数学 2D・2G 期末試験用シケプリ 文責 林 はじめに babababababababababababababababababababab 皆さん、お久しぶりです。またしても数学のシケ対をやるはめになってしまった私です。前回の電 気電子数学演習でシケ対を引き受けるのは最後だと腹をくくり、シケプリ作りに全身全霊をかけた 結果がこのざまです。五月祭直後の飲み会辺りでシケ対を決めるんじゃないかと予想はしてたので すが、楽しくお酒が飲めるとあっては行かないわけにはいかず、結局誘惑に負けて参加した結果が このざまです。飲み会のノリは危ないということを去年学んだはずだったのですが…人はお酒の前 ではあまりに無力。 というわけで反省はここまでにして、さっそく試験対策に入っていきたいと思います。今回のシケ プリは複素関数の実践例が中心となっています。その際 2008 年と 2007 年の期末試験から問題を引 用していますが、どうやら今学期の教官は去年までとは違う人らしいので、効率的な試験対策にはな らないかもしれません。ですが、これまでの過去の数学 2 の試験問題を見る限りでは教官が変わっ ても出題傾向に大きな変化は見受けられませんでしたので、恐らく今年も似たような問題しか出題 されないのではないでしょうか。これは私の希望ですが。 あと最初にお詫びですが、解答例を作るのに力尽きた + 期末前で時間的な余裕がなかったため、講 義後半の Γ 関数や B 関数、フーリエ解析の説明がかなり手薄となってしまいました。申し訳ありま せん。ですが、Γ 関数と B 関数は出題されたとしてもそれほど深い理解は求められないと信じてい ますし、フーリエ級数展開はただひたすら公式を用いて計算すれば何とかなりますし、フーリエ変 換に関しては結局複素積分に帰結することが大半なので大丈夫だと思います。ただ、フーリエ解析 の偏微分方程式への応用に言及できなかったのはちょっとまずかったと反省しています。これに関 しては講義ノートの例題を参照するなど各自対策をお願いします (とはいっても教官も鬼じゃないで しょうし、小問による誘導はあるかと思いますので、公式さえ覚えていれば対処できるのではない でしょうか)。 ちなみに数学 2 の試験は持ち込みが許可されていませんので、公式忘れると致命的です。まず確実 に出題されるであろう複素積分関連の式を中心に、できる限り覚えてから試験に臨むことを強く勧 めます。 解答例に関しては私の全力を注いだつもりですが、論理展開のおかしいところや、わざわざめんど くさい方法で解いているところ、あるいはそもそも答が違うというところがある可能性があります ので、発見した方は私までご一報願います。 1 2008 年度 数学 2D・2G 期末試験 第1問 (a) 関数 u(x, y) = x3 − 3xy2 について以下の問いに答えよ。 (1)u(x, y) が二次元 Laplace 方程式 52 u = 0 を満たすことを示せ。 (2)u(x, y) が全複素平面 C 上で正則な複素関数 f の実部である時、Cauchy-Riemann の関係式を用い て f の虚部 v(x, y) を求めよ。 (3) f = u(x, y) + iv(x, y) を z = x + iy と z̄ = x − iy を用いて表わせ。 ¨ ¥ 解答例 § ¦ (1) 二次元 Laplace 方程式の意味さえ知っていれば、後はただ微分を計算するだけです。 ∂2 ∂2 二次元の場合、52 = + となるので、 ∂x2 ∂y2 ∂2 ∂2 ∂ ∂ + )u(x, y) = (3x2 − 3y2 ) + (−6xy) ∂x ∂y ∂x2 ∂y2 = 6x − 6x = 0 52 u = ( (2) この問題で知っておくべき知識は、複素関数の正則性が CR 関係式で規定されるということです。 babababababababababababababababababababab Cauchy-Riemann の関係式 (CR 方程式) x, y ∈ R, u, v : R2 7→ R とする 複素関数 f (x + iy) = u(x, y) + iv(x, y) について、G ∈ C において次の 2 条件が満たされる時、 f (z) は G で正則であるという 条件 1 v : (x, y) 7→ (u(x, y), v(x, y)) が G で全微分可能 条件 2 CR 方程式 ∂v ∂u ∂v ∂u = , =− ∂x ∂y ∂y ∂x を満たす また、正則関数では CR 方程式によって実部 u(x, y)、または虚部 v(x, y) のどちらか一方が決まると、 他方も (定数項を除いて) 決まる というわけで、この問題の場合には実部として u(x, y) が与えられているので、CR 方程式にそのまま代入し てやれば答が得られます。この際、v(x, y) には定数項が付く点に注意しましょう。 2 複素関数を f = u(x, y) + iv(x, y) とすると、Cauchy-Riemann の関係式より、 第一式より ∂v = 3x2 − 3y2 ∂y 第二式より ∂u ∂v = ∂x ∂y ∂u ∂v =− ∂y ∂x 1 ∴ v(x, y) = 3x2 y − y3 + c(x)…O ∂v 2 = −(−6xy) = 6xy…O ∂x 1 をO 2 に代入してやれば O したがって c を実定数として 6xy + ć(x) = 6xy ∴ ć(x) = 0 ∴ c(x) = c v(x, y) = 3x2 y − y3 + c となります。 (3) (2) において f = u(x, y) + iv(x, y) の式は求めましたが、これを複素数 z(または z̄) の関数として表わす場合、 前者は x, y の関数として与えられているので、z(x, y), z̄(x, y) から x(z, z̄), y(z, z̄) を求める必要があります。それ さえできれば、あとは代入しただひたすら計算するだけです。 z + z̄ z − z̄ ,y = となるので、これを f(x,y) に代入し 2 2i { ( } {( ( z + z̄ ) ( z − z̄ )2 } z + z̄ )2 ( z − z̄ ) ( z − z̄ )3 z + z̄ )3 −3 +i 3 − +c f (z, z̄) = 2 2 2i 2 2i 2i 1 3 3 1 = (z + z̄)3 + (z + z̄)(z − z̄)2 + (z + z̄)2 (z − z̄) + (z − z̄)3 + ic 8 8 8 8 1 = {(z + z̄) + (z − z̄)}3 + C 8 = z3 + C(ただし C は純虚数の定数) z = x + iy, z̄ = x − iy より x = 3 (b) 複素関数 f (z) = 3z について以下の問いに答えよ。 (z − 2)(z + 4) (1) 複素平面 C 上の全ての特異点とその留数を求めよ。 (2) f (z) の Maclaulin 展開 (z = 0 を中心とする Taylor 展開) を求めよ。 (3)z = 0 を中心とする Laurent 展開のうち、|z| = 3 の円周上で収束するものを求めよ。 (4)z = 0 を中心とする Laurent 展開のうち、絶対値の十分に大きな z に対して収束するものを求めよ。 さらに無限遠点 ∞ における留数を求めよ。 (1) 複素関数における特異点と留数に関する問題です。両者についてここで少し復習しておきましょう。 babababababababababababababababababababab ¥ ¨ 特異点 § ¦ f (z) が z = a で正則でないとき、z = a を f (z) の特異点という。 ¨ ¥ §孤立特異点 ¦ z = a を関数 f (z) の特異点とするとき、 f が正則となるような (z=a を除く) 円 0 < |z − a| < r が取れ る、すなわち z = a 以外に特異点を含まない円が取れるとき、z = a を孤立特異点と呼ぶ。孤立特異 点は以下のように分類される。 