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目 次
「南国のフルーツ」プーケット(タイ) KT
随 想 日本酒とお料理の楽しい相性のコツ………………………………<村越岳夫>… 668
解 説 シリーズ解説:果実とその加工品の話(第3回)
果実・果汁飲料と機能性成分(1)
ウンシュウミカン由来の機能性成分 β−クリプトキサンチン
………………………………………………………<矢野昌充>… 670
解 説 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第25回)
増粘多糖類(発酵由来多糖類:ジェランガム,キサンタンガム,発酵セルロース)
………………………………………………………<大本俊郎>… 676
連載エッセー:食べもの随想
金環食と皆既食 ―時間・空間・物質―………………<田村真八郎>… 684
海外技術・マーケット情報
2012年食物繊維特集:ファイバー強化飲料…………………………………………… 686
豆類と全粒穀物のトレンド……………………………………………………………… 689
工場安全に対する継続的改善の取り組み……………………………………………… 691
ブルーベリー抽出物混合によるりんごジュースの抗酸化活性の向上……………… 693
健康的で文化的なグローバル飲料のトレンド………………………………………… 696
機能性食品の現状………………………………………………………………………… 699
低温抽出処理によるピューレ抽出の革新……………………………………………… 702
特別解説:飲めば分かる美味しい牛乳 ―牛乳の理化学特性と官能評価―
………………………………………………………<藤川咲子>… 704
特別解説:高電圧パルス電界(PEF)・プラズマを用いた非加熱殺菌技術
………………………………………………………<大嶋孝之>… 710
業界トピックス:久々に盛り上がる緑茶飲料………………………………………………… 719
技術用語解説:スムーズキャップ,プルアップキャップ,プレスオンキャップ………… 720
業界の話題………………………………………………………………………………………… 721
今月の統計………………………………………………………………………………………… 724
最近の技術雑誌から……………………………………………………………………………… 726
野菜・果物を巡って(第四十七話) 主役としてのしょうが… …………<吉田企世子>… 731
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随 想
日本酒とお料理の楽しい相性のコツ
むら
こし
たけ
お
村 越 岳 夫
(唎酒師,ソムリエ)
★2つめは『加わる』(強調する)★
今,日本酒が面白い!
甘口の日本酒というと,敬遠される方が結構い
日本酒専門飲食店の現場の中で,お客様からよ
らっしゃいますが,実は日本酒の甘味はお料理と
く訊かれるのが,「日本酒は好きですが何を頼ん
合わせると,その素晴らしさを発揮します。例え
でよいか分からないので,この料理にはどんなお
ば,野菜料理。茹でる,煮る,焼く,生で,と野
酒が合うか選んで欲しい」「このお酒に合う料理
菜には色々な食べ方があり,料理レシピは肉や魚
を教えて欲しい」という,日本酒とお料理の相性
に比べるとそのバリエーションは圧倒的に多くあ
についての質問です。最近,酔うためでも蘊蓄を
ります。基本的に人間は野菜の持つ苦味やエグ味
語るためでもなく,食事をより美味しく楽しむた
が苦手なのかもしれません。
めに日本酒を飲まれる方が増えたと,嬉しく感じ
そうした野菜のお料理に日本酒の甘味が加わる
ています。
と,野菜の持つ苦味やエグ味がマスキングされ,
お酒とお料理の良い相性というのは,シンプル
さらに野菜の持つ甘さなど良い特徴が強調されま
に考えると実に面白く,日常の食事が本当に楽し
す。日本酒を飲まなかった子供の頃に比べ,日本
くなります。その相性の面白さをいくつか紹介し
酒を飲むようになってからの方が苦手な野菜が
たいと思います。
減った方は多いのではないでしょうか。
うんちく
日本酒の味わいが料理に及ぼす作用は基本的に
★3つめは『調和する』(高める)★
3つの公式となります。
日本酒とお料理が合わされることで,新しい美
★1つめは『消す』(弱める)★
味しさが生み出されることがあります。
糖分が少ない酒,酸味の刺激が強い酒は辛口に
そうそう出会える相性ではありませんが,例え
感じる事が多いのですが,辛さを感じる酒には,
ばブルーチーズに極甘口の日本酒を合わせると,
お料理の脂分を軽減させる作用があります。豚の
クセのある青カビの風味がまろやかで心地良い味
角煮に芥子をつけると,豚の脂のしつこさが軽く
わいになったり。白カビを付けて熟成させたドラ
なるのと一緒です。
イソーセージに酸味のしっかりしたお燗酒を合わ
また,日本酒に含まれる成分は,魚介類の生臭
せると,ナッツのような風味が出てきたり。ある
みを消す作用もあり,お刺身などは,日本酒があ
種,驚きを伴う味覚の体験ができます。
るときの方が,ないときより美味しく食べられま
この3つの公式を覚えておいて,日本酒とお料
す。肉や魚を調理するときの下ごしらえに使うと
理を合わせるとそれぞれの味の変化が面白いほど
嫌な臭みを軽減してくれるのも,この作用のおか
分かります。
げです。
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★季節で合わせる(色で合わせる)★
を選んでみるのも面白いかと思います。日本地図
ところで日本酒の味や香りは,一定不変のもの
を眺めながらお料理とお酒の合わせ方を考えるの
ではありません。冬に造られた日本酒は四季を通
も,また楽しいひとときです。
じて熟成し,その味わいを変化させていきます。
色でいうと,日本酒は無色透明なイメージがあ
★お酒を飲む順番★
りますが,酒が若いうちは,微妙に黄緑っぽい
お酒とお料理の相性についての質問に次いで,
若々しい色を帯びています。熟成が進むにつれて
お酒を飲む順番について訊かれることもよくあり
黄緑っぽい色から薄い山吹色へ,さらに熟成が進
ます。飲みたいお酒を飲みたいタイミングで飲ん
むと茶色のような色調に変化します。
でいただくのが一番なのですが,楽しく飲める飲
何かと似ていると思いませんか?
み順はあります。
実は,果実の熟成と同じ色調の変化なのです。
ワインの流儀に合わせてか,アルコールの低い
日本酒の香りも同様で,例えばリンゴのような香
酒から高い酒へ,スッキリした酒からコクのある
りを思わせる吟醸酒でいえば,酒が若いうちは青
酒へ,と徐々にシフトしてゆく飲み方をされてい
リンゴのようなフレッシュで酸味を思わせる香り
る方がいらっしゃいます。しかし日本酒の場合は,
が感じられ,熟成していくにつれて熟したリンゴ
これと逆の飲み方をすると,舌や体に負担がかか
の香りとなり,さらに熟成すると凝縮したリンゴ
りません。日本酒はワインに比べてアルコール度
の香りとなり,最終的に古酒の段階までいくと種
数が高く,また,いくら辛口といっても必ず糖分
子などのスパイシーな香りとなります。
はあるので,後半にボリューム感のあるお酒を
お料理に合わせる際に,春には若々しい色調の
持ってくると,甘味やアルコールの高さがストレ
お料理に『搾りたての生の新酒』を,秋にはやや
スになる場合が多いのです。
濃い目の色調のお料理に『秋のひやおろし』を,
私的に理想的と思える飲み方としては,空腹時
冬には色の濃い煮物などに『熟成したお燗酒』を
であればまずはお燗酒を飲んでお腹を温め,内臓
合わせると,その季節の気温や気候に相応しい相
の血流を活性化させ,前半にお野菜のお料理に合
性となります。
わせて甘味のあるお酒を楽しみ,お刺身やお魚の
お料理と共にそのお料理に合いそうなお酒を楽し
★地方で合わせる★
み,お肉料理にはアルコールの高い原酒や,脂を
南北に長く山海に恵まれた日本列島には,場所
溶かし肉の旨味を引き出すお燗酒を合わせ,ある
によって様々な気候や食文化があります。その地
程度お腹が落ち着いたら,アルコールがあまり高
に長く支持されてきている酒蔵の酒は,当然,そ
くないスッキリした酒を楽しむ。こういった順番
の地の郷土料理と良い相性をみせます。
で飲むと,飲み疲れせずにゆっくり楽しむことが
海の酒は魚に合います。しかし海流の早い外海
できます。
と穏やかな内海とでは,食べるものもお酒の味わ
また,日本酒を飲む際には水を用意すると良い
いのタイプも異なります。傾向として,外海に面
でしょう。日本酒ときどき水,のリズムで飲むと,
した町の日本酒は,辛口で鮪やカツオなどに代表
酔いの回るスピードや飲むペースをコントロール
される回遊魚によく合い,内海に面した町の日本
しやすく,飲みすぎ防止になります。
酒は,甘味があり繊細なタイプが多く,小型の白
難しく考えずに,酒を学ぶというよりも,酒と
身魚によく合います。
遊ぶという感覚で,お酒とお料理の相性をもっと
また,山の酒は,酸味がどっしりとしていてお
気軽に楽しんでいただければと思います。
燗酒として美味しい酒が多く,味付けの濃いお料
皆様,どうぞ素敵な酒楽を・・・
理やお肉料理によく合います。
その地方の風土や気候を想像し,合わせるお酒
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⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
第3回
果実・果汁飲料と機能性成分(1)
ウンシュウミカン由来の機能性成分
β-クリプトキサンチン
や の・ ま さ み ち
東京教育大学大学院修
士 課 程 修 了。 農 林 省
(現農林水産省)入省,
野菜試験場,果樹研究
所を経て退職。現在,
果樹試験研究推進協議
会コーディネーター。
農学博士
矢 野 昌 充
300万t台,年間消費量も国民1人当たり20kg 近
◦1.β-クリプトキサンチン,
この15年 ◦
くあり,我が国の最重要果樹であったが,その後,
生産量・消費量とも1/4に激減した結果,地域
β-クリプトキサンチン(β-CRP)は果物特に
経済や国民健康への貢献は大幅に後退した。そこ
ウンシュウミカンから摂取できるカロテノイド
で,90年代半ば,当時の農林水産省(現在(独)農
(第1図)で,ヒト血液中に存在する主要カロテ
研機構)果樹研究所カンキツ研究部では,ウン
ノイド6種の一つである。この15年ほどの間にヒ
シュウミカン産業を再興させる道を探り,『ウン
トの健康増進に貢献できるエビデンスが急速に蓄
シュウミカンが特異的に高含有するβ-CRP の健
積し,日常的に摂取する食品由来,しかも普遍的
康増進効果を活用すること』に行き着いた。果樹
な体内成分で国民の健康増進に貢献できる成分の
研究所から提案・開始した研究が端緒となり国内
グループに仲間入りできたと考えている。
でβ-CRP 研究が活発化した。
1990年代半ば以降,β-CRP の健康増進効果に
一方,海外では大規模高精度の疫学研究の成果
関わる研究が盛んになってきたが,国内での研究
が2000年代に入って次々に発表されているが,そ
と海外での研究の二つの潮流がある。国内ではウ
の中に,β-CRP の作用・効果に特徴があったこ
ンシュウミカンの健康機能性との関わりからの研
とからタイトルにβ-CRP を付した論文が7報発
究が行われ,一方海外では疫学研究の高まりの中
表され,注目を集めた(肺発がん抑制が主。後
でβ-CRP に注目すべき作用・効果が見つかった
述)。
ことに特徴がある。
以上の背景を持つβ-CRP を本稿で紹介するに
ウンシュウミカンはかつて年間生産量最大で
当たり,まず,果物特にカンキツ類が中心になる
供給源の特徴から述べる。次いで,機能性成分と
しての特徴を述べるが,我が国でβ-CRP の機能
性研究が行われる端緒になった発がん抑制研究か
ら開始し,現在最も盛んに研究が行われている三
つのテーマ(みかん産地での栄養疫学研究,骨粗
第1図 β-クリプトキサンチン
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ウンシュウミカン由来の機能性成分β-クリプトキサンチン
しょう
鬆 症予防作用,抗メタボリックシンドローム作
6~8月は国産カンキツの端境期で,この時期
用)について順を追って述べ,事業化を含めて今
に出回る輸入カンキツのグレープフルーツには
後の展望で締めくくる。
まったく,バレンシアオレンジにはわずかしかβ
-CRP は含まれず供給源としては期待できない。
◦2.β−CRP の供給源としての
カンキツ類の重要性 ◦
この端境期に販売されるハウスミカンは生産・消
費量ともに多くはないが10~2月出荷のウンシュ
1)β-CRP を含む果物,含まない果物
ウミカンの2~3倍量のβ-CRP を含んでいるこ
筆者らが調査した果物 1)のうち,β-CRP 含
とから,国内産カンキツ類で通年的にβ-CRP を
量1.0mg/100g生重を上まわったのは,ウンシュ
供給することが可能である。以上,我が国ではβ
ウミカンなどのカンキツ類が圧倒的に多い(第1表)。
-CRP の供給源が世界に例がないほど豊富であ
その中で最高含量は8月収穫のハウス栽培ウン
るといえる。
シュウミカンで2.986mg/100g生重,またその他
カンキツ以外ではカキ,ビワ,パパイヤ,モモ,
のウンシュウミカンや新しく育成された数品種や
グァバに含まれる程度で,消費量も考慮するとβ
ポンカン,タンカンも1.0mg/100g生重を上回る。
-CRP の供給源としての重要度はカンキツ類ほ
かつてはウンシュウミカン出荷盛期が終わる
ど高くはない。なお,パパイヤは調査果物中最高
2月以降5月まではβ-CRP 含量の低いアマナツ,
の3.182mg/100g生重を記録した。我が国では消
イヨカン,ハッサクなどの中晩性柑橘がカンキツ
費量が極めて少ないことから供給源として重視で
消費の中心であった。しかし最近ではこれらに代
きる果物ではないが,熱帯地方など生産・消費の
わり「不知火(デコポン)」,「せとか」,「はるみ」
多い地域では注目して良い供給源2)である。
などが消費の主役になっており,これらの品種は
2)β -CRP 含量がウンシュウミカンなど,一
いずれもβ-CRP に富む。今後新たな普及が見込
部の果物だけに多い理由
まれる高含有品種もあることから,β-CRP 供給
多くの果物,野菜がある中で,β-CRP はなぜ
に役立つ品種は大幅に増えている。
限られた果物にしか存在しないかの疑問に,果樹
かんきつ
第1表 β-クリプトキサンチンを含む果物,含まない果物
含有量のレベル
/果実の種類 >1.0mg/100g生重
<1.0mg/100g生重
>0.1mg/100g生重
スダチ:0.120
イヨカン:0.305
ハッサク:0.163
ネーブルオレンジ
:0.462
清見:0.311
ヒュウガナツ:0.100
アマナツ:0.090
カボス:0.075
カンキツ類
ウンシュウミカン(ハウス栽培):2.986
ウンシュウミカン(グリーン):1.057
ポンカン:1.132
タンカン:1.154
不知火(デコポン):1.122
はるみ:1.310
ウンシュウミカン(山下紅早生):1.947
パパイヤ(サンライズ):3.182
パパイヤ(フルーツタワー):0.725
ビワ(茂木):1.139
ビワ(広東):0.299
カキ:0.520
グァバ(黄):0.464
モモ(黄金糖):0.250
マンゴー:0.081
アボガド:0.033
アセロラ:0.095
プルーン:0.034
メロン(赤肉)
:0.048
スモモ:0.077
ネクタリン:0.144
その他
<0.1mg/100g生重
検出せず
スイ―ティー
グレープフルーツ
リンゴ,ナシ,ブドウ
イチジク
メロン,モモ(白桃)
キウイフルーツ
パイナップル
サクランボ,グァバ(緑)
スイカ,メロン(黄肉)
バナナ
注1:論文1)に掲載されているうちのなじみのない果物は除いて掲載。
注2:複数の品種の測定事例がある場合は最高,最低の2品種を掲載した。
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⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
含有ウンシュウミカン飲料を投与し,肝臓発がん
第2表 カロテノイドの抗発がんプロモーション
4)
効力(阻害%)
カロテノイド
β-クリプトキサンチン
ラクツカキサンチン
アスタキサンチン
ゼアキサンチン
リコペン
β-カロテン
を80%抑制したという結果である5)
(第2図)
。
濃度(TPA に対する比)
100倍*
10倍*
59.3
58.9
26.5
25.1
15.3
10.6
19.7
19.5
4.3
6.1
0 0 がん予防に有効であると主張するためには,in
vitro 実験や in vivo の動物実験だけでは不十分で
あり,ヒトを対象とする二つの研究すなわち疫学
研究および臨床ヒト介入試験まで実施する必要が
あるが,β-CRP については最終段階の臨床ヒト
介入試験まで到達した。疫学研究については我が
*プロモーションをひきおこす 12-O-テトラデカノイルホル
ボール-13-アセテート(TPA)に対する倍数
国だけではなく,次項で示すように海外での研究
もあることから,「ウンシュウミカン・β-CRP
ぴょう
研究所,静岡大学グループによる研究3)で説明
はがん予防に貢献できる」という仮説は信憑性が
できる。β-CRP の合成・蓄積には,①β-CRP
高い。
の前駆体であるβ−カロテンまでのカロテノイド
2)肺発がん抑制に関する疫学研究の成果
合成系酵素遺伝子群の発現が多いこと,②β−カ
疫学研究論文の中に,β-CRP の疾病リスク低
ロテンに水酸基を導入する酵素遺伝子の発現が
減が関連候補物質中で際だっている例が散見さ
強すぎない(強すぎると水酸基が1個だけのβ-
れる。その中で,肺がんに対する研究例,特に
CRP を通り越し,2個導入されたゼアキサンチ
Mannisto らの研究6)は興味深い。これまで欧米
ンやそれ以降のカロテノイドまで進んでしまう)
で実施された7件のコホート研究を総合評価した
ことの,二つの遺伝子発現条件が関わるため,β
研究(メタアナリシス研究)である。7~16年間
-CRP を蓄積できる果物は限られる。
にわたり総計399,765人,肺がん発症3,155人を対
象に解析しβ-CRP 摂取の少ない群の相対危険度
◦3.発がん抑制研究とβ−CRP ◦
1)我が国の研究の発端と成果
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
果樹研究所関係者はウンシュウミカンとβ-
CRP を国民の健康増進に積極的に生かす道を探
るため,プロジェクト研究「カンキツによるが
ん予防に関する基礎的研究」を企画し,1996年
からスタートした。β-CRP に注目した理由は
Tsushima らの研究 4)に触発されたことによる。
この研究ではカロテノイド類の発がんプロモーショ
ン抑制効力スクリーニングテストが行われ,β-
CRP が51種のカロテノイドのうち,抑制活性が
処方1
処方2
第2図 β-クリプトキサンチンは肝臓発がんを
顕著に抑える(縦軸:発がん抑制率%)
最も高いグループに属すことを明らかにした(第
2表)。「カンキツによるがん予防に関する基礎的
処方1:マルチカロテン(1日当たりβ-カロテン3mg,
α-カロテン6mg,リコペン10mg)を摂取。
処方2:処方1のマルチカロテンに加え,β-クリプトキサン
チン高含有ウンシュウミカンジュース(β-クリプトキサン
チンを3mg/190mL含む)を毎日1缶ずつ飲用。
肝臓がんになる危険度が極めて高いC型肝炎ウイルスにより
肝硬変となった患者さんの協力を得て行われた。投与期間2年
6カ月(京都府立医科大学による研究5))。
研究」の中では,Tsushima らの研究グループの
一員であった西野らによりβ-CRP の発がん修飾
作用に関する一連の研究が行われ,最終的には臨
床ヒト介入試験で成果を得た。肝臓がんハイリス
クの被験者にマルチカロテン,さらにβ-CRP 高
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対照
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ウンシュウミカン由来の機能性成分β-クリプトキサンチン
(relative risk)を1とすると,摂取量の多い集団
大きく発展している3例を紹介する。
ではリスクが0.76と有意に低いことを明らかにし
1)みかん産地での栄養疫学研究
た。β-CRP 以外の候補物質には有意差が認めら
β-CRP の発がん抑制に関するプロジェクト研
れなかったとしている。なお,この研究に触発さ
究を推進した一方で,果樹研究所では他の疾病へ
れ,β-CRP の発がん抑制メカニズムに関する基
の影響を調べるべく,新たなプロジェクトに取り
礎的研究が各所で行われたことにも注目したい。
組んできた。ウンシュウミカンの産地を調査地と
する疫学研究「三ヶ日町研究」である。これまで
◦4.ウンシュウミカンをよく食べる
日本人とβ−CRP の関係 ◦
8報の論文を海外の専門誌に報告している。本研
究の意図,意義,成果については本シリーズで別
これまでに報告されている血清β-CRP 濃度に
途紹介が予定されているので,詳細はそちらに譲
ついて一部を第3図に示した。我が国では諸外国
るが,血清β-CRP 高濃度の被験者が多いコホー
よりも著しく高い。また,興味深いことに母乳の
トという特徴を生かし,比較的少ない1,000人規
β-CRP 濃度も我が国が諸外国よりも高いことが
模でありながら優れた成果「生活習慣病,老化・
報告されている 7)。我が国には諸外国とは異な
老年病の発症リスクをβ-CRP 血中高濃度で軽減
りウンシュウミカンのような優れたβ-CRP 供給
できること」を明らかにしている10)。
源があり,多くの国民が好んで食べているためと
2)骨粗鬆症予防作用
思われる。我が国でも北海道では諸外国並みの低
骨組織は,破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞に
濃度であるが,ウンシュウミカン産地から遠く,
よる骨形成のバランスが保持され,リモデリン
ウンシュウミカン摂取量が少ない?ことによると
グ(再構築)が繰り返されることにより,一定の
考えられる。
骨量を保持している。しかし,老化や女性ホルモ
β-CRP の摂取量と血清濃度に関する内外の
ンの減少,偏った生活習慣・食生活により,骨吸
研究報告を調べると興味深いことに気づく。β-
収が骨形成を上回ることで骨低下症,骨粗鬆症に
CRP 摂取量がβ-カロテンなど他のカロテノイド
⾉ΰ୯⃨ᗐ㸝mLᙔࡒࡽࡡ μg ᩐ
に比べて数十分の1と極めて少ないのに対し,血
清濃度のオーダーは他のカロテノイド類と変わら
ない8, 9)。これらのデータはβ-CRP が他のカロ
テノイド類に比べて体内に吸収・蓄積されやすい
ことを示している。
β-CRP がなぜ吸収され易く,蓄積し易いかに
ついては明快な解答は得られていないが,摂取量
の割に血清濃度が高くなることは,β-CRP の健
康増進効果がヒト体内で有効に機能するのに好都
合なことはいうまでもない。
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
◦5.「カンキツによるがん予防に
関する基礎的研究」の波及効果 ◦
「カンキツによるがん予防に関する基礎的研究」
Ἰ㸞ᩝ⊡㈠ᩩ࡞ᇱࡘࡀ➱⩽࠿షᅒ
が優れた成果を上げたことから,我が国ではβ
-CRP 機能性研究の他分野への波及が見られる。
食品と容器
第3図 β-クリプトキサンチン血清中の濃度比較
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⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
至る。骨量減少を抑えるには破骨細胞による骨吸
収を抑制し,骨芽細胞による骨形成を促進させる
必要がある。β-CRP がこの条件を満たす優れた
素材であることを山口らが培養細胞試験,動物実
験で明らかにした。この研究で注目したいのはβ
-CRP が10-8~ 10-6モルという低濃度で効力が
あることで,他のカロテノイドとは一線を画して
いる。ヒト試験においても閉経後の女性を対象
に,β-CRP を含有するウンシュウミカンジュー
スを飲用することで血清β-CRP が増加し,それ
第4図 β-クリプトキサンチンでの事業化成功例
に伴い骨形成マーカー(例えばγ−carboxylated
1)β−クリプトキサンチン高含有量(1.6mg/100mL:通常
品の5割増)
2)関連試料でヒト臨床介入試験における肝臓発がん抑制・骨
密度上昇を検証
3)10年を上回るロングセラー
osteocalcin)値の上昇,骨吸収マーカー(例えば
tartrate-resistant acid phosphatase)値の低下を
認めた。
大幅な研究進展は山口らの精力的な研究による
ところが大きいが,その研究は多くが基礎研究で
した16)。この発表をきっかけとして,β-CRP 研
ある。上述の三ヶ日町研究では山口らの結果を疫
究がこの分野でも大きくブレークすることが期待
学研究により補強する成果(閉経女性で血清β-
できる。
CRP 高値者は骨粗鬆症になるリスクが低い)を
◦6.事業化に向けた研究開発の
得ている11 ,12)。日常の食生活でのウンシュウミ
現状と今後への展望 ◦
カンや加工品摂取が骨密度の低下防止に役立って
いることが国民に分かりやすい形で伝えられる状
果樹研究所による研究成果や,果樹試験研究推
況ができつつある。なお,最近山口は総説「骨ホ
進協議会で実施する「果物と健康」に関する委託
メオスタシスにおけるβ−クリプトキサンチン」
試験研究推進事業による研究成果を共通基盤に,
を発表した13)。
同協議会に参加している企業数社各社による独自
3)β-CRP によるメタボリックシンドローム
技術開発と組み合わせることで,各社のβ-CRP
改善作用
の事業化が積極的に取り組まれている。
今や国民病となった感のあるメタボリックシン
β-CRP 血清濃度を,β-CRP 供給源であるウ
ドロームであるが,その改善に関する多くの研究
ンシュウミカン等を摂取していない人に比べて数
が行われている。β-CRP でも基礎的な研究から
倍~ 10数倍程度に高めることで,生活習慣病や
ヒト介入試験まで取り組みが始まっている。多く
老化・老年病になるリスクを減らすことができる
はまだ学会発表を済ませた段階であるが,最近ユ
とする疫学研究によるエビデンスを持つこと,β
ニチカ(株)中央研究所グループと中村学園大学グ
-CRP 原料をウンシュウミカン搾汁工程から調
ループから研究報告が相次いで発表された。ユニ
達する技術が確立できていることを生かして,事
チカ(株)では肥満糖尿病モデルマウスを使いβ
業化が速やかに進むことを期待している。
-CRP が肥満を抑制し,内臓脂肪を減少させる
◦7.国民健康増進とみかん産業
再興の視点 ◦
メカニズムを明らかにし14 ,15),中村学園大学で
は肥満女性にβ-CRP を飲料として与えることで,
上述の「β-CRP 血清濃度を,ウンシュウミカ
アディポサイトカインプロファイルの改善に成功
食品と容器
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ウンシュウミカン由来の機能性成分β-クリプトキサンチン
ン等を摂取していない人に比べて数倍~10数倍程
ような優れたβ-CRP 供給源のない諸外国のβ-
度に高めることで,生活習慣病や老化・老年病に
CRP レベルの2倍程度しか高くないとするデー
なるリスクを減らすことができる」を国民大多数
タもある(私信)。
で実現することが,関係者の願望である。しかし,
ウンシュウミカンの消費を拡大することととも
ウンシュウミカン産業の縮小が続き,国民の果物
に,β-CRP に富む「不知火(デコポン)」,「は
に対する嗜好の多様化でウンシュウミカンの「国
るみ」,「せとか」など新しいタイプのカンキツ
民的な果物」としての地位も危うくなっており,
の普及,β-CRP を強化した機能性飲料(第4
達成は容易なことではない。最新の調査では都市
図)の開発と普及促進などで,国民健康増進へβ
近郊住民の血清β-CRP 値がウンシュウミカンの
-CRP の効果が生かせると考えている。
参 考 文 献
1)Yano M., et al., Food Sci. Thechnol, Res. 11 : 13−18
(2004)
2)Rodriguiz-Amaya, D. B., et al., Latinoam. Nutr. 49 :
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3)Kato M., J. Japan. Hort. Sci. 81 : 219−234(2012)
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5)Nishino H.,et al., Arch Biochem Biophys. 483 : 165−8.
