レンタル市場 8 月度レポート

K INEMA JUNPO R ESEARCH
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パ
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ソ
フ
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】
レンタル市場
8 月度レポート
< 2 0 1 1 年 9 月 9 日>
中旬に失速するも、概ね前年並みに着地
I NSTITUTE
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【 パ ッ ケ ー ジ ソ フ ト 】
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レンタル市場
8 月度レポート
【ランキングから/興行成績とレンタル回転数の食い違い】
8 月度のレンタルランキングトップは、1 店あたりの月間貸出数 137.0 回を数えた、ジャック・
ブラック主演の『ガリバー旅行記』。アドベンチャーコメディ作品としては 06 年の『ナイトミュー
ジアム』以来、ジャック ・ ブラック主演作では初の首位となった。一方、アンジェリーナ・ジョ
リー&ジョニー・デップという超強力な W 主演で注目された『ツーリスト』は 126.0 回転。僅か
の差で下回ったのは、リリース日の影響。7 月 27 日のリリースから月末までの初動 5 日間の実績、
39.6 回転が前月に繰り込まれている。ところで、この『ツーリスト』は公開からの初日 2 日間の
興行収入が3億円を超え、大ヒットを確信させた洋画大作だった。しかし、その公開日は3月5日…。
翌週の金曜日に大地震が発生し、その後の興行成績は急落。20 億円にも届かない結果に終わる不
運の大作となった。しかし、劇場での鑑賞を見送ったファンが、パッケージソフトのリリースを待っ
ていた部分もあり、セル・レンタル共に順調なスタートを切っている。3 位には 105.2 回転の『相
棒 −劇場版Ⅱ− 警視庁占拠 ! 特命係の一番長い夜』が入った。前作の興行収入 45 億円には及ば
ないものの、本作も 35 億円の大ヒット作。震災の影響とはいえ、上位 2 作品が 20 億円未満であ
ることを考えると、レンタルランキングと興行成績が必ずしも一致しないことがわかる。4 位に
は、7 月 20 日リリースということで集計間の短かさゆえに 10 位に留まっていた『塔の上のラプン
ツェル』が順位を上げ、逆に前月首位だった『借りぐらしのアリエッティ』は勢いが翳り 5 位に落
下。6 位の『あしたのジョー』は回転数こそ 90.9 回と上位に比べて差があるが、1 枚あたりの回転
数は 13.6 回転でトップ。店頭導入価格が高額な東宝作品のため、導入枚数が比較的少なく、こう
した結果になる。需要に対して商品量が不足気味と言え、ショップにとっては利益効率が高い状
態だが、高額な導入価格が高い利益効率を求めているとも言えるだろう。87.1 回で 7 位の『エン
ジェル ウォーズ』は『300 <スリーハンドレッド>』のザック・スナイダー監督が手掛けたガール
ズSFアクション。レンタル的に強力なジャンルであることに加え、吹替え声優に超人気声優ユニッ
トのスフィアを起用し、さらにアニメファンが好む世界観や劇中のコスチュームなどが奏功しファ
ン層を拡大している。他の初登場作品では、『SP 〜野望編』の後編となる『SP 革命編』が 6 日間
の集計で 58.0 回、14 位に。次月、どこまで順位を上げてくるか注目の 1 本といえる。続く 15 位
はお笑いコンビ品川庄司の品川ヒロシの監督第 2 作となる『漫才ギャング』。8 月 23 日リリース作
品で、集計期間は 8 日間と短いながら、51.9 回転をマーク。こちらも次月の注目作になるだろう。
45.4 回転で 19 位に食い込んだのは 8 月 17 日リリースの『太平洋の奇跡 —フォックスと呼ばれた
男—』
。リリース日が中旬であることから、月間ランキングで上位に入るのはそもそも難しいのだ
が、それにしても、興行収入では『あしたのジョー』の 10 億円超を上回る 15.4 億円を稼いでいる
ことから、もう少し上の順位を予想する向きもあった。しかし、結果的には回転数でも大きな開
きがあり1店当たりの導入枚数でも『あしたのジョー』の6.4枚に対して、
『太平洋の奇跡〜』は5.0
枚。興行成績とレンタルニーズの食い違いが、ここにも現れている。
【夏休み商戦/繁忙期のディスカウントセールは有効なのか ?】
8 月度の大手各社の状況は、売上前年比ベースで、ウェアハウス 102.5%、トップカルチャー
100.0%、三洋堂 99.0%など。ゲオはレンタル以外の商材も加えて 102.4%で、レンタル単体で
も「順調」
。TSUTAYA も概ね前年並みか、ややプラスといった状況のようだ。他の法人は、前年
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並みか、ややマイナス。また、九州地方には好調店が多く、関東にはマイナスのチェーンが多い
といった傾向が見られた。エリアごとの差異には、TSUTAYA、ゲオなどのナショナルチェーン
との競合状況が大きく影響するほか、各地の天気によっても違いが出る。9 月初旬、西日本を中心
に台風 12 号が襲ったが、この時期、大きな被害が出た地域は別にして、レンタル店の売上は総じ
て伸びている。一般にレンタル店の売上は、快晴になれば落ち、天気が崩れれば上がる。従って、
週末や休日に快晴の日が何日間あったか、または、小雨の日がどれだけあったか、などは月間の
売上を少なからず左右する要素となる。売上の地域差は、このようなところにも原因があるだろう。
また、ローカルチェーンの多くは、
「中旬に売上が落ちた」と言う。お盆期間を含む中旬は本来
なら繁忙期なのだが、その時期にナショナルチェーンが全国的にディスカウントセールを仕掛け
てきた。対抗上、やむを得ずディスカウントに追随したローカルチェーンのほとんどは、「貸出
数こそ伸びたものの、売上は下げてしまった」という。仕掛けたナショナルチェーンにおいても、
店頭からは「折角、順調に集客できていた時期に値下げをすることはなかった」という声が少なか
らず聞こえており、値下げしても貸出数を十分に伸ばせない状況が一般的になっていることが伺
える。100 円以下の超低料金施策が蔓延して 2 〜 3 年経過し、ディスカウントの訴求力が弱まっ
ていることは間違いない。
しかし、一方で「ナショナルチェーンがディスカウントセールを行うと、売上が伸びる」と語る
ローカルチェーンのマネージャーもいる。テレビ CM のような大きなプロモーションが行われる
ことで、地域のユーザーを刺激し、瞬間的にレンタル自体の需要が伸びるというのだ。また、他
にも、
「セールによってナショナルチェーンの棚から有力商品が貸し出されると、借りられなかっ
たユーザーが当店に戻ってくる。その時は通常料金で十分」と語る方もいる。立地条件や店舗規
模など、いくつかの条件が揃って初めて成り立つ “ 競合店のディスカウントによるメリット ” では
あるが、ローカルチェーンのしたたかな生き残り戦略と言えるのではないだろうか。
※ランキング及びレンタルデータは、ビデオ・インサイダー・ジャパン調べ
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