a は除去可能 全ての n ≥ 1 について c−n = 0 であるとき、孤立特異点 a は除去可能であるという。 また、a は lim(z − a) f (z) = 0 のとき除去可能である z→a a は m 位の極 c−m , 0 なる係数 c−m が存在し、n > m なる全ての n について c−n = 0 であるとき、孤立特異点 a は m 位の極であるという ⇒ 有利関数 f (z) = p(z) (p, q は共通因数をもたない多項式) は、q の m 重の零点で m 位の極を持 q(z) つ。それ以外には特異点をもたない a は真性特異点 c−n , 0 なる係数が無限に存在するとき、孤立特異点 a は真性特異点であるという 4 babababababababababababababababababababab ¨ ¥ 留数 § ¦ ローラン級数の中の ¨ 1 の係数 c−1 の事を z0 における f の留数という z − z0 I 1 f (z)dz Res(z = z0 ) ≡ c−1 ≡ 2πi C ¥ 留数の計算法 § ¦ 方法 1 ローラン級数に展開して直接読み取る 方法 2 特異点 a が 1 位の極であるとき Res(z = a) = lim(z − a) f (z) z→a また、 f (z) = g(z) (g, h は解析関数) と表わされ、h(a) = 0, h0 (a) , 0, g(a) , 0 を満たすとき h(z) Res(z = a) = g(a) h0 (a) 方法 3 特異点 a が m 位の極であるとき Res(z = a) = 1 dm−1 lim m−1 {(z − a)m f (z)} (m − 1)! z→a dz この問題を解く上ではここまでの知識は必要ありませんが、今年の期末で何が問われるか分かりませんの で、きちんと覚えておきましょう。それでは解答に戻ります。 ¨ ¥ 解答例 § ¦ 特異点は z = 2 と z = −4 です。それぞれ一位の極ですから、求める留数は 3z 6 = =1 (z − 2)(z + 4) 6 3z −12 Res(z = −4) = lim (z + 4) = =2 z→−4 (z − 2)(z + 4) −6 Res(z = 2) = lim(z − 2) z→2 (2) マクローリン展開の定義に従い地道に微分していって各係数を求めていってもいいですが、次項で述べ る公式を使ってしまった方が楽でしょう。 ¨ ¥ 解答例 § ¦ f (z) = 3z 1 1 = +2 と部分分数分解できるので、各項をマクローリン展開すれば (z − 2)(z + 4) z − 2 z+4 ∞ ∑ 1 k 1 =− z k+1 z−2 2 k=0 } ∞ { ∑ 1 1 2 = −2 zk k+1 z+4 (−4) k=0 5 したがって両者を足し合わせて z のべきで整理すれば f (z) = ∞ { ∑ − k=0 1 2k+1 } 2 − zk (−4)k+1 (3)|z| = 3 の円周上で収束するものを求める場合、収束円内に特異点 z = 2 を含みますので、展開式はローラ ン級数となります。先程のようにテイラー展開になる場合と合わせて、次の公式を覚えておくと便利かと思い ます。 babababababababababababababababababababab ® © 1 負数べき , m ∈ N のローラン展開 (z − z0 )m ª a = z0 を中心とする展開 (a) 既にローラン級数になっている a , z0 を中心とする展開 1 手順 1 を展開する z − z0 (b) 円 |z − a| = |z0 − a| の内か外かで 2 通りの展開法がある ∑ ∞ (z − a)k − (内部に特異点を含まない。T aylor 展開) k+1 1 k=0 (z0 − a) = ∑ ∞ z − z0 (z0 − a)k (内部に特異点を含む。Laurent 展開) (z − a)k+1 k=0 手順 2 級数を項別微分する 1 (−1)m−1 dm−1 1 = ( ) m (z − z0 ) (m − 1)! dzm−1 z − z0 ちなみに収束域を保ったまま項別微分可能であるのはべき級数の大きな特徴であり、一般の級数では項別微 分後の収束性は保証されませんのであしからず。 ¨ ¥ 解答例 § ¦ 1 1 |z| < 3 の円内に含まれる特異点は z = 2 のみですから、 にはローラン展開、 にはテイラー展開を z−2 z+4 行うことになります。公式に従って展開を行えば、 ∑ 1 1 2k = z − 2 k=0 zk+1 ∞ 2 ∞ ∑ 1 1 zk = −2 k+1 z+4 (−4) k=0 したがって求める展開式は、両者を足し合わせて f (z) = ∞ ∑ k=0 2k 1 zk+1 − ∞ ∑ k=0 2 zk (−4)k+1 (4) この問題の内、前半の問いに関しては (3) と同様にして解けばよく、特に問題はないでしょう。問題な のは後半の問いです。そもそも無限遠点における留数に関しては前回のシケプリで一切言及していなかったの 6 で、ここで補足という形で説明しておきたいと思います。ただ、講義では特に取り上げていなかった気がしま すので (数学 2D 演習では 1 回だけ関連した問題が出題されたことがありましたが)、試験に出る可能性は低い かと思います。 babababababababababababababababababababab ¨ 特異点 z = ∞ ¥ § ¦ f (z) が z = ∞ で正則でないとき、z = ∞ は f (z) の特異点である。 ( ) 1 1 の、ζ = 0 における状 z = ∞ における f (z) の状態は、z の代わりに と置き換えた次式 g(ζ) = f ζ ζ 態とする。 十分大きい R に対し、|z| > R を z = ∞ の近傍とする。 ¨ ¥ z = ∞ における f (z) の留数の定義 § ¦ f (z) が R < |z| < ∞ で正則であるとき、円 |z| = r, (r > R) 正の向きに回る次の積分 I −1 f (z)dz Res(z = ∞) = 2πi |z|=r を z = ∞ における f (z) の留数と呼ぶ ¨ ¥ § ¦ 留数 Res(z = ∞) の計算法 方法 1 上記の留数定義式に従って計算する。 方法 2 z = ∞ を中心とした f (z) の展開式が ∞ ∑ an と得られた場合は zn n=−∞ Res(z = ∞) = −a−1 方法 3 z = ∞ が m 位の極である場合は Res(z = ∞) = (−1)m lim {zm+2 f (m+1) (z)} (m + 1)! z→∞ 方法 4 z = ∞ が f (z) の正則点である場合は Res(z = ∞) = lim {z2 f´(z)} z→∞ z = ∞ における留数の大きな特徴としては、たとえ z = ∞ が f (z) の正則点であっても 0 以外の留数値を取 りうるという点です。有限値 z = a が f (z) の正則点 (或いは除去可能特異点) である場合は留数 = 0 となりま すが、z = ∞ の場合はそう簡単にはいかないようです。 ¨ だらだらと書き連ねましたが、実際の具体例を見てもらったほうが早いと思います。 ¥ §解答例 ¦ まず |z| → 大に対して収束する Laurent 展開を求めます。この場合、収束円内には 2 つの極 z = 2, z = −4 が 7 両者とも含まれるので、 1 2 , をそれぞれ Laurent 展開してやればよいので、 z−2 z+4 ∑ 2k 1 = z − 2 k=0 zk+1 ∞ 2 ∞ ∑ (−4)k 1 =2 z+4 zk+1 k=0 したがって求める展開式は両者を足し合わせ、z のべきで整理すれば f (z) = ∞ { ∑ } 1 2k + 2(−4)k k+1 z k=0 次に無限遠点 ∞ における留数を求めてみます。 まずは無限遠点における留数の定義式にしたがって計算してみます。