歳以上 75-79歳 日本 メキシコ 70-74歳 65-69歳 60-64歳 55-59歳 50-54歳 30歳未満の 30歳未満の 45-49歳 人口比率 人口比率 40-44歳 55% 35-39歳 29% 30-34歳 25-29歳 20-24歳 15-19歳 10-14歳 5-9歳 0-4歳 12% 10% 8% 6% 4% 2% 0% 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 出所 : 国連 World Population Prospects: The 2010 Revisionのデータを もとにHSBC投信が作成 - 昨年12月に新政権が発足しましたが、どのような政策を打ち出しているのでしょうか。 順調なスタートを切ったペニャニエト新政権 2012年7月に実施された大統領選挙で、中道左派 である制度的革命党(PRI)のペニャニエト氏が当選 し、12月に新政権が発足しました。PRIは1929年から 2000年まで政権与党でしたが、2000年、2006年の大 統領選挙では中道右派の国民行動党(PAN)の候補 に敗れ、今回は12年ぶりの政権復帰となります。 2 巻末の「留意点」を必ずご覧ください 新政権は、まず労働制度の改革に取り組んでい ます。1970年に制定された連邦労働法は、労働市 場における柔軟性、効率性を奪っているとの見方 が多く、前政権が改正に向けて取り組んでいまし たが、新政権はこれを継続しています。 HSBC × Mexico エネルギーも重要な政策課題です。メキシコ石油 公社(PEMEX)は重要な政府の収入源ですが、非 効率な経営体質が問題となっています。現在、 PEMEXが独占している石油資源の開発・生産など の事業において民間資本の活用を含め、石油・天 然ガス産業の生産性向上、また、電力に関しても 発電コストの引き下げなどに取り組んでいくことが 期待されています。 PRIは上下院議会において、第1党ではあります が、どちらも議席数は過半数には達していません。 しかし、新大統領就任の翌日、PRI、最大野党の PANに、第3党の民主革命党(PRD)を加えた主要3 政党が「メキシコのための協約」を締結し、協力し てメキシコに必要な構造改革に取り組むことを表 明しました。与野党が協力することで、構造改革は 進んでいくものと考えられます。 財政面では、連邦税と州税のバランス、効率的な 補助金制度策定などに向けた改革が予想されま す。財政改革により、社会保障制度改革などに充 てる資金が捻出されると考えられます。 - インフレ率は落ち着いていますが、中央銀行の金融政策の方向性を教えてください。 政策金利は4.5%で据え置かれる見通し インフレ率(前年同月比) は、2012年6月~11月、 中央銀行の目標値の上限(4%)を超えていましたが、 12月には3.6%まで低下しました。2013年は、通貨ペ ソが主要通貨に対して上昇していること、前年(2012 年)の水準が高かったことなどから、インフレ率は中 央銀行の目標範囲内に収まるものと予想されます。 2012年、中央銀行は、インフレ警戒のスタンスを保 ちつつも、政策金利を据え置きました。12月はインフ レ率が低下する一方で、2012年7-9月期の実質GDP 成長率(前年同期比)が+3.3%と5四半期ぶりの低 水準となったことなどを背景に、中央銀行のスタンス は次第に景気重視に移り、2013年最初の金融政策 決定会合では今後の利下げの可能性を示唆しまし た。しかし、当社では、GDP成長率は2012年7-9月期 を底として回復していくと見ており、政策金利は2013 年中は現状の4.5%で据え置かれると予想していま す。 (%) 10 政策金利とインフレ率の推移 (2008年1月末~2012年12月末) 8 6 政策金利 4 インフレ率 2 0 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 (年/月) 出所 : ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成 - メキシコの株式市場にはどのような特徴がありますか。 他の中南米市場に比べ、ディフェンシブなセクター構成 メキシコ証券取引所の時価総額は、約46兆円*と中 南米ではブラジルに次ぐ規模です(2012年12月末現 在)。他の中南米諸国の市場と比較して、電気通信 サービス、食品などディフェンシブセクター(景気動向 に業績が左右されにくい業種)の比率が高くなってい ます。 IPC指数の業種別構成比 (2013年1月末) 主要な株価指数はIPC指数(ボルサ指数)で、指数構 成の上位10銘柄が同指数の時価総額の76%を占め ており、上位銘柄への集中度が高くなっています。 * 時価総額は米ドル建のデータを円換算。 為替は1米ドル=86.75円(2012年12月末現在)で換算 3 巻末の「留意点」を必ずご覧ください ※グラフは表示単位未満を四捨五入しているため、合計が100%に ならない場合があります。 出所 : ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成 HSBC × Mexico - 株式市場の見通しについてはどのように考えていますか。 バリュエーションにやや割高感はあるものの、企業業績は良好な見通し メキシコ株式市場は昨年、大きく上昇し、株価水準 が過去および他の新興国市場に比べ高くなりました。 足元ではPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率) ともに過去5年平均を上回る水準となっています。 IPC指数のEPS(1株あたり利益)は、2012年は前年 比で減少しましたが、2013年、2014年は2桁の増益が 予想されています。