K INEMA JUNPO R ESEARCH 興行分析 6 月度レポート < 2 0 1 2 年 7 月 1 7 日> 6 月も「テルマエ・ロマエ」が 動員落ちず上位をキープ 終盤に「アメイジング・スパイダーマン」が 登場し、前年実績をクリア I NSTITUTE K INEMA JUNPO R ESEARCH I NSTITUTE 興行分析 6 月度レポート 【首都圏ロードショー館の前年同月比は、興収 102.1%、動員 107.2%】 6 月の興行は、東京ロードショー劇場 75 館の集計では、総動員数が 78 万 1165 人、総興収が 10 億 6433 万円となり前月とほぼ同水準、前年同月(76 館)比では動員 107.2%、興収 102.1%と なった。市場をリードした作品を週末ランキングの各週 1 位に見ると、2-3 日「メン・イン・ブラッ ク3」 (東宝東和)、9-10日「映画 ホタルノヒカリ」 (東宝)、16-17日「スノーホワイト」 (東宝東和)、 23-24 日「スノーホワイト」、30-1 日「アメイジング・スパイダーマン」 (SPE)と公開直後の新作 が連なるが、一方で、4月28日公開の「テルマエ・ロマエ」 (東宝)が6月に入っても動員を落とさず、 2 位→ 3 位→ 4 位→ 4 位→ 5 位と興収を積み上げ続け、60 億円に迫る勢いを見せている。 【 「映画 ホタルノヒカリ」 「スノーホワイト」などが中ヒット】 6月第1週の2日(土)には、 「外事警察 その男に騙されるな」 (東映=SDP)、 「ファイナル・ジャッ ジメント」 (日活)などが公開。前者は、2009 年に NHK で放送された連続ドラマの映画化で渡部 篤郎主演。235 スクリーンで公開、初日 2 日間で動員 5 万 8501 人、興収 7229 万円、パー・スクリー ン興収は 30 万 7000 円と、いささか期待外れのスタート。NHK のドラマは民放ではできない野 心的で見応えのあるものが多いが、それが映画化されると「ハゲタカ」 (東宝/ 09 / 8 億 3000 万 円) 、 「セカンドバージン」 (松竹/ 11 / 4 億 2600 万円)、 「サラリーマン NEO 劇場版(笑)」 (ショ ウゲート/ 11 /推定 1 億円超)と、どの作品も期待されるほどには伸びない。民放ドラマの映画 化とは違い、NHK は放送枠内でのパブリシティができないため、ドラマの映画化とは言え、民放 絡みの作品とは事情が異なる。「ファイナル〜」は、大川隆法製作総指揮による近未来アクション・ アドベンチャー。198スクリーンで公開、初日2日間で動員9万1998人、興収1億1750万円、パー・ スクリーン興収 59 万 3000 円という結果。団体動員の効果が高い作品だけに、集客は早い時期に 偏りそうだ。 2 週目には、 「映画 ホタルノヒカリ」 (東宝)と「幸せへのキセキ」 (FOX)が登場。「ホタルノヒ カリ」は、2007 年に初ドラマ化、2010 年には続編が放送された日本テレビの人気ドラマで、今 回の映画化ではイタリアロケを敢行。316スクリーンで公開され、初日2日間で動員24万2821人、 興収 3 億 1365 万円をあげる上々のスタートをきった。10 億円台後半は堅いところで、無難な成 績といえるだろう。 8 日(金)封切りの「幸せへのキセキ」は、動物園の再建に挑んだ男の実話を マット・デイモン主演で描いた作品。土日 3 日間で動員 9 万 5366 人、興収 1 億 1365 万円という スタートは、457 スクリーンとしては物足りない結果。10 億円到達にはかなり無理がありそうだ。 3 週目の主な公開作は、 「スノーホワイト」 (東宝東和)と「愛と誠」 (角川=東映) 。前者はグリム 童話の「白雪姫」をアクション仕立てにし、恐ろしい女王役をシャーリーズ・セロンが演じた作品。 