石油・ガスの掘削・生産及び輸送部門において社会対話と良好な労使関係を 促進するための三者構成会議(ジュネーブ・2009 年 5 月 11~14 日)結語 石油・ガスの掘削・生産及び輸送部門において 社会対話と良好な労使関係を促進するためのILO三者構成会議 結 語 (仮訳) 「石油・ガスの掘削・生産及び輸送部門において社会対話と良好な労使関係を促進する ための三者構成会議」を、2009 年5月 11~14 日、ジュネーブで開催し、2009 年5月 14 日、以下の結語を採択した。 全般的考察 1.社会対話(ソーシャル・ダイアログ)は、特に、世界的な経済・金融危機の状況下、 職場での広範囲な問題の解決を図るに最も重要な役割を果たす。社会対話は、世界的な経 済・金融危機の回復の過程において、トランスパランシー(透明性)を増大する。社会対 話は、正規及び非正規労働者という雇用形態の分け隔てなく、労働者の権利・労働条件・ 生産性及び人口動態上の課題(デモグラフィック・チャレンジ)などの重要な問題に関し、 政府、使用者及び労働者の組織(労働組合)の間でコンセンサスを形成するに多大な効果 を発揮する。 2.石油・ガス産業は各国の経済発展及び労働条件の改善に貢献している。目下蔓延して いる世界的な経済・金融危機においては、石油・ガス産業は他の経済部門の成長に多大な 貢献をしており、社会対話を通じて社会の結束を強化する。 3.石油・ガス産業における賃金・労働条件・社会給付は他業種より全般的に良好である が、安全衛生に関する分野については改善の余地がある。 ディーセントな仕事 4.ILOが推進する「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」とは、 生産的で、公正な所得、職場における保障及び家族への社会的保護、労働者個人の発展と 社会的包括、発言の自由、組織化の自由、労働者の生活と機会の平等に係わる決定に関す る活動に参加する自由、及びすべての人々に機会均等となる労働の機会のすべての側面を 包括する概念を意味する。石油・ガス産業の仕事も「ディーセント・ワーク」であること が要請される。 5.石油・ガス産業は、サプライ・チェーンを通じて数百万に及ぶ新規雇用を創出してい る。石油・ガス産業は、産業労使にとって長期的に有益となるように、生産性、効率及び 雇用保障を増大し、更なるディーセントな仕事を作り出す可能性を有する。 -1- 石油・ガスの掘削・生産及び輸送部門において社会対話と良好な労使関係を 促進するための三者構成会議(ジュネーブ・2009 年 5 月 11~14 日)結語 良好な労使関係 6.使用者組織と労働者組織(労働組合)との間の協力的な関係(アプローチ)は良好な 労使関係の中核となる。相互信頼を作り出すことにより、石油・ガス産業における様々な 問題に持続的な解決策をもたらすことができる。 7.良好な労使関係の前提条件は結社の自由と団体交渉権の全面的な尊重にある。ILO の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップ」(1998 年宣言)に謳われている原則及び権利は、世界中どこにあっても、「ディーセント・ワー ク」の根幹であり、労使関係の重要要素である。 8.良好な労使関係のもう一つの重要な要素は、各国の国内法及び、採択されたまたは適 用されている国際労働基準、特に安全衛生関連の国際労働基準の全面的及び効果的な実施 にある。この効果的な実施の過程には、使用者組織と労働者組織(労働組合)の参画が必 要であり、政府については、石油・ガス産業を通じて、これらの法律が遵守されているこ とを監督するために適切なる手段を労働基準監督署または適切なる機関に提供することが 要請される。 下請け・孫請け 9.下請け及び孫請けは、オペレーターに合理的かつ効果的に運行することを可能とする サービスを提供する点においては、石油・ガス産業にとって不可欠である。下請け企業の 専門化は、更なる雇用機会を生む。 