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943(1994)
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10)杉浦実,Functional Food, 5 : 205−210(2012)
11)Sugiura M., et al., Osteoporosis International 19 : 211
−219(2008)
12)Sugiura M., et al., Osteoporosis International 22 : 143
−152(2011)
13)Yamaguchi M., J Biomed. Sci. 19 : 36−49(2012)
14)Takayanagi K., et al., J Agric Food Chem. 59 : 12342
−12351(2011)
15)Takayanagi K., Front Neurol. 2 : 67(2011)
16)Iwamoto M., et al., Lipids Health Dis. 11 : 52−60
(2012)
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食品と容器
675
2012 VOL. 53 NO. 11
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第25回)
◆解説◆
増粘多糖類(発酵由来多糖類:ジェランガム,
キサンタンガム,発酵セルロース)
お お も と・ と し お
福岡大学大学院理学研
究科化学専攻博士課程
前 期 修 了。 三 栄 源 エ
フ・エフ・アイ株式会
社入社,現在,第一事
業部次長。
大 本 俊 郎
薬学博士
グルクロン酸由来のカルボキシル基を有している
(第1図)。発酵終了時には,1 - 3 結合したグル
◆ 1. はじめに ◆
食品に利用されている増粘安定剤は多種多様で
コースにアセチル基とグリセリル基が存在してお
あるが,そのほとんどが天然物から抽出された水
り,この形のまま回収し,粉末状に製品化したも
溶性高分子物質で,主に多糖類である。多糖類は,
のがネイティブ型ジェランガムである。これらア
自然界の非常に身近なところに多く存在しており,
シル基(アセチル基とグリセリル基)を除去した
例えば,海藻からカラギナンや寒天など,レモン
ものが,脱アシル型ジェランガムである。両者の
の果実などからペクチン,種子からはガラクトマ
ジェランガムは,アシル基の有無により全く異な
ンナン類,樹液からアラビアガムなどが得られる。
る物性を有しており,脱アシル型ジェランガムは,
また,自然界の天候に左右されないことから,微
①固く脆いゲルを形成し,②カチオンとの反応性
生物由来の多糖類も頻繁に食品に利用されており,
が大きく,③そのゲルは耐熱性,耐酸性,フレー
その代表的なジェランガム,キサンタンガム,発
バーリリース,透明性に優れる,等の特徴を有し
酵セルロースについて紹介する。
ている。ネイティブ型ジェランガムは,①弾力の
もろ
もち
ある離水の少ない餅様のゲルを形成し,②ゲル化
◆ 2.ジェランガム ◆
ジ ェ ラ ン ガ ム は, 非 病 原 性 微 生 物
温度が高く,③凍結解凍耐性を有し,④低濃度の
Sphingomonas elodea が産生する多糖類である。
徴を有している。
ジェランガムには,脱アシル型ジェランガム(ケ
2−1.ジェランガムのゲル化機構
ルコゲル )とネイティブ型ジェランガム(ケル
脱アシル型ジェランガムは,カチオン類の存在
コゲル LT−100)の2種類があり,それぞれ全
により強固なゲルを形成する。脱アシル型ジェラ
く異なる物性を有しており,それぞれの特徴を生
ンガムを熱水で水和させると,ランダムコイル状
かした用途で各種食品に用いられている。
に溶解され,冷却すると二重らせんを形成,さら
ジェランガムは直鎖状のヘテロ多糖類で,グル
に冷却すると,1価カチオン存在下では,二重ら
コース,グルクロン酸,グルコース,ラムノース
せんの外側に位置しているカルボキシル基の電荷
の4つの糖の繰り返し単位から構成されており,
を中和,二重らせん同士が水素結合により会合し,
使用で,不溶性固形分の分散効果がある,等の特
Ⓡ
Ⓡ
食品と容器
676
2012 VOL. 53 NO. 11
増粘多糖類(発酵由来多糖類:ジェランガム,キサンタンガム,発酵セルロース)
固くて脆いゲルを形成する。
また,2価カチオンでは,
COO-M+
CH2OH
O
カルボキシル基間をイオン
OH
O
的に架橋し,二重らせん同
CH2OH
O
O
O
O
O
OH
CH3
OH
士が会合して固くて脆いゲ
OH
ルを形成すると考えられて
OH
OH
OH
OH
n
H3C
いる1)。
C=O
一方,ネイティブ型ジェ
1/2
O
ランガムはカチオンを必要
COO-M+
H2C
O
とせず,冷却するだけでゲ
O
O
OH
O
ル化する。これは二重らせ
CH2OH
O
O
O
OH
CH3
OH
んの内側に位置するグリセ
OH
O
リル基がその相互作用によ
OH
OH
OH
OH
n
CH2OH
C
O
り二重らせんを安定するよ
第1図 ジェランガムの一次構造(上:脱アシル型ジェランガム,
下:ネイティブ型ジェランガム)M+:カチオン類
うに作用し,高い温度でカ
チオンに関係なくゲル化す
ると考えられている 2)。また,二重らせんの外
異なり,得られるゲルの物性が異なる。
側に位置するアセチル基は二重らせん同士の強固
第2図に示すように,脱アシル型ジェランガム
な会合を阻害するとともに,二重らせん分子の会
は2価カチオンを少量添加するだけで固くて脆い
合時に立体障害となる。この結果,ネイティブ型
ゲルを形成する。1価カチオンのみを添加した場
ジェランガムでは二重らせん同士の会合が脱アシ
合,2価カチオンを添加したゲルと同等のゲル強
ル型ジェランガムよりゆるく,非常に弾力のある
度を得るには約10倍の添加量を用いなければなら
ゲルを形成すると考えられている。
ない。一方,ネイティブ型ジェランガムはカチオ
2−2.ジェランガムとカチオン類との反応性
ンの種類や濃度にあまり影響されないが,カチオ
脱アシル型ジェランガムがカチオン存在下でゲ
ン濃度の上昇とともにゲルは若干コシのある食感
ル化し,カチオンの種類によってもその反応性が
に変化する。
100
25
80
20
10
䜰䝤⃨ᗐ䠌 1.0%
as is pH
ᙆງᛮ
䕹 ஘㓗Ca
䕜 KCl
䕋 NaCl
60
40
5
䜶䝯ᙁᗐ䚭䟺N/cm 2䟻
15
䜶䝯ᙁᗐ
䕵 ஘㓗Ca
䕝 KCl
□ NaCl
ᙆງᛮ䚭䟺%䟻
䜶䝯ᙁᗐ䚭䟺N/cm 2䟻
20
20
0
0
0
0.1
0.3
100
䝑䜨䝊䜧䝚ᆵ䜼䜫䝭䝷䜰䝤
⬲䜦䜻䝯ᆵ䜼䜫䝭䝷䜰䝤
15
䜶䝯ᙁᗐ
䕵 ஘㓗Ca
䕝 KCl
□ NaCl
䜰䝤⃨ᗐ䠌 1.0%
as is pH
ᙆງᛮ
䕹 ஘㓗Ca
䕜 KCl
䕋 NaCl
60
10
40
5
20
0
0.5
0
0
䜯䝅䜮䝷⃨ᗐ䚭䟺%䟻
80
ᙆງᛮ䚭䟺%䟻
25
0.1
0.3
0.5
䜯䝅䜮䝷⃨ᗐ䚭䟺%䟻
第2図 ジェランガムのゲル強度に与えるカチオン類の影響
ゲル強度:常法にて調製したゲルをテクスチャーアナライザーにて20℃で測定
食品と容器
677
2012 VOL. 53 NO. 11
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
2−3.ジェランガムのゲル化およびゲル融解温度
ンガムは低濃度での使用においては増粘剤として
脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェラ
利用することができ,また,既存の増粘剤よりも
ンガムのゲル化温度およびゲルの融解温度も大き
優れた機能を発揮する場合がある。ネイティブ型
く異なる。脱アシル型ジェランガムはランダムコ
ジェランガムはソフトなゲルを形成する特性を持
イルから二重らせん状に溶解している状態でカチ
つことから,低濃度では溶液内で弱い三次元の網
オンを添加するとゲル化が起こる。特に2価カチ
目構造を形成していると考えられている。溶液中
オンを添加した場合はカルボキシル基同士のイオ
で構造を有することから,ネイティブ型ジェラン
ン結合により二重らせんが会合,ゲルを形成する
ガム溶液は強いシュドプラスチック粘性を示す。
と考えられている。このゲルは非常に強固であり,
つまり,ネイティブ型ジェランガムはキサンタン
第3図に示すように,そのゲル融解温度はカチオ
ガムと同様に不溶性固形物の分散安定性に優れて
ン添加濃度が上昇するにつれ高くなっていく。そ
おり,また用途によってはキサンタンガムよりも
のため,レトルト殺菌などの熱処理に対する耐熱
優れた機能を発揮する。
性が向上する。また,脱アシル型ジェランガムの
2−5.脱アシル型ジェランガムの食品への応用
ゲルは優れた耐酸性,透明性,フレーバーリリー
脱アシル型ジェランガムは前述したような,耐
ス性も示す。
熱性,耐酸性,透明性,フレーバーリリース性
一方,ネイティブ型ジェランガムはカチオンを
などの優れた特性を生かして,デザートゼリー,
必要とせず,冷却するだけでゲル化し,そのゲル
ジャム様食品,フィリングなど様々な食品にゲル
化温度は非常に高い。第3図に示すように,ネイ
化剤として利用されている3)。
ティブ型ジェランガムのゲル化温度とゲル融解温
脱アシル型ジェランガムはカチオンと瞬時に反
度の差は非常に小さい点も特徴的である。この高
応してゲルを形成するため,例えば乳酸カルシウ
いゲル化温度がネイティブ型ジェランガムのユ
ム等の溶液に脱アシル型ジェランガムの溶液をス
ニークな特性の一つであり,様々な食品へ高いゲ
ポイトで滴下すると,瞬時に脱アシル型ジェラン
ル化温度を利用した用途が期待できる。
ガムがゲルを形成し,球状のゲルを作ることもで
2−4.粘性の利用
きるし,カルシウム溶液を撹拌しながら,脱アシ
脱アシル型ジェランガムは低濃度でもカチオン
ル型ジェランガムを滴下すると擬似さのうも調製
類が存在するとゲルを形成するために,増粘剤と
することができる。
かくはん
しての利用は難しい。一方,ネイティブ型ジェラ
160
160
䝑䜨䝊䜧䝚ᆵ䜼䜫䝭䝷䜰䝤
⬲䜦䜻䝯ᆵ䜼䜫䝭䝷䜰䝤
120
Ὼᗐ䚭䟺䉔䟻
Ὼᗐ䚭䟺䉔䟻
120
䕋 䜶䝯⼝ゆῺᗐ
□ 䜶䝯໩Ὼᗐ
80
80
40
40
䕋 䜶䝯⼝ゆῺᗐ
□ 䜶䝯໩Ὼᗐ
as is pH
as is pH
0
0
0
0.1
஘㓗Ca⃨ᗐ䟺%䟻䚭
0
0.2
0.1
0.2
஘㓗Ca⃨ᗐ䟺%䟻䚭
第3図 各乳酸Ca添加濃度におけるジェランガムのゲル化温度とゲル融解温度
(0.2%脱アシル型ジェランガムゲル,1.0%ネイティブ型ジェランガムゲルに各濃度の乳酸カルシウムを添加し,
示差走査熱量計にてゲル化温度,ゲル融解温度を測定)
食品と容器
678
2012 VOL. 53 NO. 11
増粘多糖類(発酵由来多糖類:ジェランガム,キサンタンガム,発酵セルロース)
2−6.ネイティブ型ジェランガムの食品への
ラスチック粘性を示す。水和された溶液が静置状
応用
態にある時,この溶液は,ゲルに似た弱いネット
ネイティブ型ジェランガムはゲル化剤,増粘剤,
ワークを形成していると考えられている9)。そ
安定剤として優れた特性を有するため,非常に幅
のため,低撹拌状態では高い粘度を示すが,撹拌
広い食品に利用されている4~7)。
速度が増加すると,ネットワークが即座に破壊さ
例えば,離水がほとんど無く,餅様の非常に弾
れ,粘度は急激に減少する。また,再び静置状態
力のある柔らかい食感のゲルを形成するため,で
に戻すと弱いネットワークを再度形成して高い粘
ん粉などを使用せずに餅食感のデザートゼリーを
度を示すという性質を持つ。
作ることができる。でん粉を使用していないので
また,キサンタンガムは,耐酸性,耐塩性,耐
老化が生じず,長期間保存してもゲルの物性,食
熱性,耐酵素性,耐凍結解凍性を示す。これは,
感が変化することがないため,最近の和風デザー
主鎖よりも大きい側鎖が存在することによると考
トブームに適した素材であると考えられ,非常に
えられている。この側鎖が,主鎖のグルコース残
有効に活用することができる。また,ココア飲料,
基を覆うことにより,主鎖を保護し,これらの性
混濁果汁飲料,ノンオイルドレッシング等の,不
質を与えているものと考えられている9,10)。
溶性固形分を含む食品系などでは,ネイティブ型
そのため,キサンタンガム溶液に高濃度の食塩
ジェランガムを少量利用することで,溶液中の不
を添加したり,低 pH に調整したり,レトルト殺
溶性固形分の分散安定も可能である。
菌のような強い加熱を施した場合においても,そ
の粘度,粘性に大きな変化はない。また,キサン
◆ 3.キサンタンガム ◆
キ サ ン タ ン ガ ム は, 非 病 原 性 微 生 物
タンガム溶液は凍結解凍耐性にも優れる。
Xanthomonas campestris が菌体外に産出する多
キサンタンガムの大きな特徴の一つにガラクト
糖類であり,マンノース,グルコース,グルクロ
ン酸で構成されている。主鎖はβ-1 ,4 結合して
マンナンやグルコマンナンとの反応性がある。特
3−2.ガラクトマンナンとの反応性
にガラクトマンナン類であるローカストビーンガ
いるグルコースからなり,側鎖は主鎖
のグルコース残基一つおきにマンノー
ス2分子とグルクロン酸が結合してい
る。側鎖の末端にあるマンノースはピ
ルビン酸塩となっており,主鎖に結合
したマンノースの C - 6 位はアセチル
化されていることが多い8)
(第4図)。
キサンタンガムは,主鎖に対する側
鎖の割合が大きく,その側鎖に含まれ
るカルボキシル基とピルビン酸に由来
するマイナス荷電の非常に強い多糖類
である。キサンタンガムの特異な性質
はこの側鎖によるものであると考えら
れている。
3−1.キサンタンガムの粘度・粘性
キサンタンガム溶液は強いシュドプ
食品と容器
第4図 キサンタンガムの一次構造
679
2012 VOL. 53 NO. 11
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
ムとキサンタンガムは,それぞれ単品では増粘す
乳化のためには乳化剤が必要となる。つまり,油
るのみの特性しかない。しかし,これら両者を併
は乳化剤によって乳化粒子となり,得られた乳化
用して加熱溶解後冷却すると良好に相互作用し,
粒子同士の結合防止や分散安定のために,キサン
非常に弾力性に富んだゲルを形成することができ
タンガムは機能していると考えられている。その
る。また,キサンタンガムはローカストビーンガ
他,高塩食品等へも粘度付与のために利用されて
ムと同じガラクトマンナンであるグァーガムとも
いる。
相互作用して,ゲルを形成することはできないが,
相乗的に高い粘度を発現することができる。
◆ 4. 発酵セルロース
(サンアーティストⓇ)◆
3−3.キサンタンガムの粘性を利用した食品
への応用
発 酵 セ ル ロ ー ス(Fermentation-derived
キサンタンガムは少量の使用量で良好なシュド
Cellulose)は,一般飲食物添加物にナタデココと
プラスチック粘性を示す。このシュドプラスチッ
して収載されており,ナタデココの別名として発
ク性は食品へ様々な機能を付与することができる。
酵セルロースもしくは醸造セルロースとして掲載
キサンタンガムが頻繁に使用されている食品は,
されている。発酵セルロースは適正な培地に酢酸
ドレッシング(ノンオイルタイプ,乳化タイプ),
菌を接種して,通気撹拌培養することで生産され
焼肉のタレ等である。その大きな目的は不溶性固
る微生物由来のセルロースである。この発酵セル
形物の分散安定と粘度付与である。特に,キサン
ロースを主成分として開発した製剤がサンアー
タンガムをドレッシングに使用した場合は,シュ
ティストⓇである。
ドプラスチック性という特徴的な粘性に起因した
4−1.発酵セルロースの主な特徴
もう一つの機能を付与することができる。それは
発酵セルロース製剤は,水に不溶なセルロース
瓶から注ぐと瞬間的に粘度が低下するため注ぎや
繊維が食品中で三次元的な網目構造を形成する
すく,野菜などにかかると粘度は元に戻り,付着
(写真1)ことによって,水溶性多糖類では成し
性が向上し滴れ落ちなくなるという性質を示すこ
得なかった優れた特長を食品へ付与することがで
とにある。
きる。具体的には,べとつきが少なく,水のよう
乳化タイプのドレッシングでは,不溶性固形物
にあっさりとした食感であるにもかかわらず,不
の分散安定と同じ機能で乳化粒子を安定化できる。
溶性固形物の分散能力が極めて高く,低濃度,低
キサンタンガム自身は乳化力を有していないため,
粘度で様々な成分を長期間分散,懸濁安定化でき
る。また,耐熱性に優れていることから高温でも
固形物分散安定化力を維持することができる。さ
らに,タンパク質の凝集防止や脂肪代替等の役割
を担うことも可能である。
これら機能を活用することで,ココア飲料,酸
性乳飲料,ドレッシング,タレ,スープ等の不溶
性固形物の分散安定や,レトルトプリン等のタン
パク質の安定化等様々な食品に優れた機能を付与
することができる。
4−2.レオロジー特性
発酵セルロース製剤の膨潤液は,B型回転粘度
計にて測定した場合は,キサンタンガム溶液と同
写真1 発酵セルロース繊維の走査型電子顕微鏡写真
食品と容器
680
2012 VOL. 53 NO. 11
増粘多糖類(発酵由来多糖類:ジェランガム,キサンタンガム,発酵セルロース)
様にシュドプラスチック粘性となり,その粘性は
て優れた特性を有している。これらの特徴を活用
ほぼ同じように測定される。しかし,キサンタン
した食品への主な用途について第1表にまとめた。
ガム溶液と発酵セルロース膨潤液のレオロジー特
発酵セルロース製剤は新しい食品開発のために非
性が異なる。第5図に発酵セルロース製剤,キサ
常に有効であり,これまでになかった食品を創造
ンタンガム,ローカストビーンガムの貯蔵弾性率
することを可能にする製品であるといえる。
(G’
)に与える周波数の影響を示した。発酵セル
ロース製剤の貯蔵弾性率(G’
)は周波数にあまり
100
影響を受けずに,低周波数側でも,高い弾性率を
有している。そのため,発酵セルロース製剤は他
10
G’
(Pa)
の多糖類よりも固体的な性質が強いということが
分かる。一般的に固体的性質が強い液体ほど不溶
性固形物の長期的な懸濁,分散安定性が優れてい
1
0.1
ると考えられており,発酵セルロース製剤が優れ
た不溶性固形物の分散安定化能を持つことは,こ
キサンタンガム
ローカストビーンガム
発酵セルロース製剤
0.01
の高い弾性率からも推察できる。
0.001
0.01
4−3.温度依存性
0.1
1
10
100
1000
Frequency(rad/s)
一般的に,水溶性多糖類溶液は温度の上昇とと
第5図 各増粘多糖類溶液(0.6%)の貯蔵弾性率(G’
)
に与える周波数の影響
もに,粘度の低下,固体的挙動の低下が生じる。
例えば,グァーガムやキサンタンガムは温度の上
フルイドレオメーターを用いて,20℃にて各増粘多糖類
溶液の貯蔵弾性率(G’
)に対する周波数依存性を測定。
Plate:50 mmφ Cone Plate
Strain:1%,Frequency:0.1~100 rad/s
昇と共に貯蔵弾性率(G’
)は低下し,高分子溶液
の特徴的な特性を示す。一方,発酵セルロース
製剤では,温度を上昇させても,貯蔵弾性率 G’
(Pa)は変化せず,固体的性質が維持され,発酵
セルロース製剤の固体的性質は温度の影響を受け
にくいことが分かる(第6図)。つまり,発酵セ
ルロース製剤は80℃に加温しても20℃の場合と同
様に不溶性固形物等の分散安定化能力を発揮する
ことができる。そのため,食品製造工程中の熱時
においても固形物を分散安定化でき,これまでの
製造工程中における課題解決のために,この特徴
を十分に利用することができる。
4−4.発酵セルロース製剤の食品への応用
発酵セルロース製剤は,従来の水溶性多糖類と
は異なり,不溶性の非常に細い繊維で構成される
新しい素材であり,低粘度で不溶性固形物を長期
第6図 各増粘多糖類溶液(0.6%)の貯蔵弾性率(G’
)
に与える温度の影響
懸濁・分散安定化でき,高温でもそれらの効果を
維持できるといった優れた特徴を有する。さらに
乳化安定性にも優れ,食品に耐熱,耐酸,および,
耐塩性を付与できるなど,水溶性多糖類と比較し
食品と容器
681
フルイドレオメーターを用いて,各増粘多糖類溶液の
貯蔵弾性率(G’
)に対する温度依存性を測定。
Plate:50 mmφ Cone Plate, Strain:1%,
温度:20~80℃
2012 VOL. 53 NO. 11
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
◆ 5. おわりに ◆
増粘多糖類は食品の物性を構築したり,安定化
なっている。今回紹介した発酵セルロース製剤は,
したり,新しい食感を作り出したりと様々な目的
待される。また,従来からドレッシングやタレ,
で使用さている。しかし,近年の食の多様化,高
ソースなどの粘度付与の目的で使用されているキ
齢社会への対応等,ニーズは多種多様になってき
サンタンガムは,介護食分野で必須の素材になっ
ており,従来から使用されている増粘多糖類の組
てきており,嚥下用とろみ剤として頻繁に使用さ
み合わせだけでなく,新しい素材の開発が課題と
れるようになってきている。新しい素材の開発と
次世代を担う素材であり,さらなる用途開発が期
えん
第1表 発酵セルロース製剤の食品への応用例 (カラー図表を HP に掲載 C093)
応用例
特徴・効果
コントロール
添加区
ココア
熱時でもココア末の完全分散ができる。 (チルド,ホット) 工程のタンク中でのココア末の沈殿防止。
酸性乳飲料
酸性乳飲料の系でも果肉を分散させること
ができる。
製造工程中のタンク内における固形物の沈
殿防止も可能。
ホットパック充填時の固形物均一充填にも
利用できる。
コンソメスープ
大きな具材でも分散できる。
工程のタンク中での固形物の沈殿防止や充
填時の固形物均一充填もできる。
ホット状態でも具材を分散できる。
レトルトプリン
レトルト中におけるタンパクの凝集を防止
できるため,チルドプリンのような滑らか
な食感のレトルトプリンを調製できる。
ドレッシング,
タレ,ソース
長期的な不溶性固形物の分散安定が可能。
製造工程中のタンク内における固形物の沈
殿防止。
ホットパック充填時の固形物均一充填。
食品と容器
682
2012 VOL. 53 NO. 11
増粘多糖類(発酵由来多糖類:ジェランガム,キサンタンガム,発酵セルロース)
開発が今後も必須である。
同時に,時代の流れに適した用途開発には増粘多
糖類は欠かせない素材であり,新しい組み合わせ
注)「ケルコゲル」は CPKelco の登録商標。「サンアー
ティスト」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標。
等によっても付加価値を持たせられるような用途
参 考 文 献
1)R. Chandrasekaran, R. P. Millane, S. Arnott and E. D.
6)大本俊郎,浅野広和,浅井以和夫,“微生物多糖類の
T. Atkins : Carbohydr. Res., 175, 1(1988).
食品への応用”,サイエンスフォーラム出版「ゲルテ
2)J. K. Baird, T. A. Talashek and H. Chang : Gellan
クノロジー」,p339−346(1997).
Gum : Gums and Stabilizers for the Food Industry 6,
7)浅野広和,大本俊郎,小川賀透,“新素材利用による
G. O. Phillips, D. J. Wedlock and P. A. Williams, eds.,
新しいゲル化剤,安定剤の開発”,月刊フードケミカ
IRLPRESS, p. 479(1992).
ル,5, 116−118(1998).
3)大本俊郎,宇野喜貴,“ジェランガムによる新食感デ
8)Whitcomb, P. J., and C. W. Macosko.“Rheology of
ザートの開発”,食品加工技術,21(2),23−35(2001).
4)浅野広和,大本俊郎,
“ネイティブジェランガムの特性
Xanthan gum. Jurnal of Rheology”22(5),493−505
(1978).
とその機能”,食品と科学,39(1),104−107(1997).
5)森田康幸,大本俊郎,浅野広和,“ネイティブ型ジェ
9)G . Holzwarth and E. B. Prestridge : Science, 197
(4305),757−759(1977).
ランガムの特性と食品への応用について”,月刊フー
10)D. J. Pettitt : Xanthan gum : Food Hydrocolloids Vol.
ドケミカル,3, 110−114(1997).
1, M. Glicksman, eds., CRC Press, p. 127(1982).