572 スクリーン、初日 3 日間で動員 29 万 6160 人、興収 3 億 7482 万円をあげる好スタートをきっ た。最終 20 億円超えを目指し、その後も動員を伸ばし続けている。後者は、梶原一騎の 70 年代 の人気劇画を原作に、三池崇史監督がミュージカル仕立てで映画化したもの。かなり奇をてらっ た演出で、どこまで大衆受けするかに注目が集まったが、結果は、153 スクリーン、初日 2 日間 で動員 1 万 9502 人、興収 2670 万円という、大変厳しいスタートとなった。 「ヤッターマン」 (松 竹=日活/ 09 / 31.4 億円) 、 「SPACE BATTLESHIP ヤマト」 (東宝/ 11 / 41 億円) 、 「あした のジョー」 (東宝/ 11 / 11 億円) 、 「ワイルド 7」 (WB / 11 /推定 6.5 億円)など、近年、懐かし 2 K INEMA JUNPO R ESEARCH I NSTITUTE の名作漫画・アニメの実写映画化作品が続いているが、そのなかでも最も低いスタートといえる。 【 「アメイジング・スパイダーマン」が 50 億円超を目指して厳しい闘いに挑む】 4 週目の 23 日(土)に公開された「LOVE まさお君がいく !」 (松竹)は、231 スクリーン、初 日 2 日間で動員 4 万 7930 人、興収 5660 万円、パー・スクリーン興収 24 万 5000 円という結果。 テレビ東京のバラエティ番組内の人気コーナー「まさお君が行く ! ポチたまペットの旅」を題材 にした映画化で、香取慎吾、広末涼子、成海璃子など人気俳優を配して臨んだが、公開規模ほど の動員には至っていない。このクラスの作品は、現在の市場のなかで位置づけが難しく、15 億円 以上のヒットか、単館も含めて 5 億円未満かで二極化するなか、後者に甘んじることが多い。 そして 6 月終盤になって、今年、最大の注目作のひとつである「アメイジング・スパイダーマン」 (ソ ニー)と「臨場 劇場版」 (東映)が公開。「〜スパイダーマン」は前シリーズから設定を刷新しての 新たな物語で、初の 3D 作品として史上最大の 1090 スクリーンで公開。23 日(土)、24 日(日) の先行上映と、30 日(土)、7 月 1 日(日)の通常興行を合わせた 4 日間で、動員 62 万 799 人、興 収 9 億 146 万円という成績を収めた。前シリーズは、第 1 作(02)が 75 億円、第 2 作(04)が 67 億円、第 3 作(07)が 71.2 億円と高い水準を維持してきただけに、本作に対する期待も高い。ま ずは 50 億円超が目標となるだろうが、現在の洋画不調の状況からするとそれさえもかなり高い ハードルといえる。公開 3 週目には同じく 50 億円超を当座の目標とする「BRAVE HEARTS 海 猿」 (東宝)が封切りとなるため、かなり厳しい闘いが予想される。一方の「臨場〜」は、横山秀夫 の同名小説が原作のテレビドラマが人気を博し、映画化へとつながった作品。内野聖陽、松下由樹、 渡辺大などオリジナルメンバーが出演し、254 スクリーンで公開された。初日 2 日間で動員 13 万 4909 人、興収 1 億 4553 万円は、最終 10 億円を目指してのスタート。テレビドラマの視聴者層 である 50 代を中心に動員し、堅実な興行となりそうだ。 夏休み映画の先陣をきった「アメイジング・スパイダーマン」に続き、7 〜 8 月には「BRAVE HEARTS 海猿」 、 「ダークナイト ライジング」 (WB)、「アベンジャーズ」 (ディズニー)、「プロメ テウス」 (FOX)などの大作が続々と公開となる。昨年の全体興収を超えて 1900 億円台まで市場 を戻すためには、これらの作品がポテンシャルを最大限発揮する以外に道はない。 3
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