このようにメキシコ株式はバリュ エーションにやや割高感があるように見えるものの、 企業業績は良好な見通しです。 今後、国内の年金基金や投資信託からの継続的な 資金流入、構造改革の進展などは株式市場を押し上 げる要因になると予想されます。 1株あたり利益の推移(前年比、2010年~2014年) 25 (%) 20 15 10 5 0 -5 10年 11年 12年 13年 予想 14年 予想 ※IPC指数を使用、1株当たりの利益予想は、2013年2月1日 現在のブルームバーグ予想 出所 : ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成 - メキシコペソの今後の見通しを教えてください。 中長期的には経済ファンダメンタルズを反映した動きに 足元ではメキシコペソは上昇していますが、2008年 の世界金融危機以降、ペソは、他の中南米諸国通 貨に比べ出遅れ感が強く、今後の上昇余地があると 思われます。 その背景には、①新政権による構造改革の進展期 待、②国債の格付け引き上げの可能性、③海外から の投資拡大(直接投資および証券投資)などがあげ られます。 メキシコは諸外国との貿易量が多いこと、市場が 海外の投資家に開放されていることなどから、短期 的には、世界の市場の「リスクオン(=リスク選好)」 と「リスクオフ(=リスク回避)」の動向に左右されや すい環境が続くと考えられます。 しかし、中長期的に見た場合、ペソ相場は、メキシ コの健全な経済ファンダメンタルズなどを反映したも のとなることが予想されます。 中南米諸国通貨の騰落率(対米ドル) (2008年12月末と2012年12月末の比較) 33.2% チリ 27.3% コロンビア 22.8% ペルー 12.8% ブラジル 6.4% メキシコ アルゼンチン -29.7% ベネズエラ -50.0% -80% -40% 0% 40% 80% 出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成 - 最後にメキシコ株式に投資を検討されている方にメッセージをお願いします。 メキシコ経済は3%を超える安定的な経済成長が予想され、健全な財政や低水準のインフレ率など、近年、経済 環境も改善しています。また、新政権は構造改革にも前向きに取り組む姿勢を示しており、さらなる飛躍への期待 も増しつつあります。企業収益は2013年、2014年と2桁の伸びが見込まれるなど、魅力的な投資機会が提供され ていると考えています。 4 巻末の「留意点」を必ずご覧ください 留意点 <当資料に関する留意点> 当資料は、HSBC投信株式会社(以下、当社)が投資者の皆さまへの情報提供を目的として作 成したものであり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。 当資料は信頼に足ると判断した情報に基づき作成していますが、情報の正確性、完全性を保証 するものではありません。また、データ等は過去の実績あるいは予想を示したものであり、将来の成 果を示唆するものではありません。 当資料の記載内容等は作成時点のものであり、今後変更されることがあります。 当社は、当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません。 <投資信託に関する留意点> 投資信託に係わるリスクについて - 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資 産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し損失が生じる可能性 があります。従いまして、投資元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金または 保険契約ではなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。また、 登録金融機関でご購入の投資信託は投資者保護基金の保護の対象ではありません。購入の申 込みにあたりましては「投資信託説明書(交付目論見書)」および「契約締結前交付書面(目論見 書補完書面等)」を販売会社からお受け取りの上、十分にその内容をご確認頂きご自身でご判断く ださい。 投資信託に係わる費用について - 購入時に直接ご負担頂く費用・・・・ - 換金時に直接ご負担頂く費用・・・・ - 投資信託の保有期間中に 間接的にご負担頂く費用・・・・・・・・ - その他費用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 購入時手数料 上限3.675%(税込) 信託財産留保額 上限0.5% 運用管理費用(信託報酬)上限年2.1% (税込) 上記以外に保有期間等に応じてご負担頂く費用があります。 交付目論見書、「契約締結前交付書面(目論見書補完書 面等)」等でご確認ください。 注: 上記に記載のリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しております。 費用の料率につきましては、HSBC投信株式会社が運用するすべての投資信託のうち、 ご負担いただくそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。 HSBC投信株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第308号 加入協会 一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会 5
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