講習会のご案内
第5回 MRC・初級者のための食品膜技術講習会
◇日 時:2013年1月23日(水)24日(木)
◇場 所:(財)日本食品分析センター
〒151−0062 東京都渋谷区元代々木町52−1
Tel. 03−3469−7131(小田急線:代々木八幡駅,
地下鉄千代田線:代々木公園駅 下車徒歩5分)
◇参加費(円/人)
:MRC 会員=30,000円,MRC 大学・
顧問等会員=20,000円,学生=15,000円,企業非
会員=45,000円,大学等非会員=30,000円(2013/
1 / 1 以降の申し込みは +5,000円・学生は +3,000円)
◇参加申し込みおよび問い合わせ
食品膜・分離技術研究会(MRC)本部事務局
〒332−0015 川口市川口 1−1−3−3211
TEL & FAX 048−224−3336(事務局 渡辺敦夫)
e-mail:[email protected]
◇プログラム
1月23日(水)
(10:00 ~ 17:00)
膜技術および関連技術の総合学習
1.講習会ガイダンスと受講者自己紹介
2.食品の加工技術と膜関連科学の基礎
食品と容器
683
3.膜技術の基礎
4.濃度分極と膜濾過
5.膜の種類とモジュール構想
6.膜装置の組み方と運転データーの取り方
講師:渡辺敦夫
(17:00 ~ 18:45) 情報交換・交流会
1月24日(木)(10:00 ~ 16:30)
7.ファウリング層の基礎的性質
8.膜技術の応用の実際
8−1.無菌化濾過による食品の製造
8−2.ナノ濾過技術による食品の改質と機能性
食品の製造
8−3.飲料工業への膜利用
8−4.醸造工業への膜利用
8−5.水産工業への膜利用
8−6.食品分野以外への膜利用
9.メンブレンバイオリアクター
講師:渡辺敦夫・田辺忠裕
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連載エッセー 食べもの随想
71
金環食と皆既食
― 時間・空間・物質 ―
た
むら
しん
ぱち
ろう
田 村 真 八 郎
(元農水省食品総合研究所長)
本年・平成24年(2012)5月21日(月)は金環
の古典的な完成を見ます。その時代の偉人は,コ
日食(全環食)でした。九州の南部で朝早くから
ペルニクス(1473~1543),ガリレオ・ガリレイ
始まって,東京あたりでは午前7時30分頃から,
(1564~1642),ケプラー(1571~1630),ニュー
5分間ほど金環食が見られると予報されていまし
トン(1642~1727)等です。
た。しかし前日あたりの気象情報では,日本本州
その結論として,月は地球のまわりを楕円軌道
の南側は雲が出てしまい,金環食の観測はできる
で公転しており,そのため地球との距離が僅かな
かできないか分からないとされていました。
がら変動します。それで遠いときは地球から見え
つまり天文学のほうでは何年も前から何時何分
る大きさがやや小さくなります。その時が太陽を
と計算されて分かっているのに,気象学のほうで
かくし切れず金環食になるわけです。近いときは
は前日になっても,あるいは当日の1時間前に
皆既日食(皆既食)になるわけです。
なっても,晴れか曇りか分からない場合があるわ
第2の分野は第1の分野に比べて,かなり厄介
けです。
でした。そのため物質科学・化学の方向の解明は
もちろんこの理由は,天文学が優れていて気象
難渋しました。
学が劣っているわけではありません。それぞれの
大昔は,「…地・水・風・火…」と考えられま
扱う対象の性質によっているわけです。
した。地(土)は固体的なもの,水は液体的なも
実際には当日の天気は,意外に雲がうすくなっ
の,風は気体的なもので,火はものとはやや違い
てきてうろこ雲のようになりました。ですから,
ますがエネルギー的なものと考えれば,一応の合
そのうろこ雲のすきまのあたりを太陽が通るとき
理的な説明になっていたと思います。
に,真黒のメガネを使ってきれいな赤いリング状
固体的なものの中には,銅や鉄や鉛や金銀があ
になった金環食を見ることできました。
るわけで,そのことから鉛などから金をつくり出
人類の中でも古くから文化・文明が発達してい
すことができるのではないかと思われ,それが錬
た社会では,太陽と月についての関心が持たれて
金術になっていきます。
いて,日食などについてもかなり分かっていたよ
結局,金をつくることには失敗しますが,錬金
うです。
術は古代イスラム世界とヨーロッパ中世の数百年
古代の賢人たちが考えたことは,ひとつは宇宙
間の努力・試行錯誤の中で,多くの知識と化学的
や星・時間・空間などについてのこと,ふたつめ
手法を手に入れることになりました。これは後に
はこの世界がどういう物質でできているかという
物質科学・化学の発展の大きな武器になったわけ
ことでした。その第1は天文学・物理学の方向に
です。しかし理論は間違っていました。フロジス
発展し,その第2は広い意味の物質科学・化学の
トン説という,事実とは逆立ちした理屈になって
方向に発展したわけです。
いたのです。燃焼という現象を,燃える物資の中
第1の分野は,16世紀から17世紀にかけて一応
にはフロジストン(燃素)という天上へ昇ろうと
食品と容器
684
2012 VOL. 53 NO. 11
する物質があり,それが昇っていくのが燃焼であ
シュタイニウム(原子番号99)もアインシュタイ
るとしたわけです。
ンの記念として決められています。
この間違いを正して,燃焼は空気中の酸素と結
ニュートン以来の最高の理論物理学者アイン
合する現象だと見抜いたのが,フランスの化学者
シュタインは,あらゆることを疑い,徹底的に考
ラヴォアージェ(1743~94)です。精密に重量を
え抜きました。そして相対性理論や光量子仮説な
測って,「質量不変」の法則を確立し,近代化学
どの論説を発表しました。時間と空間は相互に独
の父とされるラヴォアージェは18世紀後半の人で
立ではないこと,質量は不変ではないことなどを
す。ですから,天文学・物理学が一応の完成を見
主張しました。理論のいきついた先として質量が
たのが17世紀の後半で,「質量不変」の法則が18
無くなると,ものすごく大量のエネルギーが発生
世紀末です。つまり古典天文学が一応の太陽系の
することなどを予言しました。これが原子爆弾や
全体像を解明したのと,近代化学がその入り口に
原子力の理論的な支えとなったわけです。
来たのとでは,100年の差があります。しかも化
それから,大きな質量のそばでは光が重力に
学はやっと方法論を見つけた段階なのです。しか
よって曲げられることも予言しました。その実証
し古典天文学は「相互に独立した時間軸と空間
として太陽のそばを通る光は太陽の質量によって
軸」をアプリオリに決めてしまっていました。こ
内側に曲げられているので,ふだんは太陽の明る
の独立した時間軸と空間軸は,20世紀になってア
さにジャマされて見えないのですが,皆既日食の
インシュタイン(1879~1955)によって疑われる
時には本来太陽の裏側にあって見えない筈の星を
ことになります。
観測できる,としました。これは後に実証されて,
18世紀末のラヴォアージェから20世紀初頭のア
アインシュタインの理論が正しいことが証明され
インシュタインまでの,つまり19世紀の100年間
ました。
にも優れた自然科学者が多数出ています。例え
物質を構成する粒子はその後小さい方小さい方
ば , イタリアの物理学者アヴォガドロ(1776~
に研究され,現在の標準理論によれば,17種の極
1866)は1811年に極めて大胆な,いわゆる「ア
微の素粒子になるとされます。そのうちの16粒子
ヴォガドロの仮説」を提出します。つまり気体と
は発見されていたのですが,最近になって最後の
いえども物質は空間に瀰漫しているのではなく,
ヒッグス粒子が40年ぶりに発見されたそうです。
分子つまり粒子として一定数点在しているとした
ヒッグス粒子は空間に瀰漫しているらしいのです。
ものです。これは初め受け入れられませんでした
そのため魚が水を発見しにくいように,ヒッグス
が,後に正しいことが認められます。近代の物理
粒子も発見されにくかったのかも知れません。
ビマン
学(空間)と化学(物質)とを結びつけていく第
1歩になるわけです。またロシアのメンデレーエ
フ(1834~1907)は1869年に元素の周期律表を発
追 記: ア イ ン シ ュ タ イ ン は ナ チ の ヒ ト ラ ー
表します。これは未だ発見されていない元素のた
(1889~1945)によりドイツを追放され,アメリ
めの場所を予定して空けておいたので,以後の新
カに亡命しました。第2次世界大戦中,ドイツが
元素発見の道しるべとなりました。
原子爆弾を開発することを恐れ,ルーズベルト
結局,天然自然には原子番号1の水素から,原
(1882~1945)大統領に,原子爆弾を開発するこ
子番号92のウラン(ウラニウム)まで92コの元素
とを進言する親書を送りました。これがアメリカ
がありました。このほとんど全ての元素は20世紀
の原爆開発(マンハッタン計画)を始めるきっか
の前半までに発見されています。またプルトニウ
けになったとされています。
ム(原子番号94)などの超ウラン元素は現在数十
なお,アインシュタイン,バーンシュタイン,
種が,サイクロトロンなどの研究機器によって作
フランケンシュタインなど,シュタインのつく名
り出されています。超ウラン元素の中にはアイン
前は何か夢を生み出してくれるようです。
食品と容器
685
2012 VOL. 53 NO. 11
●
海外技術情報●
2012 年食物繊維特集:ファイバー強化飲料
( 2012 Fiber Review : Understanding fiber fortification )
Beverage Industry(USA)p. 別 1( ’
12・4 )文献 № 5778
食物繊維は不溶性・可溶性のほか,粘性・発酵
サプリメントメーカーはピルやカプセル以外の製
性・生理的影響・由来・化学的構造などに細分化
品を作りたい。そこで彼らは飲料に目をつけた」。
され,こうしたさまざまなレンズを通して見るこ
しかし,口当たりや舌触りの悪化・雑味・消化
とが,消費者に訴えることができる製品開発につ
耐性や,高熱/酸性条件下での加工時の加水分解
ながるキーであると専門家は語る。
が原因の劣化など,ファイバーの処方には多くの
食物繊維とは難消化性の植物性炭水化物である。
課題がある。「最大の課題は,1食分に大量の
不溶性ファイバーは胃腸管を通過し,膨張して腸
ファイバーを含ませることだ。ファイバーの種類
の働きを整え,一方水溶性ファイバーは水を吸収
によっては官能特性が変わってしまう」と同氏は
してゼラチン状となり,消化管内の食物の動きを
語る。Gum Technology 社の J. Kuc 氏も口をそ
遅らせる。プレバイオティクスである水溶性ファ
ろえて,「ファイバー含有量が多いとのどに引っ
イバーは腸内細菌により発酵し,消化吸収・免疫
かかる感じの飲料になりやすく,好ましい舌触り
機能・骨に健康効能をもたらす。
との両立は難しい」と言う。上記の Roberts 氏は
新たな水溶性ファイバー素材であるイヌリンや
コスト面も重要視している。
フラクトオリゴ糖は粘性が無く,透明で無味のた
安価で低/非粘性ファイバー素材はここ10年で
め目に見えない素材とも呼ばれ,口当たりの軽い
開発が進み,軽くて透明なファイバー強化飲料な
ジュースやウォーター製品のファイバー強化も可
ど高根の花と思っていたメーカーに朗報をもたら
能である。オオバコ・βグルカン・ペクチンなど
した。1995年に初めて確認され命名されたプレバ
のような水溶性ファイバーが,舌触りや飲み応え
イオティクスは,消化器官内の善玉菌を育てる役
を調整するために長年使われてきた。また,難消
割を果たす。上部胃腸管では消化されず,大腸に
化性デンプン・ポリデキストロースやフラクトオ
達するまで劣化しない。結腸で発酵し,ビフィズ
リゴ糖・ガラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ
ス菌や乳酸菌など善玉菌の育成を促す。そしてミ
糖類といった低分子炭水化物が,食品加工に多く
ネラル類の吸収促進作用もある。
使われるようになった。難消化性デンプンは小腸
現在,メーカーの間で話題となっているのはイ
で消化吸収されないため,食物繊維に分類される
ヌリンやオリゴ糖類である。これらの「目に見え
ことも多い。
ない」素材は,ラベルにファイバー含有と表示す
飲料への応用
るのに十分な量を飲料に加えても,消費者には知
高い市場ニーズも手伝って,ファイバー摂取量
覚できない。
を上げたい消費者向け飲料の開発にメーカーは取
イヌリンとオリゴ糖類
り組んでいる。Nutrition Innovation 社ではサプ
これらは FOS,短鎖型では scFOS と呼ばれ,
リメントおよび機能性飲料の製造・販売・当局へ
チコリーやエルサレム・アーティチョークを原料
の認可申請などを担う。かつてニッチ市場だった
とし,結腸内で発酵する。ヨーグルト類や飲料に
ファイバー強化ビジネスに多くのメーカーが参入
使われることが多く,消化吸収を助ける働きをす
してきたと CEO の A. Roberts 氏は言う。さらに
る。イヌリンはカルシウムの吸収を助け,食欲を
「機能性食品メーカーは製品に付加価値を求め,
コントロールする効果があり,骨の健康と体重の
食品と容器
686
2012 VOL. 53 NO. 11
減量に効果を発揮する。Beneo 社では,チコリー
ジュースの場合,0.45%を加えれば1本8オンス
の根からフラクトオリゴ糖およびイヌリンを抽出
当たり0.75gのベータファイバー含有となる。粘
することに成功したと R. Wouters 氏は言う。共
性とクリーミーな口当たりを与える素材であり,
に水溶性ファイバーだが,フラクトオリゴ糖のほ
さらに湿度管理機能も有する。飲料用途に際して
うが水によく溶ける。
は,ほかの乾燥素材や植物性油脂・コーンシロッ
イヌリンは低脂肪飲料の飲み応えと口当たりを
プ等の溶けにくい素材とあらかじめ混ぜ合わせ,
改善してクリーミーに仕上げることから,乳製品
分散性を高めるよう同社では推奨している。
に使われることが多い。同社の Orafti GR は粒状
興味深い健康効能を持つ「透明」ファイバーに
イヌリン92%と,ブドウ糖・果糖・ショ糖8%で
カラマツ由来アラビノガラクタンがある。Lonza
作られており,粉末ドリンクには約1.14%を加え
社の ResistAid は「天然免疫機能促進素材」とし
る。ショ糖はイヌリンが増えたことで3.7%から
て販売され,水溶性多糖類アラビノガラクタンと
2.5%に減少させている。ほかに Orafti ST Gel も
抗酸化性・生物活性フラボノイドから成り,高度
ある。
分枝構造から熱/冷水によく溶ける。広範囲な温
Beneo 社のフラクトオリゴ糖には液状と粉末が
度・pH 条件下で安定し,GRAS 自己認証の取得
あり,控えめな甘さが砂糖代替品に適している。
および直接食品添加物としての認定を受けている。
ショ糖より溶解性が高く,ほかの高甘味度につき
小麦・コーンデキストリンも,無味無臭で粘性
ものの後味の悪さを緩和する。果物由来素材との
の無い性質から飲料に使われることが多い。
相性も良い。ファイバー強化リンゴ果汁には,フ
Archer Daniels Midland(ADM)社とマツタ
ラクトオリゴ糖含量95%である Orafti L95の使用
ニ社では,難消化性マルトデキストリン Fibersol−2
量がわずか1%である。
を販売している。特有の風味はなく,ジュース・
特にイヌリンは用途が広いと Cargill Health &
コーヒー・紅茶・タンパク質強化飲料・大豆飲料
Nuturition 社 の D.Schulz 氏 は 強 調 す る。 カ ロ
および高甘味度甘味料を使った飲料に10g まで加
リー減・飲み応えの改善・砂糖を使わない場合の
えることができる。酸・熱・レトルト条件下で安
舌触り改善なども可能にしてくれるイヌリンは,
定し,1g当たり炭水化物を1.6キロカロリー,
高甘味度甘味料との併用によってファイバー含有
10g当たり糖質を0.2g含むため,砂糖を加える
量向上にも貢献する。「イヌリンを水に溶かして
必要がない。ジュースに加えれば酸味をマスキン
も透明なままだ」と Schulz 氏。唯一の問題は,
グし,滑らかな舌触りを与え,柑橘類の苦みを抑
缶ジュースのような低 pH で分解しやすいことだ
える。乾燥個装スティックタイプもあり,1パッ
と言う。同社の Oliggo-Fiber Instant のような天
クに Fibersol−2 が5.6g=食物繊維5gを含み,
かんきつ
然イヌリンは,食事代替飲料・乳製飲料・粉末ド
「優良ファイバー源」ラベル表示基準を満たして
リンクに容易に利用できる。Oliggo-Fiber F97の
いる。Fibersol−2 は,粉末の香料・酸味料・高
ような短鎖イヌリンは,透明さを生かしたファイ
甘味度甘味料など他の成分とドライブレンドでき
バー強化飲料に適している。
る。
‘ステルス’食物繊維
また Fibersol− LQ コーンシロップは,製品に
Cargill 社の大麦ベータファイバー Barliv は,
甘さと吸湿性を与える水溶性コーンファイバーで
大麦やオーツ麦などに含まれる天然の水溶性食物
ある。
繊維ベータグルカンを純度70%まで濃縮してあり,
Corn Products International 社 は Nutriose シ
飲料に加えても透明なままである。LDL コレス
リーズを販売している。小麦やトウモロコシ由来
テロールを下げる働きがあるため,FDA から心
デキストリンでファイバー含有率が85%と高く,
臓病リスクを下げるとのお墨付きを得ており,炭
糖質を0.5%しか含まない。同社の S. Vega 氏は,
酸飲料・エネルギー補給飲料・乳製品に使われる。
Nutriose が飲料への使用において「柔軟性と多
食品と容器
687
2012 VOL. 53 NO. 11
様性の面で群を抜いている」と胸を張る。すぐ水
外的だと語る。また,ファイバー強化飲料に舌触
に溶け,ジュース・ソフトドリンク・ウォーター
りの良さを求める場合もガム類が「一石二鳥」と
類に向き,高い溶解性と低い粘性,優れた消化耐
同氏は言う。
性から使用分量を多くできる。pH 2.5~7の酸条
同社の Konjac A はゾウコンニャク由来の高粘
件下で安定なため,酸性のソフトドリンクや,長
性グルコマンナンで,95%水溶性ファイバーから
い賞味期限を要する製品への使用にも適している。
成る。ファイバー含有率を上げるにはもってこい
Tate & Lyle 社も Promitor のブランド名でト
の上,安定性も高いので,しばしば脂肪代替品と
ウモロコシ由来ファイバーを提供している。乾燥
しても使われる。満腹感が得られ,血糖管理とコ
粉末または液状で,ファイバー含有率は70~85%
レステロール抑制効果がある。飲料への使用分量
である。粉末タイプはよく水に溶けて透明になる。
は0.1~0.3%である。またコロハ種子から抽出す
Promitor Soluble Corn Fiber 85は高ファイバー・
る精製ガラクトマンナンは85%食物繊維を含み,
低糖(=甘味料2%未満)でかつプレバイオティ
75%水溶性/ 10%不溶性ファイバーから成り,
クスの性質を生かした応用が可能である。
使用分量0.1 ~ 0.25%で飲料に粘性を与えて安定
ガラクト-オリゴ糖類
させる。LDL コレステロールを下げて HDL コレ
ガラクトオリゴ糖(GOS)はヒト母乳に含まれる天
ステロールを上げる働きがあり,冷水によく溶け,
然オリゴ糖類で,Corn Products International 社
極端な pH 条件下でも安定している。
では NutraFlora のほか,乳糖から酵素反応によ
Aloecorp 社の Qmatrix は,アロエベラ葉純化
り得られる純度90% GOS の粉末 Purimune を提
パウダーで GRAS 物質として認証されており,
供している。水溶性が高く,10%溶液は高温や
ヒト消化器官における健康効能について興味深い
pH 4.5~7条件下でも安定し,少量で効果を発揮
研究結果が出ていると同社 K. Jones 氏は語る。
する。常温保存を含めたあらゆる飲料に使用可能
「アロエはアセチルマンノース多糖類という特異
であり,さわやかでほのかに甘く,粘性が低い。
な水溶性ファイバーであり,ヒトの健康に直接与
甘さはショ糖の30~35%である。飲料使用におい
え る 効 果 は 数 多 い 」。Qmatrix に は プ レ バ イ オ
てはほかの粉末とあらかじめ混ぜておくと,より
ティクスとしての特性があり,また酸化ストレス
溶解性が高くなる。同社では加水分解防止のため,
の軽減につながる Phase−2 酵素の増加にも貢献
pH が3以下の場合は冷蔵を推奨する。うたい文
する。消化器官や肌の健康への寄与についても研
句は「免疫刺激」のサポート・免疫反応に関連す
究が進んでおり,粘性は低く,かすかなアロエの
る炎症の抑制・抗生作用・アレルギー防止などで
香りと味を持つ。
あり,乳アレルゲンはほとんど検出されない。
ラベル表示
代替製品
一種類のファイバーを加えるだけでも,飲料の
ガム類はハイドロコロイドに分類され,植物や
ラベル上には健康効能がずらりと並ぶ。例えば
海草由来か,糖類を発酵させて作る。その増粘特
Corn Products International 社 の NutraFlora
性から,飲料ではシェークやスムージーのような
scFOS プレバイオティクスファイバーを含む製
粘性のあるものに使用する。多くは約85%水溶性
品は,1本当たり2.7gまたは5.4g含有の場合が
ファイバーから成るが,使用量が1%を超えるこ
あり,栄養内容表示も異なってくる一方,構造や
とはないため,ファイバー強化の役割は補助的な
機能に関しては,含有量が少なくても明示するこ
ものにとどまる。「アカシアガム以外のガム類を
とができる。同社 Vega 氏はラベル表示こそが飲
ファイバー強化の主役にしようとするのは得策で
料開発成功のキーと見る。「消費者に強くアピー
はない」と Gum Technology 社 CEO の A. Freed
ルするラベル表示ができるか否かに存亡がかかっ
氏は言う。アカシアの木から抽出されるガムは,
ている」。
(力丸みほ)
よほど大量に使用しない限り粘性が出ない点で例
食品と容器
688
2012 VOL. 53 NO. 11
●
海外技術情報 ●
豆類と全粒穀物のトレンド
( Legumes and Whole Grains : On Trend )
Prepared Foods(USA)p. 15( ’
12・5 )文献 № 5781
マ メ 科 植 物(legume: 学 名 Fabaceae ま た は
年には約160種類発売された。
Leguminosae)には,ピーナツやダイズなどの油
エンドウマメ(pea)の画分(fraction)
糧種子とレンズマメ,エンドウマメ,ヒヨコマメ,
ダイズタンパクほど十分に確立されてはいない
インゲンマメなどの乾燥穀実用のマメ(pulse)
が,比較的新しいエンドウマメのタンパク質分離
がある。
(以後本文のマメ類は pulse を意味する)。
物は,高い消化率(90~95%)を有し,価格競争
マメ類は非常に栄養に富んだ自然食で,一食当た
力もあり業界にとって有用である。エンドウマメ
り葉酸とチアミンは1日の推奨摂取量(RDI)の
タンパクはダイズタンパクよりアレルギー源が少
20%以上,ピリドキシンは10 ~ 19%,リボフラ
なく,ネガティブなホルモン作用もない。エンド
ビンとナイアシンは5%以上を摂取できる。また,
ウマメタンパクは,よりバランスの取れたアミノ
重要なミネラルであるカリウム,カルシウム,マ
酸プロファイルを得るために,しばしば他の植物
グネシウム,銅,鉄,セレン,亜鉛を多く含む。
ベースのタンパク質(ライスやコーン)と組み合
マメ類は優れた食物繊維の供給源(乾物換算で
わせて利用される。ホエーと異なり,エンドウマ
13%,その内30~40%は可溶性)であり,高品質
メタンパクを高濃度に含有するパウダーを少量の
のタンパク質源(乾物換算で20~25%)である。
水と混合すると,半固体の混合物を形成する。こ
全体的に脂質含有量が少ないマメ類は,慢性病の
のため,エンドウマメタンパク分離物は,スポー
リスク要因を低減させるために脂肪を減らすべき,
ツ栄養や体重管理製品における乳タンパク質の代
との食事勧告の点から特に重要である。
替,また食肉や魚肉や加工食品では脂肪と水を結
268人の協力者による最近の治験10件のメタ分
びつけ,あるいはタンパク質リッチなベーカリー
析では,総コレステロールを11.8 mg/dL,LDL
製品,シリアル,スナックなど,様々に応用でき
コレステロールを8.0 mg/dL 低下させたことが報
る。
告されている。マメ類の有効な栄養成分は,イソ
エンドウマメ繊維は,特に洗浄され処理された
フラボンやサポニンのようなファイトケミカルと,
エンドウマメの外皮より得られる。ほとんどの製
可溶性繊維,植物タンパク質,葉酸,オリゴ糖な
品は90%以上が繊維であり,低脂肪で味や香りが
どであり,これらはすべてコレステロール値を下
ないので,(最終製品の)テクスチャーや味に影
げる効果がある。
響することなしに,可溶性および不溶性繊維を増
マメ類はグリセミックインデックス(GI)が
やすことができる。
低く,レンズマメ,インゲンマメが27,ヒヨコマ
研究ではエンドウマメ繊維を加えると,さまざ
メが33,乾燥挽き割りグリーンピースが48である。
まなガムや増粘剤同様にケーキ生地の粘度を改善
McCrony 氏らが実施したメタ分析では,マメ
することが示されている。
類の消費と肥満のリスクとの間には一貫して負の
天然のエンドウマメデンプンは,加工デンプン
相関があることを示した。しかし研究の多くは、
(modified starch)の代替となり,クリーンラ
食事や生活スタイルの因子が交絡する可能性を考
ベル表示が認められる。一般的にアミロース含有
慮していない。
量が高く(35%),これらの素材は他の天然デン
Mintel Group に よ る と,2000年 は10以 下 で
プンより,増粘,ゲル化,フィルム形成特性が優
あったエンドウマメタンパクを含む製品が,2009
れる。加工デンプンと同様に,エンドウマメデン
食品と容器
689
2012 VOL. 53 NO. 11
せんだん
プンは,高温,酸,剪断に対して安定性を示す。
率は,29%であったと報告している。2008年,市
エンドウマメデンプンの用途は,食肉や魚肉の
場価値は15.6億ドルであった。2012年は少なくと
水分保持,ベーカリー製品や乳製品の水分結合と
も26億ドルの価値になるに違いないといわれている。
ゲル形成,押出成形のスナックのパリパリ感やボ
2008年1月から2009年6月の間,Mintel 社 Global
リュームの改善などがある。エンドウマメのデン
New Products Database は,グルテンフリーは,
プンや繊維を4%加えると,ソーセージの脂肪を
ヨーロッパで発売される新製品の最も一般的なヘ
減らしながら,テクスチャーや水分保持を改善す
ルスクレームで,アメリカに次ぐ10番目であるこ
ることができる。
とを見い出した。この期間中,3,398のグルテン
30%のマメ類デンプンを含むヌードル,パスタ,
フリー製品が世界で発売された。
パンは,2%の難消化性デンプンを供給する処方
天然素材で製造される食品や化学物質がフリー
が可能となる。さらに,基本素材としてエンドウ
な食品は,食品業界にとって主要な推進要因であ
マメデンプンを含むパン生地やクラッカーは,追
り、またマメ類が重要な役割を果たす領域である。
加で水分を加えなくても,優れた物性と品質を示
マメ素材は,例えば,「ベジタリアン」「低 / 無 /
す。
減脂肪」「オーガニック」「オールナチュラル」
「低 / 無 / 減アレルゲン」のような健康に関連す
ヒヨコマメおよびレンズマメ粉
ヒヨコマメ粉を30%含むパスタは良好な官能特
るヘルスクレームに用いることができる。
性が得られる。スパゲティでは,デュラムセモリ
チア種子
ナ粉に混ぜる量を増やすと,タンパク質の量を増
ある種の古代植物に新しい期待が高まっている。
やし,グルテンの量を減らすことができる。焼き
チア種子(chia seed:シソ科サルビア属,学名,
たてのグルテンフリーパンのテクスチャーを改善
Salvia hispanica。食用や飲用に用いられている)
し,さらにパン内部の硬さを低減し,弾性を強化
は よ い 例 で あ る。 チ ア 種 子 は オ メ ガ 脂 肪 酸 が
する加工インゲンマメ粉が開発された。ベーカ
ALA(アルファリノレン酸)の形で多く含まれ
リー製品からグルテンを除くことには,技術的な
ている。オメガ-3 必須脂肪酸が健康に極めて重
課題がある。多くのグルテンフリータイプのパン
要であることが消費者に広く知れわたったため,
は,主にデンプンをベースにしており,食感やフ
食品製造業者はチア種子をさまざまな製品に組み
レーバー,パンの内外部の特性が劣ることになる。
入れるユニークな方法を探している。
市場の可能性
いくつかのサプライヤーは,抗酸化物,繊維,
グルテンやコムギを含まない製品に,マメ類
タンパク質と高度のオメガ-3 を含むチア種子か
ベースの画分を用いる市場の可能性は極めて大き
ら得られるさまざまな派生品の評価に注力してい
い。グルテンは,コムギ,ライムギ,カラスムギ
る。これらには,安定化チア油,チア種子の低温
に含まれる貯蔵タンパク質の一般的な名前である。
圧搾抽出処理物,チア油抽出後に得られる脱脂チ
セリアック病はグルテンタンパク質の消費が引き
ア粉,チア ALA 粉末,チア油のスプレードライ
金となって,消化管の粘膜にダメージを与える免
品,チアタンパク質などがある。これらは,パン,
疫反応である。アメリカでは,133人に1人(250
シリアル,クッキー,シリアルバー,パスタ,オ
万人以上)がセリアック病に罹っていると考えら
リーブオイル,スープ,インスタントコーヒー
れている。
ミックス,チョコレート,ジュース飲料など多く
Packaged Facts 誌は,2005年以来,アメリカ
の製品への用途として出回ろうとしている。
かか
(十時正義)
のグルテンフリー食品および飲料の年間平均成長
食品と容器
690
2012 VOL. 53 NO. 11
●
海外技術情報 ●
工場安全に対する継続的改善の取り組み
( Implementing a Continuous Improvement Mindset )
Food Engineering(USA)p. 35( ’
12・5 )文献 № 5783
ケーブルテレビの番組「ダーティー・ジョブ」
安全柵などを設けても
のパーソナリティーが「従業員の安全こそが第一
従業員がそれを無視し
などという会社は疑ってかかった方がいい」と発
て作業すれば意味がな
言してから,工場安全についてちょっとした論争
い。 大 手 乳 製 品 メ ー
が起きている。工場安全に関わる専門家はおしな
カー,Dean Foods 社
べてこの発言に批判的だが,製造ビジネスとその
でも,事故の92%は従
製造現場環境の安全との間にはある種の拮抗関係
業員自身に起因してい
があることはだれもが認めるところであろう。
るとして各種の安全装
究極の安全を求めるなら機械を止めてしまうの
置の整備よりも従業員
がベストであるが,そんなことのために投資する
の仕事のやり方を変え
者などいるわけがない。実効的な安全施策を展開
ることに重点を置いて
するためには組織全体としての取り組みと継続的
いる。無論,手袋や,
改善の姿勢が必要であり,「安全第一」を掛け声
ゴーグル,マスク,耳
だけに終わらせないためにはそれを支える実際的
あてなどの防具は身動
なプログラムが必要である。
きをとりにくくしたり, フォークリフト用480Vバッ
きっこう
快適性を損なったりす
米安全性評議会(NSC)では,人身事故に至り
労働現場での危険を低減す
る防護服 テリー交換装置 得るいわゆる「ニアミス」の報告とその根本原因
るので,その改善にも
の調査が安全のために極めて重要であるとしてい
取り組んでいる。
る。この考え方は5年前に Barilla America 社が
NSC が 奨 励 す る の
提唱したもので,同社はニューヨーク州ロチェス
が安全管理システムの
ターに新しくパスタ工場を建設した際に,事故に
充実で,これはいわば
よる従業員の欠勤を2014年までに半減させるとした。
食品安全システムの労
そのためにこの工場では生産開始の6カ月前から
働者版ともいうべきも
新規雇用者に対する安全教育を行うと共に,緊急
の で あ る。ISO14001