つい先程求めた f (z) の展開式は |z| → 大として計算しましたが、この収束円の半径を具体的に |z| = R とすれば、 f (z) は R < |z| < ∞ で正則 (=特異点 を含まない) となります。よって、 { I 2πi (m = −1) 0 (m , −1) z dz = m |z|=r であることを考慮すれば、r > R として Res(z = ∞) = = = −1 2πi −1 2πi I |z|=r ∞ [{ ∑ f (z)dz = −1 2πi 2k + 2(−4)k I }I ∞ { ∑ |z|=r k=0 } 1 dz zk+1 ] dz (べき級数は項別積分可能) zk+1 1 |z|=r k=0 2k + 2(−4)k −1 0 (2 + 2(−4)0 ) × 2πi = −3 2πi 別の方法でも求めておきましょう。|z| → ∞ のとき、 f (z) = f (z) の正則点ということになります。(このことは z → 3z は発散しませんので、z = ∞ は (z − 2)(z + 4) 1 と置き換えた次式 ζ ( ) 1 3ζ f = ζ (1 − 2ζ)(1 + 4ζ) ( ) 1 において、ζ = 0 が f の正則点となっていることからも確認できます) ζ したがって、Res(z = ∞) は方法 4 を用いて { } d 3z −3z2 − 24 f´(z) = = dz (z − 2)(z + 4) (z − 2)2 (z + 4)2 { } −3 − 24 −3z4 − 24z2 z2 ∴ Res(z = ∞) = lim z2 f´(z) = lim = lim z→∞ z→∞ (z − 2)2 (z + 4)2 z→∞ (1 − 2 )2 (1 + 4 )2 z z = −3 8 ∫ 第 2 問 (a) |z| → ∞ のとき一様に |g(z)| → 0 であるならば、下に示す半円 C 上の複素積分 g(z)eiaz dz (a > 0) C が R → ∞ で 0 となることを証明せよ。 Im z C 0 -R R Re z この問は Jordan の補助定理の証明問題となっています。フーリエ型の複素積分をする際に、R → ∞ で経路 上積分が 0 になることを示すときによくお世話になる公式ですがお世話になりたいのなら公式の導出くらい 知っておけ、という意図があるのでしょうか… ¨ ¥ 解答例 § ¦ 半径 R の半円 C に沿って積分したいのですから、与式に z = Reiθ (0 ≤ θ ≤ π) を代入してやります。 ∫ ∫ π ∫ π g(z)eiaz dz = iθ iaReiθ iθ g(Re )e · Rie dθ |g(Reiθ )| Riei{aR(cos θ+i sin θ)+θ} dθ ≤ C 0 ∫ 0π ∫ π g(Reiθ ) Re−aR sin θ dθ iθ −aR sin θ i(aR cos θ+θ) g(Re ) Rie dθ = = e 0 0 ここで |g(Reiθ )| の C 上における上限を M とおけば、上の式に続けて ∫ π 2 Re−aR sin θ dθ = 2M Re−aR sin θ dθ 0 0 ( ) ∫ π 2 2 π 1 ≤ 2M Re−aR π θ dθ 0 ≤ θ ≤ において sin θ > π θより 2 0 2 ∞ ∫ ∞ 2 2 1 ≤ 2M Re−aR π θ dθ = 2MR e−aR π θ −aR π2 0 0 Mπ = (a > 0 より) a ∫ ≤M π C の半径 R → ∞ を考えると、|z| → ∞ となりますが、このとき題意より一様に |g(z)| → 0 となりますから、 当然 lim M = 0 となります。従って R→∞ ∫ Mπ iaz lim g(z)e dz ≤ lim =0 R→∞ a R→∞ C ∫ ∴ lim g(z)eiaz dz = 0 R→∞ C 以上で証明は終わりです。なおこの問では半円 C の円周上での積分値が 0 に収束することを証明していま すが、より一般的に Jordan の補助定理は以下のように示されます。覚えておいて損はないと思います。 9 ¨ ¥ Jordan の補助定理 § ¦ 図のような半径 r の扇形において、∠BOD = θ1 , ∠BOA = θ2 とする (ただし 0 ≤ θ1 , θ2 ≤ π)。 このとき ∠BOA 内で定義された関数 f (z) が lim f (z) = 0 を満たすならば、円弧 C 上での積分は |z|→∞ ∫ Im z f (z)eiaz dz = 0 (a > 0) lim r→∞ C C θ_2 r θ_1 0 Re z (b)∫以下の積分を複素積分を用いて求めよ。積分路など計算の詳細も示せ。 ∫ ∞ itx 2π dθ 1 e (1) (−1 < a < 1) (2) dx (t は正または負の実数) 2 2πi −∞ x − i0 ∫ ∞ ∫0 ∞ 1 − 2a cos θ + a dx dx (4) (Cauchy の主値を求めよ) (3) 2 2 2 −∞ x − ix −∞ (1 + x ) 複素積分を用いた実積分の計算問題です。ほぼ確実に試験に出題されるのではないでしょうか。ここをきち んと押さえておけば単位はくると思います。 ∫ (1) 2π R(sin θ, cos θ)dθ 型の積分です。このタイプの積分は経路上の積分値評価も特に必要なく、完全にパ 0 ターン化して解くことができるので、もし試験に出題されれば得点源になるかと思います。 babababababababababababababababababababab ² ∫ 2π 0 ± ¯ R(cos θ, sin θ)dθ 型 ° ∫ 2π I 1 1 1 1 1 cos θ = (z + ), sin θ = (z − ), dθ = dz, → と置き換え、z に関する複素積分に変 2 z 2i z iz 0 |z|=1 換する。 1 k 1 1 1 (z + k ), sin kθ = (zk − k ) と置き換えればよい。 2 2i z z その後、単位円 |z| = 1 の内部にある特異点に関して留数定理を適用する。 一般には cos kθ = ¨ それでは問題の解答です。 ¥ 解答例 § ¦ z = eiθ とおけば cos θ = ( ) 1 1 z+ , 2 z dθ = 10 1 dz, iz ∫ 0 2π I → |z|=1 となるのでこれらを与式に代入し ∫ 0 2π dθ = 1 − 2a cos θ + a2 I 1 − 2a · I |z|=1 =− 1 ai |z|=1 1 iz dz ( ) 1 1 2 z+ z + a2 = I 1 i |z|=1 −az2 dz + (a2 + 1)z − a dz ( ) (z − a) z − a1 1 1 ( ) としたとき、f (z) の特異点は z = a, の 2 点であり、共に 1 位の極となります。 1 a (z − a) z − a このうち |z| < 1 に含まれるのは z = a となりますから (−1 < a < 1 より)、この点における留数を求めてやると ここで f (z) = Res(z = a) = lim(z − a) z→a ∫ 2π ∴ 0 1 a ( )= 2 1 a −1 (z − a) z − a dθ 1 a 2π = − · 2πi · 2 = ai 1 − 2a cos θ + a2 a − 1 1 − a2 (2) 解答に入る前に一言。この問では分母が x − i0 となっていますが、なぜわざわざ i0 と表記しているのか ∫ ∞ itx 1 e 私にはよく分かりませんでした。そのため以下ではこの問を dx として解いています。あらかじ 2πi −∞ x めご了承ください。 この問はフーリエ積分型の積分問題になっています。そのため経路積分の評価においては、先程第 2 問の (a) で自ら導いた Jordan の補助定理の助けを借りると比較的楽に解けるのではないでしょうか。 