福井港海岸 離 岸 堤 ( 潜 堤 ) 工 事 に お け る GPSの 活 用 に つ い て 敦賀港湾事務所 海 岸 課 長 白井 正生 海岸第二係長 ○高野 剛光 1.はじめに 福井港海岸は、福井県北部の九頭竜川河口部に位置し (写真-1)その背後に県内有数の工業団地「テクノポ ート福井」や「国家石油備蓄基地」が立地している。福 井港海岸では、日本海特有の冬期波浪による浸食が進行 しており、浸食による波高増大や消波ブロックの飛散、 越波による護岸背後の陥没被害などが多発している。 これら、護岸前面の著しい浸食及び冬季風浪による越 波(写真-2)などがもたらす災害から、国民の生命・ 写真-1 福井港海岸 写真-2 越波の状況 財 産 を 守 り 国 土 保 全 を 図 る た め 、 平 成 16年 度 か ら 国 の 直 轄事業により、浸食対策として潜堤形式の離岸堤(以下 「 潜 堤 」 と い う ) の 整 備 ( 2,140m) 及 び 液 状 化 ・ 吸 い 出 し 対 策 と し て 護 岸 の 改 良 ( 2,600m) を 実 施 す る こ と に な っ た 。こ の う ち 潜 堤 に つ い て は 、平 成 18年 に 現 地 着 手 し 、 45mの 施 工 を 行 っ た 。 潜堤の標準断面図を図-1に示す。構造は、日本では あまり例を見ない二山潜堤である。沖側に消波ブロック ( 25t型 )、 護 岸 側 に 消 波 ブ ロ ッ ク ( 40t型 ) の 2層 乱 積 み と し 、 中 央 付 近 に 被 覆 ブ ロ ッ ク ( 16t型 ) を 設 置 し て い る 。 基 礎 捨 石 部 は 500~ 1,000kg/個 の 捨 石 、 グ ラ ベ ル マ ッ ト 部 は 30 ~ 200kg/個 の 捨 石 で あ る 。 二 山 潜 堤 の メ リ ッ ト と し て 、 下 記 の 2つ が 挙 げ ら れ る 。 ・ 沖 合 か ら の 波 浪 が 、 二 山 潜 堤 上 で 2段 階 に 砕 波 す る た め 、 急 激 な 水 塊 の 移 動 が 行 わ れ ない。このため堤内側の水位上昇が小さくなるため背後を通過する流れが弱くなる。 ・ 2列 の 潜 堤 間 を 横 に 移 動 す る 水 塊 の 流 れ が 発 生 す る こ と か ら 、 堤 内 側 へ の 水 塊 供 給 量 が減少する。 図-1 標準断面図 2.施工上の課題及び対応 今回の工事の特徴として以下の項目が挙げられる。 ・構造物がすべて水面下である。 ・ 施 工 場 所 が 既 設 護 岸 か ら 200m離 れ た 場 所 で あ る 。 ・港外での施工であり、海象条件が厳しく工事期間が限られたなかでの施工である。 このため、本工事の施工上の課題は、 ①施工場所における効率的な位置出し ②工期の短縮 となっている。 位置出しの方法としては、トータルステーションを使用しての位置出しが一般的に行わ れているが、波が高いと船が揺れ、ミラーに光波が反射しなくなるため測量不能となる場 合がある。限られた工期のなかで効率的に作業を行うためには、波高に影響されにくい位 置出し方法が必要となる。 工期の短縮は、工事の最終工程である消波工において特に重要である。作業を効率的に 行うためには、消波ブロックを据付予定箇所まで、スムーズに移動させることが必要とな る。そのためには、据付予定箇所を的確に把握できる工法が必要となる。 こ れ ら の 課 題 に 対 処 す る た め に RTK-GPSを 活 用 し て 効 率 的 な 位 置 出 し 、 安 全 性 の 向 上 及び消波ブロックのスムーズな据付による工期の短縮を図ることとした。 RTK-GPSと は 、 基 準 と な る 観 測 点 ( 以 下 、 固 定 点 と い う 。) と 求 点 と な る 観 測 点 ( 以 下 、 移 動 点 と い う 。) に 設 置 し た 2台 の GPS測 量 機 で 同 時 に GPS衛 星 か ら の 信 号 を 受 信 し、固定点で取得した信号を無線装置を用いて、移動点に補正情報を転送し、移動点側 において補正を行うことで位置を決定する測量手法をいう。 3 . 施 工 に お け る GPSの 活 用 に つ い て 3.1 位置出し測量 捨 石 投 入 位 置 ・ 捨 石 均 し 丁 張 り 設 置 位 置 ・ ブ ロ ッ ク 据 付 位 置 の 測 量 を 、 RTK- GPSを 設 置 し た 潜 水 士 船 で 行 っ た 。 RTK- GPS誘 導 画 面 よ り 潜 水 士 船 を 目 標 位 置 ま で 誘 導 し ア ン カ ー で 船 を 固 定 し た 。