電磁気学∼テスト前丸暗記?集 根本夏紀 840762c 2009 年 2 月 1 日 0 初めに 何でこんなものを作っているかというと要望があったからなわけですが、どうせだれも見ちゃくれ ないことだろうし、サクッとやっても問題ないだろうと思いますので、簡単に重要 (と思われる) 事項 についてまとめていきたいと思います。なお、毎度のことですが、このプリントは電磁気の単位や成 績を保証するものではありません。 1 最重要事項 1.1 マクスウェル方程式 これがあれば (一部例外を除いて) 電磁気学でやったすべての公式を導くことができます。 Z divD = ρ ⇐⇒ divB = 0 ⇐⇒ ZC C DdS = Q (1) BdS = 0 (2) ∂B ∂Φ ⇐⇒ V =− ∂t ∂t I ∂D d Z rotH − = j ⇐⇒ Hds − DdS = I ∂t dt C Γ rotE = − (3) (4) それぞれの変数 (領域) が何を意味しているのかは自分で考えてください。各式ごとに変数の意味が 違っていることもあるので注意してください。 左側が微分形、右側が積分形と呼ばれます。微分形は電場や磁場の微分方程式を導くのには便利で すが、直感的に式の意味を理解したのなら積分形のほうが分かりやすいと思います。 (1) 式はガウスの法則そのままです。式をそのまま解釈すると、任意の閉曲面を貫く電束は (外に出 ていく量を正に、入ってくる量を負にとると)、その内部に存在する電荷の総量に等しいと言ったとこ ろでしょうか。 (2) 式は磁気単極子が存在しないことを示しています。これは我々のいる世界で見つかっていないと いうだけの話ではありますが。 (3) 式はファラデーの法則です。積分形を解釈すれば、鎖交磁束が時間変化することで起電力が生じ る。さらにその際生じる起電力の大きさは鎖交磁束の時間微分に等しい、と言ったところでしょうか。 (4) 式は変位電流の法則 (一般化されたアンペールの法則) です。アンペールの法則より定常電流 I 1 が磁場を生み出すことはわかると思いますが、この式ではそれが時間変化する場合には I に電束の時 間微分を足せばよいことを示しています。 1.2 ローレンツ力 マクスウェル方程式では電荷が磁場中で運動する場合に働く力については何の情報も与えないので、 もうひとつ式が必要です。磁場 B 中を速度 v で運動する電荷 q は次のような力を受けます。 f = qv × B (5) これをローレンツ力と言います。 2 実用上 (問題を解く上で) 必要になると思われる公式 2.1 数学の公式 ■ガウスの定理 任意の閉曲面 C で任意のベクトル A に対して次式が成り立ちます。 Z Z AdS = C 上 ■ストークスの定理 divAdv (6) C 内 任意の閉曲線 Γ で任意のベクトル A に対して I Z Ads = Γ上 rotAdS (7) Γが張る曲面 が成立します。 2.2 その他 ■電場と磁場の境界条件 マクスウェル方程式の微分形、ラプラス方程式、ポアソン方程式を使って電場 (静電ポテンシャル)、 磁場 (ベクトルポテンシャル) を求める場合には境界条件が必要になるます。普通、空間上のあらゆる 点でポテンシャルが有限、無限遠で 0 とすればよいですが、異なる物質間の境界では次の量が等しく なります。 (i) 電束密度 D の法線成分、およびに電場 E の接線成分 (ii) 磁束密度 B の法線成分、およびに磁場 H の接線成分 ■場のエネルギー密度 電束密度 D 、電場 E の空間上 (物質内部でもよい) のある点に存在するエネルギー密度は u= 1 D·E 2 (8) 磁束密度 B 、磁場 H の空間上 (物質内部でもよい) のある点に存在するエネルギー密度は u= 1 B·H 2 で与えられます。 2 (9) ■オームの法則 導体中の 2 点に電位差 V を与え、生じる電流 I との間の関係を求めると、 I= V R (10) となります。ただし R は電気抵抗で、電気伝導度 σ または、抵抗率 ρ を用いると以下のように表せ ます。 