このタイプの積分計算で最も注意しなければならないのは、指数関数の型に乗っている係数 (この問いの場 合は t) の正負によって積分経路を変えなければならない点です。仮に同じ経路で積分しようとすると、t < 0 の場合において R → ∞ における円周上の積分値が 0 に収束することを示せなくなってしまいます。 Im z C_R C_r ¨ 解答例 § -R ¥ C_1 -r C_1' ¦I 複素積分 C C_2 0 r R Re z C_2' C_r' eitz dz について考えます。 z C_R' (a)t > 0 のとき 積分経路として図のような上半面を通るような半円を考えることにします。まず経路 CR 上の積分について考 えると Jordan の補助定理から ∫ ∫ f (z)dz = CR CR eitz dz −−−−→ 0 R→∞ z となります。 また、経路 C1 , C2 の積分に関しては ∫ ∫ f (z)dz + C1 ∫ f (z)dz = C2 −r −R eitx dx + x となります。 11 ∫ r R eitx R→∞ dx −−−−→ r→0 x ∫ ∞ −∞ eitx dx x 最後に経路 Cr 上の積分については ∫ ∫ f (z)dz = π Cr 0 iθ eitre · rieiθ dθ = −i reiθ ∫ π ∫ I IC f (z)dz = 0 となりますから、結局求める C において R → ∞, r → 0 の極限をとることにより + + + Cr CR C2 C1 ∫ ∫ ∫ ∫ C dθ = −πi 0 I については f (z) が C 内に特異点を持たないことから = 積分値は r→0 0 と計算できます。 周回積分 π iθ eitre dθ −−−→ −i ∫ ∞ eitx dx = πi x −∞ と求めることができます。 (b)t < 0 のとき I この場合は積分経路を図のように下半面を通るような半円としてとります。周回積分 含まないので 0、さらに Ć1 , Ć2 , Ćr に関しても先程と同じように求めることができ、 ∫ ∫ Ć1 ∫ R→∞ f (z)dz + f (z)dz −−−−→ − r→0 Ć2 ∫ f (z)dz ∫ = Ćr ∞ eitx dx x −∞ π itreiθ 2π e · rieiθ dθ −−−→ −i r→0 reiθ ∫ π 2π は先程同様特異点を Ć dθ = −πi 問題は ĆR 上における積分評価ですが、簡単な式変形を行うことで Jordan の補助定理を適用できる形に式を もっていくことができます。 ∫ ∫ f (z)dz = ĆR ∫ 2π π π = ∫ 0 π = 0 従って求める積分値は iθ eitRe · Rieiθ dθ Reiθ (θ = π + ϕ とおく) ∫ π i(−t)Reiϕ i(π+ϕ) e eitRe i(π+ϕ) · Rie dϕ = · (−Rieiϕ )dϕ (t´ = −t > 0 とおく) i(π+ϕ) −Reiϕ Re 0 ∫ iϕ eit´Re eit´z iϕ · Rie dϕ = dz −−−−→ 0 (Jordan の補助定理より) R→∞ Reiϕ CR z ∫ ∞ −∞ eitx dx = −πi x (a),(b) より結果をまとめると最終的に求める積分値は t の正負によって場合分けされ、 1 1 ∫ ∞ itx · πi = (t > 0) 1 e 2πi 2 dx = 1 1 2πi −∞ x · (−πi) = − (t < 0) 2πi 2 となります。 12 ∫ (3) この問は単純な ∞ −∞ f (x)dx 型の積分問題です。このタイプでは Jordan の補助定理を使っての積分値評 価をすることはできず、代わりに三角不等式 (||z1 | − |z2 || ≤ |z1 ± z2 | ≤ |z1 | + |z2 |) を用いての評価を行うことにな るかと思います。 Im z ¨ C_R ¥ §解答例 ¦ C_1 1 0 R Re z -R f (z) = として、この関数を図の積分路に沿って積分します。 (1 + z2 )2 まず、半円の円周 CR に沿った積分に対する評価をします。(なお、半径 R は十分大きいものとしています) ∫ ∫ ∫ π dz 1 1 |dz| = ≤ Rdθ 2 2 2 2 2 2 CR (1 + z ) CR (1 + z ) 0 |(1 + z ) | ここで三角不等式より |(z2 + 1)2 | = |z4 + 2z2 + 1| ≥ |z4 | − |2z2 + 1| ≥ |z4 | − (|2z2 | + 1) = R4 − 2R2 − 1(R は十分大きいものとしたため) となるので、 ∫ π 1 Rdθ ≤ |(1 + z2 )2 | 0 ∫ π 0 R πR dθ = −−−−→ 0 2 4 − 2R − 1 R − 2R2 − 1 R→∞ ∫ dz −−−−→ 0 ∴ (1 + z2 )2 R→∞ CR R4 次に C1 に沿った積分を考えます。実軸上での積分ですから z = x (−R ≤ x ≤ R) と置き換えて ∫ C1 dz = (1 + z2 )2 ∫ R −R dx −−−−→ (1 + x2 )2 R→∞ ∫ ∞ −∞ dx (1 + x2 )2 さらに C に沿った周回積分について考えます。留数定理を使えばすぐ求めることができますよね。ただし f (z) の特異点 z = ±i が 2 位の極 であることには注意が必要です。 さて、特異点 z = ±i のうち C 内に含まれるのは z = i ですからこの特異点における留数を求めれば { } { } d 1 d 1 1 lim (z − i)2 · = lim z→i dz (z + i)2 (2 − 1)! z→i dz (1 + z2 )2 −2(z + i) 1 = lim = z→i (z + i)4 4i I π 1 dz = ∴ = 2πi · 2 2 4i 2 C (1 + z ) Res(z = i) = I ∫ = 以上より C ∫ + CR において両辺の極限 R → ∞ をとることにより C1 ∫ ∞ −∞ π dx = (1 + x2 )2 2 13 (4) この積分の被積分関数は実軸上に特異点 (x = 0) を有しているため、Cauchy の主値を計算することにな I ります。このタイプの積分では積分経路上に特異点が存在してしまうのはまずいので ( が留数定理を用い C て計算できなくなるため)、特異点周りに微小半径の円をとり、その円周上に沿う形で特異点を避けるような 積分経路をつくる必要があります。 ¨ ¥ Im z §解答例 ¦ C_R 1 f (z) = 2 を図の積分経路 C に沿って積分します。 C_r z − iz C_1 まず、CR に沿った積分に対する評価を行います。 C_2 -r 0 r R Re z -R ∫ ∫ π 1 1 2 Rdθ dz ≤ 2 0 z − iz CR z − iz となりますが、三角方程式より |z2 − iz| ≥ |z2 | − |iz| = R2 − R(ここでも R は十分大きいものとして扱っていま す) が導けますので上の式に続けて ∫ π ≤ 0 R dθ −R z2 1 dz −−−−→ 0 R→∞ − iz ∫ ∴ CR πR −−−−→ 0 − R R→∞ R2 = R2 次に Cr に沿った積分を計算します。ここで注意しなければならないのは CR での積分とは異なり、Cr 上で の積分は r → 0 の極限において有限の値をとるという点です (より正確に言うと f (z) の z = 0 における留数の − 2πi 倍の値)。 2 なお Cr での積分の計算ですが、 ∫ ∫ 0 f (z)dz = Cr π 1 · rieiθ dθ = r2 e2iθ − ireiθ ∫ 0 π ∫ i reiθ −i dθ −−−→ r→0 0 π i dθ = π −i と計算すると確かに楽なのですが、極限と積分の順序を入れ替えてもよいのか (多分いいんだとは思うんです けど) 私自身よく分からないことや、上の計算法以外の方法を提示するという意味でも、以下では Laurent 展 開を用いた計算を行っています (まぁ p12 では思いっきり上の方法で計算してますけどね)。 