重 錘 を 水 中 に 降 ろ し て 、潜 水 士 に よ り 目 標 杭 ・ 竹 等 を 設 置 し た 。 (図-2) 図-2 RTK-GPSを 利 用 し た 位 置 出 し 測 量 概 念 図 3.2 作業船の位置管理 各 作 業 船 に RTK-GPSを 設 置 す る こ と に よ り 、 モ ニ タ ー 画 面 で 各 船 の 位 置 を リ ア ル タ イ ム に監視しながら作業配置位置に正確・迅速に移動し誤繰舵等による作業船同士の突発的な 海上事故を防止した。 3.3 ブロック据付 精 度 が 要 求 さ れ る 消 波 ブ ロ ッ ク の 据 付 を 行 う 起 重 機 船 ( 150t吊 ) に は 、 ク レ ー ン の ブ ー ム の 先 端 部 に も RTK-GPSを 設 置 し 、( 図 - 3 )( 写 真 - 3 ) ブ ロ ッ ク 吊 点 の 位 置 を 把 握 す る ことができる起重機船誘導システムを装備した。このシステムは、船体の動揺を姿勢制御 セ ン サ ー で 把 握 す る こ と に よ り 、 船 体 動 揺 補 正 を 行 い GPS精 度 15㎝ を 確 保 し て お り 、 ブ ロ ック据付箇所までの誘導には、充分な精度を有している。クレーン操作室には現在のブロ ッ ク 吊 点 位 置 が 映 し 出 さ れ た モ ニ タ ー が 設 置 さ れ て い る 。( 写 真 - 4 ) 起 重 機 船 誘 導 シ ス テ ム 使 用 フ ロ ー 図( 図 - 4 )を 以 下 に 示 す 。吊 点 現 在 位 置( 緑 の 四 角 ) を据付目標位置(黄色の枠内)に誘導し、右下の矢印の指示の通りクレーンのブームを動 か し 緑 の 四 角 が 黄 色 の 枠 に 入 れ ば 右 下 に 「 OK」 の 表 示 が さ れ る 。( ブ ロ ッ ク の 吊 点 位 置 が 据 付 目 標 範 囲 内 に 入 っ て い る 。) た だ し 、 モ ニ タ ー 画 面 で は 据 付 箇 所 の 平 面 位 置 し か 表 示 されず、高さ位置が表示されないため、ブロック据付作業時にはクレーン近くにいる合図 者が潜水士からの指示をクレーンオペレーターに伝えることによりクレーン作業を行い、 かみ合わせよくブロックの据付を行った。 船 位 GPS 吊 点 GPS 図-3 起重機船誘導システムイメージ図 写真-3 写真-4 GPSア ン テ ナ 設 置 ブロック誘導状況 ①船位誘導画面から現在の船位・セット 目標船位を把握し、無線により起重機船 を誘導する。 セ ッ ト目 標 船 位 現在船位 図 - 4 (1) 起重機船誘導システム使用フロー図 □ :据 付 完 了 ブ ロ ッ ク 位 置 □ :未 据 付 ブ ロ ッ ク 位 置 □ : ブ ロ ッ ク 据 付 目標位置 ②吊点誘導画面より現在のブロック吊点 位置・ブロック据付目標位置を把握し、 吊点 現在位置 クレーンオペレーターが目標位置まで操 作する。 フ ゙ロ ッ ク 据 付 目標位置 ③吊点誘導画面より現在のブロック吊点 位置がブロック据付目標位置内に入った ことを確認し潜水士による据付を開始す 吊点 現在位置 る。 フ ゙ロ ッ ク 据 付 目標位置 図 - 4 (2) 起重機船誘導システム使用フロー図 4.まとめ 今 回 の 潜 堤 工 事 の 施 工 に お い て GPSを 活 用 す る こ と に よ り 、 位 置 出 し 測 量 の 効 率 化 ・ 各 作業船の誘導の効率化、安全性の向上・ブロック据付時の誘導の効率化などが図られた。 ・ 施 工 場 所 に お け る 位 置 出 し に つ い て は 、 精 度 の 高 い RTK- GPSを 使 用 す る こ と で 、 効 率 的 な 測 量 を 行 う こ と が で き た 。 ま た 、 作 業 船 に RTK- GPSを 使 用 し た こ と に よ り 、 作 業 配 置位置まで迅速な移動が行えた。 ・工期の短縮については、消波ブロック据付時に起重機船誘導システムを使用すること で 、 積 算 ベ ー ス と の 比 較 で は あ る が 据 付 所 要 日 数 に お い て 約 4日 の 工 期 短 縮 と な っ た 。 今後の課題としては、起重機船誘導システムの艤装期間の短縮が挙げられる。今回の工 事 で は 、 作 業 船 の 艤 装 及 び キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン に 約 1週 間 を 要 し た 。 今 後 は 、 よ り 早 く 艤 装できる起重機船誘導システムの開発が望まれる。
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