時対応,その他の安全活動に報奨制度を導入した。
やその欧州版 OHSAS18001などをベースとして
しかしながら,このようなアプローチについて
お り, 前 出 の Barilla 社 の 場 合, そ の 4 工 場 で
懐疑的な専門家は少なくない。あるアンケート調
OHSAS の認証を取得しているという。
査では3分の2の専門家が,安全に対するこうし
Hormel Foods 社の場合,2006年から正規従業
たインセンティブを与えると,従業員は小さな事
員100名あたりの傷害・疾病率を記録し,これを
故を報告しなくなり,本当に重大な事故が発生す
同業界の平均値と比較している。初年度において
る前にその予防措置を講ずる機会が失われてしま
は同社と業界の数字は9.1であったが,2010年に
いかねないと答えている。
は Hormel 社の数字は5となり,業界平均より
防護服や機械の安全柵等だけでは限界があると
23%低くなった。同社は,85カ所の工場,DC,
いう認識から,どの安全プログラムも従業員の仕事
その他事業所の従業員2,500名以上について記録
への取り組み姿勢の改善が重要であるとしている。
をとっており,1994年から安全優秀制度を導入,
食品と容器
691
パン工場での粉じん爆発防
止用爆発逃がしパネル 2012 VOL. 53 NO. 11
昨年度は22カ工場が優秀賞を受賞した。そのひと
報メッセージを採用する例もあるという。前出の
つ,同社最新工場の工場長にいわせれば,「安全
Northeast Foods 社 Clayton 工場では,従来のサ
に近道はない。事故減少のメリットは補償金の支
イレンなどに代わって退避指示やらメンテナンス
払額減というだけでなく,ロスや廃棄品の減少と
作業連絡などおよそ100種類にも及ぶ各種の音声
いうところにも現れてくるのだ」と言う。
メッセージを発信するシステムを備えている。
火災や爆発事故に対する安全対策についても関
安全管理の自動化を実際にやるとなると,これ
心が高まっている。数年前全米防火協会(NFPA)
は実に大変な仕事である。2005年に NFPA の安
は電気作業時の負傷事故防止のための基準をより
全基準が変わり,デュアル PLC システムという
厳しいものに改正した。2008年に起きた Imperial
新技術が使用できることになったが,実際のシス
Sugar 社の工場での粉じん爆発事故が契機となり,
テムは複雑で当時は膨大なコストがかかるもので
2011年の食品自動化・製造会議で爆発のリスクの
あった。ただ,この安全システム用 PLC も現在
ある各種のドライフードが発表された際には多く
では随分と普及してきている。
の専門家や技術者が会場に詰めかけた。
もうひとつさらに大きな変化として現れてきて
新しく建設される食品工場においてはこの爆発
いるのが機械のリスク・アセスメントである。機
に対する意識が高まっている。今年「食品プラン
械が本来備えている危険性はその使われ方によっ
ト・ オ ブ・ ザ・ イ ヤ ー」 を 受 賞 し た Northeast
て変わるという観点から,何年か前に包装機械
Foods 社の Clayton 工場では原料小麦粉のシフ
メーカー協会がその認証制度を導入した。それ以
ター(ふるい装置)エリアを生産フロアから完全
来,リスク・アセスメントはいまや一般的なもの
に遮断し,壁や天井には爆発の逃がしパネルを設
となりつつあり,欧州向けの機械には見積もりに
けている。小麦粉というものは粉じん爆発の誘因
それを添付するのが前提条件であり,そうするこ
物質の最たるもので,これを扱う製パン工場は防
とが米国内でも他の機械メーカーとの差別化の
火協会の基準 NFPA61に合わせている例が多い
ツールにもなってきている。
が,この NFPA61は製粉工場のための基準であ
工場内の整った環境の中だけにおいても従業員
る。食品メーカーには NFPA654や664の方がよ
の安全を守ることはたやすいことではない。まし
り適切であって,実際あるベビーフードのメー
てそれが工場の外でのこととなると問題はより難
カーにこの NFPA654を推奨し,採用させた防火
しくなる。交通事故原因の第一は運転中の携帯電
協会の専門家によれば,「爆発事故によるビジネ
話などの「ながら運転」であることは誰もが知っ
スへの影響は極めて甚大であり,ゆるい基準を選
ている。よって,取りあえずとるべき策は従業員
ぶなどというのは愚の骨頂だ」と言う。
に対して運転中の電話を禁止することである。
米労働安全衛生局の取り締まりは極めて厳しいも
Dean Foods 社では今年1月から自動車運転要員
のであり,もし事故があった場合には査察が入り,
の乗務中の通話やメールを禁止した所,人身事故
高額な罰金を科せられることになる。最近の例でい
が25%減少したという。同様に,工場生産現場に
えば,Glister-Mary Lee 社のパスタ工場でダストコ
おいても原則携帯電話を禁止し,限られた安全な
レクター内に入って溶接作業を行っていた二人の作
エリアでの使用にとどめるようにしたという。
業者が重度のやけどを負ったが,その事故に対す
職場の安全確保には,会社経営陣のコミットが
る罰金は231,000ドルにのぼった。
まず第一に必要である。どんな対策を実施するに
従業員に対する安全教育が重視される一方,技
しても,必ずコストがついて回るわけだが,しか
術的な進歩も作業環境の安全強化に一定の役割を
し調査データが示すように,安全管理にすぐれた
果たしている。10年ほど前までは音響による警報
企業というのは収益性においても,その他の企業
というのが一般的であったが,最近では MP3技
指標でも優秀な結果を残していることを知るべき
術を使って従業員の出身国に応じた多言語での警
だ,と NSC の幹部は言う。
食品と容器
692
(大池静男)
2012 VOL. 53 NO. 11
●
海外技術情報 ●
ブルーベリー抽出物混合によるりんごジュースの抗酸化活性の向上
( Blueberry Extract )
Food Processing(USA)p. 94( ’
12・5 )文献 № 5786
フルーツジュースは,家庭で作るには手間がか
能性を示した。これらの特長から,ブルーベリー
かるが含有成分が健康に良いことが消費者に知ら
およびその加工品は近年ますます注目を集めてい
れるようになったことから,加工フルーツジュー
る。
スの消費量が増加している。抗酸化活性を強化し
ブラジルで栽培される温帯果実の中で,この20
た新製品や新素材が飲料業界のトレンドであり,
年間で栽培面積と収穫量が最も増加したのはりん
特に混合ジュースの調製に関する多くの研究が行
ごである。ブラジルで主に栽培されるりんごの品
われている。
種は「ふじ」と「Gala」であるが,これらには酸
Branco ら(2007)によると,混合ジュースは
やポリフェノール類の含量が少ないことが知られ
成分個々の官能特性を利用する目的で作るが,結
ている。りんごにもブルーベリーと同様,ファイ
果として,フレーバー成分や栄養機能成分の相乗
トケミカルと呼ばれる一連の生理活性物質が含ま
効 果 と い っ た 多 く の 利 点 を 生 む こ と に な る。
れ,その量は品種や収穫時期,貯蔵,加工により
ジュースの混合による効果については,さまざま
変化する。りんごに多く含まれるフラボノイド類
な研究成果が発表されている。Matsuura, Rolim
には2型糖尿病の予防,LDL コレステロールの
(2002)はパインジュースにアセロラジュースを
酸化防止,がんの予防等の作用があることが報告
10%混合すると,製品のビタミンC初期含量が5
されている。
倍に増加したと報告している。Neves ら(2011)
本 研 究 は, り ん ご ジ ュ ー ス に ブ ル ー ベ リ ー
は,アマゾン原産のパッションフルーツ,buriti
ジュースを混合することで,抗酸化活性を強化し,
さらに風味の良い配合を見いだすことを目的とし
(ヤシの一種),カムカム,carambola(スターフ
ルーツ)等の熱帯産フルーツを混合することによ
て行った。
り,ビタミンB2 ,ビタミンC,カルシウム,リン
<実験>
および鉄が豊富に含まれるネクター飲料を開発した。
試料調製
ブルーベリー(ブラジルでは mirtilo という名
ふじりんごとブルーベリーをフードプロセッ
前で知られている)はツツジ科に属し,ヨーロッ
サーで別々に粉砕し,多孔質のプラスチック容器
パおよび米国が原産とされている。その色合いか
に 入 れ て 5kg/cm2× 5 分 間 の 条 件 で 圧 搾 し た
らも分かるが,ポリフェノール類(主にアントシ
(3回)。Pectinex 100L(ペクチン分解酵素)を
アニン)等の天然抗酸化成分が多く含まれること
サンプル100 L 当たり3mL の割合で加え,45℃
がよく知られている。これらのアントシアニンは
にて60分間処理し清澄化したものを冷蔵保管した。
フリーラジカルの消去や抗炎症作用,血液循環の
分析
改善,悪玉コレステロールの低減および糖尿病の
リンゴ酸の濃度は,0.1 N の NaOH 標準液の滴
改善等,健康に有用な作用を示す。Ramirez ら
定により測定した酸度から算出した。総ポリフェ
(2005)は,ラットの餌に凍結乾燥したベリー類
(ブルーベリー,ビルベリー)を加えると,記憶
ノール量は Folin-Ciocalteu 変法を利用し,カテ
キン(SIGMA, C -1251)を標準物質として定量した。
力が増強されることを発見し,これらがアルツハ
溶液中の固形分濃度を Brix 計にて測定した。
イマー病やパーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症
ショ糖,果糖,ブドウ糖は HPLC にて測定し,
(ALS)等の神経変性疾患の予防に効果がある可
食品と容器
総アントシアニン量は比色法で定量した。
693
2012 VOL. 53 NO. 11
抗酸化活性の
測定
Benzie と
Strain(1996),
P u l i d o ら
(2000) に よ る
FRAP 法 を 利
第1表 りんごジュース,ブルーベリージュースおよび混合サンプルにおける成分含有量
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
りんご ブルーベリー
100
0
95
5
90
10
80
20
70
30
0
100
TSS
12.25
12.25
12.50
12.50
12.00
10.00
pH
4.63
4.52
4.24
3.96
3.76
3.08
SUC
2.377±0.007
2.180±0.003
2.005±0.008
1.663±0.005
1.391±0.005
0.000
FRU
9.599±0.030
9.227±0.017
9.169±0.013
8.728±0.026
8.601±0.020
6.115±0.003
GLC
3.005±0.080
3.108±0.006
3.312±0.006
3.583±0.010
3.986±0.008
5.990±0.003
TTA
0.108±0.004
0.134±0.004
0.163±0.004
0.145±0.000
0.190±0.004
0.359±0.004
TSS:溶液中の固形分濃度(°Brix)
;SUC:ショ糖(g/100mL);FRU:果糖(g/100mL)
GLC:ブドウ糖(g/100mL);TTA:酸度(g/100mL)
用して測定した。
標準物質である 6-hydroxy-2 , 5 , 7 , 8-
tetramethylchroman- 2- carboxylic
<果糖>
acid を 適 度 に 希 釈 し, 3 mL の
FRAP 試薬と100 L のスタンダード
<ブドウ糖>
ま た は サ ン プ ル を 混 合 し,597nm
における吸光度を測定した。
官能評価
<ショ糖>
りんごジュースを基準として,り
んごジュースとブルーベリージュー
スの配合が異なるサンプルのフレー
バーを相対的に評価した。最もフ
レーバーの劣るものを「1」,最も
第1図 りんごジュースにブルーベリージュースを添加すると糖質組
成が変化(ブドウ糖は増加,果糖とショ糖は減少)
フレーバーが優れたものを「9」,基準と同程度
ブドウ糖と果糖が1: 1の割合で含まれており,
であれば「5」とした。
りんごジュースより甘味が弱く感じられた。りん
統計処理
ごジュースにブルーベリージュースを混合すると
分散分析によりサンプル間の差を判定した。必
糖酸比が低下する。ブルーベリージュースの配合
要な場合は,さらに有意差検定を行った。
が20% では糖酸比が96となり,30%では73.74ま
<結果と考察>
で低下した。これ以上ブルーベリージュースの配
化学分析
合を増やしたところフレーバーが極端に低下した
化学分析(Brix,pH,糖質,酸度)の結果を
ため,配合は30%までとした。各サンプルの糖質
第1表に示す。
濃度の分析結果を第1図に示す。
りんごジュース の Brix 値 は12.25, ブ ル ー ベ
りんごジュースの酸度は0.108±0.004 g/100 mL,
リージュースは10.00%であった。ブルーベリー
ブルーベリージュースは0.359±0.004 g/100 mL で
ジュースとりんごジュースの pH はそれぞれ3.08,
あった。前者に後者を混合すると酸度が増加し,
4.63であり,(pH が低い)ブルーベリージュース
30%配合では酸度が0.190±0.004 g/100 mL となっ
の配合が多いほど,pH が低かった。
た。ブルーベリーに含まれる主な有機酸はクエン
りんごジュースの糖質濃度は14.98 g/100mL で
酸とリンゴ酸であり,前者が多く含まれ,りんご
あり,これを酸度で割った糖酸比が非常に高い
にはその名の通り,リンゴ酸が多く含まれる。ク
(138.71)ことから,強い甘味を呈することが分
エン酸とリンゴ酸の pKa 値(酸解離定数:値が
かる。また,甘味が強い果糖が多いことも甘味が
小さいほど強い酸)はそれぞれ3.09,3.40であり,
強い理由である。一方,ブルーベリージュースの
クエン酸を多く含むブルーベリーの方がりんごよ
糖質濃度は12.10 g/100 mL,糖酸比は33.69となっ
り酸度が高くなると考えられる。
た。ブルーベリージュースにショ糖は含まれず,
総ポリフェノール量,アントシアニン量,抗酸化
食品と容器
694
2012 VOL. 53 NO. 11
活性(FRAP 値)を第2表に示す。
第2表 りんごジュース,ブルーベリージュース,混合ジュースの成分含有量
りんごジュースの総ポリフェノー
Ⅰ
ル量は少なく(242.26±5.08mg/L),
文 献(Zardo ら2009) 値 の255± 9
mg/L と同等であった。これに対し,
総ポリフェノール量が多いブルーベ
リージュースを混合すると総ポリ
りんご
ブルーベリー
TPC
Anthocyanins
FRAP
100
0
242.26土5.08
7.70±0.00
718.14±7.50
Ⅱ
95
5
266.37土4.40
31.44±2.27
935.53±11.99
Ⅲ
90
10
301.19土1.8
34.65±3.18
1599.20±27.04
Ⅳ
80
20
304.46士3.89
49.25±2.50
1774.11±54.00
Ⅴ
70
30
319.94土0.52
62.89±2.27
1893.05±51.00
Ⅵ
0
100
394.64土3.22
305.14±4.76
3226.39±23.99
TPC:総ポリフェノール量;FRAP:鉄イオン Fe(Ⅲ)に対する還元能(抗酸化活性)
フェノール量は増加する。ブルーベ
リージュースの配合が10% および20% のサンプ
ルにおける差はほとんど認められなかったが,
30 % で は319.94±0.52 mg/L ま で 増 加 し た。 ブ
ルーベリージュースの総ポリフェノール量はりん
ごジュースより62.90%多い。りんごに含まれる
主なポリフェノール類としては,フラバノール類
(カテキン類とプロシアニジン類),ヒドロキシ桂
皮酸,ジヒドロキシカルコン(フロレチン),フ
ラボノール類およびアントシアニン類があり,ブ
第2図 りんごジュースにブルーベリージュースを添
加すると抗酸化活性が増大
ルーベリーには大部分がアントシアニン類の特に
遊離型のものが多く含まれ,フラボノール類(ケ
ルセチン,ケンペロール,ミリセチン),カテキ
りんごジュースにブルーベリージュースを加える
ン類((+)−カテキン,(−)エピカテキン,カ
と,アントシアニンの含量が増加するが,30%添
テキン重合体),安息香酸,桂皮酸が含まれる。
加すると62.89±2.27 mg/100 g となった。
りんごジュースに含まれるアントシアニン含量
りんごジュースの抗酸化活性は718.14±7.5μM/g
は7.70±0.00 mg/100g と少なかった。これは,ア
であったのに対して,ブルーベリージュースは
ントシアニンを多く含むりんごの皮を加工処理の
4.5倍の3226.39±23.99μM/g であった。配合の異
際に絞りかすとともに廃棄したことによる。また,
なるすべてのサンプル間に明らかな差が認められ
品種「ふじ」は約20 mg/100 g と低い値を示すこ
た。ブルーベリージュースをりんごジュースに混
とが報告されている。ブルーベリージュースはそ
合すると抗酸化活性が増大し,30%配合したサン
の色からも分かるように,305.14±4.76 mg/100 g
プルの活性が最大となった。
と多くのアントシアニンを含んでいた。
第2図にブルーベリージュースの配合と抗酸化
第3図 各配合におけるアントシアニン量と FRAP の
関係(相関関係あり)
食品と容器
第4図 各配合における総ポリフェノール量と FRAP
の関係(相関関係あり)
695
2012 VOL. 53 NO. 11
活性の関係を示す。ブルーベリージュースをりん
第3表 りんごジュース,ブルーベリージュース,混合
ジュースにおける官能評価結果
ごジュースに対して30%配合した時の抗酸化活性
は,りんごジュースと比較して2.63倍に増加した
Ⅰ
ことから,全体の品質が向上したと言える。
各配合における FRAP と総ポリフェノール量
およびアントシアニン量との関係を第3,4図に
示す。FRAP と総ポリフェノール量およびアン
トシアニン量との間に相関関係が認められた。
りんご
ブルーベリー
フレーバー
100
0
4.95±1.49*
Ⅱ
95
5
4.69±1.67NS
Ⅲ
90
10
5.26±2.65NS
Ⅳ
80
20
4.56±4.71NS
Ⅴ
70
30
3.52±4.89**
Ⅵ
0
100
1.17
*
基準(りんごジュース)
**基準との有意差が認められた;NS:基準との有意差なし
FRAP−総ポリフェノール量,FRAP−アントシ
アニン量の相関係数はそれぞれ0.9739,0.8236で
と同等のフレーバーであると判断された。
あった。Prior らは,ブルーベリーの複数の品種
<結論>
を用い,抗酸化活性と総ポリフェノール量および
りんごジュースにブルーベリージュースを混合
アントシアニン量が相関関係にあるが,総ポリ
すると,ポリフェノール類,アントシアニン類を
フェノールの方がアントシアニン量と比較して抗
補えるため,抗酸化活性を強化できることが分
酸化活性との相関が強いことを示している。
かった。実験水準中ブルーベリージュースを30%
<官能評価の結果>
配合した時に最大の効果が得られた。官能評価の
各配合の官能評価結果を第3表に示す。ブルー
結果から,ブルーベリージュースの配合20%まで
ベ リ ー ジ ュ ー ス の 配 合 5 ~20% で は, り ん ご
はフレーバーに明らかな違いは認められなかった。
ジュースと有意差は認められず,りんごジュース
(内麻博之)
●
海外技術情報 ●
健康的で文化的なグローバル飲料のトレンド
( Healthful,Cultural Products Dominate Globally )
Beverage Industry(USA)p. 28( ’
12・5 )文献 № 5784
味覚の嗜好がその地域の文化によるものであれ
「西欧の女性消費者に特に好調だが,ハード・
偶然の一致であれ,その他の国々に影響される可
サイダー 1)は景気後退の圧力に影響されずに,
能性があるとはいえ,特定の地域では固有の飲料
過去数年間に何とかその存在価値を見直すことが
トレンドを好むというのは明らかである。
できた」と同氏は言う。その結果,今は米国にも
アダルト・オンリー
進出している。
シ カ ゴ の 市 場 調 査 企 業 Euromonitor
ラテンアメリカでは,輸入スピリッツが西欧化,
International 社が2月9日に実施した,同社ア
高級化,上昇志向の消費故に,極めて好調だと同
ルコール飲料アナリスト S. Malandrakis 氏と上
氏はウェビナーで語った。洗練と高級化はこの地
級アルコール飲料アナリスト J. Cunnington 氏主
域を進歩させる“流行語”で,大多数の新興国で
催のウェビナー(オンラインセミナー)によると,
は,高級化がすべての飲料カテゴリーで目指す方
中近東,アフリカの多くの消費者は西欧のいくつ
向性である。
かの飲料パターンを見習うことを熱望している。
米国と同様,オーストラレーシア地域2)の消
また,ウォッカ,バーボン,ダーク・ラムは西
費者は大量生産ビールから離れ,クラフト分野へ
欧で好調であり,RTD アルコール飲料は英国と
移行した。その関連でダーク・ビールがイタリア
西欧で成功したと Malandrakis 氏は言う。
とアフリカ,そしてある程度だが北米で好調であ
食品と容器
696
2012 VOL. 53 NO. 11
る。ナイジェリアではスタウト・ビールが極めて
ナチュラルで
好調だと同氏は補足した。
成分表示および健康表示に関連して,ショ糖を
ブランデーとウイスキーがインドで特に好調で
始めとする天然甘味料がグローバルに人気を博し
ある。ウイスキーは北米でも好調だが,最近は日
てきたと Innova 社の Williams 氏は言う。ステビ
本の消費者にも歓迎されてきた。エキゾチックで
アはほとんどのグローバルソフトドリンク市場で
成熟市場における「Y
世代」3)に人気があるのが,
受け入れられてきたので,その他の天然甘味料も
その理由であると言う。
その跡をたどっている。
文化による嗜好
2009年から2011年の間に,ステビアを含有する
文化的,宗教的,健康面の理由ばかりでなく,
ソフトドリンクの数量は2倍以上になった。2011
人口の高齢化によって,低アルコール飲料は国際
年には米国がステビア入りの全ソフトドリンク新
的 増 加 に 拍 車 が か か っ た と Euromonitor 社 の
製品の半分以上を占めたが,2011年末まで欧州連
ウェブ放送番組で Malandrakis 氏は語った。。西
合が公認しなかったにも拘わらず,欧州も13%に
欧の人口は高齢化しており,それによりより健康
達している。欧州連合の全面的な承認以前は,純
的で,低カロリーのオプションを求める飲料パ
度97%の Reb A(レバウジオシド A4))の使用
ターンへと消費者を変化させた。日本,マレーシ
が承認されており,配合の見直しを最初に行った
ア,中国では,低アルコールおよびノンアルコー
ソフトドリンクの一つは,The Coca-Cola 社が
ル飲料が宗教的,文化的および健康面の理由から
2010年初めに発売した FantaStill ソフトドリンク
極めて好調である。同様に,低・ノンアルコール
であった。それはフランスで2011年半ばまでに,
ビールは中近東,アフリカ,アジア太平洋および
Fanta 販売全体の8%を占め,Teisserie 社の du
その他地域のような,宗教的および文化的制約が
Sucre Stevia や Routin 社の Fruiss Stevia など,
ある市場で最も活発なカテゴリーである。
ステビアを配合したおびただしい数のソフトドリ
また,消費者は英国でよりアルコール濃度の低
ンクが登場した。
いワインを要求していると Wine Intelligence 社
低カロリー,低糖,無糖表示よりも人気がある
による the UK Independent Retailer リポートは
のは,ナチュラルであることや,製品に添加物や
報告する。同リポートによると,アルコール濃度
保存料が使われていないことに関する表示である。
12%以下のワインに対する需要,つまりフルーツ
昨年はソフトドリンク新製品全体の30%以上で,
が多く含まれ,より軽めの赤ワインに対する需要
これらの表示の内どちらか一方または両方が使わ
が伸びている。
れたと Williams 氏は言う。
低アルコールと低カロリー表示は,2011年7月
中国でも,72%の消費者が人工的成分の入った
~12月間のグローバルアルコール市場において最
飲料を避けようとしており,75%はナチュラル成
大の革新に属するとオランダの Duiven 市を拠点
分の飲料を購入したいと思っていると,シカゴに
とする Innova 社 Market Insights 調査部門トッ
ある市場調査会社 Mintel 社は言う。
プの L.A.Williams 氏は言う。オーストラリアで
「中国では肥満の増加に連れて,消費者は人工
は,Independent Distillers 社 が Cruiser Free を
的成分の摂取を最小限にし,今より運動すると
発売した。これは,アルコール濃度4.8%の無糖
いった,より健康的なライフスタイルを採ろうと
ウォッカ飲料で,1回の飲用で100カロリー以下
している」と Mintel 社の T.H.Hong 氏は公式に
に抑えている。ナイジェリアの Olu Olu Palmi
コメントした。「健康トレンドは,世界的にナ
Authentic Nature’
s Drink はアルコールを1.2%
チュラルトレンドに次第に切り替わっていった。
し か 含 ま ず, 中 国 の Rio Grapefruit Flavored
また,フレーバー革命とかナチュラル志向とは離
Cocktail Drink はアルコール濃度が3%と低いこ
れるが,(飲料)1回分のパッケージの可能性に
とを特徴としている。
ついては十分に開拓されてこなかった。その小さ
食品と容器
697
2012 VOL. 53 NO. 11
なサイズ故に,クリエイティブなマーケティング
するオーガニック・ジュースもまた,「無糖」表
がされれば,ミニ・パックは販売を牽引する有効
示同様,子供向けジュースの成長トレンドである。
な道具となり得る」と同氏は語った。
Williams 氏によると,チェリーは以前にもま
エネルギーに満ちて
して,ジュースとジュース飲料のブレンドに使用
Innova 社によると,ソフトドリンク・カテゴ
されていると指摘する。最近の調査で,チェリー
リーでのナチュラル,低糖分,低カロリー表示に
は抗酸化成分の含量が高く,炎症を低減し,痛み
続いて,活力(エネルギー)/機敏さが健康表示
を鎮め,睡眠の質を改善する能力を内在している
で人気トップ10リストに入ると言う。
ことが分かった。そのことについて消費者の認知
スポーツ/エネルギードリンクのグローバル市
度が上がるにつれ,フルーツへの需要は欧米で増
場は米国やアジアに牽引されて,年400億ドル以
大していくかもしれない。
上に達しているが,同市場はむしろ欧州での製品
フレーバー革命
活動が活発であると Euromonitor 社は見ている。
ナチュラルな製品への関心の増大と植物成分の
欧州ではエネルギードリンク・カテゴリーに,例
健康効能についての認知度が向上することにより,
えば米国のようなブランド拡張が見られる。今年
フローラル(花の)成分・香料への需要が出てき
の初めに,Rockstar ブランドはドイツでトロピ
たと Innova 社は言う。同社の記録によると,フ
カル・グアバフレーバーのエネルギードリンク,
ローラル成分を特徴とする全世界の食品・飲料新
Rockstar Punched と Rockstar Zero Sugar を 追
製品は,2011年1~10月で,前年同期に比べ11%
加して,ブランドを拡張した。
伸びた。フローラル成分トレンドは日本と極東,
アジア太平洋地域のスポーツ/エネルギードリ
中近東で長い間人気があったが,今や西欧市場に
ンク市場は容量ベースで過去最大の成長を遂げて
も広がっている。
いる。2月29日に実施された Zenith International
2011年1月から10月で,飲料に採用された最も
社 と Rabobank 社 の ウ ェ ビ ナ ー に よ れ ば,
人気のあるフローラル・フレーバーはジャスミン,
Euromonitor 社データを基に,特にインドネシア
ロータス,ローズ,菊であった。しかし,フレー
が最大の潜在成長力を示しているという。両社は
バーは地域によって異なると Innova 社は言う。
2010年から2015年の間に,容量ベースで25.4%は
ソフトドリンク・カテゴリーでは植物成分がフ
伸びると予測する。
ルーツ飲料やフレーバー・ウォーターに加えられ,
ガラナ,タウリン,朝鮮ニンジンのような成分
大人の味覚特性を刺激する特殊なドリンクを作り
は,活力と機敏さに効能がありアルコール分野に
だしている。
も 進 出 し て い る。 英 国 の DragonSoop-Sour
グローバル展望
Apple は,タウリン,ガラナ,フルーツ・フレー
(前述の)ウェビナーによると,2010年には北
バーを調合した高レベルのカフェインを含む
米はソフトドリンクの売上金額で,世界最大の地
ウォッカを特徴とするアルコール発酵飲料である
域として西欧やアジア・太平洋を凌いだが,アジ
と Innova 社は注目している。
ア・太平洋は最も際立った成長地域として位置づ
ジュースの健康表示
けられるという。
ナチュラル,オーガニック,グルテン・フリー,
RTD ティー市場のリーダーである中国は,冠
アレルギー・フリー表示はジュース・カテゴリー
状動脈の疾病,心臓発作,一部のがんのリスク低
で存在感を増してきたと Innova 社の Williams 氏
減を始めとする健康効能により,2010年から2015
は言う。特に子供向けのジュースは,「100%純粋
年にかけて,一桁成長にとどまるベトナム,イン
なジュース」「添加物フリー」「人工の着色料,調
ドネシア,米国を尻目に,容量ベースで78.5%伸
味料,保存剤,甘味料フリー」という表示が特徴
びると見られている。
的に見られる。ビタミンとミネラルの効能を強調
ただし,ソフトドリンク・カテゴリー全般では,
食品と容器
698
2012 VOL. 53 NO. 11
Zenith International 社と Rabobank 社はブラジ
日本のサイダーは soda pop(炭酸水)。【RHD】
2) 南洋州。オーストラリア,ニュージーランドおよ
ル,ロシア,インド,中国から7大新興国市場,
びその付近の南太平洋諸島の総称。【RHD】
すなわちメキシコ,インドネシア,ベネズエラ,
3) 米国で,1975年以降に生まれた世代。日本ではポ
フィリピン,アルゼンチン,コロンビア,そして
スト団塊ジュニア世代に相当する。
タイへの移行に期待している。この7大市場で
4) ステビア抽出物とされる主要4糖体(ステビオシ
ド,レバウジオシド A,レバウジオシド C,ズルコ
2010年から2015年の間に小売りベースで(年間)
140億ドルになると見込まれる。
シド A)の一つ。フランスではステビアが欧州統一
(常盤恭徳)
規制(2009年8月26日)以前から,レバウジオシド
(訳注)
A については,食品添加物として使用することを認
1) 発酵したリンゴ酒。発酵させないものを sweet
可していた。
cider という。英国では hard cider が主流。
【RHD】:ランダムハウス英語辞典
●
海外技術情報 ●
機能性食品の現状
( Health and Wellness in the Spotlight in Vegas )
Food Technology (USA)p. 97( ’
12・5 )文献 № 5782
以下に本年の IFT 定時総会・食品展出展品の
の様子に目を見張るだろう。
あらましを述べる。
競争力に注目
ビタミンCの新局面
食品,飲料およびサプリメント業界に高品質の
Helios 社は,ビタミンCの摂取後酸化ストレス
製品や素材およびサービスを世界中で供給してい
を大幅に軽減して生物活性および持続性の飛躍
るワトソン社は,造粒,微粒化,マイクロカプセ
的向上を実現した(in vivo 実験では摂取後3時
ル化,フィルム化における専門技術により内製し
間効果が持続した)ビタミンC−ミネラル複合体
