ディーセント・ワークと インフォーマル経済 インフォーマル経済の意義 インフォーマル経済は開発途上国、市場経済移行国、 先進工業国で拡大している 世界的に雇用が不足している ディーセント・ワークの欠如は、女性、若者、働く児童、 移民でもっとも深刻である インフォーマルであることと貧困は密接に結びつい ている 生産性と成長の遅滞をもたらす 効果的な法律、政策とグッド・ガバナンス(よい統治) が重要 インフォーマル経済とは何か? 「法またはその執行上、正規に法が適用されない、あるい は適用が不十分な労働者・事業体によるあらゆる経済活 動。これらの活動は法の視野に含まれていず、従って正 規に法が適用される範囲外で事業が行われている場合 がある。あるいは法慣行の上で適用されない、つまり正 規に法律が適用される範囲内にあるのに、実際には法が 適用・施行されない場合もある。または、法そのものが不 適切であったり、大きな負担を要したり、過度な費用を課 すものであったりするために、法の遵守が進まない。」 第90回 回ILO総会( 総会(2002年、ジュネーブ) 年、ジュネーブ) 総会( インフォーマル経済委員会報告書より 「インフォーマル経済」の特徴 労働者の多様性 (賃金労働者、個人事業)、企業、起業家。 明確な特徴と固有の不利益・問題を抱える。問題の程度は 国、農村、都市それぞれで異なる。 顕著な特徴:認知されず、登録もせず、規制されず、法のも との保護がない。 「セクター」という語は、特定の産業グループや経済活動を 示唆する。 フォーマルとインフォーマルな活動の間には関連性、中間 的な領域、相互依存の関係がある。 犯罪・違法な経済活動とは区別される。大部分の活動は合 法な財やサービスを生産する。 「インフォーマル」であることは、 労働者には何を意味するか 認知されず、未登録で、規制を受けず、労働法の保護や社 会保護が受けられない。 雇用上の地位が曖昧であるために、基本的な権利を享受し、 行使し、擁護することができない。 働く職場は小規模で場所が不確定、危険で非衛生的な労働 条件、低い技能と生産性の水準、低く不定期な収入、情報・ 市場・融資・訓練・技術へのアクセスの欠如。 組織化がむずかしく、使用者や政府機関に対して効果的な 代表手段を持たない。 公共インフラ・給付の受益から排除されているか、限定され たアクセスしかない。 公的当局からのハラスメントを受けやすい。 なぜ企業はインフォーマルになるのか 事業の立ち上げ、企業の成長と発展を支援す る法制度、効果的な制度がない 経済活動を正規のものにするためのコストが 利益を上回る 所有権と生産資本へのアクセスの欠如 インフォーマル企業:否定的な面 法規制を遵守しない 徴税を回避して、政府の歳入に貢献しない 登録や規制にかかる事業費用を避け、正規の企 業と不公平な競争を行っている 生産性が低い。GDPへの貢献よりも、雇用に対す る貢献度が高い インフォーマルな企業:肯定的な面 他に生活手段を持たない者に、収入を得る機会を与える 起業、ビジネス感覚、改革、創造性、活力を秘めている ビジネスの可能性を育み、オン・ザ・ジョブでの技能習得の 機会を提供する 極めて弾力的な事業運営が可能である 国民所得と成長に貢献する 必要不可欠な財やサービスを、他の方法よりも安い価格で 提供する インフォーマル経済が 成長しているのはなぜか ガバナンスの問題:マクロ経済・社会政策が不適切、効果が ない、間違っている、または運用が稚拙である 一貫した法規制の枠組みと、政策・法律が適切かつ効果的 に施行されるために必要なグッド・ガバナンスが欠けている 地球的な雇用不足:仕事が足りない 貧困の増加と、貧困の女性化 移民やHIV/エイズの影響等、人口学的な要因 エイズの影響等、人口学的な要因 移民や グローバル化の恩恵が十分に行き渡っていない 弾力的な専門化と生産のグローバル・チェーン ディーセント・ワークへのアプローチ 「ILOはインフォーマル経済に関連する問題の解決のため、そ ILOはインフォーマル経済に関連する問題の解決のため、そ の使命、三者構成主義及び専門知識を拠り所とするべきであ る。ディーセント・ワークの欠如に基づいたアプローチは大きな 利点があり、実行されるべきである。このILO 利点があり、実行されるべきである。このILOのアプローチは、 ILOのアプローチは、 インフォーマル経済に見られるさまざまな状況や背景原因を 考慮したものでなくてはならない。それは、権利の推進やディー セントな雇用、社会保護と社会対話の促進を含む包括的なも のであり、また、ガバナンスや雇用創出、貧困削減などの問題 解決において、加盟各国を支援することに焦点を当てたもの であるべき だ。」 第90回 回ILO総会( 総会(2002年)インフォーマル経済委員会報告書、結論、第 年)インフォーマル経済委員会報告書、結論、第35項 総会( 年)インフォーマル経済委員会報告書、結論、第 項 インフォーマル経済における ディーセント・ワークの欠如 「インフォーマル経済においてディーセント・ワークの不足がもっとも 顕著である。保護されない労働者の視点からは、インフォーマル経 済の仕事の否定的な面は、肯定的な面をはるかに凌いでいる。」 