では Cr 上での積分計算です。r が十分小さいものである (具体的には r < |i|) とすると、Cr 上での f (z) の Laurent 展開は以下のようになります。 ∞ ∞ −i i 1 i ∑ zk i ∑ 1 k = = − i − + f (z) = 2 = + z z k=0 ik z − iz z z − i z ik+1 k=0 14 従って Cr 上での積分は r → 0 の極限において ∫ lim r→0 Cr ∫ ∞ i ∑ 1 k + f (z)dz = lim z dz k r→0 C z i r k=0 } ∫ 0 ∫ ∞ { ∑ 1 1 0 iθ k iθ iθ (re ) · rie dθ (べき級数は項別積分可能) = lim i · rie dθ + lim iθ r→0 r→0 ik π π re k=0 ∫ ∞ ∑ rk+1 0 (k+1)iθ = lim (i(−πi)) + lim e dθ r→0 r→0 ik−1 π k=0 = π + lim r→0 =π ∞ ∑ rk+1 ik−1 k=0 · { } 1 1 − e(k+1)iπ (k + 1)i 次に C1 , C2 での積分を計算します。といっても実際に計算するわけではありませんが。 ∫ ∫ f (z)dz + C1 ∫ f (z)dz = C2 −r −R dx + x2 − ix ∫ R r dx R→∞ −−−−→ x2 − ix r→0 ∫ ∞ −∞ dx x2 − ix I を留数定理を用いて計算します。C に含まれる f (z) の特異点は z = i であり、これは 1 位 最後に周回積分 C の極ですから留数は I ∫ = 従って C CR I 1 1 1 Res(z = i) = lim(z − i) 2 = ∴ f (z)dz = 2πi · = 2π z→i i i z − iz C ∫ ∫ ∫ + + + ですから、両辺の R → ∞, r → 0 での極限をとることにより Cr C1 C2 ∫ 2π = π + ∞ −∞ ∫ dx 2 x − ix ∴ 15 ∞ −∞ x2 dx =π − ix 2007 年度 数学 2D・2G 期末試験 続けて 2007 年度の過去問の解答例に移ります。とはいっても基本は 2008 年度と同じですから詳細な解説 は省きます。 第1問 f (z) = z3 (z − 1)(z + 2) について以下の問いに答えよ。 (a) [ f (−1)]1/4 の値を全て求めよ。(必要であれば,(1.19)4 ≈ 2 を用いよ) (b) Cauchy-Riemann の関係式を用いて, f (z) が原点 (z = 0) とその近傍で正則であることを示せ。 (c) f (z) の全ての特異点を求めよ。さらに特異点が極である場合にはそのそれぞれの位数と留数を求め よ。 (d) (c) で求めた特異点を原点から近い順に z1 , z2 , … とするとき, 領域 |z| < |z1 | で収束する Taylor 展開を 求めよ。 (e) 領域 |z1 | < |z| < |z2 | で収束する Laurent 展開を求めよ。 (a) 複素領域においては、複素数 z の n 乗根は n 個存在します。この問いの場合には 4 乗根となりますので、 求める値は全部で 4 個存在することになります。その点に注意さえ払えばまず大丈夫でしょう。 ¨ ¥ 解答例 § ¦ 1 1 1 f (−1) = ですから、一般に複素数 z を z = reiθ とした場合に f (−1) = = ei·0 と表わすことができます。 2 2 2 ( ) 14 ·4 ( ) 14 0+2kπ 1 1 1 このとき k を整数として ei 4 は全て 4 乗すれば ei·2kπ = となります。これらの値のうち異な 2 2 2 2kπ る値となるのは k = 0, 1, 2, 3 における値のみであり、各々場合において ei 4 の値は 1, i, −1, i となります。 1 一方題意より (1.19)4 ≈ 2 が与えられていますので、2 4 ≈ 1.19 となります。 以上より求める値は 1 [ f (−1)] 4 ≈ ± 1 i , ± 1.19 1.19 (b) この問いは Cauchy-Riemann の関係式に従ってひたすら計算していくだけです。Cauchy-Riemann の関 係式を用いるために f (z) を実部と虚部に分解する必要があるのですが、工夫次第で計算が楽になったりする んですかね。私の力量では計算の効率まで考える余裕などありませんので、ただひたすら計算しています。 16 ¨ ¥ 解答例 § ¦ z = x + iy (x, y ∈ R) とすれば、これを f (z) に代入することにより z3 3z − 2 1 1 8 1 =z−1+ =z−1+ + (z − 1)(z + 2) (z − 1)(z + 2) 3z−1 3z+2 1 8 (x + 2) − iy 1 8 1 1 (x − 1) − iy = x + iy − 1 + + + = x + iy − 1 + 3 (x − 1) + iy 3 (x + 2) + iy 3 (x − 1)2 + y2 3 (x + 2)2 + y2 { } { } x−1 x+2 y y 1 8 1 8 = x−1+ + + i y − − 3 (x − 1)2 + y2 3 (x + 2)2 + y2 3 (x − 1)2 + y2 3 (x + 2)2 + y2 = u(x, y) + iv(x, y) f (z) = ここで求めた u(x, y), v(x, y) に対して ∂u ∂u ∂v ∂v , , , を計算すれば ∂x ∂y ∂x ∂y ∂u 1 −(x − 1)2 + y2 8 −(x + 2)2 + y2 =1+ + ∂x 3 {(x − 1)2 + y2 }2 3 {(x + 2)2 + y2 }2 ∂u 1 −2y(x − 1) 8 −2y(x + 2) = + 2 2 2 ∂y 3 {(x − 1) + y } 3 {(x + 2)2 + y2 }2 ∂v 1 −2y(x − 1) 8 −2y(x + 2) =− − 2 2 2 ∂x 3 {(x − 1) + y } 3 {(x + 2)2 + y2 }2 ∂v 1 −(x − 1)2 + y2 8 −(x + 2)2 + y2 =1+ + ∂y 3 {(x − 1)2 + y2 }2 3 {(x + 2)2 + y2 }2 ∴ ∂u ∂v = , ∂x ∂y ∂u ∂v =− ∂y ∂x 従って f (z) は原点、及び ((x − 1)2 + y2 , 0, (x + 2)2 + y2 , 0 を満たす) 原点近傍において正則となります。 (c) この問いのポイントは f (z) の分子の次数が分母の次数よりも大きいので、z = ∞ も極になるという点で しょうか。ですが z = ∞ での留数計算は今学期の講義では特に取り上げていなかった気がしますので、今度 の期末試験に関連した問題が出題される可能性は低いと思われます。ただ知っていて損はないかと思いますの で、これを機に勉強しておきましょう。 ¨ ¥ §解答例 ¦ f (z) の特異点は z = 1, −2, ∞ です。z = 1, −2 は共に 1 位の極となりますから、留数を計算すると Res(z = 1) = lim(z − 1) z→1 1 z3 = , (z − 1)(z + 2) 3 Res(z = −2) = lim (z + 2) z→−2 z3 8 = (z − 1)(z + 2) 3 次に特異点 z = ∞ について考えます。まず位数ですが、単純に分子の次数が分母よりも 1 次大きいので 1 ( ) 位の極となります。(或いは z = 1 1 を f (z) に代入した式を考え、 f の特異点 ζ = 0 の位数を考えることに ζ ζ よって求めることもできます。) さらに留数を計算するわけですが、ここでも 2 つの計算法を提示しておきます。