TransportC-PLUS を紹介する。
た付加価値のある素材を使ってユニークな処方や
プレミックスで栄養強化
水溶性ビタミン類
製品を展開している。
Caravan Ingredients 社はビタミン-ミネラル
Extracts & Ingredients 社では,完全に水に溶
プ レ ミ ッ ク ス Nutrivan
けるビタミン類はさまざまな食品・飲料に応用さ
Ⓡ
Trancendim
Ⓡ
Cracker
Vantage シリーズを出展する。特定の健康効能を
れ,ビタミンD摂取量を増やす働きが期待される。
有する決まった処方の製品を選ぶも良し,ニーズ
同社はまた,天然保存料用途のオレガノ抽出物・
に合わせてブレンドもしてくれる。
様々なスパイス抽出物のほか豆腐用塩化マグネシ
GRAS 認証カルシウム/コラーゲン素材
ウムなどを出展する。
新しい骨を作る際,身体はまずコラーゲンを生
大豆を使った新製品
成し,そこへカルシウムが付着する。GRAS 認証
Soy Labs 社の AlbumaSoy Ⓡ は大豆タンパク質
キレート化カルシウム-加水分解コラーゲンペプ
抽出液で,肥満・心臓血管疾患・糖尿病対策と
チド KoACT は骨を補強し,ミネラル密度を向
して期待される。in vitro 実験ではアルファアミ
上させる。
ラーゼを抑制して不要な炭水化物の吸収を防ぐ効
栄養豊かなサンプルが会社の実力を示す
果を,臨床実験では体重減量・脂肪燃焼促進・肥
Fortitech 社は栄養強化プレミックス製品への
満患者の BMI 値抑制・LDL コレステロール/ト
革新的アプローチで知られる。同社ブースを訪れ
リグリセリド値抑制・HDL コレステロール値向
ると,カスタム化された栄養強化と標準製品開発
上・空腹時血糖値抑制などの効果を示し,健康的
Ⓡ
食品と容器
699
2012 VOL. 53 NO. 11
シンポジウム“アントシアニン:健康増進作用
なセロトニン分泌量にも貢献する。
TM
はルナシンを消化器官まで届け
の色とりどり”では橙色~青紫色の植物第二の代
吸収させる。LunaSoy は米国産大豆の外皮を取
謝物をテーマとする。特定のがん・Ⅱ型糖尿病・
り除いたルナシン活性化細粒粉末で,タンパク質
心臓血管疾患の予防効果や眼・認知機能への効果
が多く炭水化物・ナトリウムが少なく,ほとんど
などが議論される。
コレステロールフリーの上,食物繊維にも富む。
買収による脂質製品ラインの拡張
大豆ピューレで脂肪減
Stepan 社は昨年子会社を吸収合併した。複合
Morinaga Nutritional Foods 社 の Silken Soy
リノール酸 Clarinol Ⓡは体脂肪を減らし,筋肉量
Puree は低脂肪の製品を作れる革新的素材であ
を増やすためのサプリメントとして10年以上の販
る。乳成分を含まずにヨーグルトのようにクリー
売実績を持つ。天然濃縮オメガ3トリグリセリド
ミーで,牛乳・クリーム・チーズなどの代替品と
Marinol は心臓血管および脳神経系の健康増進,
なり,低カロリー/低脂肪でコレステロールやト
松の実由来の PinnoThin Ⓡは食欲を抑える効果が
ランス脂肪酸を含まない。加工工程は特許取得済
ある。
みでコーシャーおよびオーガニック認定を受けて
麻の実油に注目
いる。
Hemp Oil Canada 社の厳選したカナダ産麻種
ウチワサボテンの実を使った製品
子を原料とする Prairie Emerald Oil Ⓡ はそのま
抗酸化物質,複合多糖類,多くの植物性栄養
ま摂取しても,カプセル入り Veggie Green Caps
素,天然由来のタウリンを含むウチワサボテン
を服用しても良い。飽和脂肪酸の少ない多価不飽
の実は美しいルビー色を呈し,S & P Marketing
和脂肪酸源でトランス脂肪やコレステロールを含
社では100%天然果汁サプリメント Nochtli Ruby
まない。麻種子油15 mL にオメガ6脂肪酸が8g,
Antioxidant SuperiorFruit Concentrate な ど を 出
同オメガ3が2.5gとビタミンEの1日当たり摂
展する。
取目安量の10%が含まれ,非水溶性食物繊維・タ
新合併で製品幅を拡大
ンパク質・葉酸も多い。
Colloides Naturels Internatinal 社と Bio Serae
脂肪酸を探究
Laboratories 社が合併してできた NEXIRA 社の
Oli-Ola Organic Olive Extract は 有 機 栽 培 の オ
シンポジウム“健康・機能・新ラベル表示に関
リーブを使い,原料のヒドロキシチロソールは
考察・健康に良い油・世界の健康的な食生活パ
LDL の酸化抑制により心臓血管疾患の疾病リス
ターン・脂肪のラベル表示などに関するプレゼン
クを低減する。またウチワサボテンの実の抽出物
Cacti-Nea には体の水分過剰改善効果があり,臨
テーションが行われる。
床実験では BMI が25超の被験者が Cacti-Nea を
栄養サプリメント大手 Ganeden Biotech and
1日2g,1週間摂取した結果,利尿率が27%上
Schiff Nutrition International 社は天然プロバイ
昇した。足のむくみ感を抑える効果も大きい。
オティクス GanedenB 30 Ⓡ の健康な熟年層にお
青果物抽出物の高度濃縮
ける免疫機能および消化機能改善効果を検証す
Draco Natural Products 社 Full Spectrum は,
るため,Reading 大学への研究資金提供を発表
水溶性かつ担体や賦形剤無添加の粉末である。ほ
した。善玉菌の多くがカプセル入りなのに対し,
かに血圧を下げるカリウムやビタミンCが豊富な
GanedenB 30 Ⓡ は人気の Red Mango のフローズ
キウイ,低 GI で甘さが砂糖の250倍ある羅漢果,
ンヨーグルトやアイスティー,Naked Pizza のピ
多糖類やフラボノイドに富むアスパラガスなど,
ザ生地など50種類以上の食品に使われている。
製品は枚挙にいとまがない。
酵母エキスの新製品
アントシアニン・シンポジウム
WellmuneWGP は パ ン 用 イ ー ス ト 細 胞 壁 由
Lunasin SI
食品と容器
する脂肪酸パズルを解く”では脂肪酸についての
熟年層におけるプロバイオティクスの効果研究
700
2012 VOL. 53 NO. 11
来のβ−1 , 3 / 1 , 6グルカン多糖類であり,臨床
ド粉を使い,従来製品の約半分の砂糖使⽤量で結
実験では上部呼吸器官への感染症状を抑え,物
着を得られる。
理 的・ 精 神 的 ス ト レ ス の 大 き い 時 期 で も 健 康
◉ベトナム・タイ⾵スナック:焼き⼯程でアーモ
増 進 に 役 立 つ。Groupe Biscuits Leclerc 社 が
ンドバターを使い,クーリング剤と結着剤を兼ね
WellmuneWGP を使った栄養バーの品目を拡大
させた。丸ごとのアーモンドが⾒た⽬にも⾼級感
するなど35を超える国々で食品使用されている。
を与える仕上がりである。
プロバイオティクス製品
Pro-FIT TM Probiotics はビフィズス菌・乳酸
アーモンドにはカルシウム・ビタミンE・リボ
菌・連鎖球菌を含む。Fenchem 社では優れたス
健康的なコレステロール値の維持に貢献する。
クリーニング技術により,栄養サプリメントや機
「中間管理」と⾷品素材
能食品向けの粉末・プレミックスのほか,消費者
シンポジウム“健康的な⾎糖値や消化に寄与す
の要望に合わせた製品を提供している。
る⾷品素材を⾷⽣活に取り⼊れる:中年期の消費
免疫機能に対する健康効能の展望を共有
者向けに”では⾺⾖・アーモンド・レンズ⾖・全
シンポジウム“免疫機能への健康効能表示を確
粒穀物などによる炭⽔化物・脂肪・タンパク質の
認:3つの展望”では法規的要求・科学的根拠・
バランス良い摂取が体重管理・⾷欲・⾎糖値へ与
産業界の求める研究企画の観点から免疫関連の製
える影響をみていく。
品ラベル表示を検証する。
子供にやさしい食品
豆粉をグルテンフリー製品に使用
おいしくて子供にも食べやすく,減ナトリウ
ルーピン豆粉はグルテンフリーベーカリー製品
ム・低カロリー・低脂肪で全粒穀物や食物繊維・
に向き,無味無臭の植物由来タンパク質/食物繊
タンパク質を多く含む Cargill 社の朝食用ブルー
維源としてパン・クラッカー・コーティング剤な
どを栄養強化し,リッチでクリーミーな色合いを
ベリークッキーは白色全粒小麦粉 WheatSelect
を 使 い, 安 定 剤 CitriTex TM と Oliggo-Fiber Ⓡ
与える。B113 Lupin Bean Flour はすべての基
イヌリンを加えて全米学校給食プログラムの
礎アミノ酸を網羅する完璧なタンパク質をほかの
30/10/30ルールを守っている。大豆粉 Prosante
豆類の約2倍含み,食物繊維やプレバイオティク
を使った安価なハンバーガーバンも味が良い。
スも多い。L-アルギニン値の高さではほかの追
随を許さず,血液循環の改善に役立つ。
食物繊維素材で栄養強化
Fibersol-2 Ⓡ はコーンスターチを酵素的に加水
グリーンピース・ヒヨコ豆・レンズ豆など
分解した難消化性マルトデキストリン粉末であり,
豆ビジネスの老舗 Best Cooking Pulses 社では,
ヒト消化器官内の酵素では消化吸収できない。臨
緑色/黄色半割り豆や同全豆,ヒヨコ豆・レンズ
床実験では胃腸の調子を整え,便秘を解消する働
豆などを1936年から取り扱っている。医療機関や
きがあることが分かった。食事中に摂取すれば血
食品研究所などと積極的に提携し,豆類の健康効
糖値の上昇を穏やかにする。健康な,安定した血
能の研究開発に努めている。
糖値やインスリン値には影響しない。
アーモンドの応用方法と健康効能
乳製品と研究開発
Almond Board of California では,世界で一番
アメリカ乳製品輸出協会では,忙しいユーザー
消費者に選ばれているナッツの応用法を提案して
向けにギリシャヨーグルトやソフトキャンディー
いく。アーモンドは軽食としても優れ,1食分
を開発した。またホエイパーミエイトとして知ら
(約28g)にタンパク質6g・食物繊維3.5g・一
れる牛乳由来の成分には塩味があるため,減ナト
フラビン・ナイアシンも多く朝食に向いており,
価不飽和脂肪酸9gおよびアルファトコフェロー
リウムが求められる昨今に理想的な素材といえる。
ル=ビタミンEを1日摂取目安量の35%含む。
さらにベビーブーマー世代のニーズとして,タン
◉グラノーラバー:アーモンドバターとアーモン
パク質を多く摂ると高齢者の筋肉量維持を助ける
食品と容器
701
2012 VOL. 53 NO. 11
との研究結果から,フローズンヨーグルトなどを
菜食主義者向けのタンパク源いろいろ
出展する。
Prinova 社 Nutralys Ⓡ はクセがなく,豆タンパ
プレゼンテーションは“新乳製素材の応⽤法”,
ク質の使用量増加と新製品開発への道を開いた。
“現実の,新鮮な,天然の⾷品:消費者ニーズに
ほ か に シ ム ラ イ ズ 由 来 Actiplants Ⓡ, 藻 類 由 来
応えるには”,“21世紀の朝⾷”などが⾏われる。
Almagine HL TM などの製品がある。(力丸みほ)
●
海外技術情報 ●
低温抽出処理によるピューレ抽出の革新
( Innovation in Puree Extraction by Cold Extraction Process )
Fruit Processing(DEU)p. 86( ’
12・5 / 6 )文献 № 5785
効率の良い圧搾/加熱システムを併用
した低温抽出は果菜類のピューレや
ジュース加工の発展に重要な役割を果た
䠃ḗὑὯ
䖠
䜦䜽䜷䝯䝘䝷㓗
㐽 ื
している。ここ10年の果菜ピューレ処理
䠄ḗὑὯ
(第1図)の主要な革新は,加熱による
⛸䛰䛝ᯕᐁ
⛸௛䛓ᯕᐁ
不活性化と最終精製の前に果実を圧搾/
精製する新システム「低温抽出」である。
訳注)ここでいう抽出(Extraction)とは,果
実・野菜をピューレや濃縮液に変換するプロセ
スを意味する。
本稿では低温抽出を次のように定義する。
䜓㐛䝪䝏䝇䝌
㝎ᰶ䟺⛸㝎ཡ䟻
䖠
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⇍
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ᦚ
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ᅸ ᦚ
䝕䝯䝛ฦ㞫
㓕⣪୘Ὡᛮ໩
䖠
ຊ⇍⢥⿿
◆皮や茎,種の除去を常温で単体または
2台の別の機械で行う構成になっている
䖠⛸
ຊ⇍᢫ฝᢇ⾙
⬲ Ẵ
఩Ὼ⢥⿿
⃨ ⦨
㓕⣪୘Ὡᛮ໩
⃨⦨䝘䝩䞀䝰
ຊ⇍⢥⿿
ṽ Ⳟ
圧搾(粉砕)/精製(不要物除去)方法。
ኮ↓䝘䝩䞀䝰
఩Ὼ᢫ฝᢇ⾙
◆圧搾と分離を,ターボ抽出機(従来の
ඖ ሳ
低温抽出)または統合抽出機(現在の低
第1図 果菜ピューレ加工処理の技術工程図
温抽出)に接続した別の圧搾機で行うこ
b)すり潰された果菜(マッシュ果菜)は茎,種
とがある。
◆抽出されてくる未精製ピューレを直ちに加熱し
など固形物が除去されているので加熱処理効率
て酵素を不活性化し,続いて,熱い不活性化済み
が良い。
c)加熱前に皮を除去するので色が改善される。
ピューレを次のターボ抽出機に供給して最終精製
低温抽出後のマッシュ果菜は実質的にピューレ
(加熱精製)した後,下流の工程へ移送する。
◆この処理は1980年代にイタリアで開発された
であり,均一な加熱に支障のある大きいかけらが
後,2000年になって工業化された。2002年に初め
含まれていないので次工程での加熱処理(酵素の
て詳細な科学的技術的研究が発表され,2006年以
不活性化処理)温度を約5~15℃低減できる。通
降に雰囲気ガス置換の開発が行われた。
常,果皮は果肉に比べて耐熱性の高い酵素を含ん
従来の抽出法と比較して次の利点がある。
でいるので加熱前に果皮を除去すると酵素不活性
a)加熱前に圧搾と不要物(皮,茎,種,異物な
化に要する熱負荷が低減される。
ピューレ抽出に最も良い加熱システムはワンパ
ど)の除去をする。
食品と容器
702
2012 VOL. 53 NO. 11
理ラインでは,低温抽出機は精製圧搾機の付加機
u/g
100
または代用機として利用されたり(ex. キャロッ
ト),茎除去機などの役目もする(ex. カボチャ,
ペッパー)。
10
近年,精製装置のナイフ形状や材質の開発が注
目され,皮や種,茎を効率よく分離できる低温抽
1
出機が上市されている。特に圧搾中の L−アスコ
0.1
トマト
リンゴ
ナシ
ルビン酸添加量の低減化が注目され,雰囲気ガス
ピーチ
の置換(ex. 窒素,二酸化炭素,直接蒸気,加熱
第2図 果菜類のペクチン分解活性
(u/g:グラム当たり国際単位)
蒸気)や真空圧搾などができるシステムもある。
これらのシステムは L−アスコルビン酸の添加量
ス方式か再循環方式か,業界でよく議論されるが
を大幅に低減するが,酸素は果実中に天然に存在
酵素の組成を考慮する必要がある。トマトに比べ
しているので添加を完全に省くことはできない。
果実はペクチン分解活性が非常に低く(約百分の
真空圧搾は処理中のL−アスコルビン酸添加量を
1)(第2図),加熱速度はトマトほど重要でない。
大幅に低減することが分かった。製品の初期品質
従って,果実のピューレ加工では酵素不活性化に
を保証するためには250 mg/kg の添加で十分であ
対する加熱システムの選択(ワンパス方式か再循
り,過酷条件(35℃で60日間)で貯蔵した後も初
環方式)はあまり重要でない。一方,トマトの場
期の品質を維持することが証明されている。
合は最終濃度を得るため一定の加温時間が必須で
最近,Bucher Unipektin 社が開発した低温抽
ある。重要なのは加熱精製後の不溶性物質含量で
出機は既知のC25グラインダーと低温精製機を組
ある。このパラメーターは加熱機での加熱調理結
み合わせたものである。グラインダーは,茎や種
果や加熱精製効率によって決まり,効率的な加熱
(ピューレ中の褐色や黒色の点の主原因)のダ
調理と不溶性物質の除去処理が最終濃度に影響す
メージがない高収量の抽出ができるよう最適の状
る。再循環方式は,製品の一部が長時間滞留して
態で果実を圧搾させる。周波数制御スクリューに
加熱過多になるリスクがある。ワンパス方式は滞
よってマッシュ果菜を精製機へ移送して,そこで
留時間が均一な利点はあるが,加熱精製で不溶性
所定品質に精製する。果実の供給とマッシュ果菜
物質を十分に除去するために十分な加熱保持セル
のレベルを完全に制御することによって製品への
を持たせた設計にする必要がある。
エアー混入を最少化できる。L−アスコルビン酸
低温抽出処理は果実業界では定着しているが,
の消費を最小限に抑えるために,不活性ガスの吹
野菜業界ではまだ実用化されていない。低温抽出
き込みやガス置換下での運転が簡単にできる。
は皮や茎,種を分離可能な果実(ex. リンゴ,ナ
低温抽出だけでなく加熱システムや加熱精製機
シ,アンズ,ピーチ)には有効に適用できるが,
もピューレの品質にとって非常に重要である。
ベリー類や,分離する皮がない野菜(ex. キャ
(合田芳宏)
ロット,葉物野菜)には利用されない。多目的処
食品と容器
703
2012 VOL. 53 NO. 11
●
特別解説
●
飲めば分かる美味しい牛乳
- 牛乳の理化学特性と官能評価 -
ふ じ か わ・さ き こ
北海道大学大学院農
学院共生基盤学専攻
博士後期課程修了。
現在,北海道大学農
学研究院食品加工工
学研究室所属,日本
学術振興会特別研究
員 PD。
藤 川 咲 子
ある地域で生産された同一の生乳が用いられてお
1.はじめに
り,現在一般に国内で市販されている牛乳に関し
日本における牛乳の1人1年あたりの消費量は
た報告は少なく(磯崎ら,1991;荒井ら,2006),
1994年度の41.6 kg をピークに,翌年以降から現
50点以上の多種多様な市販牛乳に関する報告も少
在に至るまで減少傾向で推移している(農林水産
ない。
省,2011)。これは,人口の減少や少子高齢化が
2.本研究の目的
進む一方で,飲料も含めた食の多様化が進み,牛
乳と競合する多様な飲料がコンビニエンスストア
「消費者がどのような牛乳を美味しいと感じる
や自動販売機で安く手軽に入手できることが一つ
か」また「消費者はどのような牛乳を好むのか」
の大きな要因とされる(本田,2011)。そのため,
に関するデータを明らかにすることが牛乳の消費
生産者団体(農協や酪農組合)からは牛乳の消費
拡大に役立つと考えられる。すなわち,消費者の
拡大を望む声がある。
牛乳に対する嗜好を明らかにし,その上で消費者
一方,近年の消費者の食品に対する志向の多様
が好む牛乳を生産することが重要である。
化により,消費者のニーズに合わせ乳成分や加工
そこで本研究では,市販流通している多種多様
方法等が異なる様々な牛乳が市販されている。原
な牛乳を用いて消費者の牛乳に対する嗜好を明ら
料乳である生乳の成分や乳質は牛乳の風味に大き
かにすることを目的とし,牛乳の理化学特性の測
く影響する。それら生乳の成分や乳質は,乳牛の
定,および東京と札幌において官能評価を実施し
品種や個体,飼料,飼養地域など様々な要因によ
たので,ここで報告する。
し
せいにゅう
り変動する。さらに,牛乳の加工処理により成分
3.実験の概要
が変化し,それらが風味に影響を及ぼすなど,牛
お
い
乳の美味しさに影響する要因は数多く挙げられる。
3.1)供試試料
岩附ら(1999 a,2000 a,2000 b,2001)は,殺
市販流通している66銘柄(商品名)を供試試料
菌方法や均質化の際の圧力などの製造条件が牛乳
として,官能評価および理化学特性の測定を行っ
の官能特性に及ぼす影響について報告している。
た。66銘柄の乳業メーカーは24社であり,供試牛
ところが,これらの報告の供試試料の原料乳には
乳は延べ84点であった。試料の産地(乳牛の飼養
食品と容器
704
2012 VOL. 53 NO. 11
地域)は製品容器の
記載情報によると,
北海道が48点,東北
が8点,関東が27点,
不明が1点であった。
供試試料の容器に記
載された「種類別名
称」
,および加工処
理(殺菌方法,均質
化の有無)を第1表
に示した。
第1表 供試試料の詳細
UHT
UHT
(間接加熱) (直接加熱)
3
49
牛乳(成分無調整)
0
11
成分調整牛乳
0
11
低脂肪牛乳
0
1
加工乳
HTST
LTLT
HTLT
4
0
0
0
4
0
0
0
1☆
0
0
0
UHT:Ultra high temperature(超高温)殺菌,120~150℃で1~3秒
HTST:High temperature short time(高温短時間)殺菌,72℃以上で15秒以上
LTLT:Low temperature long time(低温保持)殺菌,63~65℃で30分
HTLT:High temperature long time(高温保持)殺菌,75℃以上で15分以上
(各殺菌方法の条件は日本乳業協会HPより引用)
☆ノンホモ:ノンホモジナイズド牛乳(均質化していない牛乳)
その他の試料はホモジナイズド牛乳(均質化している牛乳)
3.2)理化学特性および官能評価
理化学特性として,各試料の乳脂肪,乳タンパ
ク質,乳糖の測定を Milkoscan 4000(Foss Electric
4.1)色調
社製)により行った。さらに各試料の色調の測定
乳脂肪含量が1.5%以下の牛乳(低脂肪牛乳お
を 色 彩 色 差 計(MINOLTA 社 製 CR−200 b) に
よび加工乳)は,有意に色調の評価が悪かった。
より行った。色調は国際照明委員会の公認表示法
一方,乳脂肪が高く,乳糖と乳タンパク質が低い
である L* a* b*表色系に則り,L*(明度)
,a*(赤
試料は L*値と a*値が高く,官能評価の色調評価
緑軸),b*(黄青軸)の値を求めた。
が高い傾向が認められた。そこで,第3図に全試
また,官能評価は,旧食糧庁の「米の食味試験
料の乳脂肪と色調 L* 値との関係を示した。乳脂
実施要領」
(食糧庁,1966)を参考とし,牛乳の
肪含量が高い試料ほど L*値,a*値および b*値が
官能評価用に改変した。この官能評価の方法は,
高い傾向が示された。これは,牛乳の色は牛乳中
基準牛乳(1点)を設け合計4点(基準1点(赤)
に含まれるカゼイン粒子や脂肪球により光が乱反
+評価試料3点(黄,青,緑))の試料を1組と
射して白色を呈するものであり,また,脂肪中に
しパネルに提示し(第1図),その基準牛乳に対
存在するカロチノイドにより黄色を呈する(野口,
してその他の試料を相対的に比較する多重相対比
1998)ことによると考えられる。そのため,乳脂
較法である。本研究では,基準牛乳として生乳生
肪を除去することで牛乳の色調に影響する脂肪球
産地が北海道十勝地方の牛乳で UHT 間接加熱殺
の数が減少し,基準牛乳に比べ暗く見え,パネル
4.実験結果
のっと
菌したホモジナイズド牛乳を用いた。
赤
(基準牛乳)
評価項目は,色調(牛乳としての白さ),香り
(牛乳としての香り),コク(牛乳としてのコク),
甘味,塩味(塩からさ),酸味(酸っぱさ),総合
評価(美味しさ)の7項目とした。評価点は基準
牛乳を0として,それぞれ±3の7段階尺度とし
た。
緑
黄
また,官能評価は計8日,延べ14回行った。各
回のパネル人数は48~52名であり,延べパネル人
数は722名であった。パネルは男女がほぼ同数と
なるように,18歳から65歳までで年代が偏ること
青
のないよう集めた。官能評価時の様子を第2図に
第1図 官能評価の供試試料
(カラー図表をHPに掲載 C094)
示した。
食品と容器
705
2012 VOL. 53 NO. 11
整の試料に比べ成分を調整した試料や,UHT 殺
菌法ではない殺菌法で殺菌されている試料は,処
理過程において牛乳としての香りが弱くなり,そ
の結果香りが悪いと評価されることが示唆された。
また,北海道の生乳を関東へ輸送し,関東で加
工した牛乳の香りの評価が低かった原因としては,
異臭であるオフフレーバーが発生した可能性が考
えられた。現在,輸送技術の発達等により北海道
で生産された生乳のうち約10%が都府県へと輸送
されている。北海道から都府県への輸送は2種類
の形態があり,殺菌せずに生乳のまま輸送される
第2図 官能評価の様子
(カラー図表をHPに掲載 C095)
ものと,北海道で殺菌・包装後,輸送されるもの
に分けられる。このうち生乳のまま輸送されるも
のは,まれにオフフレーバーと呼ばれる異常風味
85
が発生し,廃棄されることもあるとされる。その
ため,本研究の供試試料についてもそのようなオ
フフレーバーが発生し,パネルはその牛乳の香り
80
L* ೋ
が悪いと評価した可能性が示唆された。
4.3)総合評価
䝒䝷䝟䝦䜼䝎䜨䜾䝍∭஘
総合評価の結果を第4図に示した。パネルは基
75
r = 0.90
準牛乳と比較し,乳糖由来であると考えられる甘
**
味(米田,1996)が強い牛乳の総合評価を高く評
価する傾向が示唆された。一方で,低脂肪牛乳お
70
0
1
2
3
4
よび HTST 殺菌牛乳の総合評価が悪いと評価さ
5
れる傾向が認められた。また,総合評価は色調,
஘⬙⫣䟺䟸䟻
香り,コク,甘味の評価項目と有意に相関が高い
第3図 乳脂肪と色調 L*値との関係
ことが示された(p<0.001,第2表)。
はこの色調の違いから,乳脂肪の低い牛乳の色が
以上の結果から,パネルは牛乳の総合評価(美
悪いと評価することが示唆された。
味しさ)を判断する際には,色調が悪く,香りが
4.2)香り
悪く,コクがなく,甘味の弱い牛乳を美味しくな
香りの評価が低かった試料は,全体的な傾向と
いと判断することが示唆された。そのためパネル
して,成分調整牛乳または低脂肪牛乳,UHT 殺
が牛乳の食味をブラインドテストした場合(牛乳
菌法ではない殺菌法で殺菌した牛乳,北海道の生
の銘柄産地を知らされないで飲んだ場合),パネ
乳を関東へ輸送し,関東で加工した牛乳であった。
ルは低脂肪牛乳を色調と香りが悪く,コクと甘味
香りは,乳脂肪および L* 値と非常に高い相関
がないために美味しくない牛乳と判断した。また,
が認められた(p<0.001)。牛乳の香りに影響する
コクと甘味の評価が高いものほど総合評価も高い
要因として,異常風味など乳質の影響(笹野,
傾向が認められた。
1998)の他に,殺菌や均質化の加工処理が挙げら
4.4)殺菌方法の違いが官能評価に及ぼす影響
れる。そのため,低脂肪乳など成分の調整加工処
官能評価の各評価項目の評価値をもとに,殺菌
理が行われた試料は,処理の際に香りの変化が起
方法が官能評価に及ぼす影響を検討するため,全
こったと考えられる。以上のことから,成分無調
供試試料のうち成分無調整牛乳かつホモジナイズ
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䚭䚭༱㝜⋙5䟸䚭䕋༱㝜⋙1䟸
1.5
⏍஘⏍⏐ᆀ
᮶໪
⏍஘⏍⏐ᆀ
໪ᾇ㐠
1.0
⏍஘⏍⏐ᆀ
㛭᮶
⥪ྙビ౮
0.5
䕝
䕸
䟷
0.0
䟷
䕸
䟶
䕸
䕸
䟷
䟷
䟶
䟶
-0.5
-1.0
-1.5
a
c
b
a
a
b
c d
第4図 官能評価による牛乳の総合評価
図においてa,b,c,dは以下の種類別の牛乳であることを示す。
a:牛乳,b:成分調整牛乳,c:低脂肪牛乳,d:加工乳
また図において棒の上の記号はそれぞれ以下に示した殺菌方法であることを示す。
記号なし:UHT間接加熱殺菌,#:UHT直接加熱殺菌,◎:HTST殺菌,$:LTLT殺菌,△:HTLT殺菌
ド牛乳の60点を用いて,主成分分析(Principal
そこで,各殺菌方法による牛乳の特徴を評価す
Component Analysis : PCA)を行った。この際,
るため,PC 1 と PC 2 の2因子を軸としたグラフ
HTLT 殺菌については試料数が1点のみである
上に各試料の主成分得点を算出しプロットした結
ことから今回の検討からは除いた。また,総合評
果を第5図に示した。図より,殺菌方法と牛乳の
価はその他の評価項目を総合して評価したもので
官能評価について全体的に以下のように判断した。
あり,他の評価項目との相関が強いと考えられる
UHT 間接加熱殺菌は,風味が強い牛乳が多く,
ことから,残りの評価項目である6項目を用いて
LTLT 殺菌や HTST 殺菌は UHT 間接加熱殺菌
PCA を行った。
と比べ風味が同等か,やや弱い牛乳であった。ま
その結果,第1主成分(PC 1)は香り,コクと
た,UHT 直接加熱殺菌については,その他の殺
強い相関が認められ,第2主成分(PC 2)では甘
菌方法と比べ,風味が劣る傾向であった。一方,
味と強い相関が認められた。従って,PC 1 につ
殺菌方法による甘味に対する寄与は認められず,
いては牛乳の香りやコクなどの牛
第2表 官能評価の各評価項目間の相関係数
乳の風味,PC 2 については牛乳
の甘味を表す因子であると考えら
れた。PC 1 ,PC 2 の 寄 与 率 は そ
れ ぞ れ51.9 %,20.6 % で あ っ た。
すなわち,PC 1 と PC 2 により官
能評価全体の7割以上の情報を表
現できることが確認された。
食品と容器
香り
コク
甘味
塩味
酸味
総合評価
色調
香り
0.32
0.44***
0.26*
0.08
−0.07
0.56***
0.56***
0.35**
0.21
0.28*
0.57***
コク
甘味
塩味
酸味
**
0.79***
0.33** 0.31**
0.16
0.18
0.43***
***
***
0.84
0.74
0.20
0.08
*危険率5%:r>0.215,**危険率1%:r>0.280,***危険率0.1%:r>0.335(n=84)
707
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に UHT 殺菌牛乳は加熱温度が高い(120~130℃)
1.0
ために加熱臭や滅菌臭があり風味は良くないとさ
れる。しかしそれらに反して,本試験の結果では
0.5
UHT 間接加熱殺菌牛乳と比較しその他の殺菌牛
乳は風味が劣ると評価されることが認められた。
0.0
䠢䠕2
わが国の牛乳は殺菌工程の能率と牛乳の保存性
等の利点から,殺菌温度が120~130℃で殺菌時間
-0.5
が数秒の UHT 殺菌により製造されたものが約9
UHT㛣᥃
LTLT
-1.0
割と主流であり,残りの1割弱は HTST 殺菌や
UHT├᥃
HTST
LTLT 殺菌により製造されている(城端,1996;
日本酪農乳業協会データベース,2011)。そのた
-1.5
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
め,日頃から UHT 殺菌牛乳を飲む機会が多いと
1.0
推察される。従って,パネルは UHT 間接加熱殺
PC1
菌による加熱臭を牛乳の持つ風味と理解し,銘柄
第5図 官能評価値における殺菌方法ごとの
主成分得点散布図 や種類を知らずに飲んだブラインドテストでは,
多くのパネルが日頃飲み慣れている UHT 間接加
殺菌方法が甘味に与える影響は少ないことが示唆
熱殺菌牛乳の風味を良いと判断したと考えられる。
された。以上のことから,牛乳の殺菌方法は消費
一方で,日頃飲み慣れていない殺菌方法の牛乳に
者が感じる牛乳の風味に影響を与え,UHT 間接
違和感を示した可能性が高いことが示唆された。
加熱殺菌された牛乳と比較し,その他の殺菌方法
5.まとめ
で処理された牛乳は風味が劣る傾向にあることが
示唆された。
近年,消費が減少傾向にある牛乳の消費拡大の
従来から,牛乳の香気成分や栄養成分に及ぼす
ためには,消費者の牛乳に対する嗜好を明らかに
加熱の影響についての研究は多くあり,熱負荷が
することが重要である。本研究では,現在流通し
高いほど,多くの成分が影響を受けることが分か
ている市販牛乳を用い,消費者が感じる牛乳の美
っている(青木,1996)。また,UHT 殺菌の中
味しさには,乳脂肪,乳脂肪の多寡により変化す
でも間接加熱の方が直接加熱よりも成分変化が大
る色調,乳糖および乳タンパク質が影響を与える
きいとされる。さらに,加熱により生じた匂い
ことを示した。また,日頃飲み慣れている間接加
(加熱臭)が最も強いのが UHT 牛乳であるとの
熱による UHT 殺菌牛乳の味や色を好む傾向があ
報告もある(岩附ら,1999 b)。そのため,一般的
ることを示した。
参 考 文 献
1)青木孝良,1996.成分の変化.上野川修一編,乳の科
学(第6版).朝倉書店,東京,46−55.
