7.学習・教育目標と日本技術者教育認定機構による教育プログラムの認定

7.学習・教育目標と日本技術者教育認定機構による教育プログラムの認定
機能分子・生命化学科(旧機能分子工学科)では,日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation
Board for Engineering Education,略して“JABEE”)が行っている,世界に通用する技術者の
養成を目的とする「技術者教育プログラム」の認定審査を 2006 年度(平成 18 年度)に受け、審
査に合格しました。その結果,プログラム修了生(2006, 2007 年度卒業生)は「技術士」の第一
次試験が免除されています。
日本で公式に認定される資格のうち,技術系の最高の資格は「技術士」です。その資格は,第
一次試験と第二次試験を合格することによって得られますが,どちらの試験でも合格率は 15~
20%程度です。かなり難関であるため,平成 13 年度で,化学技術者 68,000 人のうち千百人余り
しか技術士資格を持っておらず,技術士の資格は価値あるものといえます。
学生の皆さんの協力も得て,質の高い学習・教育システムを作り上げることによって本学科の
教育プログラムをより良いものにしていき,質の高い学生を育てたいと考えています。
表1に示した「機能分子・生命化学科の学習・教育目標」と,次ページに記す「JABEE の要
求する知識・能力」との対応を以下の表3に示しました。
表3.本学科の学習・教育目標[(A)~(C)]と,自立した技術者に必要な知識・能力(基
準1の(1)の知識・能力)
[(a)~(h)]との対応
基準1の(1)の
知識・能力
(d)
(a)
(b)
(1)
◎
◎
(2)
○
(c)
学習・教育目標
A
(1)
(2)
(e)
(f)
◎
(3)
◎
○
(1)
◎
○
○
◎
○
○
(5)
○
(h)
◎
◎
○
◎
○
◎
○
◎
○
○
○
◎
(4)
(g)
○
◎
◎
(3)
C
(4)
○
(2)
B
(3)
○
○
○
◎
◎
◎
○
○
○
◎
◎
◎
図中の◎は互いに強い相関があることを示し、○は互いに相関があることを示しています。
例えば,本学科の学習・教育目標の A(1)と,自立した技術者に必要な知識・能力の (a)・(b)と
には強い相関があることを,また,A(1)と(g)とには相関があること示しています。
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日本技術者教育認定機構(JABEE)は教育プログラム(教育内容・教育支援・教育改善システ
ムなど)を認定審査するにあたって,下記の項目を自立した技術者に必要な知識・能力とし,そ
れらを身につけるよう履修者に要求しています。
(a)
地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養
(b)
技術が社会および自然に及ぼす影響・効果に関する理解力や責任など,技術者として
社会に対する責任を自覚する能力(技術者倫理)
(c)
数学,自然科学,情報技術に関する知識とそれらを応用できる能力
(d)
該当する分野(化学および化学関連分野)の専門技術に関する知識とそれらを問題解
決に応用できる能力
(e)
種々の科学・技術・情報を利用して社会の要求を解決するためのデザイン能力
(f)
日本語による論理的な記述力,口頭発表力,討議などのコミュニケーション能力およ
び国際的に通用するコミュニケーション基礎能力
(g)
自主的,継続的に学習できる能力
(h)
与えられた制約の下で計画的に仕事を進め,まとめる能力
なお,項目(d) は次の内容を含んでいます。
(d)–(1)
工業(応用)数学,情報処理技術を含む工学基礎に関する知識,およびそれらを問
題解決に利用できる能力
(d)–(2)
物質エネルギー収支を含む化学工学量論,物理・化学平衡を含む熱力学,熱・物質・
運動量の移動現象論などに関する専門基礎知識,およびそれらを問題解決に利用で
きる能力
(d)–(3)
有機化学,無機化学,物理化学,分析化学,高分子化学,材料科学,電気化学,光
化学,界面化学,薬化学,生化学,環境化学,エネルギー化学,分離工学,反応工
学,プロセスシステム工学など化学に関する分野の内の4分野以上に関する専門基
礎知識,実験技術,およびそれらを問題解決に利用できる能力
(d)–(4)
上記 (3)の分野の内の1分野以上に関する専門知識,およびそれらを経済性・安全
性・信頼性・社会および環境への影響を考慮しながら問題解決に利用できる応用能
力,デザイン能力,マネージメント能力
上記知識・能力[(a)~(h)]のうち,
「(e)種々の科学・技術・情報を利用して社会の要求を解決
するためのデザイン能力」について以下に解説します。
ここでいう「デザイン」とは「エンジニアリングデザイン(engineering design)」を指す。す
なわち,単なる設計図面制作ではなく,
「必ずしも解が一つでない課題に対して,種々の学問・技
術を利用して,実現可能な解を見つけ出していくこと。」であり,そのために必要な能力が「デザ
イン能力」である。デザイン教育は技術者教育を特徴づける最も重要なものであり,対象とする
課題はハードウェアでもソフトウェア(システムを含む)でも構わない。
また,応用化学系ではデザイン教育を次のように定義しています:
「基礎になる科学的知識を駆
使して,分子レベルから物質を安全かつ経済的に構築するために必要なプロセスやシステムを創
出し,あるいは物質が備える機能を的確に引き出す能力の育成」
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実際のデザインにおいては,構想力/課題設定力/種々の学問,技術の総合応用力/想像力/
公衆の健康・安全,文化,経済,環境,倫理等の観点から問題点を認識する能力,およびこれら
の問題点等から生じる制約条件下で解を見出す能力/結果を検証する能力/構想したものを図,
文章,式,プログラム等で表現する能力/コミュニケーション能力/チームワーク力/継続的に
計画し実施する能力などを総合的に発揮することが要求される。
以上のことを踏まえて,本学科の教育プログラムでは「(e) 種々の科学・技術・情報を利用して
社会の要求を解決するためのデザイン能力」を養成するための基礎となる学習・教育目標として,
「(A) 工学において基礎となる知識の修得」と「(B) 化学分野における専門知識の修得」を設定
し,デザイン能力の養成を目標として,学習・教育目標「(C) 技術者・研究者としての総合的な
能力の養成」を掲げています。さらに「デザイン」の実行を通して,マネージメント能力を養い,
経済性・安全性・信頼性・社会および環境への影響を考慮しながら問題解決に利用できる能力を
養うことを目指しています。
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