雇用の欠如: 雇用の欠如:フォーマル経済で仕事に就いたり、事業の運営が 雇用の欠如:フォーマル経済で仕事に就いたり、事業の運営が できない 権利の欠如 権利の欠如: 権利の欠如: 認知されず、未登録で、労働法や社会保護による規 制も保護もされないため、基本的な権利を享受、行使し、擁護でき ない 社会保護の欠如: 社会保護の欠如:仕事と収入の不安定、社会保障の適用率が低 社会保護の欠如:仕事と収入の不安定、社会保障の適用率が低 い、安全と健康への危険 代表権の欠如: 代表権の欠如:民主的で独立した、会員制の組織による集団的 代表権の欠如:民主的で独立した、会員制の組織による集団的 な代表権がないため、その他の労働の権利を享受できない。 このアプローチが示唆すること 包括的・統合的アプローチ:「ディーセント・ワークのこれらの側面は互いに補強 包括的・統合的アプローチ:「ディーセント・ワークのこれらの側面は互いに補強 しあい、統合された貧困削減戦略を形づくる。」 これ以上権利と雇用の「いずれか片方のジレンマ」に陥ってはならない: 「他の 生活手段を持たない者の機会を制限する方策をとるべきではない。しかし、ど のような代償を払っても、またどのような状況でも仕事が優先されるべきではな い。」 ガバナンスの問題: 「しばしば政労使による協議抜きで策定された不適切で効 果的でない、間違った、適切に運用されないマクロ経済・社会政策。包括的な法 的・制度的な枠組みの欠如。政策と法令の適切かつ効果的な運用のためのグッ ド・ガバナンスの欠如。」の問題に対処する。 下降ではなく、上向きの変化: 「政策や計画は疎外された労働者や経済単位を 経済や社会の主流に統合することに焦点を当てるべきである。それによって脆 弱性や疎外状況を緩和する。」 漸進的な取り組み: ディーセント・ワークの不足がもっとも深刻な底辺からまず 取り掛かり、徐々に労働者や経済単位をディーセント・ワークに近づけるように 促す。「効果的な戦略を実施することで、フォーマル経済に近づき、インフォーマ ル経済を脱するための移行的な段階を設ける。」 インフォーマル経済の弱者に特別な注意を向ける: 女性、若者、児童労働者、 移民。 インフォーマル経済でのディーセント・ ワークの不足を緩和するには? 即座には、インフォーマル経済の中でもっとも深刻な不足に 即座には、インフォーマル経済の中でもっとも深刻な不足に 見舞われている者を労働法で守り、権利、社会保護、組織 化と代表権の改善を確保する。 短・中期的には、一貫性のある法的・政策枠組みを促進し、 短・中期的には、一貫性のある法的・政策枠組みを促進し、 仕事を改善し、労働者と使用者がインフォーマルからフォー マルなディーセント・ワークに移行できるような能力の向上 を図る。 より長期的 より長期的には、全ての労働者が保護され、認知される 長期的には、全ての労働者が保護され、認知される ディーセントな仕事を十分な数生み出す。 インフォーマル経済における 権利を拡充する どこで働くかに関係なく、全ての働く者は労働におけ る権利がある。 ILO宣言と労働基準は、インフォーマル経済にも適用 できる確固とした国際的根拠を有する 権利の不足は国内法慣行においてどのように基準が 表現され、試行されるかに由来する。そのため、 ¾ 労働法を改善する ¾ 労働行政を強化し、労働の権利を執行する ¾ 法的リテラシー、特に女性労働者のそれを高める ¾ ビジネスの規制枠組みを改善する 社会保護を改善する 法定の社会保障(予防的、保護的)規定:社会 保険、普遍的な給付、社会扶助プログラム 斬新な、集団・地域に根ざした社会保護計画 公平性と効率性を増すため、分散した計画を 他の社会保護手段と結びつける 特に危険な職業や弱者のグループの労働安 全衛生を改善する HIV/エイズ対策を強化する HIV エイズ対策を強化する インフォーマル経済の代表権と組織化 結社の自由、団結権、団体交渉権を保護す る法枠組みとガバナンス:基本的権利と権能 組織化、代表権と発言権を強化する: ¾中央・地方政府の役割 中央・地方政府の役割 ¾労働組合の役割 労働組合の役割 ¾使用者団体の役割 使用者団体の役割 ¾協同組合の役割 協同組合の役割 ¾その他のソーシャル・アクターの役割 その他のソーシャル・アクターの役割 戦略的同盟関係の形成と強化 ディーセントな雇用への世界の 需要を満たすために 教育訓練・技能開発によってエンプロイヤビリティ(雇用される可能性)と生産 性を高め、雇用をグレードアップする 不利な立場にある集団に特別な対策やインセンティブを与える 所有権を確保する 企業開発を通じた質のよい仕事の創出 中小企業における雇用の創出を奨励するための一般的条件に関するILO勧 告(第189号、 年): 告(第 号、1998年) 号、 年): ¾ 権能を付与する政策と法的枠組みを作る ¾ 企業文化を育む ¾ 効果的なサービスのインフラを開発する ¾ 代表権と組織化 ¾ 市場機会とアクセスを改善する ¾ 中小企業に質のよい仕事とビジネスは両立することを伝える
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