2)荒井勝己,伊藤美枝子,臼井沙織,井桁千恵子,2006.
牛乳についての意識調査および官能試験 . 桐生短期大
学紀要,17,195−201.
3)磯崎良寛,家守紹光,城内仁,1991.市販牛乳の風味
及び嗜好性 . 福岡県農業総合試験場研究報告,C−11,
1−4.
4)岩 附 慧 二, 溝 田 泰 達, 住 正 宏, 外 山 一 吉, 富 田 守,
1999 a .牛乳の官能特性に及ぼす殺菌条件の影響.日
本食品科学工学会誌,46,535−542.
食品と容器
708
5)岩 附 慧 二, 溝 田 泰 達, 久 保 田 哲 夫, 西 村 修, 増 田
秀 樹, 外 山 一 吉, 冨 田 守,1999 b .Aroma Extract
DilutionAnalysis による殺菌牛乳の香気評価.日本食
品科学工学会誌,46,587−597.
6)岩 附 慧 二, 溝 田 泰 達, 住 正 宏, 外 山 一 吉, 富 田 守,
2000 a .UHT 牛乳の官能特性に及ぼす殺菌温度の影
響.日本食品科学工学会誌,47,538−543.
7)岩 附慧二,今野隆道,溝田泰達,外山一吉,住正宏,
富田守,2000 b .間接加熱法および直接加熱法により
殺菌した UHT 牛乳の官能特性 . 日本食品科学工学会
誌,47,844−850.
2012 VOL. 53 NO. 11
8)岩 附慧二,松井洋明,溝田泰達,外山一吉,住正宏,
富田守,2001.UHT 牛乳の物理化学的性状および官
能特性に及ぼす均質圧力の影響.日本食品科学工学会
誌,48,126−133.
9)亀井俊郎,1997.インジェクション方式とインヒュー
ジョン方式,高野光男,土戸哲明編,熱殺菌のテクノ
ロジー(初版).サイエンスフォーラム,東京,159−
175.
10)笹野貢,1998.生乳の品質管理(第3版).デーリィ
マン社,札幌,75−84.
11)食糧庁,1966.米の食味試験要綱および米の食味試験
実施要領.41食糧第3332号.
12)城端克行,1996.市乳と乳飲料.上野川修一編,乳の
科学(第6版).朝倉書店,東京,148−154.
13)日本酪農乳業協会データベース,201.生乳の需給動
向 関 連 情 報.http://j-milk.jp/expertise/db/8d863s
000006eaul.html. Accessed Oct. 8, 2011.
14)農 林水産省,2011.食料需給表(平成21年度).牛乳
および乳製品.http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/
index.html. Accessed Sep. 2, 2011.
15)野 口洋介,1998.牛乳・乳製品の知識(初版).幸書
房,東京,30−52.
16)本田敏裕,2011.牛乳,乳製品の需給動向と国産チー
ズ増産の課題.農中総研 調査と情報,23,4−5.
17)米田義樹,1996. 牛乳・乳製品の味と香り.上野川修
一編,乳の科学(第6版).朝倉書店,東京,77−87.
新刊のご案内
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魚と人と旨いもの
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―東京水産大学名誉教授 奥谷喬司
本「食品と容器」誌に昨2011年12月まで連載された「肺魚のため息」をもとに,加
筆,書き換えを行った,大変に楽しく,勉強になる著書が出版されました。著者は東
京水産大学名誉教授の多紀保彦博士です。
「肺魚のため息」は1993年〜2011年に本誌に掲載され,全114回に及びました。
第一部 東南アジア ――魚と人と 第三部 行ってよかった国ぐに,
一 ラオスで過ごした日々 会えてよかった人びと
二 タイの魚と辛いもの 第四部 忘れがたい旅路のひと皿
三 戦時下のヴェトナムに住んで 第五部 お袋の味・私の味
四 フィリピンの食と暮らし
第二部 お魚列伝 ――目次より
定価(本体2191円+税) 発行−五曜書房 発売−星雲社 2012年7月14日初版
☆ご購入ご希望の方は,下記にお申し込みください☆
株式会社 五曜書房 〒101−0065 東京都千代田区西神田 2−4−1 東方学会3F
TEL:03−3265−0431 FAX:03−3265−0104
<おわびと訂正>
弊「食品と容器」誌10月号の特別解説「食品におけるナノテクノロジーの展開」において,P645の
「第7図 走査型プローブ顕微鏡による澱粉の高分解能計測」の図中に下記誤りがありました。
お詫びして訂正いたします。
C → E,D → F,E → C,F → D
食品と容器
709
2012 VOL. 53 NO. 11
●
特別解説
●
高電圧パルス電界(PEF)
・プラズマを
用いた非加熱殺菌技術
お お し ま・た か ゆ き
名古屋大学大学院工学研
究科博士課程後期課程修
了。群馬大学工学部助手,
助教授,准教授を経て,
現在,同大学大学院工学
研究科教授。
大 嶋 孝 之
博士(工学)
品に印加した場合に電界効果を生じさせることが
1.はじめに
できる。この電界効果によりバクテリアの細胞膜
医薬品や食品製造プロセスをはじめとするバイ
が破壊され,殺菌することが可能である。これを
オプロセスにおいて殺菌処理は不可欠の工程であ
一般に高電圧パルス殺菌と呼んでおり,筆者らを
り,加熱殺菌やろ過除菌が用いられている。しか
はじめ世界各国で研究例がある。また同じように
し加熱は品質の変化を伴う操作で,場合によって
高電圧パルスを印加した場合,電極形状などを変
は好ましくない操作である。そこで様々な非加熱
更することにより水中で放電プラズマを発生する
殺菌技術が提案されている。非加熱殺菌法とは
ことも可能である。放電プラズマが発生する系で
(少なくとも積極的には)熱を用いない殺菌法全
は各種の活性種や UV,衝撃波などが同時に発生
般を指し,大別すると化学的殺菌法と物理的殺菌
するため,この現象を殺菌に利用することも可能
法に分けることができる。化学的殺菌法は塩素系
である。ここでは高電圧パルスを水に応用した時
薬剤やナイシンなど天然抗菌剤を利用する方法で
の二つの現象-電界効果と放電プラズマの発生-
あるが,食品に使う場合には残留性が問題になる
について,また筆者らが行ってきたこれらの現象
こと,複雑な食品組成の場合には十分な殺菌効果
による殺菌を含む基礎的特性について紹介する。
を得ることが困難などの問題があり,主なターゲ
2.高電圧パルス電圧の発生方法
ットは水などに限られるのが実情である。一方,
物理的殺菌方法は残留性のリスクが少ないこと,
高電圧パルスは極めて短い時間(数マイクロ
プロセスの制御がしやすいことなどの利点があり,
秒)に10 kV 以上の高電圧を印加すること,また
実用化に向けて多くの研究がされているが,製造
はこれに伴う現象を指す。一般に導電率の大きい
プロセスとして稼働しているものはほとんどない。第
水溶液中の電極に直流電圧を印加すると,かなり
1表に主な物理的非加熱殺菌方法をまとめる1)。
の電流が流れるために,電気分解が生じて発熱を
筆者らはこの非加熱殺菌技術開発の一環として
伴う。ところが,直流電圧も短い時間だけ印加す
高電圧パルスの利用を試みている。高電圧パルス
ると,水が誘電液体のような性質を示すため,電
とは間欠的に数マイクロ秒間,10 kV 以上の電圧
界効果を利用することができる。この短い時間の
を印加する操作で,電極を通して水または液状食
直流電圧を直流パルスあるいは単にパルス電圧と
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第1表 物理的非加熱殺菌法とその概略
紫外線
低圧水銀ランプなどを利用した方法。254 nm の紫外線が DNA に作用していると考えられる。透
過性に乏しい。
放射線
コバルト60やセシウム137からのγ線や電子線が検討されている。水や酸素からヒドロキシラジカ
ルなど種々の活性種を発生させることが殺菌原理。国内では食品殺菌目的では未認可。
超高圧処理
400 MPa(4,000気圧)またはこれ以上で加圧することで殺菌できる。タンパク質の変性が殺菌原理
と考えられる。連続操作,大容量処理には不向き。
超音波処理
グラム陰性菌の細胞破砕に利用されているが,超音波単独での殺菌のエネルギー効率は低いと考え
られる。キャビテーションの発生とこれに伴う物理・化学的作用が殺菌原理と考えられる。
閃光パルス法
キセノンランプなどにより発生する強力な光(地表太陽光の40,000倍)を照射して殺菌する方法。
発光スペクトルは太陽光とほぼ同じといわれている。Pure Pulse Technologies 社から実用機が販
売されている。
高電圧パルス処理
水中に瞬間的に10 kV/cm 以上の電圧を印加して,水中の菌細胞膜を破壊し殺菌する方法。細胞融
合や遺伝子導入(エレクトロポレーション)と同じ原理。導電率が高い場合は適用しにくい。
放電プラズマ処理
針などを電極として水中に高電圧(10 kV 程度)を印加することで発生する放電プラズマによる殺
菌方法。活性種の発生,紫外線,衝撃波など複合的な作用が期待できる。電極の腐食などが進行す
るため放電プラズマの安定化が困難。
振動磁場法
5〜50Tの磁気パルスを印加することで殺菌できるとされている。殺菌メカニズムは不明であり,
殺菌効果も顕著ではないと思われる。
称し,パルス幅が1マイクロ秒程度より短くなる
ーはスパークギャップを通して瞬間的に放電し,
と,水中の各種イオンが電極間を移動することが
パルス電圧としてパルス処理槽に印加できる。こ
できなくなる(液体の緩和時間によって現象は異
れにより得られるパルス波形は,負荷となる電極
なる)。これは水中でのイオンの移動速度が電子
間に充填された溶液の電気的性質によっても大き
に比べて小さいためであり,よく知られている電
く異なるが,本実験の場合は立ち上がりが約50ナ
気分解や電気泳動のような作用とは全く異なった
ノ秒(2,000万分の1秒),半値幅が約10マイクロ
現象が生ずる。
秒(10万分の1秒)前後,電圧は最大で約20 kV
第1図は筆者らが主に用いているスパークギャ
である。液体の導電率が大きくなると,処理槽の
ップ式パルス発生器の回路図と,得られる高電圧
電気的インピーダンスが減少するためにパルス幅
パルス電圧の波形の一例(オシロスコープ写真)
は短くなる。ある程度以上の導電率になると,パ
を示している。電灯線 AC 100 V,50 Hz をスライ
ルス電源と処理槽との間のパルス伝送効率が低下
ダックで電圧調整し,電流制限用抵抗を通してコ
し,ピーク電圧が低下するようになる。これは電
ンデンサーを充電する。充電された電気エネルギ
極面積を増した場合にも同様である。高電圧パル
ST:スライダック
HT:高電圧変圧器
HR:高電圧ダイオード
R :高電圧抵抗
C :コンデンサー
SG:スパークギャップ
TC:処理槽
PR:高電圧プローブ
OS:オシロスコープ
第1図 スパークギャップ式高電圧パルス電源の回路図(A)と典型的な電圧波形(B)
食品と容器
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スは上記以外の方法でも形成することができ,半
利用が研究されてきている。この場合,放電プラ
導体式やコイル式など様々な方法が存在する。た
ズマは発生しておらず,高電圧パルス“電界”の
だし水中を対象とした場合には最大数100 Aにも
作用と捉えられている。第2図に高電圧パルス電
達する電流が流れることもあり,回路設計には注
界の細胞膜破壊のイメージ図を示す。この PEF
意が必要である。上述のスパークギャップ式は小
による微生物の破壊- PEF 殺菌またはパルス殺
型化が困難,ノイズの発生などのデメリットはあ
菌-は細胞膜の電気的圧縮による破壊が原理であ
るが,非常にタフなため安定した操作が期待でき
ると考えられ,この現象に関しては優れた総説が
るメリットがある。
出版されている2)3)。この現象は細胞への遺伝
とら
子導入(エレクトロポレーション),細胞融合と
3.高電圧パルス電界による殺菌
いった分子生物学的応用が先行したが,殺菌プロ
生物工学,特に微生物制御工学的観点から高電
セスとしての応用が広く試みられている。
圧パルス電界(Pulsed Electric Field:PEF)の
パルス殺菌は電界作用による細胞膜構造の物理
的破壊を主原理としている。このため通常の加熱
殺菌とは全く異なり,操作は常温,または常温よ
り少し高い雰囲気温度で実施できる。従ってパル
ス殺菌は食品の変質・劣化を最小限にしながら殺
菌可能な技術として期待されている。またプロセ
スとして考えた場合にも加熱殺菌処理は試料の加
熱,冷却プロセスが必要となるのに対し,パルス
殺菌ではこれらの操作は必要ないので,エネルギ
ー効率の良い殺菌システムを構築することが可能
と考えられている。
パルス殺菌のための電極形状は様々である。も
っとも基本的な形状は平板対平板電極で,古くか
ら研究されてきた。また電極間で均一なパルス電
界処理を行うことができるため,パルス殺菌の基
礎特性を調べる目的でも研究されている。細胞膜
破壊はおよそ1V以上で起こると推定されている
(臨界電圧)。この現象に関しては優れた総説があ
る 4)。この臨界電圧以上の膜電位を生じるよう
なパルス電界を印加すれば細胞膜の破壊-パルス
殺菌-が可能となるが,臨界電圧以上ではパルス
殺菌効率は印加電圧に依存することが示されてい
る。また生じる膜電位は原理的に細胞が大きい方
が大きくなり,実験的にも報告されている4)。
パルス殺菌における印加時間は一波あたりの高
電圧パルス印加時間とパルス周波数により定義さ
れる。つまり処理時間を長くするには定周波数で
処理時間(滞留時間)を長くするか,周波数を上
第2図 PEFによる細胞膜破壊のイメージ
げることにより得られる。一般にパルス殺菌率は
臨界電圧以上で可逆的破壊,不可逆的破壊と進行すると
考えられる。
食品と容器
この処理時間に依存する。Hülsheger らはバクテ
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リアの殺菌率とパルス処理時間の関係をモデル化
の培養温度に依存することも実証した10)。この
している 5)。パルス処理時間を長くすると生菌
結果からパルス殺菌の処理温度依存性は対象とな
率が低下することは短いパルス印加時間では一般
るバクテリアの細胞膜の構造が温度により変化し,
的である。しかし印加時間が長時間の場合,パル
この結果殺菌効率が向上するものと考えられる。
ス処理時間を長くしても生菌率の低下が鈍くなる,
細胞膜は脂質分子を主要構成成分とする液晶状態
つまり殺菌率が飽和してくることは多くの実験で
になっていると考えられる。この結果いわゆる
認められる現象である。Barbosa-Cánovas らは
“流動モザイクモデル”と呼ばれている,ダイナ
Sacharomyces cerevisiae の25 kV/cm パルスを用
ミックな分子交換が可能な状態になっている。処
いた殺菌実験において10パルス以上印加すると生
理温度(雰囲気温度)が上昇すると,細胞膜を構
菌率の低下が起こることを報告している6)。筆
成している脂質分子の振動が激しくなり,これに
者らの実験ではパルス実験ではオシロスコープ上
伴い細胞膜が“粗く”なる。この粗くなった細胞
の波形から算出した消費エネルギーと殺菌率の関
膜はパルス電界に対する感受性が高くなると考え
係 を 明 ら か に し て い る。 こ れ に よ る と お よ そ
られる。逆に低温では細胞膜が液晶状態からより
200J/mL までの範囲では殺菌率は消費エネルギ
硬い結晶状態となり,パルス電界に対する感受性
ーと相関があるが,これ以上のエネルギーを加え
は大きく低下する,つまり殺菌しにくくなる。パ
ても生菌率の低下が起こりにくくなることを示し
ルス殺菌を実施する場合には対照となるバクテリ
ている。
アの生育温度を考慮し,この生育温度以上で操作
パルス処理温度はパルス殺菌に大きく影響を与
することが望ましい。
える。常温のパルス殺菌に比べ,50~60℃で行う
4.パルス殺菌のための処理槽デザイン
パルス殺菌の方がはるかに殺菌効率が上昇するこ
とが示されている。筆者らも大腸菌の場合の結果
パルス殺菌の基礎特性の解析と共に,実用化を
を報告しているが,この温度域での熱処理ではほ
目指したパルス殺菌処理槽の開発も行われている。
とんど生菌率の減少はないのに対し,パルス殺菌
最も基本的な電極形状は2枚の平板電極を適当な
は大きな温度依存性が認められた(第3図)7)。
絶縁体スペーサーでサポートしている平板対平板
このパルス殺菌の温度依存性について Marquez ら
電極で,電極間の電界強度は均一である。ただし
は溶液中イオンの運動
性の増加を指摘してい
る8)。一 方,Hülsheger
なる可能性を指摘して
い た 9)。 筆 者 ら は こ
のパルス殺菌の温度依
生 菌 率[−]
により殺菌されやすく
生 菌 率[−]
らはバクテリアが温度
存性に関して,各種の
培養温度で培養した大
腸菌を用意し,様々な
処理温度でパルス殺菌
を行った。この結果,
処理時間[S]
パルス殺菌は処理温度
処理時間[S]
に依存するばかりでな
く,対象となる大腸菌
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消費エネルギー[J/mL]
第3図 パルス殺菌の特性((A)温度処理のみ,(B)
PEF+温度処理)
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この形状ではスペーサーと電極金属の接触面で電
たバクテリアにも均等に電界がかかるため,ロス
界の集中が起こってしまう。これを改善したもの
が多くなると考えられるからである。そこで,不
が角に丸みを持たせたディスク型平板電極を対向
均一パルス電界を印加する方法が考案されている。
させた処理槽である。筆者らの研究室でも基礎的
筆者らは平板対平板電極の間に様々な孔をあけた
研究を行う時には同様の処理槽を使用している。
絶縁板(アクリル板)を挿入し,同じパルス殺菌
また工業的な実用性向上のため,連続操作ある
操作を行った。この結果,絶縁板中の孔の面積は
いは流通操作可能な処理槽も多数考案されている。
同じでも小さい孔を多数あけた方が殺菌効率がよ
Barbosa-Cánovas らのシステムは平板電極間に
いことを報告している。これは同じパルス電圧を
曲がりくねった流路を切った絶縁板を挟み込み,
印加しても孔周辺では電界強度が大きくなるので,
この流路中に試料が通過する間,パルス殺菌が行
この付近の殺菌効率が高まり,全体の殺菌効率を
えるように工夫されている 6)。この滞留時間は
向上させていると考えられる 7)。この電界集中
流速にもよるが,最大1分程度としている。また
型パルス殺菌槽はシミュレーションにおいても有
同軸二重円筒タイプの処理槽も提案されており,
用性が示されている。このような部分電界集中型
オハイオ州立大学の研究グループが作製したシス
パルス殺菌槽としては,二重らせん電極型12)と
テムを使っている例が多い11)。このシステムは
絶縁体補助型11)がある。前者は二重円筒の間に
処理液を電極間(おそらくは平板対平板電極間)
ワイヤー電極を2本まきつけ,試料をこのワイヤ
と冷却用の水槽を繰り返し通過させながら処理す
ーに沿って流通させるタイプである。電界はワイ
るもので,パルス処理温度のコントロールが容易
ヤー電極近傍に発生し,試料はこの電界集中領域
で,安定した実験データが取れている。彼らは35
を通過するように設計されている。この二重らせ
kV/cm の電界強度が適していると報告している。
ん電極型パルス殺菌処理槽は従来型に比べて高効
平板対平板電極は均一な電界を発生させること
率であることが実証されている。また後者の絶縁
ができるため,解析はしやすいが,エネルギー効
体補助型は水平に並べた平板電極中に絶縁体を挿
率的には悪いと考えられる。なぜなら,殺菌され
入し,絶縁体周辺で電界集中を発生して,試料を
平板対平板型
(絶縁板付き)
平板対平板電極
平板対平板型
(絶縁フィルム付き)
絶縁材料
電極
リングシリンダー型(絶縁板付き)
GSS
二重らせん型
第4図 筆者らによるパルス殺菌用電極の改良
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通過させるタイプである。このパルス処理槽は小
筆者らも含めて様々な研究が行われているが,タ
型化でき,殺菌チップとして考えることができる
ンパク質など生体由来分子にパルス電界がどのよ
としている。スケールアップを考えた場合には二
うな影響を与えるのかはあまり研究されていない。
重らせん型の方がワイヤー電極長さ(電極表面
近年,生体分子に対するパルス電界処理としては
積)を自由に変更できるなど利点は多いと考えら
酵素の失活に関する研究例が増加している。これ
れる。筆者らの今までの電極形状の改良過程を第
らの研究は食品の殺菌と同時に酵素も失活させ,
4図に示す。
品質の長期維持を図ろうとするものである。例え
また筆者らはこの電界集中型を発展させた織物
ばタンパク質分解酵素などが食品に残存している
電極も開発した(第5図)。これは既存の織物技
場合には,特に常温保存する食品品質を徐々に劣
術を流用して金属ワイヤーを織り込むので,パル
化させてしまう。この残存酵素の問題は非加熱殺
ス殺菌用の電極を再現性よく大量に作製すること
菌技術の実用化にとって大きな課題となるであろ
ができる。この織物電極を用いて大腸菌の殺菌実
う。これらの食品中に含まれる酵素のパルス電界
験を行い,この殺菌特性を報告している13)14)。
による失活例としてはアルカリフォスファターゼ,
パルス殺菌は非加熱殺菌技術として期待されて
リパーゼ,パパインなどの報告があり,Vega-
おり,筆者らを含め世界各国で研究が行われてい
Mercade らはこれらのパルス電界による酵素の
るが,実用化に至った例はまだない。この原因は
失活についてまとめている 7)。これらの結果を
食品衛生法などの法的制約もあるが,パルス殺菌
総合するとパルス電界処理による酵素の失活には,
のエネルギー効率の低さが大きいと考えられる。
パルス殺菌の場合より強い電界強度が必要である
筆者らは電極形状の改良や銀との併用15)など,
と考えられる(30~50 kV/cm)。ただし,このよ
エネルギー効率の向上を目指している。
うな強いパルス電界処理は温度の上昇も顕著であ
ると考えられ,加熱による変性なのか,パルス電
5.パルス電界の生体由来分子に与え
る影響
界による変性なのかは詳細な検討が必要である。
一 方, 筆 者 ら は 比 較 的 弱 い パ ル ス 電 界(10~
15 kV/cm)処理ではむしろ酵素を活性化する方
パルス電界によるバクテリアの殺菌については
第5図 織物電極のシステムと電極部写真
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715
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法として用いられるのではないかと提案してい
壊電圧は1MV/cm を越えるといわれている。こ
る16)。酵素はタンパク質であり,複雑かつ特異
のような電界強度を産業レベルで調整するのは容
的な立体構造を持つことによって活性化される。
易ではない。実験室レベルでは針対平板型のよう
タンパク質分子の中にはアミノ基とカルボキシル
な不均一電界で局所的に発生させることができる
基が多数存在するため,分子内にカチオン,アニ
が,作用範囲は極めて限られたものになる。そこ
オンを持ちやすい。これらの荷電がパルス電界の
で水中で放電プラズマを作用させるために検討さ
ような瞬間的な電界により振動し,タンパク質の
れているのが気液混合相での利用である。上述の
コンフォメーションが変化することは考えられる
ように厳密に水中で放電プラズマを発生させるこ
モデルである。実際,CD スペクトル分析などで
とは困難であるが,殺菌処理を含む水処理への放
コンフォメーション変化らしき現象が捉えられて
電プラズマの適用は極めて魅力的なテーマである。
いる。タンパク質活性のパルス電界による影響は
筆者らも含めて水中バブル放電プラズマ処理が試
学術的にも非常に興味深い課題である。パルス殺
みられており,バブル中で発生した放電プラズマ
菌と共に酵素の失活が可能だとすれば(あるいは
は,一部が水中に伸長すると考えられている19)。
操作条件が特定されれば),パルス殺菌の実用化
また逆に水をミスト化し,気中放電プラズマに曝
にとって極めて重要である。逆に酵素を活性化す
すことで殺菌を試みた例もある20)。
る現象が確認されれば,酵素リアクターや酵素分
放電プラズマは① OH ラジカルなど様々な活性
析方法などのバイオテクノロジーの分野で有用で
種の生成,②空気や酸素ガスの場合にはオゾンの
ある。いずれにしても今後の詳細な検討が必要な
生成,③衝撃波の発生,④紫外線を含む発光現象
分野である。また筆者らは他の生体由来分子とし
など殺菌操作に適用できる複数の現象が同時に起
て DNA などの核酸分子の水溶液にパルス電界を
こる。従って対象とする水,食品を効率よく放電
当てると核酸分子が分解されることをアガロース
プラズマに曝すことができれば殺菌・滅菌は可能
ゲル電気泳動で確認している17)。
である。しかし大気圧水中での放電プラズマの発
高電圧パルス印加による電界作用はバクテリア
生は不均一であり,技術的に解決しなければなら
の殺菌のみならず興味深い現象が報告されつつあ
ない課題も多い。また食品に適用しようとした場
り,様々なバイオテクノロジー分野で利用するこ
合,放電電極(一般に金属)を食品試料に曝す必
とが期待される。特に生体分子に対する影響は研
要があるが,放電プラズマの発生に伴い金属のス
究され始めたばかりであり,今後の発展が可能と
パッタリングや溶出により食品が汚染される。ま
思われる。
た発生した活性種による食品の変質のリスクや,
さら
空気存在下では硝酸態窒素の生成および pH の低
6.パルス放電プラズマを利用した殺
ぐ
下も危惧される。このような理由から食品のアッ
菌と有機物分解
プストリームにおける殺菌に放電プラズマを利用
近年,放電プラズマを利用した殺菌技術の開発
することは現実的ではないと考えている。しかし
が試みられている。主に医療用機材の殺菌・滅菌
食品廃液の殺菌などダウンストリームでの利用の
を目標としたものが多く,永津らは減圧下のプラ
可能性は十分にあるのではないかと考えられる。
ズマ処理により固体表面の芽胞の殺菌も可能であ
筆者らも食品そのものの殺菌操作には前述の電界
ることを報告している18)。固体表面の大気中(ガ
作用を利用した「高電圧パルス処理」を,食品廃
ス相)における放電プラズマ殺菌は数多くの研究
液を含む水処理には「放電プラズマ処理」が適し
報告例が存在するが,水中(液相)での放電プラ
ているのではないかと提案している。
ズマを用いた殺菌報告例はほとんどない。理由の
筆者らが提案したマイクロバブルと放電プラズ
一つは絶縁破壊電圧の違いである。空気中の絶縁
マ反応器を組み合わせたシステムの概略図を第6
破壊電圧は約30 kV/cm であるが,純水の絶縁破
図に示す。水処理で効果があるとされているマイ
食品と容器
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クロバブルを SPG 膜(Shirasu Porous Glass)に
れらの研究成果は実用化され,数社から細胞への
より発生させ,らせん状に巻いた二重ワイヤー電
遺伝子導入装置として市販されている。これを土
極間に導入するシステムとなっている。本システ
台としてパルス殺菌技術などより発展した研究が
ムは水処理において難分解性の有機化合物の分解
進められている段階である。遺伝子導入の場合に
と殺菌を同時に行うことを目的に試作したもので
は原理的には数千個あるいはそれ以上の細胞に対
ある。難分解性有機化合物のモデルとして界面活
し,“ひとつの細胞”にパルス電界の作用が及ん
性剤 LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナ
で遺伝子が導入できればよかったが,殺菌に応用
21)と BAS(牛血清アルブミン)などの
トリウム)
することを考えた場合,“ほとんどの細胞”にパ
タンパク質の分解除去22),および大腸菌の殺菌
ルス電界を作用させ,細胞破壊を誘発させること
を試みた。残念ながらそれぞれの系に対しマイク
が求められる。このためにはさらに基礎研究を発
ロバブル単独ではなんら効果は認められなかった。
展させると共に,工学的工夫(ブレークスルー)
一方で,高電圧パルス電圧をらせんワイヤー電極
が必要である。
に印加するとマイクロバブルが放電プラズマのト
パルス殺菌の基礎特性は筆者らを含めた様々な
リガーとなり,比較的安定した放電プラズマの発
研究者により,ほぼ明らかにされていると考えて
生が確認でき,水中バブル放電プラズマによる
よい。しかし実際の食品の殺菌へ応用する場合に
LAS や BAS,大腸菌由来タンパク質の分解を実
は,食品自体の導電率をはじめとする特徴,性状
証している。
を考慮して,食品ごとに最適化する必要がある。
今後は様々な食品を用いた応用研究が蓄積されて
7.おわりに
いくことを期待したい。
せん
パルス電界による細胞膜破壊現象(電気穿孔)
また同じ電源で水中バブル放電プラズマを利用
の工学的利用は細胞への遺伝子導入のためのエレ
することもできる。潜在的にはパルス電界処理よ
クトロポレーションに始まったと考えてよい。こ
りも殺菌効果は高いと考えられるが,前述のよう
第6図 マイクロバブルを利用した水中放電プラズマリアクター
食品と容器
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に金属の混入や副生成物の可能性があるため食品
浄水や食品製造廃液の殺菌処理などには利用する
や医薬品自体に使用することは難しい。しかし洗
ことが可能と思われる。
参 考 文 献
1)高 野光男,横山理雄「食品の殺菌―その科学と技術
(1983)149
10)Ohshima, T. et al. : J. Electrostat., 55(2002)227
―」幸書房(1998)
11)Fox, M. B. et al. : Lab on a Chip, 5(2005)943
2)W e a v e r , J . C . a n d C h i z m a d z h e v , Y . A . :
Bioelectrochem. Bioenerg., 41(1996)135
12)ネイデ ミホ イシダ他:日本食品工学会誌 , 4(2003)
3)Zimmermann, U. et al. : Biotechnol. Process., 4(1985)
47
13)Kitajima, N. et al. : Textile Res. J., 77(2007)528
79
4)葛西道生,稲葉浩子:蛋白質核酸酵素,31(1986)1591
14)北島信義他:日本食品工学会誌,8(2007)139
5)Hülsheger, H.et al. : Radiat. Environ. Biophys., 22,