前者は z = ∞ が m 位の極 (−1)m lim {zm+2 f (m+1) (z)} を利用し、後者では f (z) の Laurent 展開を (m + 1)! z→∞ 利用して留数を求めています。個人的には前者の場合、1 位の極であった場合でも f (z) の 2 階微分を計算しな であるときに使える公式 Res(z = ∞) = ければならず、ケアレスミスが懸念されるため、後者の方法で計算することをお勧めします。 17 ¨ ¥ 解法 1 § ¦ (−1)m z = ∞ は 1 位の極であるから、公式 Res(z = ∞) = lim {zm+2 f (m+1) (z)} にしたがって計算をすると、 (m + 1)! z→∞ Res(z = ∞) = (−1) lim {z3 f (2) (z)} 2! z→∞ =…=− 6 − 12z + 24 1 6z3 − 12z2 + 24z 1 z2 lim z3 · = − lim ( ) ( 3 3 3 2 z→∞ 2 z→∞ 1 − 1 1 + 2 )3 (z − 1) (z + 2) z z = −3 ¨ ¥ 解法 2 § f (z) = ¦ z3 1 1 8 1 =z−1+ + と部分分数展開します。 (z − 1)(z + 2) 3z−1 3z+2 ここで R > 2 とすれば f (z) は R < |z| < ∞ において正則となるので、r > R として |z| = r 上で収束する Laurent 展開を考えると 1∑ 1 8 ∑ (−2)k + 3 k=0 zk+1 3 k=0 zk+1 ∞ f (z) = z − 1 + ∞ となります。 よって z = ∞ における留数の定義式 Res(z = ∞) = 1 Res(z = ∞) = − 2πi −1 2πi I 1 f (z)dz = − 2πi |z|=r ( ) 1 1 8 =− · 2πi + · 2πi 2πi 3 3 = −3 I |z|=r f (z)dz に従って計算すれば ∞ ∞ 1∑ 1 8 ∑ (−2)k z−1+ + dz k+1 k+1 3 k=0 z 3 k=0 z |z|=r I なお上の 1 行目から 2 行目の計算において、 1 正則関数 (ここでは g(z) = z − 1) の周回積分は 0 O 2 複素周回積分 O { I z dz = m |z|=r 2πi (m = −1) 0 (m , −1) を利用しています。 ¨ (d) ¥ §解答例 ¦ 1 1 8 1 f (z) = z − 1 + + と部分分数展開できます。(c) より z1 = 1 であるから、|z| < |z1 | = 1 で収束する 3z−1 3z+2 Taylor 展開を求めることになります。 18 上の式において第 3 項、第 4 項はそれぞれ 1 1 1∑ k =− z 3z−1 3 k=0 ∞ 8 1 8∑ 1 =− zk 3z+2 3 k=0 (−2)k+1 ∞ と展開できます。第 1 項、第 2 項に関しては既に展開式となっています。 したがって z のべきで式を整理すれば、求める展開式は f (z) = z − 1 − } ∞ ∞ ∞ { ∑ 1∑ k 8∑ 1 1 8 k z − z = − − zk k+1 3 k=0 3 k=0 (−2)k+1 3 3(−2) k=3 (上の式で z0 , z1 , z2 の項は全て 0 となります。) ¨ (e) ¥ 解答例 § ¦ (c) より z1 = 1, z2 = −2 であるから 1 < |z| < 2 で収束する Laurent 展開を求めることになります。故に (d) で 求めた f (z) の部分分数展開した項のうち、第 3 項は Laurent 展開、他は Taylor 展開すれば求める展開式とな ります。 第 3 項の Laurent 展開は 1 1 1∑ 1 = 3 z − 1 3 k=0 zk+1 ∞ となりますから、求める展開式は 1∑ 1 8∑ 1 − zk k+1 3 k=0 z 3 k=0 (−2)k+1 ∞ f (z) = z − 1 + ∞ 1∑ 1 1 8∑ 1 2 = + zk (1 + z + z ) − 3 k=0 zk+1 3 3 k=3 (−2)k+1 ∞ ∞ 第2問 (a)2008 年度の問題と同じであるため省略 (b) 以下の積分を複素積分を用いて求めよ。積分路など計算の詳細も示せ。 ∫ 2π dθ ∫ ∞ +ibx dx (a > 0) −∞ 2 − cos θ (3), (4) は 2008 年度の問題と同じであるため省略 √ (1) (2) e−ax 2 0 (b) ∫ (1) この積分は 2π R(sin θ, cos θ)dθ 型の積分ですからパターン化して解くことができます。詳細は p10 を 0 ご参照ください。 19 ¨ ¥ 解答例 § ∫ 2π → 0 ¦ I |z|=1 , cos θ → ( ) 1 1 1 z+ , dθ → dz と置き換えを行えば 2 z iz ∫ 2π 0 I dθ = √ 2 − cos θ |z|=1 2 i √ I 2 1 iz dz ( − 12 z 2 )= 1 i +z I |z|=1 dz √ 2 2 − (z2 + 1) dz √ √ |z|=1 {z − ( 2 + 1)}{z − ( 2 − 1)} √ 被積分関数の特異点のうち、|z| < 1 に含まれる特異点は z = 2 − 1 であり、これは 1 位の極ですから =− Res(z = √ √ 2 − 1) = lim {z − ( 2 − 1)} √ ∫ 2π 0 √ {z − ( 2 + 1)}{z − ( 2 − 1)} ( ) dθ 1 2 = − · 2πi · − = 2π √ i 2 2 − cos θ z→ 2−1 ∴ 1 √ =− ∫ (2) ガウス型積分の計算問題です。数学 2 の講義でも出てきましたよね。この問いは いう積分公式を知っていれば、直感的に ∫ ∞ −∞ e−ax 2 +ibx ∫ dx = ∞ { b 2 −a ( x−i 2a )+ e −∞ √ 2 − b4a =e b2 4a2 } b2 dx = e− 4a ∫ ∞ −∞ 1 2 ∞ −∞ √ e−ax dx = 2 π と a 2 e−a( x−i 2a ) dx b π a と解くことができそうですが (実際答は合っていますし、このような計算がガウス積分では許されているそう です)、この式中ではある種矛盾した式変形を行っています。上では明記しませんでしたが、1 行目から 2 行目 b という変数変換を行っており、左辺が実数であるのに対し、右辺は虚数と 2a なっています (実数領域で計算しているのに、虚数軸方向への平行移動をしています)。果たしてこんなことを の積分値を導くために t = x − i してもいいのかどうか私にはわかりませんが、複素積分を利用することにより、矛盾なく積分値を求めること ができます。 ¨ ¥ 解答例 § ¦ まず与式を展開していくと ∫ ∞ −∞ e−ax 2 +ibx ∫ dx = = ∫ となります ( ∞ −∞ ∞ ∫−∞ ∞ −∞ e−ax (cos bx + i sin bx)dx = 2 −ax2 e ∫ ∞ −∞ e−ax cos bxdx + i ∫ ∞ 2 −∞ e−ax sin bxdx 2 cos bxdx Im z (奇関数) = 0 を利用しています)。 b/2a C_4 -L C_3 C_2 0 C_1 L ここで f (z) = e−az として、 f (z) を図の積分経路に沿って積分することを考えます。 2 20 Re z まず周回積分についてですが、 f (z) = e−az が特異点を持ちませんので 2 I e−az dz = 0 2 C となります。 次に C1 に沿った積分を考えると ∫ e−az dz = ∫ L 2 e−ax dx −−−−→ L→∞ −L C1 ∫ 2 ∞ e−ax dx 2 −∞ となります。 