R= 1 l l ⇐⇒ R = ρ σS S (11) (11) 式で導体の長さ l、断面積 S としました。さらに、導体内部の電場 E は一般に次式を満たします。 E = ρj (12) 3 語句の説明 静電ポテンシャル 電磁気学においてもエネルギー保存則は成立しますので、ある二点間で単位電荷 を移動させると、そのとき必要になる仕事はその経路によらず一意的に定まります。そこで、二点の うちの一つを基準点として(普通、基準点には無限遠をとるか、考えている座標系での原点をとるこ とが多いと思います)固定することで空間上のあらゆる点に対してその点の座標のみを変数とする関 数を定義できます。これを静電ポテンシャルと言います。つまり静電ポテンシャルとは、d 与えられ た座標から単位電荷を基準点まで移動させるのに必要なエネルギー c のことです。これを ψ(r) と書 くことにすると、電場 E(r) との間には次式が成り立ちます。 gradψ(r) = −E(r) 場のエネルギー 電場中の電荷、磁場中の磁荷にはそれぞれ力が働きます。そのため電場では電荷に 対して、磁場では磁荷に対してある一定の仕事をする能力が蓄えられていると考えられます。これら を電場のエネルギー、磁場のエネルギーと解釈して、まとめて場のエネルギーと呼ぶことにします。 場のエネルギーは電場においては で、磁場においては Z V 1 D · Edv 2 V 1 B · Hdv 2 Z です。V は考えている空間全体としました。これらは例えばコンデンサーならば、コンデンサーに蓄 えれらたエネルギーと同一のものですし、コイルなら、コイルに蓄えられたエネルギーと同一のもの です。 分極と磁化 簡単にいえば、分極は電場が物質に与える効果、磁化は磁場が物質に与える効果のこと です。原子の電荷分布は通常、中心に原子核、その周りに電子を伴うことで中性に保たれていますが、 電場によってこの分布が変化します。この変化が、結局は巨視的な電荷分布の変化をもたらし、分極 という現象がわれわれの眼にとらえられるわけです。磁化は原子中の電子がある種の電流を作り出し、 それが磁気モーメントを形成します。磁気モーメントが磁場から力のモーメントを受けることで向き がそろい、全体として磁場が存在しないときにはなかった (巨視的な) 磁気モーメントが作り出され る、つまり、磁化が起こります。 3 磁場の変化によって、回路に電流 (正確には起電力) が生じる現象。先に与えたファラデー 電磁誘導 の法則は、これを定式化したものです。ファラデーの法則によれば、この現象で生じる起電力は回路 をよぎる鎖交磁束の変化を妨げる向きに生じます。 インダクタンス 電流が流れる回路をよぎる (鎖交) 磁束は流れている電流の量に比例します。そこで このときの比例定数をインダクタンスと定義します。自己誘導のインダクタンスを特に自己インダク タンス、相互誘導のそれを相互インダクタンスと呼び、どちらの値も回路の形状のみに依存して決ま ります。 電磁波 ひとたび電場、もしくは磁場が生じると、次の二つの現象が繰り返されることにより、磁場 と電場が空間 (もしくは物質中) を伝搬することになります。 (i) 磁場の変化が (新たな) 電場を形成する。 (ii) 電場の変化が (新たな) 磁場を形成する。 この現象では電場と磁場が波として伝搬するので電磁波と呼ばれます。電磁波により伝搬する電場 E と磁場 H は横波として伝わります。さらに進行方向にベクトル k をとると、k, E, H はたがいに直 交し、この順番で右手系を作ります。特に真空中では電磁波の伝搬速度は光速と等しく、光とは通常、 波長が 1mm から 10nm 程度の電磁波のことを言います。 変位電流 マクスウェルが定常的でない電流に対しても、アンペールの法則が適用できるようにする ため導入した電流。電束の時間的変化に伴って流れると想定されています。つまり変位電流とは I0 = d dt Z DdS C で定義されます。これが正しいことは電磁波の存在が実験的に確かめられたことで示されました。 4
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