15)吉野功他:静電気学会誌,34,(2010)81
16)Ohshima, T. et al. : J. Electrostat., 65(2007)156
(1983)149
6)Barbosa-Cánovas, G. V. et al. : Preservation of foods
17)Ohshima, T. et al. : J. Electrostat., 46(1999)163
with pulsed electric fields. Academic Press Ltd.,
18)永津雅章,荻野明久:表面技術 , 58(2007 117)
London(1999)
19)安岡康一他:J. Plasma Fusion Res., 84(2008)666
7)Ohshima, T. et al. : J. Electrostat., 42(1997)159
20)斎藤 司他:電気学会論文誌 A, 128(2008)317
8)Marquez, V. O. et al. : J. Food Sci., 62(1997)399
21)大嶋孝之他:静電気学会誌,33(2009)14
9)Hülsheger, H. et al. : Radiat. Environ. Biophys., 22
22)谷野孝徳他:静電気学会誌,34(2010)31
第48回 日本食品照射研究協議会 教育講演会のご案内
期 日:平成24年11月30日(金)
会 場:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
東京都千代田区九段北 4−2−25
交通:JRまたは地下鉄(有楽町線・南北線・
新宿線)市ヶ谷駅より徒歩2分
主 催:日本食品照射研究協議会
共 催:公益社団法人日本食品衛生学会 社団法人日
本食品科学工学会 日本食品化学学会 日本
防菌防黴学会 公益財団法人体質研究会
スケジュール:
10:00 ~ 受付
10:30 ~ 10:55 総会
11:00 ~ 12:30 研究発表
14:00 ~ 17:20 教育講演
Ⅰ.食品中の遺伝毒性発がん物質のリスク評価
畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所)
Ⅱ.2−アルキルシクロブタノン類を指標とした照
射食品の安全性試験
古田 雅一(大阪府立大学放射線研究センター)
17:30 ~ 20:00 懇親会
参加費:大会 会員3,000円/非会員6,000円
懇親会 一律4,000円
参加申込:参加ご希望の方は,お名前,会員種別(正・
団体・賛助会員,非会員),ご所属,弁当の要不要,
食品と容器
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懇親会の出欠を E-mail にて当事務局までお知
らせください。
その他:
1)参 加費および弁当代金(1,000円)は当日お支
払いください。会員金額は,当協議会の正会員,
団体会員(3名まで),賛助会員(6名まで)
に適用いたします。大会参加費には講演要旨代
を含みます。
2)弁 当を用意いたします(12:30配布予定)。弁
当ご希望の方は参加申し込み時に「弁当要」と
お知らせください。
3)このお申込みをもってご出席とさせていただき
ますので,当日は直接会場にお越しください。
なお,出欠等に変更がありました時は,必ずご
連絡くださいますようお願いいたします。
4)大会の詳細につきましては後日,協議会ホーム
ページ(http://jrafi.ac.affrc.go.jp)にてご確認
ください。事情により,内容を一部変更する場
合もありますのでご了解願います。
申込締切:平成24年11月19日(月)
申込連絡先:日本食品照射研究協議会 事務局
E-mail:[email protected]
FAX:029−839−1552
2012 VOL. 53 NO. 11
業
T
界
O
ト
P
ピ
I
ッ
C
ク
S
ス
須でいれたような味わい」に変更し,製品名を隠
久々に盛り上がる緑茶飲料
した飲み比べを一般の人に挑戦してもらう「綾鷹
チャレンジ」や「日本全国綾鷹試験」などユニーク
秋需商戦の立ち上がりである9月が記録的な残
な手法でアピール。これが連続成長の基を築いた。
暑となり,飲料の販売量は前年同月比3%増と好
最大手の伊藤園「お~いお茶」も3月から「に
調を維持した。全国的に好天に恵まれ,夏本番と
ごりまろやか」,7月から「ふっておいしい京都
同じように炭酸飲料やスポーツドリンク,ミネラ
宇治抹茶入り緑茶」を投入するなどして「にご
ルウォーターなど止渇飲料が引き続き需要の多く
り」訴求で応戦。「宇治抹茶入り緑茶」は,深蒸
を占め,上半期のヒット商品である「オランジー
し緑茶だけを使用することでお茶の豊かな旨みと
ナ」(サントリー食品インターナショナル)や
にごりのある深い味わいに仕立てたことやカフェ
「メッツコーラ」(キリンビバレッジ),「太陽のマ
イン50%オフ,深みのある緑の水色などを訴求し
テ茶」(コカ・コーラシステム)なども好調を持
ている。
続し,総需要を後押しした。
「伊右衛門」抹茶入りで再挑戦
だが10月に入って気温が低下すると一転して飲
だが今回,緑茶飲料市場の上昇基調を確実にし
料も止渇系から嗜好系に傾斜。缶コーヒーを中心
たのはサントリー食品インターナショナルの「伊
に緑茶飲料や紅茶飲料などに需要が移った。
右衛門」だろう。抹茶量を従来の3倍とし,コク
こうした中で無風状態が続いてきた緑茶飲料が
や風味を高めた抹茶入り「濁り茶」タイプの新商
今秋需から久々に活気づいてきた。緑茶飲料は一
品を10月2日から新発売。一斉出荷は約200万ケ
大市場を形成しながら,長い間上昇気流に乗れず,
ースと好調で,前年同期比約3倍,2004年の新発
踊り場状態から抜け出せないでいた。
売時の一斉出荷に匹敵する数量に達した。
ミネラルウォーターに需要流出が進み,ミネラ
石臼挽き抹茶に徹底的にこだわり,急須で淹れ
ルウォーターと同じようにコモディティー化が進
た抹茶入り緑茶のようなコクと深みを徹底追求。
展。納得できる価格なら特定ブランドでなくても
販促でもスーパーを中心に約2千500店で,約100
買うという消費者が増え,選択基準の多くが価格
万人を対象に大規模な店頭試飲会を行い,「抹茶
に移行。PB の台頭もコモディティー化に拍車を
入り伊右衛門,はじまる」をキーメッセージに新
かけた。
テレビ CM を12月末までに前年同期比2倍(約
「綾鷹」のにごり訴求が起爆剤
6千 GRP)投入するなど力が入る。
緑茶飲料市場活性化のきっかけをつくったのは
今年は,「にごり」競争をベースに緑茶戦争が
コカ・コーラシステムの「綾鷹」だ。2007年10月
再燃する可能性もでてきたが,今回の動きは2006
に発売された「綾鷹」は,この10月で発売5周年
年から始まった「濃い味」タイプの局地戦に似て
を迎え,この間,にごりのある急須でいれたよう
いる。ひとつのトレンドに各社の新製品が乱立し,
な味わいが評価されて39カ月連続して販売数量で
これがブームを形成し,緑茶市場を新たな方向に
2桁成長を続けるとともに,シェアも32カ月連続
導く。緑茶にかかわらず,飲料市場はこの繰り返
で伸長した。
しで伸びてきたもので,緑茶飲料も「にごり」を
導入当初は「にごり」にフォーカスしたコミュ
切り口にやっとその順番が巡ってきたと言える。
(業界誌記者 井上拓郎)
ニケーションを展開したが,2010年6月から「急
食品と容器
い
719
2012 VOL. 53 NO. 11
技術用語
解説
スムーズキャップ 〔smooth
「容器の事典」(缶詰技術研究会編)から抜粋
cap〕
スコアがキャップ天面円周部に沿って設けられ
ているリングタブ付きイージーオープンキャップ
かん
である。開蓋時に密封剤の一部がビン口との嵌合
部から抜き取られ,スコア破断面をカバーしてい
るので安全性も高く密封性も良好なアルミキャッ
プである。
1992年に開発され,現在,清酒用アルミ広口
キャップのほとんどがこのタイプに切り替わって
〔press on cap〕
プレスオンキャップ キャップ天面内周部からスカート内側面に塩ビ
いる。
タブ
コンパウンドがライニングされており,ビン製品
にキャッピングする際,キャップを加温してコン
パウンドを軟化させた状態で打栓しキャッピング
スコア
する。
コンパウンド
(密封材)
ビン口には,ネジが設けてあり,熱間充填され
た内容物が冷却され減圧されることによりコンパ
〔pull-up cap〕
プルアップキャップ ウンドがビン口部のネジに押し付けられ嵌合する。
リングタブを有し,タブ付け根のキャップス
開栓時にはスクリューキャップのように回転させ
カート部両端にスコアが設けてあり,キャップ中
て開栓することが可能であり,ベビーフード等で
心部付近のスカート部には2本~4本のスリット
商品化されている。
が設けられているイージーオープンが可能なアル
ミキャップである。
用途としては,清酒,果汁,ワイン等の熱間充
填されるバキューム製品で使用されており,密封
材には塩ビコンパウンドが使用されている。
使用時にリングタブを引き上げタブ両側のスコ
アを切ることによりバキュームカットができ,さ
らに引き上げることによりキャップ本体がスリッ
ト部より開き開栓できる。
ご案内
缶詰技術研究会設立50周年記念として『容器の事典』を出版し,好評発売中。
・容器(缶,プラスチック,紙,ガラス)に関する材料から製造方法まで広範囲に解説
・見出し語:約1,300項目(文中語はゴシックで示し,邦語索引から検索可能)
・A 5判 246ページで手軽なハンディータイプ,販売価格 4,800円
ご購入希望の方は,巻末の通信カードよりお申し込み下さい。
食品と容器
720
2012 VOL. 53 NO. 11
業界の話題
日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
シニア層の食の志向 食べ過ぎ
している食の行動を聞いたとこ
進していく。
ず適正量 栄養バランス考えて
ろ,シニア層では「塩分を控え
同品の特徴は,基材フィルム
日本公庫調べ
る・減らす」ことを意識してい
の片面に溶融した PE を薄くコ
る割合が69.0%と最も高く,
「一
ーティングする押し出しラミネ
60歳代から70歳代のシニア層
日3食食べる」68.9%,「新鮮
ート技術を用いたバイオマス
は10年前に比べて,栄養バラン
な食材を食べる」66.5%と続い
PE の加工技術を確立したこと
スを気にかけながら「低カロリ
た。また,「規則正しい時間に
で,バイオマス PE で40μm 以
ー」「味が薄め」の食品を選択
食べる」「地元で獲れる食材な
下の薄さを実現した。従来のバ
し,「良質なもの」を「食べ過
どを食べる」については40歳~
イオマス PE を用いたラミネー
ぎず適正な量」にする傾向にな
50歳代に比べて約15ポイント高
ト包装材は,接着剤を用いてフ
っていることが,日本政策金融
く,意識の変化が行動にまで強
ィルム同士を貼り合わせるドラ
公庫の調べであらためて分かっ
く影響している。
イラミネート方式を用いて製造
た。日本公庫は19日,7月にイ
凸版印刷,超薄型ラミネート軟
されていた。バイオマス PE の
ンターネットを使って実施した
包装材開発 厚さ40μm 以下の
押し出し加工技術を確立したこ
2012年度上半期消費者動向調査
バイオマスプラスチックを使用
とで,最低でも10%程度のバイ
(日食 2012/09/24 日付)
でシニア層の食の志向,行動を
(日食 2012/10/01 日付)
オマス比率を持つ軟包装材の開
分析した結果を公表した。それ
凸版印刷は,バイオマスプラ
発に成功した。従来品と同等の
によるとシニア層の9割超が健
スチックを使用した製品
シール性,ラミネート強度を保
康を意識した食生活に変化して
「BIOAXX」シリーズの新製品
持している。
いる。
で,厚さ40μm 以下のバイオマ
バイオマスプラスチックは,
調査は30歳代から70歳代まで
スポリエチレン(PE)フィル
植物由来の原料を用いた,持続
の男女に10年前と比べた食に関
ムを使用したラミネート包装材
利用ができる再生可能原料だ。
する変化を調べた。30歳代から
を開発した。食品や医薬品向け
石油などの化石資源の使用量を
50歳代にもシニア層と同様の変
の軟包装材として2013年春から
削減できるため,持続可能な社
化がみられるが,「薄めの味付
の量産を目指す。15年度には同
会形成に貢献できる。植物の育
け」「食べる量の減量」につい
製品とその関連受注を含め,30
成時に大気中の CO2 を吸収し
ての変化した割合がシニア層に
億円の売上げを目指す。厚さ40
ていること,焼却しても焼却時
比べて低い。
μm 以下のバイオマス PE を日
の CO2 排出量と植物育成時の
食に関する傾向の変化の理由
本で初めて使用したラミネート
CO2 吸収量がプラスマイナスゼ
として,シニア層では「健康に
包装材で,従来と異なるラミネ
ロとみなされることから,石油
対する意識の変化」の回答割合
ート技術を用いることで実現し
由来のプラスチックに比べて
が最も高く,「ライフスタイル
た。植物由来の原料を使用しな
CO2 排出量を削減することがで
の変化」「体調の変化」「味の嗜
がら,シール強度やラミネート
きる,環境に配慮した材料とし
好の変化」を大きく引き離した。
強度など各種物性で,石油由来
て注目されている。
シニア層の75%が健康に対する
の従来製品と同等の性能を保持
同社では「地球温暖化防止」
意識によって食を変化させてい
する。同シリーズをプラスチッ
「石油使用量削減」に向けた取
ることが明らかになった。
ク成型品やプラスチックカード
組みの一つとして1991年からバ
健康維持・増進のために意識
など,他ジャンルへの展開を推
イオマスプラスチックを利用し
食品と容器
721
2012 VOL. 53 NO. 11
た包装材の開発,商品化に取り
風山椒入り・252円)」「さばラ
不二製油・清水洋史専務に聞く
組んでいる。2011年に厚さ100
ー油缶のごぼう揚げのっけ(K
世界初の大豆分離分画技術開発
μm 以上のバイオマス PE を使
& K 缶つま紀州沖どりさばラ
用したラミネート包装材を日本
ー油漬け・336円)」など。いず
不二製油は世界初の大豆分離
で初めて開発。トイレタリー製
れもレシピブック「3ステップ
分 画 技 術「USS 製 法 」 を こ の
品の詰め替えスタンディングパ
で出来る缶つま×お酒と合わせ
ほど確立,かねて取り組んでき
ウチなど液体向けの軟包装材と
るオトナの缶詰レシピ」掲載料
た大豆を軸とする中長期事業戦
して実用化されている。
理だ。
略「大豆ルネサンス」を本格始
国分,缶つま×ワインで女子会
参加者はバイキング形式で提
動する。同戦略は大豆の持つ可
好相性の手軽料理披露
供された料理をブログやツイッ
能性を追求,原点に戻り新しい
(日食 2012/10/15 日付)
ターに載せるために写真撮影す
市場価値を創造することを目的
国 分 は 9 月29日,「 缶 つ ま 」
るなど,おのおののスタイルで
とするもので,来春にも新製法
が持つ独自の世界を一層多くの
楽しんだ。
を活用した応用製品を商品化す
人に知ってもらうために,女性
ワインはサントリーワインイ
る予定。大豆関連市場が伸び悩
の情報発信力を生かしたイベン
ンターナショナルが,女性に一
む中,市場構造を大きく変化さ
トを東京で開催した。「缶つま
押 し の ド イ ツ 産「 マ ド ン ナ R
せる取り組みとして今後が注目
満月 BAR ~ロゼワインと缶つ
〈ロゼ〉」に加え,9月1日に発
されている。清水洋史専務取締
まで月見る夕べ~」と題した女
売したスペイン産「フレシネミ
役蛋白加工食品カンパニー長に
性限定のこの企画は,多彩に揃
ーア赤 / 白」を振る舞った。
えたシリーズに少し手を加えた
イベント開始のあいさつに立
の戦略などを聞いた。
だけで魅力ある料理に仕上げた
った鉄林康司国分食品統括部オ
●来春,応用製品を商品化
13品を,東京湾ナイトクルーズ
リジナル商品担当兼育成メーカ
不二製油ではこれまでも技術
とともに堪能してもらおうとい
ー担当部長は「今夜の料理を女
をベースとする大豆関連市場の
うもの。応募者約630人の中か
子会などで紹介してもらいた
拡大戦略を推進,半世紀以上に
ら当選した「ぐるっぱ」会員50
い」と PR した。
わたり,事業領域の拡大を続け
人が日の出埠頭から午後7時に
ラジ オなど で 活 躍 する
てきた。豆腐ハンバーグや冷凍
出航する豪華客船に乗り,ロゼ
DJTARO の司会でイベントは
豆腐などの大豆タンパク食品,
ワインと一緒に料理を楽しんだ。
進み,缶詰博士の黒川勇人さん
豆乳,さらに液状・粉末状大豆
これは今年創業300周年を迎
の講座や,東京銀座・バーロッ
タンパクなどは,業務用・家庭
えた国分が行う記念イベントの
クフィッシュ間口一就店長によ
用問わず国内食品産業の活性化
1つで,たいへんな盛り上がり
る「缶つま」料理教室を実施し
へある程度貢献してきた。
となった。
た。2時間半のクルーズ最後に
今 回 新 た に 開 発 し た「USS
提供したのは「沖縄風黒豚
は,300周年記念の食品セット
(Ultra Soy Separation) 製 法 」
(使用缶詰・税込み希望小売価
などが当たる抽選会が行われ,
は,乳に準ずる分画を大豆でも
格= K & K 缶つまプレミアム
盛況のうちに幕を閉じた。
可能とするもので,これにより
霧島黒豚角煮・840円)」
「マテ
「ぐるっぱ」は国分商品のオ
乳関連製品などに見られる高い
茶鶏と焼きパプリカのマリネ
ンラインショッピングやプレゼ
加工技術が大豆でも実現可能と
(K & K 缶つまレストラン マ
ントが当たるアンケートに参加
なる。
テ茶鶏のオリーブオイル漬け・
できるサイト。食品・酒類・菓
しかし,乳関連市場と比較し
452円)」
「赤貝どてねぎ玉子(K
子のモニター企画を毎月実施し
た場合,大豆関連市場はまだ発
& K 缶つま有明産赤貝どて煮
ている。
展途上と言わざるを得ない。前
食品と容器
722
(日食 2012/10/17 日付)
「USS 製法」の開発経緯,今後
2012 VOL. 53 NO. 11
者が約2兆円に達しているのに
の研究と開発を続け,素材から
イズミヤは今後,工場など供給
対し,後者は約3000億円にとど
食品までを生産する,世界で唯
体制を強化して京都や神戸へ広
まっている。高い栄養価値や世
一の「総合大豆食品メーカー」
げ,1日2万食を目標にする。
界的な食糧問題などを考慮に入
でもある。「大豆ルネサンス」
配送は子会社の工場で製造した
れると,大豆の重要性は今後さ
の中核である領域拡大への最大
弁当を各営業所から配達員が各
らに高まることは明白だ。今回
戦略として,今後,市場成長を
家庭に届ける。配達員は1食運
の技術革新による市場の広がり
果たすことは企業責任の一つだ
ぶごとに100円の歩合で1日2
は,最終的に社会貢献にもつな
ろう。
~3時間で3,000円ほどの収入
がると考えている。
小売各社,高齢者向け配食事業
が得られるという。配達員が新
この「USS 製法」を用いて,
に相次ぎ参入 有望市場で競争
規客を開拓すれば,1件につき
具体的には「低脂肪豆乳」と
(日食 2012/10/19 日付)
50円支払うことで顧客増を促す。
「豆乳クリーム」に分画するこ
食品スーパー(SM)や総合
坂田俊博社長は「顧客には高齢
とでそれぞれの特性を生かした
ス ー パ ー(GMS) の 小 売 各 社
者が多いので会話や口コミで広
新しい製品開発やメニュー開発
が弁当やおかずなどを自宅に届
がる。配達員の教育レベルをい
などが期待できる。
ける配食事業への参入が相次い
かに上げられるか大きなポイン
例えば「豆乳クリーム」では
でいる。SM のオークワが21日
ト」と話す。
近年人気の和風スイーツなどで
から宅配弁当事業を開始するほ
CVS もセブンイレブンが食
の活用に期待している。和のク
か,マルエツも実験を始めた。
事お届けサービス「セブンミー
リームとして味覚を高める新素
GMS でもイズミヤが供給体制
ル」を5月から500円以上で配
材として,ニーズが多様化する
を強化してエリア拡大を目指す。
送料無料にし,注文数を大幅に
末端市場へ積極的に提案したい。
高齢化が進む中,小売各社は有
増やしているという。ファミリ
また「低脂肪豆乳」は低カロ
望市場と見る。外食,生協,コ
ーマートも4月に子会社化した
リーの豆乳や風味劣化の低減が
ンビニエンスストア(CVS)も
高齢者向け宅配弁当のシニアラ
期待でき,「豆乳クリーム」と
配食事業に注力しているだけに,
イフクリエイトは好調で取扱件
は異なる使い方ができる。
今後はさらに商品やサービスの
数が増えているという。
両素材ともに大豆の長所を生
差別化や収益モデルの構築が求
先行するワタミは子会社で配
かしながらも異なる特性を有し
められそうだ。
食事業のワタミタクショクが弁
ていることから,市場における
和歌山が基盤の SM オークワ
当のほか,下調理やカット済み
関連製品の数量を飛躍的に伸ば
は弁当の宅配事業「おーくわ
食材を集めた料理キットで差別
すことができると考えている。
亭」を始める。おかずのみで1
化する。同社の11年度の宅食事
さらには,乳における「Milk
食500円, 週 6 日 間 配 達 す る。
業 は 売 上 高262億 円 で 前 年 比
Tree(バターやチーズなど乳
配送は店舗から商品を自宅に届
69.3%増,利益高23億6,700万円,
を由来とする関連製品の広が
けるサービスを活用し,和歌山
74.6%増と伸長。業務委託で契
り)」のように,大豆を起点と
市内の6店で実験する。首都圏
約した配達員が営業所から顧客
す る「Soy Tree」 の 実 現 も 視
ではマルエツが池袋の店舗で1
の家庭に配送することで効率化
野に入れている。味覚面での大
食500円で週単位で弁当配達サ
している。
幅改善や応用製品の充実を図る
ービスの実験を始めた。店舗商
生協の配食事業も10月1日時
ことで,十分な可能性を秘めて
品の配達,ネットスーパーとも
点で34都道府県38生協に拡大し,
おり,将来的には海外を視野に
融合して御用聞きサービスとし
1日当たり約5万1,000食を提
入れた展開にまで高めたい。
て広げたい考えだ。
供するほど成長している。
不二製油は半世紀の間,大豆
大阪市内で配食を始めている
食品と容器
723
2012 VOL. 53 NO. 11
今月の統計
(℃)
☆ 2012年 8 月 号 か ら 新 平 年 値 を 使 用 ( 気 象 庁 調 査 )
30
平年値
25
2011年
20
2010年
2012年
15
10
5
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
第1図 平均気温の推移(1~9月・東京)
(千kL)
600
2011年
500
2012年
2010年
400
新分野
300
発泡酒
200
ビール
100
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
第2図 月別・ビール・発泡酒・新分野別課税数量推移
(千kL)
600
2011年
500
2012年
2010年
ビン
400
大樽
300
缶
200
100
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
第3図 ビールの月別・容器別課税数量推移(発泡酒・新分野込み)
食品と容器
724
2012 VOL. 53 NO. 11
今月の統計
㻔㻓㻓
㻔㻓㻓
4.9
23.5
㻛㻓
36
㻛㻓
36.5
9.7
12
16.5
᩺ฦ㔕
ࣄࣤ
18.8
17.9
ኬᶙ
17.6
23.9
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㻙㻓
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䟺㻈䟻 㻗㻓
58.8
65.9
52.5
49.6
70.1
71.5
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㻔㻓᭮ ୕᪢
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ࠈἸ㸞ᖲᖳೋࡢᖳ㹳ᖳࡡ᭮㸡᪢ᖲᆍೋ
食品と容器
㜾ࠈỀࠈ
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725
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2012 VOL. 53 NO. 11
最近の技術雑誌から
○最近のアミノ酸サプリメントに関する新たなエビデン
スについて……………………………………大谷 勝
国 内 編
食
分 析 ・ 測 定
衛
生
〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術―
食品機械装置,49(10)54~61('12)
○食品表示一元化に向けての取り組み…………池戸重信
〔解説〕製品開発の官能評価/分析型パネルと嗜好型パ
ネルの違いについて
國枝里美:化学と生物,50(10)742~747('12)
〔解説〕第2特集―洗浄と衛生管理―
食品工業,55(20)72~84('12.10/30)
○食品工場における洗浄システムの運用〜対象別洗浄事
例とポイント〜………………………………塩田智哉
○食品容器・包装材料へのガンマ線滅菌の実際と実施例
………………………………………………前口浩人
〔解説〕食品の放射能測定技術~新基準導入から半年 科学的に信頼できる分析結果を求めるために~
編集部:食品と開発,47(10)15~20('12)
微 生 物・ 酵 素
〔解説 〕特集―グローバルスタンダードへの対応急ぐ日
本 の 食 品 業 界 ~押し寄 せる GFSI 承 認規 格,ISO
22000,食品安全強化法,ハラルなどの最新動向~―
月刊 HACCP,18(10)19~47('12)
○ TCGF が「ジャパン・フードセーフティ・デイ」10
月30日開催!~ GFSI に関する正しい情報の普及・
理解の浸透を目指す~
○ ISO9001,総合衛生管理製造過程を経て FSSC22000へ
~ハウス食品における GFSI 承認規格への対応とは~
…………………………ハウス食品(株)品質保証部
金子茂靖氏,米澤武志氏に聞く
○ GFSI 承認スキーム~ BRC と IFS について~
………………………………………………竹信誠司
○二者監査の位置づけと効果的な監査体制の構築につい
て~ V−CAP の活用~… ……………………中川将征
○米国 食品医薬品局(FDA)が制定した食品安全強化
法(FSMA)の特徴や概要… ……………寺原正紘氏
○日本でも一般的にハラルを食べられる環境に変われば,
巨大で可能性に満ちた「潜在的なマーケット」が開
けてくる!~急速に高まる「ハラル認証」への関心
と需要~
………… マレーシア ハラル コーポレーション(株)
代表取締役 アクマル・アブ・ハッサン氏に聞く
〔解説〕農芸化学の伝統と先端生命化学の進展/記念シ
ンポジウム 微生物が支えるビタミン類の工業生産
清水 昌:化学と生物,50(10)768~772('12)
栄 養 ・ 健 康
〔解説〕摂食障害―食べられない,あるいは,食べ過ぎ
てしまう病気
鈴 木( 堀 田 ) 眞 理: 日 本 調 理 科 学 会 誌,45(5)
372~377('12.10)
〔解説〕β−クリプトキサンチンは飲酒・喫煙による健
康影響に対して有効か-最近の栄養疫学研究から明
らかになったこと-
杉 浦 実:New Food Industry,54(10)46~56
('12)
〔解説〕第1特集―新規食品素材―
食品工業,55(20)43~69('12.10/30)
○抗アレルギー食品素材 KT −11粉末“イムノプロ”開
発について………………………飛田啓輔・黒崎晃彦
○ L-アラビノースと食物繊維の併用による吸収抑制
の相乗効果………………………………………山元英樹
○新し い健康食品素材- GRF Ⓡ(ゴールデンローズフ
ルーツⓇ,刺梨)-抗酸化力免疫力向上,腎機能改
善効果を中心に-……………………………崔 雨林
○米国,中国での新規食品の認可制度の概略
………………………………………………林 辰行
○黒大豆ポリフェノール素材 クロノケアⓇ SP
………………………………………………難波文男
〔解説〕特集―食品包装材のハザードと PAS223―
月刊 HACCP,18(10)99~110('12)
○食品包装材の安全性確保………………………杉浦 勉
○ PAS223に基づいた ISO22000で定められた前提条件
プログラム構築のポイント……………………渡邊清孝
〔解説 〕特集1―2つの感染ルートを STOP !ノロウ
イルス対策―
伊藤 武:食と健康,56(10)8~19('12)
〔解説〕特集―アミノ酸の薬理作用―
食品と科学,54(10)57~66('12)
食品と容器
品
726
2012 VOL. 53 NO. 11
最近の技術雑誌から
〔解説 〕2012年度酒類食品産業の設備投資計画~2年
連続のプラス計画~/全14業種中,12業種がプラス
酒類食品統計月報,54(8)49~64('12.9)
添 加 物・副 材 料
〔解説〕弛まぬ消費者の財布のヒモと大豆相場高止まり
の見通しにさらなる合理化を迫られるみそ業界
総合食品,36(5)41~52('12.10)
農
〔解説〕特集―PET 最前線2012[前編]―
Beverage Japan,369(10)34~53('12)
○飲料産業と PET ボトル,その未来を考える
○ PET 樹脂需要と市場動向
○本格的なメカニカル B to B プラントが稼働
○樹脂サプライヤーの動向
○射出成形機・ブロー成形機の動向
産
〔解説〕特集―健康志向で注目される大豆・穀類・雑穀―
食品工業,55(19)33~67('12.10/15)
○納豆消費拡大の取り組みと納豆業界の現況
… ………………………………………………松永 進
○伝統食品・豆腐を取り巻く環境と市場活性化への取り
組み……………………………………………相原洋一
○「豆 乳で日本を元気に!」2012年日本豆乳年キャン
ペーン…………………………………………吉澤兄一
○日本製粉のアマニへの取り組み/注目される栄養素
… ………………………………………………旭 利彦
○盛夏に新蕎麦が賞味できるソバ春まき栽培
… ………………………………………………手塚隆久
○雑穀王国岩手県,特に花巻市における取り組み状況と
振興企画の推進………………………………中西 学
〔解説 〕ミニリポート―アルコール分0.00% 飲料市場
/新市場を創出し,持続的成長をめざすノンアル
コール飲料―
Beverage Japan,369(10)60~61('12)
〔解説〕リーマンショック直後の低迷を脱し回復基調に
転じた世界のビール生産量/キリン食生活文化研究
所調査
総合食品,36(5)36~39('12.10)
〔解説〕特集2―知っておきたいワインの魅力―
藤野勝久:食と健康,56(10)52~65('12)
水 産 ・ 畜 産
缶びん詰・レトルト食品
〔解説〕特集―食肉・水産加工品製造技術の近況―
ジャパンフードサイエンス,51(10)19~59('12).