同様に C3 に沿った積分は ∫ e−az dz = ∫ C3 ( −a − −L 2 e L b2 ∫ = −e 4a b2 4a2 b +2xi 2a +x2 ∫ ) −L dx = b2 e 4a e−ax 2 −ibx dx L L −L b2 e−ax (cos bx − i sin bx)dx −−−−→ −e 4a 2 ∫ L→∞ ∞ −∞ e−ax cos bxdx (∫ 2 ∞ −∞ ) (奇関数) = 0 次に C2 に沿った積分に対する評価を行います。z = L + it とすれば ∫ ∫ b 2a −a(L2 +2iLt−t2 e idt f (z)dz = 0 C2 ∫ b ∫ 2a at2 −2iaLt −aL2 −aL2 ≤e e dt = e 0 ∫ ∴ b 2a 2 eat dt −−−−→ 0 L→∞ 0 f (z)dz −−−−→ 0 L→∞ C2 同様に C4 に沿った積分も評価でき、z = −L + it とおけば ∫ ∫ 0 −a(L2 −2iLt−t2 f (z)dz = e idt b C4 2a ∫ 0 ∫ at2 +2iaLt 2 −aL2 ≤ e−aL e dt = e b 2a ∫ ∴ I ∫ C ∫ 0= ∫ = C1 ∞ −∞ ∫ + b2 2 ∫ ∴ ∞ ∫ L→∞ L→∞ であるから、両辺の L → ∞ の極限をとることにより C4 ∞ −∞ −ax2 +ibx e −∞ + C3 e−ax dx − e 4a 2 eat dt −−−−→ 0 ∫ + C2 b 2a f (z)dz −−−−→ 0 C4 したがって以上より 0 e−ax cos bxdx = 2 ∫ dx = ∞ −ax2 e −∞ 21 √ b2 π − e 4a ∫ ∞ −∞ 2 − b4a cos bxdx = e e−ax cos bxdx √ 2 π a babababababababababababababababababababab 以上で複素関数論のうち 4 学期の電気電子数学演習と被っている範囲の説明をしたことにしておき ます。以下では数学 2D の講義で新たに学習した解析接続、ガンマ関数・ベータ関数、フーリエ級数 展開・フーリエ変換について説明していきます。といっても基本的なスタイルはこれまでのシケプ リ同様、基本的な定義や定理を簡単な説明を添えて扱うに留め、具体的な証明は講義ノートに譲る こととします。 また、講義の最後で学習したラプラス変換については既に電電数学演習で扱っていますので、この シケプリでは説明していません。詳細は講義ノートを参照していただくか、或いは前回のシケプリ をご覧になってください。 解析接続 一致の定理 2 つの複素関数 f1 (z) と f2 (z) は複素平面上のある領域 D において正則であるとする。 このとき D の内部にある領域を D0 とし、この領域 D0 において f1 (z) = f2 (z) が成り立つならば、領域 D においても f1 (z) = f2 (z) である。 • この定理を別の視点から解釈すると「ある領域 D で正則であり、かつ D 内の小領域 D0 において、与 えられた関数 f (z) に等しくなるような関数は、(存在するとすれば) ただ一つに限られる。」ということ になります。 • 一致の定理という大げさな名前が付いていますが、実は私達はこの定理を学習する前から、無意識のう ちにこの定理の恩恵を受けています。例えば次の例をご覧ください。 ∞ ∑ (−1)k 2k cos x = x 2k! k=0 ∞ ∑ (−1)k 2k z cos z = 2k! k=0 第 1 式は実関数 cos x の展開式であり、第 2 式は実関数 cos x を複素領域に拡張した複素関数 cos z の展 開式です。cos z を展開する際に私たちは特に証明をすることなく、何食わぬ顔で実関数 cos x の展開を そのまま複素関数 cos z に当てはめていますが、このようなことができるのは一致の定理が陰でその力 を発揮している為です。 というのも cos z は複素平面上 (領域 D) において正則な関数であり、実軸上 (小領域 D0 ) において は cos z = cos x = ∞ ∑ (−1)k k=0 2k! x2k と一致しますので、この展開式をそのまま複素平面全体 (領域 D) に 拡張できることが一致の定理により保証されるためです。この他にも実領域で成立していた公式 cos2 x + sin2 x = 1 が複素領域においても cos2 z + sin2 z = 1 として適用できるのも一致の定理のおかげ 22 です。 解析接続 小領域 D0 において複素関数 f0 (z) が定義されているとする。このとき D0 を含む、より広い領域 D にお いて正則であり、かつ D0 において f (z) = f0 (z) を満たす関数 f (z) は (存在するとすれば) 一致の定理よりただ一つしか存在し得ない。 このときより広い領域 D でただ一つに確定する正則関数 f (z) を、領域 D への f0 (z) の解析接続という。 (或いはこのようなプロセスそのものを解析接続という) • 要点だけをかいつまんだ言い方をすれば、ある局所的な領域でしか定義されていない関数の定義域を広 げていくプロセスのことを解析接続といいます。例えば先程の cos 関数の例を用いれば、実軸上という 局所的な領域でしか定義されていない関数 ( f (z)) = f (x) = cos x を、一致の定理を利用して g(z) = cos z のように定義域を複素平面全体に広げましたが、まさにこのプロセスが解析接続そのものとなります。 ( f (z) は g(z) に解析接続されたといいます。) • 解析接続の他の例はガンマ関数の項で述べることとし、ここでは割愛させてもらいます。 Γ 関数・ B 関数 Γ 関数の定義 次式で定義される複素関数 ∫ Γ(z) = ∞ e−t tz−1 dt (Re z > 0) 0 を Γ 関数と呼ぶ。 この複素関数は複素平面全体に解析接続され、z = 0, −1, −2, … において一位の極をもつ。 また、Γ 関数は零点を持たない。 Γ 関数の諸性質 ¨ ¥ §特別な値 ¦ Γ(1) = 1, Γ ( ) √ 1 = π 2 ¨ ¥ (狭義の) 階乗 z が正の整数 n であるとき § ¦ Γ(n + 1) = n · (n − 1) · (n − 2)… · 1 ¨ 漸化式 § ¥ ¦ Γ(z + 1) = zΓ(z) 23 ¨ ¥ Γ 関数の反射公式 § ¦ ¨ ¥ 漸近近似 § Γ(z)Γ(1 − z) = −zΓ(z)Γ(−z) = ¦ Γ(z + 1) ' √ π sin πz 2πzz+ 2 e−z 1 特に z が正の整数 n に等しいとき Γ(n + 1) = n! ' √ 2πnnn e−n となるが、特にこれを Stirling の公式と呼ぶ。 • ガンマ関数は階乗の概念を正の整数だけでなく、正の実数や負の数まで含めた複素平面全体に拡張した 関数となっています。Γ(n) ではなく Γ(n + 1) が n! に対応している点はちょっと注意が必要です。 • Γ 関数そのものは Re z > 0 で定義されている関数ですが、Γ 関数の漸化式と先程の解析接続を用いるこ とによって複素平面全体に拡張することができます。漸化式を変形してやると Γ(z + 1) = Γ(z) z Γ(z + 1) とおくことにすれば、この関数は Re (z + 1) > 0、すな z わち Re z > −1 で定義され、z = 0 に特異点をもつものとして解釈できます。一方右辺は Re z > 0 で となりますが、このとき左辺を f (z) = 定義された関数ですが、この両者が (Re z > 0 の領域で) 一致するわけですから、一致の定理より Γ(z) はより定義域の広い f (z) に解析接続されることになります。以下この漸化式を繰り返し用いることに よって複素平面全体に解析接続できるというわけです。 • 複素平面全体に拡張された Γ 関数は z = 0, −1, −2, … で 1 位の極を持つわけですが、先程の漸化式を利 用することによってこれら極における留数を実際に求めることができます。 例えば z = −1 における留数を求めてやりたいのであれば、まず Γ(z) を特異点 z = −1 をもつ領域まで 解析接続してやります。漸化式より Γ(z) = Γ(z + 1) Γ(z + 2) = z z(z + 1) Γ(z + 2) Γ(1) = = −1 となります。一般に z = −n z=−1 z(z + 1) −1 における留数は、先程と同様に漸化式を用いて z = −n を特異点にもつ領域まで解析接続することによ (−1)n と求めることができます。 り、Res(z = −n) = n! 1 • Γ 関数の反射公式はイマイチその使いどころが分かりません。が、例えば z = とおけば 2 ( ) ( ) 1 1 π Γ Γ 1− = =π 2 2 sin π2 となるので、求める留数は Res(z = −1) = lim (z + 1) となり、Γ ( ) √ 1 = π が簡単に導けます。だから何?って感じですが。 2 24 • Stirling の公式は統計学等で利用することが多い式ですが、その導出はめんどうなのでここでは割愛し ます。詳しい導出については講義ノートをご参照ください。 B 関数 ¥ ¨ B 関数の定義 § ¦ ∫ 1 B(p, q) = t p−1 (1 − t)q−1 dt (Re p > 0, Re q > 0) 0 を B 関数と定義する。 B 関数は解析接続により複素平面全体に拡張される。 ¥ ¨ B 関数の様々な積分表示 § ¦ ∫ B(p, q) = 2 ∫ B(p, q) = 0 0 ∞ π 2 sin2p−1 θ cos2q−1 dθ s p−1 ds (1 + s) p+q ¨ ¥ B 関数と Γ 関数の関係 § ¦ B(p, q) = Γ(p)Γ(q) Γ(p + q) • Γ 関数と合わせて階乗の積を表わすのがこの B 関数です。正直な話 B 関数 (と Γ 関数) に関しては深く 掘り下げて説明する気はありません。最低限関数の定義を押さえておけばいいのではないでしょうか。 試験に出題されるとしても留数定理を用いた複素積分と絡む可能性が高いと予想されますので、 B 関 数、或いは Γ 関数そのものの性質が問題になることはないかと思います。(出題されたらごめんなさい) フーリエ解析 フーリエ解析に関しては過去の試験を見ても毎年出題されており、恐らくその傾向は教官が変わっても変化し ないものと予想されます。フーリエ級数展開やフーリエ変換がそれ単体の問題として出題されていたほか、偏 微分方程式への応用問題としても出題されています。 フーリエ級数展開 周期 2L の周期関数 f (x) において、 f (x), (−L ≤ x ≤ L) に対して定義されるフーリエ係数 an , bn を用い て次式のように表わされる三角級数をフーリエ級数と呼ぶ。 a0 ∑ ( nπx nπx ) + an cos + bn sin 2 n=1 L L ∞ f (x) = ただし、an = する。 1 L ∫ L f (x) cos −L 1 nπx dx (n = 0, 1, 2, …), bn = L L 25 ∫ L f (x) sin −L nπx dx (n = 1, 2, …) と定義 L 指数関数型のフーリエ級数 周期 2L の周期関数 f (x) は、もとの区間を −L ≤ x ≤ L として次式のように指数関数で展開できる。 ∞ ∑ f (x) = cn exp ( inπx ) n=−∞ ただし、cn = 1 2L ∫ L −L L ( inπx ) f (x) exp − dx, (n = 0, ±1, ±2, …) と定義する。 L フーリエ変換の定義 関数 f (x) に対しフーリエ変換を次式で定義する。 ∫ F [ f (x)] = F(k) = ∞ f (x)e−ikx dx −∞ また、F(k) は次式で定義されるフーリエ逆変換により、もとの関数 f (x) に復元される。 F −1 [F(k)] = f (x) = 1 2π ∫ ∞ −∞ F(k)eikx dk フーリエ変換の性質 フーリエ変換の定義式は上記したものとする。 ¨ ¥ 線形性 § ¦ ¨ ¥ 定数倍 § F [α f (x) + βg(x)] = αF(k) + βG(k) ¦ ( ) 1 k F [ f (αx)] = F |α| α ¨ ¥ x 方向の並進 § ¦ ¨ F [ f (x − α)] = e−ikα F(k) ¥ 微分積分 § ¦ |x| → ∞ のときに f (x) → 0 ならば [ F ∫ ∞ −∞ f (x)dx = 0 ならば [∫ F ] d f (x) = ikF(k) dx x −∞ ] f ( x́)d x́ = 26 1 F(k) ik ¨ ¥ たたみ込み § ¦ ∫ たたみ込み積分 f ∗ g ≡ ∞ −∞ f (x − y)g(y)dy のフーリエ変換は各関数のフーリエ変換の積になる。 F [ f ∗ g] = F(k)G(k) ¨ ¥ 積のフーリエ変換 § ¦ 関数の積をフーリエ変換したものは、各関数をフーリエ変換したもののたたみ込み積分として現れる。 F [ f (x)g(x)] = 1 F(k) ∗ G(k) 2π • フーリエ級数展開についてですが、一応関数 f (x) に対して展開ができるための条件というものが存在 するのですが、そこまで深入りした説明は私には不可能ですので割愛させてもらいます。講義では展開 可能条件について触れられていましたので、気になる方は講義ノートをご参照ください。 • 展開する際の知識として、対象とする関数 f (x) が偶関数である場合には、展開式において bn = 0、す なわち cos の項 (と定数) しか現れず、 f (x) が奇関数である場合には an = 0、すなわち sin の項しか現れ ないということは覚えておいたほうがいいかもしれません。 • ちなみに一般に区間 [a, a + 2L] において区分的に連続な関数 f (x) に対するフーリエ級数は ∞ a0 ∑ ( nπx ) nπx f (x) = + + bn sin an cos 2 n=1 L L となり、フーリエ係数は an = 1 L ∫ a+2L f (x) cos a nπx 1 dx, bn = L L ∫ a+2L f (x) sin a nπx dx と求めることがで L きます。 • フーリエ変換についてですが、変換の定義の仕方にはいくつか種類があります。このシケプリで提示し たものは私個人が使いやすいと感じたものであり、講義中で取り上げられたものとは異なります。が、 恐らく試験でフーリエ変換の問題が出題された際に異なる定義を用いて計算したとしても減点されるよ うなことはないかと思いますので、変換・逆変換の一貫性を保ってさえいればどの定義式を使用しても 大丈夫だと思います。 ただし、用いるフーリエ変換の定義式によって、上で挙げた「たたみ込み」と「積のフーリエ変換」の 公式が若干変わる点には注意してください。それぞれ F(k)G(k) の前につく係数が変わります。 • 以上で簡単ではありますが、数学 2D の講義で触れられた内容を説明し終えたことにしておきます。細 かく見ると、講義では Stirling の公式の導出の際に用いた鞍点近似法の説明や、フーリエ級数展開にお いて、不連続点近傍において観測されるギブス現象の説明などがありましたが、私自身がそこまで説明 する力も時間もないため省略させてもらいます。試験に出題される可能性は低いとは思うのですが、可 能性は排除しきれませんので講義ノートを見るなりして各自フォローをお願いします。 また、講義の最後の最後でラプラス変換が取り上げられましたが、これについては前学期に嫌というほ ど学習しているかと思いますので、詳細は前回の私のシケプリをご参照ください。 それでは期末試験後半戦、頑張って乗り切りましょう! 27
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