10.オペレーターは、下請け及び孫請け企業を含む、業務上の安全衛生に関する全ての責 任を負うべきである。下請け及び孫請け企業は、オペレーターの安全マネジメント・シス テム(MS)*1 のすべてについてこれを遵守するべきである。 11. 過酷な労働条件は、労働環境の一部であるものの、危険度が高い作業については可能 な限り排除すべきである。ベスト・プラクティスを見出し、実践すべきである。 技能・訓練 12.石油・ガス産業における技術革新の進行は、既に技能労働力の不足に苦悩する同産業 に、更に広範な技能の獲得を迫っている。石油・ガス産業を、若い人たちにとって、特に *1 訳注:ILOでは、安全衛生に関するマネジメント・システムのガイドライン(ILO-OSH200 1 ) を 発 行 し て い る 。 I L O の M S に 関 す る 資 料 は 、 http://www.ilo.org/safework/areasofwork/lang--en/WCMS_DOC_SAF_ARE_MNG_EN/index.htm を参照頂きた い。なお、日本語訳については、中央労働災害防止協会(http://www.jisha.or.jp)まで。 -2- 石油・ガスの掘削・生産及び輸送部門において社会対話と良好な労使関係を 促進するための三者構成会議(ジュネーブ・2009 年 5 月 11~14 日)結語 女性にとって、魅力ある産業とすることが必要である。したがって、産業と教育・訓練機 関とのパートナーシップを含む、キャリア開発プログラム及び見習い制度を推進するため に、特別の努力が払われなければならない。 13.石油・ガス産出新興国と石油・ガス産業において長年の経験を培っている国々及び企 業との間の訓練及び再訓練に関する共同活動を強化しなければならない。ILO及び当該 労使もこれらの分野の活動に積極的に参画することを要請する。 14.人的資源への投資としての教育及び訓練は、石油・ガス産業の持続性に長期的に貢献 する重要な事項として受け止められなければいけない。教育及び訓練は、政府及び労使が 参画し、内部及び外部の訓練施設・機構及びプログラムを最大限活用するよう配慮される ことを要請する。 15.政府は、労働基準監督署及び権限ある機関が、石油・ガス産業における労働条件及び 安全衛生の特殊性を熟知するよう適切な訓練が受けられることを配慮する責務を負う。 良好なガバナンス、社会対話及び企業の社会的責任(CSR) 16.「社会対話」という言葉に普遍的な定義は無いものの、ILOにおける「社会対話」 とは、「政府、使用者、労働者の代表が、経済・社会政策に関わる共通の関心事項に関し て行うあらゆる種類の交渉、協議、あるいは単なる情報交換」のことを意味する。石油・ ガス産業において、社会対話の機構は、国際的、地域的、国及び企業レベルの全てにおい て存在する。 17.社会対話は、石油・ガス産業において良好なガバナンスの存在にとって最も必要とさ れるものである。良好なガバナンスとは、意思決定及びレポーティングの過程のトランス パランシー(透明性)に依存する。政府は、最良の環境を作り出すように社会対話を促進 する上で重要な役割を担う。 18.二者及び三者構成のいずれの形態の社会対話においても、当該政労使三者にとって有 益となるものであり、ひいては、石油・ガス産業が効率的かつ競争力を維持するに貢献す る。これらの社会対話は成熟した労使関係の前提条件である。ベスト・プラクティスの広 範囲にわたる普及は、ベスト・プラクティスが広範囲に実施されることを誘発し、社会対 話の過程に実りある成果をもたらすものであり、したがって、これは奨励されなければな らない。 19.各国政府は、適切な法律の施行及び機関の設立を通じて、社会対話を実施する責任を 負う。各国政府は、石油・ガス産業の労使と継続的な協議を必要に応じて行い、更にはフ ォローアップを行うことを要請する。 -3- 石油・ガスの掘削・生産及び輸送部門において社会対話と良好な労使関係を 促進するための三者構成会議(ジュネーブ・2009 年 5 月 11~14 日)結語 20.ILOにおいて周知の通り、企業の社会的責任(CSR)は、自発的な活動(イニシ アティブ)であり、各種法律並びに労働における基本的権利及び原則の単なる遵守を上回 る活動を指すものである。一企業の社会的責任は、様々なその他の自発的な活動(イニシ アティブ)に参加または貢献することによって推進されることもある。その他の「自発的」 な活動(イニシアティブ)は、それぞれの状況に応じて必要とされるものであり、また、 必要とされる状況に応じて様々な形態があり得ることに留意する。この観点から、CSR 及び、国際的枠組み協定(IFA及びGFA)や行動規範などのその他の自発的な活動は、 労働者及び地域社会の福祉を向上するのに重要な役割を負う。したがって、自発的な活動 は、国際労働基準の遵守を強化するに留まらず、地域経済及び社会発展にとって重大な役 割を果たす。 ILOの将来の活動 21.現在のグローバルな経済危機は未曾有の規模である。国営石油会社も民間石油会社も 経済危機の影響を受けている。ILOの即刻の対応として、そして、「公正なグローバル 化のための社会正義に関するILO宣言」(2008 年宣言)に則して、ILOが次の活動を 行うよう、ここに要請する。 ● 訓練及び技能開発プログラムを通じて、可能な限り雇用を維持するための活動を 作り出すために、ILOの政労使に支援を提供する。 ● ベスト・プラクティスへのアクセス、及び、グローバルまたは地域的なネットワ ークの構築、及び専門家を動員し、知識の交換を促進する。 ● 緊急の影響アセスメントを行うことで、危機と雇用の動向を調査する。 ● 社会対話と国際組織との既存の協力関係を強化する。 22.ILOの将来の活動として以下を要請する(優先順)。 ● 石油・ガス産業における女性及び若年労働者の状況を分析し、女性及び若年労働 者の雇用を奨励する政策を形成する。 ● 石油・ガス産業における社会対話、トランスパランシー(透明性)、労使関係、 安全衛生、安全保障及び環境、社会的責任等、政労使との協力による自発的な活 動(イニシアティブ)に関するベスト・プラクティスの情報収集及び配布。 ● 石油・ガス産業に従事する潜水夫の安全衛生に関する情報の収集。 ● 現在の技能・労働力の構造及び技術革新に伴う将来の技能のニーズについて調査 を行う。 ● 石油・ガス産業における下請け・孫請け労働者の労働条件の調査を行う。 ● 当該労使及び政府の支援のもと、石油・ガス産業のサプライ・チェーン全体を通 じた労働災害及び死亡事故に関するデータベースを開発し、安全衛生法の遵守に 関する調査を行う。 ● 専門の大学・当該政労使との協力のもと、石油・ガス産業における技能訓練プロ -4- 石油・ガスの掘削・生産及び輸送部門において社会対話と良好な労使関係を 促進するための三者構成会議(ジュネーブ・2009 年 5 月 11~14 日)結語 グラム及び職業訓練講座に関する情報交換を可能とするグローバルなネットワー クを開発する。 ● 要請に基づき、必要に応じて、ILOの使用者活動局(ACT/EMP)及び労 働者活動局(ACTRAV)との協議により、石油・ガス産業における社会問題 に対処するために政労使の能力(キャパシティー)を改善する技術支援を行う。 ● 石油・ガス産業において社会対話及び良好な労使関係を促進するに必要な措置を 調査しILOに諮問するためのフォローアップ活動として国別または地域的な三 者構成会議を開催する。 ● 必要に応じて、ILO加盟国の労働基準監督機構の運営、活動及び監査の状況を 改善することを中心として、労働基準監督署の活動を支援する。 23.これら上記の活動を行うため、ILOは適切なる財源を確保し、更には、他の国際機 関及びその他適切と考えられる組織とのパートナーシップを検討する。 以 -5- 上
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