○食肉加工品の需給動向…………………………武内祐司
○畜肉・魚貝類加工用品質改良剤製剤『ソフテース卜Ⓡ』
の利用と効果…………………………………小島麻美
○肉・ 魚介をおいしくやわらかくする風味付与軟化剤
『風味 ing Ⓡ UG ユニガム E−9020』… ………北川太郎
○プロトン凍結による地域活性と商品開発……弓削公正
○食肉加工製造における衛生管理用キット……鈴木富美
○新製品:深絞り用薄肉化強靭フィルム~薄くても破れ
ない多層フィルム~…………住友ベークライト(株)
○食肉・水産加工品製造技術の関連製品
〔解説〕防災の日 缶詰フェスティバル2012 in 秋葉原
~缶詰,びん詰,レトルト食品大集合!~
缶詰時報,91(10)2~8('12)
〔解説〕ベビーフード,レトルト1食入りが拡大/「選
ぶ楽しさ」提供で急速に市場に浸透
酒類食品統計月報,54(8)42~45('12.9)
〔解説〕パイン缶市場,タイ産原料不足に転じる/冬実
は受注残と収穫遅れで価格上昇懸念
酒類食品統計月報,54(8)46~48('12.9)
飲 料 ・ 醸 造
食
品
一
般
〔解説〕【データで見る】夏場のビール類消費~2年連
続のマイナスに~
酒類食品統計月報,54(8)14~15('12.9)
〔解説〕頂上決戦の火ぶた切られた即席めん市場/袋め
んが活性化,大型商品出そろう
酒類食品統計月報,54(8)76~83('12.9)
〔解説 〕V 字回復図る家庭用 R コーヒー市場/幅広い
商品展開でコーヒー飲用層の広がり期待
酒類食品統計月報,54(8)33~37('12.9)
〔解説〕特集―これからの食品開発を考える―
食品と開発,47(10)4~13('12)
○日本の食を再生させる食品開発………………斎藤 隆
○食品企業の輸出促進を目指して………………花田美香
食品と容器
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2012 VOL. 53 NO. 11
最近の技術雑誌から
○第40回開催にふさわしく多彩な演出で/“知っておく
必要がある全てのこと”をスマートに紹介
…パリ国際包装展 emballage(アンバラージユ)2012
○「ブランドゾーン」には何かがある!/“革新包装の
ショーケース”で各国の優秀事例を紹介
………………… PACK EXPO International 2012
○「食への信頼見える化計画」/フード・コミュニケー
ション・プロジェクトへのお誘い…………神井弘之
食品加工 ・保蔵
〔解説〕環境に優しい成分調製技術―マイクロ波等を活
用した乾燥と抽出技術―
大平辰朗:New Food Industry,54(10)9~28('12)
管
理
技
〔解説〕特集3―ロングライフ食品包装 partⅡ ―
食品包装,56(10)31~37('12)
○賞味期限が冷蔵で60日間の包装総菜/新製法のブリス
ター容器入りで提案開始から1年…………フジッコ
○防災対応と環境負荷低減も視野/脱水シートや通電加
熱殺菌でのシーフード長期保存研究で成果
……………東京海洋大学・水圏資源利用学研究室
術
〔解説〕特集―食品工場の生産情報管理システム―
食品機械装置,49(10)62~81('12)
○食品メーカにおける需給調整について………望月俊幸
○食品工場における制御システム………………山下善孝
○食品製造業の課題と情報管理システム構築の必要性
…………………………………渡辺秀治・大川 勉
〔解説〕特集―輸送包装の最新動向―
包装技術,50(10)3~35('12)
○海外の輸送包装試験規格について……………高木雅広
○緩衝包装設計のための輸送環境調査…………川口和晃
○包装効率の改善とシミュレーションソフトウェア
………………………………………………大林文孝
○輸送梱包設計のための CAE シミュレーション技術
…………………………………田井秀人・星野裕昭
○鉄道コンテナにおける輸送環境について-振動と温湿
度のメカニズム-……………………………小川久雄
機 械 ・ 設 備
〔解説〕特集―サニタリーポンプ―
食品機械装置,49(10)82~94('12)
○3Dオープンインペラポンプについて………折原正敏
○「食品工場で使用される自吸式ポンプについて」/コ
ンパク卜,低騒音,高い自吸性能を持ち粉体溶解に
も使用可能……………………………………大村信夫
〔解説〕特集―TOKYO PACK 2012―
包装技術,50(10)67~97('12)
○ TOKYO PACK 2012/出品傾向の総括
○ TOKYO PACK 2012/出展者・パビリオン一覧
○ TOKYO PACK 2012/主な出品物と特徴
○2012日本パッケージングコンテスト入賞作品決まる!
/経済産業大臣賞に大日本印刷(株)「金のつぶ『パ
キッ!とたれ』」
容 器 ・ 包 装
〔解説〕特集1―持続可能な食品包装への挑戦―
食品包装,56(10)17~24('12)
○世界唯一の「ケミカルリサイクル技術」を採用/石油
原料の PET ボトルと比較して約20%のエネルギー
を削減…………………… 味の素ゼネラルフーヅ
○国内初「BtoB メカニカルリサイクル」/今年4月か
ら再生 PET 樹脂100% 使用の製品を実用化
………………サントリー食品インターナショナル
○「買い物する時こそチャンス!」/包装ごみの少ない
商品を選ぶ“買い物基準”に進展
…………………………… NPO 法人 ごみじゃばん
○「プラスチックのリサイクル」を開設/情報提供・交
流の公開サイト,国内飲料メーカーの話題も
…………………………………………日報ビジネス
〔解説〕特集―食品包装の新技術・装置―
ジャパンフードサイエンス,51(10)60~67('12).
○「エバール」を用いたジッパー付非吸着性保香袋
………………………………………………片岡直樹
○国内初,18L缶とバッグ・イン・ボックスに対応した
ハイブリッド型高速ロータリー充填機「RF 充填機」
…………………………………………凸版印刷(株)
環
〔解説〕特集2―包装展ワールドワイド2012―
食品包装,56(10)25~30('12)
○目を 見張る各種併催行事の充実/国際色豊かなセミ
ナーや研究成果事例発表も
…… TOKYO PACK 2012/2012東京国際包装展
食品と容器
境
問
題
〔解説〕環境に配慮した食生活「エコ・クッキング」が
地球環境問題の改善に与える影響
三 神 彩 子: 日 本 調 理 科 学 会 誌,45(5)323~331
('12.10)
728
2012 VOL. 53 NO. 11
最近の技術雑誌から
○食品包装用ナノコンポジットフィルムの酸素拡散モデ
海 外 編
ルと酸素バリア性のシミュレーション解析
Modeling the Oxygen Diffusion of Nanocomposite-
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
based Food Packaging Films K. Bhunia et al. … …………………………… N29~ N38
ご興味のある雑誌・記事がございました
らいつでも閲覧できますので,当会宛ご
連絡ください。
Cereal Foods World (USA) Vol. 57 Jul./Aug. (2012)
○米の食感や調理の質に関わる重要因子
Toward Understanding the Generic and Molecular
Bases of the Eating and Cooking Quality of Rice
The World of Food Ingredients (NLD) Jun. (2012)
J. S. Bao……………………………………………148~156
○食品と飲料の各種処方の見直し
Spring Cleaning Formulations
Food Technology (USA) Vol. 66 Aug. (2012)
L. Bagley… …………………………………………10~14
○2012年 IFT 総会とフードエキスポのリポート
○ハイドロコロイド再考の時
Winning at Food Science
Time for a Hydrocolloid Rethink
M. E. Kuhn… ………………………………………26~50
R. Wyers… …………………………………………15~19
○2012フードエキスポのトレンドは“味覚と健康”
○インパクトのある多国籍ソース類
Marrying Taste & Health
Fusing Sauces for Impact
A. E. Sloan……………………………………………52~54
J. Reynolds and K. Massmann… …………………20~23
○フードエキスポイノベーションアワード受賞製品と技術
○ソースの最近の開発状況
IFT Spies Top Innovations
Hot Developments in Sauces
B. Swientek… ………………………………………56~57
M. Hilliam……………………………………………24~28
○どんな“成分”が勝利を収めたか
○ベーカリーの革新
What Makes a Winning Ingredient?
Rising to the Challenge
D. E. Pszczola… ……………………………………58~85
T. M. Barker…………………………………………32~37
○機能と健康を促進する原料革新の前進
○塩代替に実績がある添加物,成分の課題
Going the Distance in Ingredient Innovation
Sodium:How Much Is Enough?
K. Nachay……………………………………………86~95
H. Hoogenkamp… …………………………………41~43
○健康に焦点を当てた原料の革新
○食品安全における微生物学的課題の管理
Health & Wellness Shine in Vegas
Managing Problem Microbes
L. M. Ohr… ……………………………………… 97~102
Dr. R. Betts… ………………………………………44~46
○食品安全と品質にフォーカスした展示
Many Exhibitors Focused on Food Safety & Quality
Journal of Food Science (USA) Vol.77 Jul. (2012)
N. H. Mermelstein… ……………………………104~111
○食品グレードの有機酸,無機酸,植物エキスの静電噴霧
○各種の食品加工処理技術の革新
によるほうれん草とレタス上の大腸菌 O157:H 7 除菌
Processing Innovation on Display
Electrostatic Spraying of Food-Grade Organic and
J. P. Clark……………………………………………72~74
Inorganic Acids and Plant Extracts to Decontaminate
Escherichia coli O157 : H7 on Spinach and Iceberg
Prepared Foods (USA) Vol. 181 Aug. (2012)
Lettuce
○成長を維持する機能性飲料
V. Ganesh et al.… ……………………… M391~ M396
Beverages:Form Follows Function
○画像処理を利用したフルーツサラダの貯蔵寿命評価
W,A.Roberts,Jr.,… …………………………………25~29
Use of Images in Shelf Life Assessment of Fruit
○味覚受容性につながる重要な食品や飲料の“色”
Salad
Healthful Colors:Where Palette Meets Palate
L. Manzocco et al.… ……………………… S258~ S262
W. Boyd, Ph. D., and D. Feder, RD… …… NS3~ NS10
○ソース,マリネの市場動向
食品と容器
729
2012 VOL. 53 NO. 11
最近の技術雑誌から
Sauces See Enlightenment…………………………51~59
Green Initiatives:Making the Leap to ROI
○甘味料技術の最近の成果
K. T. Higgins…………………………………………38~45
How Sweet It Is
○持続可能性改善プロジェクトのアプローチ
D. Feder, RD,… ……………………………………61~73
It’
s Not So Hard to Be Green
○パンのための卵代替やチョコレートの革新
P. T. Hock……………………………………………47~57
Bakery Innovations for Special Needs… ………75~77
○標準化された“工場の衛生管理”
Standardized Sanitation
Beverage Industry (USA) Vol. 103 Aug. (2012)
K. T. Higgins…………………………………………59~68
○エネルギードリンク,ショットの今後の見通し
S. Hildebrandt… ……………………………………10~15
Food & Beverage Packaging (USA) Vol. 76
Aug. (2012)
○アメリカにおける包材リサイクルの現状と今後
○飲料と食品の容器における4つの新開発
What Goes Around Comes Around
A Quartet of Rigid Container Development
J. Zegler………………………………………………20~25
R. Lingle………………………………………………26~27
Hybrid Beverage Leading the Way
○心臓に良い飲料や健康補助食品
Toasting to a Healthy Heart
Int. Bottler & Packer (GBR) Vol. 86 Aug. (2012)
J. Jacobsen……………………………………………40~42
○ HDPE,PET,カートン包装の環境影響度の比較分析
○フードエキスポにて食品の最新技術を探る
IFEU Analysis Compares Environmental Impacts of
Exploring the Latest in Food Technology
HDPE, PET & Carton Packs
J. Jacobsen……………………………………………44~49
M. Hecker……………………………………………12~13
○人気のある柑橘系飲料の傾向
Popularity of Citrus Soars with Consumers
Beverage World (USA) Vol. 131 Aug. (2012)
E. Fuhrman… ………………………………………50~52
○未来の自動販売機
Vending for the Future…………………………………24
Food Processing (USA) Vol. 73 Aug. (2012)
○ IFT 総会で見た新しい飲料の変化
○スターバックス社社長が IFT 年次総会で基調講演
New Products at IFT Meet Changing Beverage Needs
‘Golden Age of Nutrition’
……………………………………26
D. Fusaro and D. Toops……………………………23~27
○アメリカにおける容器リサイクルの状況
○2011年は厳しい年:食品と飲料会社トップ100
Shared Value
Splitting in Two
A. Kaplan… …………………………………………28~30
D. Fusaro… …………………………………………32~40
○世界の清涼飲料メーカー40社
○プライベート食品におけるプライベートラベルの課題
Global Liquid Refreshment 40
The Private World of Private Label
………………………………38~42
D. Toops… …………………………………………45~51
○チョコレートの持続的成長のための新しい研究開発
Packaging Digest (USA) Vol. 49 Aug. (2012)
Ever-Popular Chocolate
○医薬品包装開発の現状
D. Cassell… …………………………………………53~54
Pharma Packaging Needs a Dose of Improvement
○ナトリウム代替の選択肢
L. McT. Pierce………………………………………34~37
Who Needs Salt?
○ラベルの電子印刷の進展
A. Concha-Meyer…………………………… WF3~ WF8
Label Industry Shows Market Resilience
○多様な飲料に適応するブレンド・ミキシング技術
M. Fairley……………………………………………38~39
Mixing Innovations Keep Beverages Flowing
○遺伝子組み換え作物のラベル表示に関するカリフォル
ニアの有権者
D. Phillips… …………………………………………79~85
C alifornia Voters in Control of GMO Labeling
Food Engineering (USA) Vol. 84 Aug. (2012)
Initiative
○工場ユーティリティーへの設備投資の困難性
食品と容器
D. TerMolen………………………………………………44
730
2012 VOL. 53 NO. 11
頃当たり前のように使っているしょうがであるが,
野菜・果物を巡って
(第四十七話)
意識してその存在を見つめると,改めてしょうが
の力を認識させられる。
主役としてのしょうが
よし だ
き
しょうがの語源は中国における漢方の生薬名
しょうきょう
よ
「生姜」からきているとの記述がある。漢方では,
こ
吉 田 企 世 子
根しょうがの新鮮なものを生姜,乾燥させたもの
(女子栄養大学名誉教授)
かんきょう
を乾姜と呼び,区別している。生姜は身体を温め,
風邪らしいと感じた時にはしょうがのおろし汁
発汗させる作用や咳を鎮める作用があり,乾姜は
に蜂蜜を加え,熱湯を注いでふうふう言いながら
体内のより深い内臓部分を温める作用や強壮作用
飲む。そして直ちに寝床に入る。これが子供の頃
があるとされている。
からの慣わしとなっていた。驚いたことにイギリ
しょうがの原産地は熱帯アジアであるといわれ
スに滞在していた折に,お世話になった大家さん
ている。薬用や香辛料として世界中で利用されて
が同じことをなさったのである。しょうがの風邪
いたのである。日本へは3世紀以前に中国から伝
予防効果には世界共通の習慣があるのだろうか。
わったとされている。古事記をひもといてはいな
風邪気味の時には,このようなしょうがの活用の
いが,そこにしょうがの栽培の状況が記されてい
他に,細かく刻んだ長ネギに味噌と鰹節を加えて,
るとのこと。古くから活用されていた植物である。
熱湯をかけて飲むということもされるが,こちら
元来,温暖な地域で栽培される野菜で,現在の
の方法は日本特有の習慣らしい。
国内での栽培状況は次のようである。
数年前に「しょうがブーム」が沸き起こり,ダ
生産量の多い順に,高知県(周年),熊本県
イエット効果があることで話題になったが,冷え
(周年),千葉県(3~9月),宮崎県(周年),和
症予防,身体を温める効果があることなどでも注
歌山県(6~9月),静岡県(12~7月)長崎県
目されたのである。経験的に昔から,このような
(周年)岡山県(周年)というところである。高
しょうがの効用は活用されているのである。日常
知県は全国出荷量の約4割を占めている。
生活の中で経験から生まれた見事な事実・健康効
各種の野菜が輸入されているが,しょうがも生
果などは数々あり,そこに科学的裏付けが後から
鮮,塩蔵,酢調整品,冷凍その他の加工品の形態
得られて,普遍的な理論が把握されているのである。
で輸入されている。輸入生鮮しょうがは特に中国
料理の素材として,しょうがは欠かせない常備
から多く,輸入量全体の96%を占めている。塩蔵
食品である。肉料理にしょうが汁と醤油を用いて
品はタイ国からの輸入量が多い。
下味をつけることで,料理の味がぐんと引き立つ。
香辛野菜として用いているのはしょうがの地下
このようなときにはしょうがは主役である。肉と
の部分,塊茎部分であるが,大きいものでは1kg
ともにしょうがも主役なのである。
ほどに肥大するとのこと。収穫直後の白く柔らか
肉の中でも特に豚肉との組み合わせは抜群であ
いものは,「新しょうが」として出荷される。こ
るように感じている。
れを薄切りにして酢漬けにすると淡いピンク色に
調理科学を専門とする友人は,しょうがに肉を
変色して美しく,味や歯ごたえがよいので,入手
柔らかくする働きがあることを研究論文で示して
できる時期には保存食として活用している。しょ
いる。これは確かなことである。自分でも確認し
うがに含有するアントシアニン系色素が酸性で赤
たくなり,台所で比較実験してみたことがあるが,
く変色するという現象を実感できる料理である。
明らかに差がみられた。それまでも,しょうがと
収穫後2カ月以上貯蔵したものが「ひねしょう
肉の組み合わせは習慣的に行っていたが,肉の硬
が」で皮が飴色になり組織が固くなるが,香りや
さにこれほど差が出ることは自覚していなかった。
辛味は新しょうがより強くなる。おそらく,た
たんぱく質分解酵素の活性が強いのであろう。日
んぱく分解酵素の活性も高まってくるのであろ
食品と容器
731
2012 VOL. 53 NO. 11
う。ひねしょうがを家庭で保存するには通気性の
谷中しょうがは葉しょうがの一種であるが,
「谷中
あるところに,室温で保つのがよいと参考書など
しょうが」の呼び方の方が一般的になっている。
には記されている。温暖な地に向く植物であるか
遮光された状態で軟化栽培し,茎を白く柔らか
ら,低温には向かないことは納得できるのである
く生育させたのが,矢しょうがである。葉茎が
が,しかし,家庭では台所に室温で保存すると乾
15cm 程度伸びた頃にわずかに太陽に当てること
燥が激しく,瑞々しさが失われてしまう。特に使
で,茎元が鮮やかな紅色を帯びるのである。辛味
いかけのものは冷蔵保存が適している。我が家で
はおだやかで肉質は柔らかい。酢漬けにして焼き
は冷蔵しているが,その方が具合がよい。
魚などの添え合わせに用いられるのが,一般的で
皮のすぐ下の部分に香りや辛味成分が多く含ま
ある。「はじかみ」と呼ばれているのがこれであ
れるので,皮をむかずにきれいに水洗いをして用
る。筆しょうが,芽しょうが,軟化しょうがとも
いるのがよいと料理書ではすすめている。スライ
呼ばれる。
スする場合には繊維の方向に沿って切ると口当た
しょうがの香り成分は主にシネオール,ジンギ
りがよくなるとも記されている。
ベレンであると報告されている。特有の辛味成分
先日,昼食を外でとることになり,時間があま
はジンゲロ-ルで,ポリフェノールの一種である。
りないので,急いでできる料理は何かを訊ねたら,
これには強い抗酸化作用があり,がん,動脈硬化,
豚肉のしょうが焼きとのこと。極めて早く出てき
老化などの予防効果があることが多くの研究で把
たが,この味が大変よくて,料理を専門とする友
握されている。また胃液の分泌を促進して消化・
人も感心していた。しょうがの風味が豚肉の味と
吸収を助ける働き,血行促進作用により身体を温
マッチし,味付けもよく,値段が手ごろであった
める働きや新陳代謝を活発にして発汗作用を高め
こともあわせて気分がよかった。
る働きなどがあるとされている。ジンゲロールは
根茎が小指ほどの大きさになったときに葉をつ
脂肪燃焼を促進して基礎代謝を亢進する働きがあ
けた状態で収穫し,瑞々しさを保ったまま出荷さ
り,ダイエットに効果があることなどが報告され
れるのが,葉しょうがである。水分が多く,辛味
ている。
はおだやかで肉質が柔らかなので,生食に適して
現在は特に健康機能性が注目される時代である
いる。味噌をつけてそのまま食べるのが好みなの
が,しかし,美味しい料理を生み出す働きはしょ
で,手に入る初夏の頃には頻繁に活用している。
うがの主たる食品価値であろう。美味しい料理を
これが,日本酒によく合うのが嬉しいことである。
食べることで心が満たされ,それが,健康づくり
甘酢漬けにもよく合うしょうがである。
に繋がっているのである。
編
集
後
記
●足を骨折し夏のハイシーズンを棒に振ったので,10月
の3連休を利用してプーケットにダイビングに行ってき
FOOD & PACKAGING ました。雨期の終わりで,天候だけが心配でしたが,昼
間はほぼ晴天に恵まれ,十分南国を満喫できました。
発行所 缶
●日本では食欲の秋,秋の味覚狩りといいますが,海外
屋台料理までタイフードを食べまくり。また雨期は果物
のシーズン。果物の王様:ドリアン,女王:マンゴスチ
ンやマンゴー,ランプータン,リューガン……とこれも
食べまくり。これからダイエットをしなければ。
詰 技 術 研 究 会
発 行 人 ●海外のリゾート地は英語圏。もう少し英会話ができれ
食品と容器
平成24年11月 1 日発行
〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4
TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1
定 価
FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
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年間 8,000円
郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5
(消費税・送料込)
塚 秀 夫
編 集 人 飯
旅行のもう一つの楽しみはグルメ。高級レストランから
ば……もう何十回後悔したことやら。
第53巻 第 11 号
−禁無断転載−
(一)
田
嶋
一
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
732
雄
印 刷 所 大和サービス株式会社
2012 VOL. 53 NO. 11