電源トランスの最適化 Siemens AG

CST S U C C E S S S T O R Y
電源トランスの最適化
Siemens AG
図1
Siemens 製 40MVA トランス
さまざまな要求仕様や応用のそれぞれにカスタマイズされたソリューションを提供すること。それ
が Siemens Energy T TR PN の使命です。
ファーネストランスやコンバータトランス、あるいは 200MVA
を上回るレーティングの高電圧直流トランスに定型のソリューションはありません。設計ごとにト
ランス設置の最適化を行う必要があります。CST EM STUDIO の 3D 電磁界シミュレーションと最適
化機能がカスタムソリューションの導出を支援します。
Siemens Energy T TR PN について
Siemens Energy T TR PN(シーメンスエナジーセクタ
ー)は一次燃料の生産・変換・輸送、および発送電
と配電に関連する製品・ソリューション・サービス
を提供する世界最大の供給業者です。エネルギーチ
ェーンの全体(特にプラントからグリッドへの接続、
その他のインターフェイス)に関する包括的なノウ
ハウを持つ唯一の多国籍企業でもあります。主にエ
ネルギー公益企業と産業製品企業、わけても原油・
ガス企業を顧客とする事業を展開しています。
従業員数 85,000 人、売上げ 254 億ユーロ、経常利益
33 億ユーロ(2009 年度)。
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課題:トランスの設計
電源トランスは、国内外の規格を満たすだけでなく
電気公益業者とその契約者の要求仕様に合致してい
なくてはなりません。そのため設計には非常に多様
な要求が課せられます。設計条件の大半はトランス
に接続した回路と設置場所の特定要素により決定さ
れます。一方、電源トランスの寸法は要求仕様に忠
実でなくてはなりません。力学的、電磁的、熱的特
性の考慮も必要です。製造されたトランスは、経年
後も安全で正常な動作が保証される製品とするため
に、ひとつずつに動作試験が行われます。
課題:絶縁設計
絶縁システムと部品の設計は、重要な開発課題のひ
とつです。絶縁設計を行うには、エネルギーが印加
された巻線と導体と接地部品の間の電気的絶縁と、
巻線間の絶縁に関する知識が必要です。絶縁の概念、
図2
トランス能動部品の簡略モデル
設計、構築、使用される材質は要求仕様により決定
されます。電源トランスでは通常、鉱油と含浸紙(プ
レスボード)を使用します。プレスボードと油路か
らなるシステムを絶縁システムと呼びます。
課題:複雑な形状のモデリング
操作性の良い CST STUDIO SUITE ユーザーインタ
ーフェイスは、モデリング操作がスムーズに行えま
す。作成したモデルは離散化され、行列が作られて
ソルバー計算が行われます。CST EM STUDIO(CST
EMS)では対称条件を設定して計算時間を短縮する
ことができます。CST EMS で作成された 5 脚鉄心 3
脚巻線入電源トランスモデル(能動部品)を図 2 に
示します。形状が複雑な場合は CST EMS のインポ
ート機能でインポートした 3D CAD データを、必要
であれば修正して使用できます。
絶縁システムモデルは、簡略化しても数メートルの
大きさとなります。他方、プレスボードの厚さは数
ミリ程度と全体に比べて極端に小さく、このため数
値計算の難易度は高くなります。
図3
トランス能動部品の簡略モデル:巻線配置周りの電位
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絶縁システムの寸法を決定する上で、バリア強度と
油路の幅が極めて重要であるため、ロバストなメッ
シュ生成機能が必要です。四面体ベースと六面体ベ
ースの両方のメッシュ生成機能を備える CST EMS
では、問題に応じて最適なメッシュスキームを選択
できます。解析モデル全体に対するメッシュスキー
ムのほかにも一部構造または一部材質に対するメッ
シュ制御が可能です。巻線配置(出口部分)の静電
界シミュレーションによる等電位プロットを図 3 に
示します。ここではもとの 5 脚を 1 脚に減らしてシ
ミュレーションを行いました。
結果:動作安定性に寄与
3D シミュレーションと解析と電極配置の最適化に
よるバーチャルな動作安定性試験を行います。試験
中に生じる電気ストレスの瞬間的な値を静電界シミ
ュレーションにより求めます。四面体ベースの CST
EMS 静電界ソルバーは構造の容積と表面を正確に
離散化するので、このシミュレーションに好適です。
シミュレーションにより電極周りと絶縁面の電位分
図 4: 鉱油含浸プレスボードの等電位プロット
布が得られ、絶縁システムの有効性と強度を測るこ
とができます。鉱油含浸プレスボードの等電位プロ
ットを図 4 に示します。
解析に適したソルバーの選択
CST EMS は多様なソルバーを備え、幅広い電磁界問
題に対応します。トランスの構成要素に生じる誘導
損失は準静磁界ソルバーで計算します。能動部品の
巻線と接続リード線をソースとしてシミュレーショ
ンを行います。
トランスの心臓部である能動部品は、同心巻線と絶
縁のある脚部と鉄心とで構成されます。周辺の金属
部品の電磁損失につながる浮遊磁界のシミュレーシ
ョンは、金属部品の遮蔽、導体位置の変更などの電
磁損失対策に役立ちます。鉄心の磁界の解析結果に
より示された遮蔽効果を図 5 に示します。
図 5: 遮蔽壁の解析:磁気エネルギー密度
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CST EM STUDIO 無しでは新しいトランスの開発
は考えられない
シミュレーションは能動部品の電磁損失計算だけで
なく、高電圧の設計製造、寸法決定にも大きな役割
CST EMS is now an integral part of the
を果たします。この種のシミュレーションは CST
development
EMS 低周波ソルバーで行います。一例としてプレス
transformer components at Siemens (Energy).
ボードの電磁損失を計算した結果を図 6 に示します。
This is especially a consequence of the intuitive
図に明らかな表皮効果が見られます。表皮深さを正
user-interface and the variety of available
確にモデリングするために、ここでは 2 次メッシュ
solvers. Thanks to the close co-operation with
を使用しています。このほかにシミュレーション効
the CST EMS development team, requests,
率を重視する方法として、表面インピーダンスによ
suggestions and ideas have been openly
る表皮深さの表現も可能です。
embraced and rapidly implemented. This forms
トランスの設計では熱設計も重要です。低周波シミ
ュレーションで求めた損失分布を熱ソースとする解
process
of
various
power
the basis for our decision to further increase our
usage of CST s solutions
析を CST MPHYSICS STUDIO の熱ソルバーで行う
ことができます。電磁界ソルバーから熱ソルバーへ
データ受け渡しはシームレスに行われ、同一モデル
によるマルチフィジックス解析が可能となります。
図 6: プレスボードの損失密度
執筆者
Ronny Fritsche
Siemens AG Sector Energy T TR PN
Katzwanger Str. 150, 90461 Nürnberg
Germany
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