警察公論2015年2月号「懸賞SA問題」問題と解答 【問題】 1 次は,憲法に規定する財政に関する記述であるが,誤りはどれか。 ① 国の財政を処理する権限は,閣議の決定に基づいて,これを行使しなければならない。 ② 新たに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によ ることを必要とする。 ③ 国費を支出し,又は国が債務を負担するには,国会の議決に基づくことを必要とする。 ④ 内閣は,毎会計年度の予算を作成し,国会に提出して,その審議を受け議決を経なけ ればならない。 ⑤ 予見し難い予算の不足に充てるため,国会の議決に基づいて予備費を設け,内閣の責 任でこれを支出することができる。 2 次は,人に危害を加える武器使用の許容要件を列挙したものであるが,誤りはどれか。 ① 正当防衛における使用 ② 緊急避難における使用 ③ 重大凶悪な罪を現に犯した者が,その者に対する警察官の職務の執行に対し,抵抗し 又は逃走しようとする場合の犯人逮捕等のための使用 ④ 逮捕状により逮捕する際又は勾引状,勾留状を執行する際,その対象となる者が抵抗 し又は逃走しようとする場合の犯人逮捕等のための使用 ⑤ 職務質問の対象となっている者が,職務質問を免れようとして逃走する場合の逃走防 止のための使用 3 次は,横領罪に関する記述であるが,誤りはどれか。 ① 本罪は,自己の占有する他人の物,又は公務所から保管を命ぜられた自己の物を横領 することによって成立する。 ② 本罪における占有は,窃盗罪など奪取罪における占有と同様,物に対する事実上の支 配に限られ,法律上の支配を含むものではない。 ③ 本罪における物とは財物を意味し,動産のほか不動産も含まれる。 ④ 本罪は不法領得の意思が発現された外部的行為が開始されたときに既遂に達するの で,本罪には未遂犯処罰規定がない。 ⑤ 財物の委託者を欺いて自己の占有中の物を領得しても本罪のみが成立し,詐欺罪には ならないと解されている。 4 次は,刑訴法220条(逮捕現場での捜索・差押え)に関する記述であるが,誤りはど れか。 ① 警察官は,被疑者を逮捕する場合において必要があるときは,令状なしに逮捕の現場 で捜索,差押え又は検証をすることができる。 ② 「逮捕する場合」とは,逮捕行為の後でも,逮捕行為の前でもよいが,逮捕行為と時 間的・場所的に接するものでなければならない。 ③ 一般私人が逮捕した現行犯人の引渡しを受けた警察官は,令状なしで犯人の身体を捜 索し,証拠物を差し押さえることができる。 ④ 被疑者が逃走途中に凶器や盗品等の証拠物を投げ入れている家屋や庭があれば,そこ も逮捕の現場に含まれる。 ⑤ 本条による捜索,差押え又は検証は,被疑者逮捕の理由となっている犯罪事実に関係 あるものに限られる。 5 次は,警察操典に定める指揮官による信号に関する記述であるが,誤りはどれか。 ① 集 合――右手を頭上に高く上げる。 ② 解 散――右手を高く上げて,これを頭上で左右に振る。 ③ 前 進――右手を高く上げて,これをその進む方向にのばす。 ④ 停 止――掌を下にし,両手を水平に横にのばす。 ⑤ 駆けあし―前進の信号を迅速に数回連続する。 6 次は,少年警察活動を行う際の基本的な事項に関する記述であるが,誤りはどれか。 ① 少年の健全な育成を期する精神をもって当たるとともに,その規範意識の向上及び立 ち直りに資するよう配慮しなければならない。 ② 少年の特性について深い理解をもって当たらなければならない。 ③ 少年の処遇に当たっては,不公平にならないよう画一的な処遇がなされなければな らない。 ④ 少年の人権や少年の将来のことなどを考慮して秘密を守り,少年やその他の関係者 が秘密の漏れることに不安を抱かぬよう特に配慮しなければならない。 ⑤ 少年の非行の防止及び保護に関する国際的動向に十分配慮する。 7 次は,覚醒剤使用容疑者に対して任意採尿を実施する場合の留意事項に関する記述で あるが,誤りはどれか。 ① 採尿の趣旨を説明し,納得の下に採取して,任意提出書,同意書を提出者に書かせる。 ② 任意採尿の際には,後日,人権問題に発展するおそれがあるので,立会人を置いたり, 監視をしたりしてはならない。 ③ 採尿容器を被疑者自身に洗わせ,容器に薬品,異物等が残存していないことを確認さ せる。 ④ 採尿後,被疑者の面前で容器に入れ,封をし,被疑者に封印させる。 ⑤ 採尿後速やかに鑑定嘱託を行い,他人の尿と混同しないよう配慮する。 8 次は,道交法42条に規定する「徐行すべき場所」を列挙したものであるが,誤りはど れか。 ① 横断歩道の手前を通行するとき。 ② 左右の見通しがきかない交差点に入ろうとするとき(当該交差点において交通整理が 行われている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。 ③ 道路のまがりかど附近を通行するとき。 ④ 上り坂の頂上附近を通行するとき。 ⑤ 勾配の急な下り坂を通行するとき。 9 次は,静穏保持法に関する記述であるが,誤りはどれか。 ① 何人も,国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域において,当該地域の静穏を 害するような方法で拡声機を使用してはならない。 ② 対象地域は,国会議事堂周辺のほかは,総務大臣又は外務大臣が国家公安委員会と協 議して定め,官報に公示する。 ③ 選挙に際して選挙カーで候補者又はその支援者が拡声機を使用することについては, 本法の規制は及ばない。 ④ 対象地域の静穏を害するような方法で拡声機を使用した場合には,直ちに罰則が適用 される。 ⑤ 警察官は,対象地域の静穏を害するような方法で拡声機を使用している者に対し,必 要な措置をとるべきことを命ずることができる。 10 次は,民法上の物権を列挙したものであるが,誤りはどれか。 ① 所有権 ② 占有権 ③ 地上権 ④ 地役権 ⑤ 賃借権 【解答】 1 正解=① 国の財政を処理する権限は,「国会の議決」に基づいて,これを行使しな ければならない(憲法 83 条)。したがって,「閣議の決定に基づいて,これを行使しな ければならない」とする枝文は誤りである。 2 正解=⑤ 人に危害を加える武器の使用は,人に危害を加えない武器の使用要件に加 え,㋐正当防衛,㋑緊急避難,㋒一定の場合の犯人逮捕等(凶悪犯人の逮捕等,逮捕状 による逮捕等)のいずれかに該当する場合でなければ,許されない(警職法7条)。枝 文は,人に危害を加えない武器の使用要件すら満たしていない。 3 正解=② 横領罪における占有とは,窃盗罪など奪取罪における占有よりも広く,物 に対する事実上の支配に限らず,法律上の支配を含む(大判大4.4.9)。したがって, 不動産の登記名義人は当該不動産を他に引き渡した後もこれを占有することになる(最 判昭 30.12.26)。 4 正解=③ 一般私人が逮捕した現行犯人の引渡しを受けた警察官は,自ら逮捕行為を 行ったわけではないから,逮捕行為と引渡しがいかに時間的・場所的に接着していたと しても,令状なしで犯人の身体を捜索し,証拠物を差し押さえることはできない。 5 正解=④ 「停止」は,「右手を高く上げて,直ちに下す」(警察操典7条 5 号)。「掌 を下にし,両手を水平に横にのばす」のは,「横隊形」である(同条7号)。 6 正解=③ 少年の処遇に当たっては,その少年に対する保護の必要性の程度によっ て,個別に具体的な処遇がなされなければならない。 7 正解=② 採尿の際,被疑者が他の者の尿や水等を混入することがないよう採尿の場 所を点検し,捜査官が立ち会い(2人以上),監視を怠らない(他人からビニール袋に 尿をもらい受けておき,尿を任意提出すると称して,採尿時にこれをコップに注ぎ入れ た事例がある。)。 8 正解=① 道交法 42 条(徐行すべき場所)に「横断歩道の手前を通行するとき」は 挙げられていない。 9 正解=④ 対象地域の静穏を害するような方法で拡声機を使用した場合,直ちに罰則 が適用されるのではなく,警察官がその者に対し必要な措置をとるべきことを命じ,そ の命令に違反した場合に,罰則の対象となる(静穏保持法7条)。 10 正解=⑤ 物権とは,物に対する直接的・排他的な支配を内容とする権利をいい, 所有権,占有権,地役権などがこれに当たる。賃借権は,他人の行為を内容とする権利 であり